資料1続き(PDF:708KB) - 長野市役所

第2章
将来都市構造
1.基本的な考え方
●高齢化社会に対応し、地域コミュニティ形成を強固にする「歩いて暮らせる日常生活圏」
の形成
・高齢化社会における自動車に頼れない後期高齢者などが自由に活動でき、また、身近な
地域コミュニティの形成の促進、移動による環境負荷の低減の観点から、「歩いてくら
せる街づくり」が重要である。このため、日常生活として必要な商業、医療・福祉、教
育・文化などの機能がおおむね徒歩圏内にまとまっていることで、日常の移動距離を少
なくし、生活活動をコンパクトにすることができる。
●環境負荷を低減し公共交通を軸にした持続可能な都市づくり
・長距離移動や自動車利用による環境負荷の低減や、高齢者や若年者などの交通弱者の生
活交通を確保するためには、公共交通が成立するような都市構造の維持、誘導が必要で
ある。このため、公共交通ネットワークにより都市機能の集積した区域が結ばれて配置
されていることが望ましい。
●地域の特性に応じた都市の中心機能の育成と相互連携による一体的な都市圏の形成
・「質の高い都市機能、都市空間」を確保するためには、都市機能が拡散した都市構造を
回避し、広域的で高次な都市機能(基幹的な医療、教育、商業、娯楽など)の集積する
中心核(長野地区中心市街地)をはじめとして、複数の周辺核が適切な機能分担を担い
ながらネットワークで連携し、一体的な都市圏を形成する必要がある。
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2.都市構造形成の基本方針
①都市活動やコミュニティの核となる拠点と軸の形成
都市を形づくっていく骨組みとして、都市活動や地域コミュニティや日常生活の中心とな
る「都市拠点」を位置づけ、都市機能の集積や基盤整備等を進める。またこれらの拠点をつ
なぎ都市集積や活動が連続して集積する「都市軸」を形成させる。
都市拠点は、既存の都市集積や交通の結節点等の機能をもつ中心市街地や鉄道駅周辺を位
置づける。
都市軸は、歩いて暮らせる生活圏の形成や公共交通の活用の観点から、鉄道沿線や拠点間
の相互連携を促進する位置に設定する。
②自然を守り都市と連携する自然観光拠点の形成
豊かな自然を持つ地域の保全を図るとともに、農林業や観光等の産業振興や二地域居住や
農林業体験などの交流人口の受け入れを促進するための地域の核となる自然観光拠点を育
成する。
また、地域間の交流を促進し市街地からのアクセスを強化すると同時に、自然観光拠点を
周遊することで観光の魅力向上や市内での滞在時間を増加するため、道路を基本として、長
野市内の地域拠点や自然観光拠点を結び、都市機能の連携や広域的な観光ネットワークの形
成を高める「地域交流軸」を位置づける。
③自然や地域の面的な保全や土地利用の誘導
貴重な自然の保全や、自然を活かし共生した市街地の形成、良好な住宅地の整備・維持な
どを面的に保全・誘導するため、「計画的な保全・誘導エリア」を位置づける。
④緑のネットワークの形成
長野市周辺の山や市街地を縦横に流れる川などの自然を保全するとともに、緑の骨格的な
軸として設定し、それらをネットワークすることにより、自然生態系の保全、善光寺平の市
街地と連続した都市環境などの向上を図る。
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代表的な生活拠点
●都市拠点
1.広域拠点(長野地区中心市街地)
長野地区中心市街地を核とした高次の広域的都市機能の集積
2.地域拠点(篠ノ井、松代、北長野)
広域総合拠点に次ぐ機能を分担し、地域の自然・歴史・文化を活かした生活と交流のため
の都市機能の集積
3.生活拠点(生活と密着した地域コミュニティの拠点)
地域ごとに「生活の質」を高め、生活と密着したサービスを提供する都市機能の集積
4.交流拠点(エムウェーブ、南長野運動公園、若里など)
市内、市外を問わず、より多くの人が集まるように交流人口を視野にいれた交流・観光・
レクリエーションの広域的な拠点
●自然観光拠点
居住人口と交流人口の拡大を視野に入れ、既存の別荘地または主要な観光地で、自然環境と
共生した居住・観光地としての整備を図る拠点
●都市軸
1.基幹都市軸
公共交通を基本とし、さまざまな拠点、地域を結びつけ、活発な都市活動や交流を支える
軸
2.歴史・交流軸
周辺地域の拠点や市内に点在する歴史的なまちを結び、歴史・文化の交流、観光の周遊性
を高める軸
3.地域交流軸
道路を基本として、長野市内の地域拠点や自然観光拠点を結び、都市機能の連携や広域的
な観光ネットワークの形成を高める軸
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●保全・誘導エリア
地域の土地利用などを計画的に保全や誘導する面的なエリアである保全・誘導エリアを以下の5
項目設定する。
1.保全すべき緑のゾーン
日本を代表する広域的で貴重な自然が広がる自然公園地域。
2.自然と共生するゾーン
飯綱高原や千曲川といった長野市の雄大な自然と産業・観光・交流といった都市的活動が一体
となった地域づくりを進めていくエリア。
3.農用地及び田園集落ゾーン
農林業の振興を進めながら、田園住宅や農林業と連携した観光・産業等の土地利用が共存、調
和した生活空間づくりを進めるエリア。
4.市街地
快適で潤いのある都市環境や、環境負荷の少ない市街地にするため、水や緑を取り入れた緑の
ネットワーク形成によりコンパクトな都市形成を図る。
5.住宅市街地エリア
ゆとりある住環境を保全し、外延的な市街地の拡大を抑制することにより、環境にも配慮した
コンパクトな住宅市街地を形成していくエリア
●緑のネットワーク
長野市周辺の山や市街地を縦横に流れる川などの自然を保全するとともに、以下の2つの軸を設
定し、それらをネットワークすることにより、自然生態系の保全、善光寺平の市街地と連続し
た都市環境などの向上を図る。
1.河川軸
河川や、河川沿いの空間を市街地における貴重な自然空間として保全・活用する。
2.グリーンアメニティネット
幹線道路の街路樹や、都市公園、小さな街なかの緑地・広場、昔ながらの緑の多い社寺や用水
路により構成される市街地の緑のネットワーク
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3.都市構造形成の促進の重点方策
●公共交通を中心とした都市軸の形成
歩いて暮らせる生活圏を実現させるための都市構造を形成させるために、鉄道沿いの
都市集積による都市軸の育成を図る。このため、鉄道沿線の市街地や中心市街地周辺で
の住環境整備(生活道路、公園、建替え等による良好な住宅の形成)、近隣商業環境整
備(歩行者空間整備、駐輪場整備等)を進める。また、バス路線の充実を図る。
●拠点の育成
広域総合拠点である長野中心市街地の整備を促進する。中央通りや周辺地域での歩行
者優先型の交通環境や市街地整備を進め、商業地としての活性化により商業集積を促進
させる。同時に業務機能等の高次都市機能の集積を図る。歩いて暮らせる生活圏の形成
のため、まちなか居住の促進策や周辺地域との公共交通の結節性を高める。
地域拠点(篠ノ井、北長野・吉田、松代)では、既に整備されている駅前広場等の都
市基盤を活かし、生活や業務関連施設の立地促進を図るとともに、拠点性を高めるため
に、周辺に広がる住宅地から駅前へのバスや車でのアクセスを強化し、バス・アンド・
ライドやパーク・アンド・ライドによる公共交通転換の中心とする。
生活拠点では、鉄道駅周辺の基盤整備や駅までの道路整備を図るとともに、スーパー
マーケットなどの商店や、小中学校や医院等の日常生活に不可欠な機能が徒歩で利用で
きるよう、土地利用の誘導や諸機能の確保を図ると共に、最寄り駅までの循環バス等の
公共交通アクセスの強化を進める。鉄道駅から離れた地域では、支所等の既存の集積や
中心的な地区を核として、生活交通の確保を推進する。
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【「都市拠点」と「歩いて暮らせる日常生活圏」の構成イメージ】
【集積する機能による階層的に構成される都市拠点の概念図】
広域総合拠点:
長野中心市街地におけ
る高次の広域的都市機
能の集積
周 辺他 都市 か
らもアクセス
地域拠点:
篠ノ井、松代、北長野
(吉田)を中心とした
地域の拠点
生活拠点:
鉄道駅等を中心とした
生活の核となる拠点
公共交通等による生活拠点との連携
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【拠点の形成方策】
1) 広域総合拠点(「長野地区中心市街地」)
・長野駅∼善光寺を中心とした中心市街地を長野市および北信地域の「広域総合拠点」と
して、ここでしか手に入らないような商品やサービスが提供される商業・娯楽機能、県
庁・市役所や国の機関などの行政機能、金融機関や企業の本支店などの事務所機能等の、
多様で高次の都市機能が集積する。
・中心市街地内は徒歩や自転車などを主として移動が
できるように、中央通りの歩行者優先化を軸として、
市街地内の歩行者空間や駅周辺の歩行者デッキの充
実や観光・買い物客等への案内情報の提供等を行う。
・移動手段の充実や高齢者等の歩行を補助する観点か
ら、循環バス「ぐるりん号」の充実や、駅や善光寺
周辺などで乗り捨て可能なレンタサイクルシステム
の導入、道路での自転車通行帯の確保を行う。
・中心市街地は、広域拠点であることから、市内や市
外からの公共交通(鉄道・バス)でのアクセス性の
向上を図る。
・これら様々な都市機能を享受し、交通の利便性や職住の近接などのメリットを活かした
「まちなか居住」の促進と多様で高次・広域的な機能の展開を図る。
・「まちなか居住」は中心市街地の地区の特性に応じ、景観に配慮した共同住宅等が供給
される。住宅は、独身若年者、ファミリー、高齢者などの世帯特性に応じた住宅の供給
を促進するとともに、住宅ストックの有効活用の観点から、世帯構成やライフスタイル
に合わせた住宅の住み替えを促進する。
・中心部と郊外(中山間部や別荘地も含む)の二地域居住(マルチハビテーション)のた
めの中心側の住宅地としての活用も考慮する。
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2) 地域拠点とその周辺部(篠ノ井、北長野・吉田、松代)
・中心市街地活性化基本計画で位置づけられている篠ノ井、松代や、交通結節点でもあり
駅前の再開発事業により商業等の集積が高い北長野(吉田)周辺は、「地域拠点」とし
て長野地区中心市街地に次ぐ都市機能を分担し、日常生活の中心となる拠点である。
・これらの拠点の駅前は、駅前広場の整備等が行われているところが多いが、郊外型店舗
との競合や車利用者の増加により、駅周辺の集積度の低下がみられる箇所もあり、買い
物や医療・福祉等日常的なサービスを自動車を利用しなくても受けられる拠点性や公共
交通アクセスの利便性の強化を推進する。
・人が集まることによる拠点性を高めるため、周辺に広がる住宅地から駅前へのバスや車
でのアクセスを強化し、バス・アンド・ライドやパーク・アンド・ライドによる公共交
通転換の中心とする。
篠ノ井駅徒歩圏(1km圏)の建物現況
(平成16年度基礎調査より)
篠ノ井駅
業務施設
商業施設
1km
住宅
共同住宅
官公庁施設
文教厚生施設
工業施設
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3) 生活拠点(その他の鉄道駅や支所等)
・その他の鉄道駅周辺は、公共交通の交通結節点であり、生活と密着したサービスを提供
する核となる。このうち、豊野、川中島等の主要駅の周辺は「生活拠点」として、地域
コミュニティの核となる拠点である。
・これらの拠点以外に、地域の支所を中心とした地区や、主要な幹線沿いなどの基幹的な
バス交通の結節点など公共交通によるアクセスが可能となる、周辺地域の生活の核の形
成により、徒歩やバス等の公共交通による日常生活圏が形成される。
・生活拠点へ徒歩等でのアクセスが困難な市街地
もあり、古くからの集落や既成市街地の縁辺部
が高度成長期にスプロール的に拡大した住宅地
もある。
・最寄の鉄道駅等の周辺に日常生活や医療福祉機
能の最低限の集積(ワンストップ化)により、
日常の生活ニーズに応える「生活拠点」の形成
を図る。
区画整理事業・地区計画による住宅地(三本柳地区)
・パーク・アンド・ライド等の実施により、車に頼
らない中心市街地へのアクセス手段を確保する。
・スーパーマーケットなどの商店や、小中学校や医院等の日常生活に不可欠な機能が徒歩
で利用できるよう、土地利用の誘導や諸機能の確保を図ると共に、最寄り駅までの循環
バス等の公共交通アクセスの強化を進める。
4) 中山間地域(里山居住地)
・山林や高原の中に集落が点在する。農業や林業と居住が一体となった地域であり、市役
所の支所や旧町村役場などを中心に日常生活サービスや福祉・学校などの施設が立地す
る。
・高度情報通信インフラを活用して、テレワークやインターネットショッピング等、都市
部から離れても仕事や日常生活が可能になる。
・既存の集落コミュニティを基本として、必要に応じて「自助・共助・公助」を組み合わ
せた生活が送られる。
・車の利用できない高齢者等の通院、買い物、趣味の活動等の移動手段を確保するため、
デマンドバスと基幹的なバス・鉄道を組み合わせた生活交通を確保する。
・二地域居住(マルチハビテーション)の受け皿としての住宅や、営農希望者やリタイア
(退職)層などのI・Jターン者の受け入れるため、空家や空地の活用を進める。
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・市民農園(クラインガルテン等)等において都市部からの交流人口を受け入れるととも
に、空家や空室を活用した短期的な滞在を可能とする。
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第3章 土地利用の方針
1.土地利用の基本的な考え方
●集約型都市構造(コンパクトな市街地)形成
・高齢社会に対応し、環境に負荷をかけない持続可能な都市構造としていくために、中
心市街地や都市軸沿い等での多様な都市機能の集積による拠点性の強化を図る。
・既存の公共交通ネットワーク等の利便性が高い場所等での良好な市街地形成のため、
コンパクトな市街地の形成を図る。
●中心市街地の再生と活性化
・長野の顔となる中心市街地では、特色ある歴史・文化を活かしながら、都市の活力や
にぎわいを創出する商業、文化等の都市機能を集積させるとともに、街なか居住を推
進し、「都市の顔」にふさわしい中心市街地の再生を図る。
●市街地の外延的拡大の抑制と既成市街地における低・未利用地の有効活用
・集約型の都市構造を実現させ、周辺の自然の保全、自然と居住や産業との共生を進め
る。
・市街地の外延的拡大の抑制や、既成市街地における低・未利用地の有効活用を図り、
きめ細かなゾーニングによるバランスのとれた土地利用の誘導を図る。
●自然の保全や農林業の振興との共存を図る田園居住空間の形成
・本市の資産である豊かな自然環境と、都市の魅力や活力を生み出す都市活動との共生
に積極的に取り組むとともに、貴重な生産活動の場である農林地との調和を図り、各
地域の自然・風土を活かした都市づくりを目指す。
●多様な都市生活ニーズに対応するとともに質の高い都市空間を誘導・実現する
・地域特性を踏まえ、ライフスタイル・ニーズに応じて多世代が交流できる多様な「場」
(居住地、就業地など)を提供する。
・都市の魅力づくりのための機能集積、良好な住環境の形成、良好な自然との調和など、
地域の特性や街づくりの目標に応じた土地利用の区分を設定し、秩序ある土地利用を
誘導・実現していく。
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【区域区分と土地利用区分】
区域区分
土地利用区分
該当地域
中心市街地
①「中心商業・業
・広域的な都市核〔長野地区中心市街地〕
務複合地」
・地域商業などの拠点〔篠ノ井、松代、北長野〕
②複合市街地
・中心市街地に接する地域で住宅と商業、工業等が複
合しているエリア(鶴賀、中御所等)や駅周辺の市
街地(豊野、川中島等)
中心市街地周
・幹線道路沿道等
辺部
③一般住宅地
中心市街地周辺の住宅主体の地域(三輪、吉田、古牧、
芹田、川中島・篠ノ井などの一部等)
④専用住宅地
戸建ての住宅が主体で良好な住環境が確保されてい
る地域(安茂里、浅川、若槻、朝陽、篠ノ井・川中島
市街地縁辺部
の周辺部等)
⑤工業地
工場や流通施設などの産業施設の集積地(石渡・北尾
張部地区、南長池・北長池地区、篠ノ井岡田地区、大
豆島地区)
平地部集落地
⑥田園居住地
市街化調整区域内の農業的土地利用と居住が複合し
ている地域
里山の集落地
⑦里山居住地
山間部や丘陵部にあり、豊かな自然と農林業の生産空
間と集落が点在している地域。(都市計画区域外)
高原住宅、観
⑧高原住宅・レク
飯綱高原の良好な自然に囲まれた高原型居住地
光拠点など
リエーション地
自然環境と共存した自然・レクリエーション地域
森林、自然公
⑨森林・自然公園
上信越高原国立公園区域をはじめとする山岳、森
園など
林、湖沼等(良好な景観の保全、水資源の供給、災
害防止等の面で重要な地域)
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○土地利用区分のイメージ
「山」のエリア
「里」のエリア
「街」のエリア
都市計画区域外
市街化調整区域
里山の集落地
平地部集落地
市街化区域
別荘地、観
光拠点な
市街地
縁辺部
中心市街地
中心市街
地周辺部
森林、自然
公園など
主な
土地利用
高原住宅と
森林、
区分
レクリエー
自然公園 ション地
複合市街地
里山居住地
専用住宅地
田園居住地
中心商業業務複
合地
(長野地区中心市
街地)
一般住宅地 (篠ノ井、松代、北
長野)
その他の土地利用区分:「工業地」
長野市域
中心市街地周辺部
「複合市街地
複合市街地」
複合市街地
都市計画区域
市街地縁辺部−「専用住宅地
専用住宅地」
専用住宅地
「一般住宅地
一般住宅地」
一般住宅地
中心
市街地
平地部の集落
(調整区域内)
「田園居住地
田園居住地」
田園居住地
「中心商業業務複合地
中心商業業務複合地」
中心商業業務複合地
森林・自然公園等−「高原住宅とレクリエーション地
高原住宅とレクリエーション地」
高原住宅とレクリエーション地
中山間部の集落−「里山居住地
里山居住地」
里山居住地
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2.土地利用の基本方針
①地域特性と整備課題を踏まえた土地利用
長野市の市街地は、その成り立ちやこれまでの都市計画により、いくつかの市街地に
類型できる。中核市として行政や業務機能、広域的な商業機能が集積してきた長野中心
市街地をはじめ、旧市町村の中心地域や鉄道駅周辺など、地域の商業やサービスの中心
的な土地利用となっている商業地が存在する。居住地も中心市街地、中心市街地の周辺
に拡大してきた住宅地、農地の転換により形成された住宅地、高度成長期に面的に形成
された住宅地、平地部の農地のなかの集落、中山間地域の集落など多様であり、基盤整
備や機能集積の水準や内容は異なっている。このため、中心市街地、中心市街地の周辺
部、市街地縁辺部、田園地域の集落、中山間地域、高原リゾート地などの区分を設定し、
集約型の都市構造を実現するための機能集積や土地利用の誘導を進めていく。
②多様な居住ニーズに対応する土地利用
多様な特性をもつ市街地(もしくは集落)において、市街地特性と市民のライフ・ス
タイル(若年単身者、ファミリー世帯、DINKS、熟年世帯、高齢世帯等)に応じた居住
地や就業地を提供する。同時に、地域の魅力やニーズの変化に対する「柔軟性・対応力」
を確保する観点から、多様な世代が住み・働くことができる都市づくりが求められる。
このため、中心市街地(長野広域拠点、篠ノ井等の地域拠点)は、まちなか居住を促
進するための住宅機能の導入、商業・業務機能の集積の促進を図る。
また、中心市街地周辺部や市街地縁辺部では、鉄道駅や基幹的なバス網の運行されて
いるエリアを中心に、生活道路や身近な公園等の基盤整備を進め良好な住環境の創出と
生活利便施設の集積を促進することで、「歩いて暮らせる」住宅地形成を図る。
③コンパクトな生活圏の形成と秩序ある複合的な土地利用の誘導
徒歩圏内に日常生活に必要な機能(生活利便施設、医療、福祉、教育、文化など)を
集積させたり、職住近接によるコンパクトな都市圏を実現するため、身近な拠点の育成
や居住機能と商業、業務、農業等の機能が複合した土地利用を図る。
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3.地域区分ごとの土地利用方針
持続可能な都市としていくため、ある程度の人口規模を維持することも重要。このため、
現在の少子化傾向を食い止めるための方策(子育てしやすい都市環境、若年者が自立でき
る環境等)とともに、転出者を減らし、他地域から新たな居住者を受け入れる(Uターン
含む)方策と合わせた都市づくりを進める。
◆中心市街地(中心商業・業務複合地)
中心市街地の地価低下により、住宅(マンション等)が低廉に購入・賃貸できる可能
性が増大しているため、以下の方策を検討する。
・職住近接のライフスタイルの実現による、コンパクトな都市づくりの推進。
・まちなか居住として魅力ある居住環境や多様な居住ニーズに対応できる住宅供給。
→中心市街地では、郊外と比べて不足する緑の確保、生活利便施設の立地、教育や
子育て環境の充実等の対応が必要。
・中心部と郊外(別荘地も含む)のマルチハビテーションのための中心市街地での住
宅を供給する。
・既存住宅ストックの活用⇒一生住み続ける住宅も必要だが、ライフスタイルに合わ
せた住宅の住み替えを検討する。
◆中心市街地周辺部(複合市街地、一般住宅地)
中心市街地に近接している地域特性や、鉄道などの公共交通の利便性を活かし、既存
の都市のストック(基盤や住宅など)を活用して、戸建てや集合住宅など多様な住宅の
供給と職住近接や歩いてくらせる街づくりを進める。
住宅地として比較的古いため、道路や身近な公園などの都市基盤の整備や更新を進め、
快適で安全な住環境を提供する。
◆市街地縁辺部(専用住宅地、工業地)
郊外の既存市街地では、緑が多く、より広い居住地を提供し、新たな住民の受け皿と
して魅力ある整備を重点的に行うとともに、住み続けられる都市づくりを進める。
・基盤の整備されている住宅地においては、地区計画等により良好な宅地の維持・保
全を図る。
・地区計画等による地区レベルのルール化を促進し、個々の建替え等の機会をとらえ
た市街地内の基盤整備、環境整備を図る。
生産活動の中心となる工業地では、工業・物流等の産業関連機能の集積を促し、周辺
地域の環境の悪化を招かないような土地利用とするとともに、地域内では敷地内外の緑
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等による環境の向上を図る。
◆平地部の集落(田園居住地)
平地部の集落(市街化調整区域)は、自然・農地等の保全と無秩序に分散した居住を
防ぐため、既存集落の環境整備を進め、秩序ある土地利用を誘導する。
◆中山間部の集落(里山居住地)
・営農希望者など、I・Jターン者の受け入れ環境を整備する。(住宅等、遊休農地活用
等)
・高度情報通信インフラの整備によるテレワークを促進する。
・観光、農林業体験、クラインガルテンなど、都市部からの交流人口を増加させるソフト
施策と必要なインフラ整備を進める。
・農地・山林の荒廃による災害に対する脆弱性が高まることが予想されるため、避難や応
急活動が円滑にできるための道路等のインフラ整備や災害発生時の応急体制(情報伝達、
避難誘導等)のソフト的な対策がとれる環境を整備する。
◆高原住宅とレクリエーション地
・飯綱高原等の良好な自然に囲まれた環境を活かし、二地域居住などの受け皿として健全
な居住地としていく。
・生活利便施設等の秩序ある立地を誘導し、居住機能と調和した「高原生活圏」の形成を
図る。
・観光拠点でもあることから、多くの人々が自然を享受できる施設整備や土地利用を推進
する。
◆森林、自然公園等
・上信越高原国立公園区域をはじめとする山岳、森林、湖沼等の美しく豊かな自然環境は、
良好な景観の保全、水資源の供給、洪水や地すべりといった災害防止等の面で重要な地
域であり、将来に引継ぐべき貴重な財産として積極的に保全をしていく。
「二地域居住」とは;
・二地域居住とは、複数の住まいで生活を営むことで、マルチハビテーションとも呼ばれる。
・都市の住まいで主に生活しながら、週末を田舎のセカンドハウスで過ごすスタイルや、田舎を中
心に暮らしながら、都市部にSOHO的住まいを別に持つスタイルなどがある。二地域居住は、都市
生活のひとつのあり方と考えることができる。
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4.土地利用誘導の重点方策
●住み替え促進による既存ストック(住宅)の活用
土地利用方針に多様なライフスタイルに対応し都市のストックを世代間で上手に活
用していくために、住み替えの促進による住宅ストックの活用等を進めるとともに、良
質な住宅の供給を促進し、地域の住宅等のストックが活用されることで地域コミュニテ
ィの維持を目指していく。
(住み替え促進方策の例)
・住み替え促進のための情報バンク・斡旋システムの構築
・住宅ストックの流動化(住宅を貸すことに対する不安や抵抗感の払拭)
・住替えのための資金や老後の生活費の手当ての仕組み構築
●まちなか居住の促進
集約型の都市構造と歩いて暮らせる生活圏の形成を目指すとともに、中心市街地の賑
わいを確保し、多様な居住・就業ニーズに応えていくために、中心市街地等の都市拠点
でのまちなか居住を促進する。同時に、住宅を中心とした郊外の新たな面的開発は基本
的に抑制していく。まちなか居住の促進のためには、中心市街地等の利便性と居住地と
しての環境や空間の質を両立させた市街地形成を図る。
・土地区画整理事業、再開発事業などによる市街地の再生
・密集市街地内の木造住宅の不燃化や避難路、避難地の整備
・まちなか居住推進のための民間支援などの補助メニューの創設
・中心市街地のマンション等の建設によるまちなか居住に対応した建物高さの制限など
の街づくりのルールの検討
●地域の質を高め、良好な都市空間を誘導するための地域特性に配慮したルールづくり
住民参加によるきめ細かな街づくりを支援し、地域特性に応じた質の高い良好な土地
利用や都市空間を誘導するため、都市計画の様々な手法を適用していく。
・特別用途地区の指定や地区計画などによる特色ある地域づくり
・市街化調整区域内既存集落の地区計画による優良田園住宅地への誘導
●住民自治協議会等による住民によるきめ細かな街づくり
土地利用方針を具現化していくためには、都市計画の用途地域等による規制・誘導に
加えて、よりきめ細かな土地利用の計画や整備実施が必要である。本マスタープランの
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土地利用方針にもとづき、地域特性や課題を踏まえた土地利用の計画づくりを進める。
また、街づくりにおいて、長野市の資産である自然や歴史・文化を最大限活用するこ
とはいうまでもないが、美しい地域や元気な地域を地域住民の主体的な活動によりつく
りあげていくことで、市内外にアピールし、多様な人口を惹きつけることができる。
各地域や地区毎に、地域のことを熟知している地域に住む市民の「自らの住む地域を
良くしたい」、「街づくりに参加したい」という意識のもと、地域住民と市との協働に
よるによる取り組みの中で、市民が「誇りのもてる」街づくりを進めていく。
・本マスタープランの地域別構想(地域整備の方向性を示す)をもとに、地域の住民自
治会等において、具体的な街づくり事業計画となる「地域街づくり計画」の検討・作
成を、市の職員や専門家(コンサルタント派遣)の助言等を得て進める。
●多様な産業を支える街づくりや都市経営の推進
都市活力の維持、都市経営の観点から、既存産業の強化や新たな産業の創出は重要で
ある。土地利用においても、長野市の地域特性や独自性を活かした産業を活性化するた
めの誘導や拠点整備の促進を進める。また、長野市の自然、人材、技術などの地域資源
を多面的にネットワークする環境や空間づくりを行うことにより、新たな産業の創出を
図る。
・地場産業の活性化や大学との連携による新たな産業拠点の整備等
・治山・治水を考えた市産材による木造住宅の促進
53
第4章 道路・交通整備の方針
1.道路・交通整備の基本的な考え方
●活発な地域間・拠点間の交流を支援する道路整備
新幹線や高速道路等の広域交通との連絡性の向上や長野市に点在する拠点間の結び
つきを強め、地域間、拠点間の活発な交流を支援・促進し、観光交通を支える交通ネッ
トワークの整備を行う。
●歩いて暮らせる街づくり(集約型都市構造)を支える交通整備
公共交通は、超高齢社会において、他に交通手段を持たない人の貴重な交通手段であ
り、また歩いて暮らせる街づくりを進める上で公共交通の役割は重要である。このため、
中心的な都市集積(長野中心市街地)を核として、複数の機能集積をつなぐ既存の公共
交通を活用し、利用環境の整備、利便性の向上を図る。
誰もが自由に安心して活動できるように、ユニバーサルデザインの考え方にもとづき、
歩行者、自転車が安全で快適に利用できる交通環境をつくり、使いやすい公共交通の整
備を行う。徒歩や自転車の利用促進を図るため、中心市街地や主要駅周辺等では、駐輪
場や自転車道・自転車通行帯などの歩行者・自転車利用環境の充実を図る。
●交通需要の効率化を図るための交通コントロールや道路の情報化(「つくる」から「活
かす」)
既存道路の有効利用、地球環境保全、公共交通への誘導などの観点から、交通需要管
理(TDM)の促進や、PR活動や市民参加による交通実験実施、利用者の交通行動や意識
を変えていく取り組み(モビリティ・マネジメント)を図っていく。
●公共交通不便地域での生活交通の確保
鉄道駅や基幹的なバス網がある市街地から離れた地域(市街地周辺部等)や、中山間
部の集落では、既存の公共交通の利便性が低く、生活交通の確保が重要である。地域の
特性と交通需要にきめ細かに対応し、小型バス等による「デマンドバス」や移送サービ
ス等による高齢者等交通弱者の生活交通の確保を図る。また中山間部と中心市街地を結
ぶ道路の改善により、バス等の公共交通網の運行環境を改善する。
●安全・安心で環境にやさしい交通施設整備
災害に強い都市とするための都市基盤の整備や、快適な都市環境の創出において道路
果たす役割は重要であり、市街地内の道路網や骨格的な道路の強化を進める。
また、公共交通の利用促進や緑のネットワークともなる街路樹による道路空間の緑化
等により環境にやさしい交通施設整備を進める。
54
「交通需要管理(TDM)」とは;
交通需要管理(Transportation Demand Management)は、自動車の効率的利用や公共交通への
利用転換など、交通行動の変更を促して、発生交通量の抑制や集中の平準化など、「交通需要の
調整」を行うことにより、道路交通混雑を緩和していく取組み。
例えば、下のような取組みがあげられる。
・自動車から公共交通機関への利用転換(公共交通機関の利便性向上策等)
・自転車利用の環境整備
・パーク・アンド・ライド
・時差出勤
・交通経路の変更(駐車場情報の提供等)
・自動車の相乗り(カープール)、共同利用(カーシェアリング)
・ロードプライシング
「モビリティ・マネジメント」とは;
「モビリティ」とは「移動」を意味し、「モビリティ・マネジメント」とは個人のモビリティ(移
動)が、社会にも個人にも望ましい方向へ、自発的に変化することを期待すること。たとえば、
過度に自動車を利用する「クルマ中心」のライフスタイルから、電車やバスなどの公共交通や、
自転車などの積極的な利用を促すなど、個人とのコミュニケーションを中心に働きかける交通施
策。
具体的には、公共交通や徒歩二輪の利用を誘導するため、情報提供を行ったり、各個人に複数
回の交通行動のアンケート調査を行うことにより、人々の意識と交通行動の自発的な変化をうな
がす「トラベル・フィードバック・プログラム」の実施等がある。
55
2.道路・交通整備の基本方針
①道路交通
・市街地への通過交通排除、特定路線の渋滞(渡河部など)を解消し、自動車走行時間の
短縮により環境負荷の低減を図るため、バイパス機能をもつ広域幹線道路の整備を進め
る。
・中心市街地内等の交通の整流化を図る道路ネットワークの形成を図る。
・中山間地域の生活や災害等の緊急時に必要な道路、観光交通を支える道路など、中山間
部と中心市街地とのアクセスを向上させる道路ネットワークの改善・強化を図る。
・「つくる」から「活かす」を基本的な考え方として、既存の道路ストックを活かし、さ
らに道路機能が発揮できるネットワーク形成を図る。需要のコントロールや利用者の交
通行動変容を促進することで、効率的で「賢い」自動車利用を推進する。
・地域内の生活道路については、バリアフリー化の推進や、狭隘道路の解消など、安全性・
快適性を向上し、全ての人にやさしい道路整備を進める。
【将来道路網】
56
②公共交通
・既存鉄道の利便性の向上を図り、地域住民と来訪者にとって使いやすい都市圏域内で
の移動や回遊の交通手段とする。(運行本数の増加、長野駅、豊野駅、篠ノ井駅にお
ける乗換え利便性向上)
・鉄道駅や病院、公共施設等を連絡する循環バスの充実を行い、住民ニーズに対応した
バス網の形成を行う。
・中山間地域での生活交通を確保するため、地域内をきめ細かに運行する小型バスや乗
合タクシー等による「デマンドバス」と地域間をつなぐ「基幹的バス」による交通ネ
ットワークを構築し、生活交通の確保を推進する。
・基幹的な公共交通の充実−既存のストック(路線バスや道路等)を有効に活用し、公
共交通優先システム(PTPS)や運行情報の提供(バス・ロケーションシステム)の促
進。
・新たな公共交通需要の創出
*観光交通(たとえば、小布施−須坂−松代−屋代の観光に関する連携促進による需
要増)
*パーク・アンド・ライドによる自動車から公共交通転換促進
【将来公共交通】
57
③交通需要マネジメント
・郊外や駅周辺に駐車場を整備し、バスや鉄道へ乗り換えるパーク・アンド・ライドを促
進する。
*利用しやすい駐車場の整備と駐車場情報の提供
*駐車料金と鉄道料金のセット割引
*駅周辺商店街などにおける買い物料金とのセット割引
・自動車の量を減らす諸施策を展開する。たとえば、通勤時の一人乗り自動車を減らすた
めに、HOVレーンの設置、自動車相乗りの促進、ロードプライシング等の施策の実現
可能性を検討する。
・利用者の意識を変革するため、PR、イベント、社会実験の実施や、情報提供・アンケ
ート等によるモビリティ・マネジメントの検討を行う。
・自動車交通量の削減や、混雑地域の交通量の分散などのため、各地域の実情に応じ交通
需要管理(TDM)施策を選択的に実施する。
※交通需要管理(TDM)施策
① 自動車の効率利用
② 移動経路の変更
③ 交通手段の変更
④ 発生源の調整
⑤ 移動時間の変更
58
④中心市街地の街づくりと一体になった交通
・中心核である長野市の中心市街地を再生することにより、「住みたい、行きたい中心市
街地」を創り出し、公共交通や徒歩、自転車で気軽に移動できるにぎわいのある街づく
りを行う。
・最も基本的な交通手段である、徒歩交通を確保するため、安全性・快適性の向上ととも
に、地域特性に応じた歩いて楽しい徒歩空間を整備する。
・環境負荷の低い交通手段として、中心市街地内での自転車の利用促進を図る。
・人々があふれるにぎわいのある空間づくりを目指し、中央通りを歩行者と公共交通を優
先した「歩行者優先型道路(トランジットモール化)」を推進する。
・交通セルの内部に自動車交通を混入させず、また、中心市街地での駐車場の効率的な利
用による土地利用の高度化を図るため、セルの外周などに基幹的な駐車場を整備する。
歩行者優先型道路
歩行者優先型道路(
先型道路(トランジットモール化)
トランジットモール化)
59
・長野駅の交通結節点機能の向上のための歩行者ネットワークの充実を図る。
長野駅は、新幹線開通にともない駅前広場整備(善光寺口は概成)および橋上駅化さ
れたが、駅と周辺市街地を密接に連携させるため、歩行者デッキなど歩行者のネットワ
ーク化の充実を図る。
長野駅善光寺口 駅前広場
長野駅東口駅前広場
■用語の説明
◆公共交通優先システム(PTPS:Public Transportation Priority Systems)
バスに取り付けられた発信機からの信号を、バス路線沿いの路面に配置した光学式車両感知器が読み取り、
進行方向の信号機の青時間を延長させるなどして、バスを優先的に走行させるシステムです。
◆セルシステム
中心市街地を歩行者中心の空間とするため、幹線道路に囲まれた区域において自動車交通の流入をできるだ
け排除するシステムです。
◆トランジットモール
中心市街地の通りを、一般の車両通行を抑制した歩行者専用の空間とし、バス、路面電車等の公共交通機関
だけが通行できるようにした街路のことをいいます。
◆ペデストリアンデッキ(歩行者デッキ)
駅前広場等に設置される歩行者のための高架構造物をいい、歩行者と自動車との動線分離を図ることにより、
歩行者の安全と自動車の効率化を図るものです。
◆交通需要管理(TDM:Transportation Demand Management)
道路を利用する時間や経路を変更したり、自動車を数人で利用するなど自動車の効率的な利用を行うことで
交通渋滞の緩和を図る方法です。自動車利用量の低減にもつながるため、大気汚染防止の点でも期待されて
います。
◆パーク・アンド・ライド(P&R)パーク・アンド・バスライド(P&BR)
都市部等での道路交通混雑を避けるために、都市の郊外部において自動車を駐車し、鉄道・バス等の公共交
通機関へ乗り換える手法です。
◆時差出勤
朝のラッシュを避け、比較的道路の空いている時間帯に出勤時間を変更して、スムーズな通勤ができるよう
にするものです。
◆フレックスタイム
1カ月以内の一定期間における総労働時間をあらかじめ定めておき、労働者はその枠内で各日の始業及び終
業の時刻を自主的に決定し働く制度で、労働者がその生活と業務の調和を図りながら、効率的に働くことが
でき、労働時間を短縮しようとするものです。
◆HOVレーン(HOV:High Occupancy Vehicle)
公共交通機関や一定以上の乗員がある車だけが通行できるレーンを設定し、相乗りや公共交通機関の利便性
を向上することで交通渋滞を緩和につなげるものです。
◆ロードプライシング
道路の通行に対して料金を徴収することにより自動車から他の交通手段への転換を促す取り組みです。
60
3.道路・交通整備の重点方策
●長野地区中心市街地の歩行者優先の交通整備の促進
長野地区中心市街地では、交通セル計画にもとづき道路・交通整備や歩行者空間の充
実を図る。
・中央通り歩行者優先道路の推進
・一方通行化や歩道、自転車道の整備によるセル内全体の歩行者優先化
・市民が多く集まる長野、篠ノ井、松代、北長野の中心市街地では、ユニバーサルデザイ
ンの都市施設の推進
・通過駅となる長野駅善光寺口周辺の誘客のための歩行者デッキ等の整備による駅東西
間の連続性の確保
●公共交通の利用促進と、既存の道路・交通基盤を有効活用し需要に応じた交通施策の推
進
交通需要管理(TDM)を進め、乗用車から公共交通利用転換を促す。
・交通需要マネジメント推進のための行政、事業者、住民・企業との連携による体制づ
くり
●公共交通不便地域でのきめ細かな公共交通サービスの提供
・中山間地域での生活交通を確保するため、地域内をきめ細かに運行する小型バスや乗合
タクシー等による「デマンドバス」と地域間をつなぐ「基幹的バス」による交通ネット
ワークを構築し、生活交通の確保を推進する。
●優先的な道路整備の検討と実施
市街地の渋滞解消のための道路、地域連携や防災上重要な道路などの観点から、道路
ネットワークとして重点的に整備する道路(外環状道路や地域間連絡道路等)や区間の
整備の優先順位を検討し、整備を図っていく。
・外環状道路である東外環状線、北部幹線の継続的整備の推進
・道路整備プログラムに合わせた長期未着手道路の見直し
61
第5章 自然環境の保全と都市環境整備の方針
1.自然環境の保全と都市環境整備の基本的な考え方
●都市の骨格的な「水とみどりの軸」や「みどりのネットワーク」の形成
・長野市の最大の資産・魅力である自然を都市づくりに活かすため、長野市周辺の山や市
街地を流れる川などの自然を保全するとともに、これらを軸として、自然生態系の保全、
善光寺平の市街地と連続した都市環境の向上を図る。
・山林や河川の豊かな自然と、市街地の公園や都市内水路、街路樹等の一体化した緑と水
のネットワークづくりを行う。
●保全すべきゾーンと開発の方針の明確化
・山間地や森林等への無秩序な開発を防止し、良好な自然環境を保全していくため、重要
な自然資源が存在する地域は積極的に自然環境を保全するゾーンとし、観光地や田園、
林間居住地として利用が可能な地域では、自然と開発の調和に配慮したルールづくりや
総合的な土地利用調整を行っていく。
・市街地部では、無秩序な市街地の拡大により、市街地の間に広がる水田及び国内有数の
果樹栽培地帯などを失われないよう、保全すべきゾーンの明確化と市街化の抑制等を行
う。
●市街地内の水・みどりの積極的な取り入れ、環境負荷の少ない都市づくり
・市街地内では都市化によるヒートアイランド等の環境負荷を軽減し、魅力と潤いのある
都市環境を維持・創出していくため、市街地内で積極的に自然環境の創出を図り、地域
の特性を活かした長野らしい緑豊かな質の高い都市空間の形成を目指す。
・地球規模の温暖化防止、循環型社会形成のため、省エネルギーや新エネルギーの活用を
図るとともに、大気・水・土(土壌、地盤)環境の保全や有害物質対策に配慮した都市
づくりを進めていく。
●市民・地域・行政が協働して環境配慮を行う都市づくり
・日常生活や生産活動の中で個人レベル、事業者レベルでの環境保全意識をもち、市民、
地域、行政等の協働により、環境と調和した都市づくりを積極的に進めていく。
62
2.自然環境の保全と都市環境整備の基本方針
①骨格的な水とみどりの形成
・上信越高原国立公園にも指定されている戸隠地区、飯綱山麓周辺、奥裾花渓谷や聖山高
原の自然環境の保全と、良好な自然を活かした地域づくりを進める。
・市街地周辺の里山については、大峰山等貴重な自然を残す重要な山林を風致地区や緑地
保全地区等の法的な規制による保全を検討する。
・水環境の面では犀川、千曲川を中心に河川緑地やレクリエーションの場として整備を行
い、身近に自然とのふれあいや学習ができる都市環境整備を図る。
・裾花川などでは市街地を流れる河川として貴重であり、都市環境向上に役立てる親水性
のある河川緑地として整備保全を図る。
・大黒山、松代象山等の市街地近傍で眺望の確保できる場所を中心として、骨格的な自然
環境を保全や緑地の確保等を図る。
②市街地内の水・みどり空間の創出
・市街地整備に併せて、公園や街路樹等の基幹となる潤いのある空間整備を図る。
・市街地内で個々の建築の整備等を行う場合は、開発規模に応じて、適切な緑地整備等を
行い良好な環境形成を行う。
・都市内の小河川や水路・公園緑地等、生活環境の中の身近な自然空間は、それぞれの地
域住民が主体となって、現状の資源や魅力を十分に活かしながら、さらに良好な環境形
成に努める。
・長野中心市街地に存在する水路の復活や遊歩道等など、都市の潤い空間としての活用を
検討していく。
・市街地に点在する水田や果樹園等の都市緑地は、環境資源と位置づけ、これを保全する
ことにより、良好な都市環境の形成に役立てる。
③環境に配慮し、負荷の少ない都市づくり
・資源・エネルギーの合理的・循環的な利用を促進し、廃棄物の発生を抑制するとともに、
環境への負荷の少ない循環型社会を構築する。
・個々の建築を行う場合において、ヒートアイランド等に配慮するとともに、敷地内の緑
化を進め、建物の省エネルギー化や新エネルギーの活用等を促進する。
・公共交通や自転車の利用を促進し、二酸化炭素発生による環境負荷を低減するため、コ
ンパクトな街づくりを行う。
63
【要素毎の整備方針】
①みどりのネットワーク
長野市周辺の山や市街地を縦横に流れる川などの自然を保全するとともに、
「河川軸」
と「グリーンアメニティネット」の2つの軸を設定し、それらをネットワーク化するこ
とにより、自然生態系の保全、善光寺平の市街地と連続した都市環境などの向上を図る。
1.河川軸
河川や、河川沿いの空間を市街地における貴重な自然空間として保全・活用する。
2.グリーンアメニティネット
幹線道路の街路樹や、都市公園、ポケットパークなどの街なかの小さな緑地・広場、昔
ながらの社寺林や用水路により構成される市街地の緑のネットワーク
②土地利用に応じた自然の面的な保全と誘導
地域の土地利用を踏まえ、自然要素を計画的に保全や誘導する面的なエリアとして、
以下の5ゾーンを位置づける。
1.保全すべきみどりのゾーン
日本を代表する広域的で貴重な自然が広がる自然公園地域であり、自然環境の保全を
図るエリア。
2.自然と共生するゾーン
飯綱高原や千曲川といった長野市の雄大な自然と産業・観光・交流といった都市的活
動が一体となった地域づくりを進めていくエリア。
3.農用地及び田園集落ゾーン
農林業の振興を進めながら、田園住宅や農林業と連携した観光・産業等の土地利用が
共存、調和した生活空間づくりを進めるエリア。
4.市街地
快適で潤いのある都市環境や、環境負荷の少ない市街地にするため、水や緑を取り入
れた緑のネットワーク形成によりコンパクトな都市形成を図る。
5.住宅市街地エリア
ゆとりある住環境を保全し、外延的な市街地の拡大を抑制することにより、環境にも
配慮したコンパクトな住宅市街地を形成していくエリア。
64
法令に基づく環境等の保全地域
65
都市環境整備方針図
「長野市緑の基本計画」
保全すべき緑地
66
3.自然環境の保全と都市環境整備の重点方策
●自然を活かした二地域居住や交流人口の受け入れ促進
長野市の中山間地域などの豊かな自然は、保全すべき自然を守るとともに、維持も重
要である。人の手のはいった森林や、自然と人間が共生することにより維持してきた自
然も人口減少や農林業の衰退等による荒廃が懸念される。
このため、中山間地域をはじめ豊かな自然を活かし、都市部と中山間地域の両方に生
活の場をもつ二地域居住、観光や農林業体験等の交流人口の受け入れを図る。
二地域居住は、中山間部などで発生する既存の住宅ストックの活用の観点からも意義
が高い。また、二地域居住は都市部の住民の「二住生活」という面だけでなく、主とし
て血縁関係による相互扶助的交流の活発化も想定される。とくに定住人口減少が進んで
いる中山間部では、二地域居住者が増加することにより、一定規模の消費需要の創出、
地域コミュニティ活動や地域文化活動等の新たな担い手の増加が期待できる。
二地域居住や交流人口に対応した地域づくりを進めていく。整備にあたっては、下記
のような方策を講じる。
・市外の人への情報提供・イメージ向上を進める情報発信
・自然や農林地を活用した体験施設や市民農園整備
・情報インフラの整備
・市街地との連携を確保する道路整備
・長野の資源を活かした農産物等、地産地消と新たな産業の創造
●市街地内の住民参加等による特色ある公園づくり
善光寺周辺、松代、戸隠等、地域の特色を活かし、地域住民にも使いやすく愛着のも
てる公園の整備や再整備を進める。公園の整備にあたっては、子どもや高齢者等が使い
やすく、安全な公園づくりを目指す。このため、市民が参加したワークショップ形式に
よる計画づくりの実施や市民ボランティア等による公園の維持・管理も促進することで、
市民の身近な公園づくりを図る。
・弁天公園、南向公園の整備や茶臼山動物園の再整備
・公園・街路樹の愛護会活動の促進
67
第6章 防災都市づくりの方針
1.防災都市づくりの基本的な考え方
●都市機能や拠点の連携による防災性の向上
・市街地の形成状況を踏まえ、災害時の被害を最小限に抑え、都市全体の機能が麻痺して
しまわないよう、市街地の形成状況や自然の地形等を踏まえながら、市内のいくつかの
拠点づくりやそれらを有機的に結びつけるネットワーク化による、都市機能や拠点の連
携による安全な都市構造の形成を図る。
●総合的な治山、治水対策の推進
・自然災害を未然に防止し、良好な都市環境を形成するため、まもるべき自然の保全や、
自然環境と景観、防災を総合的にとらえた治山・治水対策を進める。
●わかりやすく体系的な防災施設・システムの充実
・災害が発生しても、安全で速やかな避難ができ、応急・復旧活動が円滑に進むように、
避難場所の確保や避難路等の整備や、分かりやすく体系的な防災・避難システムの充実
を図る。
●着実な市街地整備、個別施設の改善による安全・安心な市街地の形成
・市街地の防災性の向上は個々の敷地単位から実施し、その結果として市街地全体の防災
環境の向上を図ることが重要である。また、生活環境整備を兼ねた道路、公園等の整備
や、避難や応急活動の拠点となる公共施設の防災性の強化により、災害に強い市街地形
成を図る。
・街づくりや公共施設整備においては、防犯についても配慮するとともに、地域のコミュ
ニティ等による防犯活動を通した安心な街づくりを進める。
●自助・共助・公助による危機管理体制の形成
・地域防災計画との連携により安心・安全な都市構造の形成を図るとともに、市民の防災
知識・意識の向上、自主防災会等を中心とした地域ぐるみの取り組みの強化を進める。
・地域では、日頃からの自主防災意識の向上をこころがけるとともに、自主防災組織の充
実など地域コミュニティの育成を進め、住民主体の防災都市づくりを図る。
68
2.防災都市づくりの基本方針
①機能分散型の都市構造の形成
・長野中心市街地を防災の核としながらも、拠点的な市街地でも防災機能の集積を高め、
地域防災の代替機能を保持するような都市基盤整備を図る。
・善光寺平に沿った主要交通軸(国道18号、19号)と横断交通軸(国道406号、403号)を災害
時の主要ライフラインや防災時の緊急交通の軸として位置づけ、緊急時の輸送や供給処
理の多重性を確保する。
69
②わかりやすく体系的な防災施設・システムの充実
・広域避難場所や避難経路の確保など体系的な防災施設の整備を推進する。
・広幅員道路を延焼遮断帯として位置づけるとともに、防災緑地帯の整備を図る。
・中心市街地等での木造建築物密集地区の不燃化を図るとともに、総合的な防災対策を進
める。
・防災情報の収集・伝達体制の充実を図るため、避難場所への誘導標識、緊急防災情報通
信システムの整備を進めると共に、食料等の備蓄などの防災・避難システムの充実を図
る。
・小中学校の通学単位の地域で、生
活環境整備を兼ねた道路整備を
進める。
・地域における自主防災組織体制を
充実し、コミュニティ主体の防災
都市の形成を図る。
70
③総合的な治山・治水対策の推進
・地滑り、水害等の災害を防止する上で保全を図るべき区域については、森林の保全等と
ともに防災対策施設等の整備、充実を図り、同時に自然環境と景観、防災を総合的にと
らえた国土保全を図る。
・砂防指定地や保安林、地滑り防止地域など治山対策を施すべき地域では、地域の生活環
境や森林等の自然環境と農林業との調和を図る。
・犀川や千曲川に合流する中小河川の改修や雨水の流出そのものを抑制する施設の整備、
土地利用等を図る。
④着実な市街地整備、個別施設の改善による安全・安心な市街地の形成
・災害時の避難や救援活動の拠点となる公共施設や避難経路の整備・充実を図る。
・電線類の地中化や上下水管やガス管などライフラインの機能確保を図る。
・緊急貯水槽や緊急資材倉庫等の防災給水拠点施設の整備など防災体制の強化を図る。
・都市の防災性の向上に資するよう、個々の建築物や構造物の不燃化・耐震化・耐久化を
促進すると共に、道路、公園、河川等の整備により火災の延焼防止性能の向上を図る。
71
3.防災都市づくりの重点方策
●自主防災組織などの地域による防災・防犯
都市の防災性を強固にするためには、防災施設整備等のハードの整備に加えて、災害
時に迅速に避難や応急活動ができるソフト的な対策も重要である。とくに、発災時の迅
速な対応や災害を未然に防止するきめ細かな対応を強化していくには、地域住民自らが
地域を守取り組みが不可欠である。そのために、地域が主体となった自主防災組織の充
実や、地域のコミュニティの育成を図る。
●地域街づくり計画等によるきめ細かな防災街づくりの実施
地域街づくり計画により、防災や防犯に関しても地域の声を取り入れることで、地域
の特性やニーズに合致し、きめ細かな対応が可能となる。
防災は、ハード整備だけでなく、ソフト対策も重要であり、ソフト対策を主とする発
災後の対応を含めた減災方策の検討を地域と共に進めていく。
●ハザードマップ等を活用した風水害への住民意識向上や備えの促進
水防、土砂災害、宅地化による流出増への対策を進めるともに、河川のハザードマッ
プ(H16千曲川犀川ハザードマップ、H18県管理河川ハザードマップ)を活用し、地域住
民の日常的な防災への意識向上や災害発生時の対応強化を図る。
ハザードマップとは、災害の発生
に注意が必要な場所や、防災のた
めの施設などを地図上に記載し
たもので、被害を最小限に止める
ため、日頃から自分の住んでいる
場所や周囲の危険性を知っても
らい、自ら早めに避難行動が起こ
せるよう活用するものである。
72
ハザードマップの例(千曲川・犀川浸水想定区域の一部)
第7章 都市景観整備の方針
1.都市景観整備の基本的な考え方
●自然や歴史・文化などの景観資源を活かした景観づくり
・市街地の街並みの背景となる山並みや千曲川、犀川等長野の地形を形成する骨格的な
自然景観の保全と活用を図る。
・善光寺周辺や、松代地区等の質の高い歴史的景観や文化的施設の集積する文化の要素
を街づくりに活かした、景観を守り育てる。
・山や水辺等の自然と、それらに取り囲まれる市街地が一体となって調和した、長野の
美しい眺望景観の形成を図る。
●市街地における美しく魅力的な景観づくり
・市街地では、街づくりのルール化等による魅力的な景観の形成、街路樹や緑地整備の
推進、建築物及び屋外広告物等の周辺景観との調和、快適な歩行者空間の形成により、
市民の誇りとなる美しい街並みの形成を図る。
・中心市街地等では、魅力的で人を惹きつける良好なまちなかの景観を創出するととも
に、市民や来訪者の様々な活動や行動を支援するため、わかりやすい都市空間づくり
を行う。
●緑豊かな都市景観の創出と保全
・都市に緑の集積を図るため、公共用地のみならず、民有地等の緑化を推進し、緑豊か
な都市景観の創造と保全を図る。
●市民、地域、行政の協働による良好な景観形成の推進
・建築物や公共施設の整備に併せ、市民、地域、行政の協働による景観計画を策定し、
地域特性に配慮した街並みの形成を推進する。
・歴史的な建築物や街並みの保存等について、市民や専門家、NPO等のさまざまな主
体の取り組みを促進する。
73
2.都市景観整備の基本方針
①長野市を形づくる骨格的な自然景観の保全と活用
・市街地の街並み景観の背景となる善光寺の後背地のほか、長野中心市街地の北西、若穂
地域の東部、松代地域の北東部など市街地周辺の山並みや飯綱、戸隠、聖山高原、奥裾
花などの骨格的な自然景観の保全を図る。
・千曲川、犀川の河川敷を親しみやすい水辺環境として整備し、復元・保全を図ることに
より、河川景観の向上を図る。
②歴史と文化の特性を街並みに活かす
・地域の歴史性に配慮し、地域の景観に個性をもたらす歴史的遺産や街並みの保全・再生
を計画的に行う。
また、歴史的な街並みを保全・再生していくだけでなく、史跡を公園緑地等として整備
したり、つなげていくことにより市内に数多く存在する歴史資源を活用し、街全体で歴
史の風格を感じられるような景観づくりを目指す。
・若里周辺や長野運動公園などでは、スポーツ・文化施設等について施設周囲の公園化や
周辺も含めた環境整備を行う。
③美しい眺望景観の誘導
・景観計画により、市街地全体で背景の山並みや河川と調和した美しい眺望景観の形成を
図る。
・道路や市街地の整備においても、山や水辺等の自然の要素を取り入れ、眺望に配慮した
長野らしい美しい景観形成を図る。
・眺望点としては、長野盆地周縁部の山頂・山腹、西部山地、鬼無里、戸隠、大岡の山頂・
山腹・峠があげられる。これらの視点場の整備を図る。
④商業・業務地の景観形成の誘導
・中心市街地では景観計画により、特色ある魅力的な市街地の景観づくりを進める。
・賑わいがあり、地域に調和した商店街や電線等の地中化など、沿道の景観形成を進め、
条例等を活用しながら、建築物や屋外広告物等に対する規制、誘導等を行い、魅力的な
街並み形成を図る。
・街なかでは、歩車共存道路やモール化により快適で歩きやすい歩行者空間の形成を図る。
・郊外の幹線道路等では、屋外広告物等に対する規制や誘導、緑地空間の整備等により、
整った沿道景観の形成を図る。
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⑤落ち着いた住宅地区の景観創造
・新たな住宅開発や住環境整備の機会に併せて、良好な街並み整備のための基盤づくりを
行うと同時に、景観地区や地区計画等を活用しながら、住民が主体となって街並みづく
りのルールを設け、良好な都市景観の形成を図る。
・土地区画整理事業等で新たに都市基盤から整備する際には、道路、公園、広場等の公共
空間を中心に、景観地区や地区計画等を活用しながら、地域の個性を活かした統一化さ
れた街並みの形成を図る。
・ 住民が主体となってそれぞれの地区にふさわしい景観のあり方を話し合い、景観地区、
地区計画、景観協定、緑化協定といったルール化や誘導により、個々の建築物まで含
めた景観形成を図り、住宅市街地全体の魅力を向上させていく。
⑥農山村景観の保全と育成
・河川沿いや山裾の農用地の美しく、なごやかな田園風景を保全し、市街地と融合した景
観づくりを図る。
・棚田など、農山村景観の保全と育成を図る。
【要素毎の整備方針】
基本方針をふまえ、自然的景観要素、歴史的・文化的景観要素、市街地の景観要素
について、以下のとおり設定する。
①自然的景観要素
・水辺の景観整備ゾーン
・山並みの景観保全ゾーン
・河川沿いや山裾の農用地保全ゾーン
②歴史的・文化的景観要素
・歴史的街並みゾーン
・文化ゾーン
③市街地の景観要素
・沿道の景観整備ゾーン
・商業・業務地の景観形成ゾーン
・住宅地の景観形成ゾーン
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都市景観整備方針図
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3.都市景観整備の重点方策
●景観形成を重点的に取り組む地区の指定
善光寺、松代、戸隠等、自然、歴史、文化を活かした観光都市として、また冬季五輪
開催都市として全世界に“ながの”を発信するため、美しく個性ある景観を大切にした
中心市街地や中山間地域の整備・活用を進める。
このため、平成19年策定予定の長野市景観計画等の検討内容にもとづき、景観形成を
重点的に進めるべき地区などを定め、重点的な取り組みを進める。
・善光寺周辺地区で「伝統的建造物群保存地区」に指定することで、歴史的街並みの保
全と整備を図る。
・善光寺周辺及び中央通り沿道の建物高さ制限など(高度地区の指定)の導入検討
・小路や歴史的街並みを活かした街づくりのため、防災性を確保しながら、地区の特性
に応じた美しい街並みの形成を図る。
●市街地の良好な環境と景観づくりのためのルールづくり
市街地では、まちなか居住の進展等により、マンション等の中高層建物の建設も予想
される。中心市街地等では、土地の適切な利用を誘導し、周辺環境との調和や景観に配
慮した建築を促進する。
このため、地域の特性や地域住民の意向を踏まえ、都市計画の高度地区の指定による
規制や、景観地区や地区計画等によるきめ細かなルールづくりによる街並みの誘導に取
り組んでいく。
また、市街地での開発や都市施設の整備の機会を捉えて、良好な景観づくりを進めて
いく。(中央通り沿道、長野駅前等)
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