ようやく春の暖かさが少し感じられるようになった、この - 近江兄弟社学園

ようやく春の暖かさが少し感じられるようになった、この佳き日に、多数
のご来賓の皆様、保護者の皆様をお迎えして、近江兄弟社高等学校第64
回卒業式を挙行できますことは、本校にとりまして大きな喜びであります。
まずはお礼を申し上げます。ありがとうございます。
377名の卒業生の皆さん、卒業おめでとう。今、私の中には皆さんに伝
えたい二つの気持ちがあります。まず一つは、今日出席いただいている来
賓の方、保護者の方、そして教職員全て同じだと思いますが、皆さんのこ
れからの人生に幸多かれと祈る気持ちです。そしてもう一つは、溢れんば
かりの才能と無限の可能性をお持ちの皆さんに十分なことができなかった、
もっとやれることがあったのではないか、という後悔の気持ち、申し訳な
い思いです。
そこで今日は「どうしたら幸福になれるか」について、私の秘伝を思い切
って皆さんに伝え(今まで何度も言ってきたことのようにも思いますが)
、
そのことで十分なことができなかった罪滅ぼしをさせていただきたいと思
います。「どうしたら幸福になれるか?」 どうも幸福はやってくるのをた
だ待つものではないようです。自分の不幸を嘆き、不満を言い、愚痴をこ
ぼし、ため息をついていたのでは幸福にはなれません。ではどうすればよ
いか。方法は3つです。
まず第一は幸福に気づくことです。幸福とは待つものではなく気づくもの
です。私はよく皆さんに「先生はいつもニコニコしていて幸福そうやなあ」
と言われます。確かに自分でもそう思います。私は学校にいるときはいつ
も感謝の気持ちで一杯です。30数年前に近江兄弟社学園に就職して以来、
先輩たちはこんな私を温かく育ててくれました。今も足りない私を支えて
くれる大勢の同僚に囲まれています。そして何より「校長先生!」と親し
く話しかけてくれる多くの生徒たちに元気をもらっています。今朝も何人
かの卒業生諸君に、「式辞できた?」とご心配をいただきました。こんな幸
福な校長はそうはいないと気づいていますから、いつもニコニコは当然な
のです。家に帰っても・・・家庭の話は話の流れを変えてしまいそうなの
で止めます。皆さんも是非ご自分の幸福に、まず気づいてください。その
ためには今日ご出席いただいている保護者の方を思い浮かべるだけで、十
分なのではないでしょうか。
第二は積極的に勇気を持ってチャレンジすることです。やはり幸福という
ものは、ひとりでに向こうからやってくるものではなく、自分の方から歩
き出して迎えに行くものです。一昨日の卒業礼拝で、皆さんの代表5人が
3年間を振りかえってのメッセージをしてくれましたが、共通してチャレ
ンジに満ちた、それぞれに幸福な高校生活を紹介してくれました。学園祭、
クラブ活動、海外研修旅行などで積極的に多くのチャレンジをし、そのな
かで新たな仲間を得たり、人の温かさに気づいたりといった豊かな体験を
話してくれました。成功することや上手くやることが大事なのではありま
せん。単位制の諸君、私のサックスへのチャレンジも決して上手くなかっ
たですが、それでもなかなか良かったでしょう。失敗を恐れずチャレンジ
する、そのこと自体に意味があるのです。失敗したり恥をかいたり、ある
いは回り道をするのもいいものです。最短距離がベストの道のりとは限ら
ないのです。大事なのは「チャレンジ」、まさに本学の創立者の好んだ「Do!」
の精神です。
第三は、これまた本学の学園訓「地の塩・世の光」の精神です。自分の幸
福だけを追い求める生き方の先に、真の幸福が待っているとは、私には思
えません。学園訓の精神、つまり自分のことは少し我慢をしても、友人の
ため、仲間のため、社会のために役立ちたいという生き方の先にこそ真の
幸福はあると思うのです。少しきれい事のように聞こえるかもしれません。
確かに皆さんを待ち受ける社会は、なかなかに厳しい社会です。長い人生
のなかでは、誰でも必ず苦しい時があります。しかしどんなに苦しくても
必ず終わりがあります。それまで自分の頭で精一杯考え、考え抜くことで
す。それでも終わりが見えない苦しみに出会ったら、誰かに助けを求める
こと、相談することです。人を押しのけて、サバイバル競争に勝ち残る生
き方ではなく、人のためにと精一杯生き、人を助け、そして助けられる生
き方そのものが幸福な人生ではないでしょうか。
皆さんの卒業後の進路は様々です。しかし何れ皆さん全員が、社会人とし
て働くことになるでしょう。そうなっても皆さん全員、生涯学ぶことも続
けて欲しいと願っています。いつもポケットに、かばんの角に文庫本を入
れている人になってください。働くことも学ぶことも幸福になるためです。
今まで話してきた幸福になるための秘伝、「幸福に気づく」ためにも、様々
なことに「チャレンジする」ためにも、「誰かのために役立つ」ためにも、
仲間とともに精一杯働くことと学ぶことは不可欠です。私は学生時代「ガ
リ勉」は大嫌いでした。そしてそれを口実に学ぶことをサボってきました。
私の「ガリ勉」に対するイメージは自分のためだけに勉強だけしているヤ
ツというものでした。しかし真の学び「本物学び」は、幸福をつかむため、
誰かの役に立つための学びです。机の上の学びだけではありません。卒業
生諸君、本物の学びに精一杯取り組んでください。
「ガリ勉大いに結構」
懸命に学んでください。
最後にもう一言。今日から皆さんは近江兄弟社高校の同窓生です。一昨日
実施した同窓会の入会式でも感じられたかもしれませんが、本学の同窓会
は格別です。私が何度も言ってきたことですが、
「近江兄弟社高校はみんな
の学校」です。生徒や保護者、同窓生、私たち教職員や地域、みんなの学
校だという意味です。「みんなの学校」とはそのみんなが「私たちの学校」
だと思う学校です。同窓会の皆さんはいつまでも近江兄弟社高校を「私た
ちの学校」と思ってくださっています。ぜひ皆さんもそう思ってください。
皆さんと近江兄弟社高校の絆は一生です。うれしいことがあったとき、行
き詰まったり、立ちすくんだりした時、いや何もなくても遠慮なく、どう
ぞ近江兄弟社高校にお帰りください。重ねて言います。近江兄弟社高校は
いつまでも皆さんの学校です。ぜひ校長室にもお立ち寄りください。大歓
迎します。コーヒーでも飲みながらゆっくり話しましょう。ではお元気で。
皆さんの人生に幸多かれ。
以上、式辞と致します。