高機能車両による冬期交通の安全確保

高機能車両による冬期交通の安全確保
大阪国道事務所
機械課
藤岡 芳征
1.はじめに
姫路河川国道事務所では、道路
維持管理作業や災害対策時におけ
る情報提供の高度化及び道路利用
者に対する情報提供の高度化を図
ることを目的として、平成14年
度に、高機能車両(高機能パトロ
ールカー・高機能標識車)を導入
した。
(図−1参照)
昨年度、冬期の道路における情
報提供手段として本車両を活用す
る試みとして、国道29号線に高
機能標識車を導入し、気象や路面
状況などの情報提供を行い、その
導入効果について検証を行った。
図−1 高機能車両の活用イメージ
2.高機能標識車の概要
標識車は、
道路維持作業や道路工事及び災害時に、
道路の状況に即した情報を一般ドライバーに提供し、
安全な交通を確保するための車両である。今回導入した高機能標識車は、従来の標識車に対して、フル
カラーの表示機能を付加し、画像情報についても提供できる標識車である。また、高機能パトロールカ
ーに搭載された車載カメラや自律カメラによって収集した画像情報等を、光ファイバーや無線 LAN を使
って転送し、リアルタイムなフルカラー画像を表示する機能を有している。
今回は、このような高機能車両の特徴を生かし、道路利用者に対する情報提供サービスの向上、安全性
の向上を図るとともに、建設機械を活用した新たな道路情報の提供手法について、その実用性と効果の
検証を行った。
表−1 従来型標識車との比較
従来型標識車
高機能標識車
表示色
3色(赤、黄緑、橙(混合色)
)
フルカラー
表示面サイズ(幅×高さ)
1,440mm×960mm
1,760mm×1,440mm
表示文字数
6文字×4行
11 文字×9行
輝度
2,200cd/m2
5,000cd/m2
最小文字サイズ
240mm×240mm
160mm×160mm
解像度
96×64
176×144
表示パターン
多段表示、スクロール表示、ビットマップ図表
示
左記項目に加え、スケーラブル文字表示、フルカラー
動画表示
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3.現地導入概要
国道29号線は、
皆木から戸倉峠までの19.8km が積雪寒冷特別地域区間に指定される豪雪地域であり、
冬期の戸倉峠では除雪作業が欠かせない区間となっている(図−2)
。
今回は戸倉峠(標高 700m)や日ノ原地先の道路積雪状況を自律カメラ・デジタルカメラによって撮影
し、峠手前の標高が低く道路に積雪が無い皆木チェーン着脱場(標高 285m)に設置した高機能標識車で、
この先の道路積雪状況としてフルカラーの画像と文字を組み合わせて表示し、運転における注意やチェー
ン装着を促すことで事故の防止を図った。また、導入効果については、皆木チェーン着脱場から約4km
先にある道の駅はがにおいて、ドライバーにアンケート・聞き取り調査を行うことで確認した。
標高
鳥取
戸倉峠 標高 700m
700m
600m
戸倉雪寒基地 標高 590m
500m
日ノ原地先
400m
道の駅はが 標高 320m
300m
皆木雪寒基地 標高 285m
200m
10km
100m
山崎出張所 標高 100m
0m
図−2 国道29号線の概要
現地導入日時
平成16年1月25日 9:45∼18:00
2月 5日 9:20∼15:00
2月 6日14:00∼16:00
2月 7日 7:45∼16:00
2月26日19:00∼22:00
2月27日 7:00∼12:00
表示場所
表示画像
皆木チェーン着脱場・道の駅はが
日ノ原地先に設置した自律カメラによる映像
戸倉峠で撮影したカメラ画像
文字表示
スクロール表示 「降雪あり スリップ注意」
交互表示
「凍結の恐れあり 走行注意」
図−3 高機能標識車による情報提供
図−4 自律カメラ、無線アクセスポイントの設置状況
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4.導入効果の検証
高機能車両の導入効果について、現地導入した2月5日・7日
に道の駅はがにおいてアンケート・聞き取り調査を行った。
アンケートの
「高機能標識車で表示した内容を認識したかどう
か?」の質問については、52人中48人のドライバーが認識
していた。これは、文字と映像の両方を表示することによって、
インパクトのある情報提供ができたと考えられ、固定型の情報
板による文字情報の提供手段に比べ、注意喚
起に役立つことが確認できた。このことは、
安全運転に注意と思った人
表示を認識した48人の内28人のドライ
チェーンが必要と思った人3
バーから高機能標識車を見た印象として、
路面が滑りやすいと思った人2
「安全運転に注意と思った」
、
「チェーンが必
ハンドル操作に注意と思った人1
4
0
要だと思った」
、
「路面が滑りやすいと思っ
た」等の回答が得られていることからも裏付
5
10
15 人
図−5 高機能標識車を見た印象
けられる(図−5)
。
これらのことから、高機能標識車を活用し、画像+文字の情報を提供することによって、ドライバー
の安全運転に対する意識を向上させることや、チェーン装着意識を持ってもらうことに有効であること
が確認でき、情報提供手法としての一手段として効果が高いことが検証された。
また、聞き取り調査では、ドライバーが今後提供されたいと望んでいる情報について、その内容や表示
方法については以下のような意見が寄せられた。
表−2 今後提供されたいと望んでいる情報
・先の道路状況をより詳細に
・凍結、積雪の状況、それらの有無
・より詳細な状況(何 km 先の積雪状況等)
期待されている
・路面の温度(凍結しているかどうかの判断材料として)
情報の内容
・チェーン装着場所をより詳しくしてほしい
・あと何 km で必要かなど、より詳細なチェーンの必要性
・工事関連情報(どこで片側通行となっているか等)
・場所に適応した状況(あまり遠いところの情報は意味がない)
これらの意見から今後、提供すべき情報や提供方法のあり方としては、
①どこからチェーンが必要なのか、また凍結・積雪の状況等を、より詳細に場所、距離等を明示する。
②降雪や凍結状況について、刻々と変化するそれらの範囲に適応した場所で情報を提供する。
③路面温度など具体的な数値情報についても提供する。
ことが求められていると考えられる。
これについては、降雪や凍結範囲の状況変化に応じて表示場所が移動でき、またリアルタイムな映像
に適切な文字を組み合わせることのできる高機能車両で対応可能であり、情報提供手段として高い有効
性があると考えられる。
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5.今後の運用について
今回導入した戸倉峠は、積雪や凍結する範囲が、距離にして10∼50km、標高差としては、100
∼600mに渡っており、降雪状況や気温の変化に富んだ現場である。今回の現場導入により、高機能標
識車が情報提供手段として有効であることが確認できたが、聞き取り調査から刻々と変化するそれらの詳
細な情報を適切な箇所で提供することが求められていることが分かった。このことを踏まえ、今後は、気
象状況や道路状況に応じて高機能車両を適切な位置に移動させ、適切な情報をより的確に提供し、サービ
スレベルの向上を図っていくことを計画している。
①除雪作業状況の情報提供
1.5km 先
除雪作業中
この先1km 先
チェーン必要
③チェーンが必要な箇所
に関する情報の提供
3.5km 先
積雪あり
4.0km 先
凍結注意 −3℃
④積雪箇所の具体的位置
に関する情報の提供
②路面凍結状況の情報提供
1.3km 先
路面−3℃
1.3km 先
チェーン必要
具体的な距離・位置の表示
具体的な数値情報の提供
図−6 今後の運用イメージ
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