◇狛江市;待機児童問題は「時間勝負」 会員 内山惠一 ●「あきらめるな!狛江の地域産業」シリーズ、「チョット寄り道」の 3 回目です(ご容赦) ・杉並区「子育てママ」の反乱(抗議)、横浜市の待機児童「ゼロ」宣言(5/20)、 政府の「2 年間 20 万人」待機児童解消緊急プロジェクト、東京スマート保育など、 ここにきて、にわかに「待機児童問題」に焦点が当ってきました。 ・女性の多様な働き方の推進と少子化の歯止め策、ひいては狛江の活性化に 繋がる課題と考え、「狛江の待機児童問題」の行く末を考察してみました。 ●狛江市の待機児童を考える上で重要な事柄 1.ポイント; ・待機児童を容認する事は、「福祉の切捨て」と見なすべき ・この問題解決は、「時間との勝負」である ・少子化対策として観ると、「手遅れ気味」であること ・女性の多様な働き方を支える意味では、「今からでも遅くない」 ・今後20年間近く、保育所入所希望児童数は「増加」する ・しかし、以降は減少に転じ、保育所の「統廃合」が視野に入る 2.上記推論の根拠(予測); ①母親人数は減少し、保育対象児童人数も減少する、が、 ②一方、子育母親の就業率(含希望)は上昇、やがて「75%」近くに到達 ⇒ 保育所入所希望率が年率1%で増加(現 30%→飽和値 50%まで) ⇒ 2030 年ごろまで、保育所入所希望「児童総数」は増加する 3.推奨する実行策; ・横浜市や我孫子市など、実績ある「施策」を大至急で調査し取り入れる ・政府の緊急プロジェクト予算や、東京都の新制度予算を活用する ・30 年後の統廃合を考慮し、業態変更等が容易な「民営・企業」を活用する ●記載順(目次) 以下、次の順番で考察を進めます。 1.待機児童の他市(区)比較 ・・狛江の頑張り度(実績)は? 2.考慮すべき要因まとめ ・・本稿で取り上げる要因 3.年齢別出生率と人口動態から考える 4.母親(保育所を必要とする)の就業率は何処まで上がるか? 5.入所希望率(保育所入所希望児童数/該当年齢児童総人数)の推移予測 6.今後の「保育所入所希望児童数」を予測してみる 7.実行すべきこと 8.横浜市の待機児童ゼロ施策ポイント ・・狛江で実行すべきことは何か! ・・注目施策と課題は? 12 1.待機児童の現状 (1)他市(区)比較 ・・人口等は「2013.04.01」現在値 (出典 各自自治体ホームページ) 人口総数 世帯総数 H17~H22 人口増加 待機児童数(人) 備考 H25 H25 人 率 % H22 H23 H24 H25 名古屋市 2,244,365 1,036,815 57,466 +2.66 1,032 全国最多待機児童数 横浜市 3,693,788 1,609,747 101,653 +2.91 1,552 971 179 0 (23.8%)H24 狛江市 77,209 38,621 432 +0.55 71 73 79 (30.0%)H24 ※1 世田谷区 862,840 449,771 35,973 +4.28 588 786 都内最多待機児童数 我孫子市 133,923 55,959 6,783 +6.23 0 杉並区 541,253 300,905 20,982 +3.97 52 (31.4%)H24 ※2 調布市 223,220 110,231 7,474 +3.46 225 180 町田市 425,762 185,300 24,446 +6.66 147 (27.4%)H24 ※H24;狛江の待機児童数は 79 人で、類団7市の待機児童平均は 41 人よりかなり多い。 ※(**%);「入所申込数/就学前児童数」を示す。 ※「H17~H22 人口増加数」は、自然増と言うよりも、転入によるものが殆ど。 ※1;H25 年度の狛江市では、グランド・メゾンにより一時的に「+1.95」人口増(転入)予定。 ※2;2013 年 2 月中旬の1次選考で 3000 名中、1500 名が入園内定に至らず大紛糾となった。 ・待機児童問題は3大都市圏で顕著な問題であり、地方都市では逆に定員割れが多い。 施策差により、大都市圏内でも近隣自治体間の差が極めて大きい。 (横浜市 vs 世田谷区) (2)狛江市の待機児童推移 出典C 狛江市 保育所;入所待機児童数 狛江市 保育所;入所申込児童数 0歳 1歳 2歳 3歳 0歳 4歳以上 1歳 2歳 3歳 4歳以上 50 450 400 待 40 機 児 30 童 数 20 350 300 250 ( 200 ( 申 込 児 童 数 150 ) 人 ) 人 100 10 50 0 0 2008 2009 2010 2011 2012 2008 西暦 2009 2010 2011 2012 西暦 ・保育サービス量; 「3歳以上」は略満たしているが、「0~2歳」保育絶対量不足。 2.考慮すべき要因まとめ ・待機児童問題は、将来動向を見据えて検討すべきです。 (1)狛江の待機児童動向を検討する上で考慮すべき要因・・詳細は順次考察 考慮すべき要因 <封鎖人口で考察> ・保育年齢女性人口 ・保育対象児童総数 ・女性の労働力率 ・保育所入所希望児童数 ・入所希望数/児童総数 <流入・流出;補正> ・H24;転入-転出= 今後の傾向(~2040 年) 減少(-) 減少(-) 「66~70%」→「75%;北米並み」 ~2030;増加(+)→以降;減少(-) 2013;30% → 2030;50% 4,850-4,699=151(女性;131) 13 備 考 封鎖人口=転入・転出が無いと仮定 20 歳後半~40 歳前半(全国平均値) 2030 年までは増加、以降は減少 本稿では考慮せず(151/77000)=0.2% (2)参考; 「町田市保育サービス3ヵ年計画(2012 年度~2014 年度)」より抜粋 ・2022 年までの見通しを持ち、計画を作成・発表している。 出典E 年度 就学前児童人口 申込み児童数 入所希望率 保育サービス定員 保育サービス提供率 待機児童数 2012 21,532 6,037 28.0 % 5,890 27.4 % 147 2013 21,049 6,150 29.2 % 6,140 29.2 % 10 2014 20,343 6,184 30.4 % 6,480 31.9 % ▲296 2015 19,543 6,172 31.6 % 6,734 34.5 % ▲562 2018 17,349 6,094 35.1 % 6,764 39.0 % ▲670 2022 15,983 6,369 39.9 % 6,794 42.5 % ▲425 ※狛江では「将来見通し値」記述が無い、敢えて記載していないのではないか?との疑問。 計画作成の根拠は明確にすべきと考える。 (結果として間違っていたとしても、である) 3.年齢別出生率と人口動態から考える (1)保育を必要とする母親年齢層とは? 出典K ・左図、2010 年のデータから、 出生率ピーク(30 歳)の「1/2」 出生率である「24 歳~36 歳」 が出産年齢範囲とし、 「5 歳児」までの保育が必要と して、 「24 歳~41(36+5)歳」の女性 が保育を必要とする年齢層 と仮定した。 (2)日本の人口動態 出典K ※2013 年ジャストのデータが入手できないため、「2010 年」と「2015 年」で考察する。 ・保育を必要とする平均的母親 (24 歳~41 歳)は、左図の 「2本の横棒」範囲内です。 ・2010 年→2015 年推移を観ると、 団塊世代の子供達(上から第2 番目の人口ピーク)が、保育を 必要とする年齢から外れつつ あることが判ります。 14 あると言う事。 ※少子化を食い止めるには、 この年齢層の子育て時代、 つまり「2005 年(2010 年-5 年)」 ごろまでに、 待機児童問題を解決しておく ことが必須であったのですが、 真に残念です。 手遅れ状態ではありますが、 手をこまねいてはいられま せん。 (3)狛江の人口動態(保育母親と児童)実績 出典B ・保育を必要とする母親(24~41 歳) 数と、児童(0~5 歳)数は、減り 続けてきました。 狛江市; 母親(24~41歳)と児童(0~5歳) 総人数推移 女性 24~41歳 11,400 3,750 11,200 3,700 11,000 3,650 児 童 3,600 総 3,550 人 3,500 数 10,800 ( 10,600 ( 対 象 女 性 人 数 児童総人数 0~5歳 10,400 3,450 10,000 3,350 9,800 3,300 2005 2006 2007 2008 2009 西 暦 2010 2011 2012 人 ) 3,400 ) 人 10,200 ・グランドメゾン等の大規模マンシ ョンにより、一時的に増加する ことはあっても、中・長期的な 傾向であることは変わらない、と 判断します。 4.母親(保育所を必要とする)の就業率は何処まで上がるか? ・人口動態と共に、入所希望児童数に影響を及ぼすと思われる「母親(24~41 歳)」の 就業率は、今後どのようになるでしょうか? まず、日本の現状を他国比較で観ます。 (1)年齢階級別女性労働力率 出典H アメリカ ※日本では 20 歳代後半から 30 歳代にかけての比率が 落ち込む(M 字カーブ)が、 顕著です。 (結婚・子育て退職など) 日本 しかし、やがてはアメリカ 並みの「75%」に近づいて いくと予測します。 ※労働力率=(就業者数+就業希望者数)/(当該年齢層人口) 15 (2)入所希望率の動向 出典J ・「(0~5 歳児)保育サービス受給率」と(「24~41 歳女性)労働力率」の関係を 直接示すデータは見出せませんでしたが、近いデータとして、下記のデータを 参照します。 ○「保育サービスを受けている 0~2 歳児の割合」と「30~35 歳女性の労働力率」 ※[予測1]上図の傾向を信頼するならば、労働力率が「65%→75%」にアップすれば、 サービス受給率は「最大 20%」アップする可能性があること、です。 ※保育サービス希望がアップして行くことは間違いないと判断し、以下の議論では、 狛江の過去の推移(増加値;年率)と、上記「予測1」及び他自治体の現状と予測値 から、狛江での最終到達値を推定します。(以下、参照) 5.入所希望率(保育所入所希望児童数/該当年齢児童総人数;%)の推移 出典A~D ※左図解説; 狛江;入所申込児童(0~5歳)人数推移 と 申込み率曲線(破線) ・「●」が、狛江の入所申込み児童 20% 25% 30% 35% 40% 入所申込児童人数 人数実績であり、「児童総人数」 1,500 が減少しているにも係らず、 1,400 1,300 徐々に増加し続けている。 入 所 1,200 ・ 「破線%」は、入所希望児童数が 申 1,100 込 1,000 一定割合の場合の人数を表す。 人 900 数 800 ※おおよそ、2007 年~2012 年の 700 5 年間で「入所希望率」は、 600 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 約 5%上昇している。 西 暦 (25%ライン→39%ラインへ) ※[予測2]今後、入所希望率は「2012 年の 30%」から、 「年率 1%」で上昇する。 16 ( 6.今後の「保育所入所希望児童数」を予測してみる 出典A~D、K ・シナリオ; 前頁の「予測1」と「予測2」から、保育所入所希望率は、 今後「年率 1%」で上昇後、「50%(=30%+20%)」でストップと仮定。 ○上記シナリオによる、今後の保育所入所希望児童数を予測した(下図) 狛江市; 保育所 入所申込児童数の予測(推移) ・児童総数の減少にも係らず、 30% 35% 40% 45% 50% 入所申込児童数 2030 年ごろまでは入所希望児童は 1,900 増加してゆく。(特に 0~2 歳児) 1,800 1,700 入 ・2030 年以降は徐々に減少し、 所 1,600 1,500 申 2040 年には 2010 年ごろの水準 込 1,400 1,300 児 に戻る。 1,200 童 1,100 数 ※[予測 3]; 1,000 900 人 800 ・2030 年ごろまでは、保育所の 700 増設が必要であるが、以降数年 600 500 で「統廃合」に直面することになる。 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 ) 西 暦 7.実行すべきこと・・狛江で実行すべきことは何か! 時間の制約 ;「待機児童ゼロ」を目指して行動する・・即刻 費用の制約 ;政府と東京都の「新予算」活用 ・・今がチャンス 出口戦略 ;「30年先の統廃合」を念頭に置く ・・民間・企業を活用 主要3項目 「時間の制約」 対応 「費用の制約」 対応 「出口戦略」 対応 「調査研究・導入・実施」すべき 備考 ①横浜市;3 年で待機児童ゼロ宣言を実行した ・規模の小さな狛江なら、より ②我孫子市;市是として待機児童ゼロを維持続行 短時間で実行可能なはず ③政府;待機児童解消加速化プラン・・まもなく ・タイミングを捉え、逃すな! (H25 緊急プロジェクト、H27~H29 新制度) 知恵を使って費用捻出 ④東京都; 東京スマート保育・・決定 ③は市町村の手上げ方式だ (H25・H26 年度、0~2 歳児;予算 333 億円) ④予算も決まった! ⑤「市立」や「社会福祉法人」は最小限に、 ・ 「スピード・業態変更・統廃合」 ⑥「企業立(株式・有限会社)法人」も参加 を念頭に置いた構成(配分) ※「横浜市」と「我孫子市」は事例研究を即刻行うべき(ほぼ近隣)自治体である。 本稿では、重要参考施策として次頁に「横浜市」施策のポイントをまとめた。 <出典> A.狛江市保育計画(平成23年度~平成26年度)平成22年10月 狛江市 B.統計こまえ 平成23年度版 平成24年4月発行 狛江市 ;0~5歳児総数 C.保育所入所待機児童数について 平成24年5月8日 庁議資料 狛江市 D.狛江市 後期基本計画(平成25年度~平成31年度)平成25年3月 狛江市 E.町田市保育サービス3ヵ年計画<保育施設緊急整備計画>(2012 年度~2014 年度) ~~待機児童解消に向けて~~ 2011年 町田市 F.国勢調査東京都区市町村町丁別報告 東京都の統計 ;0~5歳児総数 G.平成22年国勢調査 e-stat 政府統計ポータルサイト H.総務省統計局「労働力調査(長期時系列)」 I.住民基本台帳人口移動報告 H24(政府統計の総合窓口 e-Stat) J.北欧にみる成長補完型セーフティーネット ―労働市場の柔軟性を高める社会保障政策― 2010 年 7 月 日本銀行調査統計局 K.国立社会保障・人口問題研究所 17 8.横浜市の待機児童ゼロ施策ポイント ・・注目施策と課題は? ※是非、一読をお勧めしたい(待機児童ゼロを目指して) ・横浜市の待機児童ゼロ施策「効果と課題」を理解するためには、以下の2資料が必読です。 (狛江市にとっても、非常に参考になる内容です。何れもネット経由入手可) ○「規制改革会議 説明資料」 平成25年3月21日 横浜市 こども青少年局 ○ 市在住子育て世代を対象にした 横浜市の待機児童ゼロ報道に関するアンケート[速報版] 「待機児童ゼロ」報道に疑問の声 一方で、預け先の増加は実感 2013年4月26日 NPO 法人シャーロックホームズ (1)アンケート[速報版]抜粋 項目 「待機児童ゼロ施策」評価 [不満・やや不満]の 理由ワースト3 (n=81) 「待機児童ゼロについて」 感想ベスト3 (n=306) アンケート内容 [満足・ほぼ満足]=44.8% [不満・やや不満]=40.1% ①保育所が遠い ・・23人 ②選考基準に疑問 ・・17人 ③認可以外の費用が高い ・・11人 ①「ゼロ」報道に疑問 ・・130人 ②保育所が増えた ・・90人 ③解消していると実感 ・・76人 備考(解説) ・ほぼ拮抗 ①保育所の使い勝手の悪さに不満 ②希望保育所に入れない不満 ③経済的負担が均一でない不満 ①使い勝手が悪ければ意味なし ②量は確かに増えた ③選択肢は増えた ※保育所の「立地」は重要で、自宅や通勤経路から遠ければ「使い勝手が悪く」不満の種。 (2)横浜市の施策から「特筆すべき内容」を抽出 出発点;横浜市の本音(「課題等」や文脈でサラッと述べている) ○もう、市有地で保育所に適した「土地はありません」 ○土地を新たに買う「お金もありません」 ○現状の市立と社会福祉法人だけでは「力不足です」 施策;民間保育所整備マッチング事業の実施 ○土地等所有者と保育所整備・運営法人の「出会いの場;マッチング事業」実施 ○掘り起こした物件を、関心のある全国の社会福祉法人・企業等へ案内 ○23 年度整備分では「土地のみ」を募集案件としたが、 24 年度整備分からは「新築の建物付土地」、「新築のビル床の一部」も加え、 企業立(株式会社立及び有限会社立)法人の参加を可能とした。 ※特記;市からハウスメーカー等への営業活動 □役割分担; [市]・・物件及び事業者の「公募・選考・振分け」 [オーナー、保育事業者]・・「条件交渉・契約先決定・契約締結」 □市の補助; 法人に対する整備費補助(=既存制度)以外の市費は出さない 成果; 募集対象物件種別 応募物件数 ・うち、採用物件数 ・・うち、整備物件数 (定員数) 24 年度開所済 土地のみ 78 11 7 (525 人) 25 年度開所予定 ①土地 ②建物(新築)付き土地 ③ビル床(新築)の一部 60;①=16、②=40、③=6 16;①=2、②=10、③=4 11; ①=2、②=5、③=4 (780 人) <留意・反省点> ・事務量と精神的負担が 想定以上に膨らんだ。 ・本市と市外(特に遠方) 法人との間に感覚の乖離 が多々発生した。 工夫; 基本認識=「多数」の応募が、高い「質」につながる ①緩やかな条件設定 ②「建物付き土地」物件を対象に加える [物件募集] ③ハウスメーカーへ働きかけ [法人募集] ①全国の運営事業体への案内 ②「候補地案内ツアー」の実施 以 18 上
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