ヨーロッパの社会

2014/04/07
ヨーロッパの社会
身分社会と市民社会
身分とは何か?
•  身分…法や慣習によって、生まれつき属すべき序列と全ての
生活領域の行為が定められる。
•  例、貴族…世襲的土地所有を経済基盤に労働から解放され、卓越した
軍事的役割と高貴な血統による門閥形成を通じ国家の政治的指導の
面で大きな特権をもつ身分
•  身分の特性…身分間の移動が少なく、同一身分内の閉鎖的
な関係が世代を超えて持続され、各々の身分に固有な生活
様式が形成される。
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身分制社会とは何か?
•  「法の下の平等」原則に則る市民社会以前の社会。ヨーロッパ
の場合、12〜18世紀末にあてはまる。各々の身分は独自の
権利と名誉が認められている、法制上は「特権のシステム」。
•  10世紀〜ヨーロッパにおける住民の定住化→職能による身分分化と
各々の権利の承認…聖職者・騎士・農民・市民)
•  経済上は「経済外強制のシステム」が特徴。農村の領主制や
都市の徒弟制のように、経済生産の仕組みは人格的な支配・
隷属関係に基づく。
身分制社会における秩序
•  公権力の私的な領有(「権力の家産的把握」)に基づく社会秩
序。領主たる貴族身分や市民身分における上層市民などは、
家産的な裁判権を行使して秩序を維持。
•  公権力の私的な領有は、貴族・聖職者・市民にとっては「自
由」の権利として公的に認識。(中間的権力の存在が君主政
体を維持。)
•  「自由」の権利を持つ人は、各々の家支配(家の首長(家父
長)は、家の構成員を守る)者であり、公権利の私的行使は家
支配に基づく。
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身分制社会から市民社会への転換
•  「自由」の権利(公権力の私的領有)を認められた者同士の横
の連帯として築かれる身分
•  市民革命における身分的特権やその基盤にある各々の共同
体における慣習の破砕
•  中央集権的な平準的な国家制度の導入→公権力の私的領有
を可能にした個々の共同体の退化→身分制の衰退
市民とは何か?
•  都市の領域内において自主的・自律的に政治判断を行い、政
治運営をしてきた古代〜中世の都市民(…政治的共同体を構
成する公民)
•  これら自律的市民のイメージをもとにつくられた近代以降の市
民…財産と教養を基に自己利益の実現について合理的選択
を行い、その目的のために自主的に政治参加と政治判断を行
う者
•  18世紀末〜20世紀…教養市民による市民社会の登場
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市民社会とは何か?
•  合理的判断を行い得る自律的な個々の市民により構成される社会
•  ただし18世紀末以降は、自由かつ平等な私的人格の私法的秩序と
して理解される場合もあり→脱政治化した市民社会概念
•  20世紀以降の普通選挙制の展開による大衆の政治参加→合理的
判断ができる自律的市民による市民社会の危機 (eg. ファシズム)
•  自律的個人の自主的政治行動が民主政治の前提となるため、理念
としての自主・自律的市民を主張して、大衆を包摂する体制の構築
(eg. 福祉国家)
ヨーロッパの文化
ラテン・ゲルマン・スラヴ
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○○人という幻想
•  創られた「ゲルマン人」、「ラテン人」、「スラヴ人」イメージ
•  19世紀以降の国際的な政治状況のなかで「くくられた」概念
•  Cf. 19世紀後半氾ゲルマン主義VS氾スラヴ主義→政治的必要から作り出さ
れた概念
•  「くくり」の基準としての言語・習慣・文化の均質性
•  Cf. 19世紀に発達した言語学や民俗学、歴史学の応用→学問的必要から作
り出された概念
•  実際には同族意識に基づく民族共同体は歴史的に存在しない
•  実際に存在するのは同系統の言語を話す複数の部族集団
•  Cf. ネイションとエトニ(エトノス)の区分
ラテンとは何か?
•  (狭義)古代イタリアのラティウム地方に住み、ラテン語系の言語を
話した部族
•  古代ローマの歴史に伴う意味の拡張→都市国家ローマと同盟を結
ぶラティウム地方の都市→ラテン人の都市にローマ市民権を付与
→ラテン植民市の市民としての「ラテン人」
•  ローマ帝国衰亡後のラテンに対する否定的イメージ…20世紀以降
の「ラテン・ラヴァー」(情熱)やファシスト(剛健)によってつくられたラ
テン・イメージ
•  (広義)ローマ帝国で話されたラテン語から派生したロマンス諸語を
話す人々…イタリア・フランス・スペイン・ポルトガル・ルーマニア
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ゲルマンとは何か?
•  【狭義】ローマ帝国北辺のゲルマニア地方に住む非ケルト系の諸部族 •  Cf. ポセイドニオスの記述(B.C.1C)…キンブリ・テウトニ族のガリア侵攻
•  Cf. カエサル『ガリア戦記』、タキトゥス『ゲルマ−ニア』
•  ライン川〜ドナウ川を結ぶ線からの諸部族の西進・南進(B.C.2C〜)
•  Cf. 中世ヨーロッパにおける封建社会の原風景としての古ゲルマン社会観…ゲンス、
キウィタス、民会、従士制(人的結合を軸とする合議制の社会)
•  ルネサンス以降、「ラテン」に対して明示的に対置させられ強化された「ゲ
ルマン」のイメージ
•  Cf. ローマ・カトリックVSルター派、ローマ法(脱倫理的・個人的)VSゲルマン法(倫理
的・社会的)
•  Cf. ジッペ(氏族に基づく法団体)、ムント(家父長を頂点とする人支配)、ゲヴェーレ
(物支配)、フェーデ(自力救済)など
•  【広義】他のインド・ヨーロッパ諸語に対してゲルマン諸語共通の特徴を
もった言語を話し、古くからのゲルマン諸部族の慣習を引き継ぐと想定さ
れている人々
スラヴとは何か?
•  【狭義】エルベ川からドニエプル川に住んでいた諸部族
•  Cf. ヘロドトス…ドニエプル川沿いに住むネウロイ人
•  Cf. タキトゥス…ペウキニ族とフェンニ族との間に住むウェネディ族
•  スラヴ諸部族の拡散と変質…ゲルマン諸部族の圧迫→スラヴ諸部
族の西進・南進(2〜7世紀)→氏族共同体と氏族神信仰から部族
統合と国家宗教へ(キリスト教国家化)
•  東・西・南における部族・言語の分裂(中世)→ナショナル・ロマン主
義による言語と民族の同一性への意識(近代) Cf. スラヴ派(東方
正教会と共同体的生活原理)
•  【広義】ヨーロッパ東部に居住してスラヴ諸語の近親性によって括ら
れる人々
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