http://www.amille.jp/ 2400 メッセージ 古江 博 (フルエ ヒロシ) 株式会社メッセージ社長 アミーユ事業の好調維持により、営業収入・利益とも 過去最高を更新 ◆2011 年 3 月期決算の概要 当期は、営業収入、利益とも過去最高を更新した。期初の計画値も上回り、営業収入 352 億 85 百万円(前期比 110.5%)、営業利益 56 億 52 百万円(同 121.9%)、経常利益 59 億 52 百万円(同 126.1%)、当期純利益 29 億 82 百万円(同 112.2%)となった。 新規開設は、有料老人ホームの「アミーユ」が 4 施設、高齢者専用賃貸住宅(高専賃)の「C アミーユ」が 2 施設 の合計 6 施設であった。アミーユ事業では、引き続き高い入居率を維持することができた。また、C アミーユ事業も、 入居率が大幅に改善し、増収増益となり、黒字化を果たした。 このたびの東日本大震災では、仙台地区の 2 施設(直営 1、FC1)で、人的被害はなかったものの、建物、設備、 備品が損壊したため、グループから約 100 名の支援部隊を派遣した。このときの支援費用約 17 百万円と、関東 2 施設の補修費用 6 百万円、合計 23 百万円を特別損失として計上している。また、被災地へのボランティア活動と して、気仙沼市の福祉避難所に、運営コーディネーターおよび介護スタッフを 2 カ月間派遣した。 営業収入は、アミーユ、C アミーユ、シーケーフーヅ(給食事業)のすべての事業で、順調に増加した。営業利益 では、C アミーユが 10 億円強の増益となったが、アミーユは約 2 億円の減益となった。 アミーユの減益は予算段階から見込まれており、一つの要因は、新規開設費用である。前期の開設は 3 施設だ ったが、当期は 4 施設となり、本年 4 月開設 3 施設の前倒し経費も発生した。加えて、当期の 1 施設は、自社で建 設した物件のため、コストがかさんだ。 総資産は 387 億円(前期末 356 億円)と増加した。純資産は 191 億円に積み上がっている。キャッシュフローに ついては、営業活動によるキャッシュフローが 49 億 40 百万円のプラス、投資活動が 11 億 10 百万円のマイナス、 財務活動が 14 億 80 百万円のマイナスとなった。その結果、現金および現金同等物は、101 億 90 百万円となった。 設備投資の推移を見ると、2009 年 3 月期は 66 億 80 百万円、2010 年 3 月期は 71 億 10 百万円で、この大半が C アミーユの 100 室タイプの建設コストだった。C アミーユは、現在、50 室タイプにダウンサイジングして展開してお り、そのため、当期の設備投資は 18 億 40 百万円にとどまった。減価償却費は、12 億 40 百万円となった。 セグメント別に業績を見ると、セグメント利益は、アミーユ事業が 45 億 93 百万円、C アミーユ事業が 1 億 74 百 万円の赤字(本社経費配賦前利益は 32 百万円の黒字)、給食事業が 8 億 63 百万円、その他が 3 億 48 百万円と なった。 アミーユ事業の入居率は、アミーユが 96.96%(既存施設 97.57%)、子会社・積和サポートシステムが展開する 「S アミーユ」が 96.80%となった。C アミーユは、82.80%(同 86.30%)であり、入居者数は 1,559 名で、介護度では、 自立が 26%、要支援が 17%、要介護 1・2 が 34%、要介護 3・4・5 が 23%である。 アミーユネットワークは、3 月末時点で、全国 178 カ所となり、介護付き有料老人ホーム(アミーユ、アミーユレジ デンス、S アミーユ)、介護付き高齢者専用賃貸住宅(C アミーユ)の 2 形態で、本年 2 月に 1 万室を突破した。 配当政策としては、配当性向 30%を目安としている。当期は 4,400 円(配当性向 29.6%)の配当を行いたい。 本著作物の著作権は、公益社団法人 日本証券アナリスト協会®に属します。 ◆中長期的な取り組み 当社は、「障害を持った高齢者に対して、良質な住まいを提供し、生活を支える」ことを使命としている。ブランド コンセプトは三つある。一つは、「一般の会社員が老後を安心して過ごせる環境づくり」である。一時入居金ゼロ、 年金の受給範囲内での生活、つまり、入居がしやすく、退去しやすい環境づくりである。二つ目は、「一人一人の 生活スタイル、要望、媒体に応じた援助」を行うことである。オーダーメイドケアの実施で、施設本位の介護から入 居者本位の介護を目指す。三つ目が、「自宅における普通の生活の実現」(ノーマライゼイション)である。自立度 の維持・向上する環境を整備する。そのため、必要以上の援助は行わず、社会とのかかわりを保つ。このような経 営理念のもと、地域居住(Aging in Place)の実現を目指す。 2012 年 3 月期の新規開設は、アミーユ 19 施設、C アミーユ 11 施設を予定しているが、その後はアミーユ 10 施 設、C アミーユ 20~30 施設と、C アミーユに比重を置いた展開になる。 当社の高専賃を中核とした地域居住のイメージは、何棟かの C アミーユが立地するドミナントエリアにメッセージ センターを開設し、アミーユはもちろん、特養やグループホーム、医療機関との連携のもと、在宅者も対象にして、 訪問介護や給食事業などの生活支援サービスを展開することである。 その実現の段階をフェーズ 4 に置くと、フェーズ 1 は、前年度までにほぼ達成した。100~140 室の大型の C アミ ーユを、首都圏、地方都市において、自社所有もしくは定期借地で展開し、運営ノウハウの蓄積、介護技術の開 発、経営効率の検証を行った。この段階で、C アミーユは 19 施設 1,808 室、月額利用料 20 万円となった。 現在は、フェーズ 2 に入ったところである。小型 50 室タイプを推進、運営形態は、業務提携や FC などの多様化 を進めていく。コストダウンにより、月額利用料 15 万円を実現し、メッセージエリアセンターの開設を目指す。 本年 3 月 1 日オープンの C アミーユ瑞穂公園(名古屋市)と 5 月 1 日オープンの C アミーユ船橋前原(千葉県 船橋市)の月額利用料は 17 万円となり、ともにかなりのスピードで入居が進んでいる。 次の展開として、フェーズ 3 では、C アミーユをドミナント化し、エリアセンターを中心に、ケアプラン、訪問介護な どの介護サービスを、在宅者へも提供する。 さらに、最終段階であるフェーズ 4 では、在宅者に向けた緊急対応、食事サービスの提供、買い物・外出同行な ど、介護保険外にもサービスを拡大する。このようにして、高専賃を中核とした地域居住を、着実に実現していきた いと考えている。 ◆2012 年 3 月期の取り組みと業績予想 4 月 28 日、高齢者住まい法が改正された。高円賃(高齢者円滑入居賃貸住宅)、高専賃、高優賃(高齢者向け 優良賃貸住宅)が廃止、サービス付き高齢者向け住宅に統合されることとなり、ハード面、ソフト面で登録基準が 設けられた。また、介護保険制度の改正のポイントとしては、居宅サービスでは、地域包括ケアシステム、24 時間 巡回・対応訪問介護看護、複合型サービスなど、施設サービスでは、高専賃の廃止とサービス付き高齢者向け住 宅の創設、一時金・入居費用への規制、介護療養病床廃止の 6 年間延長などが挙げられる。 これの法改正は、いずれも、当社にとって大きなリスクになるとは考えていない。規制により業者がふるいにか けられ、むしろ追い風になるととらえている。 今期は、C アミーユ事業の第 2 フェーズを推進するため、組織を変更し、介護事業部に西日本統括本部、東日 本統括本部を創設、それぞれに C アミーユ専任組織を設置した。また、新規開設の加速化を図り、一括借り上げ 紹介先の拡大、業務提携案件の実現、FC 先の発掘に取り組む。月額利用料の低価格化を目指して、建築費や運 営費のコストダウンを進め、人材確保の面では、年間で 50~60 名のケアマネジャーを育成していく。そして、新規 開設数は、アミーユ 19 施設・905 室、C アミーユ 11 施設・525 室の合計 30 施設・1,430 室を目標とする。順調に推 移すれば、今年度末には、208 施設・1 万 1,518 室となる予定である。 以上のことから、2012 年 3 月期は、営業収入 385 億円(前期比 9.1%増)、営業利益 63 億円(同 11.5%増)、経 本著作物の著作権は、公益社団法人 日本証券アナリスト協会®に属します。 常利益 66 億円(同 10.9%増)、当期純利益 36 億円(同 20.7%増)を予定している。投資計画では、設備投資が 13 億 40 百万円、減価償却が 11 億 50 百万円を見込んでいる。予想配当額は、5,300 円(配当性向 29.6%)としてい る。 ◆質 疑 応 答◆ アミーユから C アミーユへ軸足を移していく方針だが、理由を教えてほしい。 主な理由は三つある。一つは、法改正により、介護付き有料老人ホームについても、各地方自治体内で総量規 制が始まり、アミーユは、今後、新規開設が制限される。そのため、業容拡大には、C アミーユを推進していくこと になる。二つ目は、当社の経営理念に沿うのは、C アミーユを中核とした地域居住のイメージであること。三つ目は、 介護保険料の利用額が、C アミーユのほうが、より低く抑えられるからである。これは、利用者にとっても国にとっ ても、望ましいことだと考える。 業務提携について、進捗状況を教えてほしい。 今年度中の具体化を目指し、建築業界、不動産業界、事業会社など、約 20 社と協議を進めている。ただ、幾つ か問題点もあることから、打開策を検討しているところである。 C アミーユの月額利用料が下がったが、利益率に影響はあったか。 月額利用料が 20 万円から 17 万円になったことで、利益率は 1~2 ポイント低下した。 C アミーユの入居率が向上しているが、それは、高専賃の業界に共通の傾向か。 国の政策やマスコミ報道で、高専賃の認知度が上昇している。それに伴って、業界全体で入居率が上がってい るが、中でも、C アミーユの上昇角度は際立っている。 事業環境を考えれば、開設のスピードアップも可能と思われるが、いかがか。 法改正などにより、当社の優位性がさらに高まれば、開設を加速することも、当然選択肢の一つとして考えられ る。そのとき、ボトルネックに、ケアマネ、介護職員などの「ヒト」の確保と、不動産の物件の確保がある。これらをク リアした上で、可能性を探っていきたい。 中国への進出は考えているか。 中国は、大変大きなマーケットであることは承知している。ただ、ビジネスとして成り立つかどうかは、中国の介 護保険制度がどのようなものになるかによる。しばらくは動向を見定めたい。 (平成 23 年 5 月 19 日・東京) 本著作物の著作権は、公益社団法人 日本証券アナリスト協会®に属します。
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