旧山手通りにおける歩行空間の実態~歩行者を主体とした道路構造の

旧山手通りにおける歩行空間の実態
~歩行者を主体とした道路構造のあり方~
指導教員
加藤仁美
0BEB3107 吉田
教授
風雅
1.はじめに
渋谷区代官山地域は、旧山手通り沿道のヒルサイドテ
査した結果を整理したものである。
ラスを中心に、商業・業務・住居などバランスのとれた
増している。乗車による自転車通行も終日みられ、特に、
低層で静かな街並みを維持してきた。
朝と夕方に多く、歩道上の駐輪も終日 20~70 台と多くみ
代官山地域の骨格をなす旧山手通りは、大正期に地元
地主である朝倉氏の用地提供により、敷設・拡幅された
これをみると、両側の歩道とも 15 時台以降歩行者が急
られた。
車道のパーキングエリアの駐停車台数は夕方にかけて
道路であり、当時は三田用水の流れる生活道路であった。 増え、30 台ほどになっている。また、旧山手通りを横断
昭和期に、都市計画街路として補助 25 号線(旧山手通
歩道以外で横断する人も終日で 20 名ほどみられた。
り)として、12 間(22m)で整備された。なお、これに
図 2 及び図 3 は、旧山手通りの A~E エリア単位での写
平行して走る山手通り(環状 6 号線)は、昭和 39 年に幅員
真撮影により、両側歩道の歩行者数の 1 時間間隔での変
30mで整備された。また、渋谷区と目黒区にまたがる旧
化を示したものである。これらをみると、北側歩道(A1~
山手通り沿道両側の用途地域は、昭和初期から現在にい
E1)の C1・D1 エリアの歩行者が、とくに 13~14 時台以降
たるまで住居系の用途地域であった。
で、150~300 名と極端に増えていることがわかった。
本研究では、旧山手通り(補助線街路第 25 号線)を対
図 4 及び表 2 は、とくに混雑している C1・D1 エリアに
象とし、旧山手通り沿道の建物や土地利用の変容ととも
ついて定点観測調査(写真撮影)を行い、歩行者数及び年齢
に、歩行者の通行及び車両交通の実態を明らかにし、歩
層・歩行行為の実態を分析したものである。これをみる
行者を主体とした道路構造への転換の可能性を検討する
と、15 時台では、C1・D1 エリアともに 400 人台の歩行者
ことを目的とする。
がいることがわかった。
研究方法は、①都市計画道路・交通情勢調査等の行政
C1 エリアでは、蔦屋書店の 1 号館と 3 号館の前の歩道
資料の収集・整理、②旧山手通りの形成経緯の把握(都市
上に、歩行者が多くみられ、建物敷地内にも多くが滞留
計画図の収集等)、③まちづくり協議会メンバーを中心と
していることがわかった。
した旧山手通りデザイン会議における情報収集、④旧山
駅から蔦屋書店に向かう D1 エリアでは、ヒルサイドテ
手通りの車両交通及び歩行者通行の実態調査、とした。
ラスの G 棟、F 棟の前の歩道や旧山手通りと交差する道
2.旧山手通りの車両交通及び歩行者通行量調査の分析
路入口部分で極端に歩行者の混雑がみられた。一方、猿
図 1 は旧山手通りの調査対象エリア、図 5 は歩車道等
の道路断面を表したものである。
楽歩道橋方面の歩道では、歩行者が少なくなっている。
南側歩道の C2・D2 エリアでは、250 人程度の歩行者数
旧山手通りは幅員 22m で、車道は片側 2 車線で幅員
となっている。また、ベビーカーを押しての通行は北側
7.2m(パーキングエリアを含む)、歩道幅員は 3.8m で、そ
歩道で 27 台、自転車の乗車による通行は北側・南側の両
の内植樹帯が 1.35m となっている。
側とも各 26 台みられた。
表2は、旧山手通りの車両交通量及び駐停車の状況を
猿楽町歩道橋からビデオ撮影(各時間 20 分で撮影)によ
り、調査し整理したものである。
3.まとめ
旧山手通りの歩道空間では、蔦屋書店前やヒルサイド
テラス G 棟、F 棟の前に歩行者が集中し、とくに、15 時
これをみると、下り(神泉方面)よりも上り(鑓ヶ崎方
台以降に混雑が発生し、歩行者、ベビーカー、自転車が
面)の方が交通量がやや多く、その合計台数は、道路交通
錯綜し危険な状況であることが確認された。歩道上の混
センサス(H22 年度)の駒沢通りから一般国道 246 号線
雑防止のためには、植栽等の撤去による歩道幅員の拡幅
の昼間 12 時間自動車類交通量上下合計台数(15668 台)と、
や車道側の自転車道の整備による歩道空間の再編が必要
近似していることが確認された。
であると考えられた。
表 1 は、8 時から 18 時の 1 時間間隔のビデオ撮影によ
り、旧山手通りの歩道上の歩行者、駐停車等の状況を調
・参考文献 「代官山における歴史的文脈と大土地所有の変換に関する調査」赤坂武宣 2006 年/「代官山地域と中目黒地
域の歴史的文脈と連続性の検証」森暁生 2009 年/ゼンリン住宅地図 2013 年
The Actual Conditions of Sidewalk Space in Old Yamate Street
~Way of the Road used mainly with Pedestrian
YOSHIDA Fuma
図 1:旧山手通りの対象エリア
表 1:歩道の歩行者及び駐停車の実態調査((ビデオ撮影):2013/7/20(土))
2
8
人
(
人
)
歩
道
二
輪
車
(
)
大人
子供
老人
違法横断者
ベビーカー 等
合計
C1/C2
D1/D2
自転車(乗車)
自転車(手押し)
合計
C1/C2
D1/D2
合計
自動車
タクシー
バス
トラック
合計
C1/C2
D1/D2
バイク
32
4
0
2
0
38
14
10
11
0
11
1
1
49
27
11
34
0
0
0
2
36
6
9
10
0
10
3
2
46
40
12
41
2
0
0
1
44
11
17
6
0
6
0
3
50
56
13
64
1
0
2
0
67
26
33
13
1
14
6
1
81
56
14
80
4
0
0
3
87
26
42
6
1
7
2
1
94
50
70
3
0
0
2
75
13
32
7
1
8
3
3
83
61
15
16
17
18
合計
150
1
0
1
2
154
39
59
7
1
8
1
1
162
71
188
2
0
1
7
198
30
32
6
4
10
2
2
208
55
211
2
0
0
3
216
30
48
14
0
14
3
2
230
48
225 1107
2
22
0
0
0
7
3
23
230 1159
19 218
61 349
8
96
0
8
8 104
1
24
2
19
238 1263
54 536
8
9
10
19
0
0
1
0
20
7
4
9
0
9
0
2
29
22
27
0
0
1
1
29
5
9
11
1
12
2
1
41
37
11
33
0
0
1
0
34
3
20
9
0
9
6
1
43
44
12
39
2
0
1
0
42
7
20
6
0
6
1
4
48
44
13
33
3
0
2
1
39
9
5
6
0
6
1
2
45
44
14
74
2
0
2
0
78
22
27
8
0
8
2
3
86
45
69
1
0
3
2
75
25
25
8
0
8
3
1
83
40
15
16
17
96
6
0
0
1
103
21
40
12
3
15
0
6
118
43
99
2
0
2
3
106
39
26
14
0
14
2
5
120
48
18
65
1
0
3
4
73
23
16
19
0
19
3
8
92
52
合計
65
2
0
0
2
69
13
21
15
1
16
0
11
85
53
619
19
0
16
14
668
174
213
117
5
122
20
44
790
472
)
0
0
2
3
3
3
0
4
3
3
3
24
0
0
0
0
2
0
1
3
2
2
3
13
11
0
0
5
16
4
2
12
1
0
8
21
11
6
18
1
1
7
27
10
9
18
1
0
0
19
7
7
25
0
0
1
26
9
11
33
0
0
0
33
12
12
23
0
0
2
25
1
15
31
0
0
0
31
11
10
33
1
0
4
38
13
9
36
0
0
0
36
10
13
32
0
0
1
33
12
11
272
4
1
28
305
100
105
10
1
0
7
18
5
3
9
2
0
2
13
2
4
15
1
0
2
18
3
8
23
0
0
4
27
5
16
21
1
0
4
26
5
11
28
1
0
4
33
6
15
25
0
0
1
26
5
16
35
0
0
1
36
9
16
34
0
0
2
36
4
19
33
0
0
4
37
7
11
35
0
0
2
37
8
19
268
6
0
33
307
59
138
2013/7/20(土)
バイク
車
普通車
(
両
タクシー
鑓
交
バス
ヶ上 通
トラック
崎
り
計
方
自動車
面
駐
タクシー
停
)
トラック
車
計
バイク
車
普通車
両
タクシー
交
神
バス
泉下 通
トラック
方り
計
面
自動車
駐
タクシー
)
停
トラック
車
計
合
車両交通
計
駐停車
自転車
台
違法横断者
)
パ
ー駐
キ停
ン車
グ
エ台
リ
ア
12
1
0
1
0
14
4
6
8
0
8
2
1
22
18
10
(
自転車
(
駐
輪
9
南側歩道(A2~E2)
(
台
車
道
表 2:交通量調査結果
北側歩道(A1~E1)
11h合計
179
1544
632
23
159
2537
98
0
2
100
133
1362
451
0
167
2113
131
0
7
138
4650
238
266
153
11/23(土)
11/23(土)
C1
D1
E1
D1
C1
B1
E1
A1
A1
B1
(人)
(人)
図 2:北側歩道(A1~E1)エリアの歩行者数
図 3:南側歩道(A2~E2)エリアの歩行者数
C1エリア
D1エリア
図 4:C1,D1 エリアにおける歩行者等の実態(15 時台)
表 2:歩道混雑エリア(C1,D1,C2,D2)における歩行者実態
北側歩道
南側歩道
凡例
図 5:旧山手通り道路断面
C1(15時台)
D1(15時台)
C2(15時台)
D2(15時台)
子供 若年層 熟年層 合計 子供 若年層 熟年層 合計 子供 若年層 熟年層 合計 子供 若年層 熟年層 合計
●歩行(通勤、通学、ショッピング、散歩)
14 179
44 237
32 316
85 433
12 146
39 197
15 172
41 228
▲犬の散歩
0
2
2
4
0
0
0
0
0
1
4
5
0
0
3
3
×店舗利用
7 118
22 147
0
4
0
4
1
13
0
14
2
4
0
6
☆ベビーカー
0
13
0
13
0
14
0
14
0
3
2
5
0
9
0
9
○ジョギング
0
0
1
1
0
0
1
1
0
4
1
5
0
3
2
5
★自転車通行
2
15
2
19
0
6
1
7
0
8
2
10
2
11
3
16
△パーキングエリアの利用者
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
□店舗経営に関わる行為
0
5
0
5
0
0
0
0
0
14
1
15
0
1
0
1
■その他
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
合計
23 332
71 426
32 340
87 459
13 189
49 251
19 200
49 268
2013 年度卒業論文梗概集
東海大学工学部建築学科