飛翔No.5 - 日本大学理工学部 航空宇宙工学科

日本大学理工学部航空宇宙工学科活動誌
April 2013 / No.
5
□目次□
平成 25 年度 新任教員挨拶
平成 24 年度 各教員の研究・活動
平成 24 年度 博士論文・修士論文・卒業研究題目
平成 25 年度 新カリキュラムについて
平成 24 年度 就職状況
平成 25 年度 航空宇宙工学科行事予定
2
4
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17
20
巻 頭 言
教室主任 村松 旦典
平成 24 年は,私たちの学科の生みの親であ
る木村秀政先生が携わった国産初の旅客輸送
機 YS-11 の初飛行から 50 年目の節目の年であ
りました.B787 は国内線のみならず 1 月の羽
田―フランクフルト間を皮切りに国際線に就
航し順調に飛行を続けていましたが,現在,
電源系のトラブルにより飛行ができない状態
に陥っています.B787 は国内のエアラインが
世界に先駆けて導入を決めた飛行機であり,
準国産機とも言われるほど,国内の多くのメー
カーが携わっています.一刻も早い原因の究
明と飛行の再開が望まれます.一方,三菱リー
ジョナルジェット(MRJ)は順調に受注を受け,
開発がすすめられています.次期固定翼哨戒
機(XP-1)および次期輸送機(XC-2)につい
ては強度試験や飛行試験が実施されています.
工業技術試験機としても運用された「はや
ぶさ」は小惑星「イトカワ」から岩石のサン
プルを回収し,地球に帰還しました.「はやぶ
さ」の劇的な成功により,本格的な小惑星探
査を目標とした「はやぶさ2」の計画が進行
中です.2014 年の打ち上げ,2018 年に小惑星
(1993JU3)に到達し,2020 年の地球帰還の予
定となっています.小型衛星の打ち上げ需要
に柔軟に対応できるように,固体ロケットに
よるイプシロンロケットの開発がすすめられ
ています.このロケットは平成 25 年度に初号
機の打ち上げを目指しています.
航空宇宙工学科は今年,平成 25 年に学科創
設 35 周年を迎えます.同窓会である「飛翔会」
と記念行事を,駿河台校舎で6月 22 日(土)
に行う予定で計画が進められています.多数
の卒業生の方に参加していただけることを期
待しています.学科創設時からの教員の多く
が平成 24 年度で定年を迎えます.定年となる
は川島孝幸教授,本橋龍郎教授,松原一雄専
任講師および佐藤親俊助手です.長い間,お
疲れ様でした.平成 25 年度以降も非常勤講師
として,学科の教育に協力して頂くことになっ
ています.定年退職者を埋めるために,平成
25 年度は 3 人の教員を学科に新たに迎えるこ
とになります.田上良継特任教授,阿部新助
准教授および小宮良樹助教です.なお,阿部
先生は本学科の卒業生です.
この「飛翔」では教員の研究活動を紹介し
ています.研究室独自の研究の他に,昨年度
も多くの委託研究・共同研究を実施し,学外
に対しても研究成果を挙げています.本年度
も教員と学生が一丸となって,研究活動を活
性化して成果を得て社会に貢献したいと考え
ています.
学生の就職状況では,厳しい経済状況の中,
ほぼ学生の希望に沿った企業に就職すること
ができました.今年度も「飛翔会」の協力を
得て,より多くの学生が希望する企業に就職
できるよう学科として支援していきます.
新任教員の挨拶
准教授 阿部 新助 先生
ズ(PanSTARRS)」に参加するため,2008 年に神
○ 研究経歴
私は航空宇宙工学科・青木清研究室を卒業後 戸大学を退職し台湾・國立中央大学天文研究所・
(卒業論文「旋回噴流燃焼に関する研究」
)
,名 助教に着任.2010 年に世界最大の CCD カメラを
古屋大学大学院理学研究科素粒子宇宙物理学専 使った観測を開始し,現在までに約 500 個の近
攻・小島正宜研究室を 2008 年に修了(修士論 地球小惑星,約 30 個の彗星,約 2 千個の小惑星
文「彗星 Plasma Tail と太陽風に関する研究」), を発見してきた.2012 年には,小惑星 23887 に
2001 年に総合研究大学院大学数物科学研究科天 「Shinsukeabe」を命名して頂いた.
文科学専攻(国立天文台)
・渡部潤一研究室を
修了(博士論文「流星と流星痕の分光学的研 ○ 研究内容
究」).1999 年から 2002 年まで NASA 主導の「し 流星・小惑星・彗星の起源・進化・繋がりを
し座流星群国際航空機観測ミッション」に参加 理解するため,観測・探査・実験・数値計算な
し,NHK が開発した超高感度ハイビジョンカメ どの複合的手法を駆使して,太陽系小天体の物
ラと自前の分光観測装置を NASA/ 米国空軍の観 理的特性を研究している.
測航空機に持ち込み,流星の高精度 TV 分光観 1) 流星・流星痕・超高層雷光 (TLE) の観測的研究:
測とハイビジョンによる流星嵐の撮影を初めて 高感度・高分解能の地上観測システムの開発
成功させた.2001 年から 2003 年まで宇宙科学 と観測.流星観測衛星搭載機器(紫外線分光
研究所・ MUSES-C「はやぶさ」プロジェクト研 カメラ)の開発にも取り組む.
究員として,小惑星探査機「はやぶさ」搭載の 2) 小惑星の観測的研究:
,
近 赤 外 線 分 光 器(NIRS; Near InfraRed 小惑星の自転による光度変化(ライトカーブ)
Spectrograph)のハードウェアと地上系ソフト 構成鉱物や有機物を同定する分光観測や偏光
ウェアの開発に携わることができた.
「はやぶ 観測の望遠鏡を行い,小惑星の特性を調べる.
さ」は 2003 年 5 月に MV-5 ロケットで打ち上げ 3) 小惑星探査:
られた.小惑星到着までの 2 年間を,日本学術 小惑星探査「はやぶさ」のデータ解析,小惑
振 興 会 海 外 特 別 研 究 員 と し て チ ェ コ 共 和 国 星探査へ向けた準備(はやぶさ 2・LIDAR2 に
Ondřejov 天文台の流星・隕石グループに所属し, よるアルベド観測など),搭載センサ(小惑星
流星・隕石の分光や軌道に関する研究を行った. ローバ MINERVA2)の準備とセンサの校正を行
2005 年に神戸大学大学院自然科学研究科・COE う.
研究員(2007 年より助教)に赴任し,神戸大学 4) 小天体と隕石火球の軌道類似性と軌道進化に
が 主 導 す る「は や ぶ さ」搭 載 レ ー ザ 高 度 計 関する研究:
(LIDAR; LIght Detection and Ranging)の 運 2013 年 2 月にロシア Chelyabinsk に落下した
用とデータ解析も担当.小惑星イトカワの質量 隕石の軌道推定,母天体小惑星,および地球
と平均密度を決定し,約 40% という高い空隙率 衝突までの軌道進化などを調べる.
を求め,起伏に富んだ表面地形の特徴なども含 ○ 主な発表論文
め,小惑星イトカワは瓦礫同士が重力で緩く繋 1) Abe, S., Fujita, K., Kakinami, Y., Iiyama, O., Kurosaki, H.,
がった「ラブル・パイル(Rubble Pile)」小惑
Shoemaker, M. A., Shiba, Y., Ueda, M., and Suzuki, M.,
星であるということを発見した.また,NIRS で
“Near-Ultraviolet and Visible Spectroscopy of HAYABUSA
得た 850−2100 nm 波長領域のスペクトルから, Spacecraft Re-Entry”, Publ. Astron. Soc. Japan, 63,
地球に到来した対応隕石種の推定,小惑星表面
1011-1021, 2011.
の宇宙風化度の違いも示した.2010 年 6 月に
「は 2) Abe, S. et al., “Mass and Local Topography Measurements of
やぶさ」が地球帰還した際は,JAXA 光学班とし
Itokawa by Hayabusa”, Science, 312, 1344-1347, 2006.
てオーストラリアの砂漠から,光学観測と分光 3) Abe, S., Ebizuka, N., Yano, H., Watanabe, J.-I., and
観測を実施.我々が撮影したビデオ映像は,映
Borovicka, J., “Detection of N2+ First Negative System in a
画「はやぶさ」(FOX)の最後のシーンにも使わ
Bright Leonid Fireball”, The Astrophysical
れた.米英独台 4 ヶ国コンソーシアムによるハ
Journal,618,141-144, 2005.
ワイの全天サーベイ望遠鏡計画「パン・スター
-2-
新任教員の挨拶
助教 小宮 良樹 先生
福岡県南部で生まれ,九州大学と東京工業大
学で学生時代を過ごしました.材料系の学科で
金属学を学び,学生の頃から現在に至るまで軽
金属材料,特にアルミニウム合金の高強度化に
ついて研究しています.
九州大学では超高圧電子顕微鏡を駆使し,東
京工業大学では原子ひとつひとつを解析するこ
とでナノ組織を観察できる三次元アトムプロー
ブを用いて,金属内部を観察することで合金の
強度との関係を調べていました.研究を始めて
間もなくの頃,金属内部の構造,組織が,金属
材料の強度や電気抵抗等に密接関わっているこ
とを知り,たいへん感銘を受けた記憶がありま
す.
卒業後,軽金属材料の研究に加えて,金属/
セラミックス複合材料の研究に携わりました.
明星大学ではアルミニウム/アルミニウムナイ
トライド複合材料を,名古屋工業大学ではチタ
ン/ジルコニア複合材料を取り扱っていまし
た.複合化を行うことで,金属にさまざまな機
能を付加することができます.アルミニウム/
アルミニウムナイトライド複合材料は,アルミ
ニウムナイトライドの低熱膨張,高熱伝導性の
機能を活かして,パソコンならびにパワーデバ
イスの材料として開発できました.さらに,片
面は金属の性質で徐々にセラミックスの量を増
やし,もう一方の面はセラミックスの性質をも
つ傾斜機能材料を作製することにより,界面が
なく加熱・冷却の繰り返しによる剥離を抑制す
ることができます.チタン/ジルコニア複合材
料では,高熱に耐えることができる割れにくい
材料を目指して開発していました.
アルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽
金属材料は,航空宇宙材料に欠かせない軽量と
いう性質を持っており,一方,金属/セラミッ
クス複合材料には耐熱性があります.材料研究
を通して,航空宇宙材料への適用を目指してい
きます.また,構造材料は航空宇宙分野のみな
らず構造体にすべてに必要ですので,各材料の
性質や重要性への理解に貢献できるよう努力し
てまいります.
新任教員の挨拶
特任教授 田上 良継 先生
九州育ちで,飛行機やロケットに魅せられた
人間の一人です.これまで,企業の中で,航空
機や宇宙機器の開発設計を行ってきました.担
当した機体は様々ですが,開発した機体として
は,H-II ロケット,H-IIA ロケット,宇宙ステー
ション(きぼう)
,宇宙ステーション補給機(こ
うのとり)および民間旅客機などがあります.
航空機や宇宙機の構造開発においては,設計
が完了すると実機と同等な機体を製作し,これ
に設計時に想定した荷重を負荷して,必要な強
度があることを確認するための強度試験を行い
ます.私は担当設計者や設計管理者として,こ
の強度試験を十数回,経験してきました.試験
中は荷重を上げるたびに激しい動悸や胃の痛み
を感じますが,所定の荷重(制限荷重,
終極荷重)
に対して問題なく耐えたときの感動や爽快感
は,苦労した技術者にしか味わえないものです.
若い皆さんにも,新しい航空宇宙機の開発に携
わり,このような緊張と感動を味わって欲しい
と思います.
本学では,航空機構造力学や構造信頼性等を担
当しますが,できるだけ実際の航空宇宙機の構
造設計や解析に必要な知識を伝達していきたい
と思います.
H-II ロケットの地上試験機と筆者 種子島宇宙センターにて
-3-
平成 24 年度 各教員の研究・活動
動力学・制御工学系
内山賢治 教授
◆ 研究内容
UAV の自律飛行制御
リアルタイム性を有した分散型の UAV(無人飛
行機)自律飛行誘導制御システムを開発している.
4 発チルトロータ型 UAV の開発も行っている(委
託研究).
宇宙機のフォーメーションフライト
複数宇宙機の利用計画に対して,フォーメーショ
ンフライト(編隊飛行)を実現するための制御系
を設計している.
宇宙機の最適軌道決定
推力などの制約条件を考慮した最適軌道問題にお
いて,解析的なアプローチにより最適解を求める
研究を行っている.
小型人工衛星の姿勢制御
小型人工衛星用の姿勢制御装置の開発および制御
系の構築を行っている.(理工学部シンボリック
プロジェクトの一環)
惑星ローバの誘導制御
惑星表面を詳細かつ広範囲にわたり調査する惑星
ローバ(移動探査ロボット)に関する研究を行い,
障害物回避を行いながらミッションを達成するた
めの誘導制御について検討する.
◆ 所属学会
・日本航空宇宙学会
・計測自動制御学会
・日本機械学会(宇宙工学部門委員)
・ The American Institute of Aeronautics and Astronautics
◆ 研究成果(平成 24 年度(2012))
・小粂昌範,内山賢治:固定翼 UAV における遷移飛
行の制御系設計,日本航空宇宙学会論文集 , Vol.
60, No.4, pp.173-180.
・T. Tenno and K. Uchiyama: Control Architecture for
Transition from Level Flight to Hover of a Fixed-Wing
UAV, Congress of the International Council of the
Aeronautical Sciences, ICAS2012-11.9.3, pp. 1-7.
・K. Masuda and K. Uchiyama: Development of
Three-Dimensional Reaction Wheel Using Spherical
Rotor, AIAA Guidance, Navigation, and Control
Conference, AIAA-2012-4708, pp.1-11.
・内山賢治:ポテンシャル関数法による UAV のフォー
メーションフライト,飛行機シンポジウム,ID07.
・K. Iwasaki, and K. Uchiyama.: Robust Controller Design
for Transition Flight for Fixed-Wing UAV, Proceedings
of Asia-Pacific International Symposium on Aerospace
Technology (APISAT), CD-ROM 7.5.2.
他5篇
(平成 23 年度は,国内 6 篇,海外 4 編)
動力学・制御工学系
の飛行制御系設計 , 岩本,安部,嶋田 , JSASS 第
43 期年会講演会 (2012.4.13)/ 冗長性を有する航
空機アクチュエータの耐故障制御 , 中尾,時乗,
嶋 田,安 部 , JSASS 第 43 期 年 会 講 演 会
(2012.4.13)/ 宇宙往還機用フライトシミュレータ
航空・宇宙機の誘導・制御を主体に研究している. の開発,伊藤,安部,嶋田 , 第 56 回宇宙科学技
術連合講演会講演集 (2012.11.21)/ 冗長な操舵面
を有する宇宙輸送機の耐故障制御 , 中尾,嶋田,
● 研究テーマ
宇宙往還機の運動シミュレーションと耐故障制御 安部 , 第 56 回宇宙科学技術連合講演会講演集
/ 人力飛行機用シミュレータ開発と飛行最適化 / (2012.11.21).
宇宙機用 OBC の UAV への適用― UAV を用いた飛行
実証― / ダイナミックソアリングを用いた無人機 ● 受賞
の長時間滞空技術の研究 / タンブリング衛星の画 Best Presentation Award 受 賞:"Nonlinear
像情報を用いた運動推定の研究 / 航空機・将来宇 Adaptive Control Law for ALFLEX using Dynamic
Inversion and Disturbance Accommodating
宙輸送機の飛行制御の諸問題へのアプローチ
Control Observer".
嶋田有三 教授
● 発表論文
Flight Control System using Backstepping ● プロジェクト
Method for Space Transportation System, Akio 「特性変動と故障に適応する有人宇宙往還機用誘導
ABE and Yuzo SHIMADA, Trans., of JSASS, 制御系の設計」科学研究費補助金 (H20,21,22) /
AEROSPACE TECH-NOLOGY JAPAN, Vol.10, No. 「UAVの姿勢制御システムに関する研究」研究奨
ists28, pp.85-91(2013.2)/ 外乱オブザーバを用 励寄付金,委託研究 (H22,H23).
いた適応バックステッピング法による宇宙往還機
-4-
平成 24 年度 各教員の研究・活動
動力学・制御工学系
安部明雄 助教
・大気圏再突入フェーズにおける飛行制御系の開発
現在のスペースシャトルの制御方式では,追従すべき
基準の状態量の調整により飛行距離を制御している.こ
の手法は,非線形制御手法の一つであるバックステッピ
ング法に似たロジックを有している.これまでに本研究
で解決してきた点に加えて,現行のスペースシャトルの
再突入誘導制御系の問題点を洗い出し,次世代の宇宙輸
送系の実現に向けて,非線形制御理論を基盤にミッショ
ン成功率の向上を保証可能な再突入時から滑走路近傍へ
の誘導と軌道制御方法を新に開発する.
・航空機の非最少位相系による内部不安定化問題
運動性能の高い航空機や,主翼と尾翼が共用の有翼
宇宙往還機では,通常の航空機に較べてピッチング運
動に関して非最少位相系のモードによる影響が顕著に
表れ,システムの不安定化を誘発する.また,オスプ
レイのような VTOL 機に関しては,垂直離着陸時の運動
でリアクションジェットの推力方向によってヨー運動 ・所属学会
日本航空宇宙学会(飛行力学部門委員)
bに関して不安定化を招く.
これらの問題は,非線形制御理論の枠組みでは,ゼ 計測自動制御学会
ロダイナミクスの不安定化として捉えられる.ゼロダ The American Institute of Aeronautics and Astronautics
イナミクスの不安定化の要因を解析し,これらの問題
・研究成果(平成 24 年度)
に対処可能な飛行制御系の設計方法を開発する.
[1] 安部 明雄,岩本 光平,嶋田 有三 : 適応型バック
・飛行制御系設計負荷の低減に関する研究
ステッピング法による宇宙往還機の飛行制御系設計 , 日
現在,飛行制御の研究・開発では,非線形制御方式の
, Vol.61 (2013).
ひとつであるフィードバック線形化法を用いた方式が 本航空宇宙学会論文集
[2]
Akio
Abe
and
Yuzo
Shimada:
Flight Control System Using
数多く検討されている.フィードバック線形化法の最
大の特徴は,飛行環境に対する事前情報の取得と解析 Backstepping Method for Space Transportation System,
の労力を劇的に低減できることにある.この手法に適 Transactions of the Japan Society for Aeronautical and Space
応機構を付加し,所望の制御性能を保持しながら,飛 Sciences, Aerospace Technology Japan Vol. 10(2012) No.
行環境に関する事前情報を必要としない適応飛行制御 ists28 (ISTS Special Issue: Selected papers)
系への拡張を試みる.
他 口頭発表 6 篇
構造・材料工学系
出井裕 教授
最近の航空機材料では,軽量で耐久性に優
れた材料が使われる傾向にあります.B787(米
国・ボーイング社)と A350(欧州・エアバス社)
の機体では,炭素繊維強化複合材料(CFRP:
炭素繊維をエポキシ樹脂で固めた材料)が大
量に使われます.これまでの機体は 80%から
90%がアルミニウム合金でしたが,50%以上
が CFRP になります.これも伴い,CFRP と相
性がよいチタン合金も使われるようになりま
す.チタン合金は軽量で耐食性に優れていま
す.そこで私共の研究室では,チタン合金粉
末を新しい技術で固化(焼結)し,低コスト
で信頼性の高いチタン合金製航空機部品の製
造技術の確立と材料特性評価を行っていま
す.その他に,材料の組成を徐々に変化させ
た金属-セラミックス系傾斜機能材料に関す
る研究も行っています.
1.研究テーマ 1)放電プラズマ焼結法によるセラミックス
強化化チタン基複合材料 2)金属-セラミックス系傾斜機能材料,
2.研究発表
1) 菊地,出井,高橋,放電プラズマ焼結法によ
る SP-700 合金および TiB/SP-700 の焼結性と
力学的特性,粉体および粉末冶金,
Vol.59,No.9(2012), p.570-576.
2) 出井,放電プラズマ焼結法で作製した
SCS-6/β21S チタニウム合金の強度特性,
Vol.50, No.1(2013), p.26-30.
3.委託研究
1)次世代構造部材創製・加工技術開発(次世
代チタン合金創製・加工技術開発)
」
,経済産
業省(平成 24 年度)
-5-
平成 24 年度 各教員の研究・活動
構造・材料工学系
宮崎康行 教授
【2012 年度の研究内容】
山﨑助手とともに以下の研究を実施.
1. ゴッサマー・マルチボディ・ダイナミクスの保存型解法:
文科省・科研費(基盤研究 B)の援助のもとで開発した解
析コード NEDA2.0 による研究成果(JAXA のソーラー電 力
セイル IKAROS の設計・開発・運用への利用成果やしわ・
折り癖など膜面特有の座屈/弾塑性現象について解析・実
験結果)を学会や学会誌の解説記事等で発表(宮崎).
2. 膜面宇宙構造物の非線形ダイナミクスの低次元化手法 の研究:膜面宇宙構造物の設計段階で低次元化による誤差
評価も可能な理論を構築し,学会発表.実験装置を開発(山
﨑).
3. 複合膜面構造の研究:超小型人工衛星 SPROUT が JAXA の平
成 25 年度 H-IIA 相乗り副衛星に選定.現在,エンジニア
リングモデルの開発中(山﨑・宮崎).
4. 木星・小惑星探査用中型ソーラー電力セイルの研究: JAXA のソーラーセイル WG に参加.IKAROS の成功を受け,
一辺 50m の大型セイルを展開する探査機のコンフィグレー
ションを専門部会で検討中(宮崎・山﨑).
5. 宇宙インフレータブル構造の宇宙実証(代表:東大・青 木教授):JEM 曝露部の 実験 SIMPLE に成功(宮崎)
(http://iss.jaxa.jp/kiboexp/news/120821_simple.html).
6. 超高精度アンテナの研究・開発(代表:JAXA・石村准教授)
:
JAXA の戦略的開発研究費による標記研究チームに参加し,
展開構造連結部のガタ等が構造全体の形状精度に及ぼす影
響の評価理論を構築中(宮崎).
7. 日本発の「ほどよし信頼性工学」を導入した超小型衛星
構造・材料工学系
山崎政彦 助手
による新しい宇宙開発・利用パラダイムの構築(代表: 東
大・中須賀教授):標記の内閣府 FIRST プログラムに,とり
まとめメンバー・サブテーマリーダとして参加.本プロジェ
クトで平成 25 年度打ち上げ予定の 50kg 級衛星の展開構造を
開発.また,低コストで信頼性の高い展開構造の開発に必要
となる,展開性評価理論を構築中.この他,超小型衛星用展
開構造で特許を一件取得(宮崎).
5. 宇宙科学技術人材育成プログラム:文科省の平成 24 年度宇
宙利用促進調整委託費による公募プログラムに「缶サット・
超小型衛星を用いた創造的科学技術人育成ネットワークの構
築」が選定(代表:宮崎.主管実施期間:UNISEC).平成 24
年度末~平成 26 年度末にかけて,大学生・大学院生を対象
とする宇宙科学技術人材の高等教育プログラムの提供と、そ
のための人材育成ネットワークの構築を目指す(宮崎・山﨑).
【2012 年度の学会等活動】
・機械学会宇宙工学部門運営委員,UNISEC 理事,ISTS プログ
ラム委員・JSASS 特集号 editor,J. Space Engineering の
editor,Space Takumi Journal の editor 等(宮崎)
.
.
・機械学会「先進軽量構造システム研究会」主査(宮崎)
.
・AIAA の Best Paper in Gossamer Systems を受賞(宮崎)
【2012 年度の主な成果発表】
(学術論文 1 編,国内外口頭発表 14 編,解説記事 1 編)
[1]Yasuyuki Miyazaki, et. al, "A Simple Deployment
Mechanism of Panel Structure for Micro Satellite and
Its Verification", IAC, IAC-12-C2.2.7, pp.1-9,
Naples, Italy, October 1-5, 2012.
[2]Yamazaki, M., Miyazaki, Y., "Model Order Reduction
for Nonlinear Structural Dynamics of Membrane Space
Structure", 2012 ISAS 22th Workshop on Astrodynamics
and Flight Mechanics, pp.1-6, Sagamihara, July 30-31,
2012.
[3] 宮崎康行 ,「ソーラーセイル・イカロスの膜構造解析」,
計算工学 , Vol.17, No.2, pp.28-35, 2012.
現在開発中の 7kg,20cm 立方の複合膜面構造物宇
宙実証衛星 SPROUT は,H-IIA による ALOS-2 小型相
乗り副衛星の一つとして選定されており,2013 年
度に打ち上げ予定です.
Camera (x3)
ソーラーセイルや太陽発電衛星,展開アンテ
ナに代表される大型宇宙構造物には,軽量性や
収納性・展開性に優れた膜面構造の採用が見込
まれています.そこで,数μm の薄膜やガスで膨
張展開するインフレターブル構造など,軽量で
柔軟なゴッサマー構造物(Gossamer Structure)と,
宇宙機本体など比較的剛な構造物とが混在した
ゴッサマー・マルチボディ・ダイナミクスに関
する研究を行っています.特に,宇宙空間での
形状予測・評価方法について取り組んでおり,
計算コストを低減するための数学モデルの低次
元化法,計測データ・数値解析データを用いた
膜面形状の推定法に関して取り組んでいます.
また,大型衛星に比べ低コスト・短期開発が
可能とされる超小型衛星の設計・開発・運用を
行っています.特に,超小型人工衛星を研究成
果等の軌道上実証の場として利用するための方
法論・設計論を研究しています.2007 年には
1kg,10cm 立方の日本大学初の超小型人工衛星
SEEDS を打ち上げ,衛星のバス開発技術の軌道
上実証を行いました.
-6-
1500mm
Monopole
antenna (x4)
60deg
Inflatable
tube (x2) Membrane
超小型人工衛星SPROUT
【2012 年度の主な成果発表】
[1] Masahiko Yamazaki, Yasuyuki Miyazaki, Model
Order Reduction for Nonlinear Structural Dynamics of
Membrane Space Structure, 22th Workshop on JAXA
Astrodynamics and Flight Mechanics, Japan, July
30-31, 2012.
[2] 山崎政彦,日本大学超小型人工衛星開発チーム,
宮﨑康行,ALOS-2 小型相乗り副衛星 SPROUT ミッションの概要,電子情報通信学会 SANE 研
究会,2012 年 6 月.
[3] Ryo Murata, Yuta Araki, Masahiko Yamazaki,
Yasuyuki, Miyazaki, Kazuki Watanabe, Yu Oikawa,
Proposal of SMA Opener for Inflatable Structure,
ICSANE 2012, pp.1-7, SONGDO CONVENSIA, Incheon, Korea, October 10-12, 2012.
平成 24 年度 各教員の研究・活動
流体工学系
村松旦典 教授
剪断流れ(Shear Flows)の基礎研究を主に行っ
ている.剪断層の性質を知り制御することが航空機
などの様々な流体関連機器の性能向上に寄与するか
らである.
2012 年度の主な研究テーマ
1. 低密度気体噴流の不安定性とサイドジェット.
2. 低レイノルズ数(非常に低速で微小な)噴流の
不安定性と空間的な発達過程.
3. レーザ利用による 3 次元的な流れ場の可視化法
の開発.
パルス変調した SDBD プラズマアクチュエータが誘
起する渦流れの PIV による測定結果
流体工学系
4. プラズマアクチュエータ(プラズマの生成による
流体制御素子)の基本的な特性と翼周りの剥離制
御への応用.
2012 年の研究成果の発表と主な社会活動
1.Akinori MURAMATSU & Yasuhiro KANEDA,
Asymmetric Structures in a Round Jet with
Low Density, Proceedings of 7th International
Symposium on Turbulence, Heat and Mass Transfer
(THMT'12),2012-9.
2. 柳田祥之 他 3 名 , パルス変調を用いた SDBD プ ラズマアクチュエータが誘起する流れ JAXA-SP-11-015,2012-3.
3. 村松旦典 他 3 名 , マッハ数を考慮したサイド
ジェットの形成条件,第 90 期日本機械学会流体
工学部門講演会,2012-11.
など,2012 年には国際会議 1 件,国内学会(日本航
空宇宙学会,日本流体力学会,日本機械学会,可視
化情報学会)12 件および JAXA 特別資料 4 件を発
表した.
日本機械学会流体工学部門の講習会担当者とし
て,東北大学などから講師を招いて,実験流体力学
の講習会を 2012 年 8 月に本学の駿河台校舎で開催
した.12 月には工学院大学で講習会「基礎から学び
直す流体力学」を開催し,本学科の本橋教授に航空
分野に関連して講義をして頂いた.
現在,2013 年 9 月に名古屋大学で開催される噴流,
後流および剥離流れに関する国際会議(4th
International Conference on Jets, Wakes and Separated
Flows, ICJWSF2013)の準備をオーガナイザとして
進めている.
Flow
大竹智久 助教
私たちは研究・教育などで「流体工学」という分
野の学問に日々関わっています.
「流体」という言
葉は,空気や水などの物質を意味することが多いで
す.このような物質が物体(飛行機の翼や自動車な
ど)のまわりを流れる際,物体には流体によって生
じた力が作用します.この力の大小には,流体が物
体のまわりをどのように流れているか?という事象
が強く関わります.ご存じの通り,空気や水は無色
透明です.実際に空気などが流れる様子を目で見え
る状態にすること(可視化といいます)は難しいこ
とですが,100 年以上前から多くの研究者たちがチャ
レンジしてきました.それらの経験を礎にして,現
代の実験手法の多くは確立されていますし,また,
新たな実験手法も開発されています.右図は,伝統
的な可視化手法にアイディアと少々の努力を加え
て,翼の表面の流れを時間経過と共にとても明確に
捉えることができた写真です.流体が物体のまわり
を流れていくとき,時として芸術的で美しいパター
ンを示すことがあります.普段は目に見ることがで
きない流体現象を捉えることができたとき,さらに
新しいことが見つかるかもしれません.
2 sec
(Time line ⇒)
14 sec
最近の研究成果
1. 互井梨絵,神田翔,大竹智久,村松旦典,本橋龍郎:
“Ishii 翼型の空力特性と流れ場について ”,第 50 回
飛行機シンポジウム (2012).
2. 大竹智久,本橋龍郎,村松旦典,中江雄亮:
“NACA0012 翼面上の境界層の発達とその構造(Re =
100,000 の場合)”,日本流体力学会年会 2012.
3. 大竹智久,小林俊策,村松旦典,本橋龍郎,簗瀬祐太:
“ 低レイノルズ数における NACA0012 翼面上の流れ場
の制御 ”,第 44 回流体力学講演会/ ANSS 2012.
4. 小林俊策,佐藤匠,平田篤史,大竹智久,村松旦典,
本橋龍郎:“DBD プラズマアクチュエータの翼面上設
置位置が NACA0012 翼型まわりの流れ場に与える影 響 ”,日本航空宇宙学会第 43 期年会講演会(2012).
5. 中江雄亮,大竹智久,村松旦典,本橋龍郎:低レイ
ノルズ数領域における NACA0012 翼型周り流れ場の三
次元化,日本航空宇宙学会論文集 59(2011), No.692.
6. 大竹智久,晝間洋樹,村松旦典,本橋龍郎:“ 低レ
イノルズ数領域での異なるキャンバーを持つ薄円弧
翼型の空力特性 ”第 43 回流体力学講演会/ ANSS 2011.
-7-
平成 24 年度 各教員の研究・活動
流体工学系
安部建一 専任講師
そこで,風洞実験では実機の実大模型(操縦席部分
のみ)を作り,給排気口の大きさと位置を変えて実験
を繰り返した.その結果から,給排気口の大きさおよ
び位置を決定し,実機でもその効果が確認した.その
結果,琵琶湖での第 25 回大会で,飛行時間 27 分,
安部研究室では,理工学研究所所有の 2m×2m
操縦席内の空気の流れは非常に良く流れていたとの談
の大型低速風洞を用いた流体力学に関する基礎研究
を得た.その給排気位置を同様にした Möwe20,21 が
を行っている.ライト兄弟が初飛行に成功したのも, 琵琶湖の大会記録や日本記録を更新することができ
風洞実験で主翼の形状を決めたことも成功の要因で た.昨年,記録更新は成らなかったが,再度世界記録
ある.飛行機とともに発達した風洞実験技術である
が,最近では,建物の環境風,自動車の空力特性等
の各種研究・開発に伴う模型実験が欠かせない.し
に挑戦する予定である.
近年の主な著書および発表論文は以下の通りである
・著書「交通の百科事典」,丸善(2010),共著
「風の事典」,丸善(2011),共著
かし,風洞実験と実物では寸法効果が生じるため, ・安部建一:進化するものづくり教育(Part5)学生主
様々な考慮をせねばならない.また,模型周りの流 体のものづくり実践 - 鳥人間コンテストの取り組み
れの可視化も実験には欠かせないものである.1996
-,砥粒学会,(2010 年)
年より人力飛行機の空力特性に関する研究を卒業研
・小澤国基,佐藤親俊,安部建一他:人力飛行機のプ
究として再開し,その空力データを航空研究会に提
ロペラ効率に関する実験的検証 , 日本航空宇宙学
供してきた.
2001 年 6 月琵琶湖を制するためには操縦席周り
の給排気位置の決定が重要課題と決めた.
流体工学系
高橋賢一 助手
会スカイスポーツシンポジウム,(2011)
・山脇邦達,佐藤親俊,安部建一他:人力飛行機用プ
ロペラ特性装置の試作(続), 日本航空宇宙学会ス
カイスポーツシンポジウム,(2010)
この集塊の現象を解明するために,燃焼実験とコン
ピュータ・シミュレーションによる研究を行なってい
ます.これらの研究報告を国内および国外で行なって
います.
・口頭発表,論文など
(1) K. Takahashi, T. Mano, M. Tanabe, T. Kuwahara, and T.
・風洞実験室 理工学部所有の大型風洞の設備保守 Shimada, Hot Gas Flow around Burning Aluminum Particles near, Burning Surface of AP Composite
および運転を行なっています.また,学内および学 Propellant, 46th AIAA/ASME/SAE/ASEE Joint
外の受託による実験,修士・卒研などの実験の指導 Propulsion Conference, 2010.
をしています.大学が持つ風洞としては最大級で (2) 高橋賢一 , 中臺啓太 , 田辺光昭 , 桑原卓雄 , 嶋田徹 ,
コンポジット推進薬の燃焼表面近傍でのアルミニウ
様々な研究分野で活用されています.
ム粒子の燃焼 - 温度勾配へ及ぼす影響 -, 日本航空宇
・固体ロケットに関する研究 固体ロケットには金
宙学会論文集 , 第 59 巻 , 第 689 号 , pp.141-147, 2011.
属燃料としてマイクロ・サイズのアルミニウム微粒 (3) K. Takahashi, K. Nakadai, S. Oide, M. Tanabe, T.
子を添加しています.アルミニウム微粒子によって Kuwahara, and T. Shimada, Agglomerate and ignition
characteristics of aluminum particles in AN composite
固体ロケットの燃焼が安定し,推進性能が向上しま propellants, 4th International Symposium on Energetic
す.アルミニウム微粒子を上手に燃焼させるには幾 Materials and their Applications, 2011.
つかの問題があり,その一つが集塊という現象です. (4) K. Takahashi, K. Matsumoto, K. Nakadai, S. Oide, T.
固体ロケットの燃料が燃焼しているときにアルミニ Kuwahara, H. Shibamoto, X. Yu, and H. Habu, Ignition
characteristics of AN/ADN composite propellants, 4th
ウム微粒子は元のサイズの数十倍ものサイズに寄せ
International Symposium on Energetic Materials and their
集まり塊になり集塊します.集塊によって期待する Applications, 2011.
性能の向上は得られず,また燃え残りによって様々 (5) 高橋賢一 , 生出翔 , 田辺光昭 , 桑原卓雄 , 嶋田徹 , AP/AN 系固体推進薬でのアルミニウム粒子の集塊特
な問題を引き起こします.
性 , 火薬学会 2012 年度秋季研究発表会 , 2012.
-8-
平成 24 年度 各教員の研究・活動
熱工学系
桒原卓雄 教授
推進系の 2 つめはラムジェットです.これにはダ
クテッドロケット,液体ラムジェット,固体燃料ラ
ムジェット,スクラムジェット等があります.火星
環境下でも飛翔できる推進系として , ダクテッドロ
広く宇宙を視野に入れた推進系の研究を行ってい
ます.地球環境および火星環境下における酸化剤燃
料を用いて推進系の新しい燃料について研究を行っ
ております.酸化剤には主に二酸化炭素と,水を用
いることを検討し,燃料には金属が主体となり,マ
グネシウム,アルミニウムが候補に挙がっています.
これらを燃料に用いる推進系の1つにロケットがあ
り,ロケットの研究は液体ロケット,ハイブリッド
ロケット,固体ロケットの燃焼に関して行っていま
す.液体ロケットの一液性推進系としてヒドラジン
ケットがあり,二酸化炭素を酸化剤として用いて燃
焼特性を取得しました.燃焼室内の火炎形状が大き
く燃焼効率に影響を与えることが得られました.雰
囲気圧力を変化させてもホウ素は二段燃焼しており,
固体粒子の周辺に酸化膜が形成され,これが蒸発し,
消滅し B が燃焼していることが得られました.これ
ら研究成果は米国航空宇宙学会,ドイツの国際火工
品学会(ICT),火薬学会,ISAS の輸送系シンポジウ
ム等で毎年発表しております.2012 年度の主な発表
内容は次の通りです.
に取って代わるグリシジルアジ化ポリマーの燃焼特
(1) Y. Sato etc. 43rd ICT pp.25.1-25.5. 2012.
性に関する研究を進めています.ハイブリッドロ
(2) H. Osugi etc. 43rd ICT pp.35.1-35.6. 2012.
ケットは燃料に金属を混合して酸化雰囲気下の着火
(3) A. Kamisaka etc. AIAA Paper 2012-3829.
燃焼特性を取得しています.固体ロケットに関して
(4) S. Yamauchi etc. AIAA Paper 2012-3972.
は JAXA と共同で ADN を酸化剤に用いるための研究
(5) S. Oide etc. AIAA Paper 2012-3973.
会を開催しています.
その他投稿論文 3 報
熱工学系
・高効率エネルギー変換に関する研究:
理工学部シンボリックプロジェクトの1テーマで,
プラズマ点火エンジンを開発している(物理・数学・
機械工学科教員と共同研究).
・ナノインジェクタに関する研究:
微細気泡や微細燃料粒子生成のため,FIB を用いて
加工できるナノサイズの超小型噴射器を開発中(電
エンジンの環境対応や高性能化に寄与する目的で, 気・機械工学科教員と共同研究)
以下のような研究を行っています.
・音場保炎の研究:
論文発表等
音波を利用し,保炎器無しで圧力損失を抑えつつ 1. A Novel Flame Stabilization Method Using Standing
ラムジェット相当の気流中で高効率に保炎できる Acoustic Fields, AIAA paper, AIAA2013-0694, 2013.
2. Effect of Nitrogen Dilution on the Characteristics of
技術を開発している.
HCCI Combustion, AIAA paper, AIAA2013-1048,
・微小重力燃焼に関する研究:
様々な燃焼現象について落下塔などを利用した微 2013
小重力実験で解明し,爆発予測などの理論構築を 3. Influence of flame propagation velocity on knocking
目指している.(国際宇宙ステーション利用の装置 intensity in a super rapid compression machine, The 8th
COMODIA, 2012
開発および TEXUS ロケット実験プロジェクトで国
4. Toward Future Efficient Low-Temperature Combustion
内他大学・JAXA およびドイツ航空宇宙局・ZARM 研
Engines: Combustion Characteristic of Diluted Mixture
究所と共同研究)
for the Case of SI/HCCI in RCM, 5th PACME, 2012.
・高温高圧乱流希薄燃焼に関する研究:
5. Effect of Periodic Flame Wrinkling by Standing
高効率高負荷エンジンの鍵となる希薄燃焼時の乱 Acoustic Wave on the Burning Velocity of Premixed
流火炎伝播特性を調査している.
(重工と共同研究) Flame in Combustion Bomb, 5th PACME, 2012.
・HCCI エンジンの燃焼可視化計測:
ディーゼルとガソリンエンジンの中間的な動作を 著書
する環境対応型エンジンの実現を目指している. 1. 工業熱力学 基礎編(第6刷)第7章,東京大学
出版会,2010
(自動車メーカと共同研究)
田辺光昭 教授
-9-
平成 24 年度 各教員の研究・活動
航空宇宙工学系
の代わりに局所的相互作用則を用いて,直接的に生物
石川芳男 教授
活動を模擬するシミュレーション手法である.
5)Winged seed の遺伝的発達に関する研究:
植物の種子の中には翼を持ち,自ら飛行することで
■現在の主な研究内容:
1)Space-plane(SP) の概念設計に関する研究:
SP は,スペースシャトルに代わる次世代型宇宙
往還機である.これの概念設計を行うためには,強
力なシステム最適化法を構築する必要がある.
2)MPD スラスタの最適化に関する研究:
宇宙における電気推進器の1つである MPD スラス
タの性能を最大化するため,電磁流体解析を伴う最
適化シミュレーションを行っている.
3)宇宙基地の構築に関する研究:
宇宙における生命維持・人間活動・さらには生命
連鎖を保証するために必要な,人工閉鎖生態系にお
ける安定した物質循環の確立を目指している.
4)個体ベースモデルによる微生物生態系の研究:
個体ベースモデルを用いて,3種の微生物(生産
者・分解者・捕食者)から成る生態系の解析を行っ
ている.個体ベースモデルは,従来の微分方程式系
航空宇宙工学系
安田邦男 教授
散布するものがある.これは,何らかの基準で最適化
され生まれたはずであり,最適化手法を用いてこの発
達をシミュレーションしようとしている.
■昨年の主な発表論文:
1) 石川,村上,山口,中根,石川,吉田,山口,窪田,村上,
松尾:2 段式スペースプレーン(TSTO) における母機・
軌道機間の結合時空力干渉が上昇問題の最適化に与
える影響の調査,第56回宇宙科学技術連合講演会
2) 渕上,井戸田,中根,石川,窪田,船木:2 温度モデ
ルを用いた MPD スラスタの放電室形状最適化,第5
6回宇宙科学技術連合講演会
3) 木村,中根,石川、宮嶋:耐故障性を考慮した CELSS
電力管理,第56回宇宙科学技術連合講演会
4) 紫藤,中根,石川,宮嶋:CELSS 内の廃棄物処理法の
違いが物質循環へ及ぼす影響,2012 生態工学会年次
大会
5) 寺尾,中根,石川,杉浦:マイクロコズムにおける
2 種のバクテリアの共存状態について,2012 生態工
学会年次大会
6) 中根,尾崎,吉田,山口,石川:最適化手法による
Winged Seed 形態の進化に関する研究(第3報), 第 17 回計算工学講演会
考慮しています.
・野球ボールの空力・飛行特性に関する研究:野球の
ボールの運動は,今までに多くの研究がなされてい
ます.最近では,シーム(縫い目)の影響が議論さ
航空機が飛行するために必要な空気力をどのよう
れています.しかし,ボールの軌道の変化は,シー
に生じ利用しているかについての研究を行っていま
ムの影響より野球ボールの回転数や回転軸の傾きに
す.また固定翼や回転翼などの航空機のみならず,
よる影響の方が大きいのではないかと考えました.
航空工学で発達してきた理論や計算法を用いて動物
そこで,野球ボールに働く慣性力,空気力及び重力
や植物などの生物の飛行やスポーツ関係の空力・飛
を求め,野球ボールの運動方程式を導出し,解析す
行特性に関する研究も行っています.
る事により,野球ボールの空力・飛行特性を明らか
研究内容
にしています.
・地面効果内における高アスペクト比柔軟翼の空力
研究成果
特性: 人力飛行機やグライダーなどの高アスペク
・上杉宏樹,安田邦男:“ 高アスペクト比柔軟翼の空
ト比の柔軟な構造の翼では,空気力や自重により容
力特性 ”,第50回飛行機シンポジウム
易に変位を起こします.この翼の変位により,上反
・上杉宏樹,安田邦男:“ 地面付近における高アスペ
角や迎角が変化し,翼の空気力を変化させる要因に
なります.本研究では,そのような翼の変位に伴い
空力特性がどのように変化するのかを有限変形理論
と3次元揚力面理論により計算します.また人力飛
行機は,地面付近を飛行していますので地面効果を
- 10 -
クト比柔軟翼の空力特性 ”,第18回スカイスポー
ツシンポジウム
・田中優太,岡 竜平,安田邦男:
“ 野球ボールの空力・
飛行特性に関する研究 ”,第56回日本大学理工学
部学術講演会
平成 24 年度 各教員の研究・活動
航空宇宙工学系
解を求めている.
中根昌克 助教
近年までの研究で,この最適化ツールに関しては
開発が終わり,簡単なモデルに関しては結論が得ら
■現在の主な研究内容:
石川芳男教授と一緒に宇宙システムや循環シス
テムなどの問題の解析および最適化に関する研究
などを行っている.その中の 1 つ,
スペースプレー
ンの概念設計に関して述べる.
スペースプレーンには様々な形式が考えられて
いるが,ここでは水平離着陸を行うものを想定し,
特に上昇過程を対象としている.すなわち,飛行
機のように滑走路を加速・離陸し,途中でエンジ
ンを変更しながら上昇し,最終的には高度 100km
で軌道周回速度になるものを考えている.
結論から申せば,現存する構造材料や推進器で
スペースプレーンを実現させることは不能であ
る.そのため,スペースプレーンのどの構成要素
の性能が向上すれば実現性が,スペースプレーン
の成立性が大きく向上するのかを明らかにしたい
と研究を行っている.この際,スペースプレーン
の形状と飛行経路を統合的に最適化することで,
Photo Gallery
れている.これは単純いえば「多少燃費が悪くても,
軽くて大きな推力を得ることができるエンジン」が
開発されれば,最終的に全体的に軽い機体となり,
成立性が上がった.
現在はスペースプレーンモデルの厳密化に取りか
かっており,この数年は JAXA の数値流体解析ソルバー
の「FaSTER」をベースに,いかに揚力や抗力を推算
するのか,という方法を考えている.また 2 段式スペー
スプレーンの場合に,どの位置で 2 つの機体を結合
さ せ る の が 良 い の か,と い う 研 究 も 昨 年 行 っ た.
ちょっと驚きの結果がえられたのであるが,数値計
算であるので,最終的には実験してみないといけな
いな,と感じている.
■ 昨年の主な発表論文:
1) NAKANE, YAMAZAKI, ISHIKAWA and
MIYAJIMA:” System Structure Modification in
Advanced Life Support System using Autonomous
Control Method”, AIAA-2012-3410.
~平成 24 年度オープンキャンパスより~
- 11 -
平成 24 年度 修士論文・卒業研究題目
■
修士論文題目
《動力学・制御工学系》
・ ウェーブレット変換を用いた小型固定翼 UAV のシステム同定
・ 観測誤差を考慮した固定翼 UAV の遷移飛行制御系の設計
・ 単純化した人力飛行機モデルに基づく飛行距離の最適化
・ 小型固定翼 UAV に対するロバスト飛行制御系の設計
・ Quad Tilt-Wing 型 UAV の遷移飛行の制御系設計
・ カウンタウェイトを用いた宇宙エレベータの振動制御
《構造・材料工学系》
・ 膜面宇宙構造物の伸展部材用コンベックステープの展開挙動に関する研究
・ 分岐解析による張力構造物の動的応答の解構造探索
・ ヒンジ特性が超小型人工衛星用軽量パネル構造の展開挙動に与える影響
・ 純 Ti と水素化 Ti 添加による B4C/Ti-6Al-4V の焼結性及び機械的特性への影響
・ 計測データと数値解析の統合による膜面展開宇宙構造物の形状推定に関する研究
・ 疑似 HIP 法を用いたチタン焼結体の緻密化及び有限要素法による焼結後の形状予測
《流体工学系》
・ 低レイノルズ数領域における 2 次元噴流のフラッピング現象
・ パルス変調を用いたプラズマアクチュエータが誘起する流れ
《熱工学系》
・ AP / AN 系コンポジット推進薬における燃焼表面近傍でのアルミニウムの集塊特性
・ 宇宙往還機に用いるダクテッドロケットエンジン―高空燃比における燃焼効率―
・ ダクテッドロケットにおけるホウ素粒子の燃焼特性―粒子間距離が燃焼効率に及ぼす影響―
・ HCCI 字の自発点火遅れ時間と燃焼特性及びその支配要因
・ ガスハイブリッドロケット用 GAP / AP 系ガスジェネレータの燃焼速度特性
・ 火花点火機関の筒内流動場におけるノッキング強度に関する研究
・ 金属又は酸化剤点火による液状 GAP の着火・燃焼特性
・ 周期的な圧力勾配を与えた予混合火炎の燃焼速度に関する研究
《航空宇宙工学系》
・ TSTO における軌道機搭載位置が上昇フェーズに与える影響の調査
・ 地面効果内における高アスペクト比柔軟翼の空力特性に関する研究
・ 耐故障性を考慮した CELSS 電力管理
・ CELSS の成立に必要な最小循環物質量の探索
・ 2 温度モデルを用いた自己誘起磁場型 MPD スラスタの放電室形状最適化
- 12 -
■
卒業研究題目
《動力学・制御工学系》
●嶋田・安部(明)研究室
・宇宙往還機の未知動特性に対する適応飛行制御系
・人力飛行機用フライトシミュレータの開発
・無人航空機の自律飛行制御のための研究
●内山研究室
・超音波クローラを用いたローバの開発
・一般化正準変換を用いた宇宙機のフォーメーションフライト
・SLAM とポテンシャル関数法の融合による惑星探査ローバの誘導制御
・高度制御を考慮した誘導ポテンシャル関数法による UAV のフォーメーションフライト
・非線形性を考慮した固定翼 UAV の遷移飛行制御
《構造・材料工学系》
●出井研究室
・放電プラズマ焼結法による TiB/Ti-6Al-4V のフレッティング疲労及び面圧特性の評価
・放電プラズマ焼結機を用いた擬似 HIP 法によるチタン焼結体の作製
・TiC自己生成反応による TiC強化 Ti 合金の機械的特性の検討
・放電プラズマ焼結法による純 Ti と TiB/Ti 複合材料の粉末粒形が亀裂進展に及ぼす影響
・放電プラズマ焼結法による Ti 焼結体へのβ安定化元素添加および TiB 強化の機械的特性に
ぼす影響
・Ti,TiH2 添加による B4C/Ti-6Al-4V の焼結性及び機械的特性の改善
●川島研究室
・グライダー曳航用のウイークメンバーの規格について
・ウインチ発航中の索の不意な破断を含む離脱に遭遇したグライダの飛行挙動と
操舵方法について
●宮崎研究室
・超小型 SAR 衛星研究 衛星システムのフィージビリティスタディと
統計定期手法による SAR アンテナの形状誤差評価法
・ゴッサマー構造物の地上実験法に関する研究
-減圧下での膜面の遠心力展開における状態推定-
・超小型人工衛星の分離機構の開発
・学生衛星における開発方法論の研究
・超小型人工衛星に関する研究 SPROUT をモデルとした姿勢解析,熱解析
・超小型人工衛星のためのパネル展開機構の研究開発
《流体工学系》
●村松研究室
・サイドジェットの形成条件 流れの可視化及び速度変動からの推定
・低レイノルズ数領域における 2 次元噴流の遷移
・粒子画像流速測定法の実験 PIV 計測装置の導入と実験用流れ場の製作
・流れ場の 3 次元的な可視化
●本橋・大竹研究室
・複数のプラズマアクチュエータによる誘起流れの特性
・低レイノルズ数領域における 3%,12%円弧翼の圧力分布の測定
・Ishii 翼型の空力特性と流れ場の特性
・人力飛行機胴体周りの数値計算
・DBD プラズマアクチュエータを適用したデルタ翼の特性
・低レイノルズ数領域におけるデルタ翼の空力特性
- 13 -
●安部(建)研究室
・人力飛行機用可変ピッチプロペラに関する研究
・人力飛行機記録挑戦プロジェクト プロジェクト管理におけるマインドマップ法の活用
《熱工学系》
●桒原研究室
・固体推進薬の燃焼特性に及ぼす H2O 添加の影響
・一液性スラスタに用いる GAP の着火特性
‐衝突する液滴のウェーバー数と平板接触時間の関係 ・ガスハイブリッドロケットに用いる酸化剤 H2O 液滴の燃焼特性
・ダクテッドロケット用推進薬に含まれる多種金属粒子の輝炎~ホウ素,マグナリウム~
・ガスハイブリッドロケット用 HAN 溶液の熱分解及び着火特性
●田辺研究室
・HCCI の自発点火遅れ及び圧力上昇率に関する研究
・窒素希釈時の乱れがノッキング強度に与える影響
・超音波が火炎伝播とエンドガスの自発点火に及ぼす影響
・定在音場により予混合火炎に生じる周期的な皺の深さに音圧が与える影響
・二次元的に形成された部分予混合火炎の保炎に与える定在音場の影響
《航空宇宙工学系》
●石川・中根研究室
・スペースプレーンの概念設計に関する研究
・MPD スラスタの放電室形状最適化に関する研究・宇宙基地構築に関する研究
・個体ベースモデルによる微小生態系の解析
・Winged Seed 形態の遺伝的発達に関する研究
●安田研究室
・風車の空力特性に関する研究
・竹とんぼの飛行に関する研究
・トビウオの飛行に関する研究
・野球ボールの空力・飛行特性に関する研究
●松原研究室
・航空機の情報表示システムに関する研究
-AfpdsXNA の改良および表示情報の有効性に関する検証 ・ビジュアルセンシングに関する研究-ジェスチャー認識による回転翼 RPV のコントロール-
《一般教育教室》
●中原研究室
・高温下におけるペーストのメモリー効果を用いた破壊の制御
・磁性流体のメモリー効果と乾燥破壊制御
●御前研究室
・多体系に外部から飛翔してきた物体の捕捉について
●渡辺研究室
・マッハプローブ及びピトー管を用いたプラズマジェットの特性計測
・直線静電核融合中性子線源の開発
・中空型アークジェットスラスターの小型化・大電流化
・電熱型大電流グロージェットスラスタの基礎研究
・中空型擬火花放電スラスタの大電流化
・MPD スラスタにおけるラバルノズルの効果
- 14 -
平成 25 年度 新カリキュラムについて
平成 25 年度新入生より新カリキュラムが
3.基礎 4 力学の理解を十分にするために,
始まります(次ページの表).このカリキュ
旧カリキュラムでは「流体/熱力学Ⅰ,
ラムはいかのような特徴を持っています.
Ⅱ」に対応する「基礎力学および演習Ⅰ,
1.学科の学習・教育目標に則り基礎 4 力学
Ⅲ」と,「工業/材料力学Ⅰ,Ⅱ」に対応
(工業力学,材料力学,流体力学,熱力学)
する「基礎力学および演習Ⅱ,Ⅳ」とい
を基礎として,専門教育科目を 4 つの系
う 4 つの演習科目を取り入れた.本カリ
列(制御・工業力学系,材料・構造力学
キュラムではさらにそれを増やし,4力
系,流体力学系,熱力学系)と共通分野
学のⅠ,Ⅱおよび「熱力学と流体力学の
(実験,製図,工作法等)に分けた.そ
して,基本的な力学・数学を使いこなし,
基礎」対応する演習科目(計 9 科目)を
設置し,実践力の養成を狙った.
物理現象の理解や基本的な実験方法につ
いての知識・経験を有する「基礎学力の
また現在,学科では教員各々が行っている
ある学生」を育てる.具体的には,この
研究を基に各研究室を 5 つの系列に分類して
4 系列がほぼ同じくらいの単位数とし,
おります.一方で,近年は研究分野が横断的
これら根幹科目分野に関連した授業を一
になってきているため,これらの分類が難し
様に教育する.
くなっております.今回のカリキュラムで教
2.前カリキュラムでは大学導入教育として
育を 4 つ系列均等に纏めましたので,研究室
「航空宇宙工学インセンティブ」
「航空宇
の方も「どの系列の授業を主に教えるか」で
宙工学スタディスキルズ」を設置した.
分類し直す予定です.向こう数年は教員の退
本カリキュラムではさらに,「熱力学と
職等も重なり,研究室の配置が大きく移動す
流体力学の基礎」を設置し,旧カリキュ
る予定です.3 号館入口に研究室案内図があ
ラムでは 2 年時に設置していた「材料力
り,研究室の移動があった場合は年度初めに
学Ⅰ,Ⅱ」を,1 年後期から 2 年後期ま
修正する予定ですので,研究室へお越しの際
での「材料力学Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ」として,高等
はこの案内板を確認していただくようにお願
学校までに馴染みがないと思われる基幹
いします.
教科の導入教育を充実した.また,1 年
後期から 3 年後期にかけて,各研究室で
少人数教育を受ける「航空宇宙工学演習
Ⅰ~Ⅴ」を設けた.これらの授業,およ
び未来博士工房と連携して,教員や大学
院生,さらには学年を超えた交流の中で
航空宇宙工学の実践教育を行い,卒業研
究へのスムーズな導入を狙っている.
- 15 -
設置年次
科目区分
教
養
教
育
科
目
選択
外
国
語
科
目
専
門
- 16 -
4年次
哲学,文学,日本語表現法,教養ゼミナール,他,10単位以上
必修
スポーツⅠ (1)
選択
スポーツⅡ他 選
択
基礎物理学実験 (2)
※微分積分学Ⅰ (2)
※微分積分学Ⅱ(2)
※数学演習Ⅰ (1)
※数学演習Ⅱ (1)
※線形代数学Ⅰ (2)
※線形代数学Ⅱ (2)
※力と運動の物理学Ⅰ (2)
※力と運動の物理学Ⅱ (2)
関数論Ⅰ (2)
関数論Ⅱ (2)
微分方程式Ⅰ (2)
微分方程式Ⅱ (2)
※力と運動の物理学Ⅰ演習 (1)
※力と運動の物理学Ⅱ演習 (1)
選
択
必
修
専
門
教
育
科
目
3年次
選択
必
修
共
基 通
礎
教
育
科
目
2年次
英語ⅠA (1)
英語ⅠB (1)
英語ⅡA (1)
英語ⅡB (1)
English Communication,ドイツ語文法 他,必修以外に英語2単位以上含めて6単位以上必要
必
修
保
健
教
育
科
目
1年次
選
択
当学科では上記科目を推奨するが,別の教科を選択することもできる
力学の基礎及び演習 (1.5) ※工業数学Ⅱ (2)
品質工学及び演習 (1.5)
※工業数学Ⅰ (2)
※工業数学Ⅲ (2)
※信号処理 (2)
※コンピュータプログラミン
グ及び演習Ⅰ(1.5)
※コンピュータプログラミン
グ及び演習Ⅱ(1.5)
航空宇宙工学インセンティブ (2) 設計製図Ⅰ(2)
航空宇宙工学実験ⅡA (2)
航空宇宙工学スタディ・スキルズ (1) 設計製図Ⅱ(2)
航空宇宙工学実験ⅡB (2)
基礎製図Ⅰ(2)
航空宇宙工学実験Ⅰ (4) 航空宇宙工学演習 (1)
基礎製図Ⅱ(2)
※材料力学Ⅰ (2)
※工業力学Ⅰ (2)
※宇宙機力学Ⅰ (2)
※熱力学と流体力学の基礎 (2) ※工業力学Ⅱ (2)
※制御工学Ⅰ (2)
機械要素及び工作法 (2)
※材料力学Ⅱ (2)
※飛行力学 (2)
材料力学演習Ⅰ(0.5)
※流体力学Ⅰ (2)
※振動工学 (2)
熱力学と流体力学の基礎演習(0.5) ※流体力学Ⅱ (2)
※航空機構造力学 (2)
航空宇宙工房演習Ⅰ (1) ※熱力学Ⅰ (2)
※粘性流体力学 (2)
※熱力学Ⅱ (2)
※伝熱工学Ⅰ (2)
※航空力学Ⅰ (2)
宇宙機力学Ⅱ (2)
※航空宇宙材料Ⅰ (2)
制御工学Ⅱ (2)
材料力学Ⅲ (2)
飛行力学Ⅱ (2)
工業力学演習Ⅰ (0.5)
航空宇宙材料Ⅱ (2)
工業力学演習Ⅱ (0.5)
航空力学Ⅱ (2)
材料力学演習Ⅱ (0.5)
圧縮性流体力学 (2)
流体力学演習Ⅰ (0.5)
反応性流体力学 (2)
流体力学演習Ⅱ (0.5)
伝熱工学Ⅱ (2)
熱力学演習Ⅰ (0.5)
航空機構造設計製図 (2)
熱力学演習Ⅱ (0.5)
電気の基礎 (2)
航空宇宙工房演習Ⅱ (1) 電子回路 (2)
航空宇宙工房演習Ⅲ (1) システム工学 (2)
航空宇宙工房演習Ⅳ (1)
航空宇宙工房演習Ⅴ (1)
航空宇宙工学特殊講義Ⅰ (2)
航空宇宙工学特殊講義Ⅱ (2)
卒業研究 (6)
制御工学Ⅲ (2)
ジェットエンジン (2)
ロケットエンジン (2)
機体生産技術 (2)
ヘリコプタ工学 (2)
宇宙機設計 (2)
就職状況
平成 24 年度 就職指導委員会委員
4年生担任就職担当
3年生担任就職担当
航空宇宙工学科では,就職指導委員会委員
の教員,3・4年生担任の就職担当教員,就
職担当事務員が,各研究室教員と連携して大
学院生と学部生の就職支援を担っています.
以下に,平成 24 年度の就職・進学状況お
よび就職支援について説明します.
就職・進学状況
平成 24 年度は,東日本大震災の影響を受
けた前年度に続き,依然として厳しい就職環
境となりました.企業の業績が低迷している
中でも学科への求人件数が減少した訳ではあ
りません.しかしながら,多くの企業で選考
が厳しくなっていて,学生の学力低下と目的
意識の欠如も相まって,学科推薦での合格率
は減少傾向にあります.
学部生では,企業の選択範囲が広くなる傾
向が強くなり,学科創設時から多数の採用実
績がある企業への内定は 3 割弱に留まりまし
た.採用実績のある企業は勿論のこと,学科
への直接求人の中から各自の能力に見合う企
業を選択すれば,多数の会社説明会を駆け回
ることなく効率的に内定が得られるにも関わ
らず,それを実践する学生が多くはないこと
が分かります.
就職希望者の内定率は,学部生が 94%,大
学院生が 100% となっています※.
学部生の大学院進学については,航空宇宙
工学専攻への進学者数は前年度よりも増加し
ましたが,他大学院への進学者はありません
でした.進学希望者の進学率は 85% となって
います.
学部生と大学院生の今年度の就職・進学状
況を図1と図2に示します.
松原 一雄
田辺 光昭
安部 建一
就職支援
厳しい就職環境の中,学生が企業の選択や
就職活動をスムーズに進められるように様々
なサポートを行っています.
学科としては,就職希望者に対する「就職
説明会」を 11 月に,進学希望者に対する「大
学院進学説明会」を 12 月に実施しました.
就職説明会では,リクルートから専門家を招
き,適性検査 SPI2 に社会関係的側面と組織
適応性を追加した SPI3 に関する講演をお願
いしました.又,航空宇宙工学科 OB 会(飛
翔会)の協力で,企業で活躍している卒業生
による講演や座談会を 8 月から 12 月の間に 5
回開催しました.本田技研工業,日産自動車,
IHI,全日空,東芝,日立製作所,日本電気航
空宇宙システム等 15 社から OB の出席があり,
参加した学生には有意義なものとなりまし
た.
理工学部の就職指導課では,自己分析講座,
エントリーシート対策講座,就職活動マナー
講座,適職診断テスト,自己表現テスト,
SPI2 対策テスト,面接対策セミナー,模擬面
接,公務員試験対策講座,教員採用試験模試
等,多数の講座やテストを実施しています.
特に昨年度からは,職業観や進路選択できる
力を身に着けるキャリア教育の一環として,
低学年からのコンピテンシー講座に力を入れ
ています.
企業説明会としては,大学主催の「合同企
業研究会」,理工学部主催の「業界セミナー」
等を開催しました.業界セミナーでは,12 月
の 5 日間および 2 月の 3 日間で,延べ1万人
近い学生の参加があり,参加企業からも好評
を得ています.
※平成 25 年 3 月 13 日現在
- 17 -
平成 24 年度の就職・進学状況
輸送機械製造
(トヨタ自動車・本田技研工業・スズ
キ・いすゞ自動車・日野自動車・UD
トラックス・総合車両製作所・ヤマ
ハ発動機・ジャムコほか)
進学
(日本大学大学院理工学研究科航空宇宙工学専攻・日本大学大学院
理工学研究科量子理工学専攻)
公務員(4.2%)
(海上保安庁・東京都・東京
消防庁・秋田県警)
一般・精密機械製造
(クボタ・カヤバ工業・鷺
宮製作所ほか)
15.8%
研究・公的機関・公益法人
(2.1%)
(JAXA・ボーケン品質評価
機構)
28.4%
7.4%
学
4.2%
9.5%
建設・不動産
(プラント建設含)
(5.2%)
(東急コミュニティー・東京レ
ジデンシャル不動産・三好
鉄工所)
その他
(丸紅エアロスペース・鹿児
島銀行・キャノンシステム
アンドサポートほか)
部
電気電子機器製造
(東芝・日本電気・富士
電機・デンソーほか)
8.4%
運輸・整備
(Peach Aviation・中日本
航空・朝日航洋・東日本
旅 客 鉄 道 ・ 東海 旅 客 鉄
道・日本郵船ほか)
11.6%
情報通信関連(3.2%)
(NEC ネッツシステムズ・リコーテ
クノシステムズほか)
設計・技術支援
(IHI エアロスペースエンジニアリング・高砂熱学工
業・中央エンジニアリング・アルプス技研ほか)
図1 学部生の就職・進学状況
公務員(3.6%)
(文部科学省)
設計・技術支援
(日揮プラントソリューション・
リクルートスタッフィング・エ
イイーエス)
情報通信関連
(三菱スペースソフトウェ
ア・日本アドバンステク
ノロジー・日立情報制御
ソリューションズ)
10.7%
10.7%
大学院
53.6%
7.1%
運輸・整備
(日本航空・東日本旅客鉄道・
日揮プラントソリューショ
ン)
10.7%
輸送機械製造
(三菱重工業・富士重工
業・日本飛行機・トヨタ
自動車・スズキ・いすゞ
自動車・日野自動車・日
産車体・総合車両製作
所・KCM・日立オート
モーティブシステム・マ
ーレエンジンコンポー
ネンツジャパン)
一般・精密機械製造
(日立建機・NOK・鷺宮製作所)
電気電子機器製造(3.6%)
(三菱電機)
図2 大学院生の就職・進学状況
(平成 25 年 3 月 13 日現在)
- 18 -
<付表>
表は,航空宇宙工学科および航空宇宙工学専攻の
卒業生の主な進路を表しています.
民間企業への就職については,多数の採用実績が
ある企業名と就職者数を示しています.学部生は上
位 50 社,大学院生は上位 30 社です.公務員・教
員・研究機関・公的機関等への就職および進学先に
ついては,紙面の都合で具体的な名称は省略してい
ます.学部生の大学院進学率は,通算では 17.4% で
すが,最近の 5 年間では 30.0% となっています.
学部生の就職先(上位 50 社)・進学先
企業名
通算
本田技研工業(株)(含む研究所)
74
富士重工業(株)
56
全日本空輸(株)(含むパイロット)
49
トヨタ自動車(株)
47
日産自動車(株)
41
三菱スペース・ソフトウェア(株)
41
三菱自動車工業(株)
40
(株)ジャムコ
39
NEC航空宇宙システム(株)
36
いすゞ自動車(株)(含む研究所)
34
スズキ(株)
34
富士通(株)
33
・通算:学科創設時から平成 24 年度までの総数
三菱プレシジョン(株)
28
(株)デンソー
27
・H20 ~ 23:最近 4 年間の合計数
日本航空(株)
26
・H24:平成 24 年度の結果(平成 25 年 3 月 13 日現在)
日野自動車(株)
25
(株)メイテック
25
大学院生の就職先(上位 30 社)・進学先
川崎重工業(株)
24
H20
日本飛行機(株)
23
就職先・進学先
通算
H24
~ 23
中菱エンジニアリング(株)
22
6
本田技研工業(株)(含む研究所)
25
日本航空電子工業(株)
20
2
6
トヨタ自動車(株)
23
マツダ(株)
20
1
3
三菱重工業(株)
20
ヤマハ発動機(株)
20
1
関東自動車工業(株)
2
19
三菱電機(株)
19
三菱電機(株)
19
2
4
富士重工業(株)
18
(株)日産テクノ
17
3
(株)IHI
16
東日本旅客鉄道(株)
17
1
日産自動車(株)
14
日本電気(株)
16
1
(株)日立製作所
10
(株)
IHI
15
1
1
三菱スペース・ソフトウェア(株)
9
アイシン精機(株)
15
川崎重工業(株)
8
自営業
15
1
日本航空(株)
7
日本電気通信システム(株)
15
富士通(株)
7
曙ブレ-キ工業(株)
14
2
3
スズキ(株)
6
MHIエアロスペースシステムズ(株) 14
3
中菱エンジニアリング(株)
6
(株)コマツ
14
宇宙技術開発(株)
5
SCSK(株)
13
1
(株)東芝
5
全日空整備(株)
13
1
2
東日本旅客鉄道(株)
5
日産車体(株)
13
1
マツダ(株)
5
富士エアロスペーステクノロジー(株) 13
NEC 航空宇宙システム(株)
2
4
三菱重工業(株)
13
(株)荏原製作所
4
NOK(株)
12
MHI エアロスペースシステムズ ( 株 )
1
4
全日空システム企画(株)
12
(株)セック
(株)中央エンジニアリング
4
12
(株)セック
11
日本航空電子工業(株)
4
日本アビオニクス(株)
11
日本電気(株)
4
(株)菱友システムズ
11
1
日本航空機(株)
4
朝日航洋(株)
10
1
日野自動車(株)
4
(株)アルプス技研
10
1
1
いすゞ自動車(株)(含む研究所)
3
日本精工(株)
(NSK)
10
1
デンソー(株)
3
東京計器(株)
10
1
2
(株)鷺宮製作所
3
公務員・教員ほか
1
三菱プレシジョン(株)
3
国家公務員
36
公務員・教員ほか
地方公務員
28
1
1
国家公務員
12
教員
25
遅行公務員
5
研究機関、公的機関、公益法人など
15
1
教員(大学を含む)
12
警察、消防、自衛官
29
1
研究機関,公的機関,公益法人など
15
進 学
進 学
日本大学大学院(航空宇宙工学専攻)
524
5
日本大学大学院(航空宇宙工学専攻) 12
日本大学大学院(他専攻)
26
1
日本大学大学院(他専攻)
1
他大学院(東大、東北大、海外など)
87
3
他大学院(東大、東北大、総研大など)
7
その他(他大学、専門学校など)
52
H20
~ 23
9
8
7
3
1
1
H24
1
2
6
3
1
13
1
1
1
2
1
6
1
2
2
5
1
2
3
1
2
7
1
2
1
1
3
1
1
2
4
3
1
2
3
6
1
2
1
1
2
1
1
4
1
7
2
3
102
5
19
4
26
1
- 19 -
航空宇宙工学科 行事予定
平成 25 年度 平成 25 年
4月
10 月
・学部一般入試(AO)
・ガイダンス
11 月
・入学式
・学部祭
・前期授業開始
・船橋キャンパスウォッチング
・定期健康診断
・学部推薦入試(付属高校 B 方式、指定校、
5月
・理工・短大合同スポーツ大会
6月
公募制高校長推薦)
・大学院入試(外国人留学生)
・付属高校生のためのオープンカレッジ
12 月
・理工学部学術講演会
・後援会役員会・総会
・学部推薦入試(付属高校 A 方式)
7月
・学部入学試験(帰国生・校友子女)
・大学院入試(前期課程(推薦、一般 1 期))
・大学院進学説明会
・駿河台入試フォーラム
平成 26 年
・前期授業終了
1 月
・前期試験
・後期授業終了
8 月
・後期試験
・オープンキャンパス(船橋)
2 月
・後援会地方父母懇談会
・卒業研究報告書要旨提出
9 月
・学部一般入試(A 方式)
・編入学試験(学士、推薦、一般)
・修士論文審査会
・大学院入試(前期課程(一般第 2 期、社
3 月
会人第 1 期)、後期課程(一般第 1 期、 ・学部一般入試(CA 方式)
社会人第 1 期))
・大学院入試(前期課程(一般第 3 期、社
・夏季集中実験(グライダー曳航実験ほか)
・後期授業開始
第 2 期、社会人第 2 期))
会人第 2 期、飛び級)
、後期課程(一般
・卒業・修了発表
・卒業式
飛翔
日本大理工学部航空宇宙工学科活動誌 No.5
編集:中根 昌克
発行者:村松 旦典
発行日:平成 25 年 4 月 1 日
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〒274-8501
千葉県船橋市習志野台 7-24-1
日本大学理工学部航空宇宙工学科
Tel.:047-469-5387( 事務室 )
Fax:047-467-9569
http://www.aero.cst.nihon-u.ac.jp/