大阪商工会議所中小企業振興部 〒540-0029 大阪市中央区本町橋2番8号 TEL06(6944)6451 FAX06(4791)0444 No.210 2008.6.20 ニューズレター(6月) テーマ 1.工夫ある経営で頑張っている中小企業(8 件) ………………………… 2頁 ○「不可能を可能に」独自の企画力ある商品提供を目指す(㈱J−COMPLETE・西淀川区) ○転業して頑張る英国風喫茶店(グロヴナーカフェ・都島区) ○ユーザーが求める品質以上のモノづくりにこだわる工場(岸本金属製作所・城東区) ○「囲い込み」作戦を展開する街のCDショップ(ザ・メロディ・中央区) ○ユーザーに「最高のエクスタシー」を感じて頂けることを目標に頑張っている ワンオフバイクマフラーメーカー(モリヤス・アイアンワークス・生野区) ○ なんとかせなアカン! との気持ちで 21 種類の自社商品開発(㈲アラヤ・生野区) ○魚食文化を伝える町の魚屋さん!(きぬ川・天王寺区) ○事業提携で業績アップを実現した印刷企業(㈱ひかり工房・浪速区) 2.地域の動き(6件) ………………………… 9頁 ○第 13 回納涼交流会を開催(東淀川区) ○商店街イベント事業でコラボレーション(北区) ○此花区に「ライフ西九条店」がオープン(此花区) ○大正異業種交流会 20 周年記念式典開催(大正・浪速・西成支部) ○古代のお姫さまがやってきた「古代市」が開催(平野区) ○ジョイフル安立は活性化に向け動き出した(住之江区) 大阪のあるべき姿と重点テーマを示す「ビジョン」と、そ の実現に向けた「アクションプラン」をとりまとめたのが 「大阪賑わい創出プラン」です。 ビジネス・ホームドク ター である経営指導員が、 地域商工業に活力あふれる 「大 阪」をつくりだすための支援をします。 新淀川支部(淀川三区担当) 北・都島・福島支部 旭・城東・鶴見支部 中央支部 此花・西・港支部 東成・生野支部 天王寺・阿倍野支部 大正・浪速・西成支部 東住吉・平野支部 住之江・住吉支部 工夫ある経営で頑張っている中小企業 「不可能を可能に」独自の企画力ある商品提供を目指す ㈱J−COMPLETE(ジェイ・コンプリート)(所在地:西淀川区姫島 3-13-41 http://www.j-complete.com/ URL: ℡:4808-4444)は西淀川区姫島通りにある自動車部品の製造販 売業者である。店頭には高級外車が何台も並んでおり、なかなか壮観である。 平成 17 年 10 月に創業。消費者のニーズや価値観の変化、多様化により経営環境が目まぐる しく変わる時代に他社との差別化を追求してきた。そうして、同社は代表者の経験と自ら得意 とする分野にできるだけ市場を限定し、今まであまりアフターパーツ等の少なかったジャガー という車種に的を絞り込み、技術力やアイデアで商品に独自の個性を持たせ、オリジナルパー ツの製作販売を中心に事業を展開してきた。 また同社は、ジャガーがメインのプロショップではあるが、輸入車・高級国産車のドレスア ップにも力を入れている。 「不可能を可能に」をコンセプトに掲げ、これまで実現できなかった 価値ある商品を提供してきた。その結果、開業後3年足らずの短期間で法人組織へと大きく成 長することができた。 社長の市村氏は「大切なのはお客様に喜んでいただけること」と自分の商売に誇りと情熱を 持ち、確かな将来ビジョンの中で邁進中である。 5月には輸入車のチューニング・ドレスアップを主役とした、″SISスペシャルインポー トカーショー2008年″に出展し、昨年に引き続き大きな反響があった。自社開発のオリジ ナルグッズもインターネット販売で順調に売上を伸ばしており、今後の発展に期待したい。 (新淀川支部) 転業して頑張る英国風喫茶店 JR環状線又は京阪電鉄京橋駅から京阪モール沿いに西へ徒歩3分あまりのところに、開店 から 10 周年を迎えた英国風の喫茶店「グロヴナーカフェ」がある(所在地:都島区東野田町 1-6-16 社長:森川浩氏 ℡:6354-9627) 。森川氏は喫茶店を営む前は、30 年余りにわたり松 下電器を中心にして、テレビやオーディオ等電化製品の海外向けカタログデザインを製作する 商業デザイナーだった。仕事上、たまたま出会った知人が喫茶店等を開業指導するコンサルタ ントだったことが縁となり、当時並ばないと入れないくらいに流行していた喫茶店の紹介見学 等で大いに触発され開業を決断した。 店は純英国調に統一されたインテリアになっており、大きな窓に架かるカーテンやテーブル クロスはすべて英国よりの直輸入品。その他店内を飾る陶器の置物や壁飾りも全て輸入物と、 大変なこだわりを持って店づくりを行っている。メニューを覗いてみると、これもまたかなり 2 ニューズレター210 号(平成 20 年6月) に英国ナイズされている。14 種類の紅茶と 10 種類の珈琲メニューもさることながら、何とい ってもサンドウィッチとケーキにこの店の大きな特徴がある。チキンやベーコン、野菜をたっ ぷりと挟み込んだ「アメリカンクラブハウス」や「BLTサンド」、 「ミラノドッグ」等 13 種類 のサンドウィッチはいずれもボリューム満点で、すべてのサンドウィッチ類にオリジナルのフ ライドポテトを添えているのも珍しい。 デザートのケーキやタルトは 100 種類余りあるオリジナルのレシピから、日替わりで 10 種余 りの製品を自店の設備を使って製造しているが、特に人気の高い木イチゴやベリーをたっぷり 使った「ベリーショート」や「グロヴナーショート」は定番メニューである。その他にも「ス コーンセット」や「アフターヌーンティーセット」もメニューにあがっており、通常の喫茶店 にはない英国調のこだわりがここにはある。 店の命名は約 38 年前、英国にご夫妻で旅行した際にハイドパークに面した旧貴族の館に宿泊 したことがあり、その時に強く印象に残った古典的ホテル「グロヴナーハウス」が由来となっ ている。総座席数は 43 席でゆったりとスペースが取られていて居心地が良い。営業時間はAM 9時からPM9時(第三水曜日定休)である。 バターや小麦粉等、最近の原料の値上がりは、材料の確保やコスト上昇で厳しい経営環境と なっているが、京橋界隈には珍しい特徴を持った店であり頑張ってほしいものである。 (北・都島・福島支部) ユーザーが求める品質以上のモノづくりにこだわる工場 岸本金属製作所(代表者:岸本博幸氏 所在地:城東区成育 5-16-2 ℡:6931-0426)は、 広さ 15 坪程の作業スペースで金属部品のプレス加工を行っている小さな町工場だ。 先代の岸本幸男氏が昭和 34 年に個人開業し、現在は息子の博幸氏が事業を引き継いでいる。 受注の大半は取引先から支給される材料の加工だが、一部組立ても行っている。狭い作業場に みっちりと配置された加工設備はいつもフル稼働の状態。工場に入ると自然と活気が伝わる。 金属部品のプレス加工と言えば、男性職場のイメージが強いが、同社のメンバーは全員女性 である。女性主体で作業するにはきつい仕事であるが、工夫しながら上手く役割分担している。 当然、加工精度も高い。正確で丁寧な仕事ぶりが高く評価され得意先からの評判は良好だ。 受注範囲の広さがもう一つの特徴。以前は電気部品の加工だけを行っていたが、特定業種の 好不況に左右されないようにと、自動車部品や建築金物の加工も行うようになった。 数人規模の町工場でこのような広範囲の加工を行っているところは余りない。予想どおり当 初は処理能力を超える受注を抱えてしまい仕掛りの山となる。設備投資の負担も重くのしかか り厳しい経営を強いられるが、博幸氏に迷いはなかった。注文が増えたからといって無理に加 工効率を上げていては品質が維持できない。品質を落として信用を失ったら元も子もないと当 初の考えを貫いた。時間はかかったが、皆で知恵を出し合い最善の加工方法を模索しだしてか 3 ニューズレター210 号(平成 20 年6月) ら 10 年、数年前からその効果が表れだした。今では多種類の受注を同時に受けても、高い精度 を維持したまま効率を落とさず加工できる工場に生まれ変わっている。 中小製造業を取り巻く環境は依然厳しい。原油高騰や鋼材の調達難などの不安要因も重なり 先の読めない状況が続いている。そのような中でも、同社は加工業者として地道な努力を怠ら ず、常にユーザーが求める品質以上のモノづくりにこだわることで着実に成長している。 (旭・城東・鶴見支部) 「囲い込み」作戦を展開する街のCDショップ 大阪ミナミ鰻谷通りの界隈にちょっとレトロで小粋な CDショップがある。店の名前は ザ・メロディ (所在 地:中央区東心斎橋 1−13−21 和田由ビル1階 −6477 ℡:6252 URL:http://home.att.ne.jp/blue/mel/)。白い パラペットと赤の文字(The MELODY.)が遠く からでも目立つ店である。 入口から店内に入ると、先ずは店主の森本徹氏がにこや かに迎えてくれる。そして壁面は、AOR、ウエストコー スト、ハワイアン系を中心とした懐かしい名ジャケットの 数々がジャンル別、アーティスト別にびっしりと陳列されている。選択に迷っていると、すか さず森本さんが寄って行ってアドバイス。このアドバイスがまた凄い。好きで入ったこの道 40 年の(執筆も多く、知る人ぞ知るプロ中のプロ)森本さんのアドバイスは、相手のレベルに合 わせて百変化するが、幅の広さと奥深さは驚嘆に値する。 内装基調はオールド・ハワイアン。レトロな雰囲気に加え、ウクレレやアロハシャツも置い てハワイムード満点であるが、当店の 売り は何と云っても、店の一角にカウンターを設け ハワイアンコーヒーやハワイアンビールを飲ませてくれる事。「客単価アップの為」と云ってし まえばそれまでだが、本音のところは「お茶でも楽しみながら、手に取ってゆっくりとCD選 びをして欲しい」との店主の気遣いである。特に遠方から出向いて来た中高年世代にはこの気 遣いが嬉しくも有難く、リラックスムードの中でついつい長居をしてしまうのである。 昨今は、PCや携帯電話にネット経由でダウンロードする ネット音楽配信の時代 。CDは 売れなくなり、同店も売上減で長年苦戦を強いられて来た。そこで、同店では生き残りを掛け て「囲い込み」作戦を展開中である。ターゲットはCDに一定の想い入れが有って、店頭若し くはネットでCDを実際に買ってくれる中高年・団塊世代。本所の支援も得て、先ず情報発信 力を強化し、更にイベントの開催、音楽サークルへの協賛などで「顧客データ」を拡充し、ア プローチを増やした結果、作戦は徐々に成果をあげつつあり、最近では中高年の初来店や馴染 み客が少しずつ増えて来ている。 4 ニューズレター210 号(平成 20 年6月) 今では減ってしまった街のCDショップ。しっかりしたコンセプトで、顧客を大切にする ザ・メロディ ―こんなお店は街の一画に此れからも在り続けて欲しいものである。 (中央支部) ユーザーに「最高のエクスタシー」を感じて頂けることを目標に頑張っている ワンオフバイクマフラーメーカー 生野区にあるモリヤス・アイアンワークス(代表:森下徹氏 所在地:生野区小路東 2-1-21 ℡:6756-7025)は、2007 年6月創業の、オートバイのマフラーを製作する企業。 代表の森下氏は、本田技研工業㈱の 100%出資で設立された、ホンダ関西自動車整備専門学 校(現・ホンダテクニカルカレッジ関西)を卒業後、整備士や営業職を経験し、父親の経営す る金属加工会社に入社。そこで、製造技術を学びながらも「下請け業者」の現実を目の当たり にした。元請け会社が持ち込んだ図面通りのモノを、他の同業者よりも「安く」作る、いわゆ る価格競争。他人の3倍以上働いても生活は良くならないし、お客様が喜んでくれることを実 感できるわけでもない。 そこで、自社には何が足りないのか、「強みと弱点」を徹底的に洗い出した。強みは、図面通 りのモノを正確に作る「技術力」 。弱点は、エンドユーザーが求める形を汲み上げ、「付加価値」 を高めて形にする「企画力」の無さと、エンドユーザーにそれを伝える「情報発信能力」の無 さ。そうした「強み」と「弱点」を明確に把握したうえで、そこに、オートバイのパーツメー カーを興したいという森下氏の学生時代からの「夢」をプラスし、2007 年6月にオートバイの マフラーメーカーとして独立開業した。 同時に、マフラーブランド「R‐style」を立ち上げ、オーダーメードのマフラー製作に 力を入れ始める。ユーザーの「バイクの使用目的」や「ファッションの傾向」を話し合い、具 体的にマフラーのデザインを描いたりする等、徹底的にユーザーの本当のニーズを追求し、そ こに環境・性能など「付加価値」をプラスしてから製作に入る。森下氏によると「ユーザーが 本当に求める形以上のモノを提供してこそ、「最高の喜び」を感じて頂けるものと信じている」 とのこと。 独立して2ヶ月後には、以前から興味のあった異業種交流会フォーラム・アイ(URL: http ://www.forum-i.com/)に入会した。そこでランチェスター戦略などを学び、会を通じて「東 成・生野モノづくりフェスタ」にも出展。また 55 分間にも渡るテレビ番組出演をも経験した。 更に、自社ウエブサイト(URL:http://r-style.web.infoseek.co.jp)を開設し、エンドユーザ ーやバイクショップに向け情報発信出来るようにした。 また、2008 年4月から、大阪産業大学・学生フォーミュラプロジェクトと技術協力体制を確 立し、レースへの参戦や共同での展示会への出店などを通じて、新技術の開発や情報発信を行 っている。最近では、少しずつながら、有名バイクカスタムショップからのオーダーメードの 5 ニューズレター210 号(平成 20 年6月) OEM製作の依頼も増え、将来の見通しも明るくなって来た。 森下氏は「これからもっと、零細企業ならではの身軽さを生かして、ユーザーの嗜好の多様 性に応え、ユーザーの想像を超える付加価値を追求し続け、ユーザーに『最高のエクスタシー』 を感じて頂けたら・・」と熱っぽく語っておられた。 (東成・生野支部) なんとかせなアカン! との気持ちで 21 種類の自社商品開発 昭和 34 年創業の有限会社アラヤ(所在地:生野区巽西 2-4-32 ℡:6757-7305 代表取締役:新家毅氏 URL:http://www.anteikan.co.jp)は、主として建設機材・塗装用具の製造販売 及び板金溶接を行っている。同社のある生野区は工場数・従業員数とも大阪市内で最大である にも関わらず製造品出荷額では最下位グループに位置する等、零細工場がもっとも密集したモ ノづくりの町として知られている。これらの零細工場は下請企業として事業維持に努めてきた が、近年、親会社の海外移転・コストダウン要請・海外からの安価な部品調達等により厳しい 状況が続いており廃業に至るケースが目立ってきている。 同社もご多分にもれず毎年減収減益の厳しい状況が続き、このままいけば廃業に至ることも 考えられた。そのような状況を打破するため、従来から、「自分の考えたアイデアをいつかは商 品化して販売したい」との強い思いを持っていた新家社長は なんとかせなアカン! との気持 ちで自社商品の開発・商品化に活路を見出すことを決意し、現在では 21 種類の自社商品を商品 化するまでになっている。 その中の一つで同社が最も販売に力を入れているの が「安定缶」である。塗装工が高所で作業する際に塗 料を手に持ちやすい容器に入れ替えて作業しているの を目にした社長が「足場の不安定な場所に塗料缶をお ければ作業効率がよくなる」との考えから生まれた製 品である。どんな形状の屋根にも対応できる工夫が凝 らされており、ずれない・倒れないと評判も上々であ <安定缶> る。 新家社長のアイデアマンぶりを最もあらわして いるのが左の「安定缶ソリ」である。確かに「安定缶」 の使用でどんな形状の屋根等にも塗料缶を安定的 に置くことかでき作業効率は向上したが、形状の不 安定な屋根上をスムーズに移動できたらいいなと の思いから開発された商品である。ハンドル部分は 折りたたみも可能で持ち運びやすいような工夫が <安定缶ソリ> 6 ニューズレター210 号(平成 20 年6月) なされている。 新家社長は「自分たちがもともと持っている技術をもとにして製品化に取り組んだのではな く、みんなが困っていることは何かを探り製品を開発してきた」と話している。零細工場が従 来の下請体質から脱皮し、今後生き残っていく方向性を示しているのではないだろうか。 (東成・生野支部) 魚食文化を伝える町の魚屋さん! 生國魂神社の旧表参道(生玉表門通)にある鮮魚店「きぬ川」(所在地:天王寺区上汐 3-3-1 ℡:6772-3302)は、1947 年(昭和 22 年)天王寺区上汐の生玉表門商店会で創業、活魚を中心 に二代続く鮮魚の小売業である。 代表者衣川氏はお客様からの声を大切に、魚を中心とする食生活の中で受け継がれてきた知 恵や知識を多くの人に伝えたいとの思いから、親子が地域社会を支えている様々な職業技術を 学び直接ふれあい体験できる「百芸塾」(大阪市事業)に講師として参加するなど、普段から魚 介類の調理、目利き、包丁さばき、食べ方など魚食文化の良さを伝える活動に取り組んでいる。 地域のお客様とのコミュニケーションを通じて、その好みに応じて煮魚や焼き魚に調理・加工 する同店の取り組みは、顧客の支持を得て、同店の評判は口コミで広がっている。 近年、健康志向の高まりにより、良質の蛋白質食品でありながらカロリーが低い魚は、しば し雑誌やテレビ番組に取り上げられ、大きく見直されている。また、魚介類に関する民間の資 格認定や、国も国産魚を食べて自給率アップを呼びかけるなど魚に関する話題も多い。 今後も地域の人とのコミュニケーションを活発にして魚介類のイメージアップを図り、食生 活の中心となる生鮮三品(野菜・精肉・鮮魚)の鮮魚を、顧客ニーズに合わせて販売する「き ぬ川」さんに期待したい。 (天王寺・阿倍野支部) 事業提携で業績アップを実現した印刷企業 印刷業は大手2社が、市場全体の3割を独占する厳しい業界である。そのなかで業績を安定 して維持するのは至難なことである。 株式会社ひかり工房(代表取締役:喜田りえ子氏 所在地:浪速区恵美須東 1-10-2 ℡: 6641-6011)は、創業以来、主に学校関係の書籍・教材といった冊子印刷に特化し、着実な成長 を実現していた。しかし、4・5年前より始まった業界の低迷は同社の予想を大きく超え、利益 を減少せざるを得なかった。 7 ニューズレター210 号(平成 20 年6月) 業績低迷への対応として、事業縮小は有効である。しかし、縮小の実行は容易なものでない。 なぜなら、顧客満足を考える事業所にあっては個々のニーズに対応できるようフルライン(営 業・制作・印刷・加工)制をとる傾向があり、これが大きな足かせになるからである。同社も この例にもれず、印刷・加工業務の工場部門の存在が縮小を阻んだ。2年の間、従業員のこと も考え、打開策を模索したが有効な対策が取れず損失を累積させてしまった。 このなかで行きついたのが、業務提携策であった。業務提携先として選んだのは、2年ほど 前より取引関係を結んでいた同業種の株式会社国際印刷研究所である。 この㈱国際印刷研究所は、従業員が関連会社も含め 35 名の中堅企業であり、印刷・加工を得 意とする事業所である。2社の取引関係は、下請・元請の関係とは異なる。お互いの人柄と経 営姿勢を認め合っての交渉であった。 ㈱国際印刷研究所の経営姿勢は模範的である。業績のオープン化で、従業員は当然として、 外部に対してもガラス張りにしている(社長報酬までも従業員に対して開示している) 。また、 企業活性化のための刺激策として中国への業務進出も早い段階から実現している。 両者の経営者は、波長がうまく合ったこと、また営業に強いひかり工房、印刷・加工に強い 国際印刷研究所と強みを生かした相乗効果が生まれること、それらを確認し提携を実現させた。 その結果、ひかり工房は多くの従業員を国際印刷研究所に受け入れてもらえた。また、従来 に増して印刷・加工での対応力を増し、収益力も改善した。国際印刷研究所は、売上が増し、 営業力が強化されるなど互いに良い効果を実現している。 この事例から考えられるのは、厳しい経営環境の中では事業提携が事業改善の手段として極 めて有効なケースとなり得ること、また、その実現のためには、相乗効果が重要であること、 さらに経営者間の信頼関係が重要な要素であることなど、いくつかのポイントが参考とされる。 ひかり工房ついて付け加えて紹介すると、現在自費出版サービスに力を入れている。そのな かで経営者自身が「失敗しない自費出版」というノウハウ本を刊行し、自費出版のニーズに対 応して大きな反響を呼んでいる。 (大正・浪速・西成支部) 8 ニューズレター210 号(平成 20 年6月) 地域の動き 第 13 回納涼交流会を開催 東淀川区を活動拠点とする異業種交流会「東淀川イノベーションクラブ」は東淀川経営改善 友の会(こぶしの会)と合同で、今年も納涼パーティーを開催することになった。 毎年約 170 名の地域の人たちが阪急上新庄駅近くの春日神社境内に集まり、ウェスタンバン ドの生演奏が流れるなか、夜空の星を眺めながら、夜遅くまで交流を深めている。異業種のメ ンバーが境内で焼き鳥、焼肉、生ビール等を販売し、会場の雰囲気を盛り上げる。 今年のパーティーは、8月8日(金)午後6時 30 分スタート。参加費は 1,000 円で飲み物、 食べ物自由。参加者に制限はなく、どなたでも参加できる。 春日神社(所在地:東淀川区上新庄 2-20-15)の宮司も東淀川イノベーションクラブの会員 で、会の運営には非常に協力的である。「地域の活性化にはこうしたイベントが大切だ」と神社 の境内を快く提供してくれる。 また、東淀川イノベーションクラブの目的の一つは「東淀川区の活性化促進と地域社会に貢 献すること」である。 現在、大阪市内にはたくさんの異業種交流会・女性会が存在するが、その殆んどが今、20 周 年を迎えようとしている。大阪商工会議所の各支部も事務局として長い間、会の活動を後押し してきた。地域の活性化のために、異業種交流会・女性会の活動は今後も必要である。がんば れ!異業種交流会・女性会! (新淀川支部) 商店街イベント事業でコラボレーション 天神橋1丁目・2丁目・3丁目の各商店街で組織化された天神橋筋商店連合会(会長:土居 年樹氏 事務局:天三おかげ館 ℡:6352-6164)では、6月から7月に、今年で 10 周年を迎 える「星愛七夕まつり」 (7月7日大阪天満宮境内で開催予定)を始め、天神祭、天満天神繫昌 亭2周年企画など「愉しい・面白い・嬉しい・天満らしい」イベント事業等を展開し、地域住 民・天神橋筋・大阪天満宮とのコラボレーションを図る。 6月 14 日から 19 日まで天三おかげ館展示会場では、招福絵師による「招福招き猫」展示販 売会が開催される。展示作品の中には七福神を模した7つの「石の七夕猫」がある。この「石 の七夕猫」を7月1日∼7日まで天神橋1丁目∼3丁目のどこかのお店に飾り、参加者には展 示されている店舗を見つけて頂き、正解者には「星愛七夕まつり」イベントで実物又は招き猫 絵葉書をプレゼントする予定もある。 9 ニューズレター210 号(平成 20 年6月) また、 「人を招き、福を招き、繁昌を齎す」商店街として、お客様をお招きする趣旨で「街あ きんど」をイメージした「あきんど招き猫」のタペストリー(裏側に七福神を模した「招き七 福猫」が描かれている)がアーケード下に飾られる予定である。 その他7月5日には関西大学吹奏楽部とチアガールのパレードが、また7月7日の星愛七夕 まつりでは、恒例の「街道芸まつり」 、「天満天神花娘」の登場、「七夕縁日」が開催され「彦星・ 織姫」を先頭に、天神天満花娘・扇町総合高校の吹奏楽などが街を賑わす。 ※七福神∼江戸時代(1623 年)、徳川三代将軍・徳川家光は帰依する天海僧正と七福神を決めたとされている。福禄 寿(中国の仙人がモデル・健康の神)、布袋尊(実在の人物・不老長寿の神)、弁財天(紅一点・インド・芸術の 神)、大黒天(インド・財福と繁昌の神)、寿老人(中国・長寿の神)、恵比寿(商売繁昌の神)、毘沙門天(イン ド・知恵の神) (北・都島・福島支部) 此花区に「ライフ西九条店」がオープン 平成 19 年5月 30 日に「株式会社ライフコーポレーション」が大阪市経済局商業振興課に提 出していた届出で、平成 20 年4月 24 日(木)に「ライフ西九条店」(所在地:此花区西九条 6-1-132 ℡:6462-0200 売場面積:1,770 ㎡ 営業時間 9:30∼24:00 従業員:66 人)とし て、届出より約 11 か月の歳月しか経たずに早々にオープンした。 同店は、平成 17 年3月に生産体制の集約・効率化のために閉鎖された「大日本塗料株式会社」 の旧大阪工場跡地の 17,854 ㎡の敷地面積の一部を再開発して出店された大型スーパーである。 「ライフ西九条店」の商圏としては、東は福島区野田4丁目付近、西は四貫島2丁目付近ま でのそれぞれ約1kmを、南は安治川まで、北は正連寺川・福島区吉野5丁目付近までのそれ ぞれ約 500m を設定している。この西九条エリアは、来春の 2009 年春に予定している「阪神な んば線」の開通により「JR環状線西九条駅」と「阪神なんば線西九条駅」が連絡するととも に、阪神電気鉄道と近畿日本鉄道との相互直通運転の実施により、阪神三宮駅から近鉄奈良駅 まで乗り換えなしでスムーズに利用できるなど、鉄道の利便性を大きく向上させる地域となる。 あわせて、今後のマンション建設などの再開発プロジェクトによる人口増加も見込まれる地域 である。 現在、此花区には、此花区商店会連盟に加盟している9商店街があり、 「ライフ西九条店」は、 新規出店された店舗の約半径1km圏内に「ライフ野田店」と「ライフ此花伝法店」の同社店 舗が2ヶ所あり、さらに昨年の4月に「ホームセンターコーナン西九条春日出店」、同じ敷地内 に昨年6月「ラ・ムー此花店」が出店しており、このオーバーストアーの状態が地元商店街等 にどのように影響を及ぼすかが懸念される。 (此花・西・港支部) 10 ニューズレター210 号(平成 20 年6月) 大正異業種交流会 20 周年記念式典開催 大正・浪速・西成支部に事務局を置く大正異業種交流会(会長:㈱港南工作所代表取締役 瀬竹義氏 古 会員数:15 名)は、昭和 63 年7月に地元の経営者が幅広い相互交流を深め事業の 発展を図ることを目的に発足し活動を続けて以来、今年で 20 年を迎える。そこで、5月 17 日 (土)「20 周年式典」を会員、事務局担当、元事務局担当者など 22 名の参加を得て開催した。 式典の前に記念講演会を開催し、㈲エー・エム・アイ 代表取締役 栩野正喜氏を招き「I T時代のコミュニケーション・ノウハウ」についてお話していただき記念式典を盛り上げてい ただいた。 講演会の後、異業種交流会を代表し古瀬会長と、石田支部事務局長が挨拶、来賓紹介の後、 懇親会に入り、日本舞踊、手品、小話なども披露され、終始和やかな雰囲気のもと約3時間の 式典を終了した。 大正異業種交流会の活動自体は勉強会、見学会を中心に活動しており、今回の式典も派手な 内容は避け、地元の大正産業会の会議室を借り持ち込みの飲食物で運営した。これを一つの節 目に更なる会員の結束と発展を会員相互に誓い合う機会になったと確信する。 (大正・浪速・西成支部) 古代のお姫さまがやってきた「古代市」が開催 「1300 年のはるかな時空を超えて、よみがえる豊かなにぎわい」をテーマにした『第6回の 古代市』が、5月3日の 10 時∼15 時に、大阪市立クラフトパーク(所在地:平野区長吉六反 1-8-44)で開催された。当日は、晴天で天候にも恵まれ、参加者も多く、活気のある催しとな った。 「古代市」が開催された六反長原地区は、平野区の南東部に位置し、古代大阪のルーツとも 云うべき貴重な遺跡群が数多く存在する地域で、朝鮮半島や中国大陸との交流も盛んであった。 このイベントは、これらの歴史的な意義にちなみ、長吉中央商店街振興組合や長吉地域の連合 町会などで構成される「六反長原集客推進協議会」が主催となり、活力とにぎわいのあるまち づくりを目指して、5年前からこの時期に毎年開催されている。年々、盛んになり、六反長原 地域だけでなく、平野区全体の活性化に寄与するイベントへと成長させたいとの考えから、昨 年までイベント名の頭についていた「六反長原」の文字をはずした。 今年も、優雅な衣装をまとった、古代のお姫さま赤留比賣(あかるひめ)パレードがあり、華 やかなイベントとなった。また、新企画として、物々交換をおこなう「わいわい交換村」が開 かれた。古代、人々は自分で作った作物や自分で獲った魚などを、自分に必要な別のものと交 換して暮らしていたと言われているこ とにちなみ、「おもちゃ」や「本」など 11 ニューズレター210 号(平成 20 年6月) の不用になったモノを持ち寄り「古代 銭」を使って、お互いに交換する企画で ある。さらに、古代のクラフト展や景品 が当たるスタンプラリーもあり、参加者 が家族で楽しめるイベントとなった。 「今後も、ぜひ続いてほしい」との参 加者の声も多くあり、来年以降も、継続 が期待される催事である。 (東住吉・平野支部) ジョイフル安立は活性化に向け動き出した 大阪商工会議所の流通活性化委員会は、 「大阪賑わい創出プラン」第2次アクションプログラ ムの重点テーマの一つである「地域商業の活性化支援」の具体的事業として、「商店街・賑わい プロジェクト」を実施する。 住之江・住吉支部では、元気な商店街が地域を活性化するという考えのもと、すでに一昨年 から商店街活性化を重点目標として掲げ活動を展開している。なかでもジョイフル安立(住之江 区)に対しては、昨年度、一店逸品運動の展開を支援し、多くの商店から「自店の商品の見直し ができた」「どういう商品を提供すればお客さんに喜んで貰えるかがわかった」と好評を得た。 ただこうしたイベントを推進するには商店街の役員・有志の並々ならぬ労力の提供が必要で ある。そのため多くの商店街では活性化が継続的に展開できないという事実が横たわる。 ジョイフル安立においても、一店逸品運動の後、継続的にイベントを打てないという事態に 直面した。商人の中には「これだけ手間きがかかるイベントはできない」と消極的な意見もで た。こうしたなか、「こんなことしていたら安立は終わりや」 「何とかイベントをやろう」「たと え参加者は少なくとも自分らだけでもやろう」という動きがでてきた。 「最初は小さな動きでも バックアップすることにより大きな動きにすることこそ大切である」と支部としても支援体制 を取った。 その結果、ジョイフル安立では、 「安立ミュージックストリート」という活性化事業に取り組 むことになった。この事業は、音楽好きのお店がそれぞれに①ストリートミュージシャン達の 若さ溢れる音楽(6月 26 日(木)∼コミュニティスペースかべたにで 18 時 30 分から開演)、 ② 溝口恵美子ピアノトリオのジャズスタードやオリジナルソング(6月 27 日(金)∼アンリューリ コーダーギャラリーで 19 時 30 分から開演) 、③レコード音楽(6月 27 日(金)・28 日(土)∼奥 田鮮魚店で午後から開催)といったかたちで音楽を提供しようというものであり、商売の延長で できるということが特徴である。キャッチフレーズは「夕暮れのひとときをお散歩気分で生演 12 ニューズレター210 号(平成 20 年6月) 奏とレコード鑑賞でお楽しみください」である。 安立ミュージックストリートを開催する有志は、「こうした事業なら私たちでもできる」「熱 の冷めないうちに続けてやりたい」と継続開催を意気込む。当支部としても、今後もこうした 商店街活性化の動きを支援していきたい。 (住之江・住吉支部) 13 ニューズレター210 号(平成 20 年6月)
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