理容師実技試験審査マニュアル 理容師美容師国家試験委員会

理容師実技試験審査マニュアル
㈶理容師美容師試験研修センター
理容師美容師国家試験委員会
第1
1
審査の基本的な考え方
採点方式
理容師国家試験は、理容師として必要な知識及び技能を有しているかどうかを、筆
記試験により主として知識面を、実技試験により主として技能面を、それぞれ判定
することとしています。
また、実技試験は、カッティング、シェービング及び整髪の各技術における技法等
が適切に行われたかどうかを審査する「経過(動)的審査」と完成した作品の仕上
がり状態が一定の技術水準に達しているかどうかを審査する「結果(静)的審査」
の二面から審査することとしています。
経過的審査としては、技術の条件に定められた方法により処理されているかどうか、
技術は安全かつ正確であるかどうか等についてリアルタイムに審査し、結果的審査
としては、完成した作品を基に技術水準の到達度を判定します。具体的には、養成
施設において習得した技術の到達度を標準とし、細分化された各採点項目ごとに配
分した点数から未到達の程度に応じて減点すべき点数を累積する減点方式により審
査します。
2
採点基準
理容師実技試験は、カッティング、シェービング及び整髪の各技術について技法と
作品の完成度を審査し、さらに、最終的な完成作品により仕上がり状態を審査する
こととしています。
審査に対する基本的な考え方は、上限減点数を100点とし、これをカッティング
に40点を、シェービングに20点を、整髪に10点を、仕上がり状態に30点を、
それぞれ配分し、各項目ごとに配分された減点数の範囲内で採点を行います。
具体的な採点方法は、養成課程修了者として備えるべき技術水準をゼロとし、その
6割程度の到達度をぎりぎりの技術水準である「何とか到達している」ものと評価
することとしており、技術到達度と減点数の評価(5点単位の減点)を図示すれば
次のようになります。
到達者
最大減点数
40 点配分項目 0
到達境界域
15 点
未到達者
20~40 点
30 点配分項目 0
10 点
15~30 点
20 点配分項目 0
5 点
10~20 点
10 点配分項目 0
0 点
10 点
小
減点数
大
また、各作品ごとの完成度を傾斜配分された採点項目ごとに減点数を表せば、次の表
のようになります。
表
完成度別・配分点数別の減点数
配分点数
完成度
十分に到達している
(減点率 0%)
ほぼ到達している
(減点率 20%)
何とか到達している
(減点率 40%)
難点がある
(減点率 60%)
相当程度難点がある
(減点率 80%)
評価対象外
(減点率 100%)
40 点
30 点
20 点
10 点
0
0
0
0
5点
5点
0点
0点
10~15 点
10 点
5点
0点
20~25 点
15~20 点
10 点
5点
30~35 点
25 点
15 点
5点
40 点
30 点
20 点
10 点
第2
用具類審査マニュアル
理容師実技試験は、各技術の準備時間中に用具類の審査を行います。用具類の審査に
おいて、減点対象の項目の何れかに該当した場合は、マークシートの「条件違反」欄に
マークし、その違反した内容を用具類審査結果表に記入し、報告して下さい。
なお、持参用具類の数量は全て最低必要数を示しており、予備として、規定されてい
る数量を超えていてもそれぞれの規格に適合していれば条件違反ではありません。
モデルウイッグ及び用具類の審査は、原則として各技術の準備時間中に行いますが、
仕上がり審査時においても行う必要があります。
また、作業は机にモデルウイッグを取り付けて行います。持参用具類は机の上にタオ
ルを敷いてその上に並べるか、適宜の用具箱にタオルを敷いてその上に並べます。
1
共通の持参必須用具類
理容師実技試験で使用する用具類は、モデルウイッグや器具皿のように全ての課題
に共通するものと、各技術固有のものとがあります。各技術に共通の用具類は次の
とおりです。
用
具
名
作業衣
数
量
1着
規
格
等
白色又は淡色の上っ張り型で、氏名、学校名、店
名やこれらを表す目印等の記入がないもの
・理容師実技試験用標準仕様適合表示シール
が貼られているもの
・モデルウイッグの頭部又は頸部に作業を有
理容師実技試験用標準仕様適合
モデルウイッグ
利にすると思われるマーキングがないもの
1体
・モデルウイッグの頭部・頸部及び台座の表
面もしくは裏面に氏名、学校名、店名やこれ
らを表す目印等の記入がないもの
・頭髪に薬液処理又はアイロン技術をしてい
ないもの
モデルウイッグ用取付金具
1個
モデルウイッグ用ショルダー
1個
器具皿
2枚
セットコーム
1本
スプレイヤー
1個
除菌用ウェットティッシュ
適量
汚物入れ用透明ビニール袋
1枚
救急ばんそうこう
適量
作業机に取り付け可能なもの
「消毒済」と「使用中」の表示をしたもの
・成分にエタノールが含まれているもの
・「消毒薬」の表示をしたもの
「汚物入れ」の表示をしたもの
2
各技術別持参必須用具類
⑴
カッティング技術用持参用具
用
具
名
数
量
カッティングクロス
1枚
エレクトリッククリッパー
1台
カッティングシザーズ
1丁
セニングシザーズ
1丁
カッティングコーム
2本
カッティングブラシ
1個
毛払いブラシ
1個
器具ブラシ
1個
規
格
等
白色又は淡色のもので、氏名、学校名、店名
やこれらを表す目印等の記入がないもの
コードレス式で刃の厚さ2㎜の固定刃のもの
目の粗いもの(基礎刈用)と細かいもの(仕
上げ刈用)各1本
・「消毒済」の表示をした透明なビニール袋に
乾燥タオル
2枚
入れること
・白色又は淡色のもので、氏名、学校名、店
名やこれらを表す目印等の記入がないもの
(参考)カッティング用持参用具例
⑵
シェービング・顔面処置及び整髪技術用持参用具
用
具
名
数
量
マスク
1枚
シェービングクロス
1枚
シェービングカップ
1個
シェービングブラシ
1個
シェービング用石けん
適量
替刃式レザー
1丁
レザー拭き用ティッシュペーパー
適量
顔面処置用乳液
適量
規
格
等
白色のもの
白色又は淡色のもので、氏名、学校名、店名
やこれらを表す目印等の記入がないもの
刃は安全機能がないもの
詰め替え容器を使用する場合は内容表示をしたもの
・「消毒済」の表示をした透明なビニール袋に
入れること
濡れタオル
2枚
・白色又は淡色のもので、氏名、学校名、店
名やこれらを表す目印等の記入がないもの
・タオルの中央に目印となる線が入っている
ものでもよい
シェービング用毛取り紙
1枚
毛取り紙用クリップ
1個
ダックカールクリップ等
ヘアワックス
1個
詰め替え容器を使用する場合は内容表示をしたもの
セット用ブラシ
1本
・「消毒済」の表示をした透明なビニール袋に
乾燥タオル
4枚
入れること
・白色又は淡色のもので、氏名、学校名、店
名やこれらを表す目印等の記入がないもの
(参考)シェービング・顔面処置及び整髪用持参用具例
3
持参必須用具類審査事項
前記の1及び2では、どのような用具類を持参しなければならないか、種類や数量
について述べましたが、ここでは用具類について理容師実技試験委員がどのような
審査をすればよいか、審査項目、審査のポイント及び減点対象について説明します。
なお、用具類の審査においては、「減点対象」項目のいずれかに該当した場合は、
マークシートの「条件違反」欄にマークし、その違反した内容を用具類審査結果表
に記入して下さい。
項目
審査のポイント
減 点 対 象
1
モデルウイッグ
⑴
標準仕様適合番号が「R」で始まる3桁
モデルウイッグの基準適合状況
を審査する
(R-×××)の理容師実技試験用標準仕
様適合表示シールが貼られていない場合
⑵
モデルウイッグに対する不正行
①
毛髪の事前処理が規定違反の場合
ア フロント、トップ、クラウンの毛髪の
為の有無を審査する
長さを10㎝未満にカットしている場合
イ ネックライン、ネープの毛髪の長さ
を2.5㎝未満にカットしている場合
ウ セニングカットにより毛量調整して
いる場合
エ 剃毛部分の毛髪の長さを2㎜未満に刈
りそろえている場合
オ 毛髪に薬液処理又はアイロン技術を
している場合
カ 水以外の整髪料を塗布している場合
②
モデルウイッグの頭部又は首にマーキ
ングをしている場合
【留意事項】
①
モデルウイッグの製造上と思われる毛
量不足や毛髪の長さ不足は減点対象とし
ません
②
モデルウイッグに氏名、学校名、店名
やこれらを表す記号等の記入があった場
合の審査は衛生実技試験委員が行います
2
用具類
⑴
持参必須用具類の品目及び数量を ①
審査する
持参しなければならない用具類の品目
が不足している場合
②
持参しなければならない用具類の数量
が不足している場合
【留意事項】
除菌用ウェットティッシュ、汚物入れ用
透明ビニール袋及び救急ばんそうこうの審
査は、衛生実技試験委員が行います
⑵
持参用具類の条件適合状況を審査
する
使用禁止又は規格等不適合の用具類を作
業台に出している場合
【留意事項】
作業衣や用具類に氏名、学校名、店名や
これらを表す記号等の記入があった場合の
審査は衛生実技試験委員が行います
4
⑴
技術別審査事項
カッティング
項目
審査のポイント
減 点 対 象
配分点数及び減点
1
配分点数40点
ミディアムカット
⑴
クリッパーラインの位置が 浅 く 、
クリッパーワーク
後頸髪際から1㎝未満
5点単位で減点し、
減点の上限を40点と
する
⑵
すくい刈、指間刈、固定刈、連続
基礎刈
刈のいずれかが正確に行われなかっ
た
⑶
仕上げ刈
①
クリッパーラインのぼかしが
不十分
接合部が段になって残っている
③
ネックラインが不揃い
①
セニングカットが不十分
②
すくい刈や指間刈によるセニ
2
②
セニングカット
セニングカット
ングカットが正確に行われなか
った
③
セニングカットの作業時間中
に仕上げ刈を行った場合
④
接合部以下にセニングカット
を行った
⑵
シェービング・顔面処置
項目
審査のポイント
減 点 対 象
配分点数及び減点
1
配分点数20点
ラザーリング
ラザーリング
①
剃毛部分のラザーリングが不
十分
②
5点単位で減点し、
減点の上限を20点と
耳、鼻、目に泡が付着している
する
2
シェービング
ネックシェービング ①
⑴
各技法が適切に行われていな
い
②
剃り残しがある
③
石けんの拭き残しがある
フェイスシェービ ①
⑵
各技法が適切に行われていな
い
ング
②
逆剃りをした
③
剃り残しがある
④
石けんの拭き残しがある
3
顔面処置
てん包・密着・清拭の各技法が
⑴ てん包・密着・清拭
正確に行なわれなかった
⑵
乳液の塗布・マッサージが正確
乳液塗布・マッサ
ージ
⑶
に行われなかった
乳液の拭き取りが不十分で拭き
乳液拭き取り
残しがある
⑶
項目
整髪
審査のポイント
減 点 対 象
配分点数及び減点
1
配分点数10点
整髪
整髪料を塗布していない
整髪料の塗布
5点単位で減点し、
2
減点の上限を10点と
する
分髪線
分髪線の位置と形状
①
分髪線が左サイド7対3に位
置していない
②
分髪線が大きく歪んでいる
⑷
仕上がり状態
項目
審査のポイント
減 点 対 象
配分点数及び減点
1
配分点数30点
カッティング
⑴
5点単位で減点し、
総合的完成度
減点の上限を30点と
⑵
①
接合部の位置
②
カッティング面
接合部の位置が基準から外れて
いる
する
仕上げ刈部分に凹凸がある
鋏による切り傷がある
モデルウイッグの
損傷
2
シェービング
⑴
⑵
総合的完成度
①
もみあげライン ①
②
もみあげラインが水平でない
もみあげラインが左右対称で
ない
②
ネックライン
ネックラインに剃り込みがある
レザーによる切り傷がある
モデルウイッグの
損傷
3
整髪
仕上がり状態
①
仕上がりがソフトでない
②
全体のバランスが悪い
4
モデルウイッグの汚れ
モデルウイッグの汚
れ
モデルウイッグに著しい毛髪の
付着がある場合
該当する場合には
5点減点とする
第4
1
実技試験課題の設定条件
試験課題
⑴
カッティング
基礎刈・仕上げ刈及びセニングカットによるミディアム分髪スタイル
⑵
シェービング
ネックシェービング、フェイスシェービング及び顔面処置
⑶
整髪
左サイドに分髪線のあるミディアムスタイル
2
試験時間
⑴
カッティング
25分間
※基礎刈・仕上げ刈20分間、セニングカット5分間とする。
⑵
シェービング
⑶
整髪
3
15分間(顔面処置を含む)
5分間
技術の条件
⑴
カッティング技術
①
後頸髪際から1㎝以上、クリッパーで2㎜に刈ること。
②
基礎刈、仕上げ刈を行い、頭髪は頭部全体で2㎝以上刈ること。
③
セニングカットは、接合部以上の長髪部位にセニングシザーズを用いて行い、
自然な仕上がりとなるように毛量を調整すること。
⑵
シェービング技術・顔面処置
①
ネックシェービング及びフェイスシェービングを行うこと。
②
フェイスシェービングは1回剃り(ワンシェービング)とすること。
③
逆剃りは行わないこと。
④
前額部及び後頸部のシェービングは行わないこと。
⑤
濡れタオルによるてん包、密着及び清拭全ての技法を用いること。
⑥
乳液の塗布、マッサージ及び拭き取りを行うこと。
⑶
整髪技術
①
左サイドに7対3のパートラインを入れ、分髪すること。
②
ヘアワックスを使用し、ソフトに仕上げること。
第5
1
モデルウイッグの条件
標準仕様適合モデルウイッグ
試験に使用できるモデルウイッグは、理容師実技試験用標準仕様に適合した次のモ
デルウイッグで、メーカー名及び型式番号の表示があるものに限ります。
メーカー名及び型式番号を表示したシールが貼付されていないものは、標準仕様に
適合したモデルウイッグとは認められません。標準仕様以外のモデルウイッグを持
参した場合は、失格となりますので注意して下さい。
メーカー名
株式会社
レジーナ
R-001
株式会社
ビューラックス
R-002
株式会社
三矢
R-003
株式会社
オカセン
R-005
株式会社
KMC(コマチ)
R-006
フォンテーヌ
2
型式番号
株式会社
R-007
株式会社
レジーナ
R-008
有限会社
ロータス
R-009
事前処理の条件
⑴
頭部の条件
①
モデルウイッグの頭髪は、フロント・トップ及びクラウンで10㎝以上に刈りそ
ろえること
⑵
②
ネックライン及びネープの長さは2.5㎝以上に刈りそろえること。
③
梳き刈は行わないこと。
④
頭部又は頸部に氏名、店名、学校名その他目印等の記入をしないこと。
ネックライン及び顔面の条件
ネックライン及び顔面の毛は、2㎜以上残して刈りそろえること。
3
禁止事項
⑴
頭髪には、薬液処理又はアイロン技術等の処理を行わないこと。
⑵
頭髪に水以外のものを塗布しないこと。
⑶
もみあげ部には、シザーズ又はクリッパーによる仕上がり予定線は入れないこと。