宇宙航空研究開発機構 広報部 茨城大学 広報室 国際宇宙ステーション

別紙 お知らせ文
平成 24 年 8 月 30 日
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
茨城大学
国際宇宙ステーションから世界で初めて回収された新種の地球外物質について
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発し国際宇宙ステーション(ISS)に搭載した、微小粒子捕獲実験及び材料
曝露実験(MPAC&SEED)において、これまでにない鉱物学的特徴を持つ新種の地球外物質(「Hoshi(※1)」と命
名)を回収したことが判明しました。
今回、惑星間塵(※2)や微隕石(※3)と成因的な関係があり、かつ、今までに見出されていない組織と鉱物組成
を持つ微小粒子を発見したことは、世界初となります。
このことは、まだ我々が手にしたことのない鉱物学的特徴を持つ始原的な地球外物質が存在していることを示し
ており、太陽系誕生の初期の時代に何が起きたかを解明するための新たな手掛かりとなります。
分析結果については、学会誌”Earth and Planetary Science Letters”に昨年掲載されましたが、この度、成果を
日本鉱物科学会年会で発表しますので、お知らせいたします。
微小粒子の飛跡
シリカエアロジェル内の光学顕微鏡
写真(断面図)と捕獲された
「Hoshi」の拡大写真
シリカエアロジェル
断面の電子顕微鏡像
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〒100-8260
東京都千代田区丸の内 1-6-5
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〒310-8512
茨城県水戸市文京 2-1-1
丸の内北口ビルディング
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Fax. 029-228-8019
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MPAC&SEED 実験装置は、微小粒子を捕獲することを目的に 2001 年にロシアの ISS 施設であるサービスモジュ
ールに設置され、2002 年から 2005 年にかけて 3 回に分けて試料を回収したのち、様々な観点から分析を行ってき
ました。
このうち、2005 年に回収されたシリカエアロジェル(※4)に捕獲されていた、大きさ 30 ミクロン程度の微小粒子に
ついて、茨城大学(野口高明教授)との共同研究による分析の結果、始原的な隕石を特徴付けるコンドルール(※
5)様物体であるものの、既知のコンドルールには見られない鉱物学的特徴(※6)を持つことがわかりました。
それと同時に、分析結果では、「Hoshi」に含まれる鉱石(カンラン石や輝石)の酸素同位体比(※7)は、これまで
に地上や大気圏で得られた惑星間塵、微隕石及びヴィルト第 2 彗星塵(※8)に似ていました。
この両者の特徴を兼ね備えた物質は未だに発見されていません。即ち、今までに知られている地球外物質とは
違う小天体起源の物質と考えられます。
惑星間塵や微隕石に「Hoshi」と似た鉱物学的特徴が見出されていないのは、大気圏通過時あるいは地上におけ
る分解・風化が原因という可能性があります。
このことは、ISS におけるサンプル収集が、地球外物質をそのままの状態で捕獲するという観点で、非常に重要な
役割を果たしていることを示しています。
MPAC&SEED 実験装置は、その後、ISS の日本の実験棟「きぼう」船外実験プラットフォームに搭載されており、
2010 年に試料が回収されています。シリカエアロジェルで捕獲された微小粒子について分析が進められており、今
後も、太陽系誕生のなぞに迫る新たな発見が期待されます。
※1
※2
※3
※4
※5
※6
※7
※8
捕獲された場所の ISS サービスモジュール「Zvezda」(ズヴェズダ)はロシア語で「星」の意味。
成層圏を飛行する特殊な飛行機で回収される地球外微粒子で、彗星と小惑星起源の塵があるとされる。
主に南極の氷あるいは雪を融解濾過して回収される地球外微粒子で、多くは小惑星塵と考えられている。
非常に低密度(0.03g/ cm3)の半透明な固体物質。柔らかいために、微小粒子の特徴を損ねることなく捕獲
することが可能。
コンドルールとは、太陽系が誕生して間もない頃の情報を多く有していると考えられている球状粒子のこと。
多くの隕石中に見られ、地球の岩石には見られない特徴的な粒状構造を有している。また、コンドルールによ
く似ているが、彗星塵に含まれる、大きさのずっと小さな物体をコンドルール様物体と呼ぶ。
「Hoshi」に含まれる Ni に富む硫化鉄は、均質でかつ Ni に富む相を離溶(ある状態の物質がゆっくり冷却す
ることで、ある温度で二相またはそれ以上の明瞭な相に分離すること)していないことから、900℃以上で均
質化した後は 100℃以上に加熱されていないことが分かった。このような硫化鉄を含むコンドルールはこれま
で発見されていない。
酸素は、質量数 16、17、18 の 3 種の安定同位体(自然界で一定の割合をもって安定に存在する同位体)を
持っている。酸素同位体比は太陽系の天体ごとに異なっていると考えられている。20 世紀末、ロシアのミー
ル宇宙ステーションでも地球外物質捕獲が行われたが、酸素同位体比測定は行われていない。
NASA スターダスト衛星によってサンプルリターンされた塵。
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©Roskosmos/RSC-Energia
ISS サービスモジュールとサービスモジュール搭載 MPAC&SEED(2002 年 4 月撮影)
微小粒子捕獲実験及び材料曝露実験(MPAC&SEED)
は微小粒子を捕獲する装置(MPAC)と材料を宇宙環境
に曝す実験装置(SEED)から構成されます。MPAC は、
近年問題視されているスペースデブリ(宇宙ごみ)及びマ
イクロメテオロイド(微小隕石)を捕獲し、その起源や存
在 ・ 分 布 量 を 把 握 す る こ と を 目 的 と し て い ま す。 ま た
SEED は、宇宙曝露環境下で使用される宇宙機用材料
の耐宇宙環境性の評価や劣化メカニズムを解明すること
を目的としています。
Ram side
進行方向面
100 mm
Wake
side
反対面
サ ー ビ ス モ ジ ュ ー ル 搭 載 MPAC &
SEED 実験装置外観写真(一式)
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MPAC(シリカエアロジェル)
軌道上の「きぼう」船外実験プラットフォーム搭載 MPAC&SEED と
宇宙飛行士による実験装置回収の様子
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