日本進化学会ニュースvol.6 No.2

第7回大会報告
6 No.
.
Vol
海外研究室だより
第6回 フロリダ州立大学
生物科学部門計算科学科
2
・日本進化学会・賞選考委員会報告
・大会企画一覧
・大会報告記
・大会印象記
・2005年度評議員会・総会議事録
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
1
第 7 回大会報告
大会委員長・河田 雅圭(東北大・生命科学)
日本進化学会大会第 7 回大会は、東北大学川内キャンパスで 2005 年 8 月 26 日から 29
日にわたって開催されました。初日は台風の影響が心配されましたが、参加者は 500 名
を超えて、無事終了しました。大会運営を手伝っていただいた方、シンポ・ワークショ
ップ企画者の方、参加者の方にお礼申し上げます。
今回は、仙台での特色がでるように、東北大学大学院生命科学研究科の多くの方にシ
ンポを企画していただきました。また、ゲノム、遺伝、分子、発生、脳、行動、意識、
感覚器、古生物、生態、種分化などできるだけ進化に関する様々な分野を包括できるよ
うにシンポ・ワークショップを企画しました。シンポの数では前回大会より下回りました
が、内容的には充実したものになったと思います。
毎回、進化学会のシンポ・ワークショップに関して問題になるのが、多くのシンポを企
画して並列するプログラムにするのか、シンポの数を減らして多くの人が一度に参加で
きるプログラムにするのかという点です。
下図は、2 回大会から 7 回大会までのシンポ・ワークショップの数と参加人数との関係
を示したものです。2 回、3 回大会はまだ進化学会の知名度が低かったことが原因かもし
れませんし、東京ではアクセスのよさや潜在的な参加者数の多さが影響することも考え
られますし、福岡大会では、学生の参加費をディスカウントしたことによる参加者増加
の効果も否定できません。しかし大雑把にいってワークショップの数と参加人数との間
に関係がありそうです。
したがって、もしシンポの数を 10 以下に絞って大会を開催した場合、多くの参加者を
見込むことは難しいと思われます。
大会のあり方としては、参加者数を
気にせずに行うという方針も間違い
ではないでしょう。しかし、多くの
シンポを準備して、どの時間帯も少
なくとも一つは、是非聞いてみたい
シンポがあるというプログラムの方が
魅力的であるとする考えもあります。
現在、シンポの企画者や講演者を進
化学会の会員以外にお願いしている
場合が多いのが現状です。仙台大会
2
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
では、参加者の 20 %以上が会員外でした。おそらく、シンポで講演を依頼された非会員
の方の中には、自分の関係するシンポに参加するために大会に参加し、結果的に進化学
3
日本進化学会・賞選考委員会報告
に興味をもって学会員になるという方も少なくないのではないでしょうか。私は、様々
な分野の人が参加することで、普段、自分の聞くことのできない分野の話が聞けたり、
個人的に専門外の分野の人と知り合いになるといったことは、進化学会の魅力の一つで
あると考えます。そのためには、異なる分野にわたる多様なシンポを企画し、多くの参
日 時:2005 年 8 月 8 日
(月)14 時∼17 時
ンパク質のアミノ酸配列などの分子データ
出席者:巌佐 庸、嶋田正和、三中信宏、
に基づいて種の過去の系統関係を復元する
五條堀孝、颯田葉子、四方哲也
今回の大会運営で苦労したことは予算面です。実際に仙台で何人の参加があるのか予
測できないこと、また、大学が独立行政法人化してから、大学の建物使用料が大幅に値
日本進化学会賞・日本進化学会研究奨
もに、データから最尤法によってパラメー
励賞・日本進化学会教育啓蒙賞の受賞者
タを推定し仮説を検定するという手法を確
について審議をした。以下が審査経過およ
立した。それまでの経験的な方法にくらべ
びその結果、そして受賞者の業績である。
て、長谷川博士の考案した最尤法は精緻
な統計学理論に基盤をもっているため、さ
上がりしたことなどが不安材料でした。結果的には、仙台コンベンションビューローか
らの補助金を頂いて、なんとか赤字にならない状況でした。ポスター会場が狭いと感じ
にあたり、長谷川政美博士は、進化のプ
ロセスに関する数理モデルを明示するとと
加者を引きつけるということは、現在の進化学会にとって重要な戦略ではないかと思い
ます。
現存する生物種の DNA の塩基配列やタ
会 場:日本瓦会館(東京都千代田区)
日本進化学会賞
まざまな統計的解析によって系統関係の量
選考の経緯:
的な検討を可能にした。長谷川博士は、分
られた方は多いと思いますが、予算的に大きな部屋を準備することは困難でした。福岡
日本進化学会賞への推薦は、日本進化
子系統学への最尤法の導入では Joseph
大会のように学生の参加費を大幅に安くして参加者数を稼ぐという手法も考えられまし
学会事務局に郵送された2 件と、木村基金
Felsenstein 博士らとほぼ同時期であった
を管理する中央三井信託銀行に郵送され
が、またその後は、独自のより洗練された
た 2 件の計 4 件であった。これらの推薦書
数理モデルにもとづいた系統樹の推定法や
類にもとづいて審議を行った。
統計的有意性を判定する検定法を開発し
たが、予算面のことを考えると無理であったと思います。赤字になった場合の学会の方
針を、あらかじめ大会委員会の方へ伝えておく必要があると思いました。
非会員がシンポで発表したうえに、さらに大会参加費が免除されるという状況は、多
委員長が選考委員の中でそれぞれの候補
発展させた。ことに、岸野洋久博士らと
くのシンポを企画するという観点から容認してはいるものの、学会会員へのサービスと
者に近い分野の委員をあらかじめ指名して
ともにアミノ酸置換パターンモデルを提唱
おいて、当日はまず指名された委員がそれ
した論文は、世界的にも頻繁に引用され、
ぞれ 10 分程度で候補者の研究業績の説明
本分野の古典(classic)論文となった。
いう点からみると疑問もあります。現在の状況では、会費を払って学会員になるメリッ
トは「ポスター発表ができる」ということしかありません。この点について、今後の大会
をおこなった。その上で、4 名とも木村賞
および学会のあり方とともに検討していく必要があると思われます。
の候補者として値するという判断をした。
実際の分子データに適用することにより、
さらに唯一の候補者にしぼるために、それ
長谷川博士は、ヒトがチンパンジーと分岐
ぞれの候補者の研究のインパクトやオリジ
した時間の推定、哺乳類の系統関係や原
ナリティー、分野の発展性、日本の進化
生生物の起源に対して、新たな知見を次々
学への貢献など様々な観点から議論をし相
と明らかにした。このように、それまでの
互に比較した。最終的に意見分布をみる
化石や形態だけに頼る系統推定に対して、
754,584
ために、4 名の候補者の中から第 1 位およ
統計的理論に基づく分子進化学的議論の
び第 2 位と考える候補者名を無記名投票し
有効性を示し、進化学における分子情報
たところ(議長は投票せず)
、全員が長谷
にもとづいた系統学を確立する上で大きな
川政美博士を第 1 位とした。そのため、委
役割を果たした。
◆ 第 7 回大会収支決算 ◆
収入
支出
参加費郵便振り込み
1,765,000
会場借り上げ
当日参加費
838,000
会場設営費(看板,ポスターパネル含む)446,155
学会からの大会援助金
300,000
要旨集印刷費
250,000
懇親会費
713,815
水道・ガス代(東北大会場)
133,276
招待講演者旅費補助
100,000
広告掲載料
文一総合出版
10,000
地人書館
10,000
(株)チュラルテック 10,000
仙台コンベンションセンター
からの補助金
280,000
収支(A − B)
多量のゲノムデータが得られるようにな
った昨今、コンピュータによるデータ処理
弁当代
46,200
雑貨
66,550
補者として、木村基金の運営委員会に推
によるパターンの検出はさまざまな手法が
薦することになった。
とられているが、厳密な数理理論にもとづ
参加費払い戻し
3,213,000
員会として長谷川博士を日本進化学会賞
の受賞者と決定し、また木村賞の受賞候
アルバイト代
合計(A)
さらに、自らが開発した最新の方法論を
合計(B)
691,000
いた長谷川博士らの手法は、他に抜きん
11,420
3,213,000
0
●長谷川政美(統計数理研究所教授)
「最尤法に基づく分子系統樹推定の統計学
的方法の開発」
出た有用性をもっている。今後ゲノム科学
の進展とともに長谷川博士らの手法の重要
性がますますます増していくと思われる。
4
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
以上の理由で、長谷川政美博士は、日
野外で測定し、多数の論文として発表し
本進化学会賞受賞者として最もふさわしい
た。その後、産業総合研究所のポスドク
と判断し、また木村資生記念学術賞受賞
研究員としてソルジャーをもつアブラムシ
候補者として推薦することになった。
の人工飼料による飼育方法を完成し、そ
のことによってソルジャー生産の制御機構
日本進化学会研究奨励賞
に関する実験的研究に大きな寄与をした。
選考の経緯:
さらに日本学術振興会特別研究員として
研究奨励賞の受賞候補者としては、1 名
の推薦があった。委員長が、その候補者
筑波大学に移り、個体間の化学コミュニ
ケーションの研究をすすめた。
の比較的分野の近い委員に研究業績の説
進化学の関連分野としての社会生物学
明を依頼した。それに加えて推薦書の記述
の実験的研究を精力的にすすめ、ことにさ
をもとに検討し、研究業績、分野の将来
まざまなアプローチによる研究を実施し
性、独立した若手研究者としての能力な
て、その成果を国際誌に 20 数編の論文と
ど、さまざまな面から詳細に審議した。そ
して発表している柴尾博士は、今後の研究
の結果、日本進化学会研究奨励賞として
者としての発展も期待でき、研究奨励賞
十分に値するという結論に達した。
の受賞者として適切であると判断した。
●柴尾晴信(東京大学大学院総合文化研究科・助手)
日本進化学会教育啓蒙賞
「社会性アブラムシに関する進化生態学的
研究」
代から、一貫して兵隊アブラムシの研究に
おいて議論を行い、JT 生命誌研究館に授
従事してきた。アブラムシ類において、ソ
賞するのが適切であるという結論に達し
ルジャーとよばれるコロニーの防御に特化
た。
し繁殖力をもたない個体が出現することは
コロニーのサイズとともに増えること、ま
Organizer:Masakado Kawata(Tohoku University) 企画者:河田雅圭(東北大院 生命科学)
Adaptive radiation is defined as the evolution of ecological and phenotypic diversity
within a rapidly multiplying lineage. Adaptive radiation is an important process since this
creates many new species rapidly. The process is complex and thus, several different scenarios explaining adaptive radiation has been proposed. Proper predictions by theoretical
models as well as appropriate experimental and empirical studies would be needed to test
the hypotheses on adaptive radiation. The purpose of the symposium is to discuss the
mechanisms for adaptive radiation, by combining theoretical, empirical, and experimental
approaches and to generate predictions for future research.
「Dynamic patterns of adaptive radiation」Sergey Gavrilets(University of Tennesse, Knoxville)
「Adaptive radiation in island snails」Satoshi Chiba(Life Sciences, Tohoku Univ.)
「Out of Oceania: Adaptive radiation of spiders on islands」Rosemary G. Gillespie(Univ. of
California, Berkeley)
「Experimental Studies of Adaptive Radiation」Michael Travisano(Univ. of Houston, Texas)
「Evidence for adaptive radiation in seed-beetles(Coleoptera, Bruchinae)? − new insights from
ecological and molecular data.」Ga l J. Kergoat(Institute of Biological Control, Univ. of Kyushu)
教育啓蒙賞については、一般からの推薦
はなされなかった。そのため選考委員会に
柴尾博士は、そのソルジャー個体の割合が
国際シンポジウム
選考の経緯:
柴尾博士は、北海道大学での大学院時
日本の青木重幸博士によって発見された。
5
● JT 生命誌研究館(所長・中村桂子博士)
「長年にわたる進化学の教育・啓蒙活動へ
の多大な貢献」
たその比率の調節がどのように生じている
JT 生命誌研究館は、一方で一流の研究
かについて量的遺伝学理論に基づく重回帰
者による基礎生物学の研究を進めながら、
モデルを駆使して複数レベル淘汰を検証し
他方で一般市民や学生に対する進化学を
た。さらにはソルジャーが実際に捕食者へ
含めた生物学の教育・啓蒙活動を長年に
の防御に対してどのように効果があるかを
わたって非常に効果的にすすめてきた。と
くに、進化が生物学・生命科学を統一す
る基本的な観点であるという点を明確にみ
とめ活動してきた。現在日本において自然
科学と一般社会との間の乖離がとくに問題
になっている。その意味で優れた研究博物
館としての活動をすすめてきた生命誌研究
館の役割は、非常に重要である。
以上のことから、JT 生命誌研究館は、
日本進化学会の教育・啓蒙賞を授賞する
にふさわしいと判断した。
● 1 限目:進化学入門(九大・矢原徹一)
では、まず自然淘汰による進化について、入門的な解説を行ないます。次に、花と送粉昆虫
の関係を例に、生き物どうしが適応しあう過程について紹介します。一見助け合っているかのよ
うに見える両者の関係が、実は異なる利害の妥協のうえに成り立っていることを説明します。最
後に、送粉昆虫に対する花の適応進化の分子機構を例に、表現型レベルの進化と分子レベルの
進化の関係が解明されつつある現状を紹介します。
● 2 限目:共進化(東北大・河田雅圭)
生物は、同じ種の個体だけでなく、競争相手、捕食者、餌、寄生者や病原体、また、共生者
と相互作用しながら生活をしています。たとえば、常に新しい病原菌やウイルスに私たちヒトは
抵抗していかなければいけません。一方、腸内細菌などヒトの生存に有利に働いてくれる細菌も
います。これらは、ヒトと細菌との相互作用によってお互いが進化することによって生じてきた
ものです。このように、異なる種の生物同士がお互いの影響を受け合って進化していく過程を、
共進化(coevolution)といいます。
本講義では、競争関係、餌―捕食者関係、寄生者―宿主関係などにおける共進化を紹介する
とともに、お互いに利益を与え合う共生関係の進化について、進化のメカニズムとその実例につ
いて紹介し、3 限目の内部共生の進化の講義に結びつけたいと思います。
● 3 限目:内部共生と生物進化(産総研・深津武馬)
多様かつ巧妙な生物の構造や形態や機能はすべて、
「遺伝する変異」を原材料として、
「自然淘
汰」と「遺伝的浮動」による取捨選択の結果として形づくられてきた、というのが現在の進化理
論の基本的な考え方です。それでは進化の原材料である「遺伝する変異」はどこからやってくる
のでしょうか?もっとも基本的な遺伝する変異は遺伝子 DNA に生じる「突然変異」です。しか
しそれだけではなく「性」
、
「遺伝子水平転移」
、
「内部共生」などの高次のプロセスが、さらに多
様かつダイナミックな遺伝する変異のレパートリーを創出し、生物進化に大きな影響を与えてい
ます。本講義では、生物の体内や細胞内に微生物が取り込まれて一体化し、あたかも不可分の 1
つの生物であるかのような複合系を構築する「内部共生」という現象について、その多様性、相
互作用の本質、生物学的意義、進化過程など、基本的な概念から最新の知見にいたるまでをわ
かりやすく解説し、そのおもしろさと重要性についての認識を共有することをめざします。
6
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
(遺伝研・集団遺伝)
、北野誉(遺伝研・集団遺伝、
現:山形大・医)
、江澤潔 (遺伝研・集団遺伝、
遺伝研・ Human Genome Network Project)
会場
1:8月27日
2:8月28日
限
1A1:
(S)
1限 8:50∼10:50
2限 11:00∼13:00
3限 一般講演(ポスター発表)
4限 16:00∼18:00
5限 18:30∼20:30
S:大会企画シンポジウム、K:公募式シンポジウム
W:ワークショップ
●
●
●
27 日 ●●●
環境微生物ゲノムの多様性と進化
津田雅孝(東北大・生命科学)
[email protected]
微生物のゲノム解析は、基礎研究材料であ
るモデル細菌や病原細菌が中心であった
が、この 1、2 年の間に環境常在性の様々
な細菌株が取り上げられるようになってき
た。本シンポジウムでは、多様な生態系に
棲息し過酷な環境変動にも堪え忍んでいる
様々な細菌株が、それぞれの生態的ニッチ
ェに応じてどのようなゲノム構造を備えて
いるか、また、ゲノムレベルではどのよう
な環境適応ポテンシャルをもっているかに
ついての研究成果を紹介する。また、この
ような環境細菌のゲノム多様化・進化の機
構と病原細菌のそれらの共通性並びに相違
に関しても言及したい。
「極限環境適応能を有する Bacillus 関連細
菌のゲノムから見える多様性」高見英人
(海洋研究開発機構・極限環境生物)
「放線菌ゲノム解析から見える環境適応」
石川淳(感染研)
「比較ゲノム解析から見えてきたバクテリ
アの適応戦略」黒川顕(奈良先端科学技術大
院)
「多重染色体をもつ環境細菌のゲノム」
津田雅孝(東北大・院・生命科学)
自己認識システムのゲノム進化
佐竹正延(東北大・加齢研)
[email protected]
MHC を題材に遺伝子構造の進化を実証
^ 責任者、提案者
0 趣旨
E
:
「講演タイトル」講演者(所属)
連絡先(Eメールアドレス)
的・理論的に議論する。
「無顎類の免疫系に学ぶ」笠原正典(北大・
院・医)
「比較ゲノム解析によるMHC 領域の進化」
椎名隆 *、猪子英俊(東海大・医・分子生命科
学)
「メダカ MHC クラスⅠ領域の種内多型」
野中勝 *、塚本健太郎(東大・院・理)
「自然選択による多型的 MHC 遺伝子座の
制御」颯田葉子(総合研究大院)
言語の起源と進化
○岡ノ谷一夫(理研)・橋本敬(北陸先端科
学技術大院)
[email protected]
言語の起源の研究は長い間タブーであった
が、近年ようやく、言語がどのような前適
応により発生したのかを生物学的に検討す
る研究があらわれてきた。本ワークショッ
プでは、言語起源研究の最新動向を紹介し
ながら、
「今何をなすべきか」を検討してゆ
く。
【テーマⅠ 言語起源研究は何を問題とす
るのか】
「言語の起源論はどのような科学なのか」
大谷卓史(吉備国際大・政策マネジメント)
「言語は器官か制度か」橋本敬(北陸先端科
学技術大院・知識科学)
【テーマⅡ 言語能力のモデルと実際】
「心の理論の再帰レベル進化に関する構成
論的アプローチ」有田隆也(名大・院・情報
科学)
ゲノム比較から見えてきた
ゲノムと生命の進化の全貌
小林一三(東大・新領域・メディカルゲノム及び
医科研)
[email protected]
ゲノム解読の進展により現れた圧倒的な量
のデータは、系統樹的進化思考をはるかに
超えて、生命進化の全貌を明らかにしつつ
ある。複数のゲノムの多数の遺伝子の解析
に基づく、最先端の成果を紹介する。
「網羅的オーソログ分類に基づく微生物ゲ
ノム比較解析:原核生物ゲノム進化の理解
に向けたアプローチ」内山郁夫(基生研)
「ゲノム内水平伝達遺伝子の網羅的検出」
五條堀孝(遺伝研・生命情報、産総研)、中村
洋路 (北大・院・情報科学、Heinrich-Heine Universitaet Duesseldorf)
、松田秀雄(阪大・院・情
報科学)
、伊藤剛(農生資研、産総研)
「近縁ゲノム比較によるゲノム再編機構の
推定」小林一三(東大・メディカルゲノム及び
東大・医科研)
「メダカから学ぶヒトの進化」清水信義(慶
應大・医)
「哺乳類ゲノムの比較解析∼系統樹では表
現できない進化関係の探索∼」斎藤成也 *
「言語とゲンゴの違い:再帰性、転移現象、
そして内心構造」畠山雄二(東農工大・院・
共生科学技術)
「シンボルの統合からみた言語起源」川合
伸幸(名大・院・情報科学)
【テーマⅢ 言語の系統発生】
「音列状況相互分節化仮説とその神経機構」
岡ノ谷一夫(理研・脳科学総合研究センター)、
Bjorn Merker(Upsla Univ.)
「言語の進化に関わる遺伝子」大隅典子(東
北大・院・医学系)
7
るが、細胞内シグナル伝達系を進化的な観
点から考察した研究はまだ数少ない。細胞
内シグナル伝達系の制御機構をよりよく理
解するために、進化的な観点から細胞内シ
グナル伝達系について考察した研究を集
め、シンポジウムを企画した。
「進化に伴ったアポトーシス実行因子の多
様化と細胞死の普遍性の意義」酒巻和弘
(京大・院・生命科学)
「シグナルカスケードにおけるシグナル増
幅のための最適な分子集団サイズ」森下喜
弘(九大・理)
「細胞内シグナル伝達系における最適な反
応階層数」中林潤(九大・院・理)
発光生物からみた生物多様性と進化
近江谷克裕(産総研)
[email protected]
「生物発光」は、生物が持つ最もユニーク
な機能の一つであり、その生物学的な意味
は求愛、忌避、活性酸素の除去等に至るま
で多岐にわたっている。つまり発光システ
ムは生物の持つ多様性をよく表現する生命
現象の一つである。本シンポジウムでは
「生物発光」と「生物の多様性と進化」をキ
ーワードに生物学的、生態学的、さらには
生化学的に研究を進める研究者の方々に、
もっともホットな話題を提供していただき
たいと考えている。
「共生発光細菌の生態と進化」和田実(東
大・海洋・微生物)
「日本沿岸に生息するウミホタルの集団構
造」小江克典 *、近江谷克裕(産総研・セル
エンジニア)
「発光性甲虫の進化」大場裕一 *(名大・生
命農)
、井上敏(チッソ・横浜研)
「ホタルの発光行動と系統進化」鈴木浩文
(オリンパス株式会社・基礎技術部)
蛋白質間相互作用による
細胞内シグナル伝達系の進化
○中林潤・森下喜弘(九大・理)
[email protected]
蛋白質は様々な相互作用や修飾反応により
その機能を制御されている。細胞内で適切
に機能するために、蛋白質は複雑な相互作
用のネットワークを形成している。その代
表的なものが細胞内の情報伝達経路であ
る。細胞内情報伝達の制御機構を理解する
ことは生物学の大きなトピックの一つであ
「Luminescent Beetle(LB)in China」
Liang Xingcai(Chinese Academy of Sciences)
古生物学と生物学から見た
生物の絶滅事変の実体
海保邦夫・鈴木紀毅(東北大・理)
[email protected]
生物の大半が短期間に絶滅した“大量絶滅”
は、過去 6 億年間に数回起きており、生物
進化の要因として重要である。本シンポジ
ウムでは、大量絶滅、より小規模の絶滅事
8
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
変、現在進行中の絶滅事変、種の絶滅につ
いて、絶滅に要した時間、範囲、原因など
の観点から比較する。古生物学者と生物学
者が議論し、互いの理解を深めることを目
的とする。
「現代は大量絶滅の時代か?」松田裕之(横
国大・環情)
「大量絶滅の全容と原因」海保邦夫 (東北
大・院・理)
「地質学スケールで見える生物相の大変革
― 5580 万年前の原生動物の絶滅事変の原
因」武田浩太郎(東北大・院・理)
システムとしての生命と進化
― 情報・ネットワーク・相互作用
下原勝憲(ATR-NIS(ATR ネットワーク情報学研
究所)
)・前川督雄(四日市大)
[email protected]
システムの進化を、要素間の相互作用や情
報の流れ、それらのネットワークが発生・
成長・発達・崩壊する動的かつ自己組織的
なプロセスとして捉える情報学的なアプロ
ーチから、システムとしての生命やその進
化を理解し、工学的な応用につなげていく
試みについて紹介する。
「ネットワークの自己組織化と人工化学」
鈴木秀明(NICT(情報通信研究機構)、ATR-NIS)
「代謝ネットワークの構造形成の進化モデ
ル」小野直亮(阪大・院・工)
「On Evolutionary Structure and Its Logic
Representation in Molecular Communication Systems」劉健勤、下原勝憲(ATR-NIS)
「進化ハードウェアと遺伝子ネットワーク
シミュレーション」邊見均(ATR-NIS)
「進化加速系としてのプログラムされた自
己解体」前川督雄(四日市大・環境情報)、上
野 修 ( FAIS( 国 際 科 学 振 興 財 団 ))、 大 橋 力
(FAIS、ATR-NIS)
「 qCA Machine for an Evolving Artificial
Brain」Andrzej BULLER(ATR-NIS)
「概念間の関係として捉えた知識の構造と
進化」真栄城哲也(筑波大、ATR-NIS)
「Learning Mutation Strategies in Genetic
Programming and their Implications on
Evolution, Adaptation and Robustness of
Snakebot」 Ivan Tanev( Information Systems
Design, Faculty of Engineering, Doshisha Univ. ,
ATR-NIS)
「個体間相互作用の動的離隔を用いた異種
間協力の共進化モデル」中山功一、下原勝
憲(ATR-NIS)
「進化・学習するマルチエージェントシス
テムの設計指針を目指して ― 複数クラシ
ファイアシステムからの展開 ―」高玉圭樹
(東工大、ATR-NIS)
昆虫社会内のコンフリクト
― 性比、ポリシング、繁殖配分
辻和希(琉球大・農)
[email protected]
利他行動進化のキーコンセプトとして血縁
淘汰理論が登場して以来、アリやハチなど
の社会性昆虫は社会行動の進化的理解の向
上に最も貢献した研究対象の 1 つになって
いる。その過程で、それらの社会に内在す
る様々な利害対立が理論的にも実証的にも
次々明らかになってきた。本企画では、分
野外からはともすれば複雑怪奇に映る、社
会内コンフリクトに関するこれまでの理
論・実証両研究の成果を整理し、現状の到
達点を概観したい。そして、比較を通し生
物の「社会」一般の理解のための視点の提
供を試みる。
「膜翅目昆虫社会における 3 つのコンフリ
クト:オーバービュー」辻和希 (琉球大・
農)
「繁殖配分コンフリクトとポリシングの理
論」大槻久(九大・理)
「一年性社会性昆虫におけるポリシングと
性比」土田浩治(岐阜大・応用生物科学)
「多年性昆虫社会におけるポリシングとコ
ロニーサイズ」菊地友則 *(琉球大・農)、菊
田典嗣(富山大・理)、辻和希(琉球大・農)
「霊長類をはじめとする脊椎動物における
コンフリクトの研究から」コメンテーター:
岡本暁子(東海学園大・人文)
発生と進化
― 発生プログラムも進化する ―
田村宏治 (東北大・生命科学) ・倉谷滋 (理
研・発生再生)
[email protected]
進化の軌跡は、生き物の形態に顕著に現れ
る。相同性・相似性などの概念も動植物の
形態についていうことが多く、生物の多様
性を考える場合においてもまた形態的多様
性を無視することはできない。多細胞生物
体が発生過程を経てその形態を獲得する限
りにおいて、最終形態の比較のみではな
く、形態を生み出す発生システムそのもの
の進化と多様性を研究し論ずることが、進
化生物学にとって重要な作業であると考え
られる。
「形態進化」というグローバルな命
題を本シンポジウムの中心に据え、動物−
植物間、脊椎動物−無脊椎動物間あるいは
それぞれのグループ中の生物多様性を支え
る形態発生メカニズムの進化について議論
したいと考えている。
「脊索動物の進化発生学的考察」佐藤矩行
(京大・院・理)
「昆虫の形態形成メカニズムの進化」野地
澄晴 *、三戸太郎、大内淑代(徳島大・工)
「カメはいかにしてカメとなり得たか」倉
谷滋(理研・発生・再生科学総合研究センター)
「動物と植物の発生進化の違いを生み出し
ているもの」長谷部光泰 *、村田隆 (基生
研・生物進化)
、藤田知道(基生研・生物進化、
北大・院・理)
微生物共生の相互作用と進化
南澤究(東北大・生命科学)
[email protected]
生物共生は生態系・個体群・個体・細胞な
どの様々なレベルで生物進化の原動力とさ
れ、緊密な細胞内共生からルーズな様々な
共生系がある。地球史な視点からは主に微
生物が共生者として振まってきたと言え
る。本シンポジウムでは、微生物が関与す
る共生系のうち、相利共生の典型とされて
きた根粒菌とマメ科植物の窒素固定共生系
と最近着目されている微生物バイオフィル
ム系をとりあげ、微生物−植物間、微生物
―微生物間におけるシグナル物質を介した
コミュニケーション・相互作用とそれらの
進化について考えたい。特に、今まであま
り注目されてこなかった自然界における相
互作用の場、共生者の競合、共生戦略の便
宜性などについても議論を行い、微生物共
生系研究の新たな視点についても考えてみ
たい。
「植物共生遺伝子から見た細胞内共生の多
様性と進化」林誠(阪大・院・工)
「マメ科植物 ― 根粒菌における宿主特異的
共生の分子進化的解析」青木誠志郎(東大・
院・総文)
「ゲノムから見た根粒菌像と相互作用因子
の進化」南澤究(東北大・院・生命科学)
単細胞も群れたがる?― 細胞集団の三次元
時空間解析から見えてくるもの ―」野村暢
彦(筑波大・院・生命環境)
9
空間スケールでみる感染と共進化
岩永亜紀子・鈴木清樹(九大・理)
病原体とホストの軍拡競争は絶えず共進化
の過程で見られる。しかし、病原体が新た
なホストを獲得して増殖していくには空間
の効果が無視できない。そこで、本シンポ
ジウムで空間構造を伴った感染動態や病気
流行の話題を紹介し、空間構造がもたらす
役割や効果について考えてみたい。
「空間構造と感染様式 ― 植物病害を例に―」
鈴木清樹 *、佐々木顕(九大・理)
「イネ・いもち病菌の共進化制御を目指す
マルチライン計画と空間構造の役割」石黒
潔 *(農林水産省・技術会議事務局)
「複雑ネットワーク上の感染症伝播モデル」
増田直紀 *(理研・脳科学総合研究センター)
「植物の防御応答における抵抗性遺伝子と
シグナル伝 達 系の多 様 性 ― RPP8/HRT/
RCY1 抵抗性遺伝子座における解析―」高
橋英樹 *(東北大・院・農)
「ウイルスの細胞間移行と宿主植物の最適
防御戦略」岩永亜紀子 *、佐々木顕(九大・
理)
Vertical space structure :On metazoic
genetic constitution adapting 1-g and
hygiene environment
Yasuhiko Takeda
[email protected]
Toward mammals, via closed-blood vascular endoskeleton vertebrates from openblood vascular exoskeleton invertebrates,
we investigate metazoan body constitution
through gravity gradient as one of environmental parameter of its persistence. We
set two boundary conditions and discuss
the“solution”
, i. e. mammals’
genetic constitution, that fulfills the space in between.
As 0-g boundary condition, we set obtained
result of gravity independent research on
model creatures’
genetic networks. As 1-g
boundary condition, we set obtained result
of case-control study that takes advantage
of diseases experienced among established body constitutions. As a way of
interpolation, designing artificial organs
gives some criteria to satisfy gravity resistance.
10
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
「 Comprehensive sequence analysis of
horseshoe crab cuticular proteins and
their involvement in transglutaminasedependent cross-linking」Manabu Iijima ,
Shun-ichiro Kawabata(Biology, Faculty of Sciences, Kyushu Univ.)
「Vertical space structure realized through
genetic network perspective」 Yasuhiko
Takeda(Dep. Bio, Fac. of Sci, Kyushu Univ.)
「Why Human Heart beating? 」Tomoyuki
Yambe(Tohoku Univ.)
「Studies on the Rheumatoid Arthritis Disease Gene from a Viewpoint of Gene Duplication and Accumulation of Neutral Mutation in the Duplicated Genome」Shunichi
Shiozawa( Rheumatology, Kobe Univ. FHS
School of Medicine and Rheumatic Diseases Division, Kobe Univ. Hospitala)
Ecological and molecular approaches
to Island Biology
Hayashi Morito(Institute of Genetics, Univ. of
Nottingham) ・ Lazaro M. Echenique-Diaz
(Life science, Tohoku Univ.)
[email protected]
Archipelagos and islands in general offer a
suitable scenario to study models of evolution due to practical advantages such as
clear boundaries defined by geographical
and ecological discontinuities. In oceanic
islands, historical isolation and complex
geological histories along with high ecological diversity have allowed the diversification of a few taxa into a large number of
species. On the other hand, continental
islands that have been historically connected to mainland show, on average, less
genetic and species diversity. These differences have prompted the assumption that
evolution has occurred at much faster rate
in oceanic than in continental islands. In
this symposium we focus on studies of single-species occurring either in oceanic or
continental islands. With an approach to
patterns of evolution and populations
change from ecological and molecular perspectives, we hope to bring to a common
debate several aspect of the broad spectrum of Island Biology, with the aim of
stimulating young researchers and contributing to our understanding of evolu-
tionary processes on island realms.
「 Evolutionary patterns in Hawaiian land
snail radiations: Comparative biogeography of two major groups, the Succineidae
and the Achatinellinae( Achatinellidae)」
Brenden S. Holland( Center for Conservation
Research & Training, Pacific Biosciences Research
Center, Univ. of Hawaii)
「 Geographical variation in echolocation
call of a Horseshoe bat, Rhinolophus
pumilus, on Okinawa Islands」 Hajime
Yoshino*( Tohoku Univ. Life science) , Kyle
Armstrong( Kyoto Univ. Science) , Masako
Izawa( Ryukyu Univ. Science) , Masakado
Kawata(Tohoku Univ. Life science)
「So close and so different: causes and consequences of genetic structure in island
populations of the bat Hipposideros turpis」
L zaro M. Echenique-Diaz, Jun Yokoyama,
Masakado Kawata( Life Sciences, Tohoku
Univ.)
「 Snake-lizard evolutionary dynamics on
the Izu-Islands」Masami Hasegawa(Biolo-
による配偶者識別がありうるだけに、行動
隔離の仕組みと進化プロセスは、対象生物
の自然史に通じていなければ手の出しよう
がありません。このシンポジウムでは、行
動隔離の実態を追究する研究の現在と今後
を探ります。
「Mate recognition by pheromone discloses hybrid vigor and breakdown in land
snails」Takahiro Asami(Shinshu Univ.)
「 Courtship of Drosophila quadrilineata :
What is a unique courtship made of ? 」
Masatoshi Tomaru(Kyoto Institute of Technology)
「Analysis of sexual isolation by means of interspecific mosaic genome lines of the Drosophila
ananassae complex」 Kyoichi Sawamura
( Univ. Tsukuba), Yoshihiko Tomimura( Shiba
Gakuen) , Hajime Sato( Kyorin Univ) , Koji
Setoguchi( Univ. Tsukuba), Hirokazu Yamada
(Univ. Tsukuba)
, Muneo Matsuda(Kyorin Univ),
Yuzuru Oguma(Univ. Tsukuba)
「Allochronic reproductive isolation」
Takahisa Miyatake(Okayama Univ.)
●
●
●
California)
Evolutionary biology of behavioral
isolation
〇浅見崇比呂(信州大)・小熊譲(筑波大)
[email protected]
行動隔離(性的隔離)とは、視・聴・嗅・
味・触覚のどれかで求愛シグナルを識別
し、配偶者を選択する受精前隔離です。行
動隔離は、雑種の崩壊を経ずに集団間の遺
伝的交流を妨げる点で、効率的かつ効果的
な生殖的隔離の様式であるにちがいありま
せん。行動隔離は、複数の集団がたがいに
異なる配偶者識別機構を獲得した結果(副
産物)である場合と、性淘汰により配偶者
識別機構が分化した結果である場合があり
ます。近年には、行動隔離に起因する急速
な種分化の証拠がつぎつぎと報告され、脚
光をあびています。しかし、5 種もの感覚
山本和生 *(東北大)・小林一三(東大)
[email protected]
ゲノムを安定に維持する機構を多面的に明
らかにし、進化に及ぼすパワーを考える。
一番目は、自己 DNA 非自己 DNA の認識を
もとに、ゲノム再編成を考える。二番目は
塩基レベル、染色体レベルでゲノムの安定
性維持機構を、ゲノムの修復とその破綻に
よるガン細胞の進化について総括する。
「
「非自己」ゲノムを破壊し「自己」ゲノム
を修復するマシーンの 1 分子可視化」半田
直史(Division of Microbiology, Univ. of California
at Davis, California, USA ;現:東大・新領域)
「制限酵素修飾酵素遺伝子によるゲノムの
攻撃と再編」小林一三(東大・新領域、東大・
医科研)
「SOS DNA ポリメラーゼ:環境とゲノム進
化を結ぶ架け橋」能美健彦(国衛研・変異遺
伝部)
28 日 ●●●
ゲノムのダイナミックス・維持・進化(2)
Centre, Univ. of Nottingham)
「Species formation in an adaptive radiation
of island spiders: Role of isolation and ecological shifts」Rosemary Gillespie(Univ. of
ゲノムのダイナミックス・維持・進化(1)
「DNA 紫外線損傷の修復機構と進化」安井
明(東北大・加齢医学研究所)
gy, Toho Univ.)
「Rapid evolution of enhanced colour polymorphisms in island populations of the
land snail Euhadra peliomphala」 Morito
s Medical
Hayashi( Institute of Genetics, Queen’
11
ゲノムの多様性から探る
生物集団の構造と歴史
高橋亮(理研・ゲノム科学総合研究センター)
[email protected]
生物集団の進化史を解き明かすには、個々
の遺伝子の進化を辿る場合と異なり、全ゲ
ノムに渡る変異パタンを把握し、限られた
領域にのみ影響を及ぼす要因からゲノム全
体を左右する要因を峻別することが肝要で
ある.本集会では、広範なゲノム領域から
得られる多型情報を指標とする集団史研究
を実践と理論の両面から振り返り、作物の
育種や遺伝多様性の保全への応用を議論す
る。
「人類集団の歴史と遺伝的多様性」颯田
葉子(総研大・先導)
「分断化・融合を繰り返す集団における遺
伝子の進化」舘田英典(九大・院・理)
「進化遺伝学のモデルとしての栽培植物 ―
トウモロコシとコムギを例に ―」松岡由浩
(福井県立大)
「サクラソウの遺伝的多様性とその保全」
本城正憲(東大・院・農学生命科学)
山本和生(東北大)・小林一三(東大)
[email protected]
ゲノムを安定に維持する機構を多面的に明
らかにし、進化に及ぼすパワーを考える。
一番目は、自己 DNA 非自己 DNA の認識を
もとに、ゲノム再編成を考える。二番目は
塩基レベル、染色体レベルでゲノムの安定
性維持機構を、ゲノムの修復とその破綻に
よるガン細胞の進化について総括する。
「DNA 複製開始制御とゲノム倍数性の維持
― DNA 複製ライセンス化因子 Cdt1 を中心
として―」多田周右 *、榎本武美(東北大・
院・薬)
「ゲノム倍数性の維持とエピジェネテイク
ス」山本和生 *、渡邊恵里、高橋輝久、布
柴達男(東北大・生命科学)
「マウス生殖系での突然変異の特性」小野
哲也 *、李慧英、上原芳彦、池畑広伸(東
北大・院・医)
「DNA 損傷におけるクロマチンダイナミク
ス」井倉毅(東北大・医学系)
「染色体核内配置からみた腫瘍細胞ゲノム
のダイナミックス」田辺秀之 (総合研究大
院・先導科学)
12
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
脳と行動の多様性と進化
行動の進化の遺伝子機構
水波誠(東北大・生命科学)
[email protected]
脳の進化の解明は神経生物学の最大の目標
の 1 つである。現在、脳進化へのアプロー
チが発生学や分子進化の観点から進められ
ているが、脳システムの多様性とその進化
への取り組みはまだ萌芽的段階にあり、こ
の分野では基盤的知見の蓄積や研究課題の
探索や重要である。本シンポジウムでは脊
椎動物(鳥類)および無脊椎動物(昆虫)の
脳と行動の多様性について幾つかの興味深
いトピックをとりあげ、その進化的理解に
向けての展望にいて議論する。
「聴覚の収斂進化 ― 昆虫の聴覚器官が教え
てくれること―」西野浩史(北大・電子研)
「昆虫における色覚系の多様性」木下充代
山元大輔(東北大・院・生命科学)
[email protected]
行動の変化は集団間の隔離を導き、種分化
の契機となりうる。では、行動の進化的転
換を引き起こした遺伝子は何であり、行動
を生み出す脳神経系に与えたインパクトは
どのようなものなのか。このような問題意
識のもと、無脊椎動物からヒトにいたる生
物を対象に、脳の構造と機能、行動の多様
化を支える分子メカニズムに迫る。
「ハワイ産ショウジョウバエの脳の性的二
型とその進化」山元大輔(東北大・生命科学)
「ショウジョウバエにおける寄主選択行動
の遺伝的基盤 Genetic basis of host plant
preference in Drosophila」松尾隆嗣(首都
(横浜市大・院・総合理学)
「多様化膜分子群の分子進化と脳機能での
働き」八木健(阪大・院・生命機能)
「ヒトの行動様式と遺伝的背景の関連を探
る試み」太田博樹(東大・院・新領域)
「鳥類の社会行動と扁桃核・視聴覚統合領
域」池渕 万季(金沢工大・人情研)
「鳥の歌学習の起源と進化」岡ノ谷一夫(理
大・生命科学)
池上高志(東大・総文)
[email protected]
現代の人の脳の研究を押し進めてもなかな
か意識全貌の解明には至れない。ここでは
意識の問題を進化的な観点から議論するこ
とで、原初的意識はどんなものか、意識そ
のものはダーウィン的進化の対象か、意識
を持つための必要十分条件はなにか、人間
の意識は特別か、人工的な意識状態はつく
れるのか、といったことを新しく問い直し
てみたい。
「脳の認知プロセスにおける進化的拘束」
茂木健一郎(ソニーコンピュータサイエンス研究
所)
「自己意識の起源:触媒仮説」岡ノ谷一夫、
山崎由美子、入来篤史(理研・脳科学総合研
究センター)
「二人称の時間:痛み=未来への糊代」郡
司ペギオ幸夫(神戸大・理)
「ダイナミカルなカテゴリーと意識の進化」
池上高志(東大・院・広域システム科学)
山本博章(東北大・生命科学)
[email protected]
色素細胞は、紫外線防御だけでなく、婚姻
色の発現やカムフラージュを可能にし、正
常な視聴覚には必須である。メラニン色素
は多くの試薬と結合し、またラジカルスカ
ベンジャーとしても機能する。我々哺乳動
物の毛色発現に関わる遺伝子には、エネル
ギー代謝に関わるものもあり、免疫機構へ
の関与が予想されている遺伝子も報告され
ている。これらの機能は、当該のシステム
が、生態学的なストレスの下、我々の生存
戦略に深く関わってきたことを推察させ
る。本シンポジウムを、生態学的なストレ
スと色素や色素細胞またこの細胞を含む感
覚器の機能進化との関連を考察する端緒と
したい。
「色素細胞の多様な機能」山本博章 (東北
大・生命科学)
「昆虫の多様な色彩世界における色素細胞
の潜在的な機能を探る」中越元子(北里大・
研・脳科学総合研究センター)
意識の進化
感覚シグナルと感覚受容系の進化 1 :
色素細胞・感覚器の機能進化
表現型進化を巡る多角的な視座:
遺伝進化、発生進化、生態進化の
視点から
高橋亮(理研)
[email protected]
生物進化の研究には、多様な背景を持つ研
究者による多角的な取組み方が存在しま
す。本企画では、分野毎の多彩な研究のあ
り方を相互に理解することを目的に、具体
的な事例として発生システムの安定化(カ
ナリゼーション)を題材に取り上げ、遺伝
進化、発生進化、生態進化、各々の視点か
らの表現型進化研究への取組みについて概
観し、これからの総合的な進化研究の方向
性を展望します。
「遺伝進化の視点から」高橋亮(理研・ゲノ
ム科学総合研究センター)
「進化発生学と表現型進化:鱗翅目昆虫に
見るモジュール的進化」倉谷滋 (理研・発
生・再生科学総合研究センター)
「生態進化の視点から」千葉聡(東北大・院・
生命科学)
「数理生物の視点から」望月敦史(基生研)
一般教育)
「鳥類の色素細胞 ― 体色発現におけるその
挙動と機能 ―」秋山豊子(慶應大 生物)
「究極の生き残り戦略:魚にとっての体色
と色素細胞」大島範子(東邦大・理)
「眼の進化 その多様化と起原」池尾一穂
(遺伝研・生命情報)
感覚シグナルと感覚受容系の進化 2 :
オプシン及び視細胞の多様性と視覚の進化
河村正二(東大・院・新領域創成科学)
[email protected]
オプシンは「見る」という機能をその最も
入り口において規定するため、オプシン及
びそれを産生する視細胞の進化多様性は視
覚に関わる様々な行動や生態の進化を理解
する上で重要な意味をもつ。本シンポジウ
ムでは昆虫、ナメクジウオ、魚類、サルと
いった多様な動物群を対象に分子、細胞、
個体、集団の様々なレベルを縦横に行き来
しながら視覚光受容の進化多様性と起源を
追求する研究の最前線を紹介したい。
「オプシンと光受容細胞の進化・多様性」
寺北明久(京大・院・理)
「色覚の種内変異とオプシン:新世界ザルと
13
グッピーが教えてくれるもの」河村正二 *、
平松千尋、笠木聡(東大・院・新領域)、正路
章子(三井情報開発)、河田雅圭(東北大・院・
生命科学)
「グッピーにおける LWS オプシン遺伝子多
型の集団間、集団内変異」正路章子 *(三
井情報開発)
、河村正二、笠木聡(東大・院・
新領域)
、河田雅圭(東北大・院・生命科学)
「シクリッドのオプシン遺伝子の進化」岡
田典弘(東工大・院・生命理工)
「視細胞内色素による視細胞分光感度の調
節機構」蟻川謙太郎 (横浜市大・院・総合理
学)
感覚シグナルと感覚受容系の進化 3 :
脊椎動物の嗅覚受容機構の進化
西田睦(東大・海洋研)・東原和成(東大・新
領域)
[email protected]
嗅覚は外界の化学物質の認識を担う感覚で
あり、動物の生存に極めて重要な役割をは
たしている。さらにフェロモン受容などに
よって配偶システムにも深く関わってお
り、生殖的隔離機構の形成を通じて種分化
のカギとなっている可能性も考えられる。
したがって以前から嗅覚への関心はもたれ
ていたが、その遺伝子についてはじめて明
らかになったのは比較的最近で、1991 年
のことである(Buck and Axel, 1991)
。こ
れ以来、研究は急速に進展し、嗅覚受容体
遺伝子は生物種あたり数百から千以上のコ
ピーをもつ脊椎動物ゲノム最大の遺伝子フ
ァミリーであることなど、興味深い事実が
明らかになってきた。さらにそれらの遺伝
子の発現様式、嗅覚受容体の機能などの解
明も進んできた。加えていくつかの脊椎動
物の全ゲノムの解読に伴って、嗅覚受容体
遺伝子ファミリーの分子進化の実態も明ら
かになりつつある。このような背景のも
と、生物の機能進化や種分化への嗅覚の関
与についての本格的研究が、現実的なもの
として可能になりつつある。このシンポジ
ウムでは、嗅覚・フェロモンの受容機構お
よびその進化についての最新の研究の成果
を紹介していただき、そこから嗅覚にかか
わる進化研究の今後の展開方向について議
論したい。
「嗅覚受容機構と進化:シンポジウム開催
にあたって」西田睦(東大・海洋研)
「脊椎動物の嗅覚受容機構研究の現状と展
望」東原和成(東大・院・新領域)
14
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
「脊椎動物における嗅覚受容体多重遺伝子
族の分子進化」新村芳人(東京医科歯科大・
難治疾患研究所)
「魚類 V2R 型嗅覚受容体遺伝子ファミリー
の進化」橋口康之 *、西田睦(東大・海洋研)
「脊椎動物におけるフェロモン受容体と2 つ
の嗅覚系」山岸公子(東京都医学研究機構・東
京都臨床医学総合研究所)
「マウスの V2R 鋤鼻神経に作用する性特異
的ペプチドの発見」木本裕子 *、東原和成
(東大院・新領域)
「嗅覚から探るシクリッドの種分化」二階
堂雅人 *(東工大・院・生命理工、統数研・モデ
、岡田典弘(東工大・院・生命理
リング研究系)
工、基生研)
「遺伝子退化による生物の進化∼海棲哺乳
類嗅覚受容体遺伝子を中心に∼」郷康広
(総研大・先導科学研究科)
人間社会と進化:
数理モデル研究の可能性と
実証研究との関係
中丸麻由子(東工大・院・社会理工)・井原泰
雄(東大・院・理)
[email protected]
人間の行動や社会は複雑であり進化生物学
的な観点から研究するのは難しいと思われ
るかもしれない。しかし人間に独特の様々
な要因を考慮に入れることにより可能にな
ると思われる。なかでも人間で顕著な社会
学習の能力や、それに裏打ちされる文化伝
達、社会規範など、そしてそれらを可能に
している言語能力は、人間の行動や社会を
複雑にしている大きな要因だと言えるだろ
う。人間がこれらの形質をどのようにして
獲得したのか、またこれらの形質が人間の
行動や社会の進化にどのような影響を及ぼ
してきたのかについて暗中模索中である。
今回は数理モデルやシミュレーションによ
る仮説検証や、実証研究との共同研究の可
能性について検討したい。
「社会学習の進化について」若野友一郎(東
大・院・理)
「パーソナル・ネットワークにおける社会
意識の一致とそのメカニズムの社会心理学
的検討」石黒格(弘前大・人文)
「出生率の低下を進化的に説明する」井原
泰雄(東大・院・理)
「協力行動の進化における嘘の噂の効果に
ついて」中丸麻由子 *(東工大・院・社会理
工)
、河田雅圭(東北大・院・生命科学)
送粉者の行動から眺める送粉系
牧野崇司(東北大・生命科学)・酒井聡樹(東
北大・生命科学)
[email protected]
植物個体間をどのように移動し、花をどの
ように訪れるのか、といった送粉者の行動
は、植物の花粉移動を直接左右する。植物
を訪れる送粉者は、自身の利益を高めるよ
うに行動する。一方で植物は、自身の送粉
効率を高めるため、送粉者の行動をうまく
操作するような性質を進化させたと考えら
れる。本シンポジウムでは、送粉者の行動
についての話題をいくつか取り上げる。そ
して、送粉者の行動の適応的意義はもとよ
り、送粉者の行動を深く知ることで見えて
くる、植物の持つ諸性質の役割についても
議論したい。
「ウコンウツギにおける花色変化∼送粉者
の行動のコントロールによる送粉効率の向
上∼」井田崇(北大・地球環境)
「送粉昆虫の花接近飛行 3D 解析に基づく花
信号の機能」川窪伸光(岐阜大)
「ハナバチの残す匂いのマーク:採餌にお
ける意義と送粉系への示唆」横井智之(京
大)
「訪花昆虫相に対応した虫媒植物の花形態
の地理的変異」横山潤(東北大・院・生命科
学)
「マルハナバチの株訪問頻度に与えるディ
スプレイサイズの効果:「見た目」か「中
身」か?人工花を用いた実験」牧野崇司
(東北大・院・生命科学)
プランクトンとベントスの
カップリング進化
北里洋(海洋研究開発機構・地球内部変動研究セ
ンター)
[email protected]
地球史を通じて、海洋プランクトンは進化
している。それに伴い沈降するマリンスノ
ーの質と量が変わり、水中および海底の生
物に影響を与える。本シンポジウムでは、
地質時代を通じた benthic-pelagic coupling
の変遷を明らかにし、地球史における意味
について議論する。
「趣旨説明:プランクトンの進化が底層生
態系進化を誘引する」北里洋(海洋研究開発
機構・地球内部変動研究センター)
「先カンブリア紀の海洋生態系進化」大野
照文(京大・総合博物館)
「渦鞭毛藻の繁栄と海洋環境の変化」松岡
数充 *(長崎大・環東シナ海海洋環境資源研究セ
ンター)
、岩滝光儀(長崎大・環東シナ海海洋環
境資源研究センター、長崎県産業振興財団)
「海洋基礎生産者としての珪藻の進化が海
洋生態系に及ぼした影響」柳沢幸夫 *(産
総研・地質情報)
、須藤齋(国科博・地学)
「底生動物群集構造の進化と海洋表層生態
系の進化とのかかわり」近藤康生(高知大・
理)
「海洋表層生態系と生痕化石を作る生物の
共進化」小竹信宏(千葉大・理)
「化学合成群集の進化と海洋表層生態系の
進化は独立事象か?」延原尊美(静岡大・教
育)
コンパクトな生態系としての内部共生:
進化生態学の諸問題に取り組む
モデル系としての展望
深津武馬(産総研・生物機能工学)
多くの動植物が、体内に 1 種もしくは複数
種の共生微生物を保有している。それら共
生微生物はしばしば、宿主の生存や繁殖に
必須であったり、宿主の生殖や生態に大き
な影響を与えていたりする。すなわちこう
いった生物は、複数の微生物との密接な複
合系として存在し、それらの間の相互作用
によって全体としての個体の性質が規定さ
れている。つまり 1 つ 1 つの個体を、複数
の生物から成る生態系としてとらえること
ができる。しかもこの生態系は明確に区画
化されたコンパクトな実体であり構成要素
をすべて同定することができ、要素間の相
互作用、個体群動態、物質交換、さらには
系全体の性質を代表する重要なパラメータ
ーである個体の適応度までもしっかりと把
握することが可能である。
本シンポジウムでは、このような観点か
ら特に昆虫類−微生物間の内部共生系に焦
点をあて、その生態的側面において興味深
い研究を展開している演者に最新の話題を
提供してもらい、進化生態学の諸問題に取
り組んでいくうえで、内部共生系がいかに
優れたモデル系たりうるかについて認識を
共有したい。
「マルカメムシのカプセル共生細菌:共進
化研究のための新しいモデル系」細川貴弘
(産総研・生物機能工学)
「アズキゾウムシにおけるボルバキア多重
15
感染系:虫体内でくりひろげられる多様な
進化生態的相互作用」今藤夏子(国環研・生
物多様性)
「宿主アブラムシを舞台に繰り広げられる
共生細菌間相互作用及び、その宿主の生
理・進化に与える影響」古賀隆一 *、土田
努(産総研・生物機能工学)
生態系に対する進化の影響
水野晃子(東北大・生命科学)
[email protected]
生物の進化は、さまざまな生態学的予測、
現象に対して影響を持つということが理論
的に調べられてきている。さらに生物の急
速な進化が実際の生物の相互作用に影響を
与えるということが、近年の実験的研究に
よって明らかになってきた。しかし、進化
によって生態系が受ける影響や、生態系と
いう枠組みの中で進化がどのように起こる
かということについての研究はあまりなさ
れていない。
そこで我々は、生態系と進化の関係につ
いての理論的、実験的アプローチによる取
り組みを紹介したい。
「適応放散による食物網成長とその制約と
しての理想自由分布」伊藤洋*、池上高志、
嶋田正和(東大・広域システム)
「食物網構造を正確に再現する進化メカニ
l Univ.
ズム」A G. Rossberg(Yokohama Nat’
Environment and Information Sciences)
「植物プランクトンの共存条件に栄養塩形
質の進化が与える影響」水野晃子 *、河田
雅圭(東北大・院・生命科学)
「北海道産 Aphanizomenon flos-aquae の系統
的多様性と機能の多様性」日野修次 *(山
形大・理)
、高野敬志(北海道衛生研)
アーキアを中心とした
微生物の進化をたどる
山岸明彦 (東京薬科大・生命科学) ・河原林
裕(産総研)
[email protected]
[email protected]
微生物も長い地球の歴史の中で進化を経験
しているが、その多くは明らかとなってい
ない。そこで、様々な角度から微生物、特
にその中でも特殊な性質を多く持つアーキ
アに焦点を当てて、進化の道筋を地理・耐
熱性・代謝系・膜構造・ゲノム等様々な面
16
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
から探っていきたい。
「生息環境、地理的分布からアーキアの進
化を考える」伊藤隆(理研・バイオリソースセ
「外来植物の進化:在来種との交雑による
生態的分化」芝池博幸(農環研)
ンター)
「ゲノムから見た微生物の進化」河原林裕
(産総研・生物機能工学)
「超好熱アーキアの特異的な NAD(P)生合
成系と進化」櫻庭春彦 *、大島敏久(徳島
大・工)
「祖先型蛋白質の耐熱性と進化」山岸明彦
(東京薬科大・生命科学)
「古細菌の脂質の構造的、代謝的特徴と進
化」古賀洋介 *、森井宏幸(産業医大・生体
物質化学)
、大安裕美(京大・化学研)、藤博幸
(九大・生体防御医学研)
進入と進化
千葉聡(東北大・生命科学)
[email protected]
在来の生態系への侵入に成功しつつある外
来種は、どのように新しい環境に進出して
いくのか、どのような性質が侵入、定着を
可能にするのか、そして新しい環境に進出
しつつある生物や定着を果たした生物の遺
伝的、生理的、生態的性質に、次にどのよ
うな変化が起きるのか。こうした問題を明
らかにすることは、近年深刻化してきた外
来種問題と密接にかかわる保全上の重要な
課題である。また同時にこのようなケース
は、性質の多様化や適応放散のメカニズム
など重要な進化機構を明らかにする上で格
好のモデルとなる。このような観点をもと
に、保全と進化の両面から生物の侵入の過
程とその結果について議論を試みる。ここ
では特に侵入にかかわる「システム」の効
果に注目したい。システムによる拘束から
の開放、異質なシステムの破壊、そして異
質なシステムの出会いが何をもたらすか
を、様々なシステム、例えばホスト−パラ
サイト系、共生系、社会性、そして異なる
遺伝子ー繁殖システムの侵入と出会いを例
に考えてみたい。
「太平洋を越えて:海産巻貝とその寄生虫
の侵入」三浦収(東北大・院 生命科学)
「島嶼送粉共生系へのセイヨウミツバチの
影響」加藤真(京大・院・人間・環境学)
「アリにおける侵略的移入種および融合コ
ロニー性(unicoloniality)の研究に足りな
い視点は何か?」辻和希(琉球大・農)、丸
山泉(富山大・理)、中丸真由子(東工大・院・
、辻宣行(国環研)
社会理)
交配形質の進化と種分化
曽田貞滋(京大・理)
[email protected]
交配に関与する形質、例えば性フェロモン
や交尾器形態などは、さまざまなタイプの
性選択・自然選択によって進化するだろ
う。交配形質の変異性・選択要因を節足動
物を中心に調べ、その進化と種分化の関係
を考察する。
「オオオサムシ亜属の配偶者認知と強化」
久保田耕平 *(東大・院・農学生命科学)、河田
雅圭(東北大・院・生命科学)
「交尾器多様化による種分化:ミドリババ
ヤスデ種複合体」田辺力 *(徳島県博)、曽
田貞滋(京大・院・理)
「雌雄交尾器の進化による種分化」佐々木
顕(九大・院・理)
「オオオサムシ亜属における交尾行動と交
尾器の進化」高見泰興(京大・理・動物生態)
「オオオサムシ亜属の体表炭化水素の多様
性と種認知における役割」左古寛知 *、曽
田貞滋(京大・院・理)
左右性の分子機構と適応進化
浅見崇比呂 *(信州大)・堀道雄(京大)
[email protected]
動物の内臓は普遍的に左右非対称であり、
その極性は初期発生の左右軸が決めてい
る。対照的に、外形は、基本的に左右対称
に保たれている。ところが、その外形に
も、多様な機能をもつ左右性が進化した。
巻貝の螺旋や鱗食魚の口に著しい左右性は
その例である。左右性は、生物をつくるア
ミノ酸やタンパク質の分子構造はもとよ
り、細菌やらん藻の螺旋体、つる植物や花
の形にも、古くから知られる普遍的な現象
である。このシンポジウムでは、シロイヌ
ナズナ(Alabidopsis)で解明された捩れの
分子機構、初期発生の左右性ゆえに初めて
目視できた発生拘束の存在、機能が明確な
左右性ならではの適応進化、個体群に左右
二型が共存するラセミズム(racemism)の
生態遺伝機構の 4 題にスポットライトをあ
て、分子・個体・集団・群集レベルでの相
互の関係を考える。
「植物左右性の分子機構」橋本隆(奈良先端
大・バイオ)
「巻貝の鏡像進化に対する発生拘束のメカ
ニズム」宇津野宏樹(信州大)
「右巻きのヘビ:カタツムリ専食性ヘビに
よる右巻きカタツムリ捕食への適応」細将
貴(京大・院・生物科学)
「利き手の左右比を決めるメカニズム∼サ
ワガニの場合∼」繁宮悠介(長崎総合科学大)
「 HIV-1 Intersubtype Recombination in
South America」 Martins, Leonardo de
Oliveira( Univ. of Tokyo) , Leal, Elcio de
Souza(Federal University of Sao Paulo), Kishino, Hirohisa(Univ. of Tokyo)
「 Evolutionary analysis of transcription
coactivator MBF1 and TBP」Qing-Xin Liu
( CIB. DDBJ, Nat. Inst. Genet.) , Naomi
Nakashima( Dep. Dev., Nat. Inst. Genet.) ,
Kazuho Ikeo( CIB.DDBJ,Nat. Inst. Genet.) ,
Susumu Hirose(Dep. Dev., Nat. Inst. Genet.),
Takashi Gojobori( CIB. DDBJ, Nat. Inst.
Genet.)
「Estimating absolute rates of synonymous
and nonsynonymous nucleotide substitution in order to characterize natural selection and date species divergences.」 TaeKun Seo(Professional Programme for Agricultural Bioinformatics, Univ. of Tokyo) , Hirohisa
Kishino( Agriculture and Life Sciences, Univ. of
Tokyo) , Jeffrey L. Thorne( Bioinformatics
Research Center, North Carolina State University,
USA)
17
Simulated Song Communication」 Kazu
toshi Sasahara( Lab. for Biolinguistics, BSI,
RIKEN) , Takashi Ikegami( General Systems
Studies, Arts and Sciences,Univ. of Tokyo)
実証進化学としての新今西進化論
水幡正蔵(在野の研究者)
[email protected]
自然選択説は反証可能性がなく科学理論と
して危ういという批判がある。これに答え
て「実証進化学」を構想するには、
「生存競
争」モデルは無性生物に限定し、
「種脳」を
持つ動物には「交配競演」モデルを新たに
設定する必要がある。本企画は、その「交
配競演」モデルによる進化実験を提案し、
「実証進化学としての新今西進化論」を考
える。
「種脳機能モデルと二足跳躍ハツカネズミ
進化実験の可能性」水幡正蔵(在野の研究者)
ヤフー掲示板「新今西」討論
水幡正蔵(在野の研究者)
[email protected]
昨年 10 月末より進化論関連の「ヤフー掲示
板(匿名掲示板)
」で「新今西進化論」をめ
ぐる討論が連日、連夜のように白熱し、今
も続いている。進化学会の会員諸氏の中に
も投稿者や読者が多数いるはずで、この機
会に集会を持ちたい。
「実は私が××(掲
示板ニックネーム)です」という“感動の出
会いの場”づくりをめざします。
「Evolution of Complexity and Diversity in
河田雅圭(東北大・生命科学研究科)
国際シンポジウムは、東北大学生命科学
研究科との共催で、初日の午後に受賞講演
後に開催された。適応放散とは、一つの祖
先集団あるいは種が新しい資源や環境に生
息地を広げることによって、また、新しい
資源や環境を利用するための表現型を進化
させることによって、多くの新しい種ある
いは系統に分化していく進化的プロセスで
ある。適応放散という現象は古くから注目
されてきたが、適応放散のプロセスは複雑
であり、どのような機構が働き、どのよう
な過程で生じるのか、また適応放散のプロ
セスによって観察される一般的現象はなに
か、といった問題は、現在の重要な課題で
ある。本シンポジウムでは、理論、野外、
実験的手法という異なるアプローチをして
いる研究者からの講演を依頼した。Gavrilets
18
博士は、シミュレーションモデルを用いて、
これまで考えられてきた適応放散のシナリ
オをテストし、適応放散の主要なプロセス
が、理論的にも再現できることを示した。
東北大学の千葉聡は小笠原諸島の陸産巻き
貝が異なる生息地に適応放散していること
を明らかにし、過去の異なる系統の雑種形
成が新しい環境への侵入に重要であること
を示した。カリフォルニア大学の Gillespie
博士は、ハワイ諸島のクモの適応放散につ
いて解析し、新たに適応して定着した種の
組み合わせはランダムではなく、異なる島
で同じ生態型が進化し、それは、分散と独
自の進化で生じたことを示した。ヒュース
トン大学のTravisano 博士は、異なる環境で
有利になる異なる表現型をしめす細菌を用
いて、実験的に競争とトレードオフで、同
様の適応放散が繰り返し生じることを示し
た。
今回のシンポで、Travisano 博士の講演に
対して、表現型に関わる遺伝子が細菌など
の生物で特定できていないのは問題である
というような質問で議論が白熱した。実際
には、実験でもちいた表現型の遺伝機構は
複雑で遺伝子の特定までは細菌であっても
困難なようだ。しかし、今回の議論の中で、
表現型を中心に扱う生態学者と遺伝子を扱
う研究者とが相互理解を深めるためには、生
態学者が扱っている表現型遺伝の分子的基
盤を明らかにするのはどの程度困難なのか、
遺伝子を特定したり分子的基盤を明らかに
することで表現型のみを扱うことよりどの
ような重要な理解が得られるのか、分子的
基盤まで解明が可能な生物で研究を行うこ
とのメリット・デメリットはなにか、とい
うことを研究者の中で明らかにしておく必
要があると思われる。
適応放散のメカニズムの解明には、特に
生態学的要因と遺伝学的(分子、集団遺伝
学的)要因との総合的な理解が必要である。
この点で、現在もっとも研究が進んでいる
のがトゲウオとトカゲの研究かもしれない。
今回のシンポでも、関係研究者を招待した
が、ヨーロッパ進化学会などと時期が重な
っており、シンポには参加していただくこ
とができなかったのは残念である。今回の
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
シンポの企画に関して、もう少し各テーマ
間のつながりがあり、全体として適応放散
の問題のおもしろさが見えてくるシンポに
出来なかったことを反省している。そのた
めには、もう少し早い時期からの計画が重
要だったかもしれない。
けるにしても、進化の基礎的知識の習得を
希望する一般の方向けの講義と生物関係の
大学院生を対象として講義とを並列して行
う必要があるのではないかと思う。
津田雅孝(東北大)
河田雅圭(東北大・生命科学研究科)
今回で 3 回目となる進化学夏の学校が 8 月
29 日に共生と共進化というテーマで開催さ
れ、参加者は約 90 名であった。一時限目は
九州大学の矢原徹一氏による進化学入門で、
送粉昆虫に対する花の適応進化の分子機構
を例に、表現型レベルの進化と分子レベル
の進化の関係が解明されつつある研究例の
解説であった。二時限目は、私が共進化の
入門的講義を行った。競争関係、餌−捕食
者関係、寄生者−宿主関係などにおける共
進化の理論と研究例を紹介した。3 時限目
は、産総研の深津武馬氏による内部共生と
生物進化というタイトルで、共生関係の様々
な実例とアブラムシと二次共生細菌の自ら
の研究紹介を行った。
受講者の感想は、概ね好評で、特に深津
氏の講義がおもしろかったとする意見が多
かった。しかし、
「進化学の普及啓蒙を目的
として、一般の方々の参加を募集していた
のに、大学に所属したり、研究をしていな
いものには内容が難しかったです」という感
想とか、
「勉強になったが、研究テーマの話
が中心でシンポジウムのようで夏の学校と
して期待していたものと違った」という感想
もあった。私自身、今回、夏の学校で話を
するのは初めてであるが、受講者の対象を
どのレベルに設定すればよいかが、はっき
りしなかったので、大学 1 年生レベルと考
え、講義をした。一方、矢原さんは 3 回目
で、過去に修士課程の学生の参加者が多か
ったことから、話の内容をそこに合わせた
といわれていた。
夏の学校として、一般の人の参加を募集
している状況、また、夏の学校を毎回受講
する人もいれば、初めて受講する人もいる
ことを考えると、今後、テーマを変えて続
この1 ∼ 2 年の間に、環境常在性の様々な
細菌株がゲノム解析の対象として取り上げ
られるようになってきた。本シンポジウム
では、このような細菌のゲノム研究を中心
にした 4 つの講演があった。
高見(海洋研究開発機構)による「極限環
境適応能を有するBacillus 関連細菌のゲノム
から見える多様性」では、広範な自然環境か
ら分離された好アルカリ性 Bacillus 属細菌、
高度耐塩・好アルカリ性の Oceanobacillus 属
細菌、好熱性の Geobacillus 属細菌の比較ゲ
ノム解析により、それぞれの環境適応に関
わると思われる遺伝子候補がクローズアッ
プされた。また、好熱性 Geobacillus 属細菌
と常温性 Bacillus 属関連種間で共有されるオ
ーソログの解析で、常温菌にも一定の割合
で耐熱性蛋白質が存在することが示され、バ
イオインフォマティクスと実験系の連携に
よる新たな知見が提示された。
石川(感染研)による「放線菌ゲノム解析
から見える環境適応」では、環境細菌であ
る放線菌のゲノム比較についての講演があ
った。Streptomyces は環境変化に適応するた
めの遺伝子群を、Mycobacterium は動物細胞
内で生育するための遺伝子群を多く持って
いるが、Nocardia は環境適応と動物細胞内
で生育するための遺伝子群を併せ持ち、環
境細菌でありながら稀にヒトや動物に感染
するという性質をよく示していた。また、
ゲノム比較による放線菌の類縁関係の推定
では、16S rRNA に基づく分類と必ずしも一
致しないことから、新たな類縁関係が提案
された。
黒川(奈良先端大)による「比較ゲノム解
析から見えてきたバクテリアの適応戦略」で
は 、「 ヒ ト 喰 い バ ク テ リ ア 」で あ る
Aeromonas 属細菌のゲノム解析の報告があっ
た。本菌はかつて Vibrio 属に分類されてい
19
たが、16S rRNA を用いた系統解析の結果、
新たな属となった。一方、近縁種とのオー
ソログ遺伝子を用いたゲノム系統解析では、
系統樹トポロジーが単一ではなく多様であ
ったことから、本菌の遺伝子が進化の過程
で極めて頻繁に水平伝播を行っていたこと
が示唆された。さらに、呼吸に関わる重要
な遺伝子群ですら、近縁種間で比較的最近
になって水平伝播してきたことも明らかに
された。
津田(東北大)による「多重染色体をもつ
環境細菌のゲノム」では、細菌ゲノムが 1 本
の環状染色体から構成されるという従来の
定説に対して、進化系統的にかけ離れた多
くの細菌株は 2 ∼ 4 本の環状染色体を持つこ
とが希でないことが紹介された。3 本の染色
体をもつBurkholderia 属細菌では、他の多重
染色体性細菌とは異なり、基本的生命活動
に必須な遺伝子や多様な有機物分解・資化
遺 伝 子 群 は、 遺 伝 子 重 複 することなく、
dnaA をもつ第 1 染色体とプラスミド型の複
製・分配装置を備える第 2 染色体に散在す
ることが報告された。この知見から、レプ
リコン間での各種遺伝子の転座を経て現在
のゲノム構造が成立した可能性が提唱され
た。
種々の元素の地球化学レベルでの循環に
環境細菌は深く関与していることが判明し
てきた。このような視点を念頭においた環
境細菌のポストシーケンス研究や難培養性
細菌も視野に入れたメタゲノム研究の国内
での活発化に、本シンポジウムが貢献でき
ればと期待している。
佐竹正延(東北大・加齢医学研究所)
医学生にとっては当たり前の話であるが
彼等の履修する講義目録には、進化を扱う
科目やトピックは全く含まれていない。医
学の対象はヒトであることから、ヒトにつ
いてその生理と病理を習えば宜しいのであ
る。医学生の誰も数奇好んで、カンブリア
紀やジュラ紀に思いを馳せたりはしない。臨
床の現場であればなおさらである。緊急を
要する患者さんに接すれば、何万年前か何
20
億年前だかに絶滅したマンモスや三葉虫の
話など、何ほどのイムパクトもない。医師
国家試験の科目一覧に進化学が含まれない
のも勿論である。
また必ずしも医学研究者には限らないの
であるが進化に対しては、実験科学者も大
きな疑念を抱いている。謂はく、進化を実
験にて再現せよと。一世代が 20 分と短い大
腸菌ならいざ知らず、何年間と生きる種で
あれば進化を実証できるケースは極めて限
られてくる。自然史の呈する様相が即ち、
自然の為している大いなる実験の結果なの
だよ、と反駁しても無駄。ベンチに向かっ
てエッペン・チューブで反応している実験
者にとっては、エッペン・チューブ以外の
実験は考えられないのである。
そんなこんなの理由からであろう、医学
部や医学研究所を見回しても進化に興味を
抱く研究者にはめったにお目にかかれない。
医学研究者が進化を敵視しているのでも、無
視している訳でもない。医学のカテゴリー
に進化は存在しないのであって、医学研究
者は単に進化を関知していないだけである。
このたび仙台市にて東北大学を会場とし
た進化学会が開催されたのに触発され、2 冊
ほど関連の書籍を読む機会をもった。1 冊は
人類進化学者クリス・ストリンガー著「出ア
フリカ記」であり、もう 1 冊は神経内科医ラ
マチャンドラン著「見えてきた心の仕組み」
である。何れも現代の最高の知性と言われ
る科学者の筆になるものであり、説かれて
いる科学そのものの面白さは言うまでもな
かった。しかしながらより感銘を受けたの
は、書物が暗示している一種の倫理観であ
る。自然科学と倫理学とは、論理的には必
ずしも直結する性質の学問であるとは言え
ない。自然科学的方法論に従って積み重ね
られた客観的事実を出発点として、価値判
断を柱とする倫理観を導くことには、特に
慎重さが必要であると思われる。しかしな
がらホモ・サピエンスがどの様な由来を経
て成立したのか、なかんずくその脳、もし
くは心にはどの様な特性が賦与されるに至
ったのか? こうした疑問はティラノサウ
ルスに関することではなく、私達自身に関
わることであり、私達の在り様の探求はす
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
べからく、在るべき姿の思惟に影響を与え
ずにはおかないであろう。
してみると医学生や医学研究者たる者、初
めに紹介した如く進化には我関せずであっ
ても、日常の教育・研究・診療活動に差し
当たっての支障はないかもしれないが、進
化への洞察をもってヒトを視ることなしに、
どうして医学の本質であるヒトを診ること
ができよう。疑問が湧くのはあながち見当
違いとは言えないのではないか。進化学の
興味や必要性は進化学者の為ではなく、医
学生や医学研究者にこそ説かれて然るべき
であると感じている。
小林一三(東大・新領域・メディカルゲノム
及び医科研)
ゲノム解読の進展によって膨大な量の遺
伝子配列データが現れてきた。これらは、
従来の個別遺伝子の系統樹作成から生物の
系統を考えるという枠組みを越えて、ゲノ
ムと生命の進化の全貌へ迫る手がかりを提
供している。本シンポジウムでは、複数の
ゲノムの多数の遺伝子の比較解析に基づく、
様々なアプローチによる、ゲノム進化過程
の解析の最先端を紹介して頂いた。
まず内山博士(基礎生物学研究所)は、多
数の解読された細菌ゲノムにある遺伝子の
オーソログ分類を網羅的に行っている。そ
の成果は MBGD として公開されている。こ
の膨大なリストからは、遺伝子が水平伝達
によってグループを越えて遠縁の細菌まで
ひろがっている様子が見て取れる。さらに、
類縁ゲノム間での遺伝子の並び順の保存性
を手がかりに、ゲノムのコアとなる構造を
明らかにした。こちらは垂直伝達を担って
いると考えられる。
つぎに五條堀博士(遺伝研)は、遠縁の細
菌から水平伝達したらしい遺伝子をゲノム
中に発見する方法を開発し、全解読細菌ゲ
ノムに適用し、ゲノムあたり 12 %もの遺伝
子が遠縁の細菌からの水平伝達に由来する
物であることをあきらかにした。方法は、
ヌクレオチドの並び方を調べてゲノム配列
から遺伝子を発見する細菌ゲノム解析に使
われるアルゴリズムを応用したものである。
ある細菌ゲノムをつかってコンピューター
に遺伝子発見を学習させた場合と、別の細
菌で遺伝子発見を学習させた場合では、発
見される遺伝子が異なっている。それを遠
縁から水平伝達した遺伝子の指標にする。遺
伝子がどこから来たかも推測する事ができ
る。
上の方法で発見されるのは、遠縁の細菌
からの水平伝達であり、近縁の細菌からの
水平遺伝子伝達の検出にはそれらの配列の
並びを比較するアプローチがある。小林は、
ごく近縁のゲノムを比較する事によってゲ
ノム再編の機構を推定し、動く遺伝子を発
見した。ゲノムの可塑性と進化においては、
点突然変異だけでなく、より大きな規模の
ゲノム再編(例えば、挿入、欠失、逆位、重
複)が重要である。これらの機構は、局所的
なゲノム配列の比較と分子生物学的実験と
いう二つの方向の研究によって解明されて
きた。細菌全ゲノム解読が進んで、種内属
内というごく近縁の複数の全ゲノム配列が
入手できるようになり、それらの詳細な比
較によって、実験室外でゲノム再編がどの
ように起きているかが推定できるようにな
った。今回は、Neisseria meningitidis の 3
つ の 血 清 型 の 全 ゲ ノ ム 配 列 、 Neisseria
gonorhoeae の全ゲノム配列を比較し、逆位
の起こった部分に動く遺伝子を発見した。配
列の解析から、これが繊維状プロファージ
であり、詳細な配列の解析から、それ自身
の持つトランスポゼースによって染色体に
挿入されている事が強く示唆された。
チンパンジーのゲノム配列は、それをご
く近縁であるヒトゲノム配列と比較する事
によってヒト進化理解への手がかりを与え
る事と期待されている。斎藤博士(遺伝研)
は、ヒトとチンパンジーの血液型遺伝子の
進化にあたって、重複遺伝子間の遺伝子変
換のような配列の交流が起きている事をし
めし、このような進化の様相を系統樹では
なく網目状の図式によって表した。
現在我が国ではメダカゲノムの解読プロ
ジェクトが進行している。脊椎動物の進化
の初期にヒトへの系列から分岐した魚類の
21
ゲノムとヒトゲノムの比較は、染色体レベ
ルの進化という点でも興味が持たれる。清
水博士(慶應義塾)は、メダカゲノムプロジ
ェクトであきらかになった脳神経系の細胞
間接着分子遺伝子クラスターについて、哺
乳類とは異なる進化を経てきた事を紹介し
た。さらに、完全解読したメダカ染色体の
遺伝子について、ヒトのホモログを同定し、
並びが保存されているブロックを発見した。
これらシンテニーブロックがなぜ長期間保
存されてきたのか、進化研究の新しい興味
ある問題である。
「比較ゲノム」という言葉は、人によって
様々な意味に用いられる。例えば、
「マウス
ゲノムとヒトゲノムの比較によって、進化
の過程で保存されてきた遺伝子を発見しよ
う」と言うのが、今までの多くの場合の興味
の対象であった。しかし、このシンポジウ
ムで明らかになったように、ゲノムの配列
レベルでの詳細な比較によって、ゲノムが
ダイナミックに進化していく様相をとらえ
る事ができる。このようなゲノムレベルで
の進化が、表現型の進化の基礎に有ること
は言うまでもない。例えば、細菌の病原性
であり、ヒトの脳神経の発生、ひいては行
動である。
非常に多数の熱心な参加者があり、活発
な議論が行われた。参加者の専門としては、
分子進化、分子生物、ゲノム科学、進化生
態、微生物など広い分野にわたっていたよ
うに見受けられた。この方向の研究への深
く広い関心がうかがえた。
中林 潤(九州大・理)
細胞内では外界からのシグナルはリン酸
化や限定分解などのタンパク修飾反応の連
鎖によって伝達されています。近年、分子
生物学の発展に伴い、様々な動物種におい
て細胞内シグナル伝達系に関わる遺伝子が
同定されています。その結果シグナル伝達
の基本的なメカニズムは酵母からヒトまで
よく保存されていることが明らかとなって
きました。本シンポジウムはシグナル伝達
22
機構の進化的な変化について考察すること
を目的に開催し、理論から 2 題、実験から 1
題の演題を発表していただきました。
「細胞内シグナル伝達系における最適な反応
階層数」中林 潤(九州大・院・理・数理生物)
「シグナルカスケードにおけるシグナル増幅
のための最適な分子集団サイズ」森下喜弘
(九州大・院・理・数理生物)
「進化に伴ったアポトーシス実行因子の多様
化と細胞死の普遍性の意義」酒巻和弘(京
大・院・生命科学)
まずは理論的研究 2 題の発表では、シグナ
ルの伝達速度や効率など、特定の指標を最
適にするシグナル伝達機構が存在すること
が示されました。最適化という観点から現
存する生物種の持つシグナル伝達機構を理
解しようとする試みでした。
京都大学の酒巻さんの発表では、現在同
定されている様々な生物種のアポトーシス
実行因子について報告された。現在ゲノム
データベースなどのインフラが整備されつ
つあり、生物種間での遺伝子の比較が詳細
に行えるようになってきています。個々の
遺伝子の比較だけでなく、経路全体の比較
をすることで進化的変化の全容がよりはっ
きりと理解できることがこの発表では示さ
れていました。
シグナル伝達系は様々な蛋白質が複雑に
相互作用することにより制御されています。
個々の遺伝子の同定ももちろん重要ですが、
その相互作用の理解なしにシグナル伝達系
の全容をとらえることはできません。シグ
ナル伝達系の進化的な変化を理解するため
には、様々な視点から多面的な研究が必要
であると考えられます。
理論と実験双方の意見の交換の場となる
ことを目的に今回のシンポジウムを企図し
ましたので、全く専門の異なる演題をシグ
ナル伝達系と言うくくりで集めてみました。
専門の異なる研究者による横断的な研究が
今後盛んになると期待されますが、お互い
の知識や着目点の違いなど、まだまだギャ
ップも多いことが実感できたと思います。演
題間のつながりが見えにくくなってしまっ
たことは反省すべき点だったと思います。今
後もこのような違う分野間での交流が盛ん
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
になっていくことを期待しています。
近江谷克裕(産総研)
ホタルの発光に代表される「生物発光」は、
生物が持つ最もユニークな機能の一つであ
る。生物は獲得した「発光」を求愛、忌避、
活性酸素の除去など様々な用途に用いてい
る。この生物発光のシステムに着目すると、
生物種自らが発光する一次発光と、寄生も
しくは共生生物が発光する二次発光に分け
ることができる。例えばホタル、オワンク
ラゲ、ウミホタル、渦鞭毛藻は一次発光で
あり、それぞれ異なる発光様式を持ってい
ることが知られている。一方、二次発光生
物は共生種である発光バクテリアの発光を
利用している事が知られている。この様に、
生物は多様な発光システムを獲得してきた。
さらに、発光を効果的に利用するために生
物は多彩な工夫を加えてきた。例えば、発
光バクテリアが共生するための発光器は、消
化管の一部である簡単な構造から、発光強
度を増すための反射器、レンズ構造さらに
は発光を制御するための明滅器まで多様化
している。加えて、このような宿主と発光
バクテリアの共生関係は共進化であること
が報告されるなど、様々な生物が「生物発
光」を利用し、進化している事がうかがえ
る。
「生物発光」は生物が持つ多様性をよく
表現する生命現象の一つとして捉える事が
できる。
本ワークショップでは「生物発光」と「生
物多様性と進化」をキーワードに分類学的、
生態学的さらには生化学的手法を用いて研
究に取り組まれている以下の方々を演者と
してお招きし、各分野における最新の研究
成果を発表していただいた。
① 和田実(東大海洋・微生物)「共生発光細菌の
生態と進化」
海洋性発光細菌が海洋環境から次世代の
宿主の発光器官に水平感染して定着すると
ともに、宿主発光器官から周囲の海水へ定
期的に排出、供給されているという特異的
なライフサイクル(感染環)を示した。さら
23
にこれら共生発光細菌の種分化や遺伝子進
これまで紹介される機会が少なかった中
化は宿主の影響を強く受け、発光細菌の遺
国に生息するホタルについて標本写真を交
伝子進化が宿主の系統に依存した選択圧を
えながら紹介した。形態分類に基づくと中
受けていることを示唆した。
国に生息するホタルは5 亜科13 属106 種記載
② 小江克典、近江谷克裕(産総研・セルエンジ
されている。さらに、シーサーパンナに生
「日本沿岸に生息するウミホタルの集
ニア)
息する Luciola spp.の生態、ライフサイクル
団構造」
について解説した。
ウミホタルの個体群動態、繁殖周期や殻
本ワークショップは多くの聴衆を得て活
長は、採集地によって変異を示す事が知ら
発な質疑が行われた。一般的に、分野が異
れており、地域特異的な集団を形成してい
なる研究者が同じワークショップで議論を
ると予想されていた。ミトコンドリア DNA
交わす機会は少ないが、
「発光生物」という
を調査する事によって日本沿岸に生息する
キーワードを共有する事によってこれまで
ウミホタルは、i)竹富島・西表島と波照間
にない新鮮な討論を行う事ができた。
島の集団(石西礁湖)
、ii)宮古島の集団、iii)
沖縄本島の集団、iv)奄美大島の集団、v)本
州・四国・九州の集団からなる、5 つの大きな
遺伝子集団を形成することを明らかにした。
海保邦夫(東北大・理)、
③ 大場裕一(名大・生命農)、井上敏(チッソ・
鈴木紀毅(東北大・理)
「発光性甲虫の進化」
横浜研)
生物の絶滅は人類にとっては脅威のひと
ホタルルシフェラーゼが発光活性以外の
つである。現在も刻一刻と種の消滅が起き
酵素活性(脂肪酸 CoA 合成酵素活性)を有す
ているとされ、地質年代には大量絶滅も知
ることや、ショウジョウバエにおけるルシフ
られ、生物学・古生物学分野が独自にその
ェラーゼホモログ遺伝子(CG6178)が脂肪
原因や現象の実体解明を進めている。過去
酸 CoA 合成酵素であることを明らかにした。
か現在かの違いはあるものの、同じ生物を
この結果からホタルルシフェラーゼの起源
扱っている両分野が交流し、絶滅事変の実
は発光能を持たない脂肪酸 CoA 合成酵素で
体を深く理解することがこのシンポジウム
あり、進化の過程で発光活性が付加された
の目的であった。真っ先に問題なるのは、
可能性を示唆した。本発表では、ホタル上
「絶滅」という概念の共通理解である。そこ
科やコメツキムシ上科の系統がどのように
で、どのような現象が「絶滅」と呼ばれてい
発光能を進化させたのかについて解説した。
るのか実体について、現代の“絶滅”につい
④ 鈴木浩文 (オリンパス株式会社・基礎技術部)
「ホタルの発光行動と系統進化」
て松田裕之先生(横浜国大・環情)に、地球
光を用いたホタルの配偶様式がどのよう
史最大の大量絶滅について海保邦夫(東北大
に派生してきたのかという視点から、ミト
院・理)が、地質学スケールでみえる生物相
コンドリア DNA の塩基配列を基に日本産ホ
の変革について武田浩太郎博士(東北大・
タル類の系統樹を示した。その結果、ホタ
院・理)から概略が紹介された。
ルの配偶様式はフェロモンによるものが最
松田先生は現代が「第6 の大量絶滅の時代」
も原始的と推定され、次いでフェロモンを
ということを出発点として論を進め、種の
保持したまま連続光を取り入れた系統と、フ
消滅現象の根拠の実体を披露し、地質時代
ェロモンによる認識機構を失い光の応答で
の大量絶滅とは意味合いからして異なるこ
雌雄を認識する系統に分かれ,更にそこか
とを示した。海保は、地質学で言う「大量絶
ら雌雄特有の発光信号や同時明滅による配
滅」とは、科レベルで約 20 %、属のレベル
偶システムが派生してきたと推定した。
で約 50 %以上が同時に絶滅した現象と定義
⑤ Liang Xingcai( Chinese Academy of Sciences,
することを示し、9 割の種が絶滅したペルム
「Luminescent BeeKunming Institute of Zoology)
紀末の大量絶滅に焦点を絞って実体を披露
tle(LB)in China」
した。大量絶滅は負のイメージがつきまと
24
うが、実は生物進化を促進する重要な役割
を果たしたことを明らかにした。武田博士
は、地質学でいう「絶滅」現象のうち、大量
絶滅ではないが重要な事例として、5500 万
年前の底生有孔虫のフォーナ入れ替わりを
環境変動と絡めて紹介した。
このシンポジウムを通して、
「絶滅」には、
現代の種多様性の減少、大量絶滅、生物相
急変などがあることがはっきりするととも
に、その具体的な事実が浮かび上がるに至
った。また、地質学ではニッチェの空白が
数万ー数十万年間続くのは抵抗無く受け入
れられているが、生物学分野では考えがた
い現象であることもはっきりした。地質学
的絶滅の醍醐味は、生物学の常識を越えた
ニッチェの空白期間の長さにあるのかも知
れないとの印象を受けたシンポジウムであ
った。今後も古生物学・生物学が交流を進め
ていきたい。
「現代は大量絶滅の時代か?」松田裕之(横
浜国大・環情)
「大量絶滅の全容と原因」海保邦夫(東北
大・院・理)
「地質学スケールで見える生物相の大変革−
5580 万年前の原生動物の絶滅事変の原因」
武田浩太郎(東北大・院・理)
前川督雄(四日市大)
システムの進化を、要素間の相互作用や
情報の流れ、それらのネットワークが発生・
成長・発達・崩壊する動的かつ自己組織的
なプロセスとして捉える情報学的なアプロ
ーチから、システムとしての生命やその進
化を理解し、工学的な応用につなげていく
試みについて紹介する 10 件の講演を行いま
した。
企画者を中心に十数年間にわたって進め
てきた進化システム研究の歴史と実績とを
ふまえて、人工化学系の構築や細胞間コミ
ュニケーションの理解、進化ハードウェア、
プログラムされた自己解体、人工脳、知識
構造の進化、ジェネティックプログラミン
グ、社会進化など幅広い分野にわたって進
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
化を論じ、参加者間で活発な議論を行うこ
とができました。
辻 和希(琉球大・農)
本企画ではハチ目昆虫社会におけるコン
フリクトに関する研究の意義とこれまでの
成果を概観し、新たな問題を提示するとと
もに、比較を通しヒトも含めた生物の「社
会」一般の理解のための視点の提供も試み
た。
まず、冒頭で辻がこの分野の概論(
「膜翅
目昆虫社会における3 つのコンフリクト:オ
ーバービュー」
)を行った。膜翅目社会にお
けるコンフリクトが進化生物学で注目され
るのは、あえて単純化していえば血縁淘汰
説をテストするためである。血縁淘汰理論
は、ハチ目(膜翅目)の社会内には大別する
と以下の意思決定をめぐる利害対立が生じ
ると予測している。すなわち(1)性比、
(2)
雄卵生産権、
(3)コロニーの成長と繁殖の切
り換え。この3 つはこれまで独立に扱われて
きたが、現在ではこれらの相互作用に焦点
が移りつつあること、とくに最も理論的解
析が難しい(3)と他 2 つとの相互作用が今後
の課題であることを議論した。
次に、大槻久氏が(九大・理)
「繁殖配分
コンフリクトとポリシングの理論」と題した
講演を行った。膜翅目昆虫の一部ではワー
カーは雄産卵が可能である。特に女王が一
回交尾の場合、ワーカーにとってワーカー
由来の雄卵は女王由来の雄卵より血縁度が
高いため、ワーカーの自己産卵が生じると
予測できる。しかしながらこの予測に反し、
ワーカー産卵の相互ポリシング行動(他ワー
カーによるワーカー産卵の妨害)の存在が近
年多く報告されている。大槻氏は、この一
見矛盾したポリシング行動の適応的・進化
的意義は、コロニーが成長ステージにある
場合はワーカー生産に徹し、コロニー成熟
後に初めて雄も含めた繁殖虫を作るのがメ
ンバー全員にとって最適であるという、最
適繁殖スケジューリング戦略という観点か
ら数理モデルを立てて説明した。これは上
25
記の3 つの対立のうち(3)と(2)との相互作
ンフリクトの研究から」というタイトルのコ
用を理論的に初めてに扱った研究で、予測
メントを行い、昆虫社会との共通点や相違
も明解である。コロニーの成長段階(コロニ
点を浮き彫りにした。利己的な理由から社
ーサイズ)が社会内の利害対立に与える影響
会(群れ)を離れた個体が、他の社会に参入
は次の 2 つの講演でも明らかにされており、
できることを仮定した、霊長類版の繁殖の
今後しばらくこの仮説がトレンドを作るの
偏りのモデルは興味深かった。これは、岡
ではないか。
本氏のコメントを聞いた上での企画者の意
次に、土田浩治氏(岐阜大・応用生物科
見だが、昆虫研究者も脊椎動物研究者も、
学部・昆虫学)が、
「一年性社会性昆虫にお
社会内のコンフリクトという現象が、適応
けるポリシングと性比」と題した講演を行っ
進化的な観点で説明可能との認識に達して
た。一年性の真社会性昆虫であるフタモン
いる事が重要な共通点であると考えた。相
アシナガバチでは、ワーカーは交尾しない
違点は、対象生物間の個体の万能性(アリや
がオス卵を自身で生産し、1)ワーカー産卵
多くのハチのワーカーは独立して繁殖でき
の頻度はコロニーが大きくなるにつれて増
ないが脊椎動物のヘルパーは可能)の差にあ
加すること。2)個体群全体の繁殖虫性は
るのではないかとの意見が会場からも出さ
1 : 1 だが、コロニーの繁殖虫性比は、ワー
れたが、さらに私はこのことに対応した血
カー数が多くなるにつれオスに偏ること。3)
縁度の重要性の分類群間での違いが大きい
ワーカーの卵はその多くが女王とワーカー
と感じた。対象分類群間での用語法の違い
によって食卵(ポリシング)されること。4)
の存在や、90 年代以降国外では 1 大トレン
ワーカーの卵と女王の卵は何らかの化学的
ドになった「繁殖の偏りの理論」が日本では
シグナルで識別されている可能性が高いこ
未だほとんど注目されていないことなどの
と、を報告した。また、他の 1 年性社会性
現実に照らし、今後も進化学会でこのよう
膜翅目の研究成果もレビューし、コロニー
な企画を通じ、ヒトを含めた生物の「社会」
サイズによりコンフリクトの様相が異なる
を考える場を提供し続ける必要を企画者は
可能性を種間比較データからも提示した。
感じた。
続いて、琉球大学の菊地友則氏(菊田典
嗣氏、辻和希との共著)が「多年性昆虫社会
におけるポリシングとコロニーサイズ」とい
うタイトルで発表した。多年性の社会性昆
田村宏治(東北大・生命科学)
虫であるアリにおいても、ワーカーポリシ
Evo Devo という言葉で浸透してきた発生
ング理論に反し単女王制で女王 1 回交尾の高
進化学、すなわち発生メカニズムから進化
い血縁度で結ばれた社会においてもワーカ
と多様性を考察しようとする試みがいま何
ーによる相互産卵妨害(ワーカーポリシン
をめざしているか、
“まずはこの人たちの話
グ)が起きることが近年複数報告されている
を聴け”という 4 人の演者を一堂に集め、広
とした上で、やはり単女王制女王 1 回交尾だ
く植物界における形態進化(長谷部氏)
、昆
がワーカーポリシングのあるトゲオオハリア
虫の形態形成の多様性(野地氏)
、無脊椎動
リでは、ポリシングの頻度はコロニーサイ
物から脊椎動物への進化(佐藤氏)
、脊椎動
ズに依存し、コロニーサイズが大きくなる
物内の多様な形態進化(倉谷氏)
、について
とポリシングがあまり行らなくなることを報
おおいに語ってもらい、Evo Devo の潮流を
告した、これは大槻氏の理論モデルの予測
とらえようと本シンポジウムを企画した。進
を支持する結果である。また、室内で小さ
化学会の創設以来、倉谷氏らを中心に Evo
なコロニーを用い実験される事の多いアリ
Devo 関連の集会がほぼ毎年おこなわれてき
類でのワーカーポリシングの研究にも上記
ており、第 1 回設立大会最初のプログラム
の観点が適用可能である可能性を議論した。
最後に、岡本暁子氏が(東海学園大・人文) “発生と進化”に始まり、岡田節人氏による
発生学と進化学の接点と決別の歴史あり、講
「霊長類をはじめとする脊椎動物におけるコ
26
演無しの討論会あり、さまざまな企画が催
されてきたが、今回はひとつの区切りとし
て、現時点での最先端の話題を目の当たり
にすることから今後への展望と問題点を認
識する場となることが、企画の意図でもあ
った。
ながらく発生進化学は、
“多様な進化を遂
げた動物間における共通性・保存性”を主に
議論してきた。これはおそらく、節足動物
と脊椎動物における Hox 遺伝子群の機能相
同性に端を発する“広く保存された発生メカ
ニズムの理解”が Evo Devo の潮流となって
きたことと、共通性は調べやすいが多様性
は解析しづらい、という研究上の問題に理
由があると思われる。多様性の解析といっ
ても、いくつかの動物種における遺伝子発
現の比較から、こことここが違う(だろう)
と記述・記載を重ねるのが精一杯だった。し
かし演者らの話からは、
“共通な保存システ
ムを用いながら、いかにして多様な形態へ
と進化するか”を議論する話題がいくつも提
示されていた。すなわち演者らは、発生シ
ステムも進化する、その具体的な変化をさ
まざまな例において捉えようとしている。こ
のような展開は、もちろん Evo Devo の潮流
のひとつが相同性の理解から多様性形成の
理解へと移行していることによるが、多様
性形成の理解に結びつく解析が可能になっ
てきたこと、すなわち、さまざまな生物種
がモデル生物並みに取り扱えるようになっ
てきた進歩が大きい。植物においても昆虫
でも脊椎動物でも、いくつもの生物種が解
析の対象となっており、長谷部氏のシダ・コ
ケ、野地氏のコオロギ、佐藤氏のホヤやギ
ボシムシ、倉谷氏のヤツメウナギやカメ、
単に遺伝子発現を見て比較するのではなく
それぞれの特徴を産み出す発生メカニズム
の解析を個々の生物種において行うシステ
ムの開発が、このような“変化させる発生メ
カニズムの実態”に迫れる研究を可能にして
きたのだ。
本シンポジウム全体を通して4 人のそれぞ
れの言葉の奥に連綿と流れていたように、こ
れからの Evo Devo の潮流は“多様性を生み
出すための発生システム自体の変化への理
解”にあるだろう。朝早くから座りきれない
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
ほどの聴衆のみなさんにお集まりいただき
とくに若い人たちの姿を多く会場に見るこ
とができたことに感謝するとともに、本シ
ンポジウムが“これが Evo Devo の潮流だ、
さあ、あなたならどう考える”会として少し
でも聴衆の心に留まったことを願っている。
た。個別の講演について質問以外に、参加
者および企画者の感想として、分子レベル
から群集レベルにシンポが組まれており、ま
た、今まであまり注目されてこなかった相
互作用の場、共生戦略の便宜性などについ
ても触れられており、微生物共生の相互作
用と進化についての大変面白いシンポとな
った。
南澤 究(東北大・院・生命)
生物共生は生態系・個体群・個体・細胞
などの様々なレベルで生物進化の原動力と
され、緊密な細胞内共生からルーズな様々
な共生系がある。地球史な視点からは主に
微生物が共生者として振まってきたと言え
る。本シンポジウムでは、微生物が関与す
る共生系のうち、相利共生の典型とされて
きた根粒菌とマメ科植物の窒素固定共生系
と最近着目されている微生物バイオフィル
ム系をとりあげ、微生物−植物間、微生
物−微生物間におけるシグナル物質を介し
たコミュニケーション・相互作用とそれら
の進化について以下の 4 つの講演を企画し
た。
「植物共生遺伝子から見た細胞内共生の
多様性と進化」林 誠(大阪大・院・工)で
は、マメ科植物の分子遺伝学研究から、根
粒共生系の遺伝子システムが、菌根菌、線
虫、フランキアに元来存在したシステムを
借用して成立してした可能性があるという
興味深い仮説が紹介された。
「マメ科植物−
根粒菌における宿主特異的共生の分子進化
的解析」青木誠志朗(東京大・院・総合文
化)では、根粒形成遺伝子を詳細に調べ、根
粒菌の宿主特異性を生む進化的な力として、
マメ科植物 ― 根粒菌共生の適応性、特異的
関係性を強める方向への自然選択について
議論された。
「ゲノムから見た根粒菌像と相
互作用因子の進化」南澤 究(東北大・
院・生命)では、根粒菌ゲノム上の共生ア
イランドの変化をゲノム全体と比較し、根
粒共生系が根粒菌進化の場である可能性が
指摘された。
「単細胞も群れたがる?― 細胞
集団の三次元時空間解析から見えてくるも
の ―」野村暢彦(筑波大・院・生命環境)
では、微生物のバイオフィルムで起こる多
細胞生物のような分化類似現象が紹介され
岩永亜紀子、鈴木清樹(九大・理)
病原体とそのホストとの間で起こる軍拡
競争は絶えず共進化の過程で見られるが、そ
の際に病原体が新たなホストを獲得し、増
殖・拡散して集団中に広がるには空間の効
果が無視できない。そこで本シンポジウム
では空間構造を伴った感染動態や病気の流
行について 5 つの話題を紹介した。
一口に空間構造と疫学と言ってもその背
景となる研究分野や研究対象によって問題
点やその解釈が異なってくる。そこで本シ
ンポジウムでは次に挙げる3 つのキーワード
に焦点を当てた。
「2 つの空間構造モデル:格子モデルと複雑
ネットワークモデル」
格子モデルについては鈴木が、複雑ネッ
トワークモデルについては増田氏に講演頂
いた。疫学でよく使用される病原体の流行
指数 R0(病原体の基本増殖率)は格子モデル
ではその導出が難しい。一方、複雑ネット
ワークモデルでは、ひとたび病気が発生す
ると必ずその病気は集団全体に蔓延してし
まう(R0 が無限大に発散する)という結果が
得られている。実際の現象をモデル化する
際には、その対象となっている集団をどう
いったモデルで扱うべきかを検討すること
が重要である。
「理論分野における疫学モデルとfield 上での
実験・観察またはそれへの応用の可能性」
農業分野では現在イネいもち病抵抗性品
種に対する病原性病原体の出現が問題視さ
れており、対策として複数の抵抗性品種を
混植して病原体の進化を抑制するという方
法(マルチライン)が考えられている。この
件について石黒氏に講演頂いた。現在 field
27
での研究がなされているが、格子モデルを
使うことで有効な抵抗性品種の導入割合、病
原性病原体の発生確率、被害状況等を予測
できるのではないかと考えられる。
「個体間相互作用と個体内での疫学研究」
宿主体内で起こる病原体の増殖・拡散メ
カニズムと宿主の防御機構について、植物
のウイルス感染を例として取り上げた。病
原体の感染を受けた植物組織が急速に壊死
することによって病原体の植物体全身への
広がりを防ぐという抵抗性反応(過敏感反応)
はよく知られた植物の防御応答である。拡
散方程式を使ったウイルス拡散と植物の防
御応答という宿主体内で起こる現象の理論
的研究について岩永が講演した。また、こ
れは病原体の病原性遺伝子と宿主植物の抵
抗性遺伝子との親和性に依存した反応であ
り、抵抗性遺伝子の多様化は、病原体と宿
主との共進化について考える上で大変興味
深い。実験的研究については高橋氏に講演
頂いた。
このように、空間構造といっても、生態
学、農学、個体間での相互作用、個体内で
の現象など切り口が多い。また、実験・観
察分野と理論との相互的な研究がまだ不十
分である部分も多く存在する。本シンポジ
ウムでは演題が5 つあり、話題の提供のみで
上記のような議論を充分にできなかったこ
とが残念であるが、空間構造を考慮した研
究の重要性と有効性や分野を超えた応用に
ついて考えるきっかけとなれば幸いである。
武田裕彦(九大理)
夏の進化学会第 7 回仙台年会に向けて私
が成果としてお話したく思っているのは「鉛
直方向の空間構造とこれを実現する遺伝子
回路網の性質について」という演題に集約さ
れます。これは申請課題微小重力環境から
の引き戻しに基づいて造りこむマウスの『デ
ータ構造』:脊椎動物−無脊椎動物の差分
から再構築する獲得免疫系のもとに進めた
28
最初の成果で生命を閉鎖環境に維持した上
で特定の環境パラメータを変化させた時に
出来しうる困難あるいは難渋を HACCP(危
害分析重要管理点法)で調べる。
この場合の環境パラメータとして
1. 重力加速度
2. 酸素供給
3. 病原体感染
の3 つについて、特にこれをゼロ近くまで変
化させた状態を
1. 微小重力環境
2. 低酸素状態
3. 清浄閉鎖空間
として仮定し、これを分析の対象としまし
た。この時、引き戻しという操作が特に大
切で通常環境に置かれているマウス・ヒト
等の体制構築に環境パラメータ変化の差分
がどのように実装されているかを明確に示
すことが上掲の演題「鉛直方向の空間構造と
これを実現する遺伝子回路網の性質につい
て」の内容にあたります。遺伝子回路網研究
においては哺乳類体制構築の両端“初期発
生”
、
“抗原処理”などの詳細な記載が進め
られていますが、そこでは上の環境パラメ
ータの効果は陽には取り扱われない、無視
しても機能する遺伝子回路網のパートが研
究対象になっています。ここで上の環境パ
ラメータの差分をとる効果を順番に取りこ
んで系を記載し直すと哺乳類の体制構築に
おいて遺伝子が持つ多面発現という重要な
性質から「常に同じ所に停まっている」遺伝
子回路網のパートのつながりとして哺乳類
体制構築の内部が再構成されます。
―― 以下再構成手順 ――
初期条件(環境パラメータ独立)
“初期発
生”><抗原処理”
1. 重力加速度(パラメータの付加)
“初期発
生”>“骨代謝”><“胸腺教育”<“抗原処
理”
2. 酸素供給(パラメータの付加)
“初期発生”>“骨代謝”>“虚血”...“ケモカ
イン病”<“胸腺教育”<“抗原処理”
3. 病原体感染(パラメータの付加)
“ 初 期 発 生 ”>“ 骨 代 謝 ”> >“ IgE”...
“IgA”<<“胸腺教育”<“抗原処理”
―― 以上再構成終り――
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
この再構成手順においては獲得免疫系異常
としての自己免疫疾患とアレルギー疾患が、
変化する環境パラメータに類似の応答を示
す事例として平行に分析されます。自己免
疫疾患は、1. 重力加速度(パラメータの付
加)において自己非自己認識ストレスを解消
するために胸腺教育に実装された遺伝子回
路網における破綻に由来しアレルギー疾患
は、3. 病原体感染(パラメータの付加)にお
いて寄生虫感染ストレスを解消するために
抗体クラス IgE に実装された遺伝子回路網
における破綻に由来するものと仮定すると
進化医学の Hygiene hypothesis(Atopy)と
脊椎動物の Gravity adaptation(Landing)と
いうふたつの街区を二本立ての話題として
比較・提供することが可能になっています。
林 守人(ノッティンガム大・遺伝学)
Lazaro M. Echenique-Diaz(東北大・生命科学)
「伊豆諸島のカタツムリ、シモダマイマイ
の出身地は伊豆半島の妻良町です」と言う
と、キッパリし過ぎて冗談の様にも聞こえ
る。しかし島嶼集団の起源が本土のどこに
あるか、○○町のレベルで推定可能な時代
が幕を開けている。詳細な遺伝解析を基に、
生態的変異や種分化がどのようなパターン
で起こるのか、様々な島嶼を比較すること
で、島嶼における生物進化の時代絵巻が、
時間スケールと共に浮かび上がってくるは
ずである。
講演は Brenden Holland(ハワイ大)の南
太平洋における陸貝相の広域的な進化のダ
イナミクスを皮切りに、吉野元(東北大)の
琉球産コウモリのエコロケーションの分化、
Lazaro Echenique(東北大)の琉球産コウモ
リにおける集団間の遺伝的な階層関係と交
配システムの雌雄間の転換、長谷川雅美(東
邦大)の伊豆諸島産トカゲの捕食者認識によ
り生じるヘビの模様変異の周期性、林守人
(ノッティンガム大)の伊豆諸島産カタツム
リに見る殻色彩の島内における急激な多様
度の増幅、最後にこの分野における国際的
なリーダーの一人である Rosemary Gillespie
29
うことに異論は絶えない。だが、大会印象
(カリフォルニア大)が、ハワイ産のクモに
記に述べた長年のわけがあり、敢えて英語
見られる島ごとの適応放散について発表し、
で行った。快く応じてくださった真打の講
全講演の幕を閉じた(敬称略)
。
演者の方々、会場いっぱいにおいでくださ
このシンポジウムを島間と島内という視
った方々に、お礼申し上げます。
点から振り返ってみよう。まず島間におい
性フェロモンによる配偶者識別は、昆虫
て、生態的形質が分化する様々な過程を見
類に周知のとおり、実によく研究されてい
ることが出来た。対象とする形質は講演者
る。ところが軟体動物では、なぜか証拠が
によって異なるものの、模様、エコロケー
皆無に等しい。少なくとも巻貝の近縁種間
ション、捕食者認識、交配システム、ハビ
で、空媒性分泌物の機能はいまだに検出例
タットに明瞭な分化が認められた。また系
がない。浅見の講演は、その初めての証拠
統推定により各島内の集団、近縁種間の単
に加え、雑種 F1 は生活史形質と配偶者誘引
系統性、そしてその上位に島間の関係が位
力で優れる一方で性フェロモンに不感の事
置するという、階層構造が認められた。特
実を示すものであった。単純なモデル解析
に Gillespie 博士の例は、各島の適応放散自
は、配偶者の識別機構が分化するだけで、
体が平行して出現する点で美しい。次は島
受精後の隔離まで進化しうることを予測す
内に目を向けてみる。結果として、ここで
る。
も発表された全ての材料(ヘビ、コウモリ、
メスは性フェロモン、オスは翅で求愛歌。
陸貝、クモ)において、種内や種間の顕著な
都丸雅敏さん(京都工芸繊維大)は、この双
生態的分化が報告された。このことから、
翅目の常識に一石を投じた。ダイダイショ
これら島嶼個体群における種内の生態的分
ウジョウバエのオスは、翅を一切使わない。
化から、種分化にまで発展する可能性も示
そのかわり、おなかを懸命に曲げては、お
唆された。コウモリから一例をあげる。コ
しりをメスの"鼻先"に向けるのだ。学生 20
ウモリの超音波は波長が異なると、雌雄間
のコミュニケーションに障害をきたすため、 (11 ♀+ 9 ♂)人の目隠しテストでは、19 人
がオスの瓶に甘い匂いを指摘する。慧眼の
交配前隔離を引き起こす。従って例えば今
発見に科学の原点を感じたのは、わたしだ
回、吉野元さんによって発表された沖縄本
けではないだろう。手品のごとく仕掛け満
島内の波長の分化が、種分化の進行を示す
載のサービス精神に学ぶところも多かった。
ものだとしても不思議では無い。
外国語の講演に会場の質疑がやまない!萌
以上のような共通点とそのつながりが、材
芽性の証を満喫させていただいた。
料も地域も年代も異なる各諸島の間にみら
交尾前隔離には、選ぶ側の形質進化が不
れたことが、シンポジウム一番の成果であ
可欠だ。澤村京一さん(筑波大)のグループ
る。発表者を増やし、さらに様々に異なる
は、オスを聴きわけるメスの行動に遺伝学
年代の大陸島、海洋島をそれぞれ並べ、時
のメスを入れる。交尾後隔離がほとんどな
間的コンテクストをプレゼンしても面白い
いアナナスショウジョウバエとパリドーサシ
と思う。今回は企画から実行まで我々若手
ョウジョウバエには、単為生殖の変異系統
の思うままにさせて頂いた。進化学会の自
がある。そこに目をつけた澤村さんは、全
由な空気に感謝したい。
ゲノムがホモ接合でありながら2 種のゲノム
をモザイク状にもつ系統をつくった。独壇
場のその技が、
「聴きわける」遺伝子をマッ
ピングする。かくもエレガントな研究が、
浅見崇比呂(信州大・理・生物)
地道な実験の膨大な蓄積によって立つ。い
広義の行動隔離、すなわち行動形質の進
ずれつかまる原因遺伝子を誰もが彷彿する、
化がもたらす交尾前隔離に焦点をあてて企
重厚な説得力だった。
画した。
(狭義では、配偶者選択による受精
時計遺伝子が、いま世界の脚光をあびて
前隔離を指す。
)年会で日本人が外国語を使
いる。宮竹貴久さん(岡山大)は、生殖活動
30
の時間差がもたらすアロクロニック隔離の
実例を総覧し、時計遺伝子の多面発現効果
に着目する。ここ数年の話題をさらう同所
種分化の舞台 ― 寄主転換とあわせて考える
なら、強力な種分化因子となりうるからだ。
新寄主に適した生活史を獲得するだけで交
尾場所まで変わるなら、同所隔離が成立す
る。同様に、生活史形質が交尾時間と遺伝
相関するなら、寄主転換した寄生者は時間
隔離されることになる。この世界の実証研
究が期待を集めるゆえんである。
自戒の失敗談。共有したパソコンの、パ
ワーポイントのバージョンが古いがために、
都丸さんがせっかく用意した期待のアニメ
ーションを台無しにしてしまいました。み
なさん、ご注意ください。
高橋 亮(理研・ゲノム科学総合研究センター)
生物集団中に維持される遺伝変異を指標
に、その地理的な構造や進化の歴史を辿る
集団遺伝学の手法は、遺伝子系図学の理論
が確立し、そしてゲノム全体に及ぶ詳細な
DNA 多型情報の入手が(ごく一部の生物に
限定されはしますが)可能になり、大きな変
貌を遂げました。集団の歴史と遺伝子の歴
史は一対一に対応付けられるものではなく、
ある集団史の下で実現可能な遺伝子の系図
には無数のパタンが存在し、その逆に、あ
る遺伝子系図を生成せしめる集団の歴史に
も無数の可能性が存在します。従って、集
団史の推定には、独立に進化した複数のゲ
ノム領域のひとつひとつから導かれる各領
域固有の歴史情報を統合し、そこからひと
つの集団史を描き出す作業が必須となりま
す。
颯田葉子さんの発表は、この集団史研究
の新しい流れをはっきりと体現するもので
した。ゲノム中に散在する BAC 末端配列の
比較解析を基にチンパンジーとヒトの共通
祖先の有効集団サイズを推定する古集団遺
伝学の手法や、15 の核ゲノム領域の系図解
析を通して、鮮新世から更新世にかけてア
フリカ地域に存続した分集団構造の影響が
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
現世人類の多様性に色濃く遺されている可
能性が議論されました。嶋田誠さんのポス
ター発表(P1-43)にもある通り、分岐が百万
年以上遡る古い系統の存在はアフリカ以外
の地域からも報告されており、鮮新世以後
の人類進化史が、かつて考えられていたほ
ど単純なものではなく、地域集団間の隔離
と二次的な接触による遺伝子流動を伴う複
雑な過程であった可能性を、改めて考え直
す必要があるようです。
舘田英典さんの発表は、集団の分断化と
融合が周期的に繰り返される変動環境下で
の連鎖不平衡の盛衰を、二遺伝子座サンプ
リング理論と分集団モデルとを合体した系
図モデルで表現し、更新世の氷期−間氷期
サイクルに伴うスギ集団の多様性の変遷を
議論するものでした。ゲノム情報の蓄積と
共に、ゲノム多型の相関パタンを指標に正
の選択の作用痕を網羅的に探査する連鎖不
平衡解析の手法に注目が集まっていますが、
これに留まらず、過去の分集団構造を明ら
かにする上でも連鎖不平衡解析は有用な情
報をもたらすでしょう。
続いて、栽培植物の起源と稀少植物の保
全を主題に、応用面からの多様性研究への
取組みが紹介されました。松岡由浩さんの
発表では、トウモロコシとコムギを題材に、
栽培化の初期過程や近縁野生集団との交雑
が作物の多様性に与えた影響について紹介
がありました。栽培化や家畜化に伴うゲノ
ムの変容を扱う研究が進化学会で取り上げ
られる機会は、これまであまりありません
でしたが、栽培品種の多様化を引き起こす
遺伝機構の究明が進む今日、作物の栽培化
は生物進化のモデルとしても興味深い題材
となることが期待されます。
本城正憲さんの発表では、急速に棲息域
を失いつつあるサクラソウの現状と、絶滅
に瀕した地域集団の回復に向けた復元事業
の実際が紹介されました。系統保存株や園
芸品種と野生集団との遺伝的な関係につい
ても議論は及び、集団の復元に際しても、
遺伝的な撹乱を避けるべく、導入個体の由
来に配慮することの重要性が指摘されまし
た。講演を通して、地域集団毎の遺伝的な
独自性こそが保全の対象となることが繰り
返し強調され、とても印象的でした。
懇親会明け朝一の集会である点を割り引
いても、参加者が少なめ(約 70 名)だったの
は残念です。430 人収容の広大な講演会場
で、余計にさびしさが募りました。質疑応
答の時間も充分に取れず、配慮が足りなか
ったと反省しています。特に前半の基礎研
究二題は、系図解析を駆使した分子集団遺
伝学の理論を前提としたものであり、事前
知識のない者を寄せ付けない内容だったか
もしれません。分野毎の温度差はあります
が、ゲノム多型情報の系図解析を軸とする
集団ゲノム学の手法は、これからの集団史
研究に欠かせないものとなるでしょう。そ
の反面、日本では分子集団遺伝学の基礎教
育さえ殆ど行われていないのが実状です。最
新の研究成果を発表する場だけでなく、基
礎理論の初歩に立ち返る教育的なプログラ
ムが、或いは必要なのかもしれません。も
うちょっと集団遺伝学者にも進化学会に顔
を出してもらって、どうにか状況の改善に
繋げたいと考えています。
31
以上複製させない機構について説明した。山
本(東北大・生命)は、mitosis での細胞分裂
機構の破綻による染色体異数性について述
べた。小野(東北大・医学系)マウス生殖系
での塩基レベルでの突然変異を解析し、生
殖細胞でのゲノム維持機構が体細胞でのそ
れとは異なることを示した。井倉(東北大・
医学系)は、ヒストンH2AX 複合体の解析を
基に、損傷クロマチンのダイナミクスの分
子機構について議論した。最後に田辺(総研
大・先導科学)は、3D-FISH 法を用いて、染
色体の核内配置がヒト腫瘍細胞では無秩序
となっていることを示した。
水波 誠(東北大・院・生命科学)
脳の進化の解明は神経生物学の最大の目
標の1 つである。現在の脳進化へのアプロー
チは主に神経発生学や分子進化の観点から
進められているが、脳システムそのものの
多様性と進化の研究は萌芽的段階にあり、基
盤的な知見の蓄積や、新規の研究課題の探
索が重要である。本シンポジウムでは脊椎
動物(鳥類)と無脊椎動物(昆虫)の脳と行
動の多様性について興味深いトピックをと
山本和生(東北大)、小林一三(東京大)
りあげ、その進化的理解に向けての展望に
シンポジウム「ゲノムのダイナミックスと
ついて議論する。
維持」は、小林(東大・新領域)と山本(東
講演タイトル:
北大・生命)が世話人となって、28 日午前
「聴覚の収斂進化−昆虫の聴覚器官が教えて
と午後に、それぞれ2 つのセッションで開催
くれること−」西野浩史(北大・電子研)
された。半田(カリフォルニア大・現 東大) 「昆虫における色覚系の多様性」木下充代
は、
「自己」と「非自己」を識別し、非自己を
(横浜市大・院・総合理学)
破壊する酵素系の働きを直接可視化して見
「鳥類の社会行動と扁桃核・視聴覚統合領
せた。小林一三(東大・新領域)は超好熱古
域」池渕万季(金沢工大・人情研)
細菌での自己、非自己の認識機構がゲノム
「鳥の歌学習の起源と進化」岡ノ谷一夫(理
再編に関わることを示した。続いて能美(国
研・ BSI)
立医薬品食品衛生研究所)は、損傷乗り越
え型 DNA ポリメラーゼが環境因子による
DNA 損傷をもとに、遺伝的多様性を高めて
山元大輔(東北大院・生命科学)
いる可能性について論議した。安井(東北
行動の変化は集団間の隔離を導き、種分
大・加齢研)は、紫外線による DNA 損傷を
化の契機となりうる。では、行動の進化的
修復する多様な遺伝子の生物界での分布を
転換を引き起こした遺伝子は何であり、行
もとに、損傷の修復機構の進化について述
動を生み出す脳神経系に与えたインパクト
べた。午後の部では、多田(東北大・薬学研
はどのようなものなのか。このような問題
究科)DNA 複製開始機構が細胞周期で二度
32
意識のもと、無脊椎動物からヒトにいたる
生物を対象に、脳の構造と機能、行動の多
様化を支える分子メカニズムに迫るべく、下
記の4 つの講演をもとに論議した。まず、キ
イロショウジョウバエというモデル生物の
近縁種を用いることで、脳の種特異的形質
の変化や食性の分化を引き起こした遺伝子
を特定するアプローチが紹介された。マウ
スの脳では、ニューロンごとに異なるスプ
ライス型を生ずる遺伝子が存在し、脳の個
性の基盤である可能性が示唆された。そし
てヒトをみると、民族特異的なアリルがし
ばしば見出され、生活様式がそうした遺伝
子型の特性と相関すると推定された。この
ように、単一遺伝子と行動型との間に明確
な対応が認められることから、行動を規定
する遺伝子基盤の研究は今後急速な展開が
見込まれる。
「ハワイ産ショウジョウバエの脳の性的二型
とその進化」山元大輔(東北大・生命科
学・脳機能遺伝)
「ショウジョウバエにおける寄主選択行動の
遺伝的基盤」松尾隆嗣(首都大・都市教養)
「多様化膜分子群の分子進化と脳機能での働
き」八木 健(阪大・院・生命機能)
「ヒトの行動様式と遺伝的背景の関連を探る
試み」太田博樹(東京大・院・新領域)
。
高橋 亮(理研)
本集会は、異なる背景を持つ研究者が一
堂に会し、同一の現象に目を向けることで、
分野毎の視点、切り口を対比し、これから
の総合的な進化研究のあり方を議論するこ
とを目的に企画されました。視線の向く先
の違いを認識することが、新たな課題の発
見に繋がるのではとの期待もありました。
最初に会の趣旨説明と導入を兼ね、私が
遺伝変異の固定を促す要因として選択と遺
伝浮動とを峻別する遺伝進化研究の基本的
な考え方を概説しました。倉谷滋さんの発
表は、前後で紋様が大きく異なるガの翅を
例に、体節毎に異なる遺伝子セットが発現
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
することで昆虫形態の単位性(モジュラリテ
ィ)がもたらされ、進化的な変化も単位構造
毎に独立に生じることを論じたものと理解
しました。量的遺伝学の分野では、例えば
形態測定学的な手法と QTL 解析とを組み合
わせて、ある一群の表現型(フェノム)を互
いに独立な遺伝子セットによって支配され
る単位要素に分割し、真の形質(互いに独立
に進化する単位形質)を認識しようとする試
みが成されていますが、倉谷さんの発表は、
この試みに発生学からの裏付けを与えるも
のとも思えました。
千葉聡さんの発表では、雌雄間の性的な
対立が極端に激化した一例として、雌雄同
体の陸棲巻貝類に特徴的な love dart が豊富
な画像と共に紹介され、複数の系統で独立
に dart が派生した進化史と共に、その進化
を促した生態要因について議論がなされま
した。近年、繁殖形質の進化において、雌
雄間の利害の不一致が果たす役割に大きな
関 心 が寄 せられていますが、 千 葉 さんは
dart の発生遺伝学的な解析も並行して進め
ており、今後の展開が期待されます。
望月敦史さんの発表では、動物の体表面
に生じる縞模様などの周期的なパタンの形
成を表現する反応拡散モデルや、L −システ
ムと遺伝アルゴリズムを組み合わせた発生
モデルでは高頻度で反復構造が進化するこ
とを示した研究を踏まえ、発生システムが
内包する規則によって表現型のレパートリ
ーが制限される原理が示されました。
午后 6 時過ぎに始まった集会は会場の閉ま
る9 時近くまで続き、望月さんの発表が始ま
る頃には、会場全体に疲労感がそこはかと
なく漂うこととなってしまいました。倉谷
さん、千葉さんの発表には敢えて時間制限
を設けなかったのですが、結果として予想
以上に会が長引き、充分な討論の時間まで
失くなってしまいました。浅薄でした。司
会進行の拙さもあり、当初の目標として掲
げた総合的な進化研究を展望するところま
では到底到達しえず、分野横断的な集会で
は、話題を提供する側、聞く側以上に、企
画を立案する側の努力が最も重要であるこ
とを、改めて思い知らされました。来年以
降も、進化諸科学の理念を根底から捉え直
すことを目的とする集会が開かれることを
願っていますが、企画立案する側のより一
層の努力が、これからの進化学会を盛り上
げていく上でも欠かせないと感じています。
山本博章(東北大・生命科学)
色素細胞は、紫外線防御だけでなく、婚
姻色の発現やカムフラージュを可能にし、正
常な視聴覚には必須です。メラニン色素は
多くの試薬と結合し、またラジカルスカベ
ンジャーとしても機能します。我々哺乳動
物の毛色発現に関わる遺伝子には、エネル
ギー代謝に関わるものもあり、免疫機構へ
の関与が予想されている遺伝子も報告され
ています。これらの機能は、色素細胞シス
テムが、生態学的なストレスの元、我々の
生存戦略に深く関わってきたことを推察さ
せます。本シンポジウムは、このような色
素細胞システムの進化を総合的に考察する
第一歩としようと計画されました。
そのために、生物界に広く見られる色素
細胞システムとはどのようなものか、共通
の認識を得るために、いくつかの具体例に
沿って、専門の研究者に概説を依頼しまし
た。また、このシンポジウムは「感覚シグ
ナルと感覚受容系の進化」と題した連続す
る3 シンポジウムの最初の話題として、見ら
れる対象としての色素細胞と、それ自身が
深く関わる視覚における機能進化について
も話題を提供し、ひき続くシンポジウムに
繋げようとしました。
イントロダクション「色素細胞の多様な機
能」山本博章(東北大・院・生命科学)
「昆虫の多様な色彩世界における色素細胞の
潜在的な機能を探る」中越元子(北里大・
一般教育・生物)
「鳥類の色素細胞−体色発現におけるその挙
動と機能−」秋山豊子(慶應義塾大・生物)
「究極の生き残り戦略:魚にとっての体色と
色素細胞」大島範子(東邦大・理・生物分
子)
「眼の進化 その多様化と起原」池尾一穂
33
(遺伝研・生命情報・ DDBJ)
まず現在知られている色素細胞の多様な
機能に関して概観(山本)してから、昆虫の
体色発現に関わる主な色素であるメラニン、
オモクロームおよびプテリジン色素につい
て、特にプテリジン色素合成系の進化的な
意義、また生態学的な意義についての概説
(中越)を受けました。ついで鳥類の色素細
胞発生と羽毛形成機構について理解を深め、
メラニンと羽の微細構造に起因する構造色
による極彩色発現の機構とその生態学的な
合理性を考察(秋山)して後、かたや複数タ
イプの色素細胞を分化させて多彩な色や模
様を見せる魚類の色素細胞の特徴と、それ
らが体色発現とその変化に関わる機構の複
雑さについて、生態学的また進化学的な側
面からの説明(大島)を受けました。最後に、
これら体色を見る情報受容器官としての眼
の進化機構について、その発生機構の共通
性と多様性に着目して比較分子進化の視点
からの解説(池尾)を受けました。
各講演から、色素細胞の機能解明には多
くの課題が残されていること、特に生物を
含む自然界との相互作用における本システ
ムの生態学的な意義(それはとりもなおさず
進化学的な意義ですが)を考え、情報発信と
受容に深く関わるこのシステムの理解を深
めることが重要との共通の理解が得られた
と思います。
河村正二(東京大・院・新領域創成科学)
本シンポジウムでは蝶、ナメクジウオ、
グッピー、シクリッド、新世界ザルといっ
た多様な動物群を対象に分子、細胞、個体、
集団の様々なレベルを縦横に行き来しなが
ら視覚光受容の進化多様性と起源を追求す
る研究の最前線を紹介することを目的とし
ました。本シンポジウムはまた「感覚シグナ
ルと感覚受容系の進化」というより大きなく
くりの3 連続シンポジウムの第2 番目であり、
1 番目の色素細胞のシンポジウムで体色とい
う見られる側の多様さの話を受けての見る
34
側の話という側面もあり、5 口演とも活発な
質疑が交わされ、多くの方々に関心を持っ
ていただけたのではないかと思っています。
第 1 演者寺北明久氏の「オプシンと光受容
細胞の進化・多様性」では脊椎動物に特徴的
な繊毛型受光細胞とそのオプシンを、無脊
椎動物に特徴的な感桿型受光細胞とそのオ
プシンに対比させ、それらオプシンの発色
団異性体への親和性の相違とその原因とな
るアミノ酸置換について説明されました。さ
らに脊椎動物に最も近縁な無脊椎動物であ
る頭索動物ナメクジウオに、脊椎動物に存
在しない感桿型受光細胞があり、そこでは
メラノプシンという、無脊椎動物感桿型の
オプシンであり脊椎動物では光感受性神経
節細胞のオプシンが使われている、という
大変興味深い発見について話されました。
第 2 演者の私の演題は「色覚の種内変異と
オプシン:新世界ザルとグッピーが教えてく
れるもの」で、色覚の同一社会集団内多型と
いう、動物全体で例外的ではあるが、色覚
とオプシンの適応進化を研究する上では大
変重要と考える現象に注目し、それを有す
る動物群としての新世界ザルを主な話題と
しました。実際の野生群に色覚多型がある
ことを糞 DNA からのオプシン遺伝子の解析
で明らかにし、その多型維持に平衡選択が
働いている可能性を集団遺伝学的解析と行
動観察から示しました。また、魚類のグッ
ピーに色覚多型があることを証明すべく、そ
のオプシンレパートリーの解析の途中経過
を報告しました。
第 3 演者の正路章子氏の演題は「グッピー
におけるLWS オプシン遺伝子多型の集団間、
集団内変異」で、私共との共同研究です。グ
ッピーオプシンの吸収波長の多型はまだ実
証できていませんが、赤型(LWS)オプシン
遺伝子には顕著な制限断片長多型(RFLP)
があり、この RFLP についての沖縄、静岡、
そして原産地トリニダッドの集団解析の話
がなされました。その結果、RFLP が集団を
越えて存在しており、多型の維持に平衡選
択など何らかの機構が働いている可能性に
ついての説明がなされました。
第 4 演者岡田典弘氏の「シクリッドのオプ
シン遺伝子の進化」では、種分化の格好の研
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
究対象であるアフリカ・ビクトリア湖の魚
類シクリッドについての、現地調査も含め
た大変スケールの大きなお話を聞くことが
できました。シクリッドのオプシン遺伝子
の多様化を調べ、それらが様々な生態的環
境に適応的に選択を受けて進化してきたこ
と、特に赤型(LWS)オプシンは濁度に応じ
てアリルの頻度が変化し、それが適応的で
極めて迅速に各種間で独立に起ったことを
示されました。
第 5 演者蟻川謙太郎氏の「視細胞内色素に
よる視細胞分光感度の調節機構」では、視点
を蝶に移し、視物質だけでなく視細胞の光
学構造、特に色フィルターとして作用する
感桿周囲色素が視細胞の分光感度調節に極
めて重要であることが説明されました。さ
らにこの調節機構が種、集団、性により実
に多様であることが示され、環境、生態、
行動と色覚進化の関連を研究していく上で
これら色素の果たす役割が無視することの
できないものであることを示されました。
このように 5 者 5 様の対象動物と方法で、
進化という共通の問題意識の下、多様な研
究が展開されている現実を大変心強く思い
ました。このシンポジウムがさらなる研究
の契機に繋がれば企画担当者としてこれほ
ど嬉しいことはありません。
西田 睦(東大・海洋研)
嗅覚は動物の外界認識はもとより、同類
の認知にも関わる重要な感覚である。嗅覚
受容体をコードする遺伝子は脊椎動物ゲノ
ムで最大の多重遺伝子族を形成しているが、
それらは頻繁に増幅したり偽遺伝子化した
りとダイナミックに変動をしていることが
明らかになってきた。これらのことは、嗅
覚受容機構が近縁種間においても急速に分
化していること、そして同類認知機構の分
化を通じて種分化とも深くかかわっている
可能性のあることをうかがわせる。したが
って、嗅覚受容機構研究は、それ自体非常
に興味深いのみならず、種分化などマクロ
35
な進化現象の解明にも大きく貢献すること
が期待されるのである。そこで、嗅覚受容
機構研究の気鋭の第一人者、東原和成さん
(東大院・新領域)の協力を得て、本シンポ
ジウムを企画した。
中丸麻由子(東工大・院・社会理工)
当日はまず、上述のような西田の趣旨説
井原泰雄(東大・院・理)
明のあと、東原さんによる、脊椎動物の嗅
各発表者に報告記を書いて頂きました。
覚受容機構研究の現状と展望についての、非
「人間社会の研究における進化生物学的手法
常に明晰な講演があった。ついで、嗅覚受
はどこまで通 用するか」若野友一郎(東
容体多重遺伝子族の分子進化研究の最新の
大・理・生物・人類)
成果を、新村芳人さん(東京医科歯科大・
今回のシンポに参加させて頂き、とく社
難治疾患研究所)
、橋口康之さん・西田(東
会科学の分野の石黒さんと一緒にやれたこ
大・海洋研)がそれぞれ紹介した。つづい
とは、私にとって非常に有意義で、また勉
て、フェロモン受容システムの理解に切り
強になりました。人間社会専門の研究者た
込む、これまた最新の研究成果を、山岸公
ちが、どのような手法でこれまで研究して
子さん(東京都医学研究機構・東京都臨床
きたかを聞けばきくほど、進化生物的手法
医学総合研究所)
、木本裕子さん・東原和成
がどこまで“通用”するのだろうか、という
さん(東大院・新領域)が報告した。さら
気持ちになりました。行動生態学では、配
に、嗅覚受容機構を足がかりにした種分化
偶者選択、浮気、学習、文化伝達といった
やマクロ進化へ迫ろうとする研究の紹介が、
行動をすでに扱ってきており、これを人間
二階堂雅人さん・岡田典弘さん(東工大院・
社会に当てはめるのは(実証データなどの問
生命理工)
、郷康広さん(総研大・先導科学
題はあるにせよ)それほど困難ではないだろ
研究科)からなされた。最後に、これらの講
う、と思っていた私の考えは少し単純すぎ
演を受け、会場全体で、今後の研究の方向
たようです。
性や展望を少々議論した。
進化的手法は、方法論として人間社会に
講演は8 題とやや多めであったが、大会実
適用することはできても、そのままでは社
行委員会からこの日の最後の時間枠を3 時間
会科学者、ひいては一般大衆にどこまで“通
いただくことができたので、話題の幅と密
用”するのか?道はけっこう険しいように思
度をほどよく配置することができたように
います。しかしそれは一方で、未開拓の分
思う。脊椎動物の嗅覚について、おもにそ
野であるということでもあり、今後のこの
のメカニズムを探っている生命科学研究者
分野の発展に少しでも貢献できればいいな
と、進化や種分化との関連で嗅覚に関心を
と感じています。
もつ進化研究者が一堂に会して議論を交わ
「人間社会と進化:どのように研究するか」
す機会は、必ずしも多くない。本シンポジ
井原泰雄(東大・院・理)
ウムは、嗅覚研究がさらに大きく展開する
人間社会を進化という統一理論で説明す
気配のある今、会場に足を運んでくれた方々
る試みには、少なからぬ人々が魅力を感じ
にも講演者にも有意義であったと思われる。
ているのではないでしょうか。しかしなが
少なくとも、シンポジウム終了後の慰労会・
ら、いくつかの(至極もっともな)理由によ
懇親会での講演者一同の感想は、そのよう
り、この試みは進化学の中心課題にはなっ
なものであった。本学会のシンポジウムや
ていません。理由の一つとして、確固とし
ワークショップは、近い分野で仕事をして
た研究方法がないことが挙げられるでしょ
いながら日頃はあまり交流のない研究者に、
う。一方、進化学以外の諸分野では人間社
有用な交流の機会を提供する場としても貴
会の研究がいやというほどなされてきてお
重な役割を果たしているのだと、改めて感
り、様々な方法論が確立しています。これ
じた次第である。
ら関連諸分野の手法と進化学の理論とがう
36
まく連携できれば、この魅力的にして未開
拓な分野に新たな道が開けるのではないか
と期待しています。
「報告記」石黒 格(弘前大・人文)
今回は唯一、人文・社会科学を専門とす
る立場で参加したのですが、個人的には意
義の深い時間を過ごすことができたと感じ
ています。ただ、
「進化」という枠の大きな
学会だけに、社会の進化、それも遺伝物質
のように物的な基盤を持たない議論に関心
を持たれる方は少ないという印象を持ちま
した。だからこその意義があったと感じる
反面、どのようにして関心を擦り合わせて
いくのか、課題も大きいという印象です。
同時に、現在の人間を知る意味が、なにも
人類学的なフィールド・ワークに限らない
(心理学や社会学との共同が可能である)と
いう感は強くしました。
「実証研究と数理モデル研究について再考」
中丸 麻由子(東工大・院・社会理工)
人間行動や社会の進化研究に関する実証
研究は難しく、数理モデルやシミュレーシ
ョンを用いた研究は今後の実証的研究へ何
らかの指針になるのではないかと考えてい
ます。また現在の人間社会から得られるデ
ータとの摺り合わせの可能性も探りたく、こ
のシンポを企画しました。進化学会での「遺
伝子」という確固としたデータに裏付けられ
た発表に比べると自分の研究はデータによ
る裏付けがない点に弱みを感じてしまいま
した。将来的に何らかのデータが収集され
た時に、自分の研究が否定されてしまうか
どうかは分かりませんが、将来の実証的研
究の指針になるような数理モデル研究をし
ていきたいと思います。
牧野崇司(東北大・生命科学)
植物個体間を移動し、花を訪れる送粉者
の行動は、植物にとって花粉移動を決定す
る重要な要因である。ただし、送粉者は自
身の利益(蜜や花粉の確保)のために植物を
訪れるので、その行動は植物にとって必ず
しも都合が良いとは限らない。例えば、複
数の花を咲かせる植物は、同じ株上の花間
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
で起こる隣花受粉(自殖)を避けるため、送
粉者には早めに立ち去ってもらいたい。し
かし送粉者は、別の株に移動するには時間
がかかるため、同じ株で多くの花を訪れた
い。このような“自分勝手な送粉者”をいか
に巧く操作し、自分の思い通りに花粉を運
ばせるかが、植物の繁殖の成否を握ってい
る。そして、植物の様々な性質(花色・花形
態・蜜分泌速度など)は、送粉者を巧く操作
するよう進化してきたと考えられている。
こうした植物の性質が送受粉に果たす役
割を読み取ろうとする際、私たちはしばし
ば、植物の身になって考える。突然だが、
あなたが植物だったとして、送粉者を都合
良く動かすための作戦を立てようとした場
合、真っ先に何をすべきだろう?まず、送
粉者のことをよく知る必要があるのではな
いだろうか。送粉者が、どのような身体的
特徴を持ち・どのような能力を備え・どの
ようなルールに基づいて意志決定を行い・
どのように花を訪れるのかがわかれば、彼
らを巧く操作する方法が見えてくるように
思える。例えば、送粉者が賢いか賢くない
かで、あなたの立てる作戦は大きく変わる
だろう(賢くなければ騙すこともできる!)
。
このようなアプローチは、植物の諸性質の
意義を考える際、非常に有用である。しか
し、植物の性質と送受粉に関するこれまで
の研究が、送粉者の特性を熟知して行われ
てきたかと言えば、そうでもないというの
が私の印象である。もっと送粉者の行動を
知ることで、植物の諸性質の意義が見えて
くるのではないだろうか?本シンポジウム
ではこのような狙いのもと、演者の方々に
送粉者に関する様々な話題を紹介していた
だいた(井田氏には花色変化によるマルハナ
バチの行動の操作を、川窪氏には花に近づ
くハナバチの移動軌跡の 3D 解析を、横井氏
には再訪花を防ぐハナバチの匂いつけ行動
を、横山氏には訪花昆虫の体サイズや行動
の違いと花形態の関係を、それぞれ話して
いただき、私は、マルハナバチが花数では
なく蜜量で花序を選ぶことを紹介した)
。花
の性質に深く関わっていそうな話もあれば、
一見何の関係もないような話もあり、その
内容は雑多に感じられたかもしれない。し
かしどの話題も、知ると知らずでは今後の
送粉系の見え方に大きな違いが出てくるも
のであったように思う。
「送粉者の目線で送
粉系を眺めたらいままでと違った景色が見
えるかもしれない」
、本シンポジウムがそん
なふうに思うきっかけとなれば幸いである。
37
化は独立事象か?」延原尊美(静岡大・教
育)
「渦鞭毛藻の繁栄と海洋環境の変化」松岡数
充・岩滝光儀(長崎大・環東シナ海海洋環
境資源研究センター)
「海洋基礎生産者としての珪藻の進化が海洋
生態系に及ぼした影響」柳沢幸夫(産総
研)・須藤 齋(国科博)
北里 洋(JAMSTEC ・ IFREE)
地球史を通じて、海洋プランクトンは進
化している。それに伴い沈降するマリンス
ノーの質と量が変わり、水中および海底の
生物に影響を与えるはずである。表記シン
ポジウムは、地質時代を通じた海洋プラン
クトンの変遷とそれに呼応して変化するベ
ントス群集についてドキュメントし、その
地球史における意味について議論すること
を目的とした。以下の7 名がほぼ地質時代を
追うように話題提供を行った。その結果、
海洋プランクトンが進化する節目ごとに底
層生態系に影響が現れることが浮かび上が
ってきた。現段階では、現象が起こるタイ
ミングが同期していることが示されたにと
どまっており、その生物学的な意味付けに
ついてはこれからの議論が待たれる。可能
ならば、同一テーマで連続したシンポジウ
ムを行い、よりビビッドな海洋生態系進化
像を描き出したいと考えている。末筆なが
ら、生物学というよりは地質学に近い内容
のシンポジウムであるにもかかわらず、熱心
に聞き、討論してくださった参加者のみな
さまに感謝する。
シンポジウム演題:
「趣旨説明:プランクトンの進化が底層生態
系進化を誘引する」北里 洋(JAMSTEC ・
IFREE)
「先カンブリア紀の海洋生態系進化」大野照
文(京大・博物館)
「底生動物群集構造の進化と海洋表層生態系
の進化とのかかわり」近藤康生(高知大・
理)
「海洋表層生態系と生痕化石を作る生物の共
進化」小竹信宏(千葉大・理)
「化学合成群集の進化と海洋表層生態系の進
水野晃子(東北大・生命科学)
生態系と食物網の研究を進化的背景の下
で行う研究は、近年徐々に成果があげられ
つつある新しいテーマであるといえる。こ
のワークショップでは、生態系と食物網に
対して進化が影響するのか、また、影響す
る過程において進化が重要な役割を果たす
条件についての統一的な方向性を見出すこ
とを目的とした。食物網構造と進化の研究
について二つ、生態系の機能と進化の研究
に対して二つ、合計 4 つの話題を提供した。
まず、食物網構造と進化の研究として、
伊藤洋さん(東大)に、1 つの種から種分化
によって群集が形成され、新しい食物網構
造が出現、維持されるメカニズムについて
のモデル研究を紹介していただいた。次に、
Axel Rossberg さん(横国大)に、進化的な
条件の下で構築された群集のうち、野外の
食物網構造をよく説明するモデルについて
の研究を紹介していただいた。そして、生
態系の機能、特に生産者の特性と進化の関
係について、水野晃子(東北大)が、生産者
の複数の資源をめぐる共存は進化を仮定し
た場合としない場合ではどのように異なる
のかを紹介し、日野修次さん(山形大)に、
生産者のモデル生物の一つである、ラン藻
の系統的バリエーションと形質のバリエー
ションの存在について紹介していただいた。
各演者の発表テーマにばらつきがあった
ため、総合的に討論することが難しいセッ
ションとなったことは企画者として反省す
べき点である。しかし、この分野にはまだ
今後の方向性が見える程の、研究の蓄積が
ないということが明らかになったと言える
かもしれない。
38
河原林裕(産総研・生物機能工学研究部門)
山岸明彦(東京薬科大・生命科学部)
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
ポジウムであった。進化を考察する際には、
論理的なアプローチが多いが、本シンポジ
ウムでの講演者の様に実験的なデータから
進化を考察する取り組みは、まだまだ少な
い。今後もこのようなシンポジウムが継続的
に開催されることを希望する。
最後になりましたが、お忙しい中本シン
ポジウムでの講演を快くお引き受けくださ
いました各演者の先生方、熱心に討論にご
参加くださいました聴衆の皆様に感謝申し
上げます。
「アーキアを中心とした微生物の進化を
たどる」というシンポジウムでは、以下の 5
名の方が講演を行った。理研バイオリソー
スセンター微生物材料開発室の伊藤隆氏は
「生息環境、地理的分布からアーキアの進化
を考える」と言う演題で講演した。伊藤氏は
日本や世界各地に広く分布する種類のアー
キアについて、その系統関係と地理的分布
千葉聡(東北大・生命科学)
との関連について解説を行った。独・産業
外来種の在来生態系への侵入は、生態系
技術総合研究所、生物機能工学研究部門の
保全にかかわる問題の中で特に憂慮されて
河原林裕氏は「ゲノムから見た微生物の進
いる問題のひとつです。その侵入をいかに
化」という演題で講演を行った。河原林氏
して防ぐか、その影響をいかに緩和するか、
は、ゲノム情報中に潜む進化の痕跡や機能
という課題は、在来種の保全の面から緊急
が解明された遺伝子産物の機能やクラスタ
の課題とされています。一方、在来の生態
ー構造から見出される進化の道筋について
系への侵入に成功しつつある外来種が、ど
解説を行った。産業医大・生体物質化学講
のように新しい環境に進出していくのか、ど
座の古賀洋介氏は「古細菌の脂質の構造的、
のような性質が侵入、定着を可能にするの
代謝的特徴と進化」と言う演題で、アーキア
か、そして新しい環境に進出しつつある生
特異的な膜構成成分である G1P 合成に関与
物や定着を果たした生物の遺伝的、生理的、
する酵素群や、膜自身の進化について講演
生態的性質に、次にどのような変化が起き
を行った。アーキアの脂質合成系を真核生
るのか、という問題は、意外によく分かっ
物・バクテリアと比較することから、脂質
ていません。これらの点は、進化生物学に
合成系進化に関する解説を行った。徳島大
密接にかかわる問題であり、これらを解明
学工学部・生物工学科の櫻庭春彦氏は「超好
することは、外来種の問題を解決するうえ
熱アーキアの特異的な NAD(P)生合成系と
で大いに役立つと考えられます。このシン
進化」と言う演題で、アーキアで見出されて
ポジウムではこうした点を踏まえて、海洋
いるバクテリアには存在しない非常に特異的
生物、島の生物、ホスト・パラサイト関係、
な代謝経路、中でも NAD(P)生合成系に注
社会性、送受粉システム、外来植物、交雑、
目した。桜庭氏は、その合成に関与する酵
というテーマで、外来種の侵入過程やその
素群の特長から見出される進化の過程につ
影響に関して、進化生物学的な視点から以
いての解説を行った。東京薬科大学、生命
下の研究成果が発表されました。
科学部の山岸明彦氏は「祖先型蛋白質の耐熱
「太平洋を越えて:海産巻貝とその寄生虫の
性と進化」と言う演題で講演を行った。山岸
侵入」三浦収(東北大・生命)
氏は、現存生物の共通祖先生物が有してい
「島嶼送粉共生系へのセイヨウミツバチの影
た蛋白質は現存蛋白質よりも耐熱性が高い
響」加藤真(京都大・人環)
と言う実験結果から、共通祖先が好熱性生
「アリにおける侵略的移入種およびスーパー
物であったと言う仮説を支持する解説を行
コロニー性(unicoloniality)の研究に足りな
った。それぞれの講演者は、皆実験的なア
い視点は何か?」辻 和希(琉球大・農)
、
プローチで進化を捕らえる取り組みを行って
丸山泉(富山大・理)
、中丸真由子(東工
おり、進化を考える上で非常に貴重なシン
大・院・社会理工)
、辻 宣行(国立環境研)
「外来植物の進化:在来種との交雑による生
態的分化」芝池博幸(農環研)
コメンテータ 矢原徹一(九大・理)
各課題とも、侵入を可能にする性質がど
のようなものか、そしてその性質こそが新し
い進化的変化を引き起こし、さらにそれが
侵入を促進する可能性があることを示すな
ど、きわめて興味深い洞察を与える内容で
した。外来種は、保全という側面から見る
と、外来種は非常にやっかいな存在ですが、
その一方で、生物が新しい環境にどのよう
に適応するか、新しい性質はどのように獲
得されるか、という進化生物学的に重要な
問題を明らかにするうえで格好のモデルシス
テムである、という側面があることが認識さ
れたと思います。その意味で、外来種を用
いた進化生物学的研究は、進化の基礎的な
問題解明に貢献するとともに、その成果が
さらに外来種問題の解決と言う実用的な研
究に貢献できる、という点で非常に意義深
いものであると言うことができます。
浅見崇比呂(信州大・理・生物)
分子の左右(非対称)性は、アミノ酸に歴
然である。らせんの左右性なら、タンパク
質、DNA、細菌、つる植物、花の形に著し
い。左右性に着眼するだけで、生物界の未
知の現象が縦横無尽にみえてくる。それだ
けに多様にひろがる左右性研究は、なぜか
それぞれに個別の現象を超え、普遍のテー
マに発展してゆく特徴がある。その現場に
立つ4 人の講演者に、新たに見えてきた具体
的な問題を提起していただいた。
Alabidopsis のねじれ突然変異に着目した
橋本 隆(奈良先端大)さんは、植物左右性
の分子基盤に挑む。細胞は、細胞壁になら
ぶ微小管とは垂直の方向に伸長する。多く
のねじれ変異株を調べると、原因遺伝子は
共通してこの微小管の方向を変えていた。で
は、そもそも変異株の微小管は、どのよう
にして傾くのか。はたしてチューブリンは
逆巻きに重合しているだろうか。微小管が
傾くとなぜねじれるのか。これらの問題解
39
決は、さらに普遍的な、伸長方向の制御機
構の解明につながってゆく。
巻貝の鏡像体は異常か正常か。宇津野宏
樹さん(信州大)は、巻貝の左右極性と同時
雌雄同体の特色を生かし、同一両親のゲノ
ムを共有する右巻と左巻のモノアラガイを
作成した。これらの右巻と左巻はゲノムが
平均して同じはずなのに、左巻の生存率は
著しく低かった。オナジマイマイの変異系
統で、母親が同じ右巻と左巻を比較しても、
左巻は孵化率が低い。遺伝子とは関係なく、
左右逆に発生するだけで不幸になるのだ。発
生拘束の初めてのゆるぎない証拠であろう。
カタツムリばかりを食べるヘビがいる。細
将貴さん(京都大)は、そのヘビ類の頭部に
著しい左右性を発見した。巻貝のほとんど
は右巻だ。はたして左巻の肉はうまく抜け
るのか。暗闇でオナジマイマイの右巻と左
巻変異体にヘビが襲いかかる。左巻にてこ
ずるさまは、予想をはるかに上回るものだ
った。ナメクジ食に転じたヘビは左右対称
だった。これもヘビの適応進化をみごとに
示す。それなら、捕食者の右利き進化は、
餌の左巻進化を促進するのではないか ― 新
たな仮説の検証に挑んでいる。
カニのハサミの左右性。繁宮悠介(長崎総
合科学大)さんは、その意味をサワガニに探
る。オスは、大きいほう(利き手)で闘争相
手の甲を挟む。役目は明瞭だ。ところが、
右利きと左利きとでは闘争のしかたが違う
のだ!ケガ(付属肢の欠失)のしかたも違
う!同一集団の左右二型なら、互いに左右
逆の行動をしそうなものだ。だが、そうで
はないということだ。講演中途のその段階
でもう、無数の質疑が目に浮かび、議論の
時間が足りるはずのないことが悔やまれて
しまった。
総じて、4 件の講演に止まらぬ質疑が相次
ぐなかで、時間割を超過するわけにはゆか
ず、対応できなかった方々におわび申し上
げます。最後に、失敗談。わたしのパワー
ポイントが古くて、細さんがせっかく準備
してくれたアニメーションが使えず、ご迷
惑をおかけしました。オーガナイザは、最
新のバージョンを備えるべきであることを
学びました。
40
■ 辻和希(琉球大・農学部)
長らく田舎に住んでいるため、会議の類
に出席予定のある学会大会は、1 ∼ 2 日前に
現地入りすることが多いです。台風を追い
抜いて到着した 8 月 24 日の仙台は、雨なが
らも沖縄と変わらぬ蝉の鳴く夏でした。た
だ、鳴いているのはクマゼミではなくミン
ミンゼミでしたが。夏休みに開かれる本大
会は、海外出張と重なることも多く、私は
ほぼ 1 年おきの参加です。2 年ぶりで楽しみ
にしていた、そんな仙台大会は実行委員会
の努力がうかがえる実に充実した大会だっ
たと思います。
これから仙台大会に限らず、この学会の
大会運営について感じていることを書きま
す。進化学会は特別です。「動物学会」や
「植物学会」のような分類群的な縦割とも、
「分子生物学会」や「生態学会」といった階層
からくる横割とも本来無縁だからです。
「進
化生物学」ではなく「進化学」と名乗るあた
りも、文理融合の真に総合的な学問を標榜
した学会といえるでしょう。
前々回の第 5 回九大大会からシンポやワー
クショップの数が一気に増えました。これ
は、創設期の本学会としては賢明な選択で
す。この学会が持つ本来のニッチである分
野横断的で総合的でかつ基盤的な研究の場
としての機能を強化するには、第一に進化
に興味を持つ人・会員を増やす必要があり
ますから。シンポやワークショップが多数
(九大大会ではなんと最大 8 つ)同時進行す
るため、どんな分野の専門家が参加しても、
暇を持て余すことなく、どの時間帯にも興
味を持ち聞ける講演があるでしょう。進化
学会を「ちょっと覗いてみた」人に、進化研
究の魅力を印象づけるにはこれがベストで
す。出店の多い縁日みたいに、今のやりか
たは外向け・初心者向け・おもに聴衆向け
の最大限のサービスを目指しています。進
化生物学の夏の学校が会期中で開かれるよ
うになったこととも、コンセプトを一にし
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
ています。
でも、物事にはすべて良い面と悪い面が
あります。現状の悪い点は、まずサービス
をする側の負担が大きいこと。ここ数年大
会運営を引き受けたホスト大学の人々が、十
分な数のシンポを確保するため各方面への
依頼に四苦八苦している様子は傍目にもう
かがえます。似たようなテーマで質の高い
発表やシンポ企画を毎年確保するのも大変
でしょう。そしてこれがたぶん一番重要な
ことですが、巌佐庸現会長も進化学会ニュ
ース(Vol. 6 No.1)で書いているように、シ
ンポの企画や講演を依頼される立場の現役
でバリバリの研究者の研究時間が、過度の
学会活動のために浪費されたり、ただでも
多忙で、論文(より多くの人の目に触れるか
もしれない)を書く時間もままならないの
に、その場に居た人しか聞けない学会講演
を優先させられる状況がもしあるとしたら、
学会の本来の機能からは少々本末転倒です。
また、別の間接的コストとして、並列シン
ポが多いと聞き逃してしまうものが多くな
ります。知り合いの古いタイプの研究者に
は「学会講演といえど同じ内容の発表を 2 度
行うのは倫理に反する」と公言している人も
いますから(こんな人は減ってますが)
、こ
ういう人の面白い発表を聞き逃すと学会発
表としては2 度と聞けないので残念です。ま
た、私自身も同感ですが、中堅以上の会員
からは、本学会大会のような学際的な集会
では、他では聞けないような専門外だが自
分にとって新鮮な話をわかりやすく聞きた
い、との声が聞かれます。しかし、並列シ
ンポが多いと、諸事情から自分の仕事に一
番近いものを選ばざるを得なくなることも
多いです―少なくとも直接関与しているシ
ンポを抜けて、他の部屋へ聞きに行くわけ
にはいきません。毎回複数のシンポに話題
提供しているような会員は似たような問題
を抱えているのではないでしょうか。
また、進化学会は他の学会の大会に比べ、
プログラムが詰まりすぎで、結果、規模の
わりには来ているはずの人に直接会って話
す機会や時間がやや少ないような気がして
います。講演を聞くのをさぼって過ごして
いた休憩室での雑談の中から、重要な発想
が得られることもあるように思います。ギ
シギシの並列セッションは午後 3 時までにす
るとか、今でも懇親会の翌朝や最終日の午
後の遅くの時間の講演はガラガラのことが
多いので(頑張った企画者や講演者は気の
毒)
、客の集まりが悪い時間帯のセッション
数を少なくするなど、コンテンツを減らす
工夫も時には必要ではないでしょうか。結
論、盛り沢山なだけが能じゃない。
今後、5 年から 10 年くらいは、今のやり
方を続けるのがたぶん良いでしょうが、会
員のかなりの部分が進化学者として成熟し
てきた時には、それらの会員のニーズに合
わせた大会運営も重要になるでしょう。
その意味では、ここ数年毎回開かれてい
る、国際シンポ、そして学会賞の受賞講演
は重要です。並列セッションがないので、
すべての参加者が同じ話、それもテーマ的
に選りすぐられたものを聞けるからです。将
来的には、国際シンポの時間を今より長く
とってはどうでしょう。
種分化と適応放散。これが今回の国際シ
ンポのテーマでした。現在最もホットなトピ
ックの1 つであるこのテーマを選んだ東北大
の大会実行委員会の見識と、そして海外の
活発な研究グループから講演者を集めた尽
力には心より敬意を表します。しかしコン
テンツは正直、玉石混交でした。海外研究
者の講演では、M. Travisano 博士の講演が
会場での議論を惹起させたという点では特
筆に値しましたが、全体にイントロか背景
に関する説明が不足気味で、共同プロジェ
クトの自分が担当した部分だけを発表した
のではと思えるものもありました。個別の講
演間の関係もややバラバラでした。比較す
れば、たとえば前回大会の一般シンポ「生
物間相互作用と生物多様性の進化」の方が、
印象記を読んだ限りでは(私は前回大会に参
加してないので)全体としてのまとまりがあ
る感がしました。とはいえ、招待講演者が
「いい仕事」をしてくれるかどうかは、やっ
てみないとわからないのが実情でしょうか
ら、一部の講演が「しょっぱかった」ことで
実行委員会だけを責めるわけにもいきませ
ん。今後の指針としては、早めの交渉等の
努力が必要ですが、研究プロジェクトを総
41
括できるクラスの人を呼び、
「全体」が見え
る講演をしてもらうよう努めるべきでしょ
う。このことで、もし準備に時間がかかる
ようなら、将来的には国際シンポについて
は大会実行委員会に一任せずに、学会全体
として運営にあたるという手もあります。
上に書いたような問題にもかかわらず、進
化学会大会は一番楽しみにしている国内集
会の1 つなので、あえて辛口なことを書きま
した。楽しかった仙台大会の成功をお祝い
します。
■ 彦坂暁(広島大・総合科・行動科学講座)
学会に参加する楽しみには大きくいって 2
つの面があると思っている。一つは自分と
近い分野の最先端の話が聞けること。もう
一つは自分がよく知らない未知の分野の話
を聞けること。深く知る楽しみと広く知る
楽しみ、と言っても良い。進化学会は私に
とって圧倒的に「広く」の側面が強い学会だ。
参加は仙台大会で3 回目だが、いつも、自分
の研究とはほとんどなんの関係もない話な
のに「これ聴いてみたい」と思う演題がたく
さんある。
「聴きたい率」は他のどの学会よ
りも高いのではないかと思う。おかげで「な
んでこのシンポジウムとこのワークショップ
が重なっているんだ」
、
「なんで自分の発表
時間にこの発表があるんだ」と、いつも悔し
い思いをする。今回の大会でも、どの時間
帯にもぜひ聴きたいと思うプログラムが4 つ
くらいあって困った。シンポジウム、ワー
クショップ、ポスター発表が2 日間に詰まっ
ていたが、これが3 日くらいに分散している
と良いのになとか、ポスター発表は3 時間と
って3 交代制くらいにしてもらえるとありが
たいんだけどな、などと勝手なことを考え
てしまった。
たくさんの企画を同時並行で走らせると
いう形と、企画の数を絞ってたくさんの人
が同じ場に集まって議論できるようにする
という形と、どちらが学会の形式として良
いのか。難しい問題だ。個人的には、いろ
んな分野から進化に興味がある人が集まっ
て議論できるのが進化学会の面白さだと思
うので、各時間帯、会場を2 つくらいに絞っ
て、いろんな分野の人を集めて学際的なシ
42
ちがいい。おそらくは、日本の大学に進化
ンポジウムを行なうというような形式の大
学の講座がいまだに稀有であるからにちが
会も、毎年とは言わないが、何年かに一度
いない。なのに、世界の進化学を代表する
はあれば良いなと思っている。
ほどの学際シンポジウムが、かくもプログ
そういう意味で、今回の大会で私が一番
ラムを埋め尽くす。この毎年の成功裏には、
面白かったのが、遺伝学、発生学、生態学、
日本特有の講座村の歴史を欠く進化学事情
数理生物学という異なる分野の演者が「カナ
がありそうだ。
リゼーション」を共通の題材として取り上げ
口頭発表がすべてシンポジウム。この大
て議論した2B5「表現型進化を巡る多角的な
会形式は、見た目にユニークなだけではな
視座」だった。どの演者の話も興味深く、ま
く、進化学の大会にもってこいの役割をは
た裏番組が某自由集会しかなかったためか
たしている。他学会ならさぞ不本意なセク
聴衆も多く、活気が感じられた。自由な議
ションに回されるであろう学際口演が、な
論の時間がもう少し長くとれていたら、と
んと機能的に包含されていることか。プロ
いうのが少しだけ残念だったが、仙台大会
グラムの時間割に一目瞭然だ。まぶしいほ
の締めくくり(
「夏の学校」には出なかった
どに多岐多様なタイトルからは、既存の学
ので)にこのシンポジウムが聴けてとても満
会には収まらぬ若手のうなりが聞こえる。だ
足して帰ることができた。
からこそ不満も後を絶たない ―― 聞きたい
「自分の研究と関係ない話」を聴くのが楽
シンポ、みんな重なってるよ、何これ!こ
しいと最初に書いたが、実はそうとも言い
れは仕方ない。魅力のシンポが多い証拠な
切れないという気もしている。私はいまト
のだから。
ランスポゾンを始めとした反復配列の進化
同時進行するシンポの全体は、もちろん
に興味をもっている。何を聴いていてもそ
評価できない。しかし、おしなべて著しい
れが頭の隅にあるので、たとえば昆虫と細
と思うのは、テーマの奥の深さ、いわゆる
菌の共生の話を聴けばトランスポゾンと宿
「レベル」の高さである。国際シンポジウム
主の共生について考えるし、エボデボの話
にひけをとらない。それだけに、今年も痛
を聴けばシスエレメントの進化と反復配列
感したのが「言語の壁」だった。たかが言葉、
の関係について、適応の話を聴けば宿主と
だから余計に悔しい。それは、わたしだけ
いう環境内でのトランスポゾンの適応につ
だろうか。ポスタも含め、3 年に 1 度くらい
いて、種分化の話を聴けば反復配列が種分
国際大会にしてもよいくらいだ。それが非
化に関わる可能性について、などなど、奔
現実的なのは、唯一言語のせいなのだ。今
放な考え(ほとんど妄想に近いともいえる)
年の実行委員長は、英語の発表や企画をず
が頭に浮かんでは沈んでいくのが楽しい。そ
いぶんと熱心に募集していた。が、応じた
れが実際に研究のアイディアに結びつくこ
のはほんのわずかにすぎない。その現実も
とは百に一度もないかもしれないが、そう
よく理解できる。言語のことだ、特効薬な
やって沈んでいった沈殿物が熟成して、い
どありはしない。若い人々が broken Engつか何かが生まれるかもしれない、生まれ
lish を気軽にtool にできる雰囲気を、毎年ほ
ると良いな、と思っている。そういうなん
んの少しずつ、会場に増やしてゆけたらと
だかよく分からない沈殿物をもっと積もら
思う。
せるために、これからも進化学会に参加し
毎年感じることだが、古生物学の領域は
ようと思う。
もっと充実できそうだ。進化学の大会なら、
■ 浅見崇比呂(信州大・理・生物)
そうあってほしい。当該領域の会員増強を、
会員はとうに 1000 人を超えている。これ
学会「action plan」に加えてはどうか。評議
ほどの急成長をだれが予測できただろう。7
員に一人くらい、古生物の専門家がいてほ
回目の会場には、国内の年会につきものの、
しい。そういう配慮の投票は、決して悪い
講座ごとの同窓会なる光景がまずみつから
ことではないだろう。古生物学会との合同
ない。これが何ともすがすがしくて、気持
大会はどうだろう。
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
閑散とした授賞式と受賞講演。これは毎
年のことで、歴然の原因がプログラムにあ
る。初日の冒頭にあるからで、関係者ばか
りの集会になるのは当然の成り行きだろう。
多くの学会で、授賞式・受賞講演・総会は、
懇親会の直前にある。これは、慣習(系統的
制約)ではなく収斂にちがいない。採用して
みてはどうだろう。
閑散とは正反対の問題が、ポスタ会場に
著しい。これも毎年のことだが、ポスタの
時間帯はなぜこんなに短いのだろう。プロ
グラムを見れば、時間を増やすのが難しい
のがよくわかる。毎年の実行委員会がシン
ポの数を競う気持ちもよくわかる。シンポ
が減れば、プログラムが派手にならず、集
客力も落ちるかもしれない。実行委員会に
とってこれは恐怖だ。だが、シンポが減れ
ば、ポスタ時間が増える。総じて、議論の
自由度が高いポスタ発表の時間は、もう少
し増やしてよいのではないか。会場の過密
も毎年極端だ。招待講演者の外国人 3 人は、
入口で立ち話ばかり、ポスタ方面には進ま
なかった。あれは言語のせいだろうか。過
密人口は、ポスタの間隔をもう少し広げる
だけで大きく改善される。もしポスタ発表
の機能を生かすなら、追加の部屋に分散さ
せる準備が必要であることに、いま気がつ
いた。
進化学夏の学校は、得るものが大きかっ
た。今回の手ごたえがどうあれ、この毎年
の企画は、長期的にみて、きわめて大きな
社会貢献を果たすにちがいない。大学教員
は、受講者としては想定されてはいない。
だが、もし今後もこの企画がつづくなら、
わたしはむしろ、大学の教員に受講をすす
めたい。自分が講義に使いたい情報を、今
回は3 人の講師が時間をかけて秀逸に整理整
頓してくれる。それをなんと「無料で」拝聴
できるのだ。こんなうれしいことがあろう
か。各講義とも、情報量が非常に大きいた
め、
「学校の授業」にしては、早口にすぎる
場面が多かった。質疑がほとんどなかった
一因はそこにあるかもしれない。だが、プ
リントずみの投影資料を持ち帰れるのだか
ら、進行の速さの問題は大きなものとは思
えない。全国の会場をまわるのだから、た
43
とえ授業科目が同じでも、今後の継続には
非常に大きな意義があるはずだ。
河田委員長をはじめ実行委員の皆様、大
変におつかれさまでした。横山潤さんと大
学院生のみなさんは、長期にわたり午前 2 時
をすぎる毎日だったそうです。誠にご苦労
さまでした。
■ 田辺秀之(総研大・先導研・生命体)
私は2002 年の東京(後楽園)大会以来、毎
年参加させてもらってきましたが、進化学
会のよきスタイルとして、全体的にリベラ
ルな雰囲気があり、活発に議論ができる会
場の空気が挙げられます。これは一言でい
うと、学会創設に携わった方々の多大な努
力はもちろんのこと、大学院生、ポスドク
を中心とした若手が多く参加している点、研
究対象とする生物種や手法、分野の垣根を
なくして、学際的なワークショップ、シン
ポジウムが盛りだくさんであること、につ
きるのではないでしょうか。このよき伝統
は今年も感じられ、今後も維持していただ
ければと思います。その半面、6 ∼ 7 会場が
並行して進行するために、聞きたい演題が
限られてしまう、ポスターも発表者同士は
お互いに話しを聞けない、などの弊害が生
じてきているのも事実と思います。これら
の解決策として、1)会場は 4 ∼ 5 会場に絞
る、2)ポスターは 3 日間連続で貼り続けら
れる広い部屋を確保し、発表の時間差を設
ける、の 2 点を提案したいと思います。1)
については、ワークショップが細分化され
すぎる傾向があるので、会場と時間割りか
ら予め最大数を決めて企画する、などの工
夫が必要と思います。オーガナイザー(プロ
グラム委員会)の手腕にかかってくると思い
ますが、どの企画も甲乙付け難いのは事実
なので、この際、よりシニアの責任者から
企画されたワークショップほど思い切って
ポスター発表に回っていただき、比較的若
手主催のワークショップを優先して採用す
る方向で絞っていただくと、ポスター会場
もシニアの演者でにぎわうことになるとい
う2 次的な新趣向もあってよいのではないか
と、ふと思ったりしました。また、以前行
われていた「ベストポスター賞」を復活させ
44
て欲しいと思います。審査員は大変でしょ
うが、ポスターを作る者の意欲をかきたて、
プレゼンへの励みになり、学会全体を盛り
上げていくことは必至です。
今大会では私自身は、3 日目のワークショ
ップ「2A4 ゲノムのダイナミックス・維持・
進化(2)
」にて、
「染色体核内配置からみた
腫瘍細胞ゲノムのダイナミクス」という演題
で公募で発表する機会をいただきました。こ
れは、
「ゲノムを安定に維持する機構を多面
的に明らかにし、進化に及ぼすパワーを考
える。1 番目は、自己 DNA 非自己 DNA の認
識をもとに、ゲノム再編成を考える。2 番目
は塩基レベル、染色体レベルでのゲノムの
安定性維持機構を、ゲノムの修復とその破
綻によるガン細胞の進化について総括する」
という非常に斬新な視点からの山本和生先
生、小林一三先生により企画されたワーク
ショップでした。進化学は、生物進化や種
分化を基調とし、ガン細胞の進展について
は「進化」という見方をしない、というある
種の不文律のようなものが一般的にあるか
と思いますが、正直なところ、まさか進化
学会で「ガン細胞」の話しをする機会をいた
だけるとは思ってもみなかったです(つま
り、ここでも進化学会では「ガン」も OK と
いう自由な雰囲気が生きているということ
です)
。スピーカーも多彩で興味深いトピッ
クスを拝聴することができました。
以上、今後の進化学会のますますの発展
を祈念し、来年以降、どのような展開が見
られるか愉しみにしています。
■ 大舘智氏(北大・低温研)
私は本学会の設立発起人の一人とはなっ
ていますが、毎回大会に参加しているわけ
ではなくこの東北大学での大会が 3 度目で
す。仙台への訪問は 02 年に生態学会で訪れ
て以来 2 回目です。私は 8 月 26 日の受賞講
演から参加し、8 月 29 日の朝に帰りました。
今回は自分自身の発表はなく、気楽な参加
でした。できるなら夏の学校にも出席した
かったのですが、いろいろな所用があり今
回も出席できませんでした。
私は哺乳類を主な研究対象とした生態学
を専門としていますが、哺乳類学会への参
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
加の回数は少ないです。一方で生態学会は
毎年参加しています。哺乳類学会のような
自分のフィールドそのものの集まりでは話
は通じやすいのですが、なかなか人との会
話から自分の研究への新たなヒントを得る
という機会が少なくなりがちです。この点、
生態学会は、対象も植物や無脊椎動物、微
生物など別の生物を扱っている人や数理生
態、景観生態、保全生態学などいろいろな
分野の研究者が集まるので、得るものが多
いです。そしてこの進化学会のように進化
に関してなら「なんでもあり」の学会ではさ
らに自分の分野外の人の話を聞けて、自分
の凝り固まった頭に新鮮な息吹を与えてく
れます。正直言うと、このごろは学会に参
加しても、自分の発表か特に聞きたい人の
発表、集会に出席する以外はさぼって付近
の観光に行きがちでした(一応、やるべきこ
とはしているので公費の濫用ではありませ
んので念のため!)
。しかし、今回の進化学
会では、刺激的なタイトルの発表が多々あ
り、最初から最後まできちんと参加しまし
た。とても観光している暇などなかったで
す(仙台は有名な観光地がないのも幸いしま
した?)
。
個人的には言語の起源と進化、行動進化
の遺伝子機構などが、まったくの専門外で
興味深かったです。また、ポスターでも非
生物の進化など、自分ではあまり関与しな
いような発表を目指して聞いていました。し
かしポスターの場合はその場でいかように
も質問できるのですが、オーラルではどん
どん話が進んでいくので、話についていけ
ないことが多かったです。
今後の進化学会の方向として、このよう
に広範囲の分野のシンポジウム、ワークシ
ョップ、企画など中心に組み立てていくの
は、参加を促す方法として正解だとおもい
ます。しかし、参加者も多くなり扱う分野
が広くなると、会員同士の意思疎通がおろ
そかになる恐れがあります。私の理解では
学会の設立当時では、異分野の人にも分か
るような発表をすることが、暗黙のあるい
は明瞭な了解ごととしてあったように思い
ます。しかし、今回は必ずしもそれがうま
く機能していないような印象を受けました。
進化学会の規模が大きくなることは、社会
への啓蒙、教育活動などの貢献を考えた時、
メリットが大きいですが、学会としてのま
とまりを考えた場合、ともすれば会員同士
のコミュニケーションがしにくくなると言う
デメリットもあります。いきなり、その分
野の最先端の論議を専門タームやジャーゴ
ンを使ってされると、異分野からの聴衆の
死亡率があがります。専門的論争はそれぞ
れの専門の学会でやればすむことで、進化
学会では、オーディエンスが専門外である
ことも念頭にいれて、それでいて最先端の
面白い出来事を伝えることが必要です。大
会の実行委員会も各集会の責任者や発表者
にこのような教育的指導を徹底すべきだと
思います。またこれからの学会としても「進
化」をキーワードとして様々な分野の研究者
を積極的に参加してもらう(絡めとる?)こ
とが、学会発展の条件の一つだと思います。
大会最終日では偶然バスを待ち合わせて
いた、三島の近隣におられるNS 師、京のオ
サ(長?)TS 氏、つくばの NM オーナーな
ど、
「濃∼い」面々と飲みにいきました。こ
んなメンバーが同席することなど進化学会
以外にはあり得ません。これも進化学会の
メリットの一つです。
最後にこのような難しい大会を準備して
いただいた東北大学の河田雅圭さんをはじ
めとする方々に、心から感謝いたします。
■ 時田恵一郎(阪大・サイバー)
今回が参加 2 度目の新参者ですが、境界
領域に棲息する者からのざっぱくな感想を
書かせていただきます。
オーラルセッションがすべて参加者の企
画によるという運営方針は、情報の発信を
重視し、よりアクティブな学会を目指す姿
勢の表れでもあり、好感度大だと思います。
ただし、1 セッション 2 時間は長過ぎると思
います。1 時間半にすれば昼食や休憩の時間
を十分に取ることができて、参加者の集中
も一日保たれるのではないでしょうか。
また、研究人口の少ない萌芽的なテーマ
でも口頭発表できるように、方法(実証、理
論)と対象(動物、植物)などで分けた一般
講演トラックがあるとよいです。その意味
45
ではポスターも有効なので、ポスター発表
をもっとじっくり聞けるようにしてもらえる
とうれしいです。シンポジウムは午前 2 つ、
午後 1 つで 3 時くらいまでにして、午後 4 時
以降 7 時くらいまでをポスターに割り当てて
もよいと思います(ビール販売などがあると
なお良し)
。
500 人を超える参加者数という規模になっ
ても、全体の懇親会があるというのは素晴
らしいことだと思います。個人的にはこの
ような「夜の部」における新しい出会いと対
話がとても重要に感じられます。セッショ
ンでの交流以上に、意図しない相互作用の
効果が大きいのです。
全体を通じて、多岐にわたるシンポジウ
ムには大いに刺激を受けました。来年には
自分もシンポジウムを提案できたらと思っ
ています。一点だけ残念な点を挙げるとす
れば、不適切な発言を繰り返しては、討論
の時間を浪費する非常識な参加者がいたこ
とです。何らかの運営側からの対処が望ま
れます。
ところで、この印象記ですが、参加予定
者に会期前にあらかじめ依頼しておくと、よ
り熱心に聴講してもらえてよいのではない
でしょうか。
■ 田上陽介(静岡農試・病虫部)
これまでの大会もほとんど参加しており、
そういった意味ではすでになじみが深く非
常に愛着の強い進化学会に今年も参加しま
した。現在、静岡県農業試験場で研究を続
けていますが、研究内容は直接的にはおよ
そ進化とは関わりがありません。しかし、
過去に何度も参加している経験から、特に
新たな研究テーマや斬新な研究方法を見つ
けるという点において重要な学会であると
認識しています。今大会においても大会中
には非常に有益な情報をいくつか得られま
した。また、情報交換によって普段の研究
生活では偏ってしまいやすい研究の視点を
広げることで、現在の研究を見つめ直すこ
とができ、やはり進化学会の有用性を再認
識することができました。
さて、東北大学で行われた今大会ですが、
大会内容については報告記に書かれている
46
と思いますので、ここでは主に今後への要望
について書かせていただきたいと思います。
進化というキーワードをもとにいろいろな
分野の研究発表を聞けるという面が進化学
会の大きな魅力です。今回のシンポジウム
の中にはこれまで進化的な見方をされていな
い研究にスポットライトを当て、進化とい
う視点から解析をされた発表が多く見られ
たように感じました。そのような発表を聞く
と、進化という視点では捉えていない現在
私の行っている研究が実は進化とどう関わ
っているのかについて思いを馳せることがで
き、とても新鮮で興味深かったです。
例年のことではありますがポスター会場
の狭さはやはり気になります。ポスター発
表はさまざまな分野の発表がありとても興
味深く、基礎的な知識のない発表も直接聞
くことができるため有益な場です。しかし、
2 時間という時間は長すぎます。これは時間
が余るという意味ではなく(むしろ 70 以上
のポスターから興味のある 10 程度のポスタ
ーの話を聞こうとすれば時間は足りません)
、
狭い会場内で酸欠気味になりつつ2 時間議論
を行うのはつらいという意味です。できれ
ばポスター発表の会場はポスターの数では
なく、参加者の数をもとに選んでいただけ
ればと思います。
大会内容とは直接かかわりはありません
が、今回の大会では展示会場がありません
でした(気づかなかった?)
。進化関連の書
籍が一堂に並べられ、普段の生活では出合
える機会のない魅力的な書籍を購入できる
ことを期待していたため、その点が残念で
した。次回は是非展示会場の復活を希望し
ます。また、ひそかにランチタイムセミナ
ーの復活も期待しています。
最後になりますが、本大会では河田雅圭
大会委員長並びに大会実行委員の方々には
大変お世話になりました。この場を借りて
お礼申し上げます。
■ 高見英人(海洋研究開発機構)
今回、企画シンポジウム「環境微生物ゲノ
ムの多様性と進化」の会員外招待講演者とし
て、初めて日本進化学会に参加しました。
と同時に仙台も初めてだったので、初めて
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
づくしだったわけです。日本進化学会は、
私の共同研究者にも会員の方が何人もいら
っしゃいますし、実際大会のポスターを見
るチャンスがあったのですが、どのようなセ
ッションがあるのかについては、ほとんど知
らなかったのが実情でした。私が参加する
企画シンポジウムが初日の朝一番だったこ
ともあって、少し早めに会場に行って受付
を待っていましたが、ちょっと手際が悪く
てばたばたしていたように思います。良く
言えば手作りでアットホームな学会だなー
と言う印象でもありましたが、私のような
初めての参加者にはちょっと戸惑うところ
もあったように思います。
企画シンポジウムでは、朝一番にもかか
わらず沢山の方々に来ていただき、質疑応
答も活発に行われていたので、参加者の方々
の関心の高さにほっとしたというか、なか
なか楽しい時間を過ごすことができました。
また、私は微生物が専門ですが、微生物以
外のセッションでも面白そうなセッション
が沢山あり、なかなか勉強になりました。
ただ、今回はあまり色々なセッションを回
る時間が取れなかったのと、国際シンポジ
ウムで講演された Michael Tranvisano 博士
は、私が Michigan 州立大の PostDoc 時代に
同じプロジェクトに参加していた仲間の一
人だったのですが、彼とも話をする時間が
なくてちょっと残念でした。来年はゆっく
りセッションを回れる時間が作れたらと思
います。
■ 津田みどり(九大院・農)
大会に先んじて開催された授賞式と国際
シンポが印象深かった。授賞式については
アミノ酸やコドンを単位とした置換モデル
が新しく興味を引かれた。受賞者を事前に
大会のウェブサイトなどに公開できないも
のだろうかと思った。もし知っていれば会
場へ急ぐ私の足も加速したに違いない。少
し周囲に聞いたところやはり会場に着いて
から聞き知ったという答えだった。続いて
国際シンポの講演はどれも進化生態学的に
一般的で重要な問題を扱っていた。講演そ
のものも研究への情熱に満ちたもので、会
場の聴衆が釘付けになっているのをひしひ
しと感じた。特にハワイ諸島に生息するhappy face spider の生物地理的種分化について
は島形成・移動分散の速度より個々の島で
の種分化の方が速く、形態的には繰り返し
似たような生態型セットが生じることを明
快に示していて、質疑応答を含めて印象に
残った。地史軸上に種数を展開したときに、
マウイ島東部で豊富な種数は新種形成と絶
滅が平衡に達する前の overshooting 効果に
あたるという考察については、ハビタット
(生息地)の種類も豊富でその効果によるの
ではないかが気になった。島依存の異なる
遺伝様式によってどの島でも似た表現型が
発現するという現象も不思議だ。概観する
と、他の演者の数理モデルや実験室実験系
を用いた研究も「ハビタット」といった漠と
した「環境」の広さや異質性が生き物の生態
や進化を決定付けているが、個々の生物集
団特異的な進化の軌跡はユニークで予測し
がたい(不可能とは思わないが)というのが
古くて新しい発見だった。ポスター会場で
は門外漢の質問に答えてくださった演者や
聴衆のお蔭で勉強になった。最後に大会の
運営に奔走された河田さんをはじめ東北大
の皆さん、お疲れ様でした。台風の最中に
行った甲斐があったと、仙台を後にした。
■ 土松隆志(東大・総文・広域システム)
生き物たちはそれぞれとても「巧く」でき
ている、それが「適応」の定義であり、その
適応はとりもなおさず進化の賜物であると、
今までのいくつもの生物の証拠が裏付けて
います。そして、生き物たちがそれぞれと
ても「巧く」できるようになるのはなぜか、
どのようにしてか、その普遍的な「仕組み」
を知ることが適応進化学の目標です。
私は植物生態学から進化生物学の道に足
を踏み入れました。実際に植物を相手に生
態学的な調査から進化の物語を予測し検証
することを行っていくうち、果たして実際
の進化のプロセスは生態学者が想定するよ
うな理想的な理論モデルに従っているのだ
ろうか、単なるお話に過ぎない可能性もあ
ると、かなり思い悩むようになりました。
しかしそんな中で、実際の過去の自然淘
汰の履歴を辿ることができる可能性を持つ
47
ゲノム学・遺伝学、具体的にどういう突然
変異がどんな表現型、特に革新的形態の変
化をもたらすのかを知ることができる発生
学と、進化に関わる他分野のめざましい発
展を知りました。そして、これらの知見を
進化生態学が取り込んでいくことでより直
接的で深い適応進化の理解ができるように
なるかもしれない、という新たな可能性を
感じ、自分のこれからの研究を練っている
ところでした。
そういう問題意識を持っていた私にとっ
て、今回の進化学会における遺伝学者・高
橋亮さんによるシンポ「表現型進化を巡る多
角的な視座:遺伝進化、発生進化、生態進
化の視点から」は非常に興味をそそられまし
た。一歩高い位置から進化の様子を大枠で
記述する「遺伝学」を軸に、発生学者や生態
学者が表現型の進化について特にその理念
的なところを論じる、という企画でした。
その際、表現型を安定化させるような働き、
すなわち「カナリゼーション」をひとつのキ
ーワードに話が進み、非常に興味深かった
です。生態学畑の自分にとっては、倉谷滋
さんによる発生学の話は多少難しかったの
ですが、それでもカナリゼーションに対す
る発生学の基本の考え方の一端を知ること
ができたように思います。
(私事で恐縮です
が、新幹線の終電の関係で最後まで聞くこ
とができなかったのが非常に残念です。数
理生物学者の望月敦史さんがどんなコメン
トをよせられるのか、非常に楽しみにして
いたのですが!)
「生態」
「発生」
「遺伝」
「系統・分類」
「古
生物」
、それぞれの中だけで閉じた内容を扱
う研究集会は個々の学会でやればよいわけ
で、進化学会ではぜひこのような、それぞ
れの研究者が集うことで初めてできる、よ
り包括的な研究集会、特にそれぞれの理念・
理論、
「考え方」自体を深く考えるようなシ
ンポがより多くなってほしいと思います。ま
た進化学会は、若い院生が(も)中心となり
シンポの企画を担っている印象を強く受け
ます。
「こんなシンポがあればいいな」と思
うのなら自分で企画してしまえばよいし、そ
れがをできる学会が進化学会だと思ってい
ます。私自身、今後はそういう関わり方が
48
できればと考えています。
最後ですが、ポスター発表については、
来年度以降場所・時間ともにもう少し余裕
を確保していただけたらと思います。また、
大会実行委員の皆様、本当にお疲れ様でし
た。
■ 本郷紗希子(東大・院・総文)
前回の東京大会に続き、進化学会への参
加は 2 回目でした。
前回の進化学会では、分子から行動や言
語にわたるまで、もちろん研究対象も細菌
から哺乳類までといったミクロからマクロま
で、進化をキーワードに幅広く学べるよい
機会だなぁという印象を受けました。今回
もそのような観点からいろいろな刺激が受け
られるだろうと期待して参加しましたが、ず
ばり的中したなという感想を持ちました。
また、学生の私が言うのも大変恐縮です
が、他の学会に比べてとても活気があるな
というのが今回の進化学会から受けた私の
印象です。討論会での演者の研究内容に対
する熱弁もさることながら、ディスカッシ
ョンでは盛んに意見の交換が行われ、どの
部屋も熱気で満ちていました。その雰囲気
に圧倒され、自分もいつかこのような発表
ができたらなと思いました。
今回の大会では、私自身初めて「アブラム
シにおける翅多型の発生制御機構」というタ
イトルのもと、ポスター発表という形で発
表経験させていただきました。
あの熱気でむせかえるような混雑した会
場の中、同じようにアブラムシを扱ってい
る方から、全く異なった分野の方まで、予
想以上に多くの方々が耳を傾けて下さり、嬉
しかったです。聴きに来て下さった方々と
のやりとりで、短い時間で自分が伝えなく
てはならないことを的確に伝える難しさを
改めて知りました。また、同じような研究
をなさっている方からは良いアドバイスを、
異なる分野の方からはそれまで考えてもみ
なかったご質問をいただき、おかしなこと
ですが、自分の研究への理解がより深まっ
たように思えました。
ポスター発表では気になったこともあり
ました。自分の発表時間と重なってしまっ
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
たポスター発表は、その時間が終わると外
されてしまうので、聴きたかった発表が聴
けなかったのは非常に残念でした。また会
場が狭く、身動きをとるにも一苦労した覚
えがあるので、会場と発表者の人数との兼
ね合いもあるのでしょうが、もう少し広く
していただけると良いなと思いました。
どれもこれも新鮮でおもしろく、刺激的
で、私が参加した3 日間は文字通りあっとい
う間に過ぎていきました。進化学の最前線
を学び、多くの研究者の研究に対する情熱
に魅せられた進化学会。私はこの大会に来
年も参加し、多くのことを学びたいと今か
ら熱望しております。
■ 細川貴弘(産総研・生物機能工学)
進化学会への参加は 2003 年の福岡大会以
来の2 回目でした。ポスターとシンポジウム
の両方で発表したのですが、ともに皆様か
ら貴重な御意見とするどい御指摘をいただ
きとても充実したものになりました。研究
発表については、
「ポスター会場がとても狭
く、自分が発表するにも、他の人の発表を
聴くにも不自由を感じた」とだけ意見させて
いただき、以下では懇親会の感想を述べさ
せてもらいます。
会場が生協食堂ということで、始まる前
は出てくる料理に関してあまり期待してい
ませんでした。しかし実際は、焼きたての
牛タンをはじめ、ほとんどの料理がおいし
かったです。生協食堂を会場とした学会懇
親会の中では、質、量ともにかなり良い方
だったと思います。知り合いとの研究に関
する議論&くだらない話も盛り上がり、ほ
ぼ満足状態で帰りました(完全な満足状態に
なれなかったのは、この時点で翌日の発表
の準備がまだ終わっていなかったため)
。
ところで、懇親会中はあまり気にならな
かったのですが、後で気になったことがあ
ります(これは福岡大会の懇親会後にも思っ
たのですが)
。
「大会参加者数の割には懇親会参加者数
が少ないんじゃないか?」
私は進化学会の他に3 つの学会に所属して
おり、その年次大会の懇親会には7 年間ほぼ
毎年参加してきましたが、それらの学会に
49
ついては大会参加者数に対する懇親会参加
がるような工夫をしてもらえればと思いま
者数の割合(以下では懇親会参加率と呼ぶ)
す。
「どうせやるなら大勢で盛り上がった方
は 70 ∼ 80 %くらいだろうとなんとなく思っ
がええやん」という単純な理由で。
ていました。しかし進化学会での懇親会参
■ 大隅典子(東北大学大学院医学系研究科)
加率はこれよりもはっきりと低いと感じまし
サイエンスを進めるのに人と人の出会い
た。そこで今回良い機会だということで実
というのは大切だと思う。理化学研究所の
際の値を調べてみました。以下は講演要旨
岡ノ谷一夫さんの著書を読んで面白いなあ
集に載っている参加者名簿をもとに算出し
と思っていたら、今年の2 月にとある会議で
た値で、括弧内の数字は大会参加者数です。
お目にかかることができた。ますます面白
2005 年 進化学会(仙台)51 %(379)
いと思ってセミナーにお呼びしたら、逆に
2004 年 進化学会(東京)28 %(412)
「今度仙台で進化学会があるのですが、そこ
残念ながら 2003 年以前のものは調べるこ
のワークショップで話 してもらえません
とができなかったのですが、予想以上に低
か?」と言われた。私の専門は神経生物学、
い値で少し驚きました(2004 年大会は異常
とくに脳の発生発達について分子・細胞レベ
現象?)
。次に私がこの 2 年間で参加した他
ルで研究しているのだが、
「言語」にも「進
の学会について同様に調べてみると(2004 年
化」にも関わった経験はない。ただし、この
の動物行動学会に関しては大会後に事務局
どちらにも個人的にとても興味を持ってい
が発表した値)
、
たので、
「私で良ければ FOXP2 の話でもレ
2005 年 応用動物昆虫学会(町田)68 %(678)
2004 年 応用動物昆虫学会(京都)61 %(719)
ビューします」と引き受けてしまった。
2005 年 生態学会(大阪)55 %(1104)
さて、いよいよ大会第二日、8 月 27 日土
2004 年 生態学会(釧路)63 %(1060)
曜日の午前 8 時 50 分という(私にしては)早
2004 年 動物行動学会(福岡)69 %(285)
い時間から、2 枠ぶち抜きで午後 1 時までの
2003 年 動物行動学会(札幌)77 %(181)
長いワークショップが始まった。会場は東
であり、他の学会に比べて進化学会の懇親
北大学の川内キャンパス、普段はいわゆる
会参加率が低いのは事実のようです。もち
教養の授業で使われている講義室。受付は
ろん、これは私が所属している学会だけで
理学部や生命科学研究科の学生さん達。そ
比較したものなので、その他の学会で進化
ういえば最近、学会が商業化してきて、こ
学会よりも懇親会参加率が低い学会は存在
の手の「手弁当式」が少なくなった。久しぶ
するのかもしれませんが(分子生物学系、医
りの感覚に、自分が初めて学会発表したの
学系などの学会ではどうなのでしょうか?)
。
はウン年前の東大駒場だったなあ…などと
また、私がこれまで漠然と思っていた 70 ∼
回顧する。
「シンポジウム」と「ワークショ
80 %という値がやや過大評価だったという
ップ」はどこが違うのか、最近その差が薄れ
こともわかりました。
てきているように思ったが、この「言語の起
なぜ進化学会の懇親会参加率は低いので
源と進化」は本当に「ワークショップ」であ
しょう? 上記の大会のうち生協食堂で懇
った。発表の後、徹底的に議論し、発表者
親会が開かれたのは進化学会だけであり、他
だけでなく会場にいた人たちが皆、このテ
の学会ではホテルあるいはそれ以外が会場
ーマについて考え、何か新しいことを作り
だったので、会場の場所が懇親会参加率に
上げようとしている空気が講義室に満ちて
影響を与える要因の 1 つなのかもしれませ
いた。私が今大学生で、研究テーマを探し
ん。その他にも数多くの要因(開催都市や参
ていたら、言語を「理系」っぽく解き明かし
加者の研究分野など)が影響している可能性
たいと思っただろう。それが可能になりつ
がありますが、ここではこれ以上考察しな
つあることを感じた。
いことにします。しかし今後の進化学会の
その日の午後にも興味深いシンポジウム
大会運営関係者にはこの点はもう少し考え
があったのだが、先約の所用があって参加
ていただいて、懇親会参加率が少しでも上
できず、翌日、大会第三日の公募形式シン
50
ポジウム「意識の進化」を聴きに行った。こ
ちらは東大の池上高志さんが企画され、ク
オリアの茂木さんをはじめ「意識」について
一過言も二過言もある方達が講演されたが、
「進化」という点まではまだ十分議論されつ
くしていなかったように思う。ここでも話
をされた岡ノ谷さんは、
「自己意識の起源:
触媒仮説」を出しておられ、
「他者の<心>
を理解する」ことが先にあり、これに「ミラ
ーニューロン」によるマシナリーが触媒とし
て働くことによって自己意識が生まれる、と
主張されていた。今後さらに理論的裏付け
や傍証が必要だろうが、面白いアイディア
である。個人的には、最後の演者であった
石黒浩さんの「アンドロイドサイエンス」が
面白かった。人とロボットが共存するアイ
ザック・アシモフの小説の世界は、もうすぐ
そこなのかもしれない。
この他に、マルチメディア棟という新し
い建物で行われたポスター展示も見てきた
が、進化学会非会員から見た全体としての
一番の印象は、
「議論好き」の人たちが多い
ということだ。これは本来のサイエンスの
姿だと思うのだが、昨今はサイエンスがビ
ジネスになっていて、
「結果が出て、論文が
出ればそれでいいじゃない」的雰囲気がある
学会が多いが、進化学会はそうではない。
また、
「公募」シンポジウムとして他の研究
分野の人たちを取り込むことに成功してい
ることは素晴らしいと思う。最後に、今回
「言語の起源と進化」ワークショップに参加
したお陰で、北陸先端大の橋本敬さん他、
これまで全く存じ上げなかったり、お名前
だけでお会いしたことがなかった方々と知
り合うことができたことに感謝したい。学
会はまさに出会いの場であり、次のサイエ
ンスを考える機会である。
■ 黒木知美(宮城県・主婦)
ある日、2005 年 8 月 26 日から 29 日の間、
東北大学川内キャンパスで第 7 回日本進化学
会東北大会が開催されることを知った。早
速、進化学会のHP を拝見したところ、非常
に面白そうな話題から、進化にこんな切り
口の研究領域があるのかと思う話題まで、終
日多岐に渡る様々なセッションが行われる
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
ことを知り、非常に興味を持った。私は東
北大学のすぐ傍に住む主婦で、学会員では
ない。しかし、生物全体に絡む進化につい
て興味を持ち、学びたいと思うのは、専門
の研究者に限らないだろう。一般の者には、
学会賞受賞式や受賞記念講演、国際シンポ
ジウム、進化学・夏の学校が無料で公開され
ている旨を知り、私は一般にも広く門戸を
開いている進化学会の姿勢に感嘆し、自分
の不勉強も省みず、公開講座に喜んで参加
させて頂いた。
まず、国際シンポジウムでは適応放散と
種分化をテーマにした講演が、国内外の研
究者 5 名により行われた。千葉聡先生の「島
嶼巻き貝の適応放散」や Rosemary G. Gillespie 博士の「島嶼でのクモの適応放散」の講
演は、大陸移動とともに地球上の生物がど
のように多様性を獲得していったのかを探
るために、分子生物学手法によるアプロー
チのみならず、膨大なフィールドワークと
を融合させた緻密な研究で、非常に勉強に
なった。また、進化学・夏の学校では、矢原
徹一先生、河田雅圭先生、深津武馬先生が
講師となり、丸一日かけて進化学の基本概
念や様々な研究事例を学ぶことが出来て、有
意義な時間を過ごした。数理モデルの分野
や語彙に不慣れなところでは、理解が難し
い部分もあったが、学生に戻ったかのよう
な新鮮な気持ちで、学ぶ楽しさを味わった。
特に、
「内部共生と生物進化」の講義では、
様々なアプローチから何度も実験を積み重
ね、科学の一般性を探求していこうとする
研究者の姿に触れてとても感動した。一般
講演(ポスター)はちらりと覗いただけであっ
たが、ある菌類の専門家の研究から、分類
学的に認識しがたい隠蔽種も、DNA 配列解
析により分析し、多くの種を新たに分類す
ることが可能であるという研究内容を興味
深く伺った。私は一般参加であったが、多
くの刺激を頂き、自分なりに進化について
の理解を深めることが出来たように思う。こ
のような機会を与えて下さった本会の関係
者の方々には、心から御礼申し上げたい。
今後も、一般層に門戸を開き、幅広い層に
生物の魅力を与える姿勢をぜひ続けて頂き
たいと願っている。
51
2005 年度日本進化学会評議員会 議事録
日 時: 2005 年 8 月 26 日(金)11 : 00 ∼ 13 : 00
会 場:仙台国際センター 2 階 控え室
― 報告・承認事項 ―
1. 2004 年 9 月∼ 2005 年 8 月の業務報告
2004 年
10 月 20 日 学会ニュース Vol.5 No.2 発行
(特集:第 6 回大会報告)
12 月 10 日 第 6 回大会の黒字分(146 万円)を学会
本体に寄贈
12 月 6 日 公益信託進化学振興木村資生基金の
創立パーティー
12 月 20 日 学会ニュース Vol.5 No.3 発行
2005 年
1月
3月9日
厳佐会長の就任、新執行部の活動
三中信宏氏が事務幹事長代理に就任
(嶋田の入院にて)
6 月 10 日 日本進化学会賞の公告
6 月 20 日 学会ニュース Vol.6 No.1 発行
7 月 6 日 2004 年度会計監査(於 学会事務局「ク
バプロ」
)
7 月 20 日 公益信託進化学振興木村資生基金か
ら「木村賞」の公告
8 月 8 日 日本進化学会賞(木村賞)
、研究奨励
賞、教育啓蒙賞の選考委員会
8 月 26 日 第 7 回大会(仙台)開催
2. 2004 年決算報告
「2004 年度収支決算書」
(P.53 ∼ 54 表 1)のと
おり承認された。
3. 大会宣伝ポスターの郵送方法の整備完了
4. 木村賞、ならびに公益信託木村基金の新制度
について
5. 日本進化学会賞・木村賞、研究奨励賞、教育
啓蒙賞の報告
日本進化学会・賞選考委員会報告を参照(P. 3
∼ 4 コラム)
。
6. 次期評議員選挙の予定(今年 12 月末日までに
実施)
― 審議事項 ―
7. 木村賞の「細則」の一部改正案、採決
第 2 条【賞の種類】
[旧]第 1 項【学会賞】
進化学や関連する分野において、学術上非
常に重要な貢献をした者に、故木村資生博
士の当分野における世界的な業績を記念し
て、
「木村資生記念学術賞(木村賞と略称す
る)
」を授与する。
[新]第 1 項【学会賞】
進化学や関連する分野において、学会員か
非会員かを問わず学術上非常に重要な貢献
をした者に、日本進化学会賞(旧称:木村資
生記念学術賞)を授与する。この賞は、故木
村資生博士の当分野における世界的な業績
を記念して設立されたもので、受賞者には
木村メダルを授与する。
第 3 条【賞の内容】
[旧]第 1 項 木村賞は、賞状、メダル、副賞
からなる。
(副賞については、付則1 を参照。
)
[新]第 1 項 学会賞は、賞状と木村メダル
からなる。
(付則 2 を参照。
)
[旧]第 3 項 木村賞は原則として毎年 1 名、
研究奨励賞および教育啓蒙賞は毎年それぞ
れ若干名に授与する。
[新]第 3 項 学会賞は原則として毎年 1 名、
研究奨励賞および教育啓蒙賞は毎年それぞ
れ若干名に授与する。
付則
[旧]
(2)木村賞の副賞は、スズキ財団の厚
意により、
「スズキ副賞」として助成金が授
与される。木村賞受賞者が複数の場合は,助
成金は等分に分割されて授与される。
[新]
(2)公益信託進化学振興木村資生基金
との覚書にもとづき、日本進化学会賞受賞
者は木村賞受賞候補者となる。
2005 年 8 月 26 日の総会において、上記第 2 条
第 1 項、第 3 条第 1 項、同第 3 項、ならびに付則
(2)の変更は承認された。
8. 2005 年予算案
「2005 年度予算案」
(P.54 表 2)のとおり承認
された。
9. 科研費・成果公開促進費への対策
10. 会則の「名誉会員」の条文
【改正前】
第 16 条【名誉会員】
本会は名誉会員をおくことができる。名誉会員
は、本会や進化に関する研究分野において特に
52
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
功労のあった者を、評議員の推薦をもって総会
の議決により、決めることができる。
【改正後】
第 16 条【名誉会員】
本会は名誉会員をおくことができる。名誉会員
は、本会や進化に関する研究分野において特に
功労のあった者を、評議員の推薦により評議員
会の審議・承認を経て、総会の議決によって決
めることができる。
1. 名誉会員の資格は国籍・年齢・会員年数を問
わない。
2. 名誉会員の特典は、年会費の免除、大会参加
費の免除、学会発行の印刷物の配布をうける
ことができる。
3. 名誉会員の権利は、毎年の大会で発表でき、
選挙権・被選挙権ともに有する。
11. 高校生のポスター発表の奨励策について
浅見委員による他学会の現状が報告され、そ
れにもとづき、当学会でも 2006 年大会で実施す
ることにした。
12. 次期(2006 年)副会長の選挙
郷通子氏が次期副会長に当選された。
13. その他
2005 年度日本進化学会・総会議事録
日 時: 2005 年 8 月 26 日(金)18 : 00 ∼ 19 : 00
会 場:仙台国際センター 2 階大会議室〈橘〉
― 議 題 ―
1. 2004 年 9 月∼ 2005 年 8 月の業務報告
2004 年
10 月 20 日 学会ニュース Vol.5 No.2 発行
(特集:第 6 回大会報告)
12 月 10 日 第 6 回大会の黒字分(146 万円)を学会
本体に寄贈
12 月 6 日 公益信託進化学振興木村資生基金の
創立パーティー
12 月 20 日 学会ニュース Vol.5 No.3 発行
2005 年
1月
3月9日
厳佐会長の就任、新執行部の活動
三中信宏氏が事務幹事長代理に就任
(嶋田の入院にて)
6 月 10 日 日本進化学会賞の公告
6 月 20 日 学会ニュース Vol.6 No.1 発行
7 月 6 日 2004 年度会計監査(於 学会事務局「ク
バプロ」
)
7 月 20 日 公益信託進化学振興木村資生基金か
ら「木村賞」の公告
8 月 8 日 日本進化学会賞(木村賞)
、研究奨励
賞、教育啓蒙賞の選考委員会
8 月 26 日 第 7 回大会(仙台)開催
2. 2004 年決算報告
「2004 年度収支決算書」
(P.53 ∼ 54 表 1)のと
おり承認された。
3. 木村賞、ならびに公益信託木村基金の新制度
について
4. 日本進化学会賞・木村賞、研究奨励賞、教育
啓蒙賞の報告
日本進化学会・賞選考委員会報告を参照(P. 3
∼ 4 コラム)
。
5. 木村賞の「細則」の一部改正
第 2 条【賞の種類】
[旧]第 1 項【学会賞】
進化学や関連する分野において、学術上非
常に重要な貢献をした者に、故木村資生博
士の当分野における世界的な業績を記念し
て、
「木村資生記念学術賞(木村賞と略称す
る)
」を授与する。
[新]第 1 項【学会賞】
進化学や関連する分野において、学会員か
非会員かを問わず学術上非常に重要な貢献
をした者に、日本進化学会賞(旧称:木村資
生記念学術賞)を授与する。この賞は、故木
村資生博士の当分野における世界的な業績
を記念して設立されたもので、受賞者には
木村メダルを授与する。
第 3 条【賞の内容】
[旧]第 1 項 木村賞は、賞状、メダル、副賞
からなる。
(副賞については、付則1 を参照。
)
[新]第 1 項 学会賞は、賞状と木村メダル
からなる。
(付則 2 を参照。
)
[旧]第 3 項 木村賞は原則として毎年 1 名、
研究奨励賞および教育啓蒙賞は毎年それぞ
れ若干名に授与する。
[新]第 3 項 学会賞は原則として毎年 1 名、
研究奨励賞および教育啓蒙賞は毎年それぞ
れ若干名に授与する。
付則
[旧]
(2)木村賞の副賞は、スズキ財団の厚
意により、
「スズキ副賞」として助成金が授
与される。木村賞受賞者が複数の場合は、助
成金は等分に分割されて授与される。
[新]
(2)公益信託進化学振興木村資生基金
との覚書にもとづき、日本進化学会賞受賞
者は木村賞受賞候補者となる。
2005 年 8 月 26 日の総会において、上記第 2 条
第 1 項、第 3 条第 1 項、同第 3 項、ならびに付則
(2)の変更は承認された。
6. 2005 年予算案
「2005 年度予算案」
(P.54 表 2)のとおり承認
された。
53
本会は名誉会員をおくことができる。名誉会員
は、本会や進化に関する研究分野において特に
功労のあった者を、評議員の推薦をもって総会
の議決により、決めることができる。
【改正後】
第 16 条【名誉会員】
本会は名誉会員をおくことができる。名誉会員
は、本会や進化に関する研究分野において特に
功労のあった者を、会員の推薦により評議員会
の審議・承認を経て、総会の議決によって決め
ることができる。
1. 名誉会員の資格は国籍・年齢・会員年数を問
わない。
2. 名誉会員は一般会員と同等の権利を有する.
3. 名誉会員は年会費を免除される.
7. 会則の「名誉会員」の条文
【改正前】
第 16 条【名誉会員】
8. その他
日本進化学会 2004 年度収支決算(表 1)
【収入】
① 会費収入
(1)一般会費
(2)学生会費
(3)滞納分
(4)前受金
② 大会実行委員会より
③ 前年度繰越金
④ 利息
収入合計
2004 年度予算
4,226,500
1,890,000
486,000
1,850,500
2004 年度決算
3,685,265 引落手数料 155 名× 163 円含む
1,692,000 郵便:357 名、銀行:55 名、大会:21 名、引落:131 名
254,000 郵便:108 名、銀行:7 名、大会:8 名、引落:4 名
1,512,000 郵便:307 名、銀行:119 名、大会:22 名、引落:74 名
196,000 郵便:51 名、銀行:11 名、大会:4 名、引落:1 名
1,460,000 第 6 回東京大会
360,548
360,548 みずほ銀行解約 ¥65,173
2
4,587,048 5,499,815
【支出】
2004 年度予算 2004 年度決算
① ニュース作成・印刷料等
660,000
724,395 (220,000)×年 3 回
② ニュース送料
450,000
420,384 (150,000)×年 3 回
③ 業務委託費(前半期・後半期分)
728,400
828,400
(1)2004 年度前期業務委託費
364,200
(2)2004 年度後期業務委託費
464,200 会員数が 1,000 名を超えたため
④ 事務費
100,000
241,786
(1)日本進化学会 角 3 封筒
73,500 4,000 部
(2)学会賞用賞状書
22,050
(3)木村賞受賞者名入れ
4,000
(4)進化学会ゴム印代
1,333
(5)進化学会事務用品代
1,176
(6)SMBC へ書類送付
640
(7)SMBC 手数料
34,807 年 2 回
(8)会費引落案内 DM
75,470 80 円× 942 通、110 円× 1 通
(9)2004 年度通信等発送費
28,810
⑤ 会議費
100,000
7,875
(1)貸会議室料
7,875
⑥ 旅費、交通費
450,000
231,150
(1)巖佐先生選考委員旅費
48,130
(2)斎藤先生選考委員旅費
7,120
(3)木村克美先生 進化大会旅費
40,660
25,740
(4)木村賞パーティー旅費(石川統)
〃 (巖佐庸)
47,380
(5)
54
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
(6)
〃 (岡田典弘)
14,900
〃 (佐藤矩行)
15,740
(7)
〃 (嶋田正和)
15,740
(8)
15,740
〃 (宮田隆)
(9)
⑦ 人件費
0
0
⑧ 大会援助金
615,167
300,000
(1)第 5 回 福岡大会(未払い)
315,167
0
(2)第 6 回 東京大会
300,000
300,000
⑨ 2003 年度未払金支払
651,010
(1)2003 年度後期業務管理費
364,200
(2)2003 年度通信等発送費
18,010
(3)五條堀先生選挙費用返金
268,800
⑩ その他
91,800
(1)会費返金(四方哲也)
24,000
(2) 〃 (上田恵介)
9,070
(3)SMBC 預金口座振替依頼書
34,400
(4)日本分類学会へ分担金
10,000
(5)振込手数料
8,120
(6)口座徴収料金
210
次年度繰越金
2,009,015
支出合計
3,718,734 5,499,815
第
55
フロリダ州立大学
生物科学部門計算科学科
6回
(アメリカ合衆国 フロリダ州タラハシー)
井上 潤
(フロリダ州立大学/日本学術振興会海外特別研究員、ポスドク)
過剰払いのため
〃
3000 部
タラハシーは、アメリカ南部の雰囲気が味わ
計 25 件
計3件
える町です。フロリダと言えばマイアミのよう
な観光地を私は想像していましたが、ここでは
飾らない本当のアメリカの姿を見ることができ
ます。2005 年7 月1 日にタラハシーに到着してか
通帳帳残高
銀行(三井住友)
郵便局
2004 年 収入−支出= 0
2004 年 12 月 31 日現在
らの3 か月は、生活のセットアップに追われ、何
1,807,065
201,950
2,009,015
とかして研究する時間を保とうとする毎日でし
夏のタラハシーは、エアコンなしではかなり
つらいです。Sunshine state という名の通り、フ
日本進化学会 2005 年度予算案(表 2)
ロリダ州の気候は強い日差しと湿気が特徴で、
【収入】
① 会費収入
(1)一般会費
(2)学生会費
(3)滞納分
② 前年度繰越金
③ 利息
収入合計
2005 年度予算
3,824,600
2,143,800 回収率 9 割(2,382,000 × 0.9)
487,800 回収率 9 割(542,000 × 0.9)
1,193,000 回収率 5 割(2,386,000 × 0.5)
2,009,015
【支出】
① ニュース作成・印刷料等
② ニュース送料
③ 業務委託費(前半期・後半期分)
④ 事務費・通信費
(1)選挙関連印刷費
(2)選挙書類送料
(3)選挙事務経費
(4)その他
⑤ 会議費
⑥ 旅費、交通費
⑦ 謝金
⑧ 大会援助金
⑨ 2004 年度未払金支払
⑩ その他
⑪ 次年度繰越金
支出合計
2005 年度予算
440,000 (220,000)×年 2 回
300,000 (150,000)×年 2 回
928,400
400,000
200,000
100,000
25,000
75,000
10,000
450,000
50,000
300,000 第 7 回 東北大会
315,167 第 5 回 福岡大会(未払い)
2005 年 収入−支出= 0
た。
5,833,615
写真1 フロリダ州立大学。タラハシー唯一の高層ビル、
State Capital から
日中はサウナのようになる日もあります。サウ
ナ状態を作り出す要因の一つは、地下水路かも
富です。町の北部にある Lake Jackson は、皇居
知れません。町の中心部こそ小高い丘の上にあ
の 10 倍以上の広さにもかかわらず、数年前に一
りますが、タラハシー周辺は湿地で囲まれてい
夜にして干上がったことで知られています。地
ます。とくにWakulla springs 州立公園は、全長
元のダイバーが行った潜水調査によると、この
6km にもおよぶ地下水脈からなり、ジュゴンや
湖は地下で他の泉と通じており、水脈は最終的
アリゲーター、ガーパイクなどの野生動物が豊
に海に湧き出ていると考えられているようです。
2,640,048
5,833,615
図 フロリダ州とフロリダ州立大学周辺の地図。フロリダの面積は日本のほぼ 3 分の 1 で、タラハシーは屋久島とほ
ぼ同じ緯度に位置する。大学構内には巨大なスポーツ施設が点在する
56
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
タラハシーは、なるほどこれが車社会かと納
あることも幸いし、材料となる珍しい魚類を新
どの知り合いは、私が進化の研究のためにこの
得させられる町です。どこに行くにも車が必要
鮮なうちに収集できたので、私たちの研究グル
大学に来たことを疑問に思われることがありま
で、役所や銀行の手続きまでドライブスルーに
ープは世界でも例を見ない大規模データを用い
す。しかしフロリダ州立大学は、分子系統学の
なっているほどです。 人 口 は 24 万 人 ですが、
た系統解析を行うようになりました。私はその
メッカになりつつあります。系統解析のソフト
人々は町を取り巻くように住居を構えています。
波に乗せていただき、良き指導者に囲まれまし
ウェアとして有名な PAUP の作者として知られ
一方で学生 4 万人をかかえるフロリダ州立大学
た。研究生活のひと区切りとして、古代魚を中
るSwofford 先生を筆頭に、受入研究者のNaylor
は、町の中心付近にあります。そのせいか、タ
心とした下位条鰭類の系統解析と分岐年代推定
先生、ベイズ法の解析ソフトである MrBayes を
ラハシーは町の中心部でもわりと治安が良く、
の結果を、何とか論文にまとめることができた
開発した Ronquist 先生、よく論文で名前を見か
真っ暗になった後でもダウンタウンで学生が歩
のは幸運でした。
けるポスドクなどがグループのメンバーで、分
57
フロリダ州立大学では、大規模データの解析
子系統を学ぶものにとってはハイレベルな環境
これまで私は、必要なものは何でもそろう東
に必要な、新たな分子進化モデルの開発に取り
です。Swofford グループとも言うべき当研究室
京で、最新鋭の機器に囲まれて研究をしてきま
組みます。海外でもポスドクの研究資金は、2 ∼
を訪れる研究者も多く、とくにMacClade の作者
した。しかし今回は、留学初心者には少々手強
3 年で終わることが多いです。実験と解析、論
である Maddison 先生はよくいらっしゃるよう
い郊外の町を、新たなステップの場として選ぶ
文書きをようやく一通り体験した私は、2 年あま
で、PAUP とMacClade の互換性の良さが納得で
好きなアメリカの方には好評であったようです。
ことになりました。研究室選びに最善を尽くし
りで成果を出すには、実験からスタートするの
きます。
発表の後は、Naylor 先生がご自宅で私のために
たとはいえ、自分としても面白い展開になった
はリスクが高いと考えました。幸運なことに私
日本とは異なり、Swofford グループの先生方
パーティーを開いて下さるなど、身に余る歓迎
ものだと思います。
の在籍していた日本の研究グループでは、分子
は研究に携わることができる時間が多いように
を受けました。実は受入先を決めるまでに、先
どんなかたちにせよ、私はいずれ海外で学ん
分析を行う人であれば一度は扱ってみたいと考
思えます。ソフトウェアの開発にはコンピュー
生とメールで何度かやりとりさせていただいた
でみたいと思っていました。東大海洋研究所の
える大規模データを使っています。しかし急速
ターサイエンティストを雇って、アイデアをす
うえに、研究室を見学に訪れるなど、私として
大学院に入った後は漠然と海外行きを考えてい
にデータを蓄積してきたため分子進化モデルの
ぐに具体化しているようです。Swofford 先生は
は入念な準備をしていました。Naylor 先生はこ
ましたが、研究を進めていくうちに海洋研に入
開発が追いつかず、既存のモデルだけでは大規
妥協を許さない性格でいらっしゃるということ
の点なども考慮して、私の今後の研究に期待し
り浸るようになり、日本でも(あるいは日本だか
模データの解析に十分に対応しきれない場合が
で、いまだにベータバージョンである PAUP も、
て下さっているように思えます。私一人でどこ
らこそ)水準の高い研究ができる場合があること
あることがわかってきました。このため、分子
アミノ酸対応など、私が知る限り実はかなりの
まで太刀打ちできるのか不安な気持ちも大きい
を知りました。私の在籍していた研究グループ
進化と系統解析を専門としている研究者のもと
部分が完成されているように見えます。Ron-
ですが、分子系統の分野をリードする研究者の
では、1990 年代の終わりにミトコンドリアゲノ
で、ミトコンドリアゲノム解析専用の新たな分
quist 先生のMrBayes は、並列解析への対応を中
方々と、一緒に学ばせていただけるだけでも光
ム全長配列を迅速に決定する手法を独自に開発
子進化モデルを開発する必要が出てきたのです。
心に、隣の部屋で改良が進められています。私
栄なことだと考えています。
しました。この手法により、数年前では 1 種に
この時点で、サメ類などを材料として分子進化
以外のポスドク数人は、いわばそれぞれのソフ
海外の研究室選びは、日本での大学院選びと
つき3 ∼ 4 年かかったミトコンドリアゲノム全塩
の研究をなさっている Naylor 先生が、フロリダ
トウェアを世界で最も自由に扱えるユーザーと
よく似た経験でした。受入先となる研究室のア
基配列の決定に、わずか1 ∼ 2 週間の実験で済む
州立大学に異動なさったことを聞き、当地で分
いう感じで、マニュアルにないようなことまで
クティビティ、研究の種類、教官の人柄など、
ようになり、15,000 塩基を超えるDNA 配列デー
子進化モデルの研究をさせて頂くことになりま
廊下で教えてくれます。
留学入門書にあるような事項を考慮するのはも
タに基づく高次系統解析が可能になりました。
した。
いているのを見かけます。
Swofford グループの周辺では、頻繁にゼミが
写 真 4 Naylor 研 究 室 のメンバー。 左 から Vicente、
Clemens、Naylor 先生、筆者、Neil
ちろんですが、楽しく研究できるかどうかも大
実験の迅速化は、解析に用いる種数も飛躍的に
フロリダ州立大学は、フットボールなどスポ
行われます。グループは私が知っているだけで
事な要素です。とにかく海には行けるだろうと、
増加させました。日本は世界有数の魚消費国で
ーツが盛んなことで有名です。このため学外な
も教官 5 人を中心に 20 人以上で構成されていま
10 年前に私は海洋研究所の大学院を選びました。
すが、ゼミには他の学科の方も参加されます。
これからどこへゆくのか、研究活動について理
ゼミのほとんどはお茶部屋のような空きスペー
屈を並べてみた後で、フロリダという一見さわ
スで行われ、レジュメもなく、議論主体、自由
やかな風が吹いていそうな名前につられて、私
参加とくだけた雰囲気です。この半年のゼミで、
はタラハシーまで来てしまったように思えます。
祖先配列の推定に関する論文を重点的に扱って
いるのは、少し驚きでした。週に一回は大きな
講義室で学会発表のような講演があり、私もそ
こで研究紹介をしました。ミトコンドリアゲノ
ム解析によって、切れ味良く推定された古代魚
の時間軸付き系統樹は、とにかく大きなものが
写真 2 大学構内で最もにぎわうブックセンター周辺
写真 3 議論主体のセミナー
Inoue, J. G., Miya, M., Venkatesh, B., & Nishida, M.
The mitochondrial genome of Indonesian coelacanth
Latimeria menadoensis( Sarcopterygii: Coelacanthiformes)and divergence time estimation between the
two coelacanths. Gene 349: 227-235(2005).
58
“Society of Evolutionary Studies, Japan”News Vol. 6, No. 2
新 入 会 員
氏 名
津田 雅孝
田端 純
小林 括平
岡田 泰和
笹原 和俊
長濱 幸生
川原 玲香
千葉 聡
鍬田 龍星
徳田 誠
牧野 崇司
瀬戸 雅浩
岡島 泰久
深見 裕伸
岩崎 貴也
藤本 仰一
大田 由衣
松原由加里
石原 秀至
山本 哲史
美濃川拓哉
柴尾 晴信
提髪 玲子
鎌倉 強志
阿部 玄武
土松 隆志
竹内 信人
真田 幸代
笠木 聡
早川 敏之
奥山 雄大
井沼 崇
瀬古 夕介
劉 慶信
飯島 学
小沼 順二
松本 俊吉
川崎 廣吉
堀口 弘子
渡部 真也
森元 良太
高橋 美樹
新村 芳人
陰山 大輔
遠藤 真太郎
*)平成 17 年 5 月 20 日以降 10 月 30 日までの登録による
英字氏名
所 属
Tsuda Masataka
東北大学大学院生命科学研究科
Tabata Jun
(独)農業環境技術研究所
Kobayashi Kappei (財)岩手生物工学研究センター
Okada Yasukazu
北海道大学環境科学院生態遺伝学講座
Sasahara Kazutoshi 理化学研究所脳科学総合研究センター
高次脳機能発達研究グループ生物言語学研究チーム
Nagahama Yukio
東京大学アジア生物資源環境研究センター
Kawahara Ryouka
東京大学海洋研究所海洋生命科学部門
分子海洋科学分野
Chiba Satoshi
東北大学大学院生命科学研究科
Kuwata Ryusei
佐賀大学農学部線虫学教室
Tokuda Makoto
産業技術総合研究所生物機能工学研究部門
Makino T. Takashi 東北大学大学院生命科学研究科
Seto Masahiro
東大理地惑
Okajima Yasuhisa
名古屋大学
Fukami Hironobu
京都大学フィールド科学教育研究センター
瀬戸臨海実験所
Iwasaki Takaya
京都大学大学院理学研究科生物科学専攻
植物系統分類学分科
Fujimoto Kouichi
東京大学総合文化研究科
岡山大学大学院自然科学研究科進化生態学研究室
Ohta Yui
岡山大学大学院自然科学研究科昆虫生態学研究室
Matsubara Yukari
Ishihara Shuji
東京大学総合文化研究科金子研究室
Yamamoto Satoshi
京都大学大学院理学研究科生物学専攻
Minokawa Takuya
東北大学大学院生命科学研究科附属
浅虫海洋生物学研究センター
東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻
Shibao Harunobu
Sagegami Reiko
名古屋大学大学院生命農学研究科
Kamakura Tsuyoshi 東京都立大学理学部生物学科
Abe Gembu
東北大学院理学部生命科学研究科
生命機能科学専攻器官創製分野
Tsuchimatsu Takashi 東京大総合文化広域システム
Takeuchi Nobuto Utrecht University Theoretical Biology/
Bioinformatics Group
Sanada Sachiyo
岡山大学大学院環境学研究科進化生態学
Kasagi Satoshi
東京大学大学院新領域創成科学研究科
先端生命科学専攻
Hayakawa Toshiyuki 総合研究大学院大学葉山高等研究センター
Okuyama Yudai
京都大学大学院人間・環境学研究科
専門分野/研究対象
原核生物、遺伝
無脊椎動物、分子進化、遺伝、生態
植物、ウイルス、分子生物
脊椎動物、無脊椎動物、発生、形態、生態
理論、情報
その他、原生生物、系統・分類
脊椎動物、分子生物、分子進化
無脊椎動物、原核生物、系統・分類
無脊椎動物、系統・分類
無脊椎動物、植物、生態
無脊椎動物、古生物
脊椎動物、分子生物、系統・分類
無脊椎動物、分子進化、形態、
系統・分類
植物、系統・分類
理論、生物物理
無脊椎動物、生態
無脊椎動物、生態
理論、発生、形態、生物物理
無脊椎動物、系統・分類、生態
無脊椎動物、分子生物、発生
無脊椎動物、生態、その他、化学生態
無脊椎動物、分子進化、系統・分類
脊椎動物、分子進化
脊椎動物、発生
理論、その他、Prebiotic evolution
無脊椎動物、生態
脊椎動物、分子生物、分子進化
人類、脊椎動物、分子生物、分子進化
無脊椎動物、植物、分子進化、
系統・分類、遺伝、生態
Inuma Takashi
三重大学
菌類、系統・分類
Seko Yusuke
三重大学大学院生物資源学研究科
菌類、その他、生物地理
国立遺伝学研究所生命情報・ DDBJ 研究センター 無脊椎動物、分子生物、
Qing-Xin Liu
遺伝情報分析研究室
分子進化、発生、遺伝
九州大学理学府生物科学専攻生体高分子学研究室 無脊椎動物、分子生物
Iijima Manabu
東北大学大学院生命科学研究科
Konuma Junji
生態システム生命科学専攻マクロ生態分野 無脊椎動物、理論、生態、生物物理
Matsumoto Shunkichi 東海大学総合教育センター
理論、その他、進化論の哲学
Kawasaki Kohkichi 同志社大学文化情報学部
理論、情報
浜松医科大学医学部総合人間科学講座生物学部門 無脊椎動物、生態
Horiguchi Hiroko
Watanabe Masaya
広島大学大学院生物圏科学研究科
無脊椎動物、分子生物
Morimoto Ryota
理論、その他、科学哲学
Takahashi Miki
理化学研究所脳科学総合研究センター
人類、脊椎動物、分子生物、
生物言語研究チーム
遺伝、生態
脊椎動物、無脊椎動物、分子進化、情報
Niimura Yoshihito
東京医科歯科大学難治疾患研究所
Kageyama Daisuke 東京大学大学院総合文化研究科
無脊椎動物、分子進化、発生、遺伝、生態
Endo Shintaro
信州大学工学系研究科地球生物圏科学専攻 無脊椎動物、分子進化、生態
上田 昇平
Ueda Shouhei
矢野 航
Yano Wataru
高山 浩司
Takayama Koji
Axel G. Rossberg
大槻 朝
Ohtsuki Hajime
新田みゆき
河合 幹彦
金子 佳之
Nitta Miyuki
Kawai Mikihiko
Kaneko Yoshiyuki
千国 友子
鈴木 聡
Chikuni Tomoko
Suzuki Satoshi
細谷 理樹
北條 賢
信州大学大学院総合工学系研究科
山岳地域環境科学専攻
京都大学理学研究科動物学教室自然人類学研究室
東京大学大学院理学系研究科附属植物園
横浜国立大学環境情報研究院
東北大学大学院生命科学研究科
生態システム生命科学専攻
独立行政法人農業生物資源研究所
東京大学医学系研究科医科学研究所小林研究室
東京医科歯科大学大学院生命情報学
筑波大学生命環境科学研究科
京都大学大学院理学研究科生物科学専攻
動物系統学研究室
総合研究大学院大学生命科学研究科遺伝学専攻
Hosoya Masaki
Hojo K. Masaru
京都工芸繊維大学工芸科学研究科
機能科学専攻化学生態学研究室
Hosomichi Kazuyoshi 東海大学医学部基礎医学系分子生命科学
Obara Yoshiaki
東京農工大学農学部
59
無脊椎動物、植物、分子進化、
系統・分類、生態
人類、脊椎動物、形態、古生物
植物、系統・分類
理論、生態
無脊椎動物、分子進化、
系統・分類
植物、系統・分類
原核生物、遺伝、情報
脊椎動物、無脊椎動物、理論、
分子生物、分子進化、情報
植物、系統・分類
脊椎動物、形態、系統・分類
脊椎動物、発生、形態、遺伝
無脊椎動物、生態
人類、脊椎動物、分子生物、分子進化
人類、脊椎動物、脊椎動物、形態、
系統・分類、遺伝、生態、行動生物学
長井はるか
Nagai Haruka
東京工業大学生命理工学部生体機構コース 脊椎動物、分子進化
菌類、分子生物、分子進化、系統・分類
杉原 千紗
Sugihara Chisa
福山大学生命工学部生物工学科
坂口美亜子
Sakaguchi Miako
筑波大学生命環境科学研究科
原生生物、分子進化
山村 則男
Yamamura Norio
京都大学生態学研究センター
理論、遺伝、生態
脊椎動物、生態、その他、神経科学
吉田 重人
Yoshida Shigeto
千葉大学自然科学研究科
小林 知里
Kobayashi Chisato
京都大学大学院人間・環境学研究科
無脊椎動物、生態
板倉 学
Itakura Manabu
東北大学大学院生命科学研究科
原核生物、分子進化、遺伝、生態
横山 潤
Yokoyama Jun
東北大学大学院生命科学研究科
無脊椎動物、植物、
生態システム生命科学専攻
系統・分類、生態
人類、脊椎動物、無脊椎動物、分子進化
原 雄一郎
Hara Yuichiro
北海道大学大学院情報科学研究科
Leonardo de Oliveira Martins
東京大学農学生命科学研究科
ウイルス、理論、分子進化、遺伝
佐藤 幸恵
Sato Yukie
(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 無脊椎動物、生態
中央農業総合研究センター
九州大学理学府生物科学専攻生態科学研究室 植物、遺伝、生態
新田 梢
Nitta kozue
後藤 禎補
Goto Tadasuke
山形大学大学院理工学研究科
無脊椎動物、分子進化、遺伝
本郷紗希子
Hongo Sakiko
東大総合文化広域システム
無脊椎動物、発生、形態、生態
川原 善浩
Kawahara Yoshihiro 東京都立大学/
脊椎動物、無脊椎動物、菌類、
産総研生物情報解析研究センター
分子生物、分子進化
理学研究科生物科学専攻
大阪大学微生物研究所遺伝情報実験センター 人類、脊椎動物、無脊椎動物、植物、
後藤 直久
Goto Naohisa
菌類、原核生物、ウイルス、理論、
分子生物、分子進化、遺伝、情報
若山 典央
Wakayama Norio
東北大学生命科学研究科
無脊椎動物、古生物
近藤真理子
Kondo Mariko
東大院理生物科学
脊椎動物、分子生物、分子進化
無脊椎動物、分子進化、系統・分類、生態
三浦 収
Miura Osamu
東北大学生命科学研究科
佐藤 慶治
Sato Yoshiharu
産業技術総合研究所統合 DB チーム
人類、分子進化
中井 静子
Nakai Shizuko
東北大学大学院生命科学研究科
無脊椎動物、生態
佐藤 行人
Sato Yukuto
東京大学海洋研究所分子海洋科学分野
脊椎動物、分子進化
東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 理論、その他、人口、社会統計、
兼橋 正人
Kanehashi Masato
広域システム科学系
情報、その他、歴史
栗山 武夫
Kuriyama Takeo
東邦大学理学生物・地理生態学研究室
脊椎動物、発生、形態、生態
総合研究大学院大学先導科学研究科生命体科学専攻 人類、遺伝
金 慧琳
Kim Hielim
岩瀬 峰代
Iwase Mineyo
総合研究大学院大学
脊椎動物、分子進化
岡ノ谷一夫
Okanoya Kazuo
(独)理化学研究所脳科学総合研究センター 人類、脊椎動物、理論、
生物言語研究チーム
生態、情報
大内 和也
Ohuchi Kazuya
横浜市立大学大学院国際総合科学研究科 無脊椎動物、原核生物、
環境分子生物学研究室
分子生物、系統・分類
森 宙史
Mori Hiroshi
信州大学理学部生物科学科
無脊椎動物、生態
九州大学理学府生物科学専攻細胞機能学研究室 脊椎動物、遺伝
武田 深幸
Takeda Miyuki
石渡 啓介
Ishiwata Keisuke
大阪大学大学院理学研究科
無脊椎動物、分子進化
細道 一善
小原 嘉明
60
徐 泰健
Seo, Tae-Kun
井上 直樹
Inoue Naoki
古田 好美
Furuta Yoshimi
Amporn Wiwegweaw
松田 裕之
Matsuda Hiroyuki
小倉 淳
Ogura Atsushi
青木 大輔
杉 緑
山崎 孝平
後藤今日子
荒西 太士
中澤 淳
更科 功
木村 一貴
秋山 弘之
村上 元庸
原紺 勇一
服部 兼敏
柏倉 大将
重定南奈子
東京大学大学院農学生命科学研究科
東京理科大学理工学部応用生物科学科
東京大学海洋研究所分子海洋科学分野
信州大学総合工学系研究科生物・食料科学専攻
横浜国立大学環境情報研究院
東北大学
理論、分子進化
原核生物、情報
脊椎動物、分子生物、分子進化
無脊椎動物、進化生態学
理論、発生、生態
人類、脊椎動物、無脊椎動物、
分子生物、分子進化、発生、情報
大阪府立大学大学院生命環境科学研究科
植物、外来生物、分子進化、
Aoki Daisuke
応用生命科学専攻植物バイオサイエンス分野 系統・分類、遺伝
Sugi Midori
信州大学理学部生物科学科
Yamazaki Kouhei
東邦大学理学部生物学科
Goto Kyoko
信州大学理学部
無脊椎動物
脊椎動物、無脊椎動物、植物、原核生物、
Aranishi Futoshi
宮崎大学農学部生物環境科学科
分子生物、分子進化、系統・分類、遺伝、生態
Nakazawa Atsushi
東亜大学医療工学部
原核生物、理論、分子生物、分子進化
Sarashina Isao
筑波大学生命環境科学研究科
無脊椎動物、分子生物、古生物
Kimura Kazutaka
東北大学理学部
無脊椎動物、生態
Akiyama Hiroyuki
兵庫県立人と自然の博物館
植物、系統・分類
人類、脊椎動物、理論、形態、生物物理
Murakami Mototsune 村上整形外科クリニック
Harakon Yuichi
広島市立基町高等学校
生物教育、生物教育
Hattori Kanetoshi
神戸市看護大学
人類、進化心理
Kashiwakura Daisuke 東京薬科大学
理論、生物物理
Shigesada Nanako
同志社大学文化情報学部
進化、遺伝、免疫進化学
病態解析学講座分子病理学分野分子
会員所属変更*)平成 17 年 5 月 20 日以降 10 月 30 日までの登録による
氏 名
今泉 洋子
加藤 雅啓
齋藤 茂
福田 達哉
星山 大介
野村 尚史
岩木 信喜
桑原 隆治
金子 美華
西田 宏記
今藤 夏子
滋野 修一
茂木 高志
川越 哲博
河合 孝尚
中山 功一
西森 敬
熊野 了州
小島 健司
石黒 潔
稲垣 祐司
江副日出夫
加藤由実子
所 属
兵庫大学健康科学部
国立科学博物館植物研究部
岩手大学工学部福祉システム工学科新貝研究室
東北大学大学院生命科学研究科
京都大学化学研究所バイオインフォマティクスセンターゲノムインフォマティクス領域(藤研究室)
京都大学大学院人間環境学研究科相関環境学専攻瀬戸口研究室
九州女子大学人間科学部人間発達学科
(独)水産総合研究センター
東京都神経科学総合研究所分子発生生物学部門
大阪大学理学研究科生物科学専攻
(独)国立環境研究所生物多様性研究プロジェクト侵入生物研究チーム
University of Chicago Department of Neurobiology, Pharmacology, and Physiology
東京都立大学大学院理学研究科生物科学専攻
神戸大学理学部生物学科工藤研究室
静岡大学工学部システム工学科吉村研究室
ATR ネットワーク情報学研究所
動物衛生研究所疫学研究所
沖縄県ミバエ対策事業所
京都大学化学研究所バイオインフォマティクスセンター新領域創成科学研究科先端生命
農林水産省農林水産技術会議事務局筑波事務所
筑波大学計算科学研究センター
大阪府立大学理学部生物科学科
県立広島大学
退 会
岡田 真実、山口 武志、宮崎健太郎、海老名崇生、田中順一郎、深谷 幸子、中田 章史、長谷川英祐、
森永 弥生、野村 紀通、宝来 聡、竹中 修、大塚 愛子、田村 一利、川畑俊一郎、黒田 修司、
二井 一樹
日本進化学会ニュース Vol. 6, No. 2
発 行: 2005 年 11 月 15 日発行
編 集:日本進化学会ニュース編集委員会
印刷所:福々印刷株式会社
発行所:株式会社クバプロ
〒 102-0072
千代田区飯田橋 3-11-15 UEDA ビル 6F
TEL:03-3238-1689
FAX:03-3238-1837
http://www.kuba.co.jp/ e-mail:[email protected]
日本進化学会入会申込書
<年月日(西暦)> 年 月 日
№ ふりがな
名 前
ローマ字
所 属
所属先住所または連絡先住所
〒
TEL
FAX
e-mail
以下から選ぶかまたはご記入下さい(複数記入可)
専門分野
人類、脊椎動物、無脊椎動物、植物、菌類、原核生物、ウイルス、理論、
その他(
)
研究分野
分子生物、分子進化、発生、形態、系統・分類、遺伝、生態、生物物理、情報、
その他(
)
以下から選んで下さい
一般会員 ・ 学生会員
注)研究生や研修生などの方々の場合、有給ならば一般会員、無給ならば学生会員を選んで下さい。学生会
員は必要に応じて身分の証明を求められる場合があります。
申込方法/上記の進化学会入会申込書をご記入の上、下記の申込先へ郵便・ FAX ・ e-mail でお送り下さい。
申 込 先/日本進化学会事務局 〒 102-0072 千代田区飯田橋 3-11-15 UEDA ビル 6F(株)クバプロ内
● TEL:03-3238-1689 ● FAX:03-3238-1837 ● http://www.kuba.co.jp/shinka/● e-mail:[email protected]
<年会費の納入方法>
【年会費 】
一般会員 3,000 円 / 学生会員 2,000 円
賛助会員 30,000 円(一口につき)
【納入方法】
①銀行振込みをご利用の場合
(銀 行 名)三井住友銀行 (支 店 名)飯田橋支店
(口座種類)普通預金口座 (口座番号)773437
(口座名義)日本進化学会事務局 代表 株式会社 クバプロ
②郵便振込みをご利用の場合
(口座番号)00170-1-170959
(口座名義)日本進化学会事務局