(57)【要約】 【課題】アルカリpH範囲で安定で、しかもアルカリ - jamstec

JP 2006-87401 A 2006.4.6
(57)【 要 約 】
【課題】アルカリpH範囲で安定で、しかもアルカリpH領域に最適pHを有する新規な
アルカリ性マンナナーゼ、その遺伝子、製造方法並びにアルカリ性マンナナーゼの各種用
途を提供する。
【解決手段】下記の理化学的性質を有するアルカリ性マンナナーゼ:
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加
水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する,
( ロ ) 最 適 p H : pH 8∼ 9.5の 範 囲 に 最 適 p H を 有 す る 、
( ハ ) p H 安 定 性 : 40℃ 、 pH 7∼ 11、 30分 の 処 理 条 件 で 70% 以 上 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 を 有
する、
10
( ニ ) 最 適 温 度 : 60∼ 70℃ の 範 囲 に 最 適 温 度 を 有 す る 、
( ホ ) 温 度 安 定 性 : pH 7.5、 60℃ 及 び 30分 間 の 処 理 条 件 、 ま た は pH 7.5、 55℃ 及 び 2時 間
の 処 理 条 件 で 50% 以 上 の 活 性 を 有 す る 、
( ヘ ) 失 活 : 1 mMの N -ブ ロ モ ス ク シ ニ ミ ド の 存 在 下 、 pH 7、 40℃ で 30分 間 処 理 す る こ と に
よりマンナナーゼ活性が失活する、
( ト ) 金 属 阻 害 : Fe
3+
、 Fe
2+
、 Pb
2+
、 Zn
2+
( チ ) SDS-PAGEに よ る 分 子 量 : 約 50 kDa。
【選択図】 なし
、 Hg
2+
、 Cd
2+
、 及 び Sn
2+
により阻害を受ける、
(2)
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の理化学的性質を有するアルカリ性マンナナーゼ:
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加
水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する,
( ロ ) 最 適 p H : pH 8∼ 9.5の 範 囲 に 最 適 p H を 有 す る 、
( ハ ) p H 安 定 性 : 40℃ 、 pH 7∼ 11、 30分 の 処 理 条 件 で 70% 以 上 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 を 有
する、
( ニ ) 最 適 温 度 : 60∼ 70℃ の 範 囲 に 最 適 温 度 を 有 す る 、
( ホ ) 温 度 安 定 性 : pH 7.5、 60℃ 及 び 30分 間 の 処 理 条 件 、 ま た は pH 7.5、 55℃ 及 び 2時 間
10
の 処 理 条 件 で 50% 以 上 の 活 性 を 有 す る 、
( ヘ ) 失 活 : 1 mMの N-ブ ロ モ ス ク シ ニ ミ ド の 存 在 下 、 pH 7、 40℃ で 30分 間 処 理 す る こ と に
よりマンナナーゼ活性が失活する、
( ト ) 金 属 阻 害 : Fe
3 +
、 Fe
2 +
、 Pb
2 +
、 Zn
2 +
、 Hg
2 +
、 Cd
2 +
、 及 び Sn
2 +
により阻害を受ける、
( チ ) SDS-PAGEに よ る 分 子 量 : 約 50 kDa。
【請求項2】
下記(a)または(b)に記載するタンパク質からなるアルカリ性マンナナーゼ:
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列を有するタンパク質、
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置
換または付加してなるアミノ酸配列を有し、下記に掲げる少なくとも1つの理化学的特性
20
を有するタンパク質
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加
水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する,
( ロ ) 最 適 p H : pH 8∼ 9.5の 範 囲 に 最 適 p H を 有 す る 、
( ハ ) p H 安 定 性 : 40℃ 、 pH 7∼ 11、 30分 の 処 理 条 件 で 70% 以 上 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 を 有
する、
( ニ ) 最 適 温 度 : 60∼ 70℃ の 範 囲 に 最 適 温 度 を 有 す る 、
( ホ ) 温 度 安 定 性 : pH 7.5、 60℃ 及 び 30分 間 の 処 理 条 件 、 ま た は pH 7.5、 55℃ 及 び 2時 間
の 処 理 条 件 で 50% 以 上 の 活 性 を 有 す る 、
( ヘ ) 失 活 : 1 mMの N-ブ ロ モ ス ク シ ニ ミ ド の 存 在 下 、 pH 7、 40℃ で 30分 間 処 理 す る こ と に
30
よりマンナナーゼ活性が失活する、
( ト ) 金 属 阻 害 : Fe
3 +
、 Fe
2 +
、 Pb
2 +
、 Zn
2 +
、 Hg
2 +
、 Cd
2 +
、 及 び Sn
2 +
により阻害を受ける。
【請求項3】
(b)に示すタンパク質が、配列番号1に示すアミノ酸配列と96%以上同一のアミノ酸
配列を有するものである、請求項2に記載するアルカリ性マンナナーゼ。
【請求項4】
下記(c)または(d)に記載するDNAによってコードされるタンパク質からなるアル
カリ性マンナナーゼ:
(c)配列番号2に示す塩基配列からなるDNA、
(d)配列番号2に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジ
40
ェントな条件でハイブリダイズし、下記に掲げる少なくとも1つの理化学的特性を有する
タンパク質をコードするDNA
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加
水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する,
( ロ ) 最 適 p H : pH 8∼ 9.5の 範 囲 に 最 適 p H を 有 す る 、
( ハ ) p H 安 定 性 : 40℃ 、 pH 7∼ 11、 30分 の 処 理 条 件 で 70% 以 上 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 を 有
する、
( ニ ) 最 適 温 度 : 60∼ 70℃ の 範 囲 に 最 適 温 度 を 有 す る 、
( ホ ) 温 度 安 定 性 : pH 7.5、 60℃ 及 び 30分 間 の 処 理 条 件 、 ま た は pH 7.5、 55℃ 及 び 2時 間
の 処 理 条 件 で 50% 以 上 の 活 性 を 有 す る 、
50
(3)
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( ヘ ) 失 活 : 1 mMの N-ブ ロ モ ス ク シ ニ ミ ド の 存 在 下 、 pH 7、 40℃ で 30分 間 処 理 す る こ と に
よりマンナナーゼ活性が失活する、
( ト ) 金 属 阻 害 : Fe
3 +
、 Fe
2 +
、 Pb
2 +
、 Zn
2 +
、 Hg
2 +
、 Cd
2 +
、 及 び Sn
2 +
により阻害を受ける。
【請求項5】
好 ア ル カ リ 性 中 温 菌 の Bacillus属 に 属 す る 微 生 物 に 由 来 す る 酵 素 で あ る 、 請 求 項 1 乃 至 4
のいずれかに記載のアルカリ性マンナナーゼ。
【請求項6】
好 ア ル カ リ 性 中 温 菌 の Bacillus属 に 属 す る 微 生 物 が 、 「 Bacillus sp. Strain JAMB-602」
( 受 領 番 号 FERM AP-20226) で あ る 請 求 項 5 に 記 載 す る ア ル カ リ 性 マ ン ナ ナ ー ゼ 。
【請求項7】
10
下記(a)または(b)に記載するタンパク質をコードするアルカリ性マンナナーゼ遺伝
子:
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列を有するタンパク質、
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置
換または付加してなるアミノ酸配列を有し、下記に掲げる少なくとも1つの酵素学的特性
を有するタンパク質
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加
水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する,
( ロ ) 最 適 p H : pH 8∼ 9.5の 範 囲 に 最 適 p H を 有 す る 、
( ハ ) p H 安 定 性 : 40℃ 、 pH 7∼ 11、 30分 の 処 理 条 件 で 70% 以 上 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 を 有
20
する、
( ニ ) 最 適 温 度 : 60∼ 70℃ の 範 囲 に 最 適 温 度 を 有 す る 、
( ホ ) 温 度 安 定 性 : pH 7.5、 60℃ 及 び 30分 間 の 処 理 条 件 、 ま た は pH 7.5、 55℃ 及 び 2時 間
の 処 理 条 件 で 50% 以 上 の 活 性 を 有 す る 、
( ヘ ) 失 活 : 1 mMの N-ブ ロ モ ス ク シ ニ ミ ド の 存 在 下 、 pH 7、 40℃ で 30分 間 処 理 す る こ と に
よりマンナナーゼ活性が失活する、
( ト ) 金 属 阻 害 : Fe
3 +
、 Fe
2 +
、 Pb
2 +
、 Zn
2 +
、 Hg
2 +
、 Cd
2 +
、 及 び Sn
2 +
により阻害を受ける。
【請求項8】
(b)に示すタンパク質が、配列番号1に示すアミノ酸配列と96%以上同一のアミノ酸
配列を有するものである、請求項7記載のアルカリ性マンナナーゼ遺伝子。
30
【請求項9】
下記(c)または(d)に記載するDNAからなるアルカリ性マンナナーゼ遺伝子:
(c)配列番号2に示す塩基配列を有するDNA、
(d)配列番号2に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジ
ェントな条件でハイブリダイズし、下記に掲げる少なくとも1つの理化学的特性を有する
タンパク質またはその前駆体をコードするDNA
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加
水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する,
( ロ ) 最 適 p H : pH 8∼ 9.5の 範 囲 に 最 適 p H を 有 す る 、
( ハ ) p H 安 定 性 : 40℃ 、 pH 7∼ 11、 30分 の 処 理 条 件 で 70% 以 上 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 を 有
40
する、
( ニ ) 最 適 温 度 : 60∼ 70℃ の 範 囲 に 最 適 温 度 を 有 す る 、
( ホ ) 温 度 安 定 性 : pH 7.5、 60℃ 及 び 30分 間 の 処 理 条 件 、 ま た は pH 7.5、 55℃ 及 び 2時 間
の 処 理 条 件 で 50% 以 上 の 活 性 を 有 す る 、
( ヘ ) 失 活 : 1 mMの N-ブ ロ モ ス ク シ ニ ミ ド の 存 在 下 、 pH 7、 40℃ で 30分 間 処 理 す る こ と に
よりマンナナーゼ活性が失活する、
( ト ) 金 属 阻 害 : Fe
3 +
、 Fe
2 +
、 Pb
2 +
、 Zn
2 +
、 Hg
2 +
、 Cd
2 +
、 及 び Sn
2 +
により阻害を受ける。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかに記載するアルカリ性マンナナーゼ遺伝子を含有する組み換え
ベクター。
50
(4)
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【請求項11】
請求項10に記載する組み換えベクターを用いて宿主細胞を形質転換して得られる形質転
換体。
【請求項12】
宿主細胞が枯草菌である請求項11に記載する形質転換体。
【請求項13】
請求項11または12に記載する形質転換体を培地で培養し、得られる培養物から下記の
理化学的特性を有するアルカリ性マンナナーゼを採取することを特徴とする、請求項1乃
至7のいずれかの新規アルカリ性マンナナーゼの製造方法:
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加
10
水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する,
( ロ ) 最 適 p H : pH 8∼ 9.5の 範 囲 に 最 適 p H を 有 す る 、
( ハ ) p H 安 定 性 : 40℃ 、 pH 7∼ 11、 30分 の 処 理 条 件 で 70% 以 上 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 を 有
する、
( ニ ) 最 適 温 度 : 60∼ 70℃ の 範 囲 に 最 適 温 度 を 有 す る 、
( ホ ) 温 度 安 定 性 : pH 7.5、 60℃ 及 び 30分 間 の 処 理 条 件 、 ま た は pH 7.5、 55℃ 及 び 2時 間
の 処 理 条 件 で 50% 以 上 の 活 性 を 有 す る 、
( ヘ ) 失 活 : 1 mMの N-ブ ロ モ ス ク シ ニ ミ ド の 存 在 下 、 pH 7、 40℃ で 30分 間 処 理 す る こ と に
よりマンナナーゼ活性が失活する、
( ト ) 金 属 阻 害 : Fe
3 +
、 Fe
2 +
、 Pb
2 +
、 Zn
2 +
、 Hg
2 +
、 Cd
2 +
、 及 び Sn
2 +
により阻害を受ける。
20
【請求項14】
微 生 物 「 Bacillus sp. Strain JAMB-602」 ( 受 領 番 号 FERM AP-20226) 。
【請求項15】
請求項1乃至6のいずれかのアルカリ性マンナナーゼを含有する酵素組成物 。
【請求項16】
少なくとも請求項1乃至6のいずれかのアルカリ性マンナナーゼと界面活性剤を含有する
洗浄用組成物(但し、繊維製品洗浄用組成物を除く)。
【請求項17】
少なくとも請求項1乃至6のいずれかのアルカリ性マンナナーゼを含有する漂白処理用組
成物。
30
【請求項18】
少なくとも請求項1乃至6のいずれかのアルカリ性マンナナーゼを含有する繊維柔軟処理
用組成物。
【請求項19】
少なくとも請求項1乃至6のいずれかのアルカリ性マンナナーゼを含有するコーヒー抽出
物処理用組成物。
【請求項20】
請求項1乃至6のいずれかのアルカリ性マンナナーゼを用いて酵素処理を行う工程を有す
るマンノオリゴ糖の製造法。
【請求項21】
40
請求項19に記載する方法によって製造されるマンノオリゴ糖と生分解性プラスチックス
を含有する組成物。
【請求項22】
請求項1乃至6のいずれかのアルカリ性マンナナーゼまたは請求項15の酵素組成物を含
む地盤破砕剤。
【請求項23】
請求項21の地盤破砕剤を用いる井戸、温泉または石油の掘穿方法。
【請求項24】
請求項1乃至6のいずれかのアルカリ性マンナナーゼまたは請求項15の酵素組成物を含
む白水のスカム抑制剤。
50
(5)
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【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物に由来するマンナナーゼ、より詳細にはアルカリpH範囲で安定でし
かもアルカリpH領域に最適pHを有する新規なマンナナーゼ(アルカリ性マンナナーゼ
)及びその遺伝子に関する。さらに本発明は、当該アルカリ性マンナナーゼの製造方法、
並びにその製造のために使用されるベクター及び形質転換体に関する。さらに、本発明は
当該アルカリ性マンナナーゼの各種用途に関する。
【背景技術】
【0002】
10
β -1,4-マ ン ナ ナ ー ゼ ( EC.3.2.1.78、 本 明 細 書 で は 、 単 に 「 マ ン ナ ナ ー ゼ 」 と い う ) マ
は 、 分 子 内 に β -1,4-D-マ ン ノ ピ ラ ノ シ ド 結 合 を 有 す る ホ モ 及 び ヘ テ ロ の β -D-マ ン ナ ン で
あ る マ ン ナ ン 、 ガ ラ ク ト マ ン ナ ン 、 グ ル コ マ ン ナ ン 等 の 主 要 骨 格 で あ る β -1,4-D-マ ン ノ
ピラノシド結合を加水分解し、一連のマンノオリゴ糖を生成する酵素である。マンナナー
ゼによって分解される上記各種のマンナンは、植物の細胞壁の主要な構成成分の一つであ
るヘミセルロースの構成要素である。従って、マンナナーゼは、食品、製紙、繊維、洗浄
に関わる分野に広く利用されている有用な酵素である。
【0003】
このため、マンナーゼは従来から多数の研究者らによって研究されており、多くの微生
物から単離精製されている。例えば、糸状菌由来のマンナナーゼ〔非特許文献1∼3等〕
20
、 放 線 菌 由 来 の マ ン ナ ナ ー ゼ 〔 非 特 許 文 献 4 等 〕 、 バ チ ル ス 属 ( Bacillus) に 属 す る 細 菌
に 由 来 す る マ ン ナ ナ ー ゼ 〔 (1)非 特 許 文 献 5 、 (2)非 特 許 文 献 6 、 (3)特 許 文 献 1 、 (4)特 許
文 献 2 、 (5)特 許 文 献 3 、 (4)特 許 文 献 4 等 〕 な ど が 良 く 研 究 さ れ て い る 。 こ こ で Bacillus
属 に 属 す る 細 菌 に 由 来 す る マ ン ナ ナ ー ゼ に 関 し て 、 上 記 (1)に は Bacillus stearothermoph
ilusに 由 来 す る 分 子 量 162 kDa及 び 最 適 p H 5.5∼ 7.5の マ ン ナ ナ ー ゼ が ; (2)に は 枯 草 菌 (
Bacillus subtilis) に 由 来 す る 分 子 量 38 kDa、 最 適 p H 5.5、 最 適 温 度 55℃ 及 び 等 電 点 (
pI) 4.8の マ ン ナ ナ ー ゼ が ; (3)に は Bacillus sp.に 由 来 す る 分 子 量 37± 3 kDa、 最 適 p H 3
-8、 及 び pI 5.3-5.4の マ ン ナ ナ ー ゼ が ; (4)に は 好 ア ル カ リ 性 Bacillus sp.に 由 来 す る 分
子 量 43 kDa及 び 57± 3 kDa、 及 び 最 適 p H 8-10の マ ン ナ ナ ー ゼ が ; ; (5)に は Bacillus sp.
に 由 来 す る 分 子 量 34± 10 kDa、 及 び 最 適 p H 7.5-10の マ ン ナ ナ ー ゼ が ; (6)に は Bacillus
30
agaradhaerensに 由 来 す る マ ン ナ ナ ー ゼ が ; そ れ ぞ れ 記 載 さ れ て い る 。
【 非 特 許 文 献 1 】 Advances in Carbohydrate Chemistry and Biochemistry, 1976, 32, 2
99-316
【 非 特 許 文 献 2 】 Acta. Chem. Scand., 1968, 22, 1924
【 非 特 許 文 献 3 】 日 農 化 , 1969, 43, 317; Biochem. J., 1984, 219, 857
【 非 特 許 文 献 4 】 Agric. Biol. Chem., 1984, 48, 2189
【 非 特 許 文 献 5 】 Appl. Environ. Microbiol., 56, 11, 3505-3510 (1990)
【 非 特 許 文 献 6 】 World J. Microbiol. Biotechnol., 10, 551-555 (1994);
【 特 許 文 献 1 】 特 願 平 03-047076号 公 報
【 特 許 文 献 2 】 特 願 平 08-51975号 公 報
40
【 特 許 文 献 3 】 米 国 特 許 第 6,566,1143号
【 特 許 文 献 4 】 米 国 特 許 第 6,440,911号 公 報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、アルカリ性pH範囲において安定性に優れ、且つ高いマンナナーゼ活
性を示す新規なマンナナーゼ、およびその遺伝子を提供することである。さらに本発明は
、当該アルカリ性マンナナーゼを効率よく生産する方法、並びに当該マンナナーゼの生産
に使用される発現ベクターや形質転換体を提供することを目的とする。さらに本発明は、
上記アルカリ性マンナナーゼの各種用途を提供することを目的とする。
50
(6)
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【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記特性を有するアルカリ性マンナナーゼを産生する能力を有する微生
物 を 得 る べ く 、 広 く 天 然 界 を 検 索 し た 結 果 、 Bacillus属 に 属 す る あ る 種 の 新 規 微 生 物 が 上
記特性を有する新規のマンナナーゼを産生することを見いだし、さらに本発明者らは、当
該微生物が産生するマンナナーゼを遺伝子工学的手法により効率良く産生する方法の開発
に成功し、本発明の完成に至った。
【0006】
すなわち、本発明は下記の態様を含むものである。
【0007】
10
項1.下記の理化学的性質を有するアルカリ性マンナナーゼ:
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加
水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する,
( ロ ) 最 適 p H : pH 8∼ 9.5の 範 囲 に 最 適 p H を 有 す る 、
( ハ ) p H 安 定 性 : 40℃ 、 pH 7∼ 11、 30分 の 処 理 条 件 で 70% 以 上 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 を 有
する、
( ニ ) 最 適 温 度 : 60∼ 70℃ の 範 囲 に 最 適 温 度 を 有 す る 、
( ホ ) 温 度 安 定 性 : pH 7.5、 60℃ 及 び 30分 間 の 処 理 条 件 、 ま た は pH 7.5、 55℃ 及 び 2時 間
の 処 理 条 件 で 50% 以 上 の 活 性 を 有 す る 、
( ヘ ) 失 活 : 1 mMの N-ブ ロ モ ス ク シ ニ ミ ド の 存 在 下 、 pH 7、 40℃ で 30分 間 処 理 す る こ と に
20
よりマンナナーゼ活性が失活する、
( ト ) 金 属 阻 害 : Fe
3 +
、 Fe
2 +
、 Pb
2 +
、 Zn
2 +
、 Hg
2 +
、 Cd
2 +
、 及 び Sn
2 +
により阻害を受ける、
( チ ) SDS-PAGEに よ る 分 子 量 : 約 50 kDa。
項2.下記(a)または(b)に記載するタンパク質からなるアルカリ性マンナナーゼ:
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列を有するタンパク質、
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置
換または付加してなるアミノ酸配列を有し、下記に掲げる少なくとも1つの理化学的特性
を有するタンパク質
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加
水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する,
30
( ロ ) 最 適 p H : pH 8∼ 9.5の 範 囲 に 最 適 p H を 有 す る 、
( ハ ) p H 安 定 性 : 40℃ 、 pH 7∼ 11、 30分 の 処 理 条 件 で 70% 以 上 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 を 有
する、
( ニ ) 最 適 温 度 : 60∼ 70℃ の 範 囲 に 最 適 温 度 を 有 す る 、
( ホ ) 温 度 安 定 性 : pH 7.5、 60℃ 及 び 30分 間 の 処 理 条 件 、 ま た は pH 7.5、 55℃ 及 び 2時 間
の 処 理 条 件 で 50% 以 上 の 活 性 を 有 す る 、
( ヘ ) 失 活 : 1 mMの N-ブ ロ モ ス ク シ ニ ミ ド の 存 在 下 、 pH 7、 40℃ で 30分 間 処 理 す る こ と に
よりマンナナーゼ活性が失活する、
( ト ) 金 属 阻 害 : Fe
3 +
、 Fe
2 +
、 Pb
2 +
、 Zn
2 +
、 Hg
2 +
、 Cd
2 +
、 及 び Sn
2 +
により阻害を受ける。
項3.(b)に示すタンパク質が、配列番号1に示すアミノ酸配列と96%以上同一のア
40
ミノ酸配列を有するものである、項2に記載するアルカリ性マンナナーゼ。
項4.下記(c)または(d)に記載するDNAによってコードされるタンパク質からな
るアルカリ性マンナナーゼ:
(c)配列番号2に示す塩基配列からなるDNA、
(d)配列番号2に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジ
ェントな条件でハイブリダイズし、下記に掲げる少なくとも1つの理化学的特性を有する
タンパク質をコードするDNA
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加
水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する,
( ロ ) 最 適 p H : pH 8∼ 9.5の 範 囲 に 最 適 p H を 有 す る 、
50
(7)
JP 2006-87401 A 2006.4.6
( ハ ) p H 安 定 性 : 40℃ 、 pH 7∼ 11、 30分 の 処 理 条 件 で 70% 以 上 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 を 有
する、
( ニ ) 最 適 温 度 : 60∼ 70℃ の 範 囲 に 最 適 温 度 を 有 す る 、
( ホ ) 温 度 安 定 性 : pH 7.5、 60℃ 及 び 30分 間 の 処 理 条 件 、 ま た は pH 7.5、 55℃ 及 び 2時 間
の 処 理 条 件 で 50% 以 上 の 活 性 を 有 す る 、
( ヘ ) 失 活 : 1 mMの N-ブ ロ モ ス ク シ ニ ミ ド の 存 在 下 、 pH 7、 40℃ で 30分 間 処 理 す る こ と に
よりマンナナーゼ活性が失活する、
( ト ) 金 属 阻 害 : Fe
3 +
、 Fe
2 +
、 Pb
2 +
、 Zn
2 +
、 Hg
2 +
、 Cd
2 +
、 及 び Sn
2 +
により阻害を受ける。
項 5 . 好 ア ル カ リ 性 中 温 菌 の Bacillus属 に 属 す る 微 生 物 に 由 来 す る 酵 素 で あ る 、 項 1 乃 至
4のいずれかに記載のアルカリ性マンナナーゼ。
10
項 6 . 好 ア ル カ リ 性 中 温 菌 の Bacillus属 に 属 す る 微 生 物 が 、 「 Bacillus sp. Strain JAMB
-602」 ( 受 領 番 号 FERM AP-20226) で あ る 項 5 に 記 載 す る ア ル カ リ 性 マ ン ナ ナ ー ゼ 。
項7.下記(a)または(b)に記載するタンパク質をコードするアルカリ性マンナナー
ゼ遺伝子:
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列を有するタンパク質、
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置
換または付加してなるアミノ酸配列を有し、下記に掲げる少なくとも1つの酵素学的特性
を有するタンパク質
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加
水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する,
20
( ロ ) 最 適 p H : pH 8∼ 9.5の 範 囲 に 最 適 p H を 有 す る 、
( ハ ) p H 安 定 性 : 40℃ 、 pH 7∼ 11、 30分 の 処 理 条 件 で 70% 以 上 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 を 有
する、
( ニ ) 最 適 温 度 : 60∼ 70℃ の 範 囲 に 最 適 温 度 を 有 す る 、
( ホ ) 温 度 安 定 性 : pH 7.5、 60℃ 及 び 30分 間 の 処 理 条 件 、 ま た は pH 7.5、 55℃ 及 び 2時 間
の 処 理 条 件 で 50% 以 上 の 活 性 を 有 す る 、
( ヘ ) 失 活 : 1 mMの N-ブ ロ モ ス ク シ ニ ミ ド の 存 在 下 、 pH 7、 40℃ で 30分 間 処 理 す る こ と に
よりマンナナーゼ活性が失活する、
( ト ) 金 属 阻 害 : Fe
3 +
、 Fe
2 +
、 Pb
2 +
、 Zn
2 +
、 Hg
2 +
、 Cd
2 +
、 及 び Sn
2 +
により阻害を受ける。
項8.(b)に示すタンパク質が、配列番号1に示すアミノ酸配列と96%以上同一のア
30
ミノ酸配列を有するものである、項7記載のアルカリ性マンナナーゼ遺伝子。
項9.下記(c)または(d)に記載するDNAからなるアルカリ性マンナナーゼ遺伝子
:
(c)配列番号2に示す塩基配列を有するDNA、
(d)配列番号2に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジ
ェントな条件でハイブリダイズし、下記に掲げる少なくとも1つの理化学的特性を有する
タンパク質またはその前駆体をコードするDNA
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加
水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する,
( ロ ) 最 適 p H : pH 8∼ 9.5の 範 囲 に 最 適 p H を 有 す る 、
40
( ハ ) p H 安 定 性 : 40℃ 、 pH 7∼ 11、 30分 の 処 理 条 件 で 70% 以 上 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 を 有
する、
( ニ ) 最 適 温 度 : 60∼ 70℃ の 範 囲 に 最 適 温 度 を 有 す る 、
( ホ ) 温 度 安 定 性 : pH 7.5、 60℃ 及 び 30分 間 の 処 理 条 件 、 ま た は pH 7.5、 55℃ 及 び 2時 間
の 処 理 条 件 で 50% 以 上 の 活 性 を 有 す る 、
( ヘ ) 失 活 : 1 mMの N-ブ ロ モ ス ク シ ニ ミ ド の 存 在 下 、 pH 7、 40℃ で 30分 間 処 理 す る こ と に
よりマンナナーゼ活性が失活する、
( ト ) 金 属 阻 害 : Fe
3 +
、 Fe
2 +
、 Pb
2 +
、 Zn
2 +
、 Hg
2 +
、 Cd
2 +
、 及 び Sn
2 +
により阻害を受ける。
項10.項7乃至9のいずれかに記載するアルカリ性マンナナーゼ遺伝子を含有する組み
換えベクター。
50
(8)
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項11.項10に記載する組み換えベクターを用いて宿主細胞を形質転換して得られる形
質転換体。
項12.宿主細胞が枯草菌である項11に記載する形質転換体。
項13.項11または12に記載する形質転換体を培地で培養し、得られる培養物から下
記の理化学的特性を有するアルカリ性マンナナーゼを採取することを特徴とする、請求項
1乃至7のいずれかの新規アルカリ性マンナナーゼの製造方法:
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加
水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する,
( ロ ) 最 適 p H : pH 8∼ 9.5の 範 囲 に 最 適 p H を 有 す る 、
( ハ ) p H 安 定 性 : 40℃ 、 pH 7∼ 11、 30分 の 処 理 条 件 で 70% 以 上 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 を 有
10
する、
( ニ ) 最 適 温 度 : 60∼ 70℃ の 範 囲 に 最 適 温 度 を 有 す る 、
( ホ ) 温 度 安 定 性 : pH 7.5、 60℃ 及 び 30分 間 の 処 理 条 件 、 ま た は pH 7.5、 55℃ 及 び 2時 間
の 処 理 条 件 で 50% 以 上 の 活 性 を 有 す る 、
( ヘ ) 失 活 : 1 mMの N-ブ ロ モ ス ク シ ニ ミ ド の 存 在 下 、 pH 7、 40℃ で 30分 間 処 理 す る こ と に
よりマンナナーゼ活性が失活する、
( ト ) 金 属 阻 害 : Fe
3 +
、 Fe
2 +
、 Pb
2 +
、 Zn
2 +
、 Hg
2 +
、 Cd
2 +
、 及 び Sn
2 +
により阻害を受ける。
項 1 4 . 微 生 物 「 Bacillus sp. Strain JAMB-602」 ( 受 領 番 号 FERM AP-20226) 。
項15.項1乃至6のいずれかのアルカリ性マンナナーゼを含有する酵素組成物 。
項16.少なくとも項1乃至6のいずれかのアルカリ性マンナナーゼと界面活性剤を含有
20
する洗浄用組成物(但し、繊維製品洗浄用組成物を除く)。
項17.少なくとも項1乃至6のいずれかのアルカリ性マンナナーゼを含有する漂白処理
用組成物。
項18.少なくとも項1乃至6のいずれかのアルカリ性マンナナーゼを含有する繊維柔軟
処理用組成物。
項19.少なくとも項1乃至6のいずれかのアルカリ性マンナナーゼを含有するコーヒー
抽出物処理用組成物。
項20.項1乃至6のいずれかのアルカリ性マンナナーゼを用いて酵素処理を行う工程を
有するマンノオリゴ糖の製造法。
項21.項20に記載する方法によって製造されるマンノオリゴ糖と生分解性プラスチッ
30
クスを含有する組成物。
項22.項1乃至6のいずれかのアルカリ性マンナナーゼまたは項15の酵素組成物を含
む地盤破砕剤。
項23.項22の地盤破砕剤を用いる井戸、温泉または石油の掘穿方法。
項24.項1乃至6のいずれかのアルカリ性マンナナーゼまたは項15の酵素組成物を含
む白水のスカム抑制剤。
【0008】
なお、本発明において「遺伝子」または「DNA」とは、2本鎖DNAのみならず、そ
れを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨で用
いられる。またその長さは特に制限されるものではない。従って、本明細書でいう「遺伝
40
子」または「DNA」とは、特に言及しない限り、ゲノムDNAを含む2本鎖DNA、c
DNAを含む1本鎖DNA(正鎖)及び該正鎖に対して相補的な配列を有する1本鎖DN
A(相補鎖、逆鎖)、並びに合成DNAが含まれ、さらに「遺伝子」にはRNAも含まれ
る。また「遺伝子」または「DNA」は、本発明の効果を保有する限りにおいて、コード
領域(シグナルペプチド領域を含む)以外に、例えば発現制御領域、シグナル領域、エキ
ソン、イントロンを含むことができる。
【0009】
また、特に言及しない限り、本発明でいう「遺伝子」または「DNA」には、特定の塩
基配列で示される「遺伝子」または「DNA」だけでなく、これらによりコードされるタ
ンパク質と生理学的機能が同等であるタンパク質(例えば、同族体、変異体または誘導体
50
(9)
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など、本明細書では「機能的同等物」ともいう)をコードする「遺伝子」または「DNA
」が含まれる。本明細書では、かかる「遺伝子」または「DNA」を、特定の塩基配列で
示される「遺伝子」または「DNA」の「ホモログ」ともいう。かかる「ホモログ」とし
ては、特定の塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」の相補鎖に対して、ストリ
ンジェントな条件で、ハイブリダイズする塩基配列を有する「遺伝子」または「DNA」
を挙げることができる。例えば、同族体をコードする遺伝子(ホモログ)としては、本発
明 の 遺 伝 子 の 由 来 生 物 で あ る Bacillus sp. strain JAMB-602以 外 の 他 の 微 生 物 に 由 来 す る
対応の遺伝子を例示することができる。
【0010】
本発明でいう「酵素(アルカリ性マンナナーゼ)」または「タンパク質」には、特定の
10
アミノ酸配列で示される「酵素(アルカリ性マンナナーゼ)」または「タンパク質」だけ
でなく、これらと同等な生理学的機能を有する「酵素(アルカリ性マンナナーゼ)」また
は「タンパク質」(例えば、同族体、変異体または誘導体などの「機能的同等物」)が含
まれる。例えば、同族体(機能的同等物)としては、本発明の「酵素(アルカリ性マンナ
ナ ー ゼ ) 」 ま た は 「 タ ン パ ク 質 」 の 由 来 生 物 で あ る Bacillus sp. Strain JAMB-602以 外 の
他の微生物に由来する対応の「酵素(アルカリ性マンナナーゼ)」または「タンパク質」
を例示することができる。また、変異体(機能的同等物)には、天然に存在するアレル変
異体、天然に存在しない変異体、及び人為的に欠失、置換、付加または挿入等されること
によって改変されたアミノ酸配列を有する変異体が含まれる。なお、かかる同族体や変異
体等の「機能的同等物」としては、特定のアミノ酸配列(配列番号1)で特定される酵素
20
(アルカリ性マンナナーゼ)またはタンパク質と、アミノ酸配列において少なくとも96
%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以
上同一であるものを挙げることができる。
【0011】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0012】
(1)アルカリ性マンナナーゼ
本発明は、新規なアルカリ性マンナナーゼに関する。ここでマンナナーゼとは、マンナ
ン 、 ガ ラ ク ト マ ン ナ ン 、 グ ル コ マ ン ナ ン 等 の 主 要 骨 格 で あ る β -1,4-D-マ ン ノ ピ ラ ノ シ ド
結 合 を 加 水 分 解 す る 活 性 を 有 す る 酵 素 で あ り 、 正 式 に は マ ン ナ ン エ ン ド -1,4-β -マ ン ノ
30
シ ダ ー ゼ ( EC3.2.1.78) と 命 名 さ れ る も の で あ る 。 別 名 β -マ ン ナ ナ ー ゼ 、 ま た は β -1,4マンナナーゼとも称される。
【0013】
かかるマンナナーゼの活性の有無は、簡便にはマンナン成分を含む固体培地におけるハ
ロー形成の有無を目視で判断することによって行うことができる。被験試料中にマンナナ
ーゼが存在すれば、その培養に使用する固体培地中のマンナンが分解されて、当該固体培
地上にハローが形成される。特に制限されないが、後述する参考例の説明に従って行うこ
と が で き る 。 こ こ で マ ン ナ ン 成 分 と し て は 、 ロ ー カ ス ト ビ ー ン ガ ム ( 主 要 構 成 成 分 ; [Dガ ラ ク ト ー ス : D-マ ン ノ ー ス ( 1:4) ]) を 好 適 に 例 示 す る こ と が で き る 。
【0014】
40
ま た 、 マ ン ナ ナ ー ゼ の 活 性 の 測 定 は 、 3,5-ジ ニ ト ロ サ リ チ ル 酸 法 [G.L. Miller, Anal.
Chem., 31, 426-428 (1959)]に 従 っ て 、 基 質 ( マ ン ナ ン 成 分 ) の 還 元 物 の 生 成 量 を 測 定
することによって行うことができる。特に制限されないが、例えば、基質としてローカス
ト ビ ー ン ガ ム ( 主 要 構 成 成 分 ; [D-カ ゛ ラ ク ト ー ス :D-マ ン ノ ー ス ( 1:4) ]) を 用 い て 、 上
記 3,5-ジ ニ ト ロ サ リ チ ル 酸 法 に 従 っ て 、 基 質 ( ロ ー カ ス ト ビ ー ン ガ ム ) 還 元 物 の 生 成 量 を
測定する方法を挙げることができる。その詳細は後述する参考例に説明する通りである。
【0015】
本 発 明 に お い て 「 ア ル カ リ 性 マ ン ナ ナ ー ゼ 」 と は 、 活 性 の 最 適 p H が ア ル カ リ 領 域 ( pH
8以 上 ) に あ る マ ン ナ ナ ー ゼ を 意 味 す る 。
【0016】
50
(10)
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本発明が対象とするアルカリ性マンナナーゼとしては、下記(イ)∼(ト)の理化学的
特性を有するものを挙げることができる:
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加
水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する,
ここで4糖より大きいマンノオリゴ糖としては、ローカストビーンガム、アイボリーナ
ッツ、コンニャクマンナン、グアガムなどを例示することができる。これらのマンノオリ
ゴ糖に対する本発明のアルカリ性マンナナーゼの相対活性は、好適にはローカストビーン
ガ ム を 100と し た 場 合 に 、 ア イ ボ リ ー ナ ッ ツ 約 60、 コ ン ニ ャ ク マ ン ナ ン 約 45、 及 び グ ア ガ
ム 約 30で あ る 。 本 発 明 の ア ル カ リ 性 マ ン ナ ナ ー ゼ は 、 2 糖 ま た は 3 糖 の マ ン ノ オ リ ゴ 糖 に
対 し て は 、 pH 9及 び 40℃ で 24時 間 処 理 し て も 加 水 分 解 能 を 示 さ な い も の で あ る こ と が 好 ま
10
しい。
( ロ ) 最 適 p H : pH 8∼ 9.5の 範 囲 内 に 最 適 p H を 有 す る 。 好 ま し く は pH 8.5∼ 9.5の 範 囲
内 、 よ り 好 ま し く は pH9 前 後 に 最 適 p H を 有 す る 。
( ハ ) p H 安 定 性 : pH 7∼ 11及 び 40℃ の 条 件 で 30分 処 理 し た 場 合 に 70% 以 上 の マ ン ナ ン ー
ゼ 活 性 を 有 す る か 、 pH 11及 び 4℃ の 条 件 で 24時 間 処 理 し た 場 合 に 70% 以 上 の マ ン ナ ン ー ゼ
活 性 を 有 す る 。 好 適 に は pH 7∼ 11及 び 40℃ の 条 件 下 で 30分 処 理 し た 場 合 に 80% 以 上 の マ ン
ナ ナ ー ゼ 活 性 を 有 す る か 、 pH 11及 び 4℃ の 条 件 で 24時 間 処 理 し た 場 合 に 80% 以 上 の マ ン ナ
ン ー ゼ 活 性 を 有 す る よ う な p H 安 定 性 を 有 し て い る こ と が 望 ま し い 。 な お 、 こ こ で 70% 以
上 、 好 ま し く は 80% 以 上 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 を 有 す る と は 、 処 理 前 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 を
100% と し た 場 合 に 、 処 理 後 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 が 処 理 前 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 の 70% 以 上
20
、 好 ま し く は 80% 以 上 保 持 さ れ て い る こ と を い う 。 さ ら に 、 本 発 明 の ア ル カ リ 性 マ ン ナ ナ
ー ゼ は 、 pH 8∼ 11及 び 40℃ の 条 件 下 で 30分 処 理 す る か 、 ま た は pH 11及 び 4℃ の 条 件 で 24時
間 処 理 し た 場 た 場 合 に 、 80% 以 上 、 好 ま し く は 90% 以 上 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 を 保 持 し て い
るものであることが好ましい。
( ニ ) 最 適 温 度 : 60∼ 70℃ の 範 囲 内 に 最 適 温 度 を 有 す る 。 好 ま し く は 65℃ 前 後 に 最 適 温 度
を有する。
( ホ ) 温 度 安 定 性 : pH 7.5、 60℃ 及 び 30分 間 の 処 理 条 件 、 ま た は pH 7.5、 55℃ 及 び 2時 間
の 処 理 条 件 で 50% 以 上 の 活 性 を 有 す る 。
【0017】
な お 、 こ こ で 50% 以 上 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 を 有 す る と は 、 処 理 前 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 を
30
100% と し た 場 合 に 、 上 記 処 理 後 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 が 処 理 前 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 の 50%
以上保持されていることをいう。
( ヘ ) 失 活 : 1 mMの N-ブ ロ モ ス ク シ ニ ミ ド の 存 在 下 、 pH 7、 40℃ で 30分 間 処 理 す る こ と に
よりマンナナーゼ活性が失活する。
【0018】
な お 、 こ こ で 「 失 活 」 と は 、 処 理 前 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 を 100% と し た 場 合 に 、 処 理 後
の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 が 処 理 前 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 の 10% 以 下 、 好 ま し く は 5% 以 下 と な る
こ と を 意 味 す る 。 よ り 好 ま し く は 上 記 処 理 に よ っ て マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 が 消 失 ( 0%) と な る
性質を有するものである。
( ト ) 金 属 阻 害 : pH 7及 び 40℃ の 条 件 で そ れ ぞ れ 1mM濃 度 の Fe
+
、 Cd
2 +
、 ま た は Sn
2 +
2 +
、 Fe
3 +
、 Pb
2 +
、 Zn
2 +
、 Hg
2
40
の 存 在 下 で 30分 処 理 し た 場 合 、 マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 が 阻 害 さ れ 、 処 理
前 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 ( 100% ) の 40% 以 下 、 好 ま し く は 30% 以 下 と な る 。
( チ ) SDS-PAGEに よ る 分 子 量 : 約 50 kDa。
【0019】
かかる特性を有する本発明のアルカリ性マンナナーゼとして、好ましくは配列表:配列
番号1で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を挙げることができる。また、本発明
のアルカリ性マンナナーゼは、かかる特定のアミノ酸配列を有するものに制限されず、そ
の機能的同等物であってもよい。ここで機能的同等物としては、配列番号1に示すアミノ
酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸
配列を有し、前述する理化学的特性のうち(イ)∼(ト)の少なくとも1つを有するタン
50
(11)
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パク質を挙げることができる。好ましくは(イ)∼(ト)の理化学的特性のうち2つ以上
、3つ以上、4つ以上、5つ以上、または6つ以上を有するものであり、より好適には7
つの全てを有するものである。
【0020】
上記機能的同等物としてより好ましくは、配列番号1に示すアミノ酸配列とアミノ酸配
列において96%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ま
し く は 9 9 % 以 上 の 同 一 性 を 有 し 、 且 つ ア ル カ リ 性 の p H 範 囲 ( pH 8以 上 ) で 安 定 で 、 当
該アルカリ性pH範囲に最適pHを有するタンパク質を挙げることができる。なお、2つ
の配列を対比した場合における配列の同一性は、当該配列間で同一であるアミノ酸数の、
全アミノ酸数に対する百分率で示される。
10
【0021】
上 記 の 原 理 に 従 い 、 2 つ の ア ミ ノ 酸 配 列 に お け る 配 列 の 同 一 性 は 、 Karlin お よ び Alts
chul の ア ル ゴ リ ズ ム [Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 87, 2264-2268 (1990)お よ び Proc.
Natl. Acad. Sci., USA, 90, 5873-5877 (1993)]に よ り 、 決 定 す る こ と が で き る 。 こ の
よ う な ア ル ゴ リ ズ ム を 用 い た プ ロ グ ラ ム と し て は 、 BLASTプ ロ グ ラ ム [Altschul et al.,
J. Mol. Biol., 215, 403-410 (1990)]、 及 び 当 該 BLASTよ り 感 度 良 く 配 列 同 一 性 を 決 定 す
る こ と の で き る Gapped BLASTプ ロ グ ラ ム [Nucleic Acids Res., 25, 3389-3402,
(1997)]
を 挙 げ る こ と が で き る 。 こ れ ら の プ ロ グ ラ ム は 、 例 え ば 米 国 National Center for Biotec
hnology Informationの イ ン タ ー ネ ッ ト 上 の ウ ェ ブ サ イ ト に お い て 利 用 可 能 で あ る 。
【0022】
20
また、本発明のアルカリ性マンナナーゼには、配列表:配列番号2で示される塩基配列
からなるDNAによってコードされるタンパク質、並びにその機能的同等物が含まれる。
ここで機能的同等物としては、配列番号2で示される塩基配列に対して相補的な塩基配列
からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA(ホモログ)によ
ってコードされるタンパク質であって、且つ前述する理化学的特性のうち(イ)∼(ト)
の少なくとも1つを有するタンパク質を挙げることができる。好ましくは(イ)∼(ト)
の理化学的特性のうち2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上または6つ以上を有する
ものであり、より好適には7つの全てを有するものである。
【0023】
なお、ここで配列番号2に示される塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるDNA
30
と ハ イ ブ リ ダ イ ズ す る 「 ス ト リ ン ジ ェ ン ト な 条 件 」 は 、 Bergerと Kimmel (Guide to Molec
ular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol.152, Academic Press, San Dieg
o, CA, USA, 1987)に 教 示 さ れ る よ う に 、 複 合 体 或 い は プ ロ ー ブ を 結 合 す る 核 酸 の 融 解 温
度 (Tm)に 基 づ い て 決 定 す る こ と が で き る 。 例 え ば 、 ハ イ ブ リ ダ イ ズ 後 の 洗 浄 条 件 ( い わ ゆ
る こ れ が 「 ス ト リ ン ジ ェ ン ト な 条 件 」 ) と し て 、 6xssc (1xsscの 組 成 ; 0.15 M NaCl, 0.0
15 M ク エ ン 酸 ナ ト リ ウ ム 、 pH 7.0), 0.5% SDS, 5Xデ ン ハ ー ト 及 び 100 mg/mlニ シ ン 精 子 D
NA)を 含 む 溶 液 に プ ロ -ブ と 共 に 65℃ で 8 ∼ 1 6 時 間 恒 温 し 、 ハ イ ブ リ ダ イ ズ さ せ る 条 件 が
挙 げ ら れ る ( Sambrookら 、 Molecular Cloning-a Loboratory Mannual, 2
n d
ed.) 。
【0024】
なお、本発明のアルカリ性マンナナーゼは、本発明で開示するアミノ酸配列に基づいて
40
化学的または遺伝子工学的手法によって製造することができる。遺伝子工学的手法による
製造方法の詳細については、後述する。また、アミノ酸配列における改変は、当業界にお
い て 既 に 公 知 な 方 法 、 例 え ば 部 位 特 異 的 変 異 導 入 法 [Current Protocols I molecular Bio
logy, edit. Ausubel et al., John Wily & Sons, Section 8. 1-8.5 (1987)]等 を 用 い て
、改変しようとするアミノ酸配列に、適宜、置換、欠失、挿入、付加、逆位などの変異を
導入することによって行うことができる。
【0025】
本発明のアルカリ性マンナナーゼは、上記特性を有するものであれば特にその由来を問
う も の で は な い が 、 好 ま し く は Bacillus属 に 属 す る 微 生 物 に 由 来 す る も の で あ る 。 好 ま し
く は 生 育 最 適 p H が p H 9 前 後 で あ り 、 生 育 最 適 温 度 が 36∼ 37℃ で あ る Bacillus属 に 属 す
50
(12)
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る好アルカリ性中温菌に由来する。かかる微生物の一例として、制限はされないが、その
16S rDNAの 配 列 が 、 Bacillus alcalophilusの 16S rDNAの 配 列 と 95% 以 上 100% 未 満 、 好 ま
し く は 96∼ 99% の 範 囲 、 よ り 好 ま し く は 96.7% 同 一 で あ る か 、 ま た は Bacillus
pseudalc
alophilusの 16S rDNAの 配 列 と 95% 以 上 100% 未 満 、 好 ま し く は 96∼ 99% の 範 囲 、 よ り 好 ま
し く は 96.3% 同 一 性 で あ る よ う な 微 生 物 を 例 示 す る こ と が で き る 。
【0026】
ここで、2つの配列における配列同一性は、前述するように、これらの配列間での同一
であるアミノ酸数の、全アミノ酸数に対する百分率で示される。またアミノ酸配列と同様
に 、 2 つ の 塩 基 配 列 に お け る 配 列 同 一 性 は 、 Karlin お よ び Altschul の ア ル ゴ リ ズ ム [Pr
oc. Natl. Acad. Sci., USA, 87, 2264-2268 (1990)お よ び Proc. Natl. Acad. Sci., USA
, 90, 5873-5877 (1993)]に よ り 、 決 定 す る こ と が で き る 。
【0027】
本 発 明 の ア ル カ リ 性 マ ン ナ ナ ー ゼ を 産 生 す る 、 好 ア ル カ リ 性 の Bacillus属 に 属 す る 微 生
物 と し て 、 好 適 に は 「 Bacillus sp. Strain JAMB-602」 ( 受 領 番 号 FERM AP-20226) ( 以
下 、 「 JAMB-602株 」 と も い う ) を 挙 げ る こ と が で き る 。 こ の 微 生 物 の 特 性 を 表 1 に 示 す 。
【0028】
10
(13)
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【表1】
10
20
30
40
【0029】
50
(14)
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当 該 菌 体 ( JAMB-602株 ) は 土 壌 か ら 分 離 取 得 し た も の で あ り 、 pH 9前 後 で 良 く 生 育 す る
好 ア ル カ リ 性 の Bacillus属 細 菌 で あ る 。 さ ら に 当 該 JAMB-602株 は 、 16S rDNA塩 基 配 列 に 基
T
づ く 相 同 性 解 析 の 結 果 、 Bacillus alcalophilus( DSM485 ) と 96.7%の 相 同 性 を 、 ま た Ba
T
cillus pseudoalcalophilus( DSM8725 ) と 96.3% の 相 同 性 を 有 し て お り 、 こ れ ら の 菌 体
と 近 縁 種 の も の で は あ る が 、 DNA-DNAハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン 分 析 か ら 、 JAMB-602株 と 上
記 B. alcalophilus及 び B. pseudoalcalophilus と は そ れ ぞ れ 12.4%及 び 11.2%の 相 同 性 し
か 見 ら れ な か っ た 。 こ の こ と か ら 本 発 明 菌 体 ( JAMB-602株 ) は 、 Bacillus属 に 属 す る 新 種
の 微 生 物 で あ る 。 当 該 本 発 明 菌 体 を 、 「 Bacillus sp. Strain JAMB-602」 ( 略 称 : JAMB-6
02株 ) と 命 名 し て 、 平 成 1 6 年 9 月 2 4 日 付 け で 、 日 本 国 茨 城 県 つ く ば 市 東 1 丁 目 1 番 地
1中央第6に住所を有する独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センターに、
10
寄 託 者 が 付 し た 識 別 の た め の 表 示 を 「 Bacillus sp. Strain JAMB-602」 と し 、 受 領 番 号 を
「FERM AP−20226」として寄託されている(通知番号:16産生寄第226
号)。
【0030】
上記微生物は、本発明のアルカリ性マンナナーゼを生産し、菌体外の溶出する能力を有
し て い る 。 こ の た め 、 本 発 明 の ア ル カ リ 性 マ ン ナ ナ ー ゼ は 、 上 記 微 生 物 ( JAMB-602株 ) を
培養することによって、培養液から採取することが可能である。
【0031】
(2)アルカリ性マンナナーゼ遺伝子
本発明はまた、上記アルカリ性マンナナーゼの遺伝子を提供する。なお、ここでいう遺
20
伝子には、ゲノムDNA、cDNA、合成DNAならびにRNAが含まれる。
【0032】
当該遺伝子は、前述するアルカリ性マンナナーゼ(タンパク質)をコードする塩基配列
を有するものであればよい。具体的には、配列表;配列番号2に示す塩基配列からなるD
NA、並びにそのホモログを挙げることができる。ここでホモログとしては、配列番号2
で示される塩基配列からなるDNAによってコードされるタンパク質(アルカリ性マンナ
ナーゼ)と機能的に同等なタンパク質をコードする遺伝子を挙げることができる。なお、
機能的に同等とは、配列番号2で示される塩基配列からなるDNAによってコードされる
タンパク質(アルカリ性マンナナーゼ)と同様に、少なくともアルカリ領域でマンナナー
ゼ 活 性 を 有 す る こ と 、 好 ま し く は 当 該 活 性 の 最 適 p H が ア ル カ リ 領 域 ( pH 8以 上 ) で あ る
30
ことを意味する。
【0033】
好ましいホモログとしては、(1)のおいて説明した理化学的特性のうち(イ)∼(ト
)の少なくとも1つを有するタンパク質を挙げることができる。好ましくは(イ)∼(ト
)の理化学的特性のうち2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上または6つ以上を有す
るものであり、より好適には7つの全てを有するものである。
【0034】
かかるホモログとして、具体的には、配列番号2で示される塩基配列に対して相補的な
塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を有す
る遺伝子を挙げることができる。ストリンジェントな条件としては、前述のものを同様に
40
挙げることができる。具体的なホモログとしては、配列番号4で示される塩基配列を有す
る遺伝子を挙げることができる。当該遺伝子は、N末端領域にシグナルペプチドを有する
、アルカリ性マンナナーゼの前駆体(配列番号3)をコードするDNAである。
【0035】
な お 、 本 発 明 の 遺 伝 子 は 、 実 施 例 で 示 す よ う に 、 「 Bacillus sp. Strain JAMB-602」 か
ら単離取得することもできる。それ以外の方法として、化学的な合成によって調製するこ
ともできる。
【0036】
(3)組み換えベクター
本発明は、上記アルカリ性マンナナーゼをコードする遺伝子を含有する組み換えベクタ
50
(15)
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ーを提供する。当該組み換えベクターは、アルカリ性マンナナーゼをコードする遺伝子を
、所望の宿主細胞内で発現可能な状態で含んでおり、当該宿主細胞を形質転換するために
使用される。ゆえに、本発明の組み換えベクターは、かかる宿主細胞の形質転換が達成で
きる形態を有するものであればよく、例えばプラスミド、バクテリオファージ、レトロト
ランスポゾンの形態を有するものであってもよい。
【0037】
本 発 明 の 組 み 換 え ベ ク タ ー ( 発 現 ベ ク タ ー ) は 、 宿 主 と し て 大 腸 菌 ( E. coli) や 枯 草
菌 ( B. subtilis) な ど の 細 菌 を 使 用 す る 場 合 、 一 般 に 、 少 な く と も プ ロ モ ー タ ー − オ ペ
レ ー タ ー 領 域 ( プ ロ モ ー タ ー 、 オ ペ レ ー タ ー 及 び リ ボ ゾ ー ム 結 合 領 域 ( SD領 域 ) を 含 む )
、開始コドン、本発明のアルカリ性マンナナーゼをコードするDNA、終止コドン、ター
10
ミネーター領域、及び複製可能単位を有する。また、酵母等の真菌細胞または動物細胞を
宿主細胞として用いる場合は、一般に、少なくともプロモーター、開始コドン、シグナル
ペプチド及び本発明のアルカリ性マンナナーゼをコードするDNA、及び終止コドンを有
する。また、本発明の組み換えベクター(発現ベクター)は、必要に応じて、エンハンサ
ー な ど の シ ス エ レ メ ン ト 、 本 発 明 の ア ル カ リ 性 マ ン ナ ナ ー ゼ を コ ー ド す る D N A の 5'側 ま
た は 3'側 の 非 翻 訳 領 域 、 ス プ ラ イ シ ン グ 接 合 部 、 ポ リ ア デ ニ レ ー シ ョ ン 部 位 、 複 製 可 能 単
位、相同領域、選択マーカーを含むことができる。これらのエレメントは、本発明のアル
カリ性マンナナーゼをコードする遺伝子の発現に用いられる宿主に対応したものであれば
、特に制限されず、当業界の技術常識に基づいて選択することができる。
【0038】
20
なお、選択マーカーとしては、特に制限されず、例えば遺伝子発現に使用される宿主が
細菌の場合は、薬剤抵抗性遺伝子(例えば、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性
遺伝子、シクロヘキシミド耐性遺伝子、テトラマイシン耐性遺伝子など)、宿主が細菌以
外の例えば酵母などの場合は、栄養要求性遺伝子(例えば、HIS4、URA3、LEU
2、ARG4など)などを始めとする公知の各種選択マーカーを利用することができる。
【0039】
本発明の組み換えベクター(発現ベクター)は、簡便には、上記本発明のアルカリ性マ
ンナナーゼをコードするDNAを、公知の発現用ベクターに、目的のアルカリ性マンナナ
ーゼが発現可能な状態で導入することによって、具体的にはプロモーターの下流に導入す
ることによって作成することができる。かかる導入は、DNA組み換えの一般的な方法、
30
例 え ば Molecular Cloning. (1989). (Cold Spring Harbor Lab.)に 記 載 さ れ る 方 法 に 従 っ
て行うことができる。
【0040】
発 現 用 ベ ク タ ー と し て は 、 プ ラ ス ミ ド ベ ク タ ー と し て 、 例 え ば pRS413、 pRS415、 pRS416
、 YCp50、 pAUR112ま た は pAUR123な ど の YCp型 大 腸 菌 ( E. coli) -酵 母 シ ャ ト ル ベ ク タ ー ;
pRS403、 pRS404、 pRS405、 pRS406、 pAUR101ま た は pAUR135な ど の YIp型 大 腸 菌 ( E. coli)
-酵 母 シ ャ ト ル ベ ク タ ー ; 大 腸 菌 ( E. coli) 由 来 の プ ラ ス ミ ド ( 例 え ば pBR322、 pBR325、
pUC18、 pUC19、 pUC119、 pTV118N、 pTV119N、 pBluescript、 pHSG298、 pHSG396ま た は pTrc9
9Aな ど の ColE系 プ ラ ス ミ ド ; pACYC177ま た は pACYC184な ど の p1A系 プ ラ ス ミ ド ; pMW118、 p
MW119、 pMW218ま た は pMW219な ど の pSC101系 プ ラ ス ミ ド な ど ) ; 枯 草 菌 ( B. subtilis) 由
40
来 の プ ラ ス ミ ド ( 例 え ば pUB110、 pTP5な ど ) ; pHSP64な ど の 大 腸 菌 ( E. coli) -枯 草 菌 (
B. subtilis) シ ャ ト ル ベ ク タ ー を 挙 げ る こ と が で き る 。 ま た フ ァ ー ジ ベ ク タ ー と し て 、
λ フ ァ ー ジ ( Charon 4A, Charon21A, EMBL4, λ gt100, gt11, zap) 、 ψ X174、 M13mp18、
M13mp19な ど を 挙 げ る こ と が で き る 。 レ ト ロ ト ラ ン ス ポ ゾ ン と し て は Ty因 子 な ど を 挙 げ る
こ と が で き る 。 ま た 、 融 合 タ ン パ ク 質 と し て 発 現 す る 発 現 ベ ク タ ー 、 例 え ば pGEXシ リ ー ズ
( フ ァ ル マ シ ア 製 ) 、 pMALシ リ ー ズ ( Biolabs社 製 ) を 使 用 す る こ と も で き る 。
【0041】
本発明の実施例では、本発明のアルカリ性マンナナーゼの前駆体をコードする遺伝子を
、 pHSP64プ ラ ス ミ ド ベ ク タ ー [大 腸 菌 ( E. coli) -枯 草 菌 ( B. subtilis) シ ャ ト ル ベ ク
タ ー : Sumitomo et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 59 (11), 2172-2175 (1995)]
50
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のマルチプルクローニングサイトに導入することによって、本発明のアルカリ性マンナナ
ー ゼ 発 現 用 ベ ク タ ー を 作 成 し て い る 。 当 該 プ ラ ス ミ ド ベ ク タ ー に よ れ ば 、 枯 草 菌 ( B.subt
ilis) を 宿 主 と し て 、 そ の 中 で 、 外 来 遺 伝 子 と し て 連 結 さ れ た 本 発 明 の ア ル カ リ 性 マ ン ナ
ナーゼの遺伝子を効率的に転写及び翻訳することができる。
【0042】
(4)形質転換体
本発明はまた、宿主細胞に上記組み換えベクターを導入して形質転換されてなる形質転
換体を提供する。
【0043】
組み換えベクターの宿主細胞への導入(形質転換)方法は、特に制限されず、トランス
10
フォーメーション法、トランスフェクション法、コンピテント細胞法、エレクトロポレー
ションなど、導入する宿主細胞の種類や組み換えベクターの形態に応じて、適宜選択する
ことができる。
【0044】
宿 主 細 胞 と し て は 、 大 腸 菌 ( E. coli) や 枯 草 菌 (B. subtilis)な ど の 細 菌 、 サ ッ カ ロ マ
イ セ ス ・ セ レ ビ シ エ ( Saccharomyces cerevisiae) 、 サ ッ カ ロ マ イ セ ス ・ ポ ン ベ ( Saccha
romyces pombe) 、 ピ ヒ ア ・ パ ス ト リ ス ( Pichia pastoris) な ど の 酵 母 、 sf9や sf21な ど
の 昆 虫 細 胞 、 COS細 胞 、 チ ャ イ ニ ー ズ ハ ム ス タ ー 卵 巣 細 胞 ( CHO細 胞 ) な ど の 動 物 細 胞 、 タ
バコなどの植物細胞を挙げることができる。好ましくは、大腸菌や枯草菌などの細菌、及
び酵母である。
20
【0045】
なお、発現ベクターの宿主細胞内での存在様式は、特に制限されず、染色体中に挿入さ
れて、あるいは置換されて組み込まれてもよいし、またプラスミド状態で存在していても
よい。
【0046】
(5)アルカリ性マンナナーゼの製造方法
斯くして得られた形質転換体は、宿主に応じて適切な培地中で培養されることによって
、本発明の新規アルカリ性マンナナーゼを産生することができる。本発明は、かかる形質
転換体を利用した新規アルカリ性マンナナーゼの製造方法を提供するものである。当該方
法は、具体的には、上記の形質転換体を培地で培養し、得られた培養物から、アルカリ性
30
マンナナーゼを採取することによって実施することができる。
【0047】
培地には、上記形質転換体の生育に必須な炭素源、窒素源、無機塩、ビタミン、薬剤な
どが含有される。炭素源としてはマンナン成分、アラビノース、セロビオース、フルクト
ース、ガラクトース、グルコース、グリセロール、イノシトール、ラクトース、マンニト
ール、マンノース、ラフィノース、ラムノース、スクロース、トレハロース、キシロース
が;窒素源としては硫酸アンモニウムや塩化アンモニウムなどの無機窒素、並びにカゼイ
ン分解物、酵母抽出物、ポリペプトン、バクトトリプトン及びビーフ抽出物などの有機窒
素源;無機塩としては例えば二リン酸ナトリウムまたは二リン酸カリウム、リン酸水素二
カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム等;ビタミンとしては
40
ビタミンB1を始めとする各種のビタミン;薬剤としてはアンピシリン、ネオマイシン、
シクロヘキシミド、テトラマイシンなどの各種抗生物質を挙げることができる。なお、こ
れらは一例であり、これらに制限はされない。
【0048】
培地の一例としては、宿主が大腸菌などのグラム陰性菌、または枯草菌などのグラム陽
性 菌 と い っ た 細 菌 の 場 合 は 、 L B 培 地 ( 日 水 製 薬 ) 、 M 9 培 地 ( J. Exp. Mol. Genet., C
old Spring Harbor Laboratory, New York, p.431, 1972) な ど が ; ま た 宿 主 が 酵 母 の 場
合 、 Y P D 培 地 ( 1 % Bacto yeast extract, 2 % Bacto peptone, 2 % glycerol) 、
Y P G 培 地 ( 1 % Bacto yeast extract, 2 % Bacto peptone, 2 % glycerol) 、 Y P
培 地 ( 1 % Bacto yeast extract, 2 % Bacto peptone、 Y P D 培 地 ( 1 % Bacto yeast
50
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extract, 2 % Bacto peptone, 2 % glucose) 、 0 . 7 % Yeast Nitrogen Base (Difc
o社 )、 Y P 培 地 〔 1 % Bacto yeast extract (Difco社 ) , 2 % Polypeptone S (日 本 製
薬 )〕 、 な ど が 例 示 さ れ る 。
【0049】
培 養 は 、 通 常 10∼ 40℃ の 温 度 範 囲 で 数 ∼ 80時 間 程 度 実 施 さ れ 、 必 要 に 応 じ て 通 気 、 攪 拌
を加えることもできる。培養温度は、宿主に応じて設定できるため、特に制限されないが
、 好 ま し く は 18∼ 42℃ 、 よ り 好 ま し く は 25∼ 38℃ の 範 囲 で 実 施 す る こ と が で き る 。
【0050】
本発明のアルカリ性マンナナーゼの製造方法は、さらに、斯くして得られる培養物から
目的のアルカリ性マンナナーゼ(タンパク質)を採取することによって実施される。目的
10
タンパク質の採取は、培養後、培養上清中または形質転換体(菌体)中に蓄積された、目
的のタンパク質を公知の方法で抽出し、また必要に応じて精製することによって行うこと
ができる。分離精製は、例えば、塩析法、溶媒沈澱法、透析法、限外濾過法、ゲル電気泳
動法、あるいはゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロ
マトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の手法を組み合わせて行うことが
できる。
【0051】
(6)アルカリ性マンナナーゼの用途
上記本発明のアルカリ性マンナナーゼは、酵素組成物、洗浄用組成物、漂白処理用組成
物、及び繊維柔軟剤の成分として使用することができる。以下、これらの各組成物につい
20
て説明する。
【0052】
(6-1) 酵 素 組 成 物
本発明の酵素組成物は、アルカリ性マンナナーゼに他の1種以上の酵素を組み合わせて
なるものである。本発明のアルカリ性マンナナーゼと組み合わせて用いられる酵素として
、下記からなる群から選択される1または2以上の酵素を挙げることができる:
プ ロ テ ア ー ゼ 、 セ ル ラ ー ゼ ( エ ン ド -β -1,4-グ ル カ ナ ー ゼ ) 、 β − グ ル カ ナ ー ゼ ( エ ン
ド -β -1,3(4)-グ ル カ ナ ー ゼ ) 、 リ パ ー ゼ 、 ク チ ナ ー ゼ 、 ペ ル オ キ シ ダ ー ゼ 、 ラ ッ カ ー ゼ
、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、ペクチナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、フェノ
ールオキシダーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、ヘミセルラーゼ、キシログルナナーゼ
30
、キシラナーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ラムノガラクツロナンアセチルエステ
ラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ラムノガラクツロナーゼ、ペクチン酸リアーゼ、ペクチ
ンリアーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、セロビオヒドロラーゼ、トランスグルタミナ
ーゼ、 マンノシダーゼ、β―グルクロニダーゼ。中でも好ましくは、プロテアーゼ、セ
ルラーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、プルラナーゼ、ペクチンリアーゼであ
る。
【0053】
(6-2) 洗 浄 用 組 成 物
本 発 明 の 洗 浄 用 組 成 物 [但 し 、 繊 維 製 品 ( 衣 料 品 を 含 む ) を 対 象 と す る 繊 維 製 品 洗 浄 用
組 成 物 は 除 く ]は 、 本 発 明 の ア ル カ リ 性 マ ン ナ ナ ー ゼ を 含 む こ と を 特 徴 と す る も の で あ る
40
が、これに加えて他の洗浄成分を含むことができる。
【0054】
ここで洗浄成分としては、清浄作用を有するもの、またはこの清浄作用を補強する作用
を有するものを挙げることができ、被洗浄物の種類に応じて適宜選択することができる。
具体的には、界面活性剤、ビルダー、漂白剤、泡抑制剤、起泡剤などを例示することがで
きる。
【0055】
ここで界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面
活性剤、及び両性界面活性剤の中から適宜選択して用いることができる。中でも好ましく
は非イオン性界面活性剤及び/又はアニオン系界面活性剤である。ここで非イオン性界面
50
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活性剤としては、例えばアルキルフェノールのポリエチレン、ポリプロピレン及びポリブ
チレンオキシド縮合物を;カチオン系界面活性剤としては第4級アンモニウム系の界面活
性剤を;アニオン系界面活性剤としてはアルキルエステルスルホネート系の界面活性剤を
;両性界面活性剤としては、第二及び第三アミンの誘導体、複素環式第二及び第三アミン
の誘導体、又は第四級アンモニウム、第四アンモニウム、第四ホスホニウム又は第三ホス
ホニウム化合物の誘導体を例示することができる。但し、これらに制限されることなく、
通常洗浄剤に使用される界面活性剤を広く使用することができる。
【0056】
界 面 活 性 剤 は 、 洗 浄 用 組 成 物 あ た り 0 .1 ∼ 6 0 重 量 % の 割 合 で 使 用 す る こ と が で き る
。制限されないが、洗浄用組成物あたりの各界面活性剤の割合としては、非イオン性界面
10
活 性 剤 に つ い て は 0 . 0 0 1 ∼ 5 0 重 量 % 、 カ チ オ ン 系 界 面 活 性 剤 に つ い て は 0 .2 ∼ 2
5重量%、好ましくは1∼8重量%、アニオン系界面活性剤については1∼40重量%、
好 ま し く は 3 ∼ 2 0 重 量 % 、 両 性 界 面 活 性 剤 に つ い て は 0 .2 ∼ 1 5 重 量 % 、 好 ま し く は
1∼10重量%の割合を例示することができる。
【0057】
ビルダーとしては、アルミノシリケート材料、シリケート、ポリカルボキシレートを挙
げることができる。好ましくは、無機化合物であるアルミノシリケート材料(より詳細に
は水和化された合成ゼオライト)、及びシリケート(例えば積層シリケートや結晶性シリ
ケートが含まれる)である。但し、これらに制限されることなく、通常洗浄剤に使用され
るビルダーを広く使用することができる。ビルダーは、洗浄用組成物あたり5∼80重量
20
%の割合で使用することができる。洗浄用組成物が液状である場合は、5∼30重量%の
割合で使用することが好ましい。
【0058】
漂白剤としては、例えば酸素系漂白剤、過カルボン酸系漂白剤時、及びハロゲン系漂白
剤など、通常洗浄剤に使用される漂白剤を広く使用することができる。漂白剤は、制限さ
れないが、洗浄用組成物あたり0∼25重量%の割合で使用することができる。
【0059】
泡 抑 制 剤 と し て は 、 例 え ば シ リ コ ー ン や シ リ カ -シ リ コ ー ン な ど の 、 通 常 洗 浄 剤 に 使 用
される泡抑制剤を広く使用することができる。泡抑制剤は、制限されないが、洗浄用組成
物あたり0∼2重量%の割合で使用することができる。
30
【0060】
制限はされないが、本発明の洗浄用組成物には、本発明のアリカリマンナナーゼを好ま
し く は 0 .0 0 0 1 ∼ 2 重 量 % 、 よ り 好 ま し く は 0 . 0 0 0 5 ∼ 0 .5 重 量 % の 割 合 で 使 用
することができる。さらに本発明の洗浄用組成物には、上記アルカリ性マンナナーゼに加
えて、セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチン分解酵素、キシログルカナーゼ及びカルボヒド
ラーゼなどの酵素を含むことができる。ここでセルラーゼ、アミラーゼ、ペクチン分解酵
素、キシログルカナーゼ及びカルボヒドラーゼとしては、好適にはpH7∼12の範囲に
最大活性を有するか、若しくは最大活性の10%以上、好ましくは25%以上、より好ま
しくは40%以上の酵素活性を有するような、好アルカリ性セルラーゼまたは耐アルカリ
セルラーゼ、好アルカリ性アミラーゼまたは耐アルカリアミラーゼ、好アルカリ性ペクチ
40
ン分解酵素または耐アルカリペクチン分解酵素、好アルカリ性キシログルカナーゼまたは
耐アルカリキシログルカナーゼ、及び好アルカリ性カルボヒドラーゼまたは耐アルカリカ
ルボヒドラーゼである。
【0061】
制限はされないが、洗浄用組成物中にセルラーゼは0.0001∼2重量%、好ましく
は0.00018∼0.06重量%の割合;アミラーゼは0.0001∼2重量%、好ま
しくは0.00018∼0.06重量%の割合;ペクチン分解酵素は0.0001∼2重
量%、好ましくは0.0005∼0.5重量%の割合;キシログルカナーゼは0.000
1∼2重量%、好ましくは0.0005∼0.5重量%の割合;及びカルボヒドラーゼは
0.0001∼2重量%、好ましくは0.0005∼0.5重量%の割合で配合すること
50
(19)
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ができる。
【0062】
本発明の洗浄用組成物には、上記成分に加えて他の成分、例えば蛍光増白剤、研磨剤、
殺菌剤、曇り抑制剤、再付着防止剤、柔軟剤、着色剤、香料などを配合することもできる
。これらの成分も通常洗浄剤に使用されるものが広く使用できる。
【0063】
本発明の洗浄用組成物の洗浄対象は、繊維製品(衣料を含む)以外のものであれば特に
制限されない。よって、本発明の洗浄用組成物には、例えば食器等を対象とする食器洗い
洗浄組成物;毛髪並びに皮膚等を対象とする毛髪や皮膚洗浄組成物(ヘアシャンプー、ボ
ディーシャンプー);床やガラス等の表面に付着した汚れを洗浄する硬質表面クリーナー
10
;コンタクトレンズ洗浄剤;歯みがきや入れ歯用洗浄剤などを挙げることができる。
【0064】
本発明の洗浄用組成物は、その形態を特に制限するものではなく、例えば液状、ペース
ト状、ゲル状、棒状、錠剤状、噴射スプレー、発泡体状、粉末状、顆粒状、または粒状を
有することができる。また粒状組成物はまた圧縮形態で存在することができ、また液体組
成物は濃縮された形態であってもよい。
【0065】
(6-3) 漂 白 処 理 用 組 成 物
本発明のアルカリ性マンナナーゼは、製紙パルプ(化学パルプ、半パルプ、機械パルプ
、クラフトパルプなど)の塩素を含まない漂白プロセスにおいて、この漂白効果を高め、
20
過酸化水素のニーズを低減または排除するのに有効に使用することができる。ゆえに、本
発明のアリカリマンナナーゼは、塩素を含まない製紙パルプの漂白処理用組成物の1成分
として使用することができる。よって本発明は、アルカリ性マンナナーゼを含む製紙パル
プの漂白処理用組成物を提供するものである。かかる漂白処理用組成物は、本発明のアル
カリ性マンナナーゼに加えて、当該組成物に一般的に使用される各種の成分を広く配合す
ることができる。なお、アルカリ性マンナナーゼの配合割合としては、その比活性にもよ
るが、通常0.001%∼20%の範囲で使用することができる。
【0066】
(6-4) 繊 維 産 業 及 び セ ル ロ ー ス 繊 維 加 工 産 業 に お け る 用 途
本発明のアルカリ性マンナナーゼは、繊維の製造または繊維の加工に際して(好ましく
30
はセルロース系繊維)、必要に応じて他の炭水化物分解酵素(例えば、キシログルカナー
ゼ、キシラナーゼ、種々のペクチン分解酵素)を組み合わせて使用することができる。な
お、ここで「セルロース系繊維」には、綿、混紡綿、または天然若しくは人工セルロース
物質(例えば、木材パルプのようなキシラン含有セルロース繊維)、またはこれらの混紡
から作られた繊維、織布、不織布(ニット、織物、デニム、ヤーン、及びタオル地を含む
)が含まれる。混紡の例としては、綿またはレーヨン/ビスコースと、羊毛,合成繊維(
例えば、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維
、ポリビニリドンクロリド繊維、ポリウレタン繊維、ポリ尿素繊維、アラミド繊維)及び
セルロース含有繊維(例えば、レーヨン/ビスコース、ラミー、麻、アマ/リネン、ジュ
ート、酢酸セルロース繊維、リオセル)より選択される少なくとも1つとの組み合わせか
40
らなる混紡を挙げることができる。
【0067】
本発明のアルカリ性マンナナーゼは、セルロース系繊維を衣類の製造に使用可能な材料
に加工するか、若しくはセルロース系繊維を衣類の製造に好適に使用できる材料に加工す
る目的で使用することができる。繊維産業におけるセルロース系繊維の加工には、例えば
繊維を紡糸してヤーンにする工程:ヤーンから織布またはニットを作成する工程;及びそ
の後に染色等する仕上げ工程など複数の工程が含まれる。
【0068】
こうした工程において、特に織る前に、繊維には高分子糊(例えば、マンナン、でんぷ
ん、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなど)が加えられるが、かかる
50
(20)
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処理を施した材料は、加工前に除去する必要がある。本発明のアルカリ性マンナナーゼは
、こうしたマンナン含有糊の除去に使用することができる。
【0069】
またグアガムやローカストビーンガム等のガラクトマンナンは、繊維の捺染に使用され
る捺染糊の増粘剤として広く使用されている。ゆえに本発明のアルカリ性マンナナーゼま
たはこれを含む酵素組成物は、捺染糊の粘度の低減や、捺染加工後の繊維から捺染糊を洗
浄し除去するために使用することができる。
【0070】
(6-5) 植 物 由 来 の 増 粘 剤 や ゲ ル 化 剤 等 の 分 解 及 び 修 飾
植物成分に由来する増粘剤、ゲル化剤または分散剤には、有効成分としてマンナン、ガ
10
ラクトマンナン、グルコマンナン、またはガラクトグルコマンナンを含むものがある。か
かるものとしては、例えばローカストビーンガムやグアガムなどのガム類を挙げることが
できる。本発明のアルカリ性マンナナーゼまたはこれを含む酵素組成物は、これら増粘剤
、ゲル化剤または分散剤等の用途に広く使用されているマンナン成分を含む植物由来物質
を分解し、その物理化学的性質(例えば、粘度など)を修飾するのに好適に使用すること
ができる。具体的には、マンナンを含む飼料や食物の粘度を低下させ、粘性のあるマンナ
ン含有物質(飼料、食物)の加工を容易にするために好適に使用することができる。
【0071】
(6-6) コ ー ヒ ー 液 や そ の 加 工 に 際 し て 生 じ る ゲ ル 形 成 や 沈 澱 生 成 の 抑 制
また本発明のアルカリ性マンナナーゼまたはこれを含む酵素組成物は、液体コーヒー抽
20
出物中に存在するガラクトマンナン等のマンナン類の加水分解に利用することができ、こ
れによってコーヒー液やその加工に際して生じるゲル形成や沈澱生成を抑制することがで
きる。特にインスタントコーヒーの凍結乾燥中のゲル形成、ホットベンダーなど加温保存
中におけるゲル形成や沈澱生成の抑制に有効に使用することができる。
【0072】
(6-7) 地 下 部 の 破 砕 に お け る 使 用 ( 石 油 掘 穿 )
本 発 明 の ア ル カ リ 性 マ ン ナ ナ ー ゼ ま た は こ れ を 含 む 酵 素 組 成 物 は 、 米 国 特 許 第 5806597
号 、 第 5562160号 、 第 5201370号 、 及 び 第 5067566号 と 同 様 に 、 酵 素 破 砕 剤 と し て 使 用 す る
ことができる。具体的には、井戸掘穿や石油掘穿等を目的として、地盤を破砕し地下部を
形成するための破砕剤として使用することができる。
30
【0073】
破砕剤としては、本発明のアルカリ性マンナナーゼまたはこれを含む酵素組成物を、水
和可能ポリマー、及び当該水和可能ポリマーを本発明のアルカリ性マンナナーゼと架橋す
るための架橋剤と混合して、架橋ポリマーゲルとして使用されることが好ましい。当該架
橋ポリマーゲルは、地下部を破壊するのに十分な圧力下で、地下部に所望の穴を形成しな
がら穴中にポンプで送入される。地下部の穴に送入された架橋ポリマーゲルは、時間とと
もにそれに含まれる本発明のアルカリ性マンナナーゼの分解作用によって粘度が低下して
、低粘度の液状物となる。このため、地下部の溜まった当該液体は、地下部から容易に穴
表面にポンプで送り戻すことができる。こうした架橋ポリマーゲルによる圧搾作業、穴内
に溜まった架橋ポリマーゲルの低粘度化、及びその回収作業の繰り返しにより、地下部を
40
形成することが可能となる。
【0074】
( 6-8) マ ン ノ ー ス 、 オ リ ゴ 糖 の 製 造
本発明のアルカリ性マンナナーゼは、コンニャク等のグルコマンナン、ローカストビー
ンガム、グアーガム、大豆種皮由来のガラクトマンナン、コーヒー豆由来のガラクトマン
ナ ン 、 木 材 由 来 の ガ ラ ク ト グ ル コ マ ン ナ ン 、 海 藻 由 来 の β -1, 4 マ ン ノ 多 糖 類 、 酵 母 由 来
の β -1, 4 マ ン ノ 多 糖 類 に 作 用 さ せ る こ と に よ っ て 、 マ ン ノ ー ス 、 マ ン ノ オ リ ゴ 糖 、 ガ ラ
クトマンノオリゴ糖、グルコマンノオリゴ糖の製造に使用することが出来る。具体的には
、 本 発 明 の ア ル カ リ 性 マ ン ナ ナ ー ゼ を β − 1, 4 マ ン ノ ピ ラ ノ ー ス 環 を 有 す る 植 物 性 多 糖
類に作用させることによって、カロリー成分であるグルコースを含まない製品、例えば甘
50
(21)
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味料、点滴成分、製飴、低カロリー・ノンカロリー成分、サルモネラ菌定着抑制成分、生
分解性プラスチック促進剤を製造することができる。
【0075】
( 6-9) 飼 料 添 加 剤
本発明のアルカリ性マンナナーゼは飼料添加剤として、飼料の調製に使用することがで
きる。具体的には、本発明のアルカリ性マンナナーゼを牛等の反すう動物の飼料に飼料添
加剤として配合すると、当該マンナナーゼの作用によって、弱アルカリ性の胃の中で穀物
に含まれるマンナンが分解されてマンノオリゴ糖が生成され、ビフィダス菌を増やし、整
腸、増体重促進、飼料効率向上、便秘および下痢低減、発情再帰日数短縮、便臭改善の効
果をもたらすことができる。
10
【0076】
( 6-10) 白 水 ス カ ム の 抑 制 剤
本発明のアルカリ性マンナナーゼは、製紙工程における櫛分や抄紙工程で循環利用され
る白水のスカムの抑制剤として有用である。各種の櫛を通して水浴中で固形不純分を取り
除かれた砕木したままのパルプや蒸解パルプは、漂白、乾燥工程を経て連続的にロールに
よって巻き取られるが、櫛槽や抄紙槽で再利用される水は、アルカリ性で白くにごり、溶
解したパルプ由来の多糖類、繁殖した微生物、微生物分泌物、パルプ繊維屑糖によるスカ
ムやスケールを発生させ、櫛分や抄紙槽内でパルプにスカムを混入させる。本発明のアル
カリ性マンナナーゼによれば、細胞壁の損傷による微生物の生育を抑制したり、スカム成
分の溶解を促進させることによって、白水中のスカムの発生を抑制することができる。ま
20
た漂白や乾燥工程でスカムやスケールを分解ないしは焼き切ることが可能である。こうし
た本発明のアルカリ性マンナナーゼによるスカムの発生抑制及び分解作用は、製紙工程に
おいて、パルプの裁断による巻き取りの中断を防ぐのに有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例等
に 限 定 さ れ る も の で は な い 。 な お 、 下 記 の 実 施 例 に お い て 特 に 言 及 し な い 限 り 、 % は w/v
%を意味するものとする。
【0078】
参考例
30
な お 、 下 記 の 実 施 例 に お い て 、 (1)マ ン ナ ナ ー ゼ の 検 出 方 法 ( マ ン ナ ナ ー ゼ 存 在 の 確 認
) 、 及 び (2)マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 の 測 定 は 下 記 の 方 法 に 従 っ て 行 っ た 。
(1) マ ン ナ ナ ー ゼ の 検 出 方 法
マンナナーゼの検出は、マンナン成分を含む固体培地におけるハロー形成の有無を目視
で判断することによって行った。すなわち、被験試料中にマンナナーゼが存在すれば、培
地中のマンナンが分解されてハローが形成される。具体的には、被験試料をマンナン成分
と し て ロ ー カ ス ト ビ ー ン ガ ム を 含 む 固 体 培 地 ( 0.2 % locust bean gum( Sigma, 以 下 同 じ
) 、 0.5 % Polypepton S( 日 本 製 薬 , 以 下 同 じ ) 、 0.5 % yeast extract( Difco, 以 下 同
.
じ ) 、 0.1 % K2 HPO4 、 0.02 % MgSO4 7H2 0、 0.5 % Na2 CO3 、 1.5 % agar) ( 以 下 、 「 マ ン
ナ ン 含 有 固 体 培 地 」 と 称 す る ) に 塗 布 し 、 30℃ で 数 日 間 培 養 を 行 う 。 コ ロ ニ ー 形 成 後 、 当
40
該 固 体 培 地 に 0.1% コ ン ゴ ー レ ッ ト 水 溶 液 を 重 層 し 染 色 す る 。 そ の 後 、 1% 塩 化 ナ ト リ ウ ム
水溶液で脱色し、マンナンの分解により形成されるハローを目視により判断し、被験試料
中のマンナナーゼの存在の有無を評価する。以下、本法によるマンナナーゼの検出方法を
「ハロー法」とも称する。
【0079】
(2) マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 の 測 定
マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 の 測 定 は 、 基 質 と し て ロ ー カ ス ト ビ ー ン ガ ム ( 主 要 構 成 成 分 ; [D-ガ
ラ ク ト ー ス :D-マ ン ノ ー ス ( 1:4) ]) を 用 い て 、 3,5-ジ ニ ト ロ サ リ チ ル 酸 法 [G.L. Miller,
Anal. Chem., 31, 426-428 (1959)]に 従 っ て 、 基 質 ( ロ ー カ ス ト ビ ー ン ガ ム ) 還 元 物 の
生成量を測定することによって行った。
50
(22)
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【0080】
具 体 的 に は 、 測 定 対 象 の 酵 素 液 を 基 質 溶 液 [最 終 濃 度 0.25 % ロ ー カ ス ト ビ ー ン ガ ム 、 50
mM グ リ シ ン -NaCl-NaOH緩 衝 液 , pH 9.0]に い れ て ( 総 量 1 ml) 、 40℃ で 30分 間 処 理 し て
酵 素 反 応 を 行 う 。 反 応 後 、 ジ ニ ト ロ サ リ チ ル 酸 溶 液 1 mlを 加 え 、 沸 騰 水 中 で 5分 間 加 熱 し
た 後 、 氷 水 に て 冷 却 す る 。 冷 却 後 、 水 4mlを 加 え 535nmの 吸 光 度 を 測 定 す る 。 な お 、 1 分 間
に 1 μ molの D-マ ン ノ ー ス に 相 当 す る 還 元 糖 を 生 成 す る 酵 素 量 ( タ ン パ ク 質 量 ) を 1 単 位
(1U)とする。タンパク質量は、標準タンパク質として牛血清アルブミンを用いたタン
パ ク 質 ア ッ セ イ キ ッ ト ( Bio-rad)を 用 い て 測 定 す る 。
【0081】
以下、本法によるマンナナーゼ活性の測定方法を「ジニトロサリチル酸法」と称する。
10
【0082】
実 施 例 1 ア ル カ リ 性 マ ン ナ ナ ー ゼ 生 産 菌 Bacillus sp. Strain JAMB-602の 分 離
埼玉県嵐山町より採取した土壌を滅菌水に懸濁し、上澄み液をマンナン含有固体培地に
塗 布 し て 、 30℃ で 数 日 間 培 養 を 行 っ た 。 コ ロ ニ ー 形 成 後 、 当 該 固 体 培 地 に 0.1% コ ン ゴ ー
レ ッ ト 水 溶 液 を 重 層 し て 染 色 し 、 そ の 後 1% 塩 化 ナ ト リ ウ ム 水 溶 液 で 脱 色 し て マ ン ナ ン の
分解により形成されるハローの有無を評価した。
【0083】
ハロー形成能を有するコロニーをマンナナーゼ生産候補株とし、液体培養を行った。具
体 的 に は 、 液 体 培 地 ( マ ン ナ ン 含 有 固 体 培 地 よ り 寒 天 ( agar) を 除 い た も の ) に 上 記 マ ン
ナ ナ ー ゼ 生 産 候 補 株 を 植 菌 し 、 30℃ で 数 日 間 好 気 的 に 振 と う 培 養 し た 。 そ の 後 、 遠 心 分 離
20
に よ り 培 養 液 を 、 菌 体 ( 沈 殿 物 ) と 上 清 に 分 け 、 得 ら れ た 上 清 を 5mM Tris-HCl緩 衝 液 ( pH
7.5) に て 透 析 し 、 こ れ を 粗 酵 素 液 と し て 用 い て 、 各 p H に お け る マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 を
、参考例に記載するジニトロサリチル酸法に従って測定した。これにより、粗酵素液に含
ま れ る マ ン ナ ナ ー ゼ の 最 適 p H を 求 め た 。 本 法 に て 、 最 適 p H を ア ル カ リ 領 域 ( pH 8以 上
)に有するマンナナーゼ生産候補株(以下、「本発明菌体」という)を単離して、下記に
示 す (1)∼ ( 9) の 試 験 に 供 し た 。
【0084】
(A)試験内容及びその方法
(1) 形 態 学 的 試 験
0.5 % Polypepton S、 0.5 % yeast extract、 0.5 % glucose、 0.1 % K2 HPO4 、 及 び 0.0
30
2 % MgSO4 を 含 む 培 地 を 用 い て 本 発 明 菌 体 を 生 育 さ せ 、 光 学 顕 微 鏡 に よ っ て 細 胞 形 態 及 び
サイズ、並びに鞭毛による運動性の有無を観察した。さらにグラム染色性(陽性/陰性)
、並びに好気性及び嫌気性の別について定法に従って評価した。
【0085】
(2) 胞 子 形 成
培 地 〔 BBL
T M
Trypticace
T M
Soy Agar(1.5 % pancreatic digest of casein、 0.5 % pap
aic digest of soybeen meal、 0.5 % sodium chloride、 1.5 % agar) 及 び 0.01 % MnCl2
・ 4H2 O含 有 〕 を 用 い て 本 発 明 菌 体 を 培 養 し 、 顕 微 鏡 に よ り 胞 子 形 成 の 有 無 を 確 認 し た 。
【0086】
(3) 生 育 条 件 試 験
40
0.5 % Polypepton S、 0.5 % yeast extract、 0.5 % glucose、 0.1 % K2 HPO4 、 及 び 0.0
2 % MgSO4 を 含 む 培 地 を 用 い て 、 本 発 明 菌 体 の 生 育 条 件 ( 生 育 pH範 囲 、 最 適 生 育 pH、 生 育
温 度 範 囲 、 最 適 生 育 温 度 、 生 育 塩 濃 度 範 囲 ) を 求 め た 。 な お 、 pHテ ス ト は pH 6∼ 11ま で の
範 囲 で pH1 ず つ の 間 隔 で 行 っ た 。 培 地 の pHは 5、 6お よ び 7は 塩 酸 、 pH 8及 び 9は 炭 酸 水 素 ナ
ト リ ウ ム 、 pH 10以 上 は 炭 酸 ナ ト リ ウ ム を 用 い て 調 整 し た 。 生 育 温 度 範 囲 の 測 定 に は 温 度
勾 配 バ イ オ フ ォ ト レ コ ー ダ ー ( ADVANTEC) を 用 い た 。 塩 濃 度 テ ス ト は 塩 化 ナ ト リ ウ ム を 用
い て 、 培 地 の 塩 濃 度 を 3% 、 5% 、 7% 、 10% 、 及 び 15% に 調 整 し て 行 っ た 。
【0087】
(4)生 理 性 状 学 試 験
(4-1) オ キ シ ダ ー ゼ 試 験 、 カ タ ラ ー ゼ 試 験
50
(23)
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オキシダーゼ試験は、チトクローム・オキシダーゼ試験用ろ紙「ニッスイ」(製造販売
元 、 日 水 製 薬 株 式 会 社 ) を 用 い 、 カ タ ラ ー ゼ 試 験 は 3% 過 酸 化 水 素 を 用 い て 定 法 に 従 っ て
試験を行った。
【0088】
(4-2) デ ン プ ン 分 解 能 ( Hydrolysis of starch)
固 体 培 地 〔 Bacto Tryptic Soy Broth without Dextrose
T M
( 1.7 % pancreatic digest
of casein、 0.3 % soy bean peptone、 0.5 % NaCl、 0.25 % dipotassim phosphate) (Dif
co社 )、 及 び 0.5 % Starch azure含 有 [Na2 CO3 で pH 9.5に 調 整 ]〕 に 本 発 明 菌 体 を 植 菌 し 、
生育後、ハロー形成の有無を確認した。ハローが形成される場合は、本発明菌体にデンプ
ン分解能があると判断される。
10
【0089】
(4-3) カ ゼ イ ン 分 解 能 ( Hydrolysis of casein)
固 体 培 地 〔 BBL社 製 Trypticace Soy Agar
T M
(1.5 % pancreatic digest of casein、 0.
5 % papaic digest of soybeen meal、 0.5 % NaCl、 1.5 % agar)、 及 び 0.5 % skim milk
含 有 [Na2 CO3 で pH 9.0に 調 整 ]〕 に 本 発 明 菌 体 を 植 菌 し 、 生 育 後 菌 体 を 取 り 除 き 、 30 % ト
リクロロ酢酸溶液を培地に滴下し、ハロー形成の有無を確認した。ハローが形成される場
合は、本発明菌体にカゼイン分解能があると判断される。
【0090】
(4-4) ゼ ラ チ ン 分 解 能 ( Hydrolysis of gelatin)
固 体 培 地 〔 Nutrient Broth(0.3 % beef extract、 0.5 % peptone) (Difco社 )、 2 % aga
20
r、 及 び 1 % gelatin含 有 [Na2 CO3 で pH 9.0に 調 整 ]〕 に 本 発 明 菌 体 を 植 菌 し 、 生 育 後 菌 体
を 取 り 除 き 、 30 % ト リ ク ロ ロ 酢 酸 溶 液 を 培 地 に 滴 下 し 、 ハ ロ ー 形 成 の 有 無 を 確 認 し た 。
ハローが形成される場合は、本発明菌体にカゼイン分解能があると判断される。
【0091】
(4-5) イ ン ド ー ル 産 生 能 ( Production of indole)
培 地 〔 SIM確 認 培 地 ( 0.3 % beef extract、 2.8 % peptone、 0.0025 % sodium thiosulf
ate、 0.1 % ammonium Fe(III) citrate、 0.3 % agar) ( 日 水 製 薬 社 製 ) 〕 を 試 験 管 に 分
注 し 、 本 発 明 菌 体 を 穿 刺 培 養 し 、 イ ン ド ー ル 試 薬 ( p-ジ メ チ ル ア ミ ノ ベ ン ズ ア ル デ ヒ ド 、
5g; ア ミ ル ア ル コ ー ル 、 75 ml; 濃 塩 酸 、 25 ml) を 1 ml加 え 、 変 色 の 有 無 を 確 認 し た 。 変
色が観察される場合は、本発明菌体にインドール産生能があると判断される。
30
【0092】
(4-6) 硫 化 水 素 生 成 能 ( Production of H2 S)
培 地 〔 SIM確 認 培 地 ( 0.3 % beef extract、 2.8 % peptone、 0.0025 % sodium thiosulf
ate、 0.1 % ammonium Fe(III) citrate、 0.3 % agar) ( 日 水 製 薬 社 製 ) 〕 を 試 験 管 に 分
注し、本発明菌体を穿刺培養し、硫化水素の生成を確認した。培地が黒く変色する場合に
、本発明菌体に硫化水素生成能があると判断される。
【0093】
(4-7) 硝 酸 塩 及 び 亜 硝 酸 塩 の 還 元 能 ( KNO3 reduction、 NaNO2 reduction) ( そ れ ぞ れ
培 地 6お よ び 7)
培 地 6〔 1 % beef extract、 1 % peptone、 0.5 % NaCl、 及 び 0.1 % KNO3 含 有 [Na2 CO3 で
40
pH 9.5に 調 整 ]〕 、 ま た は 培 地 7〔 1 % beef extract、 1 % peptone、 0.5 % NaCl、 及 び 0.0
01 % NaNO2 含 有 [Na2 CO3 で pH 9.5に 調 整 ]〕 を 、 試 験 管 に 各 々 分 注 後 、 植 菌 を 行 な い 、 本
発 明 菌 体 を 生 育 さ せ た 。 生 育 後 、 培 地 6に 0.33 % ス ル フ ァ ニ ル 酸 お よ び 0.5 % ジ メ チ ル α
-ナ フ チ ル ア ミ ン を 各 々 1 ml加 え 、 変 色 の 有 無 を 観 察 し た 。 培 地 が 赤 く 変 色 し た 場 合 は 、
亜硝酸塩が存在し、本発明菌体に硝酸塩に対する還元能があると判断される。培地が変色
しない場合は、亜鉛を少量加える。この際、培地が赤色に変色した場合は、培地中に硝酸
塩が残留しており、本発明菌体に硝酸塩への還元能は無いと判断される。一方、亜鉛を加
えた際に培地が変色しなかった場合は、本発明菌体に亜硝酸塩への還元能があり、菌体が
亜硝酸塩を還元して、脱窒が行なわれたと判断される。
【0094】
50
(24)
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ま た 、 培 地 7 を 用 い て 本 発 明 菌 体 を 生 育 後 、 当 該 培 地 7に 0.33 % ス ル フ ァ ニ ル 酸 お よ び
0.5 % ジ メ チ ル α -ナ フ チ ル ア ミ ン を 1 mlず つ 加 え た 場 合 に 、 培 地 が 変 色 し な か っ た 場 合
は、当該本発明菌体は硝酸塩を還元せずに亜硝酸塩のみを還元する能力があると判断され
る。
【0095】
(4-8) DNase 活 性
固 体 培 地 〔 Bacto DNase TEST AGAR (2 % Bacto Tryptose、 0.2 % deoxyribonucleic ac
id、 0.5 % NaCl、 1.5 % Bacto agar)(Difco社 )〕 に 本 発 明 菌 体 を 植 菌 し 、 生 育 後 菌 体 を 取
り 除 き 1N 塩 酸 を 培 地 に 滴 下 し 、 ハ ロ ー 形 成 の 有 無 を 確 認 し た 。 ハ ロ ー が 形 成 さ れ る 場 合
は 、 本 発 明 菌 体 に DNase 活 性 が あ る と 判 断 さ れ る 。
10
【0096】
(4-9) 糖 の 資 化 性
軟 寒 天 培 地 〔 0.3 % agar、 0.7 % K2 HPO4 、 0.2 % KH2 PO4 、 0.01 % MgSO4 、 0.1 % (NH4 )2
SO4 、 0.5 % NaCl、 0.5 % 各 種 炭 素 源 ( L-arabinose,cellobiose, D-fructose, D-galacto
se, D-gulucose, grycerol, inositol, D-lactose, maltose, D-mannitol, D-mannose, D
-R[raffinose, L-rhamnose, D-sorbitol, sucrose, D-trehalose, xylose]、 及 び vitamin
solution含 有 [Na2 CO3 で pH 9.9に 調 整 ]〕 に 本 発 明 菌 体 を 穿 刺 培 養 し 生 育 さ せ 、 生 育 の 有
無から、各種炭素源(糖)に対する本発明菌体の資化性を評価した。
【0097】
(5) 16S rDNA塩 基 配 列 を 用 い た 相 同 性 解 析
20
最適pHをアルカリ領域に有する上記マンナナーゼ生産候補株(本発明菌体)から、定
法 に 従 っ て ゲ ノ ム DNAを 抽 出 し た [H. Saito and K. Miura: Biochem.Biophys.Acta, 72, 6
19-629 (1963)]。 こ れ を テ ン プ レ ー ト と し 、 約 1,500 bpの 16S rRNA遺 伝 子 を 増 幅 す る こ と
の で き る ユ ニ バ ー サ ル プ ラ イ マ ー を 用 い て PCRを 行 な い 、 16S rRNA遺 伝 子 を 増 幅 し た 。 得
ら れ た PCR産 物 を 精 製 し た 後 、 こ れ を テ ン プ レ ー ト と し 、 16S rRNA遺 伝 子 の 内 部 共 通 配 列
より作成したプライマーを用い、シーケンス反応を行ない、塩基配列の決定を行った。得
ら れ た 塩 基 配 列 の デ ー タ を も と に 、 FASTA program (http://www.ddbj.nig.ac.jp)を 用 い
て、相同性検索を行った。
【0098】
(6) HPLCに よ る GC含 量 の 測 定
30
Tamaoka等 [FEMS Microbiol Lett., 25, 125-128 (1984)]の 方 法 に 従 い 、 菌 体 中 の GC含
量 を 測 定 し た 。 培 養 菌 体 よ り 抽 出 精 製 し た DNAを エ タ ノ ー ル 沈 澱 し た 後 、 乾 燥 し 、 蒸 留 水
で 0.5μ g/μ lの 濃 度 に 調 整 し た 。 こ の DNA溶 液 10μ lを 沸 騰 溶 液 中 に 10分 間 保 っ た 後 、 氷 水
で 急 冷 し 、 一 本 鎖 DNAに 変 性 さ せ た 。 こ れ に 10μ lの ヌ ク レ ア ー ゼ P1溶 液 ( 0.1 mg/ml ヌ ク
レ ア ー ゼ P1, 40 mM酢 酸 ナ ト リ ウ ム , 2 mM 硫 酸 亜 鉛 , pH 5.3) を 加 え て 50℃ で 1時 間 処 理
し て 加 水 分 解 を 行 な い 、 DNAを ヌ ク レ オ チ ド に し た 。 さ ら に こ れ に 10μ l の ア ル カ リ フ ォ
ス フ ァ タ ー ゼ ( 2.4単 位 /ml, 0.1M Tris-HCl, pH 8.1) を 加 え て 37℃ で 2時 間 以 上 処 理 し 、
ヌ ク レ オ シ ド に し た も の を 分 析 試 料 と し 、 下 記 条 件 の 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( HPLC
) に 供 し て GC含 量 を 求 め た 。
【0099】
40
< 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー の GC含 量 分 析 条 件 >
機 器 : 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ LC Module 1(Waters社 )、
検 出 波 長 : 260 nm、
分 析 用 カ ラ ム : Cosmosil 5C18カ ラ ム ( 4.6× 150 mm) ( ナ カ ラ イ テ ス ク ) 、
カ ラ ム 温 度 : 室 温 ( 15-25℃ ) 、
移 動 相 : 0.02 Mリ ン 酸 一 ア ン モ ニ ウ ム -ア セ ト ニ ト リ ル ( 19: 1、 v/v) 、
流 速 : 1 ml/min 、
サ ン プ ル 量 : 10 μ l 。
【0100】
(7) DNA- DNAハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン
50
(25)
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培 養 菌 体 よ り 抽 出 精 製 し た DNA を 用 い て 、 Ezaki等 [Int. J. Syst. Bacteriol., 39, 22
4-229 (1989)]の 方 法 に 従 い 、 DNA-DNAハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン を 行 っ た 。
【0101】
(8)菌 体 脂 肪 酸 組 成 の 分 析
Waino等 [Int. Syst. Bacteriol., 49, 821-831 (1999)]の 方 法 に 従 っ て 本 発 明 菌 体 の 脂
肪酸組成を分析した。テフロン(登録商標)ライニング付き耐熱性スクリューキャップの
試 験 管 に 凍 結 乾 燥 し た 本 発 明 菌 体 20 mgを 入 れ た 。 こ れ に 5 v/v% 無 水 塩 酸 ・ メ タ ノ ー ル 溶
液 ( 国 産 化 学 ) 2 mlを 加 え 、 キ ャ ッ プ を 締 め た 。 100℃ 、 3時 間 加 熱 処 理 を 行 な っ た 。 加 熱
後 、 冷 却 し 、 蒸 留 水 を 1 ml加 え た 後 、 3 mlの ヘ キ サ ン を 加 え 2分 間 激 し く 振 盪 し た 。 3000
× gで 5分 間 遠 心 し 、 ヘ キ サ ン 層 を 別 の ス ク リ ュ ー キ ャ ッ プ に 移 し た 。 残 っ た 塩 酸 ・ メ タ ノ
10
ー ル 溶 液 に ま た 3 mlの ヘ キ サ ン を 加 え 同 様 の 操 作 を 行 な い 、 3回 抽 出 し た 。 斯 く し て 回 収
し た ヘ キ サ ン 層 に 同 量 の 蒸 留 水 を 加 え 2分 間 激 し く 振 盪 し た 。 こ れ を 3000× Gで 5分 間 遠 心
して、ヘキサン層から塩酸を除いた。予めジエチルエーテルで洗浄し乾燥しておいた無水
硫 酸 ナ ト リ ウ ム 5 gを 入 れ た 新 し い 試 験 管 に 、 上 記 の ヘ キ サ ン 層 を 移 し 、 軽 く 撹 拌 し た 後
、 3時 間 静 置 し た 。 こ の ヘ キ サ ン 層 を 新 し い 試 験 管 に 移 し 、 減 圧 濃 縮 機 で 200μ l程 度 に な
る ま で 濃 縮 し た 。 こ れ を ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ・ マ ス ス ペ ク ト ロ メ ト リ ー ( GC/MS) に
供して、菌体脂肪酸組成を分析した。
【0102】
(9) キ ノ ン 組 成 の 分 析
Komagata等 [Methods Microbiol., 19, 161-203 (1983)]の 方 法 に 従 い 、 本 発 明 菌 体 の
20
キ ノ ン 組 成 を 分 析 し た 。 凍 結 乾 燥 し た 本 発 明 菌 体 ( 約 200 mg) を ね じ 口 試 験 管 に 入 れ 、 20
mlの ク ロ ロ ホ ル ム -メ タ ノ ー ル ( 2: 1,v/v) を 加 え 、 冷 暗 所 で 一 晩 置 き 、 菌 体 成 分 を 抽 出
し た 。 こ の ク ロ ロ ホ ル ム -メ タ ノ ー ル 懸 濁 液 を 濾 紙 で 濾 過 し 、 濾 液 を ナ ス 型 フ ラ ス コ に 集
め、ロータリー・エバポレーターで濃縮乾固させた。ナス型フラスコの内壁に乾固した菌
体 成 分 を 少 量 の ア セ ト ン で 抽 出 し た 。 こ の ア セ ト ン 抽 出 液 を 、 シ リ カ ゲ ル TLCプ レ ー ト ( M
erck Kiesel-gel 60 F2 5 4 , 0.2 mm thickness, 20 cm× 20 cm) に ス ポ ッ ト し た 。 同 様 に
、 当 該 シ リ カ ゲ ル TLCプ レ ー ト に 、 以 下 に 示 し た マ ー カ ー を ス ポ ッ ト し た 。 こ の TLCプ レ ー
ト を ヘ キ サ ン -ジ エ チ ル エ ー テ ル ( 4: 1,V/V) で 1時 間 展 開 し て 、 乾 燥 さ せ た 後 、 紫 外 線 ラ
ン プ ( 254 nm) 下 で 、 展 開 し た ア セ ト ン 抽 出 液 ( 被 験 試 料 ) の ス ポ ッ ト に つ い て 、 キ ノ ン
のバンドを確認した。
30
【0103】
確 認 し た キ ノ ン の バ ン ド 画 分 を TLCプ レ ー ト か ら 削 り 取 り 、 試 験 管 に 移 し 、 1 mlの ア セ
トンを加え、軽く振盪して抽出した。このアセトン抽出液を高速液体クロマトグラフィー
の 前 処 理 用 0.5μ m の 疎 水 性 PTFEメ ン ブ ラ ン フ ィ ル タ ー ( サ ン プ レ ッ プ FH4, Millipore)
で 濾 過 し た 後 、 窒 素 ガ ス を 使 用 し 、 約 100μ l位 に 濃 縮 し た 。 こ れ を 試 験 サ ン プ ル と し て 、
下記条件の高速液体クロマトグラフィーに供して、キノン組成の分析を行った。
【0104】
<高速液体クロマトグラフィーでのキノン分析条件>
機 器 : 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ LC Module 1 (Waters社 )、
検 出 波 長 : 270 nm、
40
分 析 用 カ ラ ム : m-Bondasphere(5 m, C18,100Å )( 3.9× 150 mm) (Waters社 )、
ガ ー ド カ ラ ム : Delta-Pak( C18,100Å ) (Waters社 )、
カ ラ ム 温 度 : 室 温 ( 15-25℃ ) 、
移 動 相 : メ タ ノ ー ル -イ ソ プ ロ パ ノ ー ル ( 2: 1, v/v) 、
流 速 : 1 ml/min 、
サ ン プ ル 量 : 10 μ l、
標 準 試 料 : メ ナ キ ノ ン -6、 メ ナ キ ノ ン -7、 ユ ビ キ ノ ン -7、 ユ ビ キ ノ ン -8、 及 び ユ ビ キ ノ
ン -10を 使 用 。
【0105】
(B)試験結果
50
(26)
結果を表1に示す。
【0106】
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(27)
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【表1】
10
20
30
40
【0107】
50
(28)
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表1に示すように、土壌から分離したマンナナーゼ生産候補株(本発明菌体)は、好ア
ル カ リ 性 の Bacillus属 細 菌 で あ る こ と が 分 か っ た 。 さ ら に 16S rDNA塩 基 配 列 の 相 同 性 解 析
T
の 結 果 、 Bacillus alcalophilus( DSM485 ) と 96.7%の 相 同 性 を 、 ま た Bacillus pseudoal
T
calophilus( DSM8725 ) と 96.3% の 相 同 性 を 有 し て い た 。 相 同 性 解 析 に よ り 本 発 明 菌 体 と
近 縁 と 考 え ら れ る 上 位 11種 の 菌 株 と 本 発 明 菌 体 の 16S rDNA塩 基 配 列 を 用 い て 近 隣 結 合 法 [S
aitou and Nei: Molecular Biology and Evolution, 4, 406-425 (1987)]を 行 う こ と に よ
り、分子系統樹を作成し、本発明菌体の近縁種及び帰属分類群の検討を行った。作成した
分 子 系 統 樹 を 図 1 に 示 す 。 そ の 結 果 、 本 発 明 菌 体 は 、 上 記 B. alcalophilus及 び B. pseudo
alcalophilusと 、 同 一 で は な い も の の 姉 妹 群 を 形 成 す る こ と が 判 明 し た 。 ま た 、 本 発 明 菌
体 と 上 記 の B. alcalophilus及 び B. pseudoalcalophilusと の ゲ ノ ム 関 連 性 を 評 価 す る た め
10
に 、 DNA-DNAハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン を 行 っ た 結 果 、 本 発 明 菌 体 と B. alcalophilus及 び B.
pseudoalcalophilus と は そ れ ぞ れ 12.4%及 び 11.2%の 相 同 性 し か 見 ら れ な か っ た 。 こ の こ
と か ら 本 発 明 菌 体 は 、 Bacillus属 に 属 す る 新 種 の 微 生 物 で あ る と 考 え ら れ た 。 こ の た め 、
当 該 本 発 明 菌 体 を 、 「 Bacillus sp.Strain JAMB-602」 と 命 名 し て 、 平 成 1 6 年 9 月 2 4
日付けで、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6に住所を有する独立行政法人
産 業 技 術 総 合 研 究 所 、 特 許 生 物 寄 託 セ ン タ ー に 、 寄 託 者 が 付 し た 識 別 の た め の 表 示 を 「 Ba
cillus sp. Strain JAMB-602」 と し 、 受 領 番 号 を 「 F E R M A P − 2 0 2 2 6 」 と し て
寄託した(通知番号:16産生寄第226号)。
【0108】
実施例2 マンナナーゼ遺伝子のクローニング、及び塩基配列の決定
20
上 記 Bacillus sp. Strain JAMB-602( 以 下 、 単 に 「 JAMB-602株 」 と い う ) を 、 マ ン ナ ン
含 有 固 体 培 地 ( 0.2 % locast bean gum、 0.5 % Polypepton S、 0.5 % yeast extract、 0.
.
1 % K2 HPO4 、 0.02 % MgSO4 7H2 0、 0.5 % Na2 CO3 、 1.5 % agar) で 培 養 し 、 得 ら れ た 培 養
菌 体 か ら 定 法 に 従 っ て ゲ ノ ム DNAを 抽 出 し た [H. Saito and K. Miura, Biochim. Biophys.
Acta, 72, 619-629 (1963)]。 こ の ゲ ノ ム DNAを EcoRIに て 消 化 し 、 High Pure PCR Produc
t Purification kit (Roche Diagnostics)を 用 い て 精 製 し た 。 こ れ を 、 予 め EcoRIで 消 化
後 、 ア ル カ リ フ ォ ス フ ァ タ ー ゼ (Roche Diagnostics)で 処 理 し た pUC18プ ラ ス ミ ド ベ ク タ ー
に 、 DNA Ligation Kit Ver.2( Takara製 ) を 用 い て ラ イ ゲ ー シ ョ ン を 行 っ た 。 ラ イ ゲ ー シ
ョ ン 後 の プ ラ ス ミ ド を コ ン ピ テ ン ト セ ル (E. coli HB101) に 導 入 し て 、 形 質 転 換 し た 後 [
D. Hanahan, Mol. Gen. Genet., 166, 557-580 (1983)]、 こ れ を ア ン ピ シ リ ン ( 100μ g/m
30
l) を 含 む Luria-Bertani( LB) 固 体 培 地 ( Difco) に 塗 布 し 、 37℃ で 一 晩 培 養 し た 。 培 養
後 、 上 記 L B 固 体 培 地 に 0.25 % コ ン ニ ャ ク マ ン ナ ン 、 50 mM グ リ シ ン -NaCl-NaOH緩 衝 液
(pH 9.0)、 0.7 % 寒 天 お よ び 1 mg/ml リ ゾ チ ー ム を 含 む ゲ ル を 重 層 し 37℃ で 4時 間 保 温 し
、 次 い で 、 当 該 ゲ ル 層 の 上 に 0.1 % コ ン ゴ ー レ ッ ド 水 溶 液 を 注 い だ 。 そ し て 、 周 囲 に ク リ
アゾーンを形成(ハロー形成)しているクローンを、マンナナーゼ活性、すなわちをマン
ナナーゼ遺伝子を有するクローン(陽性クローン)として単離した。
【0109】
こ の 陽 性 ク ロ ー ン か ら プ ラ ス ミ ド を 抽 出 し ( High Pure Plasmid Isolation kit: Roche
製 ) 、 こ れ を pU5Aと 命 名 し 、 そ の 中 に 導 入 さ れ て い る マ ン ナ ナ ー ゼ 遺 伝 子 の 塩 基 配 列 を 、
ABI Prism BigDye Terminator Cycle Sequencing Kitお よ び ABI 377 Sequencerを 用 い て
40
決定した。決定したマンナナーゼ遺伝子の塩基配列、ならびにこれから推定したマンナナ
ー ゼ の ア ミ ノ 酸 配 列 を 図 2 に 示 す 。 マ ン ナ ナ ー ゼ 遺 伝 子 は 、 490個 の ア ミ ノ 酸 か ら な る タ
ン パ ク 質 ( 分 子 量 53763 Da) を コ ー ド す る 1470 bpの オ ー プ ン リ ー デ ィ ン グ フ レ ー ム ( ORF
) を 有 し て お り 、 そ れ は G+ Cを 39.5mol% の 割 合 で 含 ん で い た 。 潜 在 的 な リ ボ ゾ ー ム 結 合
部 位 ( 5'-GAGGAG-3': 図 2 中 「 RBS」 と し て 標 記 ) は 開 始 コ ド ン TTGの 9bp上 流 に 位 置 し て
お り 、 推 定 プ ロ モ ー タ ー 配 列 で あ る 5'-TTGAAA-3'( -35領 域 : 図 2 中 「 -35」 と し て 標 記 )
及 び 5'-TAGTTT-3'( -10領 域 : : 図 2 中 「 -10」 と し て 標 記 ) は 、 開 始 コ ド ン か ら そ れ ぞ れ
158bp上 流 及 び 135bp上 流 に 17bpの 間 隔 を お い て 位 置 し て い た 。 Ala32と Asn33と の 間 に 潜 在
的 な 切 断 部 位 が あ り 、 N末 端 領 域 に 32個 の ア ミ ノ 酸 か ら な る シ グ ナ ル 配 列 の 存 在 が 認 め ら
れ た 。 終 止 コ ド ン TAGの 6 bp下 流 域 に 逆 反 復 配 列 ( 図 中 、 → 及 び ← で 示 す ) が 認 め ら れ た
50
(29)
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。 こ れ ら の こ と か ら 成 熟 酵 素 ( mature) の 分 子 量 は 50422 Da( 458ア ミ ノ 酸 ) で あ り 、 等
電 点 は pH 5.01で あ る と 推 定 さ れ た 。
【0110】
上 記 マ ン ナ ナ ー ゼ 遺 伝 子 の 塩 基 配 列 か ら JAMB-602株 由 来 ア ル カ リ 性 マ ン ナ ナ ー ゼ に つ い
て 推 定 さ れ る ア ミ ノ 酸 配 列 を 、 FASTAア ル ゴ リ ズ ム を 用 い た コ ン ピ ュ ー タ ・ ホ モ ロ ジ ー 分
析 に よ り 、 他 の 公 知 の マ ン ナ ナ ー ゼ ( GH family 5) の ア ミ ノ 酸 配 列 と 相 同 性 解 析 を 行 っ
た (http://afmb.cnrs-mrs.fr/CAZY)。
【0111】
結 果 を 表 2 に 示 す 。 こ の 結 果 か ら 本 発 明 菌 体 JAMB-602株 に 由 来 す る ア ル カ リ 性 マ ン ナ ナ
ー ゼ は 、 Bacillus sp. I633に 由 来 す る マ ン ナ ナ ー ゼ と ア ミ ノ 酸 配 列 に お い て 類 似 す る も
10
のの新規なマンナナーゼであることが判明した。
【0112】
【表2】
20
【0113】
30
実施例3 マンナナーゼの発現
JAMB-602株 の ゲ ノ ム DNAを 鋳 型 と し て 、 LA Taq DNA polymerase( TaKaRa) を 用 い て PCR
を 行 な い 、 マ ン ナ ナ ー ゼ 遺 伝 子 を 増 幅 し た 。 PCRに 際 し て 、 マ ン ナ ナ ー ゼ 遺 伝 子 の 5'及 び 3
'末 端 領 域 の 配 列 を 有 す る オ リ ゴ ヌ ク レ オ チ ド に BamHI/SalI制 限 酵 素 部 位 ( 下 線 部 ) を 導
入した下記の2つプライマーを作成し、これを使用した。
5'-CGTCGACTGTCATCCTCCGCGCTGGCTGCG-3'(配 列 番 号 6 )
5'-TTGGATCCCTGGTGATTAGTTACTCAGCAC-3'(配 列 番 号 7 )
斯 く し て 増 幅 し た マ ン ナ ナ ー ゼ 遺 伝 子 を 、 制 限 酵 素 BamHI及 び SalIに て 処 理 し た 後 、 こ
れ を 、 同 制 限 酵 素 で 消 化 後 ア ル カ リ フ ォ ス フ ァ タ ー ゼ 処 理 し た ベ ク タ ー pHSP64( E. coliB. subtilisシ ャ ト ル ベ ク タ ー ) [Biosci. Biotechnol. Biochem., 59, 2172-2175 (1995)
40
]に ラ イ ゲ ー シ ョ ン し た 。 ラ イ ゲ ー シ ョ ン 後 の プ ラ ス ミ ド ( pA5AM) を 、 コ ン ピ テ ン ト セ ル
(E. coli HB101)に 導 入 し た 。 得 ら れ た 形 質 転 換 体 を 、 ア ン ピ シ リ ン ( 100μ g/ml) を 含
む L B 固 体 培 地 に 塗 布 し 、 37℃ で 一 晩 培 養 し た 。 培 養 後 、 L B 固 体 培 地 に 0.25% コ ン ニ ャ
ク マ ン ナ ン 、 50 mM グ リ シ ン -NaCl-NaOH緩 衝 液 (pH 9.0)、 0.7 % agarお よ び 1 mg/mlリ ゾ
チ ー ム を 含 む ゲ ル を 重 層 し 、 37℃ で 4時 間 保 温 し た 後 、 0.1 % コ ン ゴ ー レ ッ ド 水 溶 液 に て
ハローの検出を行い、形質転換体のマンナナーゼ活性を評価した。
【0114】
実施例4 マンナナーゼの発現、及び精製
マ ン ナ ナ ー ゼ を 高 発 現 す る た め に 、 実 施 例 3 で 調 製 し た プ ラ ス ミ ド ( pA5AM) を 用 い て
、 Bacillus subtilis ISW1214 ( TaKaRa) を 形 質 転 換 [S. Chang, et al., Mol. Gen. Gen
50
(30)
et.,
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168, 111-115 (1979)]し た 。 こ れ を CLT培 地 〔 10 % corn steep liquor( 和 光 純 薬
.
) 、 0.1 % yeast extract、 1 % bonito meat extract、 0.1 % KH2 PO4 、 0.02 % MgSO4 7H2
O、 NaOHで pH 6.8に 調 整 、 7 % maltose( 別 滅 菌 ) 、 0.05 % CaCl2 ( 別 滅 菌 ) 、 tetracycli
ne( 15 μ g/ml) 〕 で 、 30 ℃ で 3日 間 好 気 的 に 振 と う 培 養 を 行 っ た 。 培 養 後 、 培 養 液 を 遠
心 分 離 ( 12,000× g、 10分 間 ) に よ り 菌 体 と 上 清 に 分 け 、 上 清 を 粗 酵 素 液 と し 、 こ れ か ら
マ ン ナ ナ ー ゼ を 精 製 し た 。 な お 、 精 製 工 程 は す べ て 4℃ 以 下 で 行 っ た 。
【0115】
具 体 的 に は 、 ま ず 培 養 上 清 ( 31.8 mL) を 、 10 mM Tris-HCl緩 衝 液 (pH 7.5)で 一 晩 透 析
を 行 っ た 。 透 析 後 、 透 析 液 を 10 mM Tris-HCl緩 衝 液 (pH 7.5)に て 平 衡 化 し た DEAE-650M(
東 ソ ー ) カ ラ ム ( 2.5× 20cm) に 供 し て 吸 着 さ せ 、 同 緩 衝 液 を 通 液 し て 非 吸 着 タ ン パ ク 質
10
を 溶 出 し た 。 次 い で 塩 化 ナ ト リ ウ ム 溶 液 ( 10 mM Tris-HClに 溶 解 ) を 用 い て 、 50 mM か ら
150 mMの 塩 化 ナ ト リ ウ ム 濃 度 勾 配 を か け マ ン ナ ナ ー ゼ を 溶 出 し た 。 マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 画 分
を 10 mM リ ン 酸 塩 緩 衝 液 (pH 7.0)に て 平 衡 化 し た ハ イ ド ロ キ シ ア パ タ イ ト ( 日 本 ケ ミ カ ル
) カ ラ ム ( 2.5× 20 cm) に 吸 着 さ せ 、 同 緩 衝 液 に て 通 液 し て 非 吸 着 タ ン パ ク 質 を 溶 出 し た
。 次 に リ ン 酸 塩 緩 衝 液 (pH 7.0)を 用 い て 、 10 mMか ら 150 mMの リ ン 酸 濃 度 勾 配 を か け マ ン
ナ ナ ー ゼ を 溶 出 し た 。 マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 画 分 を 限 外 濾 過 ( Amicon Ultra 10k; Millipore
) に て 濃 縮 し 、 リ ン 酸 塩 緩 衝 液 を 10 mM Tris-HCl緩 衝 液 (pH 7.5)に 置 換 し た 。 同 緩 衝 液 に
て 平 衡 化 し た DEAE-650Mカ ラ ム に 濃 縮 サ ン プ ル を 吸 着 し 、 同 緩 衝 液 に て 通 液 し て 非 吸 着 タ
ン パ ク 質 を 溶 出 し た 。 次 い で 塩 化 ナ ト リ ウ ム 溶 液 ( 10 mM Tris-HCl緩 衝 液 に 溶 解 ) を 用 い
て 、 80 mM か ら 140 mMの NaCl濃 度 勾 配 を か け マ ン ナ ナ ー ゼ を 溶 出 し た 。 マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性
20
画 分 を 限 外 濾 過 に て 濃 縮 し 、 緩 衝 液 を 5 mM Tris-HCl緩 衝 液 (pH 7.5)に 置 換 し た 。 得 ら れ
た マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 画 分 を SDS-ポ リ ア ク リ ル ア ミ ド ゲ ル 電 気 泳 動 に か け て 、 精 製 し た 酵 素
が 、 分 子 量 約 50 kDaの 単 一 バ ン ド を 示 す こ と を 確 認 し た ( 図 3 ) 。
【0116】
な お 、 SDS-ポ リ ア ク リ ル ア ミ ド ゲ ル 電 気 泳 動 は 、 Laemmli [Nature, 2277, 680-685 (19
70)] の 方 法 に 従 っ て 行 っ た 。 電 気 泳 動 に は 、 12 % ア ク リ ル ア ミ ド ゲ ル を 使 用 し 、 染 色 に
は ク マ ー シ ー ・ ブ リ リ ア ン ト ・ ブ ル ー ( CBB) 染 色 を 使 用 し た 。
【0117】
下記の表3に示すように、上記の陰イオン交換クロマトグラフィー及びヒドロキシアパ
タ イ ト ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー と い っ た 精 製 操 作 に よ り 、 組 換 え マ ン ナ ナ ー ゼ は 12.5倍 に 精 製
30
さ れ て 、 287 U/mgも の 高 い 比 活 性 を 示 し た 。 な お 、 収 率 は 33% で あ っ た 。
【0118】
【表3】
40
【0119】
こ の こ と か ら 、 上 記 方 法 に よ れ ば 、 組 換 え マ ン ナ ナ ー ゼ が 、 培 養 上 清 1 Lあ た り 2.4gも
の 高 収 率 で 生 産 で き る こ と が わ か っ た 。 す な わ ち 、 上 記 宿 主 -ベ ク タ ー 系 に よ る と 、 組 換
えマンナナーゼの工業的生産が可能であると考えられる。
【0120】
実施例5 マンナナーゼの酵素学的特性
(1)最適pH
基 質 ( 最 終 濃 度 0.25% ロ ー カ ス ト ビ ー ン ガ ム ) を 含 む 、 種 々 pH( pH 5.6− 10.9) を 有 す
50
(31)
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る 50 mM 緩 衝 液 ( pH 5.6− pH 6.1: 酢 酸 塩 緩 衝 液 ; pH 6.3− pH 8.5: リ ン 酸 塩 緩 衝 液 ; pH
7.7− pH 10.9: グ リ シ ン -NaCl-NaOH 緩 衝 液 ) に 、 実 施 例 4 で 精 製 し た マ ン ナ ナ ー ゼ ( 0.
18 U/ml) を 加 え 、 40℃ で 5分 間 酵 素 反 応 を 行 っ た 。 他 の 反 応 条 件 は 参 考 例 に 記 載 す る ジ ニ
ト ロ サ リ チ ル 酸 法 の 条 件 に 準 じ た 。 結 果 を 図 4 ( a ) に 示 す 。 こ の 結 果 か ら pH 7.5∼ 9.5
、 好 ま し く は pH 8∼ 9.5、 特 に pH 9前 後 が 最 適 p H で あ る こ と が わ か っ た 。
【0121】
(2)pH安定性
実 施 例 4 で 精 製 し た マ ン ナ ナ ー ゼ ( 0.3 U/ml) を 、 Britton & Robinson universal buf
fe( pH 3.5− pH 11.8) と 混 合 し ( 酵 素 混 合 時 の 濃 度 10 mM) 、 各 種 の p H 条 件 下 ( pH 3−
12) で 40℃ に て 30分 、 ま た は 4℃ に て 24時 間 処 理 し た 後 、 参 考 例 に 記 載 す る ジ ニ ト ロ サ リ
10
チル酸法に準じて、反応溶液中のマンナナーゼの残存活性を測定した。結果を図4(b)
に 示 す ( 40℃ に て 30分 の 反 応 系 の 結 果 は 黒 丸 で 、 4℃ に て 24時 間 の 反 応 系 の 結 果 を 黒 三 角
で 示 す ) ) 。 こ の 結 果 か ら 、 上 記 の い ず れ の 条 件 で も 、 pH 7∼ 11の 範 囲 で 安 定 で あ る こ と
が わ か っ た ( 70% 以 上 、 特 に 80% 以 上 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 が 残 存 ) 。 ま た 、 pH 11.5、 特
に pH 11.5条 件 下 で 4℃ で 24時 間 保 存 し た 場 合 で も 70% 以 上 の マ ン ナ ナ ー ゼ 活 性 が 残 存 し て
いた。
【0122】
(3)最適温度
30∼ 80℃ に 加 温 し た 基 質 溶 液 ( 最 終 濃 度 0.25% ロ ー カ ス ト ビ ー ン ガ ム 、 50 mM グ リ シ ン
-NaCl-NaOH緩 衝 液 , pH 9.0) に 、 実 施 例 4 で 精 製 し た マ ン ナ ナ ー ゼ ( 0.2U/ml) を 入 れ て
20
( 総 量 1 ml) 、 5分 間 酵 素 反 応 を 行 っ た 。 他 の 反 応 条 件 は 、 参 考 例 に 記 載 す る ジ ニ ト ロ サ
リ チ ル 酸 法 の 条 件 に 準 じ た 。 結 果 を 図 5 ( a ) に 示 す 。 こ の 結 果 か ら 、 最 適 温 度 は 60∼ 70
℃ 、 特 に 65℃ 前 後 で あ る こ と が わ か っ た 。 当 該 マ ン ナ ナ ー ゼ の 由 来 菌 は 、 生 育 最 適 温 度 が
36-37℃ で あ る 中 温 菌 ( mesophiles) に 属 す る 菌 で あ る 。 上 記 マ ン ナ ナ ー ゼ の 最 適 温 度 ( 6
5℃ 前 後 ) は 、 当 該 中 温 菌 ( mesophiles) に 由 来 す る マ ン ナ ナ ー ゼ の 最 適 温 度 と し て は 高
い温度である。
【0123】
(4)温度安定性
上記マンナナーゼの温度安定性を調べた。具体的には、実施例4で精製したマンナナー
ゼ ( 0.3 U/ml) を 5 mM Tris-HCl緩 衝 液 (pH 7.5)に 溶 解 し 、 55℃ 、 及 び 60℃ で 、 10分 、 20
30
分 、 30分 及 び 60分 間 処 理 し た 後 、 参 考 例 に 記 載 す る ジ ニ ト ロ サ リ チ ル 酸 法 の 条 件 に 準 じ て
マンナナーゼの残存活性を測定した。結果を図5(b)に示す。この結果からわかるよう
に 、 本 発 明 の マ ン ナ ナ ー ゼ は 55℃ ( 図 中 、 黒 丸 で 示 す ) 及 び 60℃ ( 図 中 、 黒 三 角 で 示 す )
で 比 較 的 安 定 で あ っ た ( 70℃ の 結 果 示 さ ず ) 。 55℃ 及 び 60℃ に お け る 非 可 逆 的 熱 不 活 性 化
の 初 速 度 定 数 ( k ) は 、 半 対 数 座 標 上 で 直 線 回 帰 線 を 示 し た 。 55℃ 及 び 60℃ に お け る 半 減
期 は 、 そ れ ぞ れ 2時 間 及 び 30分 で あ っ た 。 こ の 結 果 か ら 、 本 発 明 の マ ン ナ ナ ー ゼ は 、 従 来
公 知 の ア ル カ リ 性 マ ン ナ ナ ー ゼ [T.Akino, et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 26,
323-327 (1987);T. Akino, et al., Appl. Environ. Microbiol., 55, 3178-3183 (1989)
]に 比 し て 温 度 安 定 性 が 高 く 、 こ の 点 を 有 利 な 特 徴 と し て 、 広 く 利 用 可 能 な 酵 素 で あ る と
考えられた。
【0124】
(5)金属イオンおよび化合物の影響の測定
マンナナーゼを各種の化合物(表4)または各種の金属塩(表5)と混合し(酵素混合
時 の 濃 度 1 mM) 、 5 mM Tris-HCl (pH 7.0)中 、 40℃ で 30分 間 処 理 し た 。 そ の 中 か ら 0.1ml
取りだして、参考例に記載するジニトロサリチル酸法の条件に準じてマンナナーゼ残存活
性を測定した。マンナナーゼ活性に対する各種の化合物の影響を表4に、金属塩の影響を
表5にそれぞれ示す。
【0125】
40
(32)
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【表4】
10
【0126】
【表5】
20
30
40
【0127】
こ の 結 果 か ら 、 酢 酸 ヨ ー ド 、 ヨ ウ 化 ア セ ト ア ミ ド 、 N-エ チ ル マ レ イ ミ ド 、 ジ チ オ ス レ イ
ト ー ル 、 1-エ チ ル -3-(3-ジ メ チ ル -ア ミ ノ プ ロ ピ ル )カ ー ボ ネ ー ト 、 ジ エ チ ル ピ ロ カ ー ボ ネ
ー ト 、 EDTA、 及 び EGTAは 、 実 質 的 に マ ン ナ ナ ー ゼ に 影 響 し な か っ た 。 一 方 、 N-ブ ロ モ ス ク
シ ニ ミ ド ( NBS) は マ ン ナ ナ ー ゼ の 活 性 を 完 全 に 阻 害 し た 。 幾 つ か の 酵 素 に 対 す る NBSの 阻
50
(33)
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害 は 、 タ ン パ ク 質 中 の ト リ プ ト フ ァ ン の 酸 化 で あ る こ と が 知 ら れ て い る [Methods Enzymol
., 11, 498-506 (1967)]。 こ の こ と か ら 、 マ ン ナ ナ ー ゼ の 触 媒 活 性 ま た は 構 造 の 維 持 に ト
リプトファン残基が関わっていると考えられる。
【0128】
一 方 、 金 属 に 関 し て は 、 Fe
3 +
、 Fe
2 +
、 Pb
2 +
、 Cu
2 +
、 Zn
2 +
、 Hg
2 +
、 Cd
2 +
、 Sn
2 +
といった金
属イオン(塩化物)は、強くまたは中程度にマンナナーゼの活性を阻害した。それに対し
+
+
て 、 同 条 件 下 で 、 Na 、 K 、 Mn
2 +
、 Ca
2 +
、 Mg
2 +
、 及 び Co
2 +
は、マンナナーゼ活性に対して
実質的に影響を及ぼさなかった。このことから、本発明のマンナナーゼは、従来公知のア
ル カ リ 性 マ ン ナ ナ ー ゼ [T. Akino et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 26, 323-327
( 1 9 8 7 ) ; T . A k i n o e t a l . , A p p l . E n v i r o n . M i c r o b i o l . , 5 5 , 3 1 7 8 - 3 1 8 3 ( 1 9 8 9 ) ]に 比 し
10
て、重金属に対して感受性が高く影響されやすい酵素であることがわかった。
【0129】
( 6 ) 加 水 分 解 物 の TLC分 析 と 基 質 特 異 性
(6-1)
実施例4で精製したマンナナーゼを用いて、アイボリーナッツ(マンノースのホ
モ ポ リ マ ー ; Megazyme) を 加 水 分 解 し 、 経 時 的 に 産 生 さ れ る 生 成 物 を TLC分 析 に よ り 測 定
し た 。 具 体 的 に は 、 0.4 % の ア イ ボ リ ー ナ ッ ツ 及 び マ ン ナ ナ ー ゼ ( 0.05 U/ml) を 含 む 溶
液 ( 50 mM グ リ シ ン -NaCl-NaOH 緩 衝 液 , pH 9.0) を 、 40℃ で 反 応 さ せ た ( 10分 、 20分 、 3
0分 、 1時 間 、 24時 間 ) 。 一 定 時 間 経 過 後 、 反 応 液 を 沸 騰 水 中 で 5分 間 熱 処 理 し 、 酵 素 反 応
を 停 止 し た 。 上 記 各 サ ン プ ル を TLCプ レ ー ト ( Silica gel 60, 20× 10 cm, MERCK) に 5μ l
ス ポ ッ ト し 、 水 、 ブ タ ノ ー ル 及 び 酢 酸 水 を 含 む 〔 水 : ブ タ ノ ー ル : 酢 酸 ( 1: 2: 1( v/v)
20
〕 展 開 溶 媒 を 用 い て 二 重 展 開 を 行 っ た 。 展 開 後 、 TLCプ レ ー ト に 10 %(v/v) 硫 酸 を 噴 霧 、
加熱処理しスポットを発色させた。結果を図6(a)に示す。
【0130】
これから、本発明のマンナナーゼは、アイボリーナッツを2糖及び3糖にまで加水分解
することがわかる。すなわち、本発明のマンナナーゼは、5糖及び6糖のマンノオリゴ糖
に対して強い加水分解能を有し、また4糖のマンノオリゴ糖に対しても僅かに加水分解能
を有するものの、2糖及び3糖のマンノオリゴ糖に対しては加水分解能が低いか又は無い
ことが分かった。
【0131】
(6-2)
この結果を受けて、次に、実施例4で精製したマンナナーゼを用いて、マンノ
30
オ リ ゴ 糖 ( 2糖 ∼ 6糖 ) を 加 水 分 解 し 、 経 時 的 に 産 生 さ れ る 生 成 物 を TLC分 析 に よ り 測 定 し
た 。 具 体 的 に は 、 0.4 % の 各 マ ン ノ オ リ ゴ 糖 ( 2糖 [M2]、 3糖 [M3]、 4糖 [M4]、 5糖 [M5]、 6
糖 [M6]) 及 び マ ン ナ ナ ー ゼ ( 0.05 U/ml) を 含 む 溶 液 ( 50 mM グ リ シ ン -NaCl-NaOH緩 衝 液 ,
pH 9.0) を 、 40℃ で 反 応 さ せ た ( 10分 、 20分 、 30分 、 1時 間 、 24時 間 ) 。 一 定 時 間 経 過 後
、 反 応 液 を 沸 騰 水 中 で 5分 間 熱 処 理 し 、 酵 素 反 応 を 停 止 し た 。 上 記 各 サ ン プ ル を TLCプ レ ー
ト ( Silica gel 60, 20× 10 cm, MERCK) に 5μ lス ポ ッ ト し 、 水 、 ブ タ ノ ー ル 及 び 酢 酸 水
を 含 む 〔 水 : ブ タ ノ ー ル : 酢 酸 ( 1: 2: 1( v/v) 〕 展 開 溶 媒 を 用 い て 二 重 展 開 を 行 っ た 。
展 開 後 、 TLCプ レ ー ト に 10 %(v/v) 硫 酸 を 噴 霧 、 加 熱 処 理 し ス ポ ッ ト を 発 色 さ せ た 。 結 果
を図6(b)に示す。
【0132】
40
これからの結果から、本発明のマンナナーゼは、マンナン、4糖より大きいマンノオリ
ゴ糖を加水分解することが示され、さらにこの加水分解パターンから、本発明のマンナナ
ーゼがエンド作用型マンナナーゼであることが示された。
【0133】
なお、本発明のマンナナーゼの、ローカストビーンガム、アイボリーナッツ、コンニャ
ク マ ン ナ ン 、 及 び グ ア ガ ム に 対 す る 相 対 活 性 は 約 1 0 0 :6 0 :4 5 :3 0 あ っ た 。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【 図 1 】 本 発 明 の 菌 体 ( Bacillus sp. Strain JAMB-602) の 帰 属 分 類 群 を 示 す 、 16S rDNA
配列分析に基づく系統樹を示す図である。
50
(34)
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【 図 2 】 本 発 明 の 菌 体 ( Bacillus sp. Strain JAMB-602) に 由 来 す る マ ン ナ ナ ー ゼ の 遺 伝
子配列とそれから演繹されるアミノ酸配列を示す図である。
【 図 3 】 実 施 例 4 に お い て 調 製 し 精 製 し た マ ン ナ ナ ー ゼ ( 精 製 酵 素 ) の 電 気 泳 動 像 ( SDSPAGE) で あ る ( レ ー ン P) 。 図 中 、 レ ー ン M は 蛋 白 質 の 分 子 量 を 示 す た め の マ ー カ ー の 泳
動像である。
【図4】実施例5において、実施例4において調製し精製したマンナナーゼの最適pH(
図4(a))、及びpH安定性(図4(a))を測定した結果を示す図である。図b中、
− ● − は 40℃ で 30分 間 、 − ▲ − は 4℃ で 24時 間 反 応 さ せ た 結 果 を 示 す 。
【図5】実施例5において、実施例4において調製し精製したマンナナーゼの最適温度(
図5(a))、及び温度安定性(図5(a))を測定した結果を示す図である。図b中、
− ● − は 55℃ 、 − ▲ − は 60℃ で そ れ ぞ れ 反 応 さ せ た 結 果 を 示 す 。
【図6】図6(a)は、実施例4で精製したマンナナーゼの、アイボリーナッツ(マンノ
ー ス の ホ モ ポ リ マ ー ; Megazyme) に 対 す る 加 水 分 解 パ タ ー ン を 、 図 6 ( b ) は 、 同 じ く 実
施 例 4 で 精 製 し た マ ン ナ ナ ー ゼ の 、 マ ン ノ オ リ ゴ 糖 ( 2糖 [M2]、 3糖 [M3]、 4糖 [M4]、 5糖 [M
5]、 6糖 [M6]) に 対 す る 加 水 分 解 パ タ ー ン を 示 す 図 で あ る 。
【図1】
【図2】
10
(35)
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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(36)
【配列表】
2006087401000001.app
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(37)
JP 2006-87401 A 2006.4.6
フロントページの続き
(51)Int.Cl.
FI
テーマコード(参考)
C12P 21/02
E21B 43/26
(2006.01)
(2006.01)
C12P 21/02
C
4H003
E21B 43/26
C11D
(2006.01)
C11D
3/386
3/386
(72)発明者 秦田 勇二
神奈川県横須賀市夏島町2番地15 独立行政法人海洋研究開発機構内
(72)発明者 ウイリアム ディー.グラント
イギリス国 レスター エルイー1 9エイチエヌ メディカル サイエンス ビルディング ユ
ニバーシティー ロード ピー.オー.ボックス138 デパートメント オブ マイクロバイオ
ロジー アンド イムノロジー ユニバーシティー オブ レスター
(72)発明者 掘越 弘毅
神奈川県横須賀市夏島町2番地15 独立行政法人海洋研究開発機構内
Fターム(参考) 4B024 AA03 BA12 CA03 CA05 DA06 DA07
4B027 FB28 FK07 FQ11
4B050 CC03 DD02 FF05 FF09 FF11 FF12 HH02 LL04 LL05
4B064 AF04 CA21 CB07 CC24 CD19 DA16
4B065 AA15Y AA19X AA26X AB01 AC06 CA31 CA57
4H003 EC01