245 - 財務省

―相続税法等の改正―
法人税法の改正
目 次
一 減価償却制度…………………………… 246
四 組織再編税制等……………………… 335
二 公益法人税制…………………………… 280
五 企業再生関係税制…………………… 346
三 工事の請負に係る収益及び費用の帰属
六 その他………………………………… 348
事業年度…………………………………… 327
(平20.4. 30財務省令第25号)
はじめに
・ 減価償却資産の耐用年数等に関する省令の
平成20年度税制改正においては、現下の経済・
財政状況等を踏まえ、持続的な経済社会の活性化
一部を改正する省令(平20.4. 30財務省令第
32号)
を実現する等の観点から、公益法人制度改革に対
・ 法人税法施行規則及び租税特別措置法施行
応した所得税、法人税及び相続税等の関係税目に
規則の一部を改正する省令(平20.5. 30財務
ついての改正を行うとともに、法人関係税制の改
省令第39号)
正、中小企業関係税制の改正、金融・証券税制の
・ 法人税法別表第1第1号の表独立行政法人
改正、土地・住宅税制の改正並びに国際課税の改
の項の規定に基づき、法人税を課さない法人
正を行うほか、所要の措置を講ずることとされ、
を指定する件の一部を改正する件(平20.3. 31
関係法令の改正が行われました。
財務省告示第115号)
このうち法人税法関係については、減価償却制
・ 所得税法施行令第217条の2第2項及び第
度の改正、公益法人関係税制の改正、工事進行基
3項並びに法人税法施行令第77条の2第2項
準の改正、組織再編税制の見直し、企業再生関係
及び第3項に規定する主務大臣の証明及び認
税制の改正等が行われています。
定に関する手続を定める件の一部を改正する
この法人税法の改正を含む「所得税法等の一部
件(平20.4. 30内閣府・総務省・法務省・外
を改正する法律」は、去る4月30日に衆議院本会
務省・財務省・文部科学省・厚生労働省・農
議で再可決・成立し、同日に平成20年法律第23号
林水産省・経済産業省・国土交通省・環境
として公布されています。また、次の関係政省令
告示もそれぞれ次のとおり公布されています。
省・防衛省告示第1号)
・ 法人税法施行規則第5条第6号に規定する
・ 法人税法施行令の一部を改正する政令(平
20.4. 30政令第156号)
厚生労働大臣の定める基準を定める件(平
20.4. 30厚生労働省告示第297号)
・ 所得税法等の一部を改正する法律附則第
・ 法人税法施行規則第6条第7号に規定する
119条の2の規定による経過措置を定める政
厚生労働大臣の定める基準を定める件(平
令(平20.4. 30政令第164号)
20.4. 30厚生労働省告示第298号)
・ 法人税法施行規則の一部を改正する省令
─ 245 ─
―法人税法の改正―
一 減価償却制度
進め、法定耐用年数や資産区分の見直し、法
1 改正の趣旨
定耐用年数の短縮特例制度の手続簡素化に
減価償却制度については、平成19年度税制改正
において、我が国経済の成長基盤を整備する観点
から、償却可能限度額や残存価額の廃止などの抜
本的見直しが行われました。
ついて検討する。
」
2 改正の内容
⑴ 法定耐用年数及び資産区分の見直し
その際、法定耐用年数や資産区分については、
資産区分が多い機械装置について、日本標準
使用実態を踏まえた見直しを行うとともに、法定
産業分類の中分類を基本とした資産区分の整理
耐用年数の短縮特例の手続簡素化について検討す
が行われ、改正前390区分が55区分とされると
るとされたところです。これを受けて、今年度の
ともに、減価償却資産の耐用年数等に関する省
税制改正においては、機械装置について資産区分
令の別表が見直されました。別表ごとの主な改
の整理を行うとともに、法定耐用年数の短縮特例
正は次のとおりです。
について手続の簡素化を行うなどの見直しが行わ
・ 別表第二(機械及び装置の耐用年数表)
れました。
機械及び装置につき使用実態を踏まえた年
数を基礎としつつ、その資産区分について
(参考)
平成19年度税制改正大綱(自由民主党、公
390区分から55区分に大括り化されました。
明党)
なお、新しい別表第二は次のとおりです。
「平成20年度税制改正に向け、減価償却資
産の使用の実態等について更に調査・分析を
別表第二 機械及び装置の耐用年数表
番号
設備の種類
細目
耐用年数
年
1
食料品製造業用設備
一〇
2
飲料、たばこ又は飼料製造業用設備
一〇
3
繊維工業用設備
炭素繊維製造設備
黒鉛化炉
その他の設備
その他の設備
三
七
七
4
木材又は木製品(家具を除く。)製造業用設備
八
5
家具又は装備品製造業用設備
一一
6
パルプ、紙又は紙加工品製造業用設備
一二
7
印刷業又は印刷関連業用設備
デジタル印刷システム設備
製本業用設備
新聞業用設備
モノタイプ、写真又は通信設備
その他の設備
その他の設備
─ 246 ─
四
七
三
一〇
一〇
―法人税法の改正―
8
化学工業用設備
臭素、よう素又は塩素、臭素若しくはよ
う素化合物製造設備
塩化りん製造設備
活性炭製造設備
ゼラチン又はにかわ製造設備
半導体用フォトレジスト製造設備
フラットパネル用カラーフィルター、偏
光板又は偏光板用フィルム製造設備
その他の設備
五
四
五
五
五
五
八
9
石油製品又は石炭製品製造業用設備
七
10
プラスチック製品製造業用設備(他の号に掲げ
るものを除く。)
八
11
ゴム製品製造業用設備
九
12
なめし革、なめし革製品又は毛皮製造業用設備
九
13
窯業又は土石製品製造業用設備
九
14
鉄鋼業用設備
表面処理鋼材若しくは鉄粉製造業又は鉄
スクラップ加工処理業用設備
純鉄、原鉄、ベースメタル、フェロアロ
イ、鉄素形材又は鋳鉄管製造業用設備
その他の設備
九
一四
一一
七
15
非鉄金属製造業用設備
核燃料物質加工設備
その他の設備
16
金属製品製造業用設備
金属被覆及び彫刻業又は打はく及び金属
製ネームプレート製造業用設備
その他の設備
17
18
19
はん用機械器具(はん用性を有するもので、他
の器具及び備品並びに機械及び装置に組み込み、
又は取り付けることによりその用に供されるも
のをいう。)製造業用設備(第二〇号及び第二二
号に掲げるものを除く。)
生産用機械器具(物の生産の用に供されるもの 金属加工機械製造設備
をいう。)製造業用設備(次号及び第二一号に掲
げるものを除く。)
その他の設備
六
一〇
一二
九
一二
業務用機械器具(業務用又はサービスの生産の
用に供されるもの(これらのものであつて物の
生産の用に供されるものを含む。)をいう。)製
造業用設備(第一七号、第二一号及び第二三号
に掲げるものを除く。)
20
五
七
電子部品、デバイス又は電子回路製造業用設備
光ディスク(追記型又は書換え型のもの
に限る。
)製造設備
プリント配線基板製造設備
六
六
フラットパネルディスプレイ、半導体集
積回路又は半導体素子製造設備
その他の設備
五
八
─ 247 ─
―法人税法の改正―
21
電気機械器具製造業用設備
七
22
情報通信機械器具製造業用設備
八
23
輸送用機械器具製造業用設備
九
24
その他の製造業用設備
九
25
農業用設備
七
26
林業用設備
五
27
漁業用設備(次号に掲げるものを除く。)
五
28
水産養殖業用設備
五
29
鉱業、採石業又は砂利採取業用設備
石油又は天然ガス鉱業用設備
坑井設備
掘さく設備
その他の設備
その他の設備
30
総合工事業用設備
31
電気業用設備
32
ガス業用設備
三
六
一二
六
六
電気業用水力発電設備
二二
その他の水力発電設備
汽力発電設備
内燃力又はガスタービン発電設備
送電又は電気業用変電若しくは配電設備
需要者用計器
柱上変圧器
二〇
一五
一五
その他の設備
鉄道又は軌道業用変電設備
二二
一五
その他の設備
主として金属製のもの
その他のもの
一七
八
一五
一八
製造用設備
供給用設備
鋳鉄製導管
鋳鉄製導管以外の導管
需要者用計量器
一〇
その他の設備
その他の設備
主として金属製のもの
その他のもの
一五
二二
一三
一三
一七
八
33
熱供給業用設備
一七
34
水道業用設備
一八
35
通信業用設備
九
36
放送業用設備
六
37
映像、音声又は文字情報制作業用設備
八
38
鉄道業用設備
自動改札装置
その他の設備
─ 248 ─
五
一二
―法人税法の改正―
39
道路貨物運送業用設備
一二
40
倉庫業用設備
一二
41
運輸に附帯するサービス業用設備
一〇
42
飲食料品卸売業用設備
一〇
43
建築材料、鉱物又は金属材料等卸売業用設備
44
飲食料品小売業用設備
45
その他の小売業用設備
石油又は液化石油ガス卸売用設備(貯そ
うを除く。)
その他の設備
一三
八
九
ガソリン又は液化石油ガススタンド設備
その他の設備
主として金属製のもの
その他のもの
八
一七
八
46
技術サービス業用設備(他の号に掲げるものを 計量証明業用設備
除く。)
その他の設備
八
一四
47
宿泊業用設備
一〇
48
飲食店業用設備
49
洗濯業、理容業、美容業又は浴場業用設備
50
その他の生活関連サービス業用設備
51
娯楽業用設備
52
八
一三
六
教育業(学校教育業を除く。)又は学習支援業用
設備
映画館又は劇場用設備
遊園地用設備
一一
七
ボウリング場用設備
その他の設備
主として金属製のもの
その他のもの
一三
教習用運転シミュレータ設備
その他の設備
主として金属製のもの
その他のもの
一七
八
五
一七
八
53
自動車整備業用設備
一五
54
その他のサービス業用設備
一二
55
前掲の機械及び装置以外のもの並びに前掲の区 機械式駐車設備
分によらないもの
その他の設備
主として金属製のもの
その他のもの
一〇
─ 249 ─
一七
八
―法人税法の改正―
・ 別表第四(生物の耐用年数表)
びブルーベリー樹が新たに追加されました。
使用実態を踏まえ、その年数等につき見直
なお、新しい別表第四は次のとおりです。
しが行われるとともに、キウイフルーツ樹及
別表第四 生物の耐用年数表
種類
細目
耐用年数
年
牛
馬
繁殖用(家畜改良増殖法(昭和二十五年法律第二百九号)に基づく種付証明書、
授精証明書、体内受精卵移植証明書又は体外受精卵移植証明書のあるものに限
る。)
役肉用牛
乳用牛
種付用(家畜改良増殖法に基づく種畜証明書の交付を受けた種おす牛に限る。
)
その他用
六
四
四
六
繁殖用(家畜改良増殖法に基づく種付証明書又は授精証明書のあるものに限る。)
種付用(家畜改良増殖法に基づく種畜証明書の交付を受けた種おす馬に限る。
)
競走用
その他用
六
六
四
八
豚
三
綿羊及びやぎ
種付用
その他用
四
六
かんきつ樹
温州みかん
その他
二八
三〇
りんご樹
わい化りんご
その他
二〇
二九
ぶどう樹
温室ぶどう
その他
一二
一五
なし樹
二六
桃樹
一五
桜桃樹
二一
びわ樹
三〇
くり樹
二五
梅樹
二五
かき樹
三六
あんず樹
二五
すもも樹
一六
いちじく樹
一一
キウイフルーツ樹
二二
ブルーベリー樹
二五
パイナップル
三
─ 250 ─
―法人税法の改正―
茶樹
三四
オリーブ樹
二五
つばき樹
二五
桑樹
立て通し
根刈り、中刈り、高刈り
一八
九
こりやなぎ
一〇
みつまた
五
こうぞ
九
もう宗竹
二〇
アスパラガス
一一
ラミー
八
まおらん
一〇
ホップ
九
・ 別表第五(汚水処理用減価償却資産の耐用
た年数を基礎としつつ、2つの別表が統合さ
年数表)及び別表第六(ばい煙処理用減価償
れ、
「公害防止用減価償却資産の耐用年数表」
却資産の耐用年数表)
となりました。なお、新しい別表第五は次の
これらの減価償却資産の使用実態を踏まえ
とおりです。
別表第五 公害防止用減価償却資産の耐用年数表
種類
耐用年数
年
一八
構築物
機械及び装置
五
・ 別表第七(農林業用減価償却資産の耐用年
数表)
日本標準産業分類の中分類を基本とした資産
区分に整理したため、設備の名称が「○○業
これらの減価償却資産の資産区分に応じ、
用設備」と規定されています。これに関して、
別表第一又は別表第二に統合され、別表第七
法人の業種で判定するのではないかという疑
は廃止されました。
問があるようですが、基本的には、法人の業
なお、今年度の改正において、法定耐用年
種で判定するのではなく、その設備がどの業
数の見直しに伴う計算方法や新資産区分の分
種用の設備に該当するかにより判定すること
類について、若干の補足的解説をすると次の
になります。
とおりです。
なお、参考までに、旧別表第二の資産区分
① 業用設備について
が新別表第二の資産区分のいずれに属するか
今回の改正により、機械装置の資産区分を
─ 251 ─
を示すと、次のとおりとなります。
―法人税法の改正―
別表第二 機械及び装置の耐用年数表における新旧資産区分の対照表
改正後の資産区分
番号
1
設備の種類及び細目
食料品製造業用設備
改正前の資産区分
設備の種類及び細目
番号
1
食肉又は食鳥処理加工設備
2
鶏卵処理加工又はマヨネーズ製造設備
3
市乳処理設備及び発酵乳、乳酸菌飲料その他の
乳製品製造設備(集乳設備を含む。
)
4
水産練製品、つくだ煮、寒天その他の水産食料
品製造設備
5
つけ物製造設備
6
トマト加工品製造設備
7
その他の果実又はそ菜処理加工設備
むろ内用バナナ熟成装置
その他の設備
8
かん詰又はびん詰製造設備
9
化学調味料製造設備
10
味そ又はしよう油(だしの素類を含む。
)製造設
備
コンクリート製仕込そう
その他の設備
10の2 食酢又はソース製造設備
11
その他の調味料製造設備
12
精穀設備
13
小麦粉製造設備
14
豆腐類、こんにやく又は食ふ製造設備
15
その他の豆類処理加工設備
16
コーンスターチ製造設備
17
その他の農産物加工設備
粗製でん粉貯そう
その他の設備
18
マカロニ類又は即席めん類製造設備
19
その他の乾めん、生めん又は強化米製造設備
20
砂糖製造設備
21
砂糖精製設備
22
水あめ、ぶどう糖又はカラメル製造設備
23
パン又は菓子類製造設備
30
その他の飲料製造設備
31
酵母、酵素、種菌、麦芽又はこうじ製造設備(医
薬用のものを除く。
)
─ 252 ─
―法人税法の改正―
改正後の資産区分
番号
改正前の資産区分
設備の種類及び細目
番号
設備の種類及び細目
32
動植物油脂製造又は精製設備(マーガリン又は
リンター製造設備を含む。
)
2
飲料、たばこ又は飼料製造業用設備
36
その他の食料品製造設備
15
その他の豆類処理加工設備
24
荒茶製造設備
25
再製茶製造設備
26
清涼飲料製造設備
27
ビール又は発酵法による発ぽう酒製造設備
28
清酒、みりん又は果実酒製造設備
29
その他の酒類製造設備
30
その他の飲料製造設備
33
冷凍、製氷又は冷蔵業用設備
結氷かん及び凍結さら
その他の設備
34
発酵飼料又は酵母飼料製造設備
35
その他の飼料製造設備
36の2 たばこ製造設備
3
85
配合肥料その他の肥料製造設備
197
炭素繊維製造設備
繊維工業用設備
炭素繊維製造設備
黒鉛化炉
黒鉛化炉
その他の設備
197
炭素繊維製造設備
その他の設備
その他の設備
37
生糸製造設備
自動繰糸機
その他の設備
38
繭乾燥業用設備
39
紡績設備
42
合成繊維かさ高加工糸製造設備
43
ねん糸業用又は糸(前号に掲げるものを除く。
)
製造業用設備
44
織物設備
45
メリヤス生地、編み手袋又はくつ下製造設備
46
染色整理又は仕上設備
圧縮用電極板
その他の設備
─ 253 ─
―法人税法の改正―
改正後の資産区分
番号
改正前の資産区分
番号
設備の種類及び細目
48
設備の種類及び細目
洗毛、化炭、羊毛トップ、ラップペニー、反毛、
製綿又は再生綿業用設備
49
整経又はサイジング業用設備
50
不織布製造設備
51
フエルト又はフエルト製品製造設備
52
綱、網又はひも製造設備
53
レース製造設備
ラッセルレース機
その他の設備
4
)製造業用設
木材又は木製品(家具を除く。
備
54
塗装布製造設備
55
繊維製又は紙製衛生材料製造設備
56
縫製品製造業用設備
57
その他の繊維製品製造設備
147
レーヨン糸又はレーヨンステープル製造設備
148
酢酸繊維製造設備
149
合成繊維製造設備
59
製材業用設備
製材用自動送材装置
その他の設備
5
家具又は装備品製造業用設備
60
チップ製造業用設備
61
単板又は合板製造設備
62
その他の木製品製造設備
63
木材防腐処理設備
313
コルク又はコルク製品製造設備
62
その他の木製品製造設備
209
石工品又は擬石製造設備
249
金属製家具若しくは建具又は建築金物製造設備
めつき又はアルマイト加工設備
溶接設備
その他の設備
6
パルプ、紙又は紙加工品製造業用設備
55
繊維製又は紙製衛生材料製造設備
64
パルプ製造設備
65
手すき和紙製造設備
66
丸網式又は短網式製紙設備
67
長網式製紙設備
68
ヴァルカナイズドファイバー又は加工紙製造設
備
─ 254 ─
―法人税法の改正―
改正後の資産区分
番号
7
改正前の資産区分
番号
設備の種類及び細目
69
段ボール、段ボール箱又は板紙製容器製造設備
70
その他の紙製品製造設備
72
セロファン製造設備
73
繊維板製造設備
75
印刷設備
79
写真製版業用設備
製本業用設備
78
製本設備
新聞業用設備
74
日刊新聞紙印刷設備
設備の種類及び細目
印刷業又は印刷関連業用設備
デジタル印刷システム設備
モノタイプ、写真又は通信設備
その他の設備
モノタイプ、写真又は通信設備
その他の設備
その他の設備
8
75
印刷設備
76
活字鋳造業用設備
77
金属板その他の特殊物印刷設備
71
枚葉紙樹脂加工設備
80
複写業用設備
97
臭素、よう素又は塩素、臭素若しくはよう素化
合物製造設備
化学工業用設備
臭素、よう素又は塩素、臭素若しくは
よう素化合物製造設備
よう素用坑井設備
その他の設備
塩化りん製造設備
99
塩化りん製造設備
活性炭製造設備
117
活性炭製造設備
ゼラチン又はにかわ製造設備
171
ゼラチン又はにかわ製造設備
半導体用フォトレジスト製造設備
173
半導体用フォトレジスト製造設備
フラットパネル用カラーフィルター、 268の2 フラットパネルディスプレイ又はフラットパネ
ル用フィルム材料製造設備
偏光板又は偏光板用フィルム製造設備
その他の設備
81
アンモニア製造設備
82
硫酸又は硝酸製造設備
83
溶成りん肥製造設備
84
その他の化学肥料製造設備
86
ソーダ灰、塩化アンモニウム、か性ソーダ又は
か性カリ製造設備(塩素処理設備を含む。
)
87
硫化ソーダ、水硫化ソーダ、無水ぼう硝、青化
ソーダ又は過酸化ソーダ製造設備
─ 255 ─
―法人税法の改正―
改正後の資産区分
番号
設備の種類及び細目
改正前の資産区分
番号
設備の種類及び細目
88
その他のソーダ塩又はカリ塩(第97号(塩素酸
塩を除く。
)、第98号及び第106号に掲げるものを
除く。
)製造設備
89
金属ソーダ製造設備
90
アンモニウム塩(硫酸アンモニウム及び塩化ア
ンモニウムを除く。
)製造設備
91
炭酸マグネシウム製造設備
92
苦汁製品又はその誘導体製造設備
93
軽質炭酸カルシウム製造設備
94
カーバイド製造設備(電極製造設備を除く。
)
95
硫酸鉄製造設備
96
その他の硫酸塩又は亜硫酸塩製造設備(他の号
に掲げるものを除く。
)
98
ふつ酸その他のふつ素化合物製造設備
100
りん酸又は硫化りん製造設備
101
りん又はりん化合物製造設備(他の号に掲げる
ものを除く。
)
102
べんがら製造設備
103
鉛丹、リサージ又は亜鉛華製造設備
104
酸化チタン、リトポン又はバリウム塩製造設備
105
無水クロム酸製造設備
106
その他のクロム化合物製造設備
107
二酸化マンガン製造設備
108
ほう酸その他のほう素化合物製造設備(他の号
に掲げるものを除く。
)
109
青酸製造設備
110
硝酸銀製造設備
111
二硫化炭素製造設備
112
過酸化水素製造設備
113
ヒドラジン製造設備
114
酸素、水素、二酸化炭素又は溶解アセチレン製
造設備
115
加圧式又は真空式製塩設備
116
その他のかん水若しくは塩製造又は食塩加工設
備
合成樹脂製濃縮盤及びイオン交換膜
その他の設備
─ 256 ─
―法人税法の改正―
改正後の資産区分
番号
設備の種類及び細目
改正前の資産区分
番号
設備の種類及び細目
118
その他の無機化学薬品製造設備
119
石炭ガス、オイルガス又は石油を原料とする芳
香族その他の化合物分離精製設備
120
染料中間体製造設備
121
アルキルベンゾール又はアルキルフェノール製
造設備
122
カプロラクタム、シクロヘキサノン又はテレフ
)製造設
タル酸(テレフタル酸ジメチルを含む。
備
123
イソシアネート類製造設備
124
炭化水素の塩化物、臭化物又はふつ化物製造設
備
125
メタノール、エタノール又はその誘導体製造設
)
備(他の号に掲げるものを除く。
126
その他のアルコール又はケトン製造設備
127
アセトアルデヒド又は酢酸製造設備
128
シクロヘキシルアミン製造設備
129
アミン又はメラミン製造設備
130
ぎ酸、しゆう酸、乳酸、酒石酸(酒石酸塩類を
含む。
)
、こはく酸、くえん酸、タンニン酸又は
没食子酸製造設備
131
石油又は天然ガスを原料とするエチレン、プロ
ピレン、ブチレン、ブタジエン又はアセチレン
製造設備
132
ビニールエーテル製造設備
133
アクリルニトリル又はアクリル酸エステル製造
設備
134
エチレンオキサイド、エチレングリコール、プ
ロピレンオキサイド、プロピレングリコール、
ポリエチレングリコール又はポリプロピレング
リコール製造設備
135
スチレンモノマー製造設備
136
その他オレフィン系又はアセチレン系誘導体製
)
造設備(他の号に掲げるものを除く。
137
アルギン酸塩製造設備
138
フルフラル製造設備
139
セルロイド又は硝化綿製造設備
140
酢酸繊維素製造設備
─ 257 ─
―法人税法の改正―
改正後の資産区分
番号
設備の種類及び細目
改正前の資産区分
番号
設備の種類及び細目
141
繊維素グリコール酸ソーダ製造設備
142
その他の有機薬品製造設備
143
塩化ビニリデン系樹脂、酢酸ビニール系樹脂、
ナイロン樹脂、ポリエチレンテレフタレート系
樹脂、ふつ素樹脂又はけい素樹脂製造設備
144
ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリブテン
製造設備
145
尿素系、メラミン系又は石炭酸系合成樹脂製造
設備
146
その他の合成樹脂又は合成ゴム製造設備
150
石けん製造設備
151
硬化油、脂肪酸又はグリセリン製造設備
152
合成洗剤又は界面活性剤製造設備
153
ビタミン剤製造設備
154
その他の医薬品製造設備(製剤又は小分包装設
備を含む。
)
155
殺菌剤、殺虫剤、殺そ剤、除草剤その他の動植
物用製剤製造設備
156
産業用火薬類(花火を含む。
)製造設備
157
その他の火薬類製造設備(弾薬装てん又は組立
設備を含む。
)
158
塗料又は印刷インキ製造設備
159
その他のインキ製造設備
160
染料又は顔料製造設備(他の号に掲げるものを
除く。
)
161
抜染剤又は漂白剤製造設備(他の号に掲げるも
のを除く。
)
162
試薬製造設備
163
合成樹脂用可塑剤製造設備
164
合成樹脂用安定剤製造設備
165
有機ゴム薬品、写真薬品又は人造香料製造設備
166
つや出し剤、研摩油剤又は乳化油剤製造設備
167
接着剤製造設備
168
トール油精製設備
169
りゆう脳又はしよう脳製造設備
170
化粧品製造設備
─ 258 ─
―法人税法の改正―
改正後の資産区分
番号
改正前の資産区分
番号
設備の種類及び細目
172
設備の種類及び細目
写真フイルムその他の写真感光材料(銀塩を使
用するものに限る。
)製造設備(他の号に掲げ
るものを除く。
)
175
化工でん粉製造設備
176
活性白土又はシリカゲル製造設備
177
選鉱剤製造設備
178
電気絶縁材料(マイカ系を含む。
)製造設備
179
カーボンブラック製造設備
180
その他の化学工業製品製造設備
197の2 その他の炭素製品製造設備
黒鉛化炉
その他の設備
9
石油製品又は石炭製品製造業用設備
316
ろうそく製造設備
320
木ろう製造又は精製設備
181
石油精製設備(廃油再生又はグリース類製造設
)
備を含む。
182
アスファルト乳剤その他のアスファルト製品製
造設備
183
184
ピッチコークス製造設備
練炭、豆炭類、オガライト(オガタンを含む。
)
又は炭素粉末製造設備
185
その他の石油又は石炭製品製造設備
354
石炭ガス、石油ガス又はコークス製造設備
(ガス
精製又はガス事業用特定ガス発生設備を含む。
)
10
11
プラスチック製品製造業用設備(他の号に掲
)
げるものを除く。
ゴム製品製造業用設備
307
合成樹脂成形加工又は合成樹脂製品加工業用設
備
308
発ぽうポリウレタン製造設備
186
タイヤ又はチューブ製造設備
187
再生ゴム製造設備
188
フォームラバー製造設備
189
糸ゴム製造設備
190
その他のゴム製品製造設備
192
機械ぐつ製造設備
307
合成樹脂成形加工又は合成樹脂製品加工業用設
備
12
なめし革、なめし革製品又は毛皮製造業用設
備
191
製革設備
192
機械ぐつ製造設備
─ 259 ─
―法人税法の改正―
改正後の資産区分
番号
13
設備の種類及び細目
窯業又は土石製品製造業用設備
改正前の資産区分
番号
設備の種類及び細目
193
その他の革製品製造設備
194
板ガラス製造設備(みがき設備を含む。
)
溶解炉
その他の設備
195
その他のガラス製品製造設備(光学ガラス製造
)
設備を含む。
るつぼ炉及びデータンク炉
溶解炉
その他の設備
196
陶磁器、粘土製品、耐火物、けいそう土製品、
はい土又はうわ薬製造設備
倒炎がま 塩融式のもの
倒炎がま その他のもの
トンネルがま
その他の炉
その他の設備
197の2 その他の炭素製品製造設備
黒鉛化炉
その他の設備
198
人造研削材製造設備
溶解炉
その他の設備
199
研削と石又は研摩布紙製造設備
加硫炉
トンネルがま
その他の焼成炉
その他の設備
200
セメント製造設備
201
生コンクリート製造設備
202
セメント製品(気ほうコンクリート製品を含
む。
)製造設備
移動式製造又は架設設備及び振動加圧式成形設備
その他の設備
204
石灰又は苦石灰製造設備
205
石こうボード製造設備
焼成炉
その他の設備
206
ほうろう鉄器製造設備
るつぼ炉
その他の炉
その他の設備
─ 260 ─
―法人税法の改正―
改正後の資産区分
番号
改正前の資産区分
番号
設備の種類及び細目
設備の種類及び細目
207
石綿又は石綿セメント製品製造設備
208
岩綿(鉱さい繊維を含む。
)又は岩綿製品製造
設備
209
石工品又は擬石製造設備
210
その他の窯業製品又は土石製品製造設備
トンネルがま
その他の炉
その他の設備
326
14
砂利採取又は岩石の採取若しくは砕石設備
鉄鋼業用設備
表面処理鋼材若しくは鉄粉製造業又は 218の2 鉄くず処理業用設備
鉄スクラップ加工処理業用設備
232 金属粉末又ははく(圧延によるものを除く。
)
製造設備
244
その他のめつき又はアルマイト加工設備
245の2 合成樹脂被覆、彫刻又はアルミニウムはくの加
工設備
脱脂又は洗浄設備及び水洗塗装装置
その他の設備
純鉄、原鉄、べースメタル、フェロア
ロイ、鉄素形材又は鋳鉄管製造業用設
備
その他の設備
212
純鉄又は合金鉄製造設備
219
鉄鋼鍛造業用設備
220
鋼鋳物又は銑鉄鋳物製造業用設備
211
製銑設備
213
製鋼設備
214
連続式鋳造鋼片製造設備
215
鉄鋼熱間圧延設備
216
鉄鋼冷間圧延又は鉄鋼冷間成形設備
217
鋼管製造設備
218
鉄鋼伸線(引き抜きを含む。
)設備及び鉄鋼卸
売業用シャーリング設備並びに伸鉄又はシャー
リング業用設備
15
222
その他の鉄鋼業用設備
234
鋼索製造設備
237
くぎ、リベット又はスプリング製造業用設備
238
溶接金網製造設備
243
電気錫めつき鉄板製造設備
非鉄金属製造業用設備
核燃料物質加工設備
251の2 核燃料物質加工設備
─ 261 ─
―法人税法の改正―
改正後の資産区分
番号
改正前の資産区分
設備の種類及び細目
番号
その他の設備
218
設備の種類及び細目
鉄鋼伸線(引き抜きを含む。
)設備及び鉄鋼卸
売業用シャーリング設備並びに伸鉄又はシャー
リング業用設備
223
銅、鉛又は亜鉛製錬設備
224
アルミニウム製錬設備
225
ベリリウム銅母合金、マグネシウム、チタニウ
ム、ジルコニウム、タンタル、クロム、マンガ
ン、シリコン、ゲルマニウム又は希土類金属製
錬設備
226
ニッケル、タングステン又はモリブデン製錬設
備
227
その他の非鉄金属製錬設備
228
チタニウム造塊設備
229
非鉄金属圧延、押出又は伸線設備
230
非鉄金属鋳物製造業用設備
ダイカスト設備
その他の設備
231
電線又はケーブル製造設備
231の2 光ファイバー製造設備
232
金属粉末又ははく(圧延によるものを除く。
)
製造設備
16
252
その他の金属製品製造設備
232
金属粉末又ははく(圧延によるものを除く。
)
金属製品製造業用設備
金属被覆及び彫刻業又は打はく及び金
属製ネームプレート製造業用設備
製造設備
244
その他のめつき又はアルマイト加工設備
245
金属塗装設備
脱脂又は洗浄設備及び水洗塗装装置
その他の設備
245の2 合成樹脂被覆、彫刻又はアルミニウムはくの加
工設備
脱脂又は洗浄設備及び水洗塗装装置
その他の設備
その他の設備
221
金属熱処理業用設備
233
粉末冶金製品製造設備
234
鋼索製造設備
235
鎖製造設備
236
溶接棒製造設備
─ 262 ─
―法人税法の改正―
改正後の資産区分
番号
改正前の資産区分
番号
設備の種類及び細目
237
設備の種類及び細目
くぎ、リベット又はスプリング製造業用設備
237の2 ねじ製造業用設備
238
溶接金網製造設備
239
その他の金網又は針金製品製造設備
241
押出しチューブ又は自動組立方式による金属か
ん製造設備
242
246
その他の金属製容器製造設備
手工具又はのこぎり刃その他の刃物類(他の号
に掲げるものを除く。
)製造設備
247
農業用機具製造設備
248
金属製洋食器又はかみそり刃製造設備
249
金属製家具若しくは建具又は建築金物製造設備
めつき又はアルマイト加工設備
溶接設備
その他の設備
250
鋼製構造物製造設備
251
プレス、打抜き、しぼり出しその他の金属加工
品製造業用設備
めつき又はアルマイト加工設備
その他の設備
252
その他の金属製品製造設備
259
機械工具、金型又は治具製造業用設備
266
食品用、暖ちゆう房用、家庭用又はサービス用
機器(電気機器を除く。
)製造設備
17
280
その他の車両部分品又は附属品製造設備
はん用機械器具(はん用性を有するもので、
253
ボイラー製造設備
他の器具及び備品並びに機械及び装置に組み
込み、又は取り付けることによりその用に供
254
エンジン、タービン又は水車製造設備
259
機械工具、金型又は治具製造業用設備
261
風水力機器、金属製弁又は遠心分離機製造設備
)製造業用設備(第20号
されるものをいう。
)
及び第22号に掲げるものを除く。
261の2 冷凍機製造設備
262
玉又はコロ軸受若しくは同部分品製造設備
263
歯車、油圧機器その他の動力伝達装置製造業用
設備
264
その他の産業用機器又は部分品若しくは附属品
製造設備
278
車両用エンジン、同部分品又は車両用電装品製
造設備(ミッション又はクラッチ製造設備を含
)
む。
─ 263 ─
―法人税法の改正―
改正後の資産区分
番号
改正前の資産区分
番号
設備の種類及び細目
設備の種類及び細目
286
その他の輸送用機器製造設備
295
前掲以外の機械器具、部分品又は附属品製造設
備
18
生産用機械器具(物の生産の用に供されるも
)製造業用設備(次号及び第21号に
のをいう。
)
掲げるものを除く。
金属加工機械製造設備
257
金属加工機械製造設備
その他の設備
255
農業用機械製造設備
256
建設機械、鉱山機械又は原動機付車両(他の号
に掲げるものを除く。
)製造設備
258
鋳造用機械、合成樹脂加工機械又は木材加工用
機械製造設備
259
機械工具、金型又は治具製造業用設備
260
繊維機械(ミシンを含む。
)又は同部分品若し
くは附属品製造設備
261
風水力機器、金属製弁又は遠心分離機製造設備
263の2 産業用ロボット製造設備
264
その他の産業用機器又は部分品若しくは附属品
製造設備
266
食品用、暖ちゆう房用、家庭用又はサービス用
)製造設備
機器(電気機器を除く。
19
業務用機械器具(業務用又はサービスの生産
の用に供されるもの(これらのものであつて
物の生産の用に供されるものを含む。
)をい
う。
)製造業用設備(第17号、第21号及び第
)
23号に掲げるものを除く。
157
その他の火薬類製造設備(弾薬装てん又は組立
)
設備を含む。
252
その他の金属製品製造設備
256
建設機械、鉱山機械又は原動機付車両(他の号
に掲げるものを除く。
)製造設備
265
事務用機器製造設備
266
食品用、暖ちゆう房用、家庭用又はサービス用
機器(電気機器を除く。
)製造設備
280
その他の車両部分品又は附属品製造設備
285
航空機若しくは同部分品(エンジン、機内空気
加圧装置、回転機器、プロペラ、計器、降着装
)製造又は修理設備
置又は油圧部品に限る。
287
試験機、測定器又は計量機製造設備
288
医療用機器製造設備
288の2 理化学用機器製造設備
289
─ 264 ─
レンズ又は光学機器若しくは同部分品製造設備
―法人税法の改正―
改正後の資産区分
番号
改正前の資産区分
設備の種類及び細目
番号
設備の種類及び細目
290
ウオッチ若しくは同部分品又は写真機用シャッ
ター製造設備
292
293
銃弾製造設備
銃砲、爆発物又は信管、薬きようその他の銃砲
用品製造設備
295
前掲以外の機械器具、部分品又は附属品製造設
備
310
20
歯科材料製造設備
電子部品、デバイス又は電子回路製造業用設
備
光ディスク(追記型又は書換え型のも 268の3 光ディスク(追記型又は書換え型のものに限
のに限る。)製造設備
る。
)製造設備
プリント配線基板製造設備
272の2 プリント配線基板製造設備
フラットパネルディスプレイ、半導体 268の2 フラットパネルディスプレイ又はフラットパネ
集積回路又は半導体素子製造設備
ル用フィルム材料製造設備
271
半導体集積回路(素子数が五百以上のものに限
る。
)製造設備
271の2 その他の半導体素子製造設備
その他の設備
174
磁気テープ製造設備
268
電気計測器、電気通信用機器、電子応用機器又
は同部分品(他の号に掲げるものを除く。
)製造
設備
270
電球、電子管又は放電燈製造設備
272
抵抗器又は蓄電器製造設備
272の3 フェライト製品製造設備
21
電気機械器具製造業用設備
273
電気機器部分品製造設備
267
産業用又は民生用電気機器製造設備
268
電気計測器、電気通信用機器、電子応用機器又
)製
は同部分品(他の号に掲げるものを除く。
造設備
270
電球、電子管又は放電燈製造設備
272
抵抗器又は蓄電器製造設備
273
電気機器部分品製造設備
274
乾電池製造設備
274の2 その他の電池製造設備
278
─ 265 ─
車両用エンジン、同部分品又は車両用電装品製
造設備(ミッション又はクラッチ製造設備を含
む。
)
―法人税法の改正―
改正後の資産区分
番号
22
設備の種類及び細目
情報通信機械器具製造業用設備
改正前の資産区分
番号
設備の種類及び細目
268
電気計測器、電気通信用機器、電子応用機器又
)製造
は同部分品(他の号に掲げるものを除く。
設備
23
輸送用機械器具製造業用設備
269
交通信号保安機器製造設備
56
縫製品製造業用設備
254
エンジン、タービン又は水車製造設備
256
建設機械、鉱山機械又は原動機付車両(他の号
に掲げるものを除く。
)製造設備
275
自動車製造設備
276
自動車車体製造又は架装設備
277
鉄道車両又は同部分品製造設備
278
車両用エンジン、同部分品又は車両用電装品製
造設備(ミッション又はクラッチ製造設備を含
む。
)
279
車両用ブレーキ製造設備
280
その他の車両部分品又は附属品製造設備
281
自転車又は同部分品若しくは附属品製造設備
めつき設備
その他の設備
282
鋼船製造又は修理設備
283
木船製造又は修理設備
284
舶用推進器、甲板機械又はハッチカバー製造設
備
鋳造設備
その他の設備
285
航空機若しくは同部分品(エンジン、機内空気
加圧装置、回転機器、プロペラ、計器、降着装
)製造又は修理設備
置又は油圧部品に限る。
24
その他の製造業用設備
286
その他の輸送用機器製造設備
62
その他の木製品製造設備
156
産業用火薬類(花火を含む。
)製造設備
184
練炭、豆炭類、オガライト(オガタンを含む。
)
又は炭素粉末製造設備
195
その他のガラス製品製造設備(光学ガラス製造
設備を含む。
)
るつぼ炉及びデータンク炉
溶解炉
その他の設備
239
─ 266 ─
その他の金網又は針金製品製造設備
―法人税法の改正―
改正後の資産区分
番号
設備の種類及び細目
改正前の資産区分
番号
設備の種類及び細目
240
縫針又はミシン針製造設備
252
その他の金属製品製造設備
265
事務用機器製造設備
270
電球、電子管又は放電燈製造設備
281
自転車又は同部分品若しくは附属品製造設備
めつき設備
その他の設備
289
レンズ又は光学機器若しくは同部分品製造設備
290
ウオッチ若しくは同部分品又は写真機用シャッ
ター製造設備
291
クロック若しくは同部分品、オルゴールムーブ
メント又は写真フイルム用スプール製造設備
293
銃砲、爆発物又は信管、薬きようその他の銃砲
用品製造設備
296
機械産業以外の設備に属する修理工場用又は工
作工場用機械設備
297
楽器製造設備
298
レコード製造設備
吹込設備
その他の設備
299
がん具製造設備
合成樹脂成形設備
その他の設備
300
万年筆、シャープペンシル又はペン先製造設備
301
ボールペン製造設備
302
鉛筆製造設備
303
絵の具その他の絵画用具製造設備
304
身辺用細貨類、ブラシ又はシガレットライター
製造設備
製鎖加工設備
その他の設備
前掲の区分によらないもの
305
ボタン製造設備
306
スライドファスナー製造設備
自動務歯成形又はスライダー製造機
自動務歯植付機
その他の設備
309
繊維壁材製造設備
311
真空蒸着処理業用設備
─ 267 ─
―法人税法の改正―
改正後の資産区分
番号
設備の種類及び細目
改正前の資産区分
番号
設備の種類及び細目
312
マッチ製造設備
314
つりざお又は附属品製造設備
315
墨汁製造設備
317
リノリウム、リノタイル又はアスファルトタイ
ル製造設備
318
畳表製造設備
織機、い草選別機及びい割機
その他の設備
319
畳製造設備
319の2 その他のわら工品製造設備
25
農業用設備
323
真珠、貴石又は半貴石加工設備
325
前掲以外の製造設備
322
蚕種製造設備
人工ふ化設備
その他の設備
368
種苗花き園芸設備
別表第七 電動機
〃
内燃機関、ボイラー及びポンプ
〃
トラクター
歩行型トラクター
その他のもの
〃
耕うん整地用機具
〃
耕土造成改良用機具
〃
栽培管理用機具
〃
防除用機具
〃
穀類収穫調製用機具
自脱型コンバイン、刈取機(ウインドロ
ウアーを除くものとし、バインダーを含
む。
)
、稲わら収集機(自走式のものを除
く。
)及びわら処理カッター
その他のもの
〃
飼料作物収穫調製用機具
モーア、ヘーコンディショナー(自走式
)、ヘーレーキ、ヘーテッ
のものを除く。
ダー、ヘーテッダーレーキ、フォレージ
ハーベスター(自走式のものを除く。
)、
)、
ヘーベーラー(自走式のものを除く。
ヘープレス、ヘーローダー、ヘードライ
ヤー(連続式のものを除く。
)、ヘーエレ
─ 268 ─
―法人税法の改正―
改正後の資産区分
番号
設備の種類及び細目
改正前の資産区分
番号
設備の種類及び細目
ベーター、フォレージブロアー、サイレ
ージディストリビューター、サイレージ
アンローダー及び飼料細断機
その他のもの
〃
果樹、野菜又は花き収穫調製用機具
野菜洗浄機、清浄機及び掘取機
その他のもの
〃
その他の農作物収穫調製用機具
い苗分割機、い草刈取機、い草選別機、
い割機、粒選機、収穫機、掘取機、つる
切機及び茶摘機
その他のもの
〃
農産物処理加工用機具(精米又は精麦機を除
く。
)
花莚織機及び畳表織機
その他のもの
〃
家畜飼養管理用機具
自動給じ機、自動給水機、搾乳機、牛乳
冷却機、ふ卵機、保温機、畜衡機、牛乳
成分検定用機具、人工授精用機具、育成
機、育すう機、ケージ、電牧器、カウト
レーナー、マット、畜舎清掃機、ふん尿
散布機、ふん尿乾燥機及びふん焼却機
その他のもの
〃
養蚕用機具
条桑刈取機、簡易保温用暖房機、天幕及
び回転まぶし
その他のもの
〃
運搬用機具
〃
その他の機具
その他のもの 主として金属製のもの
その他のもの その他のもの
26
林業用設備
58
可搬式造林、伐木又は搬出設備
動力伐採機
その他の設備
321
松脂その他樹脂の製造又は精製設備
334
ブルドーザー、パワーショベルその他の自走式
作業用機械設備
別表第七 造林又は伐木用機具
自動穴掘機、自動伐木機及び動力刈払機
その他のもの
─ 269 ─
―法人税法の改正―
改正後の資産区分
番号
改正前の資産区分
番号
設備の種類及び細目
〃
設備の種類及び細目
その他の機具
乾燥用バーナー
その他のもの 主として金属製のもの
その他のもの その他のもの
27
漁業用設備(次号に掲げるものを除く。
)
28
水産養殖業用設備
324の2 漁ろう用設備
324
水産物養殖設備
竹製のもの
その他のもの
29
鉱業、採石業又は砂利採取業用設備
石油又は天然ガス鉱業用設備
330
石油又は天然ガス鉱業設備
坑井設備
坑井設備
掘さく設備
その他の設備
掘さく設備
その他の設備
その他の設備
統合
331
天然ガス圧縮処理設備
326
砂利採取又は岩石の採取若しくは砕石設備
327
砂鉄鉱業設備
328
金属鉱業設備(架空索道設備を含む。
)
329
石炭鉱業設備(架空索道設備を含む。
)
採掘機械及びコンベヤ
その他の設備
前掲の区分によらないもの
332
333
硫黄鉱業設備(製錬又は架空索道設備を含む。
)
その他の非金属鉱業設備(架空索道設備を含
む。)
30
総合工事業用設備
334
ブルドーザー、パワーショベルその他の自走式
作業用機械設備
335
その他の建設工業設備
排砂管及び可搬式コンベヤ
ジーゼルパイルハンマー
アスファルトプラント及びバッチャープラント
その他の設備
31
電気業用設備
電気業用水力発電設備
346
電気事業用水力発電設備
その他の水力発電設備
347
その他の水力発電設備
汽力発電設備
348
汽力発電設備
内燃力又はガスタービン発電設備
349
内燃力又はガスタービン発電設備
送電又は電気業用変電若しくは配電設備
350
送電又は電気事業用変電若しくは配電設備
需要者用計器
需要者用計器
柱上変圧器
柱上変圧器
その他の設備
その他の設備
─ 270 ─
―法人税法の改正―
改正後の資産区分
番号
改正前の資産区分
番号
設備の種類及び細目
設備の種類及び細目
鉄道又は軌道業用変電設備
351
鉄道又は軌道事業用変電設備
その他の設備
369
前掲の機械及び装置以外のもの並びに前掲の区
分によらないもの
主として金属製のもの
その他のもの
主として金属製のもの
その他のもの
32
ガス業用設備
354
製造用設備
石炭ガス、石油ガス又はコークス製造設備(ガ
ス精製又はガス事業用特定ガス発生設備を含
)
む。
356
供給用設備
ガス導管 鋳鉄製のもの
鋳鉄製導管以外の導管
ガス導管 その他のもの
需要者用計量器
需要者用計量器
その他の設備
その他の設備
369
その他の設備
33
ガス事業用供給設備
鋳鉄製導管
前掲の機械及び装置以外のもの並びに前掲の区
分によらないもの
主として金属製のもの
主として金属製のもの
その他のもの
その他のもの
熱供給業用設備
369
前掲の機械及び装置以外のもの並びに前掲の区
分によらないもの
主として金属製のもの
34
水道業用設備
357
上水道又は下水道業用設備
35
通信業用設備
343
国内電気通信事業用設備
デジタル交換設備及び電気通信処理設備
アナログ交換設備
その他の設備
343の2 国際電気通信事業用設備
デジタル交換設備及び電気通信処理設備
アナログ交換設備
その他の設備
345
その他の通信設備(給電用指令設備を含む。
)
36
放送業用設備
344
ラジオ又はテレビジョン放送設備
37
映像、音声又は文字情報制作業用設備
363
映画製作設備(現像設備を除く。
)
照明設備
撮影又は録音設備
その他の設備
38
鉄道業用設備
自動改札装置
369
前掲の機械及び装置以外のもの並びに前掲の区
分によらないもの
主として金属製のもの
─ 271 ─
―法人税法の改正―
改正後の資産区分
番号
改正前の資産区分
番号
設備の種類及び細目
その他の設備
337
設備の種類及び細目
鋼索鉄道又は架空索道設備
鋼索
その他の設備
351の2 列車遠隔又は列車集中制御設備
39
道路貨物運送業用設備
340
荷役又は倉庫業用設備及び卸売又は小売業の荷
役又は倉庫用設備
移動式荷役設備
くん蒸設備
その他の設備
40
倉庫業用設備
33
冷凍、製氷又は冷蔵業用設備
結氷かん及び凍結さら
その他の設備
340
荷役又は倉庫業用設備及び卸売又は小売業の荷
役又は倉庫用設備
移動式荷役設備
くん蒸設備
その他の設備
41
運輸に附帯するサービス業用設備
334
ブルドーザー、パワーショベルその他の自走式
作業用機械設備
340
荷役又は倉庫業用設備及び卸売又は小売業の荷
役又は倉庫用設備
移動式荷役設備
くん蒸設備
その他の設備
42
飲食料品卸売業用設備
341
計量証明業用設備
342
船舶救難又はサルベージ設備
1
食肉又は食鳥処理加工設備
7
その他の果実又はそ菜処理加工設備
むろ内用バナナ熟成装置
その他の設備
43
12
精穀設備
15
その他の豆類処理加工設備
石油又は液化石油ガス卸売用設備(貯
)
そうを除く。
338
石油又は液化石油ガス卸売用設備(貯そうを除
その他の設備
218
建築材料、鉱物又は金属材料等卸売業用設備
)
く。
鉄鋼伸線(引き抜きを含む。
)設備及び鉄鋼卸
売業用シャーリング設備並びに伸鉄又はシャー
リング業用設備
218の2 鉄くず処理業用設備
360の2 故紙梱包設備
─ 272 ─
―法人税法の改正―
改正後の資産区分
番号
改正前の資産区分
番号
設備の種類及び細目
44
飲食料品小売業用設備
45
その他の小売業用設備
1
ガソリン又は液化石油ガススタンド設
備
その他の設備
339
設備の種類及び細目
食肉又は食鳥処理加工設備
ガソリンスタンド設備
339の2 液化石油ガススタンド設備
369
前掲の機械及び装置以外のもの並びに前掲の区
分によらないもの
主として金属製のもの
主として金属製のもの
その他のもの
その他のもの
46
技術サービス業用設備(他の号に掲げるもの
)
を除く。
計量証明業用設備
341
計量証明業用設備
その他の設備
336
測量業用設備
カメラ
その他の設備
47
宿泊業用設備
358
ホテル、旅館又は料理店業用設備及び給食用設
備
引湯管
その他の設備
48
飲食店業用設備
358
ホテル、旅館又は料理店業用設備及び給食用設
備
引湯管
その他の設備
49
洗濯業、理容業、美容業又は浴場業用設備
359
クリーニング設備
360
公衆浴場設備
かま、温水器及び温かん
その他の設備
50
51
その他の生活関連サービス業用設備
48
洗毛、化炭、羊毛トップ、ラップペニー、反
毛、製綿又は再生綿業用設備
361
火葬設備
364
天然色写真現像焼付設備
365
その他の写真現像焼付設備
366
映画又は演劇興行設備
娯楽業用設備
映画館又は劇場用設備
照明設備
その他の設備
遊園地用設備
ボウリング場用設備
367
遊園地用遊戯設備(原動機付のものに限る。
)
367の2 ボウリング場用設備
レーン
その他の設備
─ 273 ─
―法人税法の改正―
改正後の資産区分
改正前の資産区分
設備の種類及び細目
番号
その他の設備
番号
設備の種類及び細目
369
前掲の機械及び装置以外のもの並びに前掲の区
分によらないもの
52
主として金属製のもの
主として金属製のもの
その他のもの
その他のもの
教育業(学校教育業を除く。)又は学習支援業
用設備
教習用運転シミュレータ設備
369
前掲の機械及び装置以外のもの並びに前掲の区
分によらないもの
主として金属製のもの
その他の設備
369
前掲の機械及び装置以外のもの並びに前掲の区
分によらないもの
主として金属製のもの
主として金属製のもの
その他のもの
その他のもの
53
自動車整備業用設備
294
自動車分解整備業用設備
338の2 洗車業用設備
54
その他のサービス業用設備
55
前掲の機械及び装置以外のもの並びに前掲の
区分によらないもの
1
機械式駐車設備
食肉又は食鳥処理加工設備
339の3 機械式駐車設備
その他の設備
主として金属製のもの
その他のもの
352
蓄電池電源設備
353
フライアッシュ採取設備
362
電光文字設備
369
前掲の機械及び装置以外のもの並びに前掲の区
分によらないもの
主として金属製のもの
その他のもの
② 法定耐用年数に異動がある場合の償却限度
額の計算方法について
ではありません。すなわち、例えば、定率法
においては、期首帳簿価額に償却率を乗ずる
今回の改正による新しい法定耐用年数は、
ことで償却額(又は償却限度額)が求められ
平成20年4月1日以後開始する事業年度につ
る計算構造となっており、耐用年数はその償
いて適用があることとされています。つまり、
却率を決定するための要素でしかありません。
同日以後に開始する事業年度の償却限度額の
したがって、新しい法定耐用年数を適用する
計算から適用することとなります。
との意味は、償却限度額の計算を、新しい法
ところで、減価償却制度において、耐用年
定耐用年数による償却率により計算するとい
数というのは重要な概念ではありますが、そ
うこととなります。もう少し、具体的な例に
の計算過程、特に定率法の計算過程において
より説明をすると、仮に改正前の法定耐用年
は、計算の構成要素として直接適用するもの
数が10年(定率法の償却率0.250)、改正後の
─ 274 ─
―法人税法の改正―
法定耐用年数が8年(定率法の償却率0.313)
⑵ 耐用年数の短縮特例の手続の簡素化
である定率法を採用している機械装置の場合、
耐用年数の短縮特例について、次の見直しが
平成20年4月1日前に開始した事業年度にお
行われました(法令57⑦⑧)。
いては、
「期首帳簿価額×0.250」により償却
① 本特例の適用を受けた減価償却資産につい
限度額を計算し、平成20年4月1日以後に開
て軽微な変更があった場合
始する事業年度においては、
「期首帳簿価額
内国法人が短縮特例の適用を受けた減価償
×0.313」により償却限度額を計算すること
却資産の一部についてこれに代わる更新資産
になります。
と取り替えた場合において、その更新資産の
③ 中古資産の耐用年数について
取得をした日の属する事業年度の申告書の提
イ 見積法を適用している場合
出期限までに、一定の事項を記載した届出書
中古資産を取得し、その耐用年数を見積
を納税地の所轄税務署長を経由して納税地の
法である減価償却資産の耐用年数等に関す
所轄国税局長に提出したときは、特例の承認
る省令第3条第1項第1号の規定により算
を受けたものとすることとされました(法令
定している場合において法定耐用年数が短
57⑦)。つまり、承認を受けた減価償却資産
縮されたときは、その中古資産につき実際
についてその減価償却資産を構成する一部の
に見積もって使用可能期間を算定している
資産の取替えを行った場合について、再度、
ことから、法定耐用年数の改正はその残存
承認を受ける必要はなくなりました。
耐用年数に影響を与えないため、見積り替
イ 適用要件
えは認められないことが原則ですが、改正
適用要件は、次に該当する場合です(法
後の法定耐用年数が従来適用していた見積
規18①)。
耐用年数よりも短いときは、改正後の法定
ⅰ 既に短縮特例の承認を受けている減価
耐用年数を適用することが認められていま
償却資産の一部の資産について、種類及
す。今回の改正により、その所有する中古
び品質を同じくするこれに代わる新たな
資産に係る法定耐用年数が短縮され、その
資産と取り替えた場合
耐用年数を見積法により計算していた場合
には、この取扱いが認められます。
ⅱ 既に短縮特例の承認を受けている減価
償却資産の一部の資産について、これに
ロ 簡便法を適用している場合
代わる新たな資産と取り替えた場合で、
中古資産を取得し、その耐用年数を簡便
次の要件を満たす場合
法である減価償却資産の耐用年数等に関す
a その資産の購入の代価又はその資産
る省令第3条第1項第2号の規定により算
の建設等のために要した原材料費、労
定している場合において法定耐用年数が短
務費及び経費の額並びに当該資産を事
縮されたときは、改正後の法定耐用年数を
業の用に供するために直接要した費用
基礎にその資産の耐用年数を簡便法により
の額の合計額がその短縮特例の承認を
再計算することが認められています。今回
受けている減価償却資産の取得価額の
の改正により、その所有する中古資産に係
10%以下であること。
る法定耐用年数が短縮され、その耐用年数
b その資産を取り替えた後の減価償却
を簡便法により計算していた場合には、こ
資産の使用可能期間の年数と当初の承
の取扱いが認められます。
認におけるその減価償却資産の法定耐
用年数とみなされた使用可能期間の年
数とに差異が生じない場合
─ 275 ─
―法人税法の改正―
ロ 届出書
次の事由であることが必要です(法令57⑧、
この措置の適用を受けるためには、その
更新資産の取得をした日の属する事業年度
の申告書の提出期限までに、次の事項を記
法規18③)。
ⅰ 法人税法施行令第57条第1項第1号に
掲げる事由
載した届出書を納税地の所轄税務署長を経
法人税法施行令第57条第1項第1号に
由して納税地の所轄国税局長に提出するこ
掲げる事由とは、減価償却資産の材質又
ととされています(法令57⑦、法規18②)
。
は製作方法がこれと種類及び構造を同じ
なお、仮決算をした場合の中間申告書を提
くする他の減価償却資産の通常の材質又
出する場合には、その中間申告書の提出期
は製作方法と著しく異なることにより、
限までに届出書の提出をすることとされて
その使用可能期間が法定耐用年数に比し
います。
て著しく短いことです。つまり、他の減
ⅰ 届出をする内国法人の名称及び納税地
価償却資産の通常の材質又は製作方法が
並びに代表者の氏名
大きく異なるような場合に、再度同様に
ⅱ 短縮特例の承認を受けている減価償却
通常の材質又は製作方法が異なる減価償
資産の償却限度額の計算の基礎となる使
却資産を取得した場合には、この措置の
用可能期間の算定の基礎
適用を受けることができます。
ⅲ 更新資産に取り替えた後の償却限度額
の計算の基礎となる使用可能期間の算定
の基礎
ⅱ 法人税法施行規則第16条第1号に掲げ
る事由
法人税法施行規則第16条第1号に掲げ
ⅳ 上記イⅰ又はⅱのいずれに該当するか
の別
る事由とは、旧耐用年数省令を用いて償
却限度額を計算することとした場合に、
ⅴ その他参考となるべき事項
旧耐用年数省令に定める一の耐用年数を
② 本特例の適用を受けた減価償却資産と同一
の他の減価償却資産の取得をした場合
用いて償却限度額を計算すべきこととな
る減価償却資産の構成が当該耐用年数を
内国法人が短縮特例の承認を受けた減価償
用いて償却限度額を計算すべきこととな
却資産とその承認に係る材質又は製作方法を
る同一種類の他の減価償却資産の通常の
同じくする減価償却資産を新たに取得した場
構成と著しく異なることです。つまり、
合等において、その取得をした日の属する事
モデルプラントとその構成が大きく異な
業年度に係る申告書の提出期限までに、一定
るような場合に、再度同様に構成が異な
の事項を記載した届出書を納税地の所轄税務
る資産を取得した場合には、この措置の
署長を経由して納税地の所轄国税局長に提出
適用を受けることができます。
したときは、その新たに取得した減価償却資
ⅲ 法人税法施行規則第16条第3号に掲げ
産について承認を受けたものとすることとさ
る事由。ただし、上記ⅰ又はⅱに準ずる
れました(法令57⑧)
。つまり、短縮特例の
事由に限定されます。
承認を受けた減価償却資産と同じ減価償却資
法人税法施行規則は第16条第3号に掲
産を取得した場合に、同一の承認事由で、再
げる事由とは、他の承認事由に準ずる事
度、承認を受ける必要はなくなりました。
由です。したがって、この措置の適用対
イ 適用要件
象となる事由も上記ⅰ又はⅱに準ずる事
この措置の適用を受けるためには、既に
短縮特例の承認を受けている承認の事由が
─ 276 ─
由により承認を受けているものも対象と
なります。
―法人税法の改正―
なお、法人税法施行規則第16条第2号に
原則として耐用年数省令の別表に定められて
掲げる事由により短縮特例の承認を受けて
いる種類ごとに選定することとされています。
いる場合には、既に法人税取扱通達7−3
今回の耐用年数省令の別表の改正により、特
−22により、その短縮特例の承認を受けて
に機械装置については、その設備の種類が大
いる減価償却資産と種類を同じくする減価
括り化されたため、改正前に異なる償却の方
償却資産を取得したときは、その取得した
法を選定していた設備が一区分に括られるこ
減価償却資産についても承認に係る耐用年
とが想定されること、仮に同じ償却方法を選
数を適用することが明らかにされているの
定していたとしても異なる区分が一区分に括
で、今回の届出制度の対象にすることはか
られた場合に再度償却の方法を選定し届出が
えって納税者の事務負担を増大させること
必要となるのか明らかではないことから、次
から、今回の対象とはなっていません。
の経過措置が設けられています(改正法規附
ロ 届出書
則4)。
この措置の適用を受けるためには、その
新たに取得した減価償却資産の取得をした
イ 異なる旧区分に属する減価償却資産が同
一の償却方法を選択している場合
日の属する事業年度の申告書の提出期限ま
平成20年4月1日以後最初に開始する事
でに、次の事項を記載した届出書を納税地
業年度において、法人が異なる旧区分に属
の所轄税務署長を経由して納税地の所轄国
する減価償却資産につき同一の償却の方法
税局長に提出することとされています(法
を選定している場合において、その異なる
令57⑧、法規18④)
。なお、仮決算をした
旧区分に属する減価償却資産が同一の新区
場合の中間申告書を提出する場合には、そ
分に属することとなったときは、その同一
の中間申告書の提出期限までに届出書の提
の新区分に属することとなった減価償却資
出をすることとされています。
産につきその同一の償却の方法を選定した
ⅰ 届出をする内国法人の名称及び納税地
ものとみなすこととされました(改正法規
並びに代表者の氏名
附則4①)。つまり、別々の減価償却資産
ⅱ 当初の承認に係る減価償却資産及びそ
としてそれぞれの資産につき償却の方法を
の取得した減価償却資産の材質若しくは
選定している場合であっても、同一の償却
製作方法若しくは構成又はこれらに準ず
の方法を選定している限り、再度、償却の
るもの
方法を選定して届出をする必要はありませ
ⅲ 上記イⅰからⅲまでの事由のいずれに
該当するかの別
ん。
ロ 異なる旧区分に属する減価償却資産が異
ⅳ その他参考となるべき事項
なる償却方法を選択している場合
平成20年4月1日以後最初に開始する事
業年度において、法人の有する異なる旧区
⑶ その他の改正
① 減価償却資産の範囲の見直し
分に属する減価償却資産が異なる償却の方
減価償却資産の範囲に、キウイフルーツ樹
法を選定している場合において、その異な
及びブルーベリー樹が追加されました(法令
る旧区分に属する減価償却資産が同一の新
13九)
。
区分に属することとなった場合において、
② 減価償却資産の償却の方法の選定単位に関
する経過措置
申告書の提出期限までに、次の事項を記載
した届出書を納税地の所轄税務署長に提出
減価償却資産の償却の方法の選定単位は、
─ 277 ─
したときは、その償却の方法の変更承認が
―法人税法の改正―
あったものとみなすこととされました。つ
する法人で事業所又は船舶ごとに償却の
まり、改正後の制度においては、異なる旧
方法を選定している場合にあっては、事
区分に属する減価償却資産が同一の区分に
業所又は船舶ごとの当該区分をいいます
属するため、いずれかの償却方法に統一す
(改正法規附則4④一)
。
る必要があります。したがって、償却方法
(注2)
上記における新区分とは、新耐用年数
の変更の承認を受ける必要がありますが、
省令別表 第一、別表第二、別表第五又
これは制度改正に伴うものであることから、
は別表第六の規定に基づく新法人税法施
変更承認という手続を経ずに届出で変更を
行規則第14条各号に定める種類の区分を
可能とし、その提出期限も申告書の提出期
いい、二以上の事業所又は船舶を有する
限としたものです(改正法規附則4②)
。
法人で事業所又は船舶ごとに償却の方法
なお、仮決算をした場合の中間申告書を提
を選定しようとする場合にあっては、事
出する場合には、その中間申告書の提出期
業所又は船舶ごとの当該区分をいいます
限までに届出書の提出をすることとされて
います。
(改正法規附則4④二)
。
③ 耐用年数の短縮が認められる事由の整備
ⅰ 届出をする法人の名称及び納税地並び
に代表者の氏名
法人の有する減価償却資産が次の事由に該
当するときは、一定の手続きの下、耐用年数
ⅱ その償却の方法を変更しようとする減
の短縮特例が認められてきました(法令57①、
価償却資産の種類及び構造若しくは用途、
法規16)。
細目又は設備の種類の区分(二以上の事
イ 当該資産の材質又は製作方法がこれと種
業所又は船舶を有する法人で事業所又は
類及び構造を同じくする他の減価償却資産
船舶ごとに償却の方法を選定していない
の通常の材質又は製作方法と著しく異なる
ものが事業所又は船舶ごとに償却の方法
ことにより、その使用可能期間が法定耐用
を選定しようとする場合には、事業所又
年数に比して著しく短いこと。
は船舶ごとのこれらの区分)
ロ 当該資産の存する地盤が隆起し又は沈下
ⅲ 現によっている償却の方法及びその償
却の方法を採用した日
したことにより、その使用可能期間が法定
耐用年数に比して著しく短いこととなった
ⅳ 採用しようとする新たな償却の方法
こと。
ⅴ その他参考となるべき事項
ハ 当該資産が陳腐化したことにより、その
なお、この場合に、平成20年4月1日
以後最初に開始する事業年度において、
使用可能期間が法定耐用年数に比して著し
く短いこととなったこと。
償却の方法の変更をしなかったときは、
ニ 当該資産がその使用される場所の状況に
その新区分に属する減価償却資産につき
基因して著しく腐しよくしたことにより、
償却の方法を選定しなかったものとみな
その使用可能期間が法定耐用年数に比して
して、法定償却方法により償却すること
著しく短いこととなったこと。
とされています(改正法規附則4③)
。
ホ 当該資産が通常の修理又は手入れをしな
(注1) 上記における旧区分とは、旧耐用年数
かったことに基因して著しく損耗したこと
省令別表第一、別表第二又は別表第五か
により、その使用可能期間が法定耐用年数
ら別表第八までの規定に基づく旧法人税
に比して著しく短いこととなったこと。
法施行規則第14条各号に定める種類の区
ヘ 耐用年数省令に定める一の耐用年数を用
分をいい、二以上の事業所又は船舶を有
いて償却限度額を計算すべき減価償却資産
─ 278 ─
―法人税法の改正―
の構成が当該耐用年数を用いて償却限度額
で特掲されていない機械装置については、引
を計算すべき同一種類の他の減価償却資産
き続き短縮事由に該当することとなります。
の通常の構成と著しく異なることにより、
また、いずれの場合においても、改正前のベ
当該資産の使用可能期間が法定耐用年数に
ースにより短縮事由を判断することとされて
比して著しく短いこと又は短いこと。
いますので、現在これらの事由により短縮の
ト 当該資産が機械及び装置である場合にお
承認を受けている減価償却資産については、
いて、当該資産の属する設備が耐用年数省
引き続きその承認を受けた耐用年数により償
令別表第二に特掲された設備以外のもので
却限度額を計算することができます。
あること。
④ 償却限度額の計算単位の整備
チ 上記イからトまでに準ずる事由
減価償却資産の償却限度額については、耐
今年度の税制改正では、上述のとおり、機
用年数省令に規定する減価償却資産の種類の
械装置の資産区分が大括り化されました。こ
区分ごとに、その資産の種類についてさらに
れに伴い、新しい機械装置の資産区分におい
構造若しくは用途、細目又は設備の種類の区
ては複数の異なるタイプの機械装置が含まれ
分が定められているものについては、その構
ているため、上記ヘの事由による耐用年数の
造若しくは用途、細目又は設備の種類の区分
短縮について、その比較すべき標準的プラン
ごとに、かつ、耐用年数及び償却の方法の異
トとしてどの設備と比較すべきかを整備する
なるものについては、その異なるごとに、そ
必要が生じました。また、上記トの事由によ
の償却の方法により計算した金額とすること
る耐用年数の短縮については、何が特掲され
とされています(法規19①)。また、2以上
た設備か明確にする必要が生じました。そこ
の事業所を有する法人で、事業所ごとに償却
で、今回、設備の大括り化に伴う整備として、
の方法を選定している法人については、事業
上記ヘ及びトについては、今回の改正前の旧
所ごとのこれらの区分ごとに償却限度額を計
耐用年数省令を基に判断することとされまし
算することとされています(法規19①)。耐
た。
用年数の資産区分の大括り化を行った今年度
具体的には、上記ヘについては、
「旧耐用
の改正後に、これを適用して償却限度額を計
年数省令を用いて償却限度額を計算すること
算すると、償却限度額の計算についても大括
とした場合に、旧耐用年数省令に定める一の
り化される結果となり、企業の予想していな
耐用年数を用いて償却限度額を計算すべきこ
かった事務負担が生ずることが考えられます。
ととなる減価償却資産の構成が当該耐用年数
したがって、償却限度額の計算については、
を用いて償却限度額を計算すべきこととなる
今回の大括り化に関わらず、旧耐用年数表の
同一種類の他の減価償却資産の通常の構成と
設備の種類の区分ごとに計算することができ
著しく異なること。
」と規定されており、従
ることとされました(法規19②)。
来と同様の標準的プラントで判断することと
されています
(法規16一)
。上記トについては、
「当該資産が機械及び装置である場合において、
3 適用関係
⑴ 上記2⑴の改正は、法人の平成20年4月1日
当該資産の属する設備が耐用年数省令別表第
以後に開始する事業年度分の法人税及び連結法
二に特掲された設備以外のものであること。
」
人の同日以後に開始する連結事業年度分の法人
と規定されており、上記ヘと同様、改正前の
税について適用し、法人の同日前に開始した事
ベースにより判断することとされています
業年度分の法人税及び連結法人の同日前に開始
(法規16二)
。したがって、改正前の390区分
した連結事業年度分の法人税については、なお
─ 279 ─
―法人税法の改正―
従前の例によることとされています(改正耐規
始した連結事業年度分の法人税については、な
附則2)
。
お従前の例によることとされています(改正法
⑵ 上記2⑵の改正は、法人が平成20年4月1日
令附則2)。
以後に終了する事業年度において上記2⑵①の
上記2⑶③④の改正は、法人の平成20年4月
更新資産又は上記2⑵②の減価償却資産の取得
1日以後に開始する事業年度分の法人税及び連
をした場合について適用することとされていま
結法人の同日以後に開始する連結事業年度分の
す(改正法令附則10①②)
。
法人税について適用し、法人の同日前に開始し
⑶ 上記2⑶①の改正は、法人の平成20年4月1
た事業年度分の法人税及び連結法人の同日前に
日以後に開始する事業年度分の法人税及び連結
開始した連結事業年度分の法人税については、
法人の同日以後に開始する連結事業年度分の法
なお従前の例によることとされています(改正
人税について適用し、法人の同日前に開始した
法規附則2)。
事業年度分の法人税及び連結法人の同日前に開
二 公益法人税制
ない社団又は財団であって、準則主義(登
1 公益法人制度改革への基本的な対応
記)により簡便に法人格を取得することが
できることを特徴とする一般社団法人・一
⑴ 改正の背景及び経緯
① 公益法人制度改革の経緯及び概要
般財団法人
民法上の公益法人は、公益活動を担う代表
ロ 一般社団法人・一般財団法人のうち、民
的な主体として大きな役割を果たしてきまし
間有識者からなる委員会の答申に基づき、
たが、一方で、公益法人制度に対しては、明
行政庁(内閣総理大臣又は都道府県知事を
治29年の民法制定以来抜本的な見直しが行わ
いいます。以下同じです。)による公益性
れず、主務官庁の許可主義の下、法人格の取
の認定を受けた公益社団法人・公益財団法
得と公益性の判断が一体となっているため、
人
法人設立が簡便でなく、公益性の判断基準が
が設けられることになりますが、今般の税制
不明確である等の様々な指摘や批判がなされ
措置は、②で述べる基本的視点に立ってこれ
てきました。
らの法人に係る課税上の取扱いを整備するも
これを受けて、
「民間が担う公益」をわが
のです。
国社会・経済システムの中で積極的に位置づ
(注1) 一般社団法人及び一般財団法人に関する
け、その活動を促進するとともに、公益法人
法律(平成18年法律第48号。以下「一般社
について指摘される諸問題に適切に対処する
団・財団法」といいます。
)
、公益社団法人
観点から、公益法人制度改革を行うこととさ
及び公益財団法人の認定等に関する法律
れ、平成18年5月26日にはいわゆる公益法人
(平成18年法律第49号。以下「公益法人認
制度改革3法(注1)が可決・成立し、同年
定法」といいます。
)
、一般社団法人及び一
6月2日に公布され、原則として平成20年12
般財団法人に関する法律及び公益社団法人
月1日から施行することとされています。
及び公益財団法人の認定等に関する法律の
新たな法人制度においては、法人格の取得
と公益性の判断を分離し、
施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
(平成18年法律第50号。以下「整備法」と
イ 社員等に対する剰余金の分配を目的とし
─ 280 ─
いいます。
)の3法を指します。
―法人税法の改正―
○公益法人制度改革の概要
(旧公益法人制度)
(新たな法人制度)
法人設立等の主務官庁制・許可主義
主務官庁制・許可主義の廃止
法人の設立と公益性の判断を一体で実施
法人の設立と公益性の判断を分離
一 体
〇法人の設立(一般社団法人・一般財団法人)
<民法に基づく社団法人・財団法人>
登記のみで設立
・準則主義
〇法人の設立
各主務官庁の許可
分
離
・自由裁量 ・縦割り
一般社団法
人及び一般
財団法人に
関する法律
〇公益性の判断(公益社団法人・公益財団法人)
一般社団法人・一般財団法人の申請を受け、
民間有識者による委員会の意見に基づき内
閣総理大臣又は都道府県知事が認定
〇公益性の判断
各主務官庁の自由裁量
・統一的な判断(縦割り行政からの脱却)
・明確な基準を法定
公益社団法
人及び公益
財団法人の
認定等に関
する法律
施行は平成 20 年 12 月1日(委員会の組織等に関する部分は平成 19 年4月1日)
※ 内閣官房作成資料を基に作成
○新たな法人制度への移行の概要
施行
(H20.12.1)
認定の申請
社団法人・財団法人
(民法第 34 条法人)
認定
公益社団法人・公益財団法人
認定取消
特例民法法人
認定
認可の申請
認可
移行期間は5年
(※)
(中間法人からの移行は、
一般社団法人のみ)
有限責任中間法人
無限責任中間法人
一般社団法人・一般財団法人
特例無限
責任中間法人
移行手続き
(定款変更等)
移行期間は1年
(※)
─ 281 ─
※ 移行期間中に移行できない場合は、
解散したものとみなされる。
―法人税法の改正―
(注2) 公益法人制度改革3法では、民法第34条
制や事業に対する監督等も最小限のものに
の規定により設立された社団法人及び財団
とどまっていることから、適正な課税を行
法人(以下「旧民法第34条法人」といいま
う必要がある、
す。
)のほかに、剰余金の分配を目的とし
との基本的視点に立って制度の構築が行われ
ない社団についてのより一般的な法人制度
ました。
である一般社団法人制度が創設されること
(参考)
税制調査会答申「抜本的な税制改革に向
に伴い、中間法人法を廃止し、中間法人制
度については新たな法人制度に統合するこ
ととされています。
けた基本的考え方」
(平成19年11月)
(抄)
4.公益法人税制
我が国の社会を活力あるものとしていくた
② 税制上の措置に当たっての基本的視点
めに、行政部門だけでなく
「民間が担う公益」
公益法人認定法においては、新たな法人制
の重要性が今後ますます増大すると考えられ
度に対応した税制上の措置のあり方について、
る。現在、その担い手となる公益法人に係る
「公益法人が行う公益目的事業に係る活動が
制度改革が進められており、来年12月から新
果たす役割の重要性にかんがみ、当該活動を
制度(いわゆる公益法人関連三法)が施行予
促進しつつ適正な課税の確保を図るため、公
定である。これに伴い、税制面でも、
「民間
益法人並びにこれに対する寄附を行う個人及
が担う公益」を支える制度の構築が求められ
び法人に関する所得課税に関し、所得税、法
ている。
人税及び相続税並びに地方税の課税について
この点については、当調査会では、平成17
の必要な措置その他所要の税制上の措置を講
年6月に基礎問題小委員会・非営利法人課税
ずるものとする。
」
(第58条)とされました。
ワーキンググループにおいて「新たな非営利
具体的な税制措置のあり方については、公
法人に関する課税及び寄附金税制についての
益法人制度改革の動きに対応して政府税制調
基本的考え方」をまとめており、そこで示さ
査会においても精力的に審議が行われ、平成
れた考え方に即して税制上の措置が講じられ
17年6月には、基礎問題小委員会・非営利法
るべきであるが、改めて以下の点を指摘して
人課税ワーキング・グループにおいて「新た
おきたい。
な非営利法人に関する課税及び寄附金税制に
第一に、新たに創設される公益社団法人・
ついての基本的考え方」が取りまとめられ、
公益財団法人については、第三者委員会の認
さらに昨年11月の「抜本的な税制改革に向け
定を受けて公益を目的とした事業を担い、公
た基本的考え方」において、税制措置を講ず
益目的事業財産という新たな概念に基づき、
るにあたっての基本的方向性が示されました。
公益目的事業の遂行等が求められる法人であ
こうした検討結果も踏まえ、今般の税制措
り、公益目的事業から生ずる所得の取扱いな
置に当たっては、
どに関して、公益目的事業の実施をサポート
イ 公益社団法人・公益財団法人については、
する措置を講じるべきである。
民間が担う公益活動を促進する観点から、
第二に、新たに創設される一般社団法人・
税制上もその活動をサポートするための措
一般財団法人については、準則主義により設
置を講ずる必要がある、
立可能であり、多様な態様のものが現れるこ
ロ 一般社団法人・一般財団法人については、
とが予想されるところである。このため、一
いわゆる非営利活動を行うことを目的とし
律の取扱いとすることは適当ではなく、他の
た法人の受け皿になることに配慮する必要
法人等に対する課税とのバランスにも留意し
がある反面、準則主義で設立され、行為規
つつ、態様に応じた措置を講じるべきである。
─ 282 ─
―法人税法の改正―
第三に、民間が担う公益活動を資金面で支
保する観点から、営利法人と競合関係にあ
えるうえで寄附の役割は重要である。このた
る事業(収益事業)を営む場合に限り法人
め、特定公益増進法人の中に公益社団法人・
税の納税義務が生じ、各事業年度の所得の
公益財団法人を位置づけることにより、寄附
うち収益事業から生じた所得に対して法人
を行った個人・法人が寄附金控除等を受ける
税を課する、いわゆる収益事業課税方式が
ことができるようにするとともに、個人によ
適用されています。
る現物の寄附に配慮するなど、寄附を行うた
さらに、収益事業から得られた利益の一
部は公益性が認められる事業に充てられる
めの環境整備を進めるべきである。
ことに配慮して、収益事業に属する資産の
(中略)
第四に、新たに創設される法人が租税回避
うちから収益事業以外の事業のために支出
に濫用されないよう、現行の公益法人等に関
した金額は、収益事業に係る寄附金の額と
する租税回避の防止措置をも考慮し、適切な
みなして、一定の金額の範囲内で損金算入
措置を講じるべきである。
を認める、いわゆるみなし寄附金制度を適
第五に、現行の社団法人・財団法人が一般
社団法人・一般財団法人に移行する際に公益
用した上で、22%の軽減税率が適用されて
います。
を目的とした事業の継続が求められる場合が
ロ 旧中間法人は、剰余金の分配を目的とし
あり、そうしたケースをどう取り扱うかにつ
ない法人ですが、その行う事業の範囲に制
いての検討が必要である。
約がなく、残余財産の帰属先の制限もない
(注)
今般の公益法人制度改革は、旧民法第34条
ため、営利法人と実質的に同等の活動を行
法人を対象とするものであり、その他の公益
うことが可能であることから、法人税法上
法人等を対象とするものではありませんので、
は普通法人として取り扱われています。
旧民法第34条法人以外の「公益法人等」に対
する課税関係は、基本的には今般の税制改革
② 新たな法人類型等に対する課税の概要
イ 公益社団法人・公益財団法人
公益社団法人・公益財団法人は、一般社
において変更されていません。
団法人・一般財団法人のうち、公益目的事
業(公益法人認定法第2条第4号に規定す
⑵ 改正の趣旨及び概要
① 従前の法人類型に対する課税の概要
る公益目的事業をいいます。以下同じで
今回の公益法人制度改革により廃止される
す。)の実施を主たる目的としていること、
こととなる法人制度に基づく旧民法第34条法
公益目的事業の実施に必要な経理的基礎及
人及び旧中間法人(中間法人法に基づき設立
び技術的能力を有していること、法人の関
された中間法人をいいます。以下同じです。
)
係者に対して特別の利益を供与しないこと、
に対する法人税の課税の概要は以下のとおり
公益目的事業について収支相償と見込まれ
です。
ること、公益目的事業の比率が50%以上で
イ 旧民法第34条法人に対する法人税の取扱
あると見込まれることなどの法令上明確化
いは、公益性が認められる事業を行うこと
された公益認定の基準に適合することにつ
を主たる目的とし、剰余金の分配が制限さ
いて行政庁の認定を受けた法人です。公益
れ、かつ、残余財産も同種の法人等に帰属
認定を受けた後についても、収支相償、公
するといった法人の公益性に鑑み、基本的
益目的事業比率の維持、遊休財産の保有制
には非課税としつつ、利益を得ることを目
限、収益事業等の収益の50%以上の公益目
的とする営利法人との課税のバランスを確
的事業への使用義務等の基準が設けられ、
─ 283 ─
―法人税法の改正―
これを遵守すべきこととされています。ま
して、収益事業に属する資産のうちから
た、行政庁の認定は、民間有識者で構成さ
収益事業以外の事業のために支出した金
れる公益認定等委員会(都道府県の場合は
額について、みなし寄附金制度の適用が
合議制の機関)の答申に基づき一元的に実
認められているところです。
施する仕組みとされています。
みなし寄附金の額をどのような範囲で
このように新たな公益法人制度において
とらえるかについては、法人税法上の収
は、公益目的事業を適正に実施し得る法人
益事業及び収益事業以外の事業と公益法
を公益社団法人・公益財団法人として認定
人等の収益事業及び公益事業との範囲が
する仕組みとされ、公益目的事業の適正な
必ずしも一致せず、公益事業の範囲も各
実施を確保するための措置が明確にされて
法人制度によって異なることから、法人
います。公益社団法人・公益財団法人に対
税法上は便宜的に収益事業に属する資産
する課税については、このような公益法人
のうちから収益事業以外の事業のために
制度を前提として、公益目的事業に係る活
支出した金額をみなし寄附金の額として
動を促進する観点も踏まえ、旧民法第34条
いるところです。
法人に対して適用されている収益事業課税
この点、公益社団法人・公益財団法人
方式をベースとしつつ、以下の措置が講じ
については、公益法人認定法において、
られました。
公益目的事業の範囲が明確に示され、か
e 公益目的事業から生ずる所得に対して
つ、収益事業等により得た収益の50%相
は課税しないこととする(公益目的事業
当額以上を公益目的事業の実施に充てる
非課税)
。
ことが義務付けられていること、さらに、
公益法人認定法上は、公益目的事業に
上記eの公益目的事業非課税の措置によ
係る収入がその実施に要する適正な費用
って公益目的事業に係る資産には法人税
を償う額を超えてはならないとの収支相
法上の収益事業に属する資産が含まれな
償の基準が適用されます。このため、公
いことから、みなし寄附金制度本来の趣
益目的事業による収支差額が一時的には
旨に立ち返り、みなし寄附金の額の範囲
生ずる事業年度があるとしても、恒常的
については、公益目的事業のために支出
には生じ得ない収支構造であることが制
した金額に特定することとされたもので
度上確保されているといえます。そこで
す。
公益目的事業についてはあらかじめ収益
事業の範囲から除外するというものです。
f 公益社団法人・公益財団法人の寄附金
の損金算入限度額を拡大する。
[ 収益事業に属する資産のうちから、公
公益法人等は、法人税法上、収益事業
益目的事業のために支出した金額は、収
課税となることから、基本的には、収益
益事業に係る寄附金の額とみなして、損
事業に係る収益を獲得するための費用の
金算入限度額までの損金算入を認める
支出が損金算入されることになり、収益
(いわゆるみなし寄附金制度の適用)
。
事業の活動とは無関係な支出は収益事業
旧民法第34条法人を含む法人税法上の
の損金とはならないことが一般であると
公益法人等に対しては、前述のとおり、
考えられます。公益法人等に係る寄附金
一般的に収益事業から得られた利益の一
の損金算入限度額は、一般的に普通法人
部が主たる目的として行われる公益性が
よりも大きな損金算入限度額が適用され
認められる事業に充てられることに配慮
ますが、これは、一義的には収益事業か
─ 284 ─
―法人税法の改正―
ら当該公益法人等の公益性が認められる
そこで、このような制度上の義務付け
事業のために支出することで公益的な活
を前提として、みなし寄附金の額のうち
動を支援するという目的を有するみなし
公益目的事業の実施のために必要な金額
寄附金制度に配慮するためのものであり、
として算定された額(以下「公益法人特
公益法人等が第三者に対する公益的な寄
別限度額」といいます。)までの損金算
附の支出を収益事業から直接行うことを
入を認める、いわゆる実額ベースでの限
念頭におかれたものではないと考えられ
度額が設けられました。ただし、収益事
ます。旧民法第34条法人については、収
業等の収益の50%以上の公益目的事業へ
益事業から公益性が認められる事業への
の使用が義務付けられていること、他の
繰入れは、法令上強制されているもので
公益法人等の損金算入限度額とのバラン
はありませんし、また、他の公益法人等
スから、所得金額の50%相当額を限度と
の中には、法令上、収益事業から公益性
する概算ベースによる損金算入の規定の
が認められる事業への利益の繰入れに関
適用を認めつつ、実額ベースにより算出
する規定が措置されているものも存在し
された公益法人特別限度額が概算ベース
ますが、繰入れ後の使途に関する具体的
による損金算入限度額を上回る場合には、
な計画までは求められていないため、場
公益法人特別限度額までの損金算入を認
合によっては無制限に内部留保しておく
めることとされています。
ことも可能な仕組みとされています。こ
(注) 概算ベースによる損金算入限度額は、
うした点を勘案して、税制上は、みなし
実額ベースとの選択で適用することがで
寄附金の損金算入について所得の金額の
きますので、学校法人や社会福祉法人の
一定割合を限度とするいわゆる概算ベー
ような200万円の最低基準額は設けられ
スでの限度額が設けられています。
ていません。
これに対し、公益社団法人・公益財団
i 公益社団法人・公益財団法人を全て特
法人については、公益目的事業には収支
定公益増進法人とし、寄附金優遇措置の
相償の基準が適用されるため、公益目的
対象とする。
事業による収益だけではその実施のため
iの措置が講じられた趣旨については、
の資金が不足すると見込まれること、そ
「4 公益法人税制の見直し」の⑶寄附
の不足額については適正に算定すること
金の損金不算入(325ページ)の項を参
が求められていること、また、公益目的
照して下さい。
事業に繰り入れるべき収益事業等の収益
上記eからiまでの措置が講じられた一
の50%相当額の財産はもちろんのこと、
方で、各事業年度の所得に対する法人税の
それ以外であっても公益目的事業財産と
税率については、公益認定を受けていない
したものは公益目的事業のために使用し、
一般社団法人・一般財団法人と同様に、30
又は処分することとされていること、さ
%(年800万円以下の金額は22%)とされ
らには、遊休財産についての保有制限が
ました。
課せられ、事実上、一定期限までに使用
公益目的事業非課税やみなし寄附金制度
し、又は処分することが義務付けられる
が適用される結果、これらが適用された後
こととなることから、無制限に内部留保
の課税所得を構成するものは、公益目的事
しておくことはできないこととされてい
業に充てることが予定されていないものと
ます。
なることから、それに対して軽減税率を適
─ 285 ─
―法人税法の改正―
用する合理性はないと考えられるからです。
(参考)
公益法人認定法(抄)
第十四条 公益法人は、その公益目的事業を行
うに当たり、当該公益目的事業の実施に要す
(定義)
る適正な費用を償う額を超える収入を得ては
第二条 この法律において、次の各号に掲げる
用語の意義は、当該各号に定めるところによ
る。
ならない。
(公益目的事業比率)
第十五条 公益法人は、毎事業年度における公
一∼三 省略
益目的事業比率(第一号に掲げる額の同号か
四 公益目的事業 学術、技芸、慈善その他
ら第三号までに掲げる額の合計額に対する割
の公益に関する別表各号に掲げる種類の事
合をいう。
)が百分の五十以上となるように
業であって、不特定かつ多数の者の利益の
公益目的事業を行わなければならない。
増進に寄与するものをいう。
一 公益目的事業の実施に係る費用の額とし
(公益認定の基準)
て内閣府令で定めるところにより算定され
第五条 行政庁は、前条の認定(以下「公益認
る額
定」という。
)の申請をした一般社団法人又
二 収益事業等の実施に係る費用の額として
は一般財団法人が次に掲げる基準に適合する
内閣府令で定めるところにより算定される
と認めるときは、当該法人について公益認定
額
をするものとする。
三 当該公益法人の運営に必要な経常的経
一 公益目的事業を行うことを主たる目的と
するものであること。
費の額として内閣府令で定めるところによ
り算定される額
二 公益目的事業を行うのに必要な経理的基
(遊休財産額の保有の制限)
礎及び技術的能力を有するものであること。
第十六条 公益法人の毎事業年度の末日におけ
三 その事業を行うに当たり、社員、評議員、
る遊休財産額は、公益法人が当該事業年度に
理事、監事、使用人その他の政令で定める
行った公益目的事業と同一の内容及び規模の
当該法人の関係者に対し特別の利益を与え
公益目的事業を翌事業年度においても引き続
ないものであること。
き行うために必要な額として、当該事業年度
四・五 省略
における公益目的事業の実施に要した費用の
六 その行う公益目的事業について、当該公
額(その保有する資産の状況及び事業活動の
益目的事業に係る収入がその実施に要する
態様に応じ当該費用の額に準ずるものとして
適正な費用を償う額を超えないと見込まれ
内閣府令で定めるものの額を含む。
)を基礎
るものであること。
として内閣府令で定めるところにより算定し
七 省略
た額を超えてはならない。
八 その事業活動を行うに当たり、第十五条
2 前項に規定する「遊休財産額」とは、公益
に規定する公益目的事業比率が百分の五十
法人による財産の使用若しくは管理の状況又
以上となると見込まれるものであること。
は当該財産の性質にかんがみ、公益目的事業
九 その事業活動を行うに当たり、第十六条
又は公益目的事業を行うために必要な収益事
第二項に規定する遊休財産額が同条第一項
業等その他の業務若しくは活動のために現に
の制限を超えないと見込まれるものである
使用されておらず、かつ、引き続きこれらの
こと。
ために使用されることが見込まれない財産と
十∼十八 省略
して内閣府令で定めるものの価額の合計額を
(公益目的事業の収入)
いう。
─ 286 ─
―法人税法の改正―
第十八条 公益法人は、次に掲げる財産(以下
利を与える旨の定款の定めは効力を有しな
「公益目的事業財産」という。
)を公益目的事
いとされるなど一定の制約が課されていま
業を行うために使用し、又は処分しなければ
すが、残余財産の帰属先を社員総会等で決
ならない。ただし、内閣府令で定める正当な
定できるなど、営利法人と実質的に同等の
理由がある場合は、この限りでない。
活動を行うことも可能な仕組みであると考
一 公益認定を受けた日以後に寄附を受けた
えられます。
財産(寄附をした者が公益目的事業以外の
他方で、一般社団法人・一般財団法人は、
ために使用すべき旨を定めたものを除く。
)
事業を行って利益を稼得したり、その利益
二 公益認定を受けた日以後に交付を受けた
を構成員等に分配することを目的とせず、
補助金その他の財産(財産を交付した者が
営利企業と異なる特性を有する法人として
公益目的事業以外のために使用すべき旨を
活動する場合の法人格を取得する手段とし
定めたものを除く。
)
て利用されることが見込まれています。例
三 公益認定を受けた日以後に行った公益目
えば、ある一般社団法人が会員に共通する
利益の実現を目的として、会費収入を得て、
的事業に係る活動の対価として得た財産
四 公益認定を受けた日以後に行った収益事
その目的を達成するための活動資金として
業等から生じた収益に内閣府令で定める割
その収入を費消していくことも考えられま
合を乗じて得た額に相当する財産
すが、このような場合には、必ずしも営利
五 前各号に掲げる財産を支出することによ
企業と同様に法人税を課税する必要はない
と考えられます。
り取得した財産
六 第五条第十六号に規定する財産(前各号
このため、一般社団法人・一般財団法人
であっても、営利企業と異なる特性を有す
に掲げるものを除く。
)
七 公益認定を受けた日の前に取得した財産
る法人については、常に法人税の課税を行
であって同日以後に内閣府令で定める方法
うこととせず、利益を稼得すると認められ
により公益目的事業の用に供するものであ
る事業、すなわち営利企業と競合する収益
る旨を表示した財産
事業を行う場合のみ課税(収益事業課税方
八 前各号に掲げるもののほか、当該公益法
式を適用)することとされました。他方、
人が公益目的事業を行うことにより取得し、
それ以外の一般社団法人・一般財団法人に
又は公益目的事業を行うために保有してい
ついては、普通法人として全所得課税とさ
ると認められるものとして内閣府令で定め
れました。このように一般社団法人・一般
る財産
財団法人については、法人の実態や営利企
ロ 一般社団法人・一般財団法人
業との課税のバランス等に配慮した課税と
一般社団法人・一般財団法人は、準則主
されています。
義のもとで設立が可能とされています。ま
なお、一般社団法人・一般財団法人は、
た、一般社団法人・一般財団法人(公益社
法人制度としての公益性が担保されている
団法人・公益財団法人を除きます。以下単
わけではないので、法人が有する公益性に
に「一般社団法人・一般財団法人」といい
着目した措置である、軽減税率やみなし寄
ます。)は、その行う事業の範囲に制約が
附金は適用しないこととされました。
なく、公益性を担保する制度上の仕組み
ハ 旧民法第34条法人に係る経過措置
も有していません。さらに、社員又は設立
公益法人制度改革に伴い、旧民法第34条
者に剰余金又は残余財産の分配を受ける権
法人は新制度施行後原則として5年間の移
─ 287 ─
―法人税法の改正―
行期間中に一般社団法人・一般財団法人又
よる監督が行われるなど整備法においても
は公益社団法人・公益財団法人に移行する
実態の変更が予定されていないことから、
ことが見込まれています。
法人税制上も改正前の課税関係を維持する
この移行するまでの間は、旧主務官庁に
こととされました。
○公益法人制度改革に対応する税制上の措置の概要
公益目的事業:非課税
公益社団法人
公益財団法人
<公益法人等>
社団法人・財団法人
(民法 34 条法人)
<公益法人等>
全て寄附金
優遇の対象
である特定
公益増進法
人に該当
特例民法法人
<公益法人等>
収益事業課税
法人税率 22%
一部寄附金優遇あり
現行と同様の課税
(認可取消法人を除く)
非営利型法人<公益法人等>
一般社団法人
一般財団法人
有限責任中間法人
<普通法人>
無限責任中間法人
<普通法人>
上記以外の事業
:収益事業課税
法人税率
30%
※みなし寄附金のうち公益目
的事業の実施のために必要
な金額として算定された額 (年 800 万円
(公益法人特別限度額)を までは 22%)
損金算入
<公益法人等
又は普通法人>
特例無限責任中間法人
<普通法人>
・非営利性が徹底された法人
・共益的活動を目的とする法人
収益事業課税
法人税率
30%
寄附金優遇
なし
上記以外の法人<普通法人> (年 800 万円
までは 22%)
普通法人課税
(全所得課税)
〈 〉は、法人税法上の法人区分
から除外されました(法令5②一)。
⑶ 改正の内容
① 公益社団法人・公益財団法人に対する課税
イ 納税義務及び課税所得の範囲
ロ 法人税率
公益社団法人・公益財団法人の各事業年
e 公益社団法人・公益財団法人が法人税
法別表第二の「公益法人等」の範囲に追
加されました。これにより、収益事業を
行う場合に限り法人税の納税義務が生ず
る(法法4①)とともに、各事業年度の
度の所得に対する法人税の税率は、30%(年
800万円以下の金額は22%)とされました
(法法66①②)。
ハ みなし寄附金の範囲
公益社団法人・公益財団法人については、
所得のうち収益事業から生じた所得に対
収益事業に属する資産のうちから公益目的
して法人税が課されることになります
事業のために支出した金額を収益事業に係
(法法7)
。
る寄附金の額とみなして、損金算入限度額
[ 公益社団法人・公益財団法人が行う公
益目的事業については、収益事業の範囲
─ 288 ─
までの損金算入を認めることとされました
(法法37⑤、法令77の3)。
―法人税法の改正―
○みなし寄附金制度の概要
【公益社団法人・公益財団法人の場合】
収益事業に属する資産のうちからその公益目的事業のために支出した金額を寄附金の額とみなす。
収益事業以外の事業
収益事業
〔公益法人認定法〕
公益目的事業
寄附金
収益事業等
【旧民法第 34 条法人の場合】
収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業のために支出した金額を寄附金の額とみなす。
収益事業
収益事業以外の事業
寄附金
ニ 公益社団法人・公益財団法人の寄附金の
損金算入限度額
実施するために不足する金額を公益目的事
業の実施のために必要な金額として算出す
公益社団法人・公益財団法人が各事業年
ることとされています。公益法人特別限度
度において収益事業に属する資産のうちか
額の具体的な算出方法は、次のeの金額か
ら公益目的事業のために支出した金額(以
ら[の金額を控除することとされています
下「みなし寄附金額」といいます。
)があ
が(法規22の6①)、これは、「公益認定等
る場合において、その公益目的事業の実施
に関する運用について(公益認定等ガイド
のために必要な金額として算出した金額
ライン)」(平成20年4月11日 内閣府公益
(以下
「公益法人特別限度額」
といいます。
)
認定等委員会公表)における収支相償の判
が所得金額の50%相当額を超えるときは、
定方法の計算と基本的に同じです。
公益法人特別限度額に相当する金額を損金
e 次のⅰからⅳまでの金額の合計額
算入することができる特例制度が創設され
ⅰ 当該事業年度の公益目的事業に係る
ました(法令73の2①)
。ただし、公益法
経常費用の額から当該経常費用の額に
人特別限度額は、みなし寄附金額に相当す
含まれる公益目的保有財産の償却費の
る金額を限度とすることとされています。
額を控除した金額
本特例制度を適用する場合には、確定申
これは、当該事業年度の公益目的事
告書に公益法人特別限度額及びその計算に
業の実施に実際に要した費用の額を指
関する明細を記載することとされており
しますが、公益目的保有財産の減価償
(法令73の2②)
、本特例制度を適用しない
却費については、下記ⅳの公益目的保
場合の寄附金の損金算入限度額は、所得金
有財産の取得支出としてその取得価額
額の50%相当額とされています(法令73①
分が含まれているため、二重計上とな
三イ)
。
らないように調整しています。なお、
公益法人特別限度額は、公益目的事業の
ここでいう「経常費用」とは、「公益
実施に係る費用の額から収入の額を控除し
法人会計基準」(平成20年4月11日 て算出された金額、すなわち収益事業から
内閣府公益認定等委員会)の運用指針
資金等を繰り入れなければ公益目的事業を
において財務諸表の科目として示され
─ 289 ─
―法人税法の改正―
ている経常費用を指します。
当該事業年度の月数(特定費
用準備資金の積立期間の末日
の属する事業年度である場合
には、当該事業年度開始の日
(注) 公益目的保有財産については、下記
ⅳを参照して下さい。
ⅱ 公益目的事業に係る特定費用準備資
金の当該事業年度における積立額
特定費用準備資金とは、将来の特定
(⒜−⒝)×
の活動の実施のために特別に支出する
費用で事業費又は管理費として計上さ
から当該積立期間の末日まで
の期間の月数)
当該事業年度開始の日から特
定費用準備資金の積立期間の
末日までの期間の月数
れることとなるものをいい、引当金の
引当対象となるものは除かれます(公
益社団法人及び公益財団法人の認定等
⒜…当該事業年度終了時の特定費用準備
資金の積立限度額
に関する法律施行規則(平成19年内閣
⒝…特定費用準備資金のうち、当該事業
府令第68号。以下「公益法人認定法規
年度前の各事業年度において公益目
則」といいます。
)18①)が、
このうち、
的事業比率の計算上公益目的事業に
当該事業年度の公益目的事業比率の計
係る費用額に算入された金額の合計
算上公益目的事業に係る費用額に算入
額(公益目的事業に係る費用額から
される金額が対象となります。
「公益
控除された金額を除きます。
)
目的事業に係る費用額」とは、公益目
ⅲ 公益資産取得資金の当該事業年度に
的事業の実施に係る費用の額として算
おける積立額
定される額と当該法人の運営に必要な
公益資産取得資金とは、特定の財産
経常的経費の額として算定される額の
の取得又は改良に充てるために保有す
うち公益目的事業に係る分の合計額を
る資金(以下「資産取得資金」といい
いいます(公益法人認定法規則13)
。
ます。)のうち公益目的保有財産に係
ただし、公益目的事業に係る費用額
る部分をいいます(公益法人認定法規
に算入される金額が特定費用準備資金
則22③一・三)が、このうち、当該事
当期積立基準額を超える場合には当該
業年度において公益資産取得資金とし
基準額を限度とし、特定費用準備資金
て積み立てた金額が対象となります。
が2以上ある場合には、特定費用準備
ただし、当該金額が公益資産取得資
資金ごとの公益目的事業に係る費用額
金当期積立基準額を超える場合には当
に算入される金額の合計額となります。
該基準額を限度とし、資産取得資金が
「特定費用準備資金当期積立基準額」
2以上ある場合には、資産取得資金ご
とは、次の算式により算出した金額を
との積み立てた金額の合計額となりま
いいます(法規22の6②)
。
す。
「公益資産取得資金当期積立基準額」
とは、次の算式により算出した金額を
いいます(法規22の6③)。
─ 290 ─
―法人税法の改正―
当該事業年度の月数(資産取
得資金の積立期間の末日の属
する事業年度である場合には、
当該事業年度開始の日から当
(⒜−⒝)×
該積立期間の末日までの期間
の月数)
当該事業年度開始の日から資
産取得資金の積立期間の末日
までの期間の月数
ることにより取得した財産(公益法
人認定法規則26六)の取得価額
⒟ 公益認定を受けた日の前に取得し
た財産又は同日以後に公益目的保有
財産以外の財産を支出することによ
り取得した財産で、同日以後に財産
目録等において他の財産の勘定科目
と区分して公益目的事業の用に供す
るものである旨を表示した財産(公
⒜…当該事業年度終了時の資産取得資金
に係る最低額のうち、公益目的保有
財産に係る部分の額
益法人認定法18七、公益法人認定法
規則26七)のその表示した額
[ 次のⅰからⅳまでの金額の合計額に公
⒝…当該事業年度の前事業年度終了時に
益目的事業以外の事業(収益事業を除き
ます。)から公益目的事業に繰り入れた
おける公益資産取得資金の額
ⅳ 当該事業年度において公益目的保有
財産の取得のために支出した金額等
金額を加算した金額
ⅰ 当該事業年度の公益目的事業に係る
公益目的保有財産とは、公益法人認
定法規則第26条第6号及び第7号並び
に公益法人認定法第18条第5号から第
7号までに掲げる財産をいいます(公
益法人認定法規則26三)が、次の⒜か
ら⒟までの金額を合計した金額が対象
経常収益の額
ⅱ 公益目的事業に係る特定費用準備資
金の当該事業年度における取崩額
ⅲ 公益資産取得資金の当該事業年度に
おける取崩額
ⅳ 当該事業年度において公益目的保有
となります。
財産の処分により得た額及び公益目的
⒜ 公益認定を受けた日以後に寄附を
保有財産以外の財産とした公益目的保
受けた財産、交付を受けた補助金等
有財産であった財産の額の合計額
の財産、公益目的事業の対価として
なお、ここでいう「経常収益」とは、
得た財産等を支出することにより取
経常費用と同様、公益法人会計基準の運
得した財産(公益法人認定法18五)
用指針において財務諸表の科目として示
の取得価額
されている経常収益を指します。
⒝ 公益目的事業を行うために不可欠
な財産として、その旨並びにその維
② 一般社団法人・一般財団法人に対する課税
イ 納税義務及び課税所得の範囲
持及び処分の制限について必要な事
一般社団法人・一般財団法人は、収益事
項を定款で定めているもの(公益法
業課税を行うものと、全所得課税を行うも
人認定法18六)の取得価額
のとに区分されました。
⒞ 公益認定を受けた日以後に社員か
このため、収益事業課税を行う一般社団
ら徴収した経費のうち一定の額に相
法人・一般財団法人については非営利型法
当する財産、公益目的保有財産から
人と定義され(法法2九の二)、法人税法
生じた収益の額に相当する財産、公
別表第二の「公益法人等」の範囲に追加さ
益目的保有財産を処分することによ
れています。これにより、非営利型法人に
り得た額に相当する財産等を支出す
ついては、収益事業を行う場合に限り法人
─ 291 ─
―法人税法の改正―
税の納税義務が生ずる(法法4①)ととも
法人は非営利型法人に該当しないものと
に、収益事業から生じた所得に対して法人
されています。
税が課されることになります(法法7)
。
ⅰ その定款に剰余金の分配を行わない
また、非営利型法人に該当しない一般社
団法人・一般財団法人は、普通法人として
全所得課税が行われます。
旨の定めがあること。
一般社団・財団法では、社員又は設
立者に剰余金又は残余財産の分配を受
(注1) 非営利型法人に該当する一般社団法
ける権利を与える旨の定款の定めは効
人・一般財団法人は、法人税法別表第二
力を有しないものとされています(一
の「公益法人等」に含まれますが、みな
般社団・財団法11②)が、利益を稼得
し寄附金制度の適用対象から除外されて
することを予定しない法人の条件とし
います(法法37④⑤)
。
て、社員又は設立者以外の者に対して
(注2) 普通法人である一般財団法人の設立に
も剰余金等の分配を行わない旨があら
際して、設立者が拠出をする財産は寄附
かじめ定款で定められていることを前
金に該当するとともに、一般財団法人は
提としています。
その拠出を受けた財産の価額を益金の
額に算入することになります。
ⅱ その定款に解散したときはその残余
財産が国若しくは地方公共団体又は次
ロ 非営利型法人の類型
に掲げる法人に帰属する旨の定めがあ
非営利型法人として、以下の2つの類型
ること。
が設けられました。
・ 公益社団法人又は公益財団法人
e その行う事業により利益を得ること又
・ 公益法人認定法第5条第17号イか
はその得た利益を分配することを目的と
らトまでに掲げる法人(注)
しない法人であってその事業を運営する
上記ⅰと同様に利益を稼得すること
ための組織が適正であるもの(法法2九
を予定しない法人の条件として、その
の二イ)
活動中に生じた剰余金の処分に限らず、
この類型は、剰余金の分配を行わず、
解散時の残余財産の処分についても公
残余財産の帰属先が公益的な活動を行う
益的な活動を行う法人等に帰属するこ
法人等に限定され、さらに役員給与など
とが担保されていることを前提として
による実質的な利益分配が行われる恐れ
います。一般社団法人等の場合には社
も排除されているような法人については、
員総会等で残余財産の帰属先を決定で
必ずしも利益を稼得する活動を行うとは
きることから、あらかじめ定款におい
限らないと評価できることから、利益を
て法人の関係者に対して分配されない
稼得すると想定される活動、すなわち収
ことが明らかであるものとして公益社
益事業を行う場合に限り課税関係を生じ
団法人又は公益財団法人が清算をする
させることが適当であるとの観点に立っ
場合の残余財産の帰属先等と同様の帰
て設けられたものです。
属先とすることを求めているものです。
具体的には、次の要件のすべてに該当
する一般社団法人又は一般財団法人とさ
れています(法令3①、法規2の2①)
。
(注) 学校法人、社会福祉法人、独立
行政法人等が掲げられています。
ⅲ ⅰ及びⅱの定款の定めに反する行為
ただし、清算中にこれらの要件のすべて
(ⅰ、ⅱ及びⅳの要件のすべてに該当
に該当することとなったとしても、その
していた期間において、剰余金の分配
─ 292 ─
―法人税法の改正―
又は残余財産の分配若しくは引渡し以
とされています(法規2の2①)。
外の方法(合併による資産の移転を含
⒜ 理事の配偶者
みます。
)により特定の個人又は団体
⒝ 理事の三親等以内の親族
に特別の利益を与えることを含みま
⒞ 理事と婚姻の届出をしていないが
す。
)を行うことを決定し、又は行っ
事実上婚姻関係と同様の事情にある
たことがないこと。
者
ⅰ及びⅱに掲げる事項は、あらかじ
⒟ 理事の使用人
め定款に定めてさえおけば、これらの
⒠ ⒜から⒟までに掲げる者以外の者
要件に該当することとなるため、事後
で理事から受ける金銭その他の資産
的にも充足させるための要件として設
によって生計を維持しているもの
けているものです。したがって、これ
⒡ ⒞から⒠までに掲げる者と生計を
らの定款の定めに反する行為を行うこ
一にするこれらの者の配偶者又は三
とを決定した場合にeの類型に該当し
親等以内の親族
なくなるとともに、過去にeの類型の
なお、職制上使用人としての地位の
非営利型法人の適用を受けていたとき
みを有する者以外の者で当該一般社団
に定款違反行為をしていたことがある
法人又は一般財団法人の経営に従事し
場合には、eの類型に該当することは
ているものは、当該一般社団法人又は
ありません。また、カッコ書きは、実
一般財団法人の理事とみなして(みな
質的な剰余金や残余財産の分配等に該
し理事)、ⅳの要件を判定することと
当する行為も要件違反の対象となると
されています(法令3③)。
いう趣旨ですが、公益法人に対して当
[ その会員から受け入れる会費により当
該公益法人が行う公益を目的とする事
該会員に共通する利益を図るための事業
業のためにする寄附等は、一般的には
を行う法人であってその事業を運営する
ここでいう特定の団体に対する特別の
ための組織が適正であるもの(法法2九
利益供与には該当しません。
の二ロ)
ⅳ 各理事(清算人を含みます。以下同
この類型は、会員からの会費を原資と
じです。
)について、当該理事及び当
して、それが会員向けの共益的事業活動
該理事と特殊の関係のある者である理
に専ら費消され、会員がその潜在的受益
事の合計数の理事の総数のうちに占め
者になることが想定されるような法人を
る割合が、3分の1以下であること。
対象として設けられています。こうした
上記ⅰからⅲまでの要件のほかに、
法人の場合には、会費の収入時期と支出
実質的な面においても利益を稼得する
時期とのタイムラグにより一過性の余剰
ことを予定しない法人であることの要
が生じることは避けられないものの、こ
件として、事業を運営するための組織
のような余剰への課税は、活動実態に照
の適正性が維持されている必要がある
らして必ずしも合理的とはいえないとの
ことから、公益社団法人・公益財団法
考え方(税制調査会基礎問題小委員会・
人と同様に、理事に占める特殊関係者
非営利法人課税ワーキング・グループ「新
の割合が制限されています。
たな非営利法人に関する課税及び寄附金
ここでいう理事と特殊の関係のある
者とは、具体的には次の者をいうこと
─ 293 ─
税制についての基本的考え方」(平成17
年6月))を踏まえたものです。
―法人税法の改正―
したがって、上記eの法人と同様に収
事業で収益事業の範囲から除外されて
益事業を行う場合に限り課税関係を生じ
いるものに該当する事業を収益事業に
させることとされています。
含めないこととされています(法令3
具体的には、次の要件のすべてに該当
する一般社団法人又は一般財団法人とさ
④、法規2の2②)。
なお、本要件は、非営利型法人に該
れています(法令3②、法規2の2①)
。
当していなかった期間において主たる
ただし、清算中にこれらの要件のすべて
事業として収益事業を行っていなかっ
に該当することとなったとしても、その
たことまで求めているものではありま
法人は非営利型法人に該当しないものと
せん。
されています。
ⅳ その定款に特定の個人又は団体に剰
ⅰ その会員の相互の支援、交流、連絡
その他の当該会員に共通する利益を図
る活動を行うことをその主たる目的と
していること。
余金の分配を受ける権利を与える旨の
定めがないこと。
特定の者に対する権利付与を制限す
るものであり、会員に対して共通する
当然のことながら、共益的な活動を
行う法人であることが、法人の目的に
利益を受ける権利を与えることを制限
する趣旨ではありません。
おいても明らかにされている必要があ
ⅴ その定款に解散したときはその残余
るという趣旨です。なお、本要件は特
財産が特定の個人又は団体(国若しく
定の組織や団体に適用を制限するため
は地方公共団体、上記eのⅱに掲げる
のものではありませんので、会員の範
法人又はその目的と類似の目的を有す
囲や目的の内容は限定されていません。
る他の一般社団法人若しくは一般財団
ⅱ その定款(定款に基づく約款その他
これに準ずるものを含みます。
)に、
法人を除きます。)に帰属する旨の定
めがないこと。
その会員が会費として負担すべき金銭
ⅳと同様、特定の者に残余財産を帰
の額の定め又は当該金銭の額を社員総
属させることを制限するものであり、
会若しくは評議員会の決議により定め
会員間で負担に応じて残余財産を還付
る旨の定めがあること。
する場合などは要件違反には該当しま
共益的な活動を行う法人として、そ
せん。
の活動の原資となる会費について、共
ⅵ ⅰからⅴまで及びⅶに掲げる要件の
同で負担すべき額があらかじめ明らか
すべてに該当していた期間において、
にされていること又は法人内部の正式
特定の個人又は団体に剰余金の分配そ
な手続を経て定められていることを求
の他の方法(合併による資産の移転を
めているものです。
含みます。)により特別の利益を与え
ⅲ その主たる事業として収益事業を行
っていないこと。
ることを決定し、又は与えたことがな
いこと。
共益的な活動を主たる目的としてい
eの類型におけるⅲの要件と同様、
る法人として、営利法人と競合する事
実質的な剰余金の分配や残余財産の分
業を主たる事業として行っていないこ
配等に該当する行為も要件違反の対象
とを求めているものです。本要件の判
となります。過去に[の類型の非営利
定にあたっては、非営利型法人が行う
型法人の適用を受けていたときに本要
─ 294 ─
―法人税法の改正―
件に違反したことがある場合には、そ
り、新たな法人制度の施行の日(平成20年
の後はこの類型による非営利型法人に
12月1日)以後は、一般社団法人・一般財
該当することはありません。
団法人として存続するものとされています
ⅶ 各理事について、当該理事及び当該
が、原則として法律の施行から5年間(平
理事と特殊の関係のある者である理事
成25年11月30日まで)を移行期間とし、行
の合計数の理事の総数のうちに占める
政庁の認定を受けて公益社団法人・公益財
割合が、3分の1以下であること。
団法人へ移行する、又は行政庁の認可を受
上記ⅰからⅵまでの要件のほかに、
けて一般社団法人・一般財団法人へ移行す
法人の組織面においても基本的には共
る必要があり、移行手続きを講じないまま
益的な活動を行うための体制が維持さ
5年を経過すると解散したものとみなされ
れている必要があります。ただし、共
ます(整備法40①、44∼46)。
通する利益の内容には限定がないため、
旧民法第34条法人であって、新たな法人
それを実現するための体制を一義的に
制度への移行の登記をしていない法人(以
定めることは適当ではありません。そ
下「特例民法法人」といいます。)のその
のため、共益的な事業活動を行う法人
移行するまでの間は、名称、定款等も変更
であれば少なくとも私的な運営が行わ
の必要がなく、主務官庁による監督も継続
れやすい体制が排除され、適正な事業
することから、課税関係についても、先に
運営が期待される体制が維持されてい
述べたとおり、改正前の制度を維持するこ
るという趣旨で、公益社団法人・公益
ととされました(改正法附則10①③)。し
財団法人と同様に、理事に占める特殊
たがって、具体的には、収益事業を行う場
関係者の割合が制限されています。こ
合に限り法人税の納税義務が生ずるととも
こでいう理事と特殊の関係のある者と
に、収益事業から生じた所得について法人
は、上記eの類型のⅳの要件における
税が課されることになります。また、収益
理事と特殊の関係のある者と同様です
事業に属する資産のうちから収益事業以外
(法規2の2①)
。
の事業のために支出した金額は収益事業に
なお、上記eⅳの要件を判定する場
係る寄附金の額とみなして損金算入限度額
合と同様に、みなし理事に関する規定
(所得金額の20%相当額)までの損金算入
を適用してⅶの要件を判定することと
が認められ、各事業年度の所得に対する法
されています(法令3③)
。
人税の税率は22%の軽減税率が適用されま
ハ 法人税率
す。
非営利型法人に該当する一般社団法人・
(注) 上記のとおり、特例民法法人の移行期間
一般財団法人及び普通法人として扱われる
は原則として5年間とされていますが、移
一般社団法人・一般財団法人のいずれにつ
行期間満了の日の時点で移行の申請中であ
いても、各事業年度の所得に対する法人税
り、かつ、その申請に対する認定等の処分
の税率は、30%(年800万円以下の金額は
がされていない法人については、例外的に
22%)とされました(法法66①②)
。
その認定等が行われるまでの間は特例民法
③ 旧民法第34条法人、旧中間法人の新制度へ
法人として存続するほか、同日の時点で清
の移行に係る課税
算中の法人についてはその清算手続きが終
イ 旧民法第34条法人
了するまでの間は特例民法法人として存続
旧民法第34条法人は、整備法の規定によ
─ 295 ─
するため、これらの法人に対する課税関係
―法人税法の改正―
についても改正前の制度が維持されます。
法人から移行した法人については、施行日
なお、特例民法法人が一般社団法人・一
以後に有限責任中間法人の名称で活動して
般財団法人に移行した場合であっても、偽
いる法人(旧有限責任中間法人)について
りその他不正の手段によって認可を受けた
も、一般社団法人に対する課税の取扱いと
ときはその認可を取り消され、移行期間中
同様に、非営利型法人に該当するものは非
であれば特例民法法人とみなすこととされ
営利型法人として収益事業課税、それ以外
ています(整備法131①)
。このような法人
のものは普通法人として全所得課税を適用
(以下「認可取消社団・財団法人」といい
するとともに(改正法附則10②)、移行期
ます。
)については、一般社団法人・一般
間中である無限責任中間法人(特例無限責
財団法人への移行を選択し、かつ、自らの
任中間法人)については従前の中間法人に
不正行為によってその認可を取り消された
対する課税関係と同様に、普通法人として
法人であるため、他の特例民法法人と同様
の全所得課税を適用することとされました
に従前の課税関係を適用することは適当で
(改正法附則10③)。
はありません。このため、認可取消社団・
財団法人については、非営利型法人に該当
⑷ 適用関係
するものは収益事業課税、そうでないもの
① 上記⑶①イe、②イ及びロ並びに③の改正
は普通法人として全所得課税が行われます
は、平成20年12月1日から施行されます(改
(改正法附則10①②)
。
正法附則1五ロ、改正法令附則1三、改正法
ロ 旧中間法人
規附則1二)。
旧中間法人のうち有限責任中間法人につ
② 上記⑶①イ[の改正は、法人が平成20年12
いては、一般社団法人は有限責任中間法人
月1日以後に行う事業について適用し、法人
に相当する法人類型として設けられている
が同日前に行った事業については従前どおり
ため、新たな法人制度の施行の日(平成20
とされています(改正法令附則4①)。
年12月1日)以後は一般社団法人として存
③ 上記⑶①ロ及びニ並びに②ハの改正は、法
続するものとされ、同日の属する事業年度
人の平成20年12月1日以後に終了する事業年
の終了後最初に招集される定時社員総会の
度の所得に対する法人税について適用し、法
終結の時までは、従来の有限責任中間法人
人の同日前に終了した事業年度の所得に対す
の名称のまま活動を行うことができます
る法人税については従前どおりとされていま
(整備法2①、3①)
。一方、無限責任中間
す(改正法附則21、改正法令附則11①)。
法人についても新たな法人制度の施行の日
④ 上記⑶①ハの改正は、法人が平成20年12月
以後は一般社団法人として存続することと
1日以後に支出する金額について適用し、法
なりますが(整備法24①)
、同制度ではこ
人が同日前に支出した金額については従前ど
れに相当する法人類型がないことから、最
おりとされています(改正法附則15)。
大1年間の移行期間を設けたうえで、一般
社団法人への移行手続きを行うこととされ
ており、移行までは従前の規律を適用する
2 社会医療法人に対する税制上の措置
⑴ 社会医療法人制度創設の経緯及び概要
とともに、移行しない場合は解散したもの
と み な さ れ ま す( 整 備 法24①、25、30、
37)
。
① 制度創設の経緯
医療法では、営利を目的として病院等を開
設しようとする者に対しては開設の許可を与
こうした取扱いを踏まえ、有限責任中間
─ 296 ─
えないことができることとする医療提供主体
―法人税法の改正―
の非営利性が規定されていますが、医療法人
社会医療法人とは、医療法人のうち、救急
の多くが出資持分の定めがある法人となって
医療等確保事業に係る業務を行っていること
います。
等の一定の要件に該当するものとして都道府
こうした現状について、規制改革・民間開
県知事の認定を受けたものをいい、都道府県
放推進会議では株式会社による医療法人運営
知事は、認定に当たっては、あらかじめ都道
の容認など株式会社による医療分野への参入
府県医療審議会の意見を聴かなければならな
が議論されたところです(
「規制改革・民間
いとされています(医療法42の2①②)。
開放の推進に関する第1次答申」平成16年12
社会医療法人の認定の要件は、公益法人制
月24日)
。他方で、公益法人制度改革の議論
度改革によって創設された公益社団法人・公
が行われる中、厚生労働省では、
「医業経営
益財団法人の認定の基準等を参考としていま
の非営利性等に関する検討会」を立ち上げ、
すが、主な要件は次のとおりです(医療法42
医療法人制度の見直しに関する検討が行われ、
の 2 ①、 医 療 法 施 行 規 則30の35の 2、 平
同検討会における報告書
(平成17年7月22日)
20.3.26厚生労働告119)。
では、出資持分の定めを認めた従前の医療法
イ 役員等について、各役員及びその親族関
の運用を見直すとともに、公益性の高い医療
係者等の役員等の総数のうちに占める割合
を担う医療法人の類型を創設することが提言
が3分の1以下であること。
されました。
ロ 救急医療等確保事業(その開設する病院
この提言は、第5次医療法改正の一環とし
等の所在地の都道府県が作成する医療計画
て社会保障審議会の議論にも反映され、その
に記載されたものに限ります。)に係る業
検討の結果は、
「良質な医療を提供する体制
務を行っていること。
の確立を図るための医療法等の一部を改正す
ハ 救急医療等確保事業に係る業務について、
る法律」に盛り込まれ、同法は、平成18年の
病院等の構造設備、体制及び実績が厚生労
第164回通常国会において成立し、同年6月
働大臣の定める基準に適合していること。
21日に公布されています。
ニ 理事等の報酬等について、不当に高額な
同法では、高齢化の進行や医療技術の進歩、
ものとならないような支給の基準を定めて
国民の意識の変化など、医療を取り巻く環境
いるなど公的な運営に関する厚生労働省令
が大きく変わる中、誰もが安心して医療を受
で定める要件に適合するものであること。
けることができる環境を整備するための改革
ホ 定款等において解散時の残余財産を国、
が不可欠であるとの観点から、国民の医療に
地方公共団体等に帰属させる旨を定めてい
対する安心、信頼を確保し、質の高い医療サ
ること。
ービスが適切に提供される医療提供体制を確
救急医療等確保事業とは、具体的には、救
立するため、患者の視点に立った制度全般に
急医療、災害時における医療、へき地の医療、
わたる改革を行うこととしています。
周産期医療、小児医療(小児救急医療を含み
その改革の一つとして、地域における医療
ます。)及びこれらのほかに都道府県知事が
の重要な担い手である医療法人について、非
疾病の発生の状況等に照らして特に必要と認
営利性の強化などの規律の見直しを行うとと
める医療の確保に必要な事業をいいます(医
もに、救急医療、小児医療など地域で必要な
医療の提供を担う医療法人を新たに社会医療
法人として位置付けることとしています。
療法30の4②五)。
(注) 医療法では、厚生労働大臣は、良質かつ適
切な医療を効率的に提供する体制の確保(以
② 制度の概要
下「医療提供体制の確保」といいます。
)を
─ 297 ─
―法人税法の改正―
図るための基本方針を定め、都道府県は、基
ロ 当該業務を行うための体制
本方針に即して、かつ、地域の実情に応じて、
ハ 当該業務の実績
当該都道府県における医療提供体制の確保を
六 前各号に掲げるもののほか、公的な運
図るための計画(以下「医療計画」といいま
営に関する厚生労働省令で定める要件に
す。
)を定めることとされており、医療計画
適合するものであること。
においては、救急医療等確保事業に関する事
七 定款又は寄附行為において解散時の
項を定めることとされています(医療法30の
残余財産を国、地方公共団体又は他の社
3、30の4)
。
会医療法人に帰属させる旨を定めている
こと。
(参考)
○ 医療法(昭和23年法律第205号)
(抄)
2 都道府県知事は、前項の認定をするに当
第42条の2 医療法人のうち、次に掲げる要
件に該当するものとして、政令で定めると
ころにより都道府県知事の認定を受けたも
の(以下「社会医療法人」という。
)は、
たつては、あらかじめ、都道府県医療審議
会の意見を聴かなければならない。
3 省略
○ 医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50
その開設する病院、診療所又は介護老人保
号)
(抄)
健施設(指定管理者として管理する病院等
(社会医療法人の認定要件)
を含む。
)の業務に支障のない限り、定款
第30条の35の2 法第42条の2第1項第6号
又は寄附行為の定めるところにより、その
に規定する公的な運営に関する厚生労働省
収益を当該社会医療法人が開設する病院、
令で定める要件は、次の各号のいずれにも
診療所又は介護老人保健施設の経営に充
該当するものであることとする。
てることを目的として、厚生労働大臣が定
一 当該医療法人の運営について、次のい
める業務(以下「収益業務」という。
)を
ずれにも該当すること。
行うことができる。
イ∼ニ 省略
一 役員のうちには、各役員について、そ
ホ その理事、監事及び評議員に対する
の役員、その配偶者及び三親等以内の親
報酬等(報酬、賞与その他の職務遂行
族その他各役員と厚生労働省令で定める
の対価として受ける財産上の利益及び
特殊の関係がある者が役員の総数の三
退職手当をいう。以下同じ。
)について、
分の一を超えて含まれることがないこと。
民間事業者の役員の報酬等及び従業
二・三 省略
員の給与、当該医療法人の経理の状況
四 救急医療等確保事業(当該医療法人が
その他の事情を考慮して、不当に高額
開設する病院又は診療所の所在地の都道
なものとならないような支給の基準を
府県が作成する医療計画に記載されたも
定めているものであること。
のに限る。
)に係る業務を当該病院又は
ヘ その事業を行うに当たり、社員、評
診療所の所在地の都道府県において行つ
議員、理事、監事、使用人その他の当
ていること。
該医療法人の関係者に対し特別の利
五 前号の業務について、次に掲げる事項
益を与えないものであること。
に関し厚生労働大臣が定める基準に適合
ト 省略
していること。
チ 当該医療法人の毎会計年度の末日に
イ 当該業務を行う病院又は診療所の構
造設備
おける遊休財産額は、直近に終了した
会計年度の損益計算書に計上する事
─ 298 ─
―法人税法の改正―
業(法第42条各号に掲げる業務及び法
ロ 自費患者(社会保険診療に係る患者
第42条の2第1項に規定する収益業務
又は労働者災害補償保険法に係る患
に係るものを除く。
)に係る費用の額
者以外の患者をいう。以下同じ。
)に
を超えてはならないこと。
対し請求する金額が、社会保険診療報
リ 他の団体の意思決定に関与すること
酬と同一の基準により計算されること。
ができる株式その他の財産を保有して
ハ 医療診療(社会保険診療、労働者
いないものであること。ただし、当該
災害補償保険法に係る診療及び自費
財産の保有によつて他の団体の事業活
患者に係る診療をいう。
)により収入
動を実質的に支配するおそれがない場
する金額が、医師、看護師等の給与、
合は、この限りでない。
医療の提供に要する費用(投薬費を含
ヌ 当該医療法人につき法令に違反する
む。
)等患者のために直接必要な経費
事実、その帳簿書類に取引の全部若し
の額に100分の150を乗じて得た額の範
くは一部を隠ぺいし、又は仮装して記
囲内であること。
録若しくは記載をしている事実その他
2 省略
また、救急医療等確保事業については、そ
公益に反する事実がないこと。
の事業の特性から採算の確保が困難であり、
二 当該医療法人の事業について、次のい
ずれにも該当すること。
特に社会医療法人については一定の基準に適
イ 社会保険診療(租税特別措置法(昭
合する業務の実施が求められていることから、
和32年法律第26号)第26条第2項に規
財政基盤が脆弱となる場合への対応として、
定する社会保険診療をいう。以下同
医療法上は、その開設する病院等への経営に
じ。
)に係る収入金額(労働者災害補
充てることを目的とした一定の収益業務の実
償保険法(昭和22年法律第50号)に係
施のほか、救急医療等確保事業の実施に資す
る患者の診療報酬(当該診療報酬が
るための社会医療法人債の発行が認められて
社会保険診療報酬と同一の基準によつ
います(医療法42の2①、54の2①)。
ている場合又は当該診療報酬が少額
なお、都道府県知事は、社会医療法人が認
(全収入金額のおおむね100分の10以
定の要件を欠くに至ったとき、収益業務から
下の場合をいう。
)の場合に限る。
)を
生じた収益を病院等の経営に充てないときな
含む。
)
、健康増進法(平成14年法律第
ど一定の事由に該当する場合には、社会医療
103号)第6条各号に掲げる健康増進
法人の認定を取り消し、又は収益業務の停止
事業実施者が行う同法第4条に規定す
を命ずることができることとされています
(医療法64の2①)。
る健康増進事業(健康診査に係るもの
に限る。以下同じ。
)
に係る収入金額
(当
該収入金額が社会保険診療報酬と同
⑵ 税制上の措置の内容
一の基準により計算されている場合に
社会医療法人は、その組織や事業運営に関す
限る。
)及び助産(社会保険診療及び
る規律面や事業内容などにおいて、法人税法上
健康増進事業に係るものを除く。
)に
の公益法人等とされている他の法人と同様の性
係る収入金額(一の分娩に係る助産に
格を有していることから、公益法人等の範囲に
係る収入金額が50万円を超えるときは、
追加することとされました(法法別表第2)。
50万円を限度とする。
)の合計額が、
これによって収益事業を行う場合に限り法人税
全収入金額の100分の80を超えること。
の納税義務が生じ、収益事業から生じた所得に
─ 299 ─
―法人税法の改正―
ついて法人税が課されることとなります(法法
4①、7)
。また、各事業年度の所得に対する
法人税の税率は、22%の軽減税率を適用するこ
②)。
3 公益法人制度改革等に伴う税制の整備
ととされました(法法66③)
。
上記1で述べた公益法人制度改革に対応した新
さらに、救急医療等確保事業の特性や他の公
たな課税関係の下では、普通法人として全所得課
益法人等における税制上の措置とのバランスも
税を受ける一般社団法人・一般財団法人が法人と
勘案して、次のとおり、税制上の措置が講じら
しての同一性を保持したまま、収益事業課税を受
れました。
ける公益社団法人・公益財団法人や非営利型法人
① 社会医療法人が行う医療保健業が収益事業
に移行する場合があります。
の範囲から除外されました。ただし、医療法
一方で、これらの場合とは逆に、収益事業課税
第42条の規定に基づいて附帯業務として行う
を受けていた法人が全所得課税を受けるようにな
もの及び同法第42条の2第1項の規定に基づ
る場合もあります。
いて収益業務として行うもので医療保健業に
上記2で述べたとおり、医療法人についても、
該当するものは除外されません(法令5①
社会医療法人の認定を受けることによって、法人
二十九チ)
。
としての同一性を保持したまま、法人税法上の課
② 社会医療法人が寄附金を支出した場合の寄
税の取扱いが普通法人から公益法人等に変更とな
附金の損金算入限度額は、所得金額の50%相
る場合や、認定取消しによって公益法人等から普
当額(年200万円に満たない場合には、年200
通法人に変更となる場合が生ずることもあります。
万円)とされました(法令73①三ロ)
。
また、こうした課税所得の範囲の変更のほか、
なお、社会医療法人がその収益事業に属す
既存の公益法人等が新たに収益事業を開始した場
る資産のうちから収益事業以外の事業のため
合や収益事業を行っていない公益法人等が普通法
に支出した金額は、その収益事業に係る寄附
人又は協同組合等に該当することとなった場合な
金の額とみなして損金算入限度額の計算を行
ど新たに納税義務が生ずることとなる場合、既に
うこととなります(法法37⑤)
。
収益事業課税を受けている法人が非収益事業用資
上記の改正のほか、下記3⑷②において、医
産を収益事業用資産に転用した場合や課税所得の
療法人の資本金等の額及び利益積立金額に関す
範囲の異なる法人間の合併等が行われた場合など
る処理、設立に係る資産の受贈益等に関する取
にも同様の状況が生ずることとなります。
扱い等について所要の整備が行われています。
改正前の法人税に関する規定では、このような
課税所得の範囲の変更等が生じた場合の取扱いに
ついて、必ずしも明確にされていなかった部分も
⑶ 適用関係
① 上記⑵①の改正は、法人の平成20年4月1
あることから、今回の公益法人制度改革に併せて、
日以後に開始する事業年度の所得に対する法
規定の明確化などの所要の整備が行われました。
人税について適用し、法人の同日前に開始し
また、新たな法人制度に基づく法人はいずれも
た事業年度の所得に対する法人税については
資本又は出資を有しない法人ですが、資本又は出
従前どおりとされています
(改正法令附則2)
。 資の有無によって課税上の取扱いが異なる場合も
② 上記⑵②の改正は、法人の平成20年4月30
あることから、今回の公益法人制度改革に併せて、
日以後に終了する事業年度の所得に対する法
出資に関係する規定について所要の整備も行われ
人税について適用し、法人の同日前に終了し
ました。
た事業年度の所得に対する法人税については
従前どおりとされています(改正法令附則11
─ 300 ─
―法人税法の改正―
⑴ 普通法人等が公益法人等に移行する場合等の
普通法人が解散したものとみなして、次
法人税の取扱い
のⅰからⅴまでの規定を適用することと
① 特定普通法人が公益法人等に移行する場合
されました(法法10の3①、法令14の11
の課税関係
①)。また、次のⅵからⅻまでの制度に
イ 改正の趣旨及び内容
ついても、それぞれに述べるとおり、こ
課税所得の範囲に変更が生じ全所得課税
れらに準じて課税関係を清算する取扱い
から収益事業課税となる場合には、収益事
が設けられました。さらに、特定普通法
業課税がそもそも限定的な課税であること
人が、当該特定普通法人を被合併法人と
から、例えば、全所得課税であるときに適
し、公益法人等を合併法人とする適格合
用を受けていた課税の繰延べ等の措置につ
併を行った場合には、特定普通法人が公
いて、その前提となっていた将来的な課税
益法人等に移行する場合と同様の効果が
の機会が担保されなくなるといった状態に
生ずることになりますので、同様の趣旨
なります。このため、普通法人から公益法
から、適格合併に該当しない合併とみな
人等への移行に際しては、それ以前の課税
して、それぞれの規定を適用することと
関係をいわば清算し、リフレッシュスター
されました(法法10の3③、法令14の11
トする取扱いとされました。すなわち、そ
③)
の移行の日までの間についてはその前日を
(注) 有限責任中間法人が平成20年12月1
もって解散したものとみなし、当該移行の
日に非営利型法人に該当することとなる
日以後はその日に設立されたものみなして
場合には、その有限責任中間法人は特
所要の規定を適用することとされました。
定普通法人とみなすこととされています
また、解散に関する規定がないなど解散し
ので(改正法令附則7②)
、同日に特定
たものとみなして適用することができない
普通法人から公益法人等に該当するこ
制度については、個別に規定が整備されて
ととなったものとして同様の規定が適用
います。
されます。
ただし、課税関係を清算する扱いといっ
ても、時価評価による評価損益の計上を求
めるものではありません。
ⅰ 欠損金の繰戻しによる還付(法法80
④)
該当日の前日に解散したものとみな
また、本措置は、新たな法人に対する税
されることから、該当日の前日前1年
制上の措置の一環として手当てするもので
以内に終了した事業年度又は該当日の
すので、対象となる法人も新たな法人制度
前日の属する事業年度において生じた
に基づく法人を対象としています。
欠損金について、繰戻し還付の規定の
e 解散したものとして取り扱う制度
適用を受けることができます。なお、
普通法人として全所得課税を受けてい
欠損金の繰戻し還付の規定は、租税特
た一般社団法人・一般財団法人又は医療
別措置法においてその適用が停止され
法人
(以下
「特定普通法人」
といいます。
)
ていますが、解散の場合には適用され
が公益法人等(非営利型法人若しくは公
ることとなっています(措法66の13①)。
益社団法人・公益財団法人又は社会医療
法人)に該当することとなる場合には、
その該当することとなる日(以下「該当
日」といいます。
)の前日に、当該特定
─ 301 ─
ⅱ 連結欠損金の繰戻しによる還付(法
法81の31③)
上記ⅰと同様です。
ⅲ 国庫補助金等に係る特別勘定の金額
―法人税法の改正―
の取崩し(法令81)
特定普通法人が公益法人等に該当す
該当日の前日において、その有して
ることとなる場合には、該当日の前日
いる特別勘定の金額の全額を取り崩し、
の属する事業年度において延払基準の
その取崩しをした日の属する事業年度
方法により繰り延べられていた収益及
の益金の額に算入することになります。
び費用の額の全額を益金及び損金の額
ⅳ 保険差益等に係る特別勘定の金額の
取崩し(法令90)
に算入することとされました(法令
125③)。
上記ⅲと同様です。
ⅹ 一括償却資産の損金算入
ⅴ 連結納税を適用する場合の上記ⅲ又
特定普通法人が公益法人等に該当す
はⅳの規定(法法81の3①)
ることとなる場合には、該当日の前日
上記ⅲ又はⅳと同様です。
の属する事業年度において、その事業
ⅵ 貸倒引当金
年度終了の時における一括償却資産の
各事業年度において損金の額に算入
された貸倒引当金勘定の金額について
は、翌事業年度においてその全額を取
り崩して益金の額に算入すること(法
金額の残額を損金の額に算入すること
とされました(法令133の2⑤)。
ⅺ 資産に係る控除対象外消費税額等の
損金算入
法52⑨)を前提としていますが、特定
特定普通法人が公益法人等に該当す
普通法人が公益法人等に移行して収益
ることとなる場合には、該当日の前日
事業課税の適用を受けることとなった
の属する事業年度において、その事業
場合には、その前提が成り立たなくな
年度終了の時における繰延消費税額等
ることから、該当日の前日の属する事
の残額を損金の額に算入することとさ
業年度については、貸倒引当金勘定へ
れました(法令139の4⑩)。
の繰入れができないこととされました
ⅻ 退職給与引当金勘定の取崩し
(法法52⑪)
。
退職給与引当金制度については、平
ⅶ 返品調整引当金
成14年に廃止され、平成15年3月31日
貸倒引当金と同様、該当日の前日の
以後最初に終了する事業年度開始の時
属する事業年度については、返品調整
において退職給与引当金勘定の金額を
引当金勘定への繰入れができないこと
有する場合には、資本金1億円超の法
とされました(法法53⑨)
。
人以外の法人については、以後10年間
ⅷ 繰り延べたデリバティブ取引等の決
済損益額の計上時期等
で取り崩し、取り崩した日の属する事
業年度において益金の額に算入するこ
特定普通法人が公益法人等に該当す
ることとなる場合には、ヘッジ対象資
ととされています(平成14年改正法附
則8②)。
産等の決済等が行われていないときに
特定普通法人が公益法人等に該当す
おいても、繰り延べた決済損益額は、
ることとなる場合には、該当日の前日
その該当日の前日の属する事業年度の
の属する事業年度において、その有す
益金の額又は損金の額に算入すること
る退職給与引当金勘定の金額を全額取
とされました(法令121の5①)
。
り崩した上で、益金の額に算入するこ
ⅸ 長期割賦販売等に係る収益及び費用
の額
ととされました(平成14年改正法令附
則5⑭⑮)。なお、特定普通法人を被
─ 302 ─
―法人税法の改正―
合併法人とし、公益法人等を合併法人
株式等に係る負債の利子の額(法令
とする合併を行う場合についても退職
22)
給与引当金勘定の引継ぎを認めないこ
負債の利子の額の按分計算について、
ととし、同様の取扱いとするための所
該当日の属する事業年度以後の事業年
要の整備が行われています(平成14年
度のみ合算することになります。した
改正法令附則5⑪六)
。
がって、平成10年4月1日から平成12
年3月31日までの間に開始した各事業
[ 設立したものとして取り扱う制度
該当日に公益法人等が設立されたもの
とみなして、次の規定を適用することと
年度を基準とする簡便法は適用できま
せん。
されました(法法10の3②、法令14の11
ⅳ 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金
②)
。また、上記eの解散に関する規定
制度における貸倒引当金勘定への繰入
の適用の場合と同様に、特定普通法人が、
限度額(法令96②)
当該特定普通法人を被合併法人とし、公
貸倒実績率の計算について、該当日
益法人等を合併法人とする適格合併を行
の属する事業年度は当該事業年度の実
った場合には、適格合併に該当しない合
績により計算し、翌事業年度以後は該
併とみなしてそれぞれの規定を適用する
当日の属する事業年度以後の事業年度
こととされました(法法10の3③、法令
のみ合算することになります。
14の11③)
ⅴ 返品調整引当金制度における返品調
ⅰ 青色欠損金、災害損失金及び期限切
れ欠損金の繰越し(法法57①、58①、
59)
整引当金勘定への繰入限度額(法令
101②)
棚卸資産の返品率の計算について、
該当日の属する事業年度前の各事業
年度において生じた欠損金を該当日の
属する事業年度以後に繰り越すことは
できないこととなります。
該当日の属する事業年度以後の事業年
度のみで合算することになります。
ロ 適用関係
上記イの改正は、平成20年4月30日後に
ⅱ 欠損金の繰戻しによる還付(法法
80)
特定普通法人が公益法人等に該当すること
となる場合及び同日後に特定普通法人が行
該当日の属する事業年度において生
う合併について適用することとされていま
じた欠損金の繰戻しによる還付を受け
す(改正法附則13・16・17、改正法令附則
ることはできないこととなります。
7・15・17・19・24・27)。
ⅲ 受取配当の益金不算入制度における
─ 303 ─
―法人税法の改正―
○特定普通法人が公益法人等に移行する場合の課税関係
公益法人等
特定普通法人
全所得課税
該当日の前日
収益事業
非収益事業
課税
(非課税)
該当日
設立されたものとみなす
解散したものとみなす
○欠損金の繰戻しによる還付
解散の場合の特例の適用(法法 80 ④、81 の 31 ③)
○青色欠損金(法法 57 ①)
○災害損失金(法法 58 ①)
繰越し不可
○期限切れ欠損金(法法 59)
○圧縮特別勘定(法令 81 、90)
○欠損金の繰戻し還付(法法 80)
不可
② 連結納税の承認のみなし取消し
イ 改正の内容
上記①のほか、普通法人又は協同組合等が
次の事実が生じた場合には、次のそれぞ
公益法人等に移行する場合における法人税に
れの期間を事業年度とみなすこととされま
関する規定の整備が次のとおり行われていま
した(法法14十七・二十二)
す。
e 連結子法人の連結事業年度の中途にお
なお、これは、上記①における特定普通法
人に限らず、すべての普通法人又は協同組合
等を対象とするものです。下記③も同様の整
いて連結親法人が公益法人等に該当する
こととなった場合
連結事業年度開始の日からその該当す
備です。
ることとなった日の前日までの期間、そ
イ 改正の内容
の該当することとなった日からその連結
連結法人の連結納税の承認が取り消され
事業年度終了の日までの期間及びその終
たものとみなされる事実に、連結親法人が
了の日の翌日から当該翌日の属する事業
公益法人等に該当することとなったことが
年度終了の日までの期間(十七号)
追加されました(法法4の5②六)
。
[ 普通法人又は協同組合等が事業年度の
ロ 適用関係
中途において公益法人等に該当すること
上記イの改正は、平成20年4月30日以後
に生ずる上記イの事実について適用するこ
ととされています(改正法附則12)
。
となった場合
その事業年度開始の日から公益法人等
に該当することとなった日の前日までの
③ みなし事業年度
期間及びその該当することとなった日か
─ 304 ─
―法人税法の改正―
らその事業年度終了の日までの期間
(二十二号)
ロ 制度の概要
公益法人等に該当する一般社団法人・一
ロ 適用関係
般財団法人又は医療法人(以下「特定公益
上記イの改正は、平成20年4月30日以後
法人等」といいます。)である内国法人が
に上記イの事実が生ずる場合について適用
普通法人に該当することとなった場合には、
することとされています
(改正法附則14②)
。
その該当することとなった日(以下「移行
日」といいます。)前の収益事業以外の事
⑵ 公益法人等が普通法人等に移行する場合等の
業から生じた所得の金額の累積額として計
法人税の取扱い
算した金額(以下「累積所得金額」といい
① 特定公益法人等が普通法人に移行する場合
ます。)又は移行日前の収益事業以外の事
の所得の金額の計算
業から生じた欠損金額の累積額として計算
イ 制度創設の趣旨
した金額(以下「累積欠損金額」といいま
上記⑴①の場合とは逆に、課税所得の範
す。)に相当する金額は、移行日の属する
囲に変更が生じ収益事業課税から全所得課
事業年度の所得の金額の計算上、益金の額
税となる場合には、原則として公益目的以
又は損金の額に算入するというものです
外に特定の者に分配されないことを前提に
非課税とされてきた収益事業以外の事業か
(法法64の4①)。
また、特定公益法人等を被合併法人とし、
ら生じた所得の累積額について、構成員等
普通法人である内国法人を合併法人とする
に分配することも可能となります。そこで、
適格合併が行われた場合には、被合併法人
このような場合には、非課税とされていた
の適格合併前の収益事業以外の事業から生
前提が存在しなくなったことから、この時
じた所得の金額の累積額として計算した金
点で全所得課税が行われていたとしたなら
額(以下「合併前累積所得金額」といいま
ば、課税されていたであろう部分について、
す。)又は適格合併前の収益事業以外の事
課税所得を構成するものとされました。逆
業から生じた欠損金額の累積額として計算
に、全所得課税が行われていたとしたなら
した金額(以下「合併前累積欠損金額」と
ば欠損金額とされていた部分については課
いいます。)に相当する金額は、合併法人
税所得から控除することとされました。
の適格合併の日の属する事業年度の所得の
なお、上記⑴①の措置と同様、本措置の
対象となる法人は新たな法人制度に基づく
法人を対象としています。
─ 305 ─
金額の計算上、益金の額又は損金の額に算
入することとされています(法法64の4②)。
―法人税法の改正―
○特定公益法人等が普通法人に移行する場合の所得の金額の計算
〔普通法人に移行するケース〕
〔益金算入額の計算〕
移行前
移行後
公益社団・財団法人
普通法人
認定取消し
普通法人
一般社団・財団法人
(非営利型)
社会医療法人
認定取消し
医療法人(普通法人)
被合併法人
合併法人
公益社団・財団法人
普通法人
一般社団・財団法人
(非営利型)
普通法人
社会医療法人
負 債
利益積立金額
(課税済部分)
資 産
純
資
産
一定の公益目的
支出の額
純資産の
うち課税
されてい
ない部分
益金
算入
益金算入
医療法人(普通法人)
特例民法法人は、一般社団法人又は一般財団法人の一類型であるため、特例民法法人が普通法人である一般社
団法人又は一般財団法人に移行する場合にも適用される。
ハ 制度の内容
税される一般社団法人・一般財団法人に
吸収合併される場合の合併法人である一
e 適用対象者
公益社団法人・公益財団法人が公益認
定を取り消されて全所得課税される一般
般社団法人・一般財団法人に対しても適
用されます(法法64の4②)。
社団法人・一般財団法人となる場合の当
[ 累積所得金額又は累積欠損金額の計算
該一般社団法人・一般財団法人、非営利
ⅰ 普通法人に該当することとなった場
型法人が普通法人として全所得課税され
合
る一般社団法人・一般財団法人に該当す
累積所得金額は、移行日における資
ることとなる場合の当該一般社団法人・
産の帳簿価額が負債帳簿価額等(負債
一般財団法人及び社会医療法人がその認
の帳簿価額及び利益積立金額の合計額
定を取り消されて普通法人である医療法
をいいます。以下同じです。)を超え
人となる場合の当該医療法人(法法64の
る部分の金額とされ、累積欠損金額は、
4①)のほか、一般社団法人・一般財団
移行日における負債帳簿価額等が資産
法人の一類型である特例民法法人は、法
の帳簿価額を超える部分の金額とされ
人税法上は「公益法人等」とみなされて
ています(法令131の4①)。
収益事業課税が適用されますので、特例
民法法人が普通法人として全所得課税さ
ⅱ 普通法人を合併法人とする適格合併
が行われた場合
れる一般社団法人・一般財団法人に移行
合併前累積所得金額は、移転資産帳
する場合の当該一般社団法人・一般財団
簿価額(適格合併により被合併法人か
法人に対しても適用されます(改正法附
ら引継ぎを受けた資産の帳簿価額をい
則10①)
。
います。以下同じです。)が移転負債
また、公益社団法人・公益財団法人や
帳簿価額等(適格合併により被合併法
非営利型法人が普通法人として全所得課
人から引継ぎを受けた負債の帳簿価額
─ 306 ─
―法人税法の改正―
及び適格合併に係る被合併法人の適格
の損金計上を認める結果となるといった
合併の日の前日の属する事業年度終了
問題が生ずるからです。
時の利益積立金額の合計額をいいます。
ⅰ 公益法人認定法第29条第1項又は第
以下同じです。
)を超える部分の金額
2項の規定による公益認定の取消しに
とされ、合併前累積欠損金額は、適格
よって普通法人に該当することとなっ
合併に係る移転負債帳簿価額等が移転
た法人
資産帳簿価額を超える部分の金額とさ
れています(法令131の4②)
。
移行日における公益目的取得財産残
額(公益法人認定法第30条第2項に規
f 公益認定の取消しが行われた場合等の
調整
定する公益目的取得財産残額をいいま
す。以下同じです。)に相当する金額
本制度の適用対象者となる場合であっ
ⅱ 公益社団法人・公益財団法人を被合
ても、公益法人認定法又は整備法の規定
併法人とする適格合併に係る合併法人
により公益目的への支出が義務づけられ
被合併法人の適格合併の直前の公益
ている場合には、その支出される金額に
目的取得財産残額に相当する金額
ついては、使途が公益目的に限定されて
ⅲ 整備法第123条第1項に規定する移
いることから課税の調整の対象から除外
行法人(以下「移行法人」といいます。)
することとされています。具体的には、
次に掲げる金額のうちいずれか少な
累積所得金額又は合併前累積所得金額が
い金額
ある場合には、次のⅰからⅳまでに掲げ
⒜ 移行日における修正公益目的財産
る法人の区分に応じそれぞれの金額を累
積所得金額又は合併前累積所得金額から
控除し、控除しきれない金額については、
残額
⒝ 移行日における資産の帳簿価額か
ら負債帳簿価額等を控除した金額
それぞれ累積欠損金額又は合併前累積欠
(注1) 移行法人とは、具体的には旧民法
損金額とみなすこととされています。ま
第34条法人から一般社団法人・一
た、累積欠損金額又は合併前累積欠損金
般財団法人に移行した法人のうち、
額がある場合には、次のⅰ又はⅱに掲げ
整備法の規定による公益目的支出計
る法人の区分に応じそれぞれの金額を累
画を終了していないものをいい、当
積欠損金額又は合併前累積欠損金額に加
該法人を合併により吸収した合併法
算することとされています(法法64の4
人で整備法第126条第3項の規定に
③、法令131の5①∼③)
。ⅲ又はⅳの移
より移行法人とみなされるものを含
行法人については、累積欠損金額等が生
みます。
じている場合には、このfの調整措置の
(注2) 修正公益目的財産残額とは、公
規定の適用が認められていませんが、こ
益目的財産残額(整備法第119条第
れは公益社団法人・公益財団法人の公益
2項第2号に規定する公益目的財産
目的事業から生じた所得が全て非課税と
残額をいいます。
)及び公益目的収
されていることから公益目的取得財産残
支差額の収入超過額(整備法施行
額には課税済み利益が含まれていないと
規則第23条第2項に規定する公益目
考えられるのとは異なり、移行法人の公
的収支差額がゼロに満たない場合
益目的財産残額には課税済み利益が含ま
のその満たない部分の金額をいいま
れている場合があるため、課税済み利益
す。
)の合計額に、時価評価資産の
─ 307 ─
―法人税法の改正―
評価損の額を加算し、評価益の額を
の額を超える部分の金額(調整公益目的
控除した金額とされています(法規
財産残額に相当する金額を限度とします。
27の16の4①)
。すなわち、本制度
以下「支出超過額」といいます。)は、
では簿価ベースでの課税の調整を
本調整措置によって既に所得金額から控
行うことから、整備法上時価評価さ
除し、又は欠損金額に加算されています
れた資産の評価損益を修正するもの
ので、それぞれ損金の額に算入しないこ
です。
ととされています(法令131の5④⑤)。
ⅳ 移行法人を被合併法人とする適格合
併に係る合併法人
一方で、各事業年度において実施事業収
入の額が公益目的支出の額を超えるとき
次に掲げる金額のうちいずれか少な
(調整公益目的財産残額がある場合に限
い金額
ります。)は、その超える部分の金額(以
⒜ 被合併法人の適格合併の直前の修
下「収入超過額」といいます。)は益金
正公益目的財産残額
の額に算入しないこととされています
⒝ 移転資産帳簿価額から移転負債帳
簿価額等を控除した金額
(法令131の5⑥)。また、当該贈与によ
り生じた損失の額及びこれらの公益目的
このfの調整措置の規定の適用を受け
支出の額は、寄附金の損金算入限度額の
ようとする場合には、確定申告書にそれ
計算における寄附金の額に該当しないこ
ぞれの金額及びその計算に関する明細の
ととされています(法令131の5⑨)。
記載があり、かつ、ⅰ又はⅱの場合には
(注) 「実施事業収入の額」とは公益目的財
これらの金額を証する書類を、ⅲ又はⅳ
産残額の計算上公益目的支出の額から
の場合には移行日又は適格合併の直前に
控除される収入の額をいい(法令131の
おける公益目的財産残額及び公益目的収
5⑤)
、
「調整公益目的財産残額」とは上
支差額の収入超過額、移行日に有する時
記ⅲ又はⅳに掲げる金額からその適用を
価評価資産又は適格合併により引継ぎを
受ける事業年度前の各事業年度の支出
受けた時価評価資産の状況等を証する書
超過額の合計額を減算し、収入超過額
類を添付する必要があります(法法64の
の合計額を加算した金額をいいます(法
4④、法規27の16の4②)
。
令131の5⑦)
。
なお、このfの調整措置の規定の適用
ニ 適用関係
を受ける場合には、上記ⅰ又はⅱの法人
上記ハの改正は、平成20年4月30日以後
について公益目的取得財産残額相当額を
に特定公益法人等である法人が普通法人に
贈与契約により贈与をしたときの当該贈
該当することとなる場合及び同日以後に適
与により生じた損失の額、上記ⅲ又はⅳ
格合併が行われる場合について適用するこ
の法人について公益目的支出計画の実施
ととされています(改正法附則20)。
による公益目的支出の額が実施事業収入
─ 308 ─
―法人税法の改正―
○公益認定の取消しが行われた場合等の調整(法令 131 の5)
事由(1項)
一号
移行前
公
益
社
団
・
財
団
法
人
移行後
公益社団・
普通法人
財団法人 認定
取消し
二号
被合併法人
合併法人
公益社団・
財団法人 適格
合併
普通法人
三号
移行前
移行後
移行法人
普通法人
移
移行
行
法
四号
人
被合併法人
合併法人
移行法人
適格
合併
普通法人
移行時等
贈与時
移行時等
(4項)
(2項)
(3項)
累積所得金 累積欠損金 公益目的取得財産
額等がある 額等がある 残額相当額の贈与
場合
場合
に係る契約により
資産の贈与をした
とき
認定取消時 一定の金額
の公益目的 を累積欠損
取得財産残 金額等に加 贈与に係る寄附金
額を控除
算
の額は、損金不算
※
入
控除しきれ
ない金額は、
累積欠損金
額等とみな
す
移行時等
(2項)
累積所得金
額等がある
場合
移行時の修
正公益目的
財産残額
(A)を控除
※
控除しきれ
ない金額は
累積欠損金
額等とみな
す
支出時
支出時
(5項)
(6項)
公益目的支出の額
>実施事業収入の
額
公益目的支出の額
<実施事業収入の
額
公益目的支出の額
が実施事業収入の
額を超える部分の
金額(B)は、損
金不算入
実施事業収入の額
が公益目的支出の
額を超える部分の
金額(C)は、益
金不算入
(A)
−(B)
+
(C)
=調整公益目的財産残額
(7項)
上記①のほか、公益法人等が普通法人又は
の取扱いが必要となることから、このような
協同組合等に移行する場合、合併等の組織再
場合におけるそれぞれの取扱いについて次の
編成によって被合併法人である公益法人等の
とおり整備されました。
資産及び負債が移転された場合等における法
イ 改正の内容
人税に関する規定の調整が次のとおり行われ
e 事業年度
ています。
法令及び定款等に会計期間の定めがな
これらの規定については、上記①における
い法人については、一定期間内に会計期
特定公益法人等に限らず、すべての公益法人
間を定めてこれを納税地の所轄税務署長
等(一部、人格のない社団等を含みます。
)
に届け出なければならないこととされて
を対象とするものです。
いますが、この届出の期限について、収
② 新たに納税義務が生ずる場合の取扱い
益事業を行っていない公益法人等が普通
収益事業を行っていない公益法人等が普通
法人又は協同組合等に該当することとな
法人又は協同組合等に移行する場合には、新
った場合には、その該当することとなっ
たに納税義務が生ずることとなるので法人を
た日以後2か月以内とされました(法法
設立した場合や収益事業を開始した場合と同
様に各種の届出義務や提出期限について特別
─ 309 ─
13②一)。
[ 棚卸資産の評価方法の選定等
―法人税法の改正―
ⅰ 棚卸資産の評価方法の選定に関する
を納税地の所轄税務署長に提出したと
届出の期限について、収益事業を行っ
きは、その届出書をもって変更承認申
ていない公益法人等が普通法人又は協
請書とみなし、その届出書の提出をも
同組合等に該当することとなった場合
って変更の承認があったものとみなす
には、その該当することとなった日の
こととされました(法令30⑥)。
属する事業年度の確定申告書の提出期
限までとされました(法令29②三)
。
選定した評価方法を変更しようとす
る場合には、その変更後の評価方法を
ただし、事業の種類を同じくする棚
採用しようとする事業年度開始の日の
卸資産について当該事業年度前の事業
前日までに変更承認申請書を納税地の
年度において評価方法の選定に関する
所轄税務署長に提出し、その承認を受
届出を行っている場合又は法定の評価
けなければならないこととされていま
方法により評価すべきこととされてい
すが、上記ⅰで述べたとおり、過去に
る場合には届出は不要とされました
収益事業を行っていたことがある法人
(法令29②)
。
は既に有効に評価方法が選定されてい
このように届出が不要とされたのは、
ることから、改正前の規定では、その
以下の理由によるものです。すなわち、
事実のあった日の属する事業年度から
法人が確定申告をしていたときの評価
新たな評価方法を選定することが事実
方法の選定については、その後収益事
上できないこととなりますので、みな
業が廃止される等の事情によって納税
し変更承認の規定が設けられました。
義務が生じなくなったとしてもその効
なお、この場合には、税務署長の書
力は持続していると考えられます。ま
面による承認の通知は行われません
た、上述した「収益事業を行っていな
い」とは、直前において収益事業を行
(法令30⑥)。
f 減価償却資産の償却方法の選定等
っていないという意味ですので、過去
収益事業を行っていない公益法人等が
に収益事業を行っていて、一旦、収益
普通法人又は協同組合等に該当すること
事業を廃止し、その後に普通法人又は
となった場合における減価償却資産の償
協同組合等に該当することとなった場
却方法の選定に関する届出の期限及び選
合も含まれることになります。したが
定した償却方法を変更しようとする場合
って、このような場合には既に有効に
のみなし変更承認の規定について、上記
評価方法が選定されていますので届出
[の棚卸資産の評価方法の選定等の場合
を不要とするものです。
と同様の改正が行われました(法令51②、
ⅱ 選定した評価方法の変更について、
収益事業を行っていない公益法人等で
普通法人又は協同組合等に該当するこ
52⑥)。
i 青色申告の承認申請
承認申請書の提出期限の特例について、
ととなった法人が、普通法人又は協同
収益事業を行っていない公益法人等が普
組合等に該当することとなった日の属
通法人又は協同組合等に該当することと
する事業年度にその評価方法を変更し
なった場合のその該当することとなった
ようとする場合には、当該事業年度の
日の属する事業年度については、その該
確定申告書の提出期限までに、その変
当することとなった日以後3か月を経過
更しようとする旨等を記載した届出書
した日と当該事業年度終了の日とのうち
─ 310 ─
―法人税法の改正―
いずれか早い日を提出期限とすることと
\ 中間申告
されました(法法122②三)
。また、その
収益事業を行っていない公益法人等が
該当することとなった日から事業年度終
普通法人に該当することとなった場合の
了の日までの期間が3か月に満たない場
その該当することとなった日の属する事
合における当該事業年度の翌事業年度に
業年度及び被合併法人のすべてが収益事
ついては、その該当することとなった日
業を行っていない公益法人等である適格
以後3か月を経過した日と翌事業年度終
合併により設立された法人の設立後最初
了の日とのうちいずれか早い日を提出期
の事業年度については、中間申告書の提
限とすることとされました
(法法122②四)
。
出が不要とされました(法法71①)。
これらの事業年度については、前事業
_ 収益事業開始等の届出
収益事業を行っていない公益法人等が
年度の実績がないため、他の中間申告書
普通法人又は協同組合等に該当すること
の提出を不要とする場合と同様の取扱い
となった場合には、その該当することと
とするものです。
なった日以後2か月以内に、納税地その
s 貸倒引当金勘定への繰入限度額
他一定の事項を記載した届出書にその該
ⅰ 収益事業を行っていない公益法人等
当することとなった時における貸借対照
が普通法人又は協同組合等に該当する
表等の書類を添付し、納税地の所轄税務
こととなった場合のその該当すること
署長に提出しなければならないこととさ
となった日の属する事業年度及び適格
れました(法法150②)
。
合併に係る被合併法人のすべてが収益
普通法人及び協同組合等が設立された
事業を行っていない公益法人等である
場合には設立の届出書を、公益法人等及
場合のその適格合併により設立された
び人格のない社団等が新たに収益事業を
法人の設立の日の属する事業年度につ
開始した場合には収益事業開始の届出書
いては、当該事業年度の実績により貸
を、それぞれ提出することとされていま
倒実績率を算出することとされました
すが、これらの場合と同様に、納税義務
が生じた時点で届出書等の提出を求める
というものです。
(法令96②一イ・ハ)
ⅱ 収益事業を行っていない公益法人等
が普通法人又は協同組合等に該当する
この場合における届出書の記載事項及
こととなった日の属する事業年度前の
び添付書類は、次のとおりです(法法
各事業年度については、前三年内事業
150②、法規65②)
。
年度から除いて貸倒実績率を算出する
ⅰ 記載事項
ことが明確化されました(法令96②一)。
・ 法人の納税地
ロ 適用関係
・ 法人の事業の目的
e 上記イeの改正は、その該当すること
・ その該当することとなった日
となった日が平成20年4月30日以後であ
ⅱ 添付書類
る場合について適用することとされてい
・ その該当することとなった時にお
ける貸借対照表
ます(改正法附則14①)。
[ 上記イ[からiまで、\及びsの改正
・ 定款、寄附行為、規則若しくは規
は、法人の平成20年4月1日以後に開始
約又はこれらに準ずるものの写し
する事業年度の所得に対する法人税につ
・ 法人の登記事項証明書
いて適用し、法人の同日前に開始した事
─ 311 ─
―法人税法の改正―
業年度の所得に対する法人税については
価額を税務上の帳簿価額とするというも
従前どおりとされています(改正法附則
のです。
9、経過措置令16、改正法令附則2)
。
f 上記イ_の改正は、平成20年4月30日
[ 適格合併等における合併法人等の資産
及び負債の引継価額等
以後に公益法人等が普通法人又は協同組
合併法人が適格合併により被合併法人
合等に該当することとなる場合について
である公益法人等の収益事業以外の事業
適用することとされています(改正法附
に属する資産又は負債の引継ぎを受けた
則24)
。
ときは、当該資産又は負債の価額として
③ 資産及び負債の帳簿価額等に関する取扱い
合併法人の帳簿に記載された金額による
公益法人等が普通法人又は協同組合等に移
引継ぎを受けたものとすることとされま
行する場合には、収益事業以外の事業に属し
した(法令123の3④)。
ていた資産及び負債について、これまでの課
適格現物出資により現物出資法人であ
税対象外の資産及び負債としての取扱いから
る公益法人等又は人格のない社団等の収
課税対象の資産及び負債としての取扱いに変
益事業以外の事業に属する資産又は負債
更されますが、当該資産及び負債には会計上
が移転された場合も同様の改正が行われ
の帳簿価額しか付されていなかったため、税
ています(法令123の5)。
務上の帳簿価額として付されるべき金額が明
f 有価証券の取得価額
らかではありません。これは、公益法人等を
法人が、適格株式交換の直前における
被合併法人等とする適格合併等の適格組織再
株式交換完全子法人の株主の数が50人未
編成によってその公益法人等の収益事業以外
満である場合の当該適格株式交換により
の事業に属していた資産及び負債の移転を受
取得をした株式交換完全子法人の株式の
けた場合も同様です。
取得価額について、当該株主が公益法人
このため、これらの場合における税務上の
等又は人格のない社団等であり、かつ、
帳簿価額に関する規定が次のとおり明確化さ
その株式が収益事業以外の事業に属する
れました。
ものであった場合には、当該株式交換完
イ 改正の内容
全子法人の株式の価額として株式交換完
e 収益事業以外の事業に属していた資産
及び負債の帳簿価額
全親法人の帳簿に記載された金額に相当
する金額の合計額とされました(法令
公益法人等が普通法人又は協同組合等
に該当することとなった場合のその該当
することとなった時において有する収益
事業以外の事業に属していた資産及び負
119①九イ)。
適格株式移転の場合にも同様の改正が
行われています(法令119①十一イ)。
i 資本金等の額及び利益積立金額
債(以下「移行時資産等」といいます。
)
適格合併が行われた場合の増加する資
の帳簿価額は、その移行時資産等の価額
本金等の額の計算における移転資産及び
としてその該当することとなった時にお
移転負債の純資産価額については、被合
いて帳簿に記載されていた金額とするこ
併法人の適格合併の日の前日の属する事
ととされました(法令131の6)
。
業年度終了の時の移転資産の帳簿価額か
すなわち、移行により課税対象外の資
ら移転負債の帳簿価額及び被合併法人の
産及び負債が課税対象の資産及び負債と
利益積立金額の合計額を減算した金額と
なった場合には、移行時の会計上の帳簿
することとされています。
─ 312 ─
―法人税法の改正―
上記[の改正に伴い、移転資産又は移
金銭に係る債務者となった日として、益
転負債が被合併法人である公益法人等の
金の額又は損金の額に算入すべき金額の
収益事業以外の事業に属する資産又は負
計算を行うこととされました(法令136
債であった場合には、当該移転資産又は
の2⑤)。
移転負債の価額として合併法人の帳簿に
ⅰ 金銭債務に係る債務者である公益法
記載された金額を当該移転資産又は移転
人等が普通法人又は協同組合等に該当
負債の帳簿価額とすることとされました
することとなった場合の収益事業以外
(法令8①五イ・ロ)
。
の事業に属していた金銭債務
適格現物出資が行われた場合の増加す
ⅱ 適格合併、適格現物出資又は適格事
る資本金等の額の計算についても同様の
後設立により合併法人等が被合併法人
改正が行われています(法令8①八)
。
等である公益法人等又は人格のない社
団等の収益事業以外の事業に属してい
_ 棚卸資産の評価額の計算
上記[の改正に伴い、適格合併により
た金銭債務の償還等に係る義務の承継
合併法人が被合併法人である公益法人等
をした場合における当該金銭債務
の収益事業以外の事業に属する棚卸資産
a 有価証券の1単位当たりの帳簿価額の
の引継ぎを受けた場合には、当該棚卸資
算出方法
産の価額として合併法人の帳簿に記載さ
公益法人等が普通法人又は協同組合等
れた金額をその取得価額として評価額の
に該当することとなった時の直前におい
計算を行うこととされました
(法令28④)
。
て収益事業以外の事業に属する有価証券
\ 損金経理額とみなされる金額がある減
価償却資産又は繰延資産の範囲
を有していた場合における1単位当たり
の帳簿価額の算出方法に関する届出の期
上記[のとおり、合併法人等が適格合
限、収益事業を行っていない公益法人等
併等により移転を受けた被合併法人等で
で普通法人又は協同組合等に該当するこ
ある公益法人等又は人格のない社団等の
ととなった法人が1単位当たりの帳簿価
収益事業以外の事業に属していた減価償
額の算出方法を変更しようとする場合の
却資産については、受入時の会計上の帳
みなし変更承認の規定について、上記②
簿価額を税務上の帳簿価額とする整備が
イ[の棚卸資産の評価方法の選定等の場
行われていることから、損金経理額とみ
合と同様の改正が行われました(法令
なされる金額がある減価償却資産の範囲
から除外されました(法令61の4一)
。
119の5②、119の6⑥)。
l 外貨建資産等の期末換算方法
なお、適格合併等により被合併法人等か
公益法人等が普通法人又は協同組合等
ら引継ぎを受けた繰延資産の場合につい
に該当することとなった時の直前におい
ても同様の改正が行われています(法令
て収益事業以外の事業に属する外貨建資
66の2一)
。
産等を有していた場合における外貨建資
s 金銭債務に係る債務者の償還差益又は
償還差損の益金算入又は損金算入
産等の期末換算方法に関する届出の期限、
収益事業を行っていない公益法人等で普
次の金銭債務については、それぞれの
通法人又は協同組合等に該当することと
事実が生じた日におけるその金銭債務の
なった法人がその期末換算方法を変更し
帳簿価額をその金銭債務に係る収入金額
ようとする場合のみなし変更承認の規定
とし、それぞれの事実が生じた日をその
について、上記②イ[の棚卸資産の評価
─ 313 ─
―法人税法の改正―
方法の選定等の場合と同様の改正が行わ
ぞれの期間を事業年度とみなすこととさ
れました(法令122の5、122の6⑥)
。
れました(法法14十八・二十二)
なお、別途、期末換算方法の届出をし
ⅰ 連結親法人と公益法人等との間に当
なければならない場合についての明確化
該公益法人等による完全支配関係があ
が行われていますが、その詳細について
る場合において、連結法人の連結事業
は「六 その他」の「4 外貨建取引の
年度の中途において当該公益法人等が
換算」(351ページ)の項を参照して下さ
普通法人又は協同組合等に該当するこ
い。
ととなったとき
ロ 適用関係
その連結事業年度開始の日からその
e 上記イ[の改正は、平成20年4月30日
該当することとなった日の前日までの
以後に行われる適格合併又は適格現物出
期間、その該当することとなった日か
資について適用し、同日前に行われた適
らその連結事業年度終了の日までの期
格合併又は適格現物出資については従前
間及びその終了の日の翌日から当該翌
どおりとされています(改正法令附則16
日の属する事業年度終了の日までの期
②③)
。
間(十八号)
[ 上記イfの改正は、法人が平成20年4
ⅱ 公益法人等が事業年度の中途におい
月30日以後に行われる株式交換又は株式
て普通法人又は協同組合等に該当する
移転により取得をする有価証券について
こととなった場合
適用し、法人が同日前に行われた株式交
その事業年度開始の日からその該当
換又は株式移転により取得をした有価証
することとなった日の前日までの期間
券については従前どおりとされています
及びその該当することとなった日から
(改正法令附則13①)
。
その事業年度終了の日までの期間
f 上記イiの改正は、法人が平成20年4
(二十二号)
月30日以後に行う合併又は適格現物出資
なお、輸出・輸入組合、生活衛生同業
について適用することとされています
組合(同連合会)及び商工組合(同連合
(改正法令附則5①)
。
会)は、法人税法上、出資組合は協同組
i 上記イsの改正は、平成20年4月30日
合等、非出資の組合は公益法人等とされ、
以後に生ずる上記イsの事実について適
課税の取扱いが異なることから、それぞ
用することとされています(改正法令附
れの根拠法において非出資組合から出資
則21)
。
組合へ移行する場合のみなし事業年度に
_ 上記イa及びlの改正は、法人の平成
関する規定が設けられていましたが、上
20年4月1日以後に開始する事業年度の
記ⅱの改正に伴いこれらの規定が不要と
所得に対する法人税について適用し、法
なったことから削除されました(改正法
人の同日前に開始した事業年度の所得に
附則98、100、102)。
対する法人税については従前どおりとさ
れています(改正法令附則2)
。
[ 連結納税の承認のみなし取消し
連結法人の連結納税の承認が取り消さ
④ その他
れたものとみなされる事実に、連結親法
イ 改正の内容
人と公益法人等との間に当該公益法人等
による完全支配関係がある場合において、
e みなし事業年度
次の事実が生じた場合には、次のそれ
─ 314 ─
当該公益法人等が普通法人又は協同組合
―法人税法の改正―
等に該当することとなったことが追加さ
⑶ 収益事業の開始又は非収益事業用資産の転用
れました(法法4の5②七)
。
に伴う公益法人等の課税関係
f 清算中に公益法人等が普通法人等に移
行する場合の特例
公益法人等及び人格のない社団等が新たに収
益事業を開始する場合や、収益事業以外の事業
公益法人等が清算中に内国普通法人等
に属する資産及び負債として区分されていたも
に該当することとなった場合にも、内国
のが収益事業に属する資産及び負債として転用
普通法人等については清算所得課税が行
される場合があります。これらの場合には、法
われることとなりますが、この場合には、
人税法上の法人区分が変更されるわけではあり
収益事業課税から全所得課税に課税所得
ませんが、課税所得の範囲に変更が生じている
の変更があった時点から清算所得課税の
という点では上記⑴及び⑵と同様であり、次の
領域に入ってくるので、その該当するこ
とおり規定の明確化などの整備が行われました。
ととなった日の前日に解散があったもの
① 新たに収益事業を開始する場合の取扱い
とみなして、解散の場合の清算所得に対
する法人税の規定を適用することとされ
イ 改正の内容
e 棚卸資産の評価方法の選定等
ました(法法111)
。したがって、残余財
ⅰ 棚卸資産の評価方法の選定に関する
産の価額から控除される資本金等の額及
届出について、新たに収益事業を開始
び利益積立金額等は、その該当すること
した公益法人等及び人格のない社団等
となった日の前日における数値を用いる
で、事業の種類を同じくする棚卸資産
こととなります。
について当該事業年度前の事業年度に
ロ 適用関係
おいて評価方法の選定に関する届出を
e 上記イeの改正は、平成20年4月30日
行っている場合又は法定の評価方法に
以後に上記イeの事実が生ずる場合につ
より評価すべきこととされている場合
いて適用することとされています(改正
には届出は不要とされました(法令29
法附則14②)
。なお、輸出・輸入組合等が、
②)。
同日前にそれぞれの根拠法の規定により
上記⑵②イ[で述べたとおり、法人
移行が行われた場合の事業年度について
が確定申告をしていたときの評価方法
は従前どおりとされています(改正法附
の選定については、その後収益事業が
則99、101、103)
。
廃止される等の事情によって納税義務
[ 上記イ[の改正は、平成20年4月30日
がなくなったとしてもその効力は持続
以後に生ずる上記イ[の事実について適
していると考えられます。一方、過去
用することとされています(改正法附則
に収益事業を行っていた公益法人等が、
12)
。
一旦、収益事業を廃止し、その後に同
f 上記イfの改正は、法人の平成20年4
種の収益事業を開始した場合には、
「新
月1日以後の解散による清算所得に対す
たに」収益事業を開始したこととなり
る法人税について適用し、法人の同日前
ますが、このような場合には既に有効
の解散による清算所得に対する法人税に
に評価方法が選定されていることから
ついては従前どおりとされています(改
届出を不要とするものです。
正法附則9、経過措置令16)
。
ⅱ 選定した評価方法について、新たに
収益事業を開始した公益法人等及び人
格のない社団等が、新たに収益事業を
─ 315 ─
―法人税法の改正―
開始した日の属する事業年度にその評
されていますので、改正前の規定では、
価方法を変更しようとする場合には、
新たに収益事業を開始した日を含む事
当該事業年度の確定申告書の提出期限
業年度から新たな評価方法を選定する
までに、その変更しようとする旨等を
ことが事実上できないことから、みな
記載した届出書を納税地の所轄税務署
し変更承認の規定が設けられました。
長に提出したときは、その届出書をも
[ 減価償却資産の償却方法の選定等
って変更承認申請書とみなし、その届
新たに収益事業を開始した公益法人等
出書の提出をもって変更の承認があっ
及び人格のない社団等の減価償却資産の
たものとみなすこととされました。な
償却方法の選定に関する届出の期限及び
お、この場合には、税務署長の書面に
償却方法を変更しようとする場合のみな
よる承認の通知は行われません(法令
し変更承認の規定について、上記⑵②イ
30⑥)
。
[の棚卸資産の評価方法の選定等の場合
これも上記⑵②イ[で述べたとおり、
と同様の改正が行われました(法令51②、
過去に収益事業を行っていたことがあ
52⑥)。
る場合には既に有効に評価方法が選定
○ 棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の変更の手続き
収
益
事
業
開
始
収
益
事
業
評価方法Aを
廃
採用して確定申告 止 (納税義務なし)
収
益
事
業
開
始
X
Y(申告書の提出期限)
<納税義務>
<評価方法Aの届出の効力>
(変更手続きをしない場合)
○ 新たに収益事業を開始(納税義務が再び発生した場合)
評価方法Bを採用したい
→【改正前】Xの日の前日までに変更の申請書を提出し承認
が必要
→【改正後】Y の日までに書面で届出をすれば足りる
ⅱ 公益法人等の登記事項証明書
f 収益事業開始等の届出
内国法人である公益法人等又は人格の
ⅲ 公益法人等が合併により設立された
ない社団等が新たに収益事業を開始した
ものであり、かつ、その設立の時に収
場合における届出書の添付書類について、
益事業を開始したときは、当該合併に
次の書類が追加されました(法規65①
係る被合併法人の名称及び納税地(納
二・三・五)
。
税地とその本店又は主たる事務所の所
ⅰ 定款、寄附行為、規則若しくは規約
在地とが異なる場合には、その納税地
又はこれらに準ずるものの写し
及び本店又は主たる事務所の所在地)
─ 316 ─
―法人税法の改正―
を記載した書類
益積立金額は増加させないことが法人税
これらの見直しは、普通法人等が設立
申告書の記載要領において明らかにされ
をした場合の届出書の添付書類の範囲に
合わせたものです。
ています(法規別表五(一)記載要領3)
。
[ 有価証券の1単位当たりの帳簿価額の
算出方法
i 貸倒引当金勘定への繰入限度額
新たに収益事業を開始した日の属する
ⅰ 有価証券の1単位当たりの帳簿価額
事業年度前の各事業年度については、前
の算出方法に関する届出の期限につい
三年内事業年度から除いて貸倒実績率を
て、公益法人等又は人格のない社団等
算出することが明確化されました(法令
の収益事業以外の事業に属する有価証
96②一)
。
券が収益事業に属する有価証券となっ
ロ 適用関係
た場合には、その収益事業に属する有
e 上記イe、[及びiの改正は、法人の
価証券となった日の属する事業年度の
平成20年4月1日以後に開始する事業年
確定申告書の提出期限までとされまし
度の所得に対する法人税について適用し、
た(法令119の5②)。
法人の同日前に開始した事業年度の所得
ⅱ 新たに収益事業を開始した公益法人
に対する法人税については従前どおりと
等又は人格のない社団等が有価証券の
されています(改正法令附則2)
。
1単位当たりの帳簿価額の算出方法を
[ 上記イfの改正は、公益法人等又は人
変更しようとする場合のみなし変更承
格のない社団等が平成20年4月30日以後
認の規定について、上記⑵②イ[ⅱの
に新たに収益事業を開始する場合の届出
棚卸資産の評価方法の選定等の場合と
について適用することとされています
同様の改正が行われました(法令119
(改正法規附則8②)
。
の6⑥)。
② 資産及び負債の帳簿価額等に関する取扱い
イ 改正の内容
f 外貨建資産等の期末換算方法
ⅰ 外貨建資産等の期末換算方法に関す
e 収益事業以外の事業に属していた資産
及び負債の帳簿価額
る届出の期限について、公益法人等又
は人格のない社団等の収益事業以外の
公益法人等又は人格のない社団等の収
事業に属する外貨建資産等が収益事業
益事業以外の事業に属していた資産及び
に属する外貨建資産等となった場合に
負債が収益事業に属する資産及び負債と
は、その収益事業に属する外貨建資産
なった場合のその資産及び負債
(以下
「転
等となった日の属する事業年度の確定
用資産等」といいます。
)の帳簿価額は、
申告書の提出期限までとされました
その転用資産等の価額として収益事業に
関する帳簿に記載された金額とすること
とされました(法令131の6)
。
(法令122の5)。
ⅱ 新たに収益事業を開始した公益法人
等又は人格のない社団等が外貨建資産
上記⑵③イeの場合と同様、課税対象
等の期末換算方法を変更しようとする
外の資産及び負債を課税対象の資産及び
場合のみなし変更承認の規定について、
負債に転用した場合には、転用時の会計
上記⑵②イ[ⅱの棚卸資産の評価方法
上の帳簿価額を税務上の帳簿価額とする
の選定等の場合と同様の改正が行われ
というものです。
ました(法令122の6⑥)。
(注) 上記の場合には、資本金等の額及び利
─ 317 ─
i 金銭債務に係る債務者の償還差益又は
―法人税法の改正―
償還差損の益金算入又は損金算入
規定では、このような法人を含む合併が行われ
公益法人等又は人格のない社団等の収
益事業以外の事業に属する金銭債務が収
た場合の取扱い等について、必ずしも明確にさ
れていない部分もありました。
益事業に属する金銭債務となった場合に
新たな法人制度の下で一般社団法人・一般財
は、その事実が生じた日におけるその金
団法人や特例民法法人の合併法制が整備された
銭債務の帳簿価額をその金銭債務に係る
ことも踏まえ、法人税法上は、資本又は出資を
収入金額とし、その事実が生じた日をそ
有しない法人については資本金等の額を構成す
の金銭債務に係る債務者となった日とし
るものはないとの前提に立ち、次のとおり整備
て計算を行うこととされました(法令
が行われました。
136の2⑤)
。
① 合併に関する取扱い
ロ 適用関係
イ 改正の内容
e 上記イ[及びfの改正は、法人の平成
20年4月1日以後に開始する事業年度の
e 共同で事業を営むための適格合併の要
件
所得に対する法人税について適用し、法
適格合併のうち、被合併法人と合併法
人の同日前に開始した事業年度の所得に
人とが共同で事業を営むための合併につ
対する法人税については従前どおりとさ
いては、事業の関連性、事業規模の割合
れています(改正法令附則2)
。
又は特定の役員の引継ぎ、従業者の引継
[ 上記イiの改正は、平成20年4月30日
ぎ、主要な事業の継続及び株式の継続保
以後に生ずる上記イiの事実について適
有に関する要件に該当するものとされて
用することとされています(改正法令附
いますが、被合併法人のすべて又は合併
則21)
。
法人が資本又は出資を有しない法人であ
③ その他
る場合には、前述のとおり、合併に係る
イ 改正の内容
対価の交付を受ける株主が存在しない、
・ みなし事業年度
又は合併により交付をする株式がないこ
公益法人等又は人格のない社団等が事
とから、株式の継続保有に関する要件を
業年度の中途において新たに収益事業を
除外して適格合併の判定を行うこととさ
開始した場合には、その収益事業を開始
れました(法令4の2④)。
した日から同日の属する事業年度終了の
日までの期間を事業年度とみなすことと
されました(法法14二十一)
。
[ 合併による資産及び負債の移転
被合併法人が合併により合併法人にそ
の有する資産及び負債の移転をしたとき
ロ 適用関係
は、被合併法人は合併法人の新株等を合
上記イの改正は、平成20年4月30日以後
併時の時価により取得し、直ちにその新
に新たに収益事業を開始する場合について
株等を被合併法人の株主に交付したもの
適用することとされています(改正法附則
とすることとされていますが、被合併法
14②)
。
人が資本又は出資を有しない法人である
場合には、この取扱いを適用しないこと
とされました(法法62①)。
⑷ 非出資法人に対する法人税の取扱い
資本又は出資を有しない法人の場合には、当
また、適格合併の場合には、被合併法
然のことながら、株主が存在せず、発行する株
人は合併法人から当該合併法人の株式又
式等もありませんが、改正前の法人税に関する
は合併親法人株式を当該適格合併により
─ 318 ─
―法人税法の改正―
移転をした資産及び負債の帳簿価額を基
ける資本金等の額に相当する金額は、資
礎とする金額により取得し、直ちにその
本金等の額から減算し、利益積立金額に
株式又は合併親法人株式を被合併法人の
加算することとされました(法令8①
株主に交付したものとすることとされて
十五、9①五)。これは、資本又は出資
いますが、合併法人又は被合併法人が資
を有しない法人に移行したにもかかわら
本又は出資を有しない法人である場合に
ず、税法上は資本金等の額が残っている
は、この取扱いを適用しないこととされ
と観念することは適当でないからです。
ました(法法62の2②)
。
なお、連結資本金等の額及び連結利益
ロ 適用関係
積立金額の場合についても同様です(法
上記イeの改正は、法人が平成20年4月
30日以後に行う合併について適用し、法人
が同日前に行った合併については従前どお
令8の2、9の2①五)。
f 医療法人に対する取扱い
ⅰ 医療法人がその設立について贈与又
りとされています(改正法令附則3)
。
は遺贈を受けた金銭の額又は金銭以外
② 資本金等の額及び利益積立金額に関する取
の資産の価額については、益金の額に
扱い等
算入しないこととされました(法令
イ 改正の内容
136の4①)。また、持分の定めのある
医療法人が持分の定めのない医療法人
e 合併が行われた場合
ⅰ 被合併法人のすべて又は合併法人が
となる場合に、持分の全部又は一部の
資本又は出資を有しない法人である合
払戻しをしなかったときは、その払戻
併が行われた場合の合併法人の増加す
しをしなかったことにより生ずる利益
る資本金等の額は、ゼロとすることと
の額は、益金の額に算入しないことと
されました(法令8①五)
。
されました(法令136の4②)。
ⅱ 合併法人が資本又は出資を有しない
これらの場合における医療法人の受
法人である適格合併が行われた場合の
贈益等は、本来利益を構成するもので
当該合併法人の増加する利益積立金額
すが、税務上は資本等取引に該当する
は、適格合併により移転を受けた資産
ものとして、いずれも益金の額に算入
の適格合併の日の前日の属する事業年
されていませんでした。今回の改正に
度終了の時の帳簿価額から適格合併に
おいては、これまでの益金不算入とす
より移転を受けた負債の当該終了の時
る取扱いを明確化するための規定が新
の帳簿価額を減算した金額とすること
たに設けられるとともに
(法令136の4)
、
とされました(法令9①二)
。ただし、
これらの益金の額に算入されない金額
被合併法人が公益法人等である場合に
は、利益積立金額とされました(法令
は、改正前と同様、適格合併の日の前
9①一ヘ、9の2①一ト)。
日の属する事業年度終了の時の利益積
立金額とされています。
ⅱ 上記ⅰの取扱いが整備されたことか
ら、持分の定めのない医療法人が設立
[ 出資法人から非出資法人への移行が行
われた場合
時に贈与又は遺贈を受けた金銭の額又
は金銭以外の資産の価額については資
資本又は出資を有する法人が資本又は
出資を有しないこととなった場合には、
その有しないこととなった時の直前にお
─ 319 ─
本金等の額を構成しないこととされま
した(旧法令8①十四)。
ロ 適用関係
―法人税法の改正―
e 上記イeの改正は、法人が平成20年4
表す概念として「残余財産の引渡し」と
月30日以後に行う合併又は適格合併につ
いう用語を用いることとされました(法
いて適用することとされています(改正
法103①)。また、分配と同様に取り扱う
法令附則5①、6②)
。
ことに伴い、清算所得に対する法人税に
[ 上記イ[の改正は、法人が平成20年4
関する規定について所要の整備が行われ
月30日以後に資本又は出資を有しないこ
て い ま す( 法 法 2 三 十 六、102、104、
ととなる場合について適用することとさ
106、108、110、118、119、121②三、136、
れています。また、資本又は出資を有し
法規45∼47)。
ない法人で平成20年4月30日の前日に資
ロ 適用関係
本金等の額を有していたものは、平成20
上記イの改正は、法人の平成20年4月1
年4月30日に資本又は出資を有しないこ
日以後の解散による清算所得に対する法人
ととなったものとみなして新制度を適用
税について適用し、法人の同日前の解散に
することとされています(改正法令附則
よる清算所得に対する法人税については従
5②、6③)
。すなわち、税務上は同日
前どおりとされています(改正法附則9、
をもって残存する資本金等の額を利益積
経過措置令16)。
立金額に振り替えることになります。
なお、連結資本金等の額及び連結利益
4 公益法人税制の見直し
積立金額の場合についても同様です(改
正法令附則6⑧)
。
上記1及び3における公益法人制度改革に伴う
法人関係税制の見直しのほか、次のとおり、公益
f 上記イfⅰの改正は、医療法人が平成
法人税制の見直しが行われました。
20年4月30日以後に設立される場合又は
同日以後に持分の定めのある法人から持
⑴ 公益法人等の範囲(別表第2)
分の定めのない法人となる場合について
適用することとされています(改正法令
附則22)
。
① 改正の内容
イ 公益法人等の範囲に、非営利型法人に該
当する一般財団法人及び一般社団法人並び
③ その他
に公益財団法人及び公益社団法人が追加さ
イ 改正の内容
れました(法法別表第2)。
・ 残余財産の一部分配に係る予納申告等
普通法人として全所得課税される一般
(注1)
これらの法人に対する課税については、
上記1⑶①の「公益社団法人・公益財団
社団法人・一般財団法人については、清
法人に対する課税」
、上記1⑶②の「一
算所得課税が行われることになりますが、
般社団法人・一般財団法人に対する課税」
一般社団法人・一般財団法人については
の項を参照して下さい。
持分を有している者が存在せず、出資額
(注2)
上記の法人のほか、社会医療法人が公
に応じた残余財産の分与を表す概念であ
益法人等の範囲に追加されていますが、
る「残余財産の分配」をそのまま用いる
詳細については、上記2の「社会医療法
ことは適当ではありません。このため、
人に対する税制上の措置」の項を参照し
普通法人である資本又は出資を有しない
て下さい。
法人に対しても清算所得課税が行われる
ことを明確化する観点から、定款に定め
られた帰属先等に財産を処分することを
─ 320 ─
ロ 次の法人に関する規定が削除されました
(旧法法別表第2一)。
e 法人である国家公務員の団体及び地方
―法人税法の改正―
公務員の団体
えて範囲を見直すべきであるとの指摘がなさ
これらの法人については、法人格を付
れてきたところであり、今般の公益法人制度
与する根拠法が国家公務員法及び地方公
改革に伴う所要の整備と併せて、次のとおり
務員法とされてきましたが、公益法人制
見直しが行われました。
度改革に併せて、整備法において、根拠
なお、これらの見直しは、新たな法人制度
法が「職員団体等に対する法人格の付与
に基づく一般社団法人・一般財団法人等に限
に関する法律」とされ、同法の職員団体
られないものであって、対象法人が特定され
等に含まれることとされたことから、所
ている場合を除き、収益事業課税の適用を受
要の整備を行うものです。法人税法上の
ける全ての法人に対して適用されます。
取扱いは、改正前と同じです。
イ 労働者派遣業の追加
対価を得て労働者を供給する事業につい
[ 財団法人及び社団法人
公益法人制度改革に併せて、法人税法
ては、職業安定法(昭和22年法律第141号)
上もこれらに関する規定を削除する所要
において原則として禁止されていますが、
の整備が行われていますが、前述のとお
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派
り、新たな法人制度に移行するまでの間
遣労働者の就業条件の整備等に関する法律
は、従前の課税関係を維持することとす
(昭和60年法律第88号。以下「労働者派遣法」
る経過措置が講じられています(改正法
といいます。)において一定の制限の下、
附則10①③)
。
労働者派遣事業について行うことができる
② 適用関係
こととされ、多くの営利企業が参入してい
上記①の改正は、平成20年12月1日から施
ます。公益法人等においても同様に労働者
行することとされています(改正法附則1五
派遣事業を行っている実態が見受けられる
ロ)
。
こと、経済活動として類似する一面を有し
ていると考えられる請負業や周旋業が収益
⑵ 収益事業の範囲の見直し
事業の対象とされていることとのバランス
① 改正前の制度の概要
から、労働者派遣業が収益事業の範囲に追
公益法人等及び人格のない社団等について
加されました(法令5①三十四)。
は、各事業年度の所得のうち収益事業から生
ここでいう労働者派遣業とは、自己の雇
じたもののみが課税の対象とされています
用する者その他の者を、他の者の指揮命令
(法法7)
。
を受けて、当該他の者のために当該他の者
この収益事業とは、販売業、製造業その他
の一定の事業で、継続して事業場を設けて営
が行う事業に従事させる事業をいうことと
されています。
まれるものをいい(法法2十三)
、
具体的には、
派遣等の事業を行う者の範囲については
33業種が定められています
(法令5)
。ただし、
労働者派遣法による届出等の有無によらず、
法令等において営利企業の参入が予定されて
また、派遣等の対象者や派遣先等において
いない、利益が生じないと見込まれるなど、
従事する事業の内容についても範囲は限定
営利法人と競合関係にないと認められる事業
されていませんので、同法の労働者派遣事
は、除外されています。
業に限らず労働者を供給する事業も対象と
② 改正の趣旨及び内容
なります。
収益事業の範囲については、これまでにも
なお、労働者派遣業が追加されたことに
公益法人等が行っている事業の実態等を踏ま
より、収益事業の範囲は34業種になりまし
─ 321 ─
―法人税法の改正―
た。
除外措置の具体的な内容は次のとおりで
ロ 金銭貸付業の除外措置の廃止
す(法令5①三十ホ)。
独立行政法人中小企業基盤整備機構が旧
ⅰ 試験事業及び登録事業の範囲
地域振興整備公団法の規定に基づき行う金
ここでいう試験事業とは、法令にお
銭貸付業については、収益事業の範囲から
いて、国家資格を取得し、若しくは維
除外されていましたが、所要の経過措置を
持し、又は当該国家資格に係る業務若
講じた上で除外措置が廃止されました(旧
しくは行為を行うことについて、試験、
法令5①三ハ)
。
検定その他これらに類するもの(以下
ハ 技芸教授業の範囲の見直し
「試験等」といいます。)を受けること
e 外洋小型船舶の操縦の教習に係る除外
措置の廃止
が要件とされている場合における当該
試験等の実施に関する事務をいいます。
外洋小型船舶の操縦の教習として行う
この場合の国家資格とは、資格のう
技芸の教授は収益事業の範囲から除外さ
ち、法令において当該資格を有しない
れてきましたが、本教習事業を行う者に
者は当該資格に係る業務若しくは行為
ついては指定制度から登録制度に改めら
を行い、若しくは当該資格に係る名称
れており、既に営利企業も参入している
を使用することができないこととされ
実態も見受けられることから、除外措置
ているもの又は法令において一定の場
が廃止され、収益事業の対象とされまし
合には当該資格を有する者を使用し、
た(旧法令5①三十ホ)
。
若しくは当該資格を有する者に当該資
[ 国家資格付与事務に係る除外措置の追
加
格に係る行為を依頼することが義務付
けられているものをいいます。
技芸教授業の範囲には、技芸に関する
また、登録事業とは、法令において
免許の付与その他これに類する行為も含
国家資格を取得し、若しくは維持し、
まれていますが、いわゆる国家資格を付
又は当該国家資格に係る業務若しくは
与する試験事業、登録事業等については、
行為を行うことについて、登録、免許
課税対象の事業と非課税の事業とが存在
証の交付その他の手続(以下「登録等」
している実態にあり、国家資格間での課
といいます。)を経ることが要件とさ
税のバランスがとれていないのではない
れている場合における当該登録等に関
かといった指摘もされています。こうし
する事務をいいます。
た指摘も踏まえ、国家資格の付与に関す
この技芸に関する試験事業と登録事
る試験事業、登録事業等の実態を把握し、
業とを合わせて、
「国家資格付与事務」
その状況を検証した上で、一定の要件を
と称します。
満たす事業について収益事業の範囲から
除外することとされました。
なお、技芸の範囲は、現行の技芸教
授業において限定列挙されている技芸
なお、除外措置を講じるにあたっては、
法令においてその実施主体が限定され営
の範囲と変わりません。
ⅱ 対象法人
利企業の参入が予定されないものや事業
国家資格付与事務を行う者として、
の対価の額が制限され利益が生じないと
法令において定められている法人又は
見込まれるものなど、現行の除外措置と
法令に基づき指定された法人が対象と
のバランスを図ることとされています。
されています。
─ 322 ─
―法人税法の改正―
ⅲ 事業等の要件
ⅰ 児童福祉施設の児童の給食用の輸入
上記ⅱの法人が法令に基づいて国家
脱脂粉乳の販売業(法令5①一イ)
資格付与事務として行う技芸の教授で、
ⅱ 地方公共団体が全額又は2分の1以
国の行政機関の長又は地方公共団体の
上の拠出等をしている法人で、その業
長が当該国家資格付与事務に関して監
務が地方公共団体の管理の下に運営さ
督上必要な命令をすることができるも
れている法人が行う不動産販売業、一
のであるほか、次のいずれかの要件に
定の物品貸付業、不動産貸付業及び一
該当するものであることとされていま
定の請負業(法令5①二イ、四ロ、五
す。
イ、十ハ)
・ その対価の額が法令で実費を勘案
(注)
新たな法人制度では出資に関する概
して定めることとされているもので
念が存在しなくなったことに伴い、所
あること又はその対価の額が当該国
要の整備が行われています。
家資格付与事務の処理のために必要
ⅲ 政府又は独立行政法人年金・健康保
な費用の額を超えないと見込まれる
険福祉施設整理機構の委託を受けて行
ものであること。
う福祉施設等の運営に係る医療保健業
・ 国の行政機関の長又は地方公共団
体の長以外の者で当該国家資格付与
事務を行う者が、公益法人等又は一
般社団法人若しくは一般財団法人に
限られていることが法令で定められ
ているものであること。
(法令5①二十九リ)
ⅳ 結核の健康診断及び予防接種に係る
医療保健業(法令5①二十九ヌ)
ⅴ ハンセン病患者の医療に係る医療保
健業(法令5①二十九ル)
ⅵ 訪問看護の研修に付随して行う医療
ニ 公益法人制度改革に伴う所要の整備
保健業(法令5①二十九ヨ)
収益事業の除外措置の中には、対象とな
なお、公益社団法人・公益財団法人に
る法人が旧民法第34条法人又は旧民法第34
ついては、別途、公益目的事業に該当す
条法人を含む一定の法人に限定されている
る事業の除外措置が講じられていますが、
ものがありますが、今般の公益法人制度改
現行の除外措置に該当する事業のすべて
革に伴い旧民法第34条法人制度が廃止され
が公益目的事業に該当するかどうかは明
ることに対応し、次のとおり所要の整備が
らかではないことから、公益目的事業に
行われました。
該当しないとしてもこれまでと同様の要
e 対象法人が旧民法第34条法人から公益
件で、一般社団法人・一般財団法人と同
社団法人・公益財団法人又は一般社団法
様に除外措置が講じられています。以下
人・一般財団法人に改められたもの
[及びfにおいても同様です。
これは、新たな法人制度の下で一般社
[ 要件の一部が見直された上で、対象法
団法人・一般財団法人へ移行した場合で
人が旧民法第34条法人から公益社団法
あっても、法令等において現行と同様の
人・公益財団法人又は一般社団法人・一
事業内容が維持されることが確保されて
般財団法人に改められたもの
いることから、移行先の法人を限定しな
いこととされたものです。
上記eと同様の趣旨ですが、一般社団
法人・一般財団法人の場合には事業に制
具体的には、以下の除外措置が該当し
ます。
限がなく、主務官庁による監督を前提と
した事業の実施が確保されないおそれも
─ 323 ─
―法人税法の改正―
あることから、これまでと同様の事業内
例民法法人である当該医師会法人につ
容が維持されることを明らかにするため
いては公益社団法人とみなす所要の整
旧民法第34条法人では前提とされていた
備が行われています(改正法規附則10、
事業内容等を要件として具体化したもの
11)。
です。
ⅲ 公益法人等が行ういわゆる福祉病院
具体的には、以下の除外措置が該当し
ます。
事 業 に 係 る 医 療 保 健 業( 法 令 5 ①
二十九タ)
ⅰ 専ら学術の研究を行うものがその学
本除外措置については、特殊関係者
術の研究に付随して行う医療保健業
の役員に占める割合が3分の1以下
(法令5①二十九ヲ)
(改正前:2分の1未満)であること
一般社団法人又は一般財団法人の場
とされたほか、一般社団法人又は一般
合には、専ら学術の研究を行い、かつ、
財団法人については、その行う事業が
当該研究を円滑に行うための体制が整
公的に運営されているものとして厚生
備されているものとして文部科学大臣
労働大臣の定める基準に該当すること
が定める基準に該当することについて
について証明を受けていることが必要
証明を受けていることが要件とされま
とされました(法規6二・七)。
した(法令5①二十九ヲ、
法規4の5)
。
厚生労働大臣の定める基準の詳細に
文部科学大臣が定める基準等の詳細
つ い て は、 厚 生 労 働 大 臣 告 示( 平
については、文部科学大臣告示によっ
20.4. 30厚生労働告298号)によって定
て定められる予定です。
められています。
ⅱ 医師会法人等で一定の要件を満たす
f 対象法人が旧民法第34条法人から公益
も の が 行 う 医 療 保 健 業( 法 令 5 ①
社団法人又は公益財団法人に改められた
二十九ワ)
もの
一般社団法人の場合には、その事業
これは、対象法人として公益社団法人
が公的に運営され、かつ、地域におけ
又は公益財団法人が事業を行うことが予
る医療の確保に資するものとして厚生
定されていることに対応したもので、具
労働大臣の定める基準に該当すること
体的には以下の除外措置が該当します。
について証明を受けていることが必要
・墳墓地の貸付業(法令5①五ニ)
とされました(法規5六)
。
i その他
厚生労働大臣の定める基準の詳細に
法令において、主務大臣等が指定した
つ い て は、 厚 生 労 働 大 臣 告 示( 平
1の法人のみを対象としている事業にか
20.4. 30厚生労働告297号)によって定
かる除外措置については、新たな法人制
められています。
度が施行される段階では、その指定を受
なお、昭和43年度改正において、当
けている法人も特例民法法人となるため、
該改正前に存する医師会法人について
除外措置についても経過措置として存置
は一定の地域内の医師を会員とする旧
されました。
民法第34条法人であることの要件につ
ⅰ 塩事業センターが塩事業法の規定に
いて経過措置が設けられていますが、
より行う生活用塩等の販売業(旧法令
この経過措置の対象法人を公益社団法
人又は非営利型一般社団法人とし、特
─ 324 ─
5①一ハ)
ⅱ 米穀安定供給確保支援機構が行う米
―法人税法の改正―
穀の販売業、金銭貸付業及び信用保証
損金
業(旧法令5①一ニ・三ヲ、法規8の
算入
2①)
限度
期末
=
額
③ 適用関係
イ 上記②イ及びハの改正は、法人の平成20
年4月1日以後に開始する事業年度の所得
当期
資本
2.5
2.5
+
×
×
所得
金等 1000
100
の額
×
1
2
(注) 資本又は出資を有しない法人の場合には、
所得金額×2.5%が損金算入限度額となります。
に対する法人税について適用し、法人の同
日前に開始した事業年度の所得に対する法
また、特定公益増進法人に対する寄附金に
人税については従前どおりとされています
ついては、上記の一般の寄附金の損金算入限
(改正法令附則2)
。
度額とは別枠で、損金算入限度額と同額を限
ロ 上記②ロの改正は、平成20年10月1日か
度として損金算入されます(法法37④)。
ら施行することとされています(改正法令
特定公益増進法人とは、独立行政法人、地
附則1二)
。ただし、独立行政法人中小企
方独立行政法人、日本赤十字社などの特別法
業基盤整備機構が同日において有する金銭
に基づき設立された法人、学校法人、社会福
債権に係る上記②ロの金銭貸付業について
祉法人、更生保護法人のほか、旧民法第34条
は、従来どおり除外措置の規定を適用でき
法人のうち次の法人をいうこととされていま
ることとされています
(改正法令附則4④)
。
す(法令77①)。
ハ 上記②ニeからfまでの改正は、法人が
平成20年12月1日以後に行う事業について
イ 日本体育協会などの個別に掲名されてい
る法人
適用し、法人が同日前に行った事業につい
ロ 教育又は科学の振興、文化の向上、社会
ては従前どおりとされています(改正法令
福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄
附則4①)
。
与する業務(37類型)を主たる目的とする
ニ 上記②ニiの改正は、特例民法法人が平
もので、適正な運営がされていることにつ
成20年12月1日から移行の登記をする日の
いて主務大臣の認定を受けたもの(認定有
前日までの間に行う上記②ニiに掲げる事
効期間は原則2年)
業については、従来どおり除外措置の規定
を適用できることとされています(改正法
令附則4③、改正法規附則3④)
。
② 改正の趣旨
イ 特定公益増進法人に対する寄附金の損金
算入限度額
上記1の公益法人制度改革への基本的な
対応における改正の背景及び経緯で述べた
⑶ 寄附金の損金不算入
① 改正前の制度の概要
とおり、今般の税制改正においては、民間
法人が支出した寄附金のうち、国又は地方
が担う公益活動を促進する観点から、税制
公共団体に対する寄附金、指定寄附金及び特
上もその活動をサポートするための優遇措
定公益増進法人に対する寄附金などの寄附金
置を講ずる必要があるとの基本的な視点に
を除くその他の寄附金(一般の寄附金)につ
立って制度の構築が行われました。その一
いては、次の資本金等の額又は当該事業年度
環として、公益活動を行う法人が寄附を通
の所得の金額を基礎として計算した損金算入
じて資金を調達するための環境整備が一層
限度額に達するまでの金額は損金算入とされ、
図られるように、法人が特定公益増進法人
それを超える部分の金額は損金算入されませ
に対して寄附を行った場合の損金算入限度
ん(法法37①、法令73)
。
額が拡充されました。
─ 325 ─
―法人税法の改正―
ロ 特定公益増進法人の範囲
なお、一般寄附金と特定公益増進法人に
前述のとおり、公益法人制度改革では、
対する寄附金の損金算入限度額が異なるこ
これまで公益性の判断基準が不明確である
ととなったため、現行の寄附金の損金算入
等の様々な指摘や批判がなされてきた主務
限度額に関する規定の名称が「一般寄附金
官庁の許可主義が改められ、法人格の取得
の損金算入限度額」(法令73)に改称され
と公益性の判断が分離されました。これに
るとともに、「特定公益増進法人に対する
より、新制度における公益社団法人・公益
寄附金の特別損金算入限度額」に関する規
財団法人については、行政庁が法令におい
定が新たに設けられました(法令77の2)。
て明確化された認定基準について、民間有
連結納税の場合も同様です(法法81の6④、
識者による委員会の意見に基づき、公益性
を認定するとともに、遵守すべき基準等に
ついては、法人に対して直接監督を行うこ
ととなりました。
法令155の13、155の13の2)。
ロ 特定公益増進法人の範囲の見直し等
e 公益社団法人・公益財団法人について
は、すべて特定公益増進法人とされまし
このような仕組みを前提とすれば、公益
た(法令77三)。
社団法人・公益財団法人については、旧民
これまでの旧民法第34条法人に対する
法第34条法人に対して適用されてきた特定
認定制度のような認定期間は設けられて
公益増進法人制度における運営組織・経理
いませんので、公益認定が取り消されな
の適正性、業績の持続性等の認定要件はす
い限り、特定公益増進法人として寄附優
べて満たしていると考えられます。さらに、
遇の対象となります。
民間が担う公益活動を促進する観点から、
なお、公益社団法人・公益財団法人に
これまでの業務類型に応じた個別認定の方
対して支出した寄附金については、当該
式を改め、公益社団法人・公益財団法人に
寄附金が当該法人の主たる目的である業
ついては、すべて寄附優遇を受ける法人と
務に関連する寄附金である旨の当該法人
されました。
が証明する書類を保存している場合に限
③ 改正の内容
り、特定公益増進法人に対する寄附金の
イ 特定公益増進法人に対する寄附金の損金
算入限度額の拡充
特別損金算入限度額の規定を適用するこ
ととされています(法法37⑨、法規24一)。
所得基準が現行の2倍となる所得金額の
[ 旧民法第34条法人を対象とした規定は
5%相当額に拡充されました(法法37④、
削除されましたが(旧法令77①二・三)、
法令77の2①)
。
経過措置として新制度へ移行するまでの
改正後の特定公益増進法人に対する寄附
金の損金算入限度額は次のとおりです。
間は、旧民法第34条法人に対する寄附金
についてこれまでと同様とする措置が講
じられました(改正法令附則12②)。し
算入
限度
たがって、上記①ロに該当する法人につ
期末
損金
=
当期
資本
2.5
5
+
×
×
所得 100
金等 1000
×
1
いては、引き続き主務大臣の認定を受け
2
て特定公益増進法人となることができま
の額
額
す。
(注) 資本又は出資を有しない法人の場合には、
f 認定特定公益信託の対象となる類型の
所得金額×5%が損金算入限度額となりま
うち、自然環境の保全のため野生動植物
す。
の保護繁殖に関する業務を行うことを目
─ 326 ─
―法人税法の改正―
的とする法人に対する助成金の支給を目
ています(改正法規附則5②)。
的とするものについて、特定公益増進法
人の範囲の見直しに伴う所要の整備が行
⑷ 法人税額等の損金不算入
われました(法規23の4②一)
。
① 改正の内容
④ 適用関係
公益を目的とする事業を行う法人が納付す
イ 上記③イの改正は、法人の平成20年4月
る贈与税及び相続税の額の損金不算入に関す
1日以後に開始する事業年度の所得に対す
る取扱いについて、相続税法の改正に伴い、
る法人税及び連結法人の連結親法人事業年
人格のない社団若しくは財団又は持分の定め
度が同日以後に開始する連結事業年度の連
のない法人が納付する贈与税及び相続税の額
結所得に対する法人税について適用し、法
を損金不算入とすることとされました(法法
人の同日前に開始した事業年度の所得に対
38②一)。
する法人税及び連結法人の連結親法人事業
② 適用関係
年度が同日前に開始した連結事業年度の連
上記①の改正は、平成20年12月1日から施
結所得に対する法人税については従前どお
行することとされています(改正法附則1五
りとされています(改正法附則9、22、経
ロ)。
過措置令16)
。
ロ 上記③ロeの改正は、法人が平成20年12
⑸ 特定の損失等に充てるための負担金の損金算
月1日以後に支出する寄附金について適用
入
することとされています(改正法令附則12
① 改正の内容
①)
。
対象法人の範囲について、一般社団法人及
ハ 上記③ロ[の改正は、法人が、旧民法第
び一般財団法人が追加されたほか、公益法人
34条法人に対してその移行登記日の前日ま
等に準ずる外国法人が除外されました(法令
でに支出する寄附金については、改正前の
136)。
規定は従来どおり適用できることとされて
② 適用関係
います(改正法令附則12②)
。
上記①の改正は、法人が平成20年12月1日
ニ 上記③ロfの改正は、平成20年12月1日
以後に支出する負担金について適用し、法人
以後の特定公益信託の認定について適用し、
が同日前に支出した負担金については従前ど
同日前の認定については従前どおりとされ
おりとされています(改正法令附則20)。
三 工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度
うに定められています。
1 改正前の制度の概要
本制度は、法人が工事の請負をした場合のその
⑴ 長期大規模工事の請負に係る収益及び費用の
請負に係る収益及び費用について、その目的物の
引渡しがあった日の属する事業年度に一括して計
帰属事業年度の特例
法人が、長期大規模工事の請負をしたときは、
上するのではなく、その引渡しが行われる前であ
その着手の日の属する事業年度からその目的物
っても、工事進行基準の方法により収益及び費用
の引渡しの日の属する事業年度の前事業年度ま
を計上するというものです。具体的には、その請
での各事業年度の所得の金額の計算上、その長
負をした工事の規模等による区分に応じて次のよ
期大規模工事の請負に係る収益の額及び費用の
─ 327 ─
―法人税法の改正―
額のうち、その各事業年度の収益の額及び費用
たこと等の事由が生じた場合や工事進行基準の
の額として工事進行基準の方法により計算した
方法により経理しなかった場合にもそれ以後の
金額を、益金の額及び損金の額に算入すること
選択適用ができないこととされています(法法
とされています(法法64①)
。つまり、長期大
64②ただし書、法令130)。
規模工事の請負については、法人の確定した決
算における経理の如何に関わらず、工事進行基
なお、工事進行基準の方法とは、その工事の請
準の方法により計算した各事業年度の収益の額
負に係る当該事業年度の収益の額及び費用の額に
及び費用の額を益金の額及び損金の額に算入し
ついて、その工事の請負の対価の額及びその工事
なければならないこととされています。
原価の額に当該事業年度終了の時におけるその工
ここで長期大規模工事とは、工事のうち、次
事に係る進行割合を乗じて計算した金額から、既
の要件のすべてに該当するものをいいます(法
にそれまでの事業年度においてその工事の請負に
法64①、法令129①②)
。
係る収益の額とされた金額及び費用の額とされた
① その着手の日からその工事に係る契約にお
金額をそれぞれ控除して計算する方法をいいます
いて定められている目的物の引渡しの期日ま
(法令129③)。
での期間が2年以上であること
また、この制度の対象となる「工事」は製造を
② その請負の対価の額が50億円以上であるこ
と
含むものとされていますので、
「工事の請負」には、
建設、造船その他これに類するいわゆる建設工事
③ その契約において、その請負の対価の額の
2分の1以上がその目的物の引渡しの期日か
ら1年を経過する日後に支払われることが定
められていないものであること
の請負のほか、機械装置等の受注製造が含まれま
す。
2 改正の経緯・趣旨
法人税法では、平成10年度の税制改正において、
⑵ 長期大規模工事以外の工事の請負に係る収益
それまで企業会計と同様に認められてきた工事の
請負に係る収益及び費用についての工事進行基準
及び費用の帰属事業年度の特例
法人が、長期大規模工事以外の工事の請負を
の方法と工事完成基準による方法との選択制を見
した場合において、その工事の請負に係る収益
直し、工事の請負のうち着工から引渡しまでが長
の額及び費用の額につき、その着手の日の属す
期間に及ぶもので、かつ、受注額の高額なものに
る事業年度からその目的物の引渡しの日の属す
ついては、工事進行基準の方法によりその工事の
る事業年度の前事業年度までの各事業年度の確
請負に係る収益の額及び費用の額を計上すること
定した決算において工事進行基準の方法により
とされました。
経理したときは、その経理した収益の額及び費
一方、わが国の企業会計においては、工事の請
用の額は、その各事業年度の所得の金額の計算
負に係る収益及び費用の認識について、従来、企
上、益金の額及び損金の額に算入することとさ
業の選択により工事進行基準と工事完成基準のい
れています(法法64②)
。つまり、長期大規模
ずれかを適用することとされてきましたが、選択
工事以外の工事の請負について、法人の確定し
制であることにより企業間の財務諸表の比較可能
た決算における経理を通じて、工事進行基準の
性が損なわれるとの指摘がされていたこと、近年
方法を選択できるというものです。ただし、予
の企業活動のグローバル化等に伴い会計基準の国
め損失が生ずると見込まれる工事の請負につい
際的コンバージェンスを進める必要があることか
ては選択することができないこととなっている
ら、工事契約に関する収益等の認識基準が見直さ
ほか、中途で損失が生ずると見込まれるに至っ
れ、昨年末新たに「工事契約に関する会計基準」
─ 328 ─
―法人税法の改正―
が公表されました。この会計基準において、その
この改正は、「工事契約に関する会計基準」
進捗部分について成果の確実性が認められる工事
(以下「新会計基準」といいます。)において、
の場合には工事進行基準を適用し、それ以外の工
受注制作のソフトウエアについても工事契約に
事の場合には工事完成基準を適用することとされ
準じて工事進行基準の方法により収益等を計上
ました。この新しい会計基準は、平成21年4月1
することとなることに対応するものです。
日以後開始する事業年度に着手する工事から適用
なお、ソフトウエアの受注制作のうち、工事
することとされ、同日前に開始した事業年度に着
進行基準の方法が強制されるものと、工事進行
手した工事についても先行適用できることとされ
基準と工事完成基準とのいずれかを選択できる
ています。
ものとの区分は、他の工事の請負と同様の基準
今回、このような企業会計における工事契約に
により区分されることとなります。
関する収益等の認識基準の改革を踏まえ、法人税
法上の工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業
⑵ 長期大規模工事の請負に係る特例の見直し
年度の特例についても見直しが行われました。す
① 長期大規模工事の範囲の拡充
なわち、この「工事契約に関する会計基準」の適
長期大規模工事に該当する工事の要件のう
用により、工事進行基準の方法により収益等が認
ち、工事期間要件が2年以上から1年以上に、
識される工事の請負が増加することが予想される
請負金額要件が50億円以上から10億円以上に、
一方、法人の自由な選択といった恣意性が排除さ
それぞれ見直され、その範囲が拡充されまし
れること、工事の請負のような日常的な取引につ
た(法法64①、法令129①)。
いては、これに係る収益等の認識については会計
これらの要件は、比較的工事期間が短い工
処理と所得計算上の取扱いとは一致していること
事や大規模でない工事についてまで強制的に
が望ましいと考えられることから、会計処理との
工事進行基準の方法を適用すると事務負担が
整合性に配慮した見直しが行われたものです。
過重となることから設けられているものです。
今般の新会計基準ではこのような工期の長短
3 改正の内容
や規模の大小に関係なく成果の確実性が認め
具体的な改正の内容は、概ね①本制度の対象と
られれば工事進行基準により収益を認識する
なる工事の範囲の拡充、②長期大規模工事の範囲
こととされていますので、これを前提としつ
とそれ以外の工事の範囲の区分の変更及び制度の
つ、なお、企業の取引実態等やその事務負担
所要の整備、③工事進行基準による工事未収入金
も勘案して長期大規模工事の範囲を拡充した
の貸倒引当金等の対象への追加の3点であり、そ
の詳細は次のとおりです。
ものです。
② 着工事業年度後の事業年度において長期大
規模工事に該当することとなった場合の工事
⑴ 本制度の対象となる「工事の請負」の範囲の
進行基準の方法の特例に係る適用対象の明確
化等
拡充
本制度の適用対象にソフトウエアの開発の請
工事進行基準の方法による経理を行ってい
負(すなわちソフトウエアの受注製作)が追加
なかった工事が、着手した事業年度後の事業
されました(法法64①、法令129①)
。つまり、
年度においてその対価の額の引上げ等の事由
ソフトウエアの受注制作を行う法人については、
により長期大規模工事に該当することとなっ
改正後はその請負に係る収益等の計上について、
た場合には、それ以後は工事進行基準の方法
工事進行基準の方法が強制され、又は選択でき
により収益及び費用を計上することとなりま
ることとなります。
すが、選択により、既往事業年度分の収益の
─ 329 ─
―法人税法の改正―
額及び費用の額の計上を完成引渡しの時まで
この特例は、工事進行基準の方法に基づく
繰り延べることができるとされている特例が
益金及び損金算入が強制される制度にあって、
設けられています(法令129⑤)
。今回、この
工事原価を的確に見積もるに当たってその計
特例に関し、自らが工事進行基準の方法によ
算の基礎となる実行予算書等の作成がその着
り経理した場合又はこの特例を受けなかった
手の日から一定の日時を経て行われる例が少
場合には、その経理した決算に係る事業年度
なくないことや事務負担が過重とならないよ
又はその適用を受けなかった事業年度以後の
うにとの配慮から設けられているものです。
事業年度については、この特例の適用ができ
このため、法人が自らこれらの見積りを行う
ないこととされました。
などして工事進行基準の方法により経理を行
この特例は、法人の選択によって既往事業
った場合についてまでこの特例の適用を認め
年度分の収益の額及び費用の額の計上の繰延
ることは、この特例を設けた趣旨に沿わない
べを行えるものであることから、長期大規模
ことから今回見直しが行われたものです。
工事に該当することとなった後において、法
人がその工事の請負につき、自ら工事進行基
⑶ 長期大規模工事以外の工事の請負に係る措置
準の方法により経理することを選択した事業
の見直し
年度(すなわち、既往事業年度分の収益の額
① 長期大規模工事以外の工事の請負の範囲の
及び費用の額を計上した事業年度)以後の事
拡充
業年度について、税制上もこの特例の対象か
損失が生ずると見込まれる工事の請負につ
ら除外し、既往事業年度分の収益の額及び費
いては、工事進行基準の方法を選択して適用
用の額についても工事進行基準の方法により
することができる工事の請負の範囲から除外
計上することとされたものです。
されていましたが、その除外する措置が廃止
なお、法人が特例の適用を選択しなかった
されました(法法64②)。つまり、法人税法
工事の請負について、その後その適用を受け
上は、これまで工事進行基準の方法による経
ることができないことについても明確化され
理を選択できる工事の請負はいわゆる黒字工
ています。
事(工事の請負の対価の額がその工事原価総
③ 工事の進捗が初期段階の場合の特例に係る
適用対象の明確化
額を超えるもの)に限られてきましたが、改
正により、いわゆる赤字工事(工事原価総額
長期大規模工事については、工事に着手し
がその工事の請負の対価の額を超えるもの)
ている場合であっても、事業年度終了の時点
であっても工事進行基準の方法による経理を
でその着手の日から6月を経過していないも
選択できることとなります。
のや進行割合が20%未満となっているものに
これまでこの制度の対象となる工事の請負
ついては、工事進行基準の方法による収益の
から赤字工事が除外されていたのは、経理を
額及び費用の額をないものとすることが、で
通じて各工事の選択が任意となっていること
きることとされています(法令129⑥)が、
から、赤字工事についてだけ工事進行基準の
今回、その長期大規模工事の請負に係る収益
方法を適用するといったことがないように、
及び費用の額につき、その確定した決算にお
つまり損失の先出しといった利益調整に利用
いて工事進行基準の方法により経理した場合
されないためです。
には、その経理した事業年度以後の事業年度
一方、今回の見直しにより長期大規模工事
についてはこの特例の適用ができないことと
の範囲が拡充された(上記⑵①)ため選択適
されました。
用の対象となる工事の範囲が実質的に狭くな
─ 330 ─
―法人税法の改正―
ったことや、新会計基準では、その進捗部分
次のロの特例の適用を受ける場合には、こ
について成果の確実性が認められる場合には、
の特例は適用できません。
黒字工事であるか赤字工事であるかに関わら
ロ 対象となる工事の請負についてその着手
ず、工事進行基準を適用しなければならない
の日に対価の額が確定していない場合には、
とされていることなどを勘案すると、これま
その対価の額が確定した日を着手の日とし
でのように赤字工事についてだけ、工事進行
て法人税法第64条第2項の規定を適用する
基準の方法の適用を制限することは合理的で
ことができることとされました
(法令129⑪)
。
ないと考えられることから、赤字工事に係る
つまり、着手の日の属する事業年度におい
適用の制限が撤廃されたものです。
て対価の額が確定していないことを理由と
また、この改正に伴い、工事進行基準の方
して工事進行基準の方法により経理してい
法を選択して適用していた工事の請負につい
なかった工事については、その対価の額が
て次の事由が生じた場合にその事由が生じた
確定した事業年度から工事進行基準の方法
日の属する事業年度以後の事業年度について
を選択できることとされました。
は工事進行基準の方法を選択できないことと
これは、新会計基準に準拠すべき法人が、
されていた制度が廃止されました(旧法法64
工事の請負に係る収益について、その工事
②ただし書・二、旧法令130)
。
の請負の対価の額が確定していない間は工
イ 損失が生ずると見込まれるに至ったこと
事進行基準の方法による経理をせず、その
ロ 着手した事業年度後のいずれかの事業年
後対価の額が確定した時点から工事進行基
度において、その工事の請負の対価の額か
準の方法により経理することとなる場合に
らその工事原価の額を控除した金額が、そ
対応するものです。ただし、着工事業年度
の工事につき、その事業年度前の各事業年
後の事業年度において長期大規模工事に該
度の確定した決算において工事進行基準の
当することとなった場合の工事進行基準の
方法により経理した収益の額からその方法
方法の特例(上記⑵②)とは異なり、工事
により経理した費用の額を控除した金額の
進行基準の方法による収益及び費用の計上
合計に満たないこととなること
をする最初の事業年度において、既往事業
② 対価の額が確定していない場合の取扱いの
特例等
年度分の収益の額及び費用の額を計上する
こととなります。
工事の請負の対価の額が確定していない場
ところで、イで前述したとおり、イの特例
合の取扱いや着手の日の判定等、工事進行基
とロの特例とは、一方を適用した場合にもう
準の方法の適用について、次の整備が行われ
一方は適用できないこととされています(法
ました。
令129⑨)が、これらの特例は、その適用に
イ 長期大規模工事に係る工事の請負の対価
より貸倒引当金の計算において異なる結果と
の額が確定していない場合の取扱いの規定
なります。すなわち、イの特例を適用した場
(法令129④)を準用する規定が設けられ、
合には、その工事の請負に係る純損益はゼロ
請負の対価の額が確定していない工事につ
となりますが、収益の額は認識されますので、
いては、その工事の請負に係る工事進行基
後述にもあるように、その工事収益に対応す
準の方法による収益の額及び費用の額の計
る未収入金は、一括評価金銭債権の貸倒引当
算において、その対価の額をその見積もら
金の対象となる売掛債権等に該当し、その着
れる工事原価の額と同額とみなして取り扱
手の日の属する事業年度からその損金算入限
うこととされました(法令129⑨)
。ただし、
度額の計算の基礎となりますが、ロの特例を
─ 331 ─
―法人税法の改正―
適用した場合には、その工事の請負に係る収
行基準の方法により計上される未収入金相当に
益の額が認識されないため、その工事収益に
ついて売掛債権等に該当することとされたもの
対応する未収入金が計上されず、対価の額が
です。これにより売掛債権等の帳簿価額とされ
確定するまでは貸倒引当金の対象となる売掛
た金額は一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の
債権等がないことになります。
計算の対象となり、税法上も貸倒引当金の計上
ハ 長期大規模工事に係る工事の着手の判定
ができることとなります。
の取扱いの規定(法令129⑦)を準用する
具体的には、法人の請負をした工事につきそ
規定が設けられ、その対象となる工事に着
の着手の日からその目的物の引渡しの日の前日
手したか否かは、その請け負った工事の内
までの期間内の日の属する各事業年度において
容を完成するために行う一連の作業のうち
工事進行基準の方法を適用している場合には、
重要な部分の作業を開始したかどうかによ
その工事に係る次のイの金額からロの金額を控
り判定することとされた上、その工事の設
除した金額をその工事の請負に係る売掛債権等
計に関する作業がその工事の重要な部分の
の帳簿価額として、その各事業年度の所得の金
作業に該当するか否かは法人の選択による
額を計算することとされました(法令130)。
こととされました(法令129⑩)
。
イ その工事の請負に係る収益の額のうち、
これは、今後新会計基準の適用等により
工事進行基準の方法によりその事業年度前
工事の請負について工事進行基準の方法に
の各事業年度の収益の額とされた金額及び
よる経理を選択する法人が増加することが
その事業年度の収益の額とされる金額の合
予想される中、工事進行基準の適用に当た
計額(長期大規模工事以外の工事について
り着手の時期の判定が益々重要となると考
は、工事進行基準の方法により経理しなか
えられることから、長期大規模工事と同様
った決算に係る事業年度の翌事業年度以後
にその工事に着手したかどうかの判断にお
の事業年度の収益の額を除きます。)
いて疑義が生じないように設けられたもの
です。
ロ 既にその工事の請負の対価として支払わ
れた金額(その対価の額でまだ支払われて
いない金額のうち、その対価の支払を受け
る権利の移転によりその法人が対価の支払
⑷ 工事進行基準による未収入金
これまで、工事進行基準の方法により計算さ
れる収益の額に対応する未収入金については、
を受けない金額を含みます。)
なお、この取扱いに関する詳細は次のとおり
企業会計上は金銭債権に該当せず、また法人税
です。
法上も売掛債権等には該当しないと解され、一
① 対象となる工事
括評価金銭債権に係る貸倒引当金の対象となる
売掛債権等から除外されていたところです。
この取扱いは、法人が請負をした工事のう
ち法人税法第64条第1項又は第2項の規定を
しかしながら、今回の新会計基準においては、
現に適用しているものが対象となるほか、法
工事進行基準の方法により計上された工事進行
人が請負をした工事のうち現時点でこれらの
途上における未収入額については金銭債権とし
規定が適用されていないものであっても、過
て取り扱われることとされたことや、税制上も
去(その工事の着手の日からその目的物の引
工事進行基準の方法により収益を計上している
渡しの日の前日までの期間を含む事業年度)
ことからすれば、その収益に対応した債権につ
においてこれらの規定が適用されていたもの
いて他の売掛債権等と同等に取り扱うことの方
が合理的であること等を勘案し、今回、工事進
─ 332 ─
については対象となります(法令130①)。
② 対象となる事業年度
―法人税法の改正―
この取扱いは、対象となる工事の着手の日
権ですので、貸倒れによる毀損があり得るほ
からその目的物の引渡しの日の前日までの期
か、時価評価による評価換えの対象となるこ
間内の日の属する事業年度を対象としていま
ともあり得ます。
す(法令130①)が、ここで「引渡しの日の
そこで、稀なケースではあるもののこうし
前日までの期間内の日」としているのは、そ
た事由が生じた場合に対応して、それ以後の
の目的物の引渡し後には未決済の対価の額は
売掛債権等の帳簿価額がこれらの事由による
売掛債権等の金額そのものであり、この取扱
増減が反映された適切な金額となるように調
いの対象とする必要がないためです。
整規定が設けられています。具体的には、貸
③ 金銭債権等の帳簿価額の算出
倒れによる損失額や連結納税の開始に伴う資
この取扱いによって金銭債権等の帳簿価額
産の時価評価による評価益又は評価損の金額
とされるのは、前述のイの金額からロの金額
など、その工事の請負に係る売掛債権等につ
を控除した金額とされています(法令130①
いて一定の事由によりその帳簿価額を増額し、
一・二)が、一般には工事収益の額に対応す
又は減額すべき金額がある場合には、その売
る未収入金の残額に相当する金額となります。
掛債権等の帳簿価額は、前述のイの金額から
ただし、工事進行基準の方法を選択できる
ロの金額を控除した金額(未収入金の残額と
工事(法法64②)については、この取扱いに
して算出された金額)のままではなく、その
よる金額の計算を行う際の収益の額から、そ
控除した金額に増額すべき金額及び減額すべ
の工事につき確定した決算において工事進行
き金額の加減算を加えた後の金額とするとい
基準の方法により経理しなかったことにより
うものです(法令130②、法規27の16の3)。
所得の金額の計算上益金の額に算入されなか
った金額を除くこととされています(法令
4 適用関係
130①一かっこ書き)
。なお、公益法人等が普
⑴ 上記3⑴から⑶までの改正は、法人が平成20
通法人に該当することとなった場合などで、
年4月1日以後に開始する事業年度において着
それまで収益事業以外の事業に該当するもの
手する工事(製造及びソフトウエアの開発を含
として経理していた工事の請負に係る工事進
みます。)について適用し、法人が同日前に開
行基準の方法による収益の額については、こ
始した事業年度において着手した工事(製造を
の計算の収益の額に含まれることになります。
含みます。)については従前どおりとされてい
また、この計算における上記ロの「既にそ
ます(改正法附則19①、経過措置令16)。ただし、
の工事の請負の対価として支払われた金額」
平成20年4月1日以後に開始する事業年度にお
とは、対価の額のうちいわゆる決済された金
いて着手する工事であっても経過措置工事に該
額を指します。また、対価のうち未決済であ
当する場合には、従前どおりとなります。
っても、債権譲渡又は工事契約の移転等によ
経過措置工事とは、平成20年4月1日から平
り代金請求権(対価の支払を受ける権利)を
成21年3月31日までの間に開始する各事業年度
他者へ移転したことで自らその代金請求権を
において、その事業年度の着手工事のうちその
行使できない部分の金額(対価の支払を受け
事業年度終了の時において長期大規模工事に該
ない金額)がある場合には、その金額を「対
当するもののいずれかについてその事業年度の
価として支払われた金額」に含めて、前述の
確定した決算(いわゆる仮決算による中間申告
イの金額から控除することとされています
を提出する場合には、その仮決算となります。)
(法令130①二かっこ書き)
。
において工事進行基準の方法により経理しない
さらに、工事代金請求権は独立した金銭債
─ 333 ─
場合におけるその着手工事とされています(改
―法人税法の改正―
正法附則19②、経過措置令16)
。
新たに工事進行基準の方法が強制されることと
ここで着手工事とは、法人が請負をする工事
なる工事の請負について、その法人が会計上工
(製造及びソフトウエアの開発を含みます。
)で
事進行基準の方法による経理をするか否かによ
その事業年度に着手するものをいいますが、そ
り行われることになります。
の事業年度中にその目的物の引渡しが行われる
この経過措置によって、原則どおり改正後の
ものは除かれます。また、長期大規模工事とは、
規定が適用される法人であれば、平成20年4月
上記3⑵①の改正による改正後の長期大規模工
1日以後に開始する事業年度に着手する工事の
事(1年以上かつ10億円以上の工事)をいいま
請負については、ソフトウエアの受注制作を含
すが、その事業年度終了の時において改正前の
め工期1年以上かつ請負対価10億円以上の工事
長期大規模工事(2年以上かつ50億円以上の工
の請負について工事進行基準の方法によること
事)に該当するもの及びその事業年度終了の時
が強制されますし、工期1年未満又は請負対価
においてその着手の日から6月を経過していな
10億円未満であるいわゆる赤字工事の請負やソ
い工事又はその進行割合が20%未満の工事に該
フトウエアの受注制作について工事進行基準の
当するものを除くこととされています(改正法
方法を選択することが可能となります。これに
附則19②かっこ書き、改正法令附則18②)
。
対して、改正前の規定が適用される法人につい
すなわち、法人は原則として、法人の平成20
ては、これまでどおり、その事業年度に着手す
年4月1日以後に開始する事業年度に着手する
る工事の請負のうちソフトウエアの受注制作に
工事については改正後の法人税法の規定を、そ
ついて工事進行基準の方法を強制されることは
れ以前に着手した工事については改正前の法人
ありませんが、ソフトウエアの受注制作や工期
税法の規定を、それぞれ適用することとされて
2年未満又は請負対価50億円未満の赤字工事の
いますが、平成20年4月1日から平成21年3月
請負について工事進行基準の方法を選択するこ
31日までの間に開始する事業年度に着手する工
とはできないこととなります。なお、平成21年
期1年以上2年未満かつ請負対価10億円以上50
4月1日以後に開始する事業年度に着手する工
億円未満であるすべての工事について、そのう
事の請負からは、すべての法人が改正後の規定
ちいずれか一の工事でも工事進行基準の方法に
を適用することとなります。
よる経理をしていない場合には、その事業年度
⑵ 上記3⑷の改正は、法人の平成20年4月1日
に着手したすべての工事については、改正前の
以後に開始する事業年度の所得に対する法人税
法人税法の規定を適用することとされています。
について適用し、法人の同日前に開始する事業
このような経過措置が設けられたのは、上記
年度の所得の対する法人税については従前どお
3⑴から⑶までの改正が法人にとって有利なも
りとされています(改正法令附則2)。
ののみではないことや、今般の法人税法の改正
したがって、平成20年4月1日以後に開始す
が新会計基準の適用を契機に行われ、かつ、そ
る事業年度の終了の時において現に施工途中と
の新会計基準適用への完全移行が平成21年4月
なっている工事であれば、その着手の日が平成
1日以後に開始する事業年度からであることを
20年4月1日前であってもその工事の請負に係
考慮して、法人が改正後の法人税法の規定の適
る売掛債権等の帳簿価額について、一括評価金
用を事業年度単位で選択できるものとするため
銭債権に係る貸倒引当金の繰入れができること
です。なお、この場合の選択は、改正によって
になります。
─ 334 ─
―法人税法の改正―
四 組織再編税制等
交付されたときに、「合併親法人株式等以外の
1 合併等により交付する株式に1に満た
ない端数がある場合の所得計算(新設)
資産が交付されないこと」(法法2十二の八、
法法61の2②)という要件に該当しているとい
えるのか、不明確であるとの指摘もあったとこ
⑴ 制度創設の趣旨及び概要
合併法人がいわゆる合併対価として自己の株
ろです。
式を交付する場合において、被合併法人の株主
この対価要件の判定に当たって、合併親法人
が交付を受けることとなる株式に1に満たない
株式等の端数相当金銭が交付された場合には、
端数が生ずることとなったときは、会社法第
それは端株制度がないことにより端株に代えて
234条等の規定により端数の合計数に相当する
やむを得ず交付されたものであるため、合併法
株式を合併法人が売却等をして換金し、金銭が
人株式が交付される場合と同様に、一旦合併親
交付されることとなりますが、この行為は法的
法人株式等が交付されたものとして取り扱うべ
には、一旦端数の合計数に相当する株式が株主
きと考えられます。これを踏まえ、今回の改正
に交付(共有)され、合併法人が株主に代わっ
では、合併対価として交付すべき合併親法人株
てその株式の売却等をし、その売却対価等であ
式等の数に1に満たない端数が生ずる場合にお
る金銭を改めてその株主に交付するものである
いて、その端数に応じて金銭が交付されるとき
と解釈されています。したがって、この場合の
は、その端数に相当する部分が合併親法人株式
合併対価はあくまでも合併法人の株式であり、
等に含まれるものとされました。これにより、
株主に交付される金銭は合併対価ではないこと
合併対価として合併親法人株式等を交付する合
から、適格合併の要件及び被合併法人の株主の
併において、合併親法人株式等の1に満たない
旧株の譲渡損益の計上を繰り延べる要件のうち
端数に代えて金銭が交付された場合には、その
対価要件、すなわち、
「合併法人の株式以外の
金銭を合併親法人株式等としてその合併が適格
資産が交付されないこと」
(法法2十二の八、
合併の要件及び被合併法人の株主の旧株の譲渡
法法61の2②)という要件に該当していること
損益の計上を繰り延べる合併の要件のうち対価
となります。
要件に該当するか否かを判定することが明確化
一方、平成19年度改正において、適格合併の
されたものといえます。
要件のうち対価要件に合併親法人株式が、被合
併法人の株主の旧株の譲渡損益の計上を繰り延
⑵ 制度の内容
べる合併の要件のうち対価要件に親法人の株式
が、それぞれ追加されましたが、合併親法人株
① 合併等により交付する株式に1に満たない
端数がある場合の所得計算
式又は親法人の株式
(以下
「合併親法人株式等」
合併法人が合併により被合併法人の株主
といいます。
)を交付する合併は会社法第234条
(合併法人及び被合併法人を除きます。)の有
の適用がないことと解されています。したがっ
するその被合併法人の株式の数の割合に応じ
て、法人が自己を合併法人とする合併により合
て交付すべき合併親法人株式又は親法人の株
併対価として合併親法人株式等を交付する場合
式の数に1に満たない端数が生ずる場合にお
において、被合併法人の株主が交付を受けるこ
いて、その端数に応じて金銭が交付されると
ととなる合併親法人株式等に1に満たない端数
きは、その端数に相当する部分は、合併親法
が生ずることとなり、その端数に代えて金銭が
人株式又は親法人の株式に含まれるものとし
─ 335 ─
―法人税法の改正―
て、その合併法人、被合併法人及び株主の各
(注2) 親法人の株式とは、合併の直前にその合
事業年度の所得の金額を計算することとされ
併に係る合併法人とその合併法人以外の法
ました(法令139の3の2①)
。分割型分割及
人との間にその合併法人の発行済株式の全
び株式交換においても同様とされています
部を保有する関係がある場合におけるその
(法令139の3の2②③)
。
法人の株式をいいます(法法61の2②、法
(注1) 合併親法人株式とは、合併の直前にその
令119の7の2①)
。
合併に係る合併法人とその合併法人以外の
(注3) 分割型分割において分割法人がその株
法人との間にその法人による直接完全支配
主に交付する分割承継法人株式に1に満た
関係(2の法人のいずれか一方の法人が他
ない端数が生ずる場合の取扱い(旧法令
方の法人の発行済株式(自己が有する自己
123の2の2)は、本制度に統合されました。
の株式を除きます。以下同じです。
)の全
これを処理面からいえば、合併を例にとる
部を保有する関係をいいます。以下同じで
と、合併法人がその有する合併親法人株式又
す。
)があり、かつ、その合併後にその合
は親法人の株式を一旦被合併法人の株主に交
併法人とその法人との間にその法人による
付し、直ちに端数相当金銭を対価として再取
直接完全支配関係が継続することが見込ま
得した場合と同様の計算となります。具体的
れている場合におけるその法人の株式をい
には、下記図表を参照して下さい。
います(法法2十二の八、法令4の2①)
。
【設例】
●前提条件
、B(1株)及びC(1株)
・被合併法人の株主A
(10株)
・被合併法人株式2株に対し合併親法人株式1株を交付。ただし、端数となる場合には、端数に代えて
被合併法人株式1株当たり現金6を交付
・被合併法人の合併直前B/Sは以下のとおり
資産
負債
100
50
資本金等の額
30
利益積立金額
20
・合併法人が合併直前に有する合併親法人株式(6株)
・上記の帳簿価額合計60(法法61の2@2適用後)
●合併法人の処理(適格合併の場合)
資産
資本金等の額
100 負債
50
30 利益積立金額
20
合併親法人株式 60
12
合併親法人株式 12 / 現金
(注) 合併親法人株式の1株当たり帳簿価額は、合併前(60/6=10)と合併後
(12)
で異なることとな
ります。
─ 336 ─
―法人税法の改正―
② 合併等により交付すべき1に満たない端数
単位当たりのその合併の時の価額(その合併
に相当する株式を有しない場合の所得計算
が適格合併に該当する場合には、その合併の
上記①において、実際には交付しない端数
直前の帳簿価額をその合併により交付した合
の合計数相当の合併親法人株式又は親法人の
併親法人株式又は親法人の株式(上記①によ
株式を合併法人が合併直前に実際に調達して
り合併親法人株式又は親法人の株式に含まれ
有していなければならないとするまでの理由
るものとされるものを除きます。)の数で除
はないことから、実際にこれらの株式を有し
して計算した金額)にその有していない数を
ていない場合の適用を排除していません。そ
乗じて計算した金額(以下「みなし対価額」
こで、これらの株式を有していない場合の処
といいます。)と、空売りに係る譲渡原価の
理がどうなるかということが問題になります
額はその端数に代えて交付した金銭の額と、
が、これについては、有価証券の空売りに係
譲渡損益の計上をすべき買戻しの契約をした
る譲渡損益の計上の制度を適用することとさ
日はその合併の日とすることとされました
れました。具体的には以下のとおりです。
(法令119の10②後段)。
法人が行うその法人を合併法人とする合併
また、上記により法人がその有していない
(合併親法人株式又は親法人の株式を交付す
合併親法人株式につき有価証券の空売りを行
るものに限ります。
)が、上記①の場合(す
ったものとみなされた場合には、上記により
なわち、
その合併により被合併法人の株主
(合
譲渡損益を計上することとなるため、その合
併法人及び被合併法人を除きます。
)の有す
併親法人株式については、合併により交付し
るその被合併法人の株式の数の割合に応じて
た場合の譲渡損益の計上を繰り延べる規定
交付すべき合併親法人株式又は親法人の株式
(法法61の2⑦)を適用しないこととされま
の数に1に満たない端数が生ずる場合)に該
した(法令119の10③)。
当する場合において、その法人がその合併の
さらに、適格合併により交付すべき1に満
直前においてその1に満たない端数の合計数
たない端数に相当する合併親法人株式を有し
に相当する合併親法人株式又は親法人の株式
ない場合のみなし対価額は、合併親法人株式
の全部又は一部を有していないときは、その
の適格合併の直前の帳簿価額に含まれるもの
法人がその有していない数に相当する合併親
として、合併により増加する資本金等の額(法
法人株式又は親法人の株式に係る有価証券の
令8①五)を計算することとされました(法
空売りを行ったものとみなして、有価証券の
令119の10④)。
空売りに係る譲渡損益の計上の制度(法法61
の2⑲)を適用することとされました(法令
119の10②)
。
分割型分割及び株式交換においても同様と
されています(法令119の10②∼④)。
具体的な処理は、下記図表を参照して下さ
この場合において、空売りに係る譲渡対価
の額は合併親法人株式又は親法人の株式の1
─ 337 ─
い。
―法人税法の改正―
【設例】
●前提条件
、B(1株)及びC
(1株)
・被合併法人の株主A(10株)
・被合併法人株式2株に対し合併親法人株式1株を交付。ただし、端数となる場合には、端数に代えて
被合併法人株式1株当たり現金6を交付
・被合併法人の合併直前B/Sは以下のとおり
資産
負債
100
50
資本金等の額
30
利益積立金額
20
・合併法人が合併直前に有する合併親法人株式(5株)
・上記の帳簿価額合計50(1株当たり10)
(法法61の2@2適用後)
・合併親法人株式の合併時の1株当たりの価額12
●合併法人の処理(適格合併の場合)
資産
資本金等の額
譲渡損
100 負債
50
30 利益積立金額
20
2 合併親法人株式 50
現金
12
※資本金等の額△30=100(移転資産の帳簿価額)−(50(移転負債の帳簿価額)+20(増加利益積立金額))
−(50(合併親法人株式の帳簿価額)+10(法令119の10④により合併親法人株式の帳簿価額に含まれる
)
ものとされるみなし対価額)
(法令119の10②により法法61の2⑲二に掲げる金額とされる金額)−10
(法令119 の10②
※譲渡損2=12
(10)×不
により法法61の2⑲一に掲げる金額とされる金額=合併親法人株式の1単位当たり帳簿価額
保有の合併親法人株式の数
(1))
一 第170条第1項の規定による株式の取得
(参考)
○ 会社法(平成17年法律第86号)
(抄)
当該株式会社の株主
(一に満たない端数の処理)
二 第173条第1項の規定による株式の取得
第234条 次の各号に掲げる行為に際して当該
各号に定める者に当該株式会社の株式を交
付する場合において、その者に対し交付しな
当該株式会社の株主
三 第185条に規定する株式無償割当て 当
該株式会社の株主
ければならない当該株式会社の株式の数に1
四 第275条第1項の規定による新株予約権
株に満たない端数があるときは、その端数の
の取得 第236条第1項第7号イの新株予
合計数(その合計数に1に満たない端数があ
約権の新株予約権者
る場合にあっては、これを切り捨てるものと
五 合併(合併により当該株式会社が存続
する。
)に相当する数の株式を競売し、かつ、
する場合に限る。
)合併後消滅する会社の
その端数に応じてその競売により得られた代
株主又は社員
金を当該者に交付しなければならない。
六 合併契約に基づく設立時発行株式の発
─ 338 ─
―法人税法の改正―
23)。
行 合併後消滅する会社の株主又は社員
七 株式交換による他の株式会社の発行済
株式全部の取得 株式交換をする株式会
社の株主
八 株式移転計画に基づく設立時発行株式
2 全部取得条項付種類株式の取得決議に
よる取得に係る有価証券の譲渡損益等
⑴ 改正前の制度の概要
法人が全部取得条項付種類株式を取得決議に
の発行 株式移転をする株式会社の株主
2 株式会社は、前項の規定による競売に代え
より譲渡をし、かつ、その取得決議により取得
て、市場価格のある同項の株式については市
をする法人の株式又は新株予約権の交付を受け
場価格として法務省令で定める方法により算
た場合(その交付を受けた株式又は新株予約権
定される額をもって、市場価格のない同項の
の価額がその譲渡をした全部取得条項付種類株
株式については裁判所の許可を得て競売以
式の価額とおおむね同額となっていないと認め
外の方法により、これを売却することができ
られる場合を除きます。)には、その法人のそ
る。この場合において、当該許可の申立ては、
の全部取得条項付種類株式の譲渡損益の計上を
取締役が2人以上あるときは、その全員の同
繰り延べることとされています(法法61の2⑭、
意によってしなければならない。
法令119①十七・十八)。ただし、この制度の対
象となる取得決議は、その取得決議によりその
3 前項の規定により第1項の株式を売却した
場合における同項の規定の適用については、
取得の対価として取得をされる株主等に取得を
同項中「競売により」とあるのは、
「売却に
する法人(以下「発行法人」といいます。)の
より」とする。
株式のみが交付される場合又は発行法人の株式
及び新株予約権のみが交付される場合のその取
4 株式会社は、第2項の規定により売却する
得決議に限ることとされています。
株式の全部又は一部を買い取ることができる。
この場合においては、次に掲げる事項を定め
(注)
取得をされるいずれかの株主に発行法人の株
なければならない。
式(及び新株予約権)以外の資産が交付された
一 買い取る株式の数(種類株式発行会社
場合に、すべての株主について譲渡損益の計上
にあっては、株式の種類及び種類ごとの
が繰り延べられないこととなります。
法人の株主等がその法人の自己株式の取得
数)
二 前号の株式の買取りをするのと引換え
(金融商品取引所の開設する市場における購入
による取得等一定の事由によるもの及び譲渡損
に交付する金銭の総額
5 取締役会設置会社においては、前項各号
益の計上が繰り延べられるものを除きます。)
に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によ
等の事由により金銭その他の資産の交付を受け
らなければならない。
た場合において、その金銭の額及び金銭以外の
6 第1項から第4項までの規定は、第1項各
資産の価額の合計額がその法人の資本金等の額
号に掲げる行為に際して当該各号に定める
又は連結個別資本金等の額のうちその交付の基
者に当該株式会社の社債又は新株予約権を
因となったその法人の株式又は出資に対応する
交付するときについて準用する。
部分の金額を超えるときは、その超える部分の
金額は、配当等の金額とみなすこととされてい
ます(法法24①、法令23③)。
⑶ 適用関係
上記は、平成20年4月30日以後に行われる合
併、分割型分割又は株式交換について適用する
⑵ 改正の内容
こととされています(改正法令附則14、16①、
─ 339 ─
① 有価証券の譲渡損益
―法人税法の改正―
全部取得条項付種類株式の譲渡損益の計上
により反対株主に金銭が交付されたとしても、
が繰り延べられる取得決議の範囲について、
取得の価格の決定の申立てをしなかった株主
その取得の対価として株主に発行法人の株式
についてはその全部取得条項付種類株式の譲
(これと併せて交付される発行法人の新株予
渡損益の計上が繰り延べられることとなりま
約権を含みます。
)以外の資産(その取得の
す。
価格の決定の申立てに基づいて交付される金
(注) 取得の価格の決定の申立てをした株主は、
銭その他の資産を除きます。
)が交付されな
全部取得条項付種類株式の取得の対価として
い場合の取得決議とされました(法法61の2
金銭の交付を受けることとなりますので、
「株
⑭三)
。
式の交付を受けた場合」
(法法61の2⑭)と
全部取得条項付種類株式の取得決議に反対
いう要件に該当せず、その全部取得条項付種
した株主が会社法第172条の規定に基づき裁
類株式の譲渡損益が計上されることとなりま
判所に対し取得の価格の決定の申立てをした
す。
場合には、その申立てに対する裁判所の価格
② 有価証券の取得価額
の決定により交付される金銭は、全部取得条
上記①の取得決議により発行法人の株式の
項付種類株式の取得の対価と解釈されていま
交付を受けた株主のその交付を受けた株式の
す(なお、取得の時点において価格の決定の
取得価額は、その全部取得条項付種類株式の
申立てに対する裁判所の決定が行われていな
その取得決議の直前の帳簿価額に相当する金
い場合には一旦その株主に対し他の株主と同
額(その交付を受けるために要した費用があ
様に取得対価として定められた資産が交付さ
る場合には、その費用の額を加算した金額)
れますが、その後価格の決定があったときに、
とされました(法令119①十七・十八)。
取得をする法人から金銭が交付されるととも
③ 配当等の額とみなす金額
に、当初取得対価として交付された資産の返
全部取得条項付種類株式に係る一定の取得
還義務が生ずるものと解釈されています。
)
。
決議による自己の株式の取得が、配当等の額
このため、取得決議において定められた取得
とみなされる金額が生ずる基因となる自己の
対価が発行法人の株式のみであったものの、
株式の取得から除外されました(法令23③十)。
取得の価格の決定の申立てにより反対株主に
一定の取得決議とは、その取得の対価として
金銭が交付されるときに、取得の価格の決定
株主に発行法人の株式(これと併せて交付さ
の申立てをしなかった株主について譲渡損益
れる発行法人の新株予約権を含みます。)以
の計上が繰り延べられるか否かを判定する要
外の資産(その取得の価格の決定の申立てに
件である「発行法人の株式のみが交付される
基づいて交付される金銭その他の資産を除き
場合」という要件に該当するかどうか、不明
ます。)が交付されないもののうち、その取
確であるとの指摘もあったところです。
得決議に係る取得の価格の決定の申立てをし
今回の改正により、取得の価格の決定の申
た者でその申立てをしないとしたならば取得
立てに基づいて交付される金銭を除いて「発
の対価として交付されることとなる発行法人
行法人の株式のみが交付される場合」という
の株式の数が1に満たない端数となるものか
要件に該当するか否かの判定をすることが明
らの取得(その対価である発行法人の株式の
確化されました。したがって、取得決議にお
価額がその全部取得条項付種類株式の価額と
いて定められた全部取得条項付種類株式の取
おおむね同額となっていないと認められるも
得の対価が発行法人の株式のみである場合に
は、取得の価格の決定の申立てがあったこと
─ 340 ─
のを除きます。)に係る部分とされています
(法令23③十)。
―法人税法の改正―
全部取得条項付種類株式の取得の価格の決
等の額とみなされる金額が生ずるかどうか、
定の申立てをした株主で、その申立てをしな
不明確であるとの指摘もあったところです。
かった場合に端数相当金銭のみの交付を受け
今回の改正により、取得の価格の決定の申
ることとなる者は、その申立てをしなかった
立てをしなかった場合に端数相当金銭のみの
場合には会社法第234条の規定の適用がある
交付を受けることとなる株主からの取得が、
ことから交付を受ける端数相当金銭について
配当等の額とみなされる金額が生ずる基因と
は配当等の額とみなされる金額が生じないこ
なる自己の株式の取得から除外されたことか
ととなります(法令23③九)が、申立てをし
ら、当該株主については、その申立てをした
た場合には会社法第234条の規定の適用がな
場合にもしない場合にも、配当等の額とみな
いことから、交付を受ける金銭について配当
される金額は生じないこととなります。
全部取得条項付種類株式の取得決議による取得
株主A
株主B
法法61の2⑭三に
より譲渡損益の計
上を繰延べ(注1)
新株
金銭
端
数
の
対
価
旧株
旧
株
の
対
価
会社法234
④(注2)
株主C
法法61の2⑭三に
より譲渡損益の計
上を繰延べ(注1)
端数
決議反対
裁判所に対する
価格決定の申立て
旧株
旧
株
の
対
価
旧
株
の
対
価
価
格
決
定
に
基
づ
く
旧株
金銭
価格決定
発行法人(取得をする法人)
株主Cが端数株
主となる場合に
は、みなし配当
の額が生ずる自
己株式の取得に
該当しない。
(注1) 法法24①四の規定により、みなし配当の額が生ずる自己株式の取得に該当しない。
(注2) 法令23③九の規定により、みなし配当の額が生ずる自己株式の取得に該当しない。
一 全部取得条項付種類株式を取得するの
(参考)
○ 会社法(抄)
と引換えに金銭等を交付するときは、当
(全部取得条項付種類株式の取得に関する決
定)
該金銭等
(以下この条において
「取得対価」
という。
)についての次に掲げる事項
第171条 全部取得条項付種類株式(第108条
イ 当該取得対価が当該株式会社の株式
第1項第7号に掲げる事項についての定めが
であるときは、当該株式の種類及び種類
ある種類の株式をいう。以下この款において
ごとの数又はその数の算定方法
同じ。
)を発行した種類株式発行会社は、株
ロ 当該取得対価が当該株式会社の社債
主総会の決議によって、全部取得条項付種
(新株予約権付社債についてのものを除
類株式の全部を取得することができる。この
く。
)であるときは、当該社債の種類及
場合においては、当該株主総会の決議によっ
び種類ごとの各社債の金額の合計額又
て、次に掲げる事項を定めなければならない。
はその算定方法
─ 341 ─
―法人税法の改正―
ハ 当該取得対価が当該株式会社の新株
決権を行使することができるものに限る。
)
予約権(新株予約権付社債に付された
二 当該株主総会において議決権を行使する
ものを除く。
)であるときは、当該新株
ことができない株主
予約権の内容及び数又はその算定方法
2 株式会社は、裁判所の決定した価格に対す
ニ 当該取得対価が当該株式会社の新株
る取得日後の年6分の利率により算定した利
予約権付社債であるときは、当該新株予
息をも支払わなければならない。
約権付社債についてのロに規定する事
項及び当該新株予約権付社債に付され
⑶ 適用関係
上記⑵①の改正は、平成20年4月30日以後に
た新株予約権についてのハに規定する
行われる取得決議について適用し、同日前に行
事項
われた取得決議については従前どおりとされて
ホ 当該取得対価が当該株式会社の株式
います(改正法附則18)。
等以外の財産であるときは、当該財産の
上記⑵②の改正は、平成20年4月30日以後に
内容及び数若しくは額又はこれらの算
行われる取得決議により交付を受ける有価証券
定方法
二 前号に規定する場合には、全部取得条項
ついて適用し、同日前に行われた取得決議によ
付種類株式の株主に対する取得対価の割
り交付を受けた有価証券ついては従前どおりと
当てに関する事項
されています(改正法令附則13②)。
三 株式会社が全部取得条項付種類株式を
上記⑵③の改正は、平成20年4月30日以後に
取得する日(以下この款において「取得日」
行われる取得決議について適用することとされ
という。)
ています(改正法令附則8)。
2 前項第2号に掲げる事項についての定めは、
株主(当該株式会社を除く。
)の有する全部
取得条項付種類株式の数に応じて取得対価
3 適格合併等の範囲
⑴ 改正前の制度の概要
を割り当てることを内容とするものでなけれ
合併等(合併、分割若しくは現物出資又は株
式交換若しくは株式移転をいいます。3におい
ばならない。
3 取締役は、第1項の株主総会において、全
て同じです。)が適格合併等(適格合併、適格
部取得条項付種類株式の全部を取得するこ
分割若しくは適格現物出資又は適格株式交換若
とを必要とする理由を説明しなければならな
しくは適格株式移転をいいます。3において同
い。
じです。)に該当する場合には、その合併等に
より移転する資産等の譲渡損益の計上を繰り延
(裁判所に対する価格の決定の申立て)
第172条 前条第1項各号に掲げる事項を定め
べることとされています(なお、株式交換又は
た場合には、次に掲げる株主は、同項の株主
株式移転にあっては、適格株式交換又は適格株
総会の日から20日以内に、裁判所に対し、株
式移転に該当しない場合に限り、株式交換完全
式会社による全部取得条項付種類株式の取
子法人又は株式移転完全子法人の有する一定の
得の価格の決定の申立てをすることができる。
資産について時価評価損益を計上することとさ
一 当該株主総会に先立って当該株式会社
れています)。この適格合併等とは、企業グル
による全部取得条項付種類株式の取得に
ープ内の合併等及び共同事業を営むための合併
反対する旨を当該株式会社に対し通知し、
等をいい、共同事業を営むための合併等とは、
かつ、当該株主総会において当該取得に
事業の関連性、主要な資産及び負債の引継ぎ、
反対した株主(当該株主総会において議
従業者の引継ぎ、事業の継続、株式の継続保有
─ 342 ─
―法人税法の改正―
等の要件に該当する合併等をいうこととされて
がある法人(いわゆる親法人)を含むことと
います(法法2十二の八∼十二の十四・十二の
されています。
十六・十二の十七、法令4の2)
。
② 分割型分割
株式の継続保有要件を判定する算式が次の
とおりとされました(法令4の2⑧六イ)。
⑵ 改正の内容
共同で事業を営むための合併等の要件のうち、
株式の継続保有要件について、次のとおり改正
(注) 分割承継親法人株式が交付される場合につ
いても同様です。また、分割型分割後に適格
が行われました。
合併が行われることが見込まれている場合に
① 合併
おける取扱いについては省略しています。
株式の継続保有要件を判定する算式が次の
とおりとされました(法令4の2④五)
。
【改正前】
(注) 合併親法人株式が交付される場合について
分割型分割により交付を受ける分割
も同様です。また、合併後に適格合併が行わ
承継法人株式(議決権のないものを
除く。)の全部を継続して保有する
ことが見込まれる者が有する分割法
人の株式(議決権のないものを除
く。
)の数を合計した数
れることが見込まれている場合における取扱
いについては省略しています。
【改正前】
分割法人の発行済株式(議決権のな
いものを除く。)の総数
合併により交付を受ける合併法人株
式(合併法人以外の株主等が交付を
受けるもので議決権のないものを除
く。)の全部を継続して保有するこ
とが見込まれる者が有する被合併法
人の株式(議決権のないものを除
く。)の数を合計した数
被合併法人の発行済株式(みなし割
当てのあるもの及び議決権のないも
【改正後】
≧ 80%
のを除く。)の総数
被合併法人の発行済株式(議決権の
ないものを除く。)の総数
分割型分割により交付を受ける分割
承継法人株式(議決権のないものを
除く。)の全部を継続して保有する
ことが見込まれる者及び分割承継法
人(注)が有する分割法人の株式(議
決権のないものを除く。)の数を合
計した数
分割法人の発行済株式(議決権のな
いものを除く。)の総数
【改正後】
合併により交付を受ける合併法人株
式(議決権のないものを除く。)の
全部を継続して保有することが見込
まれる者及び合併法人(注)が有する
被合併法人の株式(議決権のないも
のを除く。)の数を合計した数
≧ 80%
≧ 80%
(注) 分割法人の株主が分割承継親法人株式の交
付を受ける場合にあっては、上記算式の分子
の分割承継法人には、分割承継法人の株式の
全部を保有する関係として法令4の2⑤に規
≧ 80%
定する関係がある法人(いわゆる親法人)を
含むこととされています。
③ 株式交換
(注) 被合併法人の株主が合併親法人株式の交付
を受ける場合にあっては、上記算式の分子の
株式の継続保有要件を判定する算式が次の
とおりとされました(法令4の2⑰五)。
合併法人には、合併法人の株式の全部を保有
(注) 株式交換完全支配親法人株式が交付される
する関係として法令4の2①に規定する関係
場合についても同様です。また、株式交換後
─ 343 ─
―法人税法の改正―
に適格合併が行われることが見込まれている
(注) 株式交換完全子法人の株主が株式交換完
場合における取扱いについては省略していま
全支配親法人株式の交付を受ける場合にあ
す。
っては、上記算式の分子の株式交換完全親法
人には、株式交換完全親法人の株式の全部を
【改正前】
保有する関係として法令4の2⑭に規定する
株式交換により交付を受ける株式交
換完全親法人株式(議決権のないも
のを除く。)の全部を継続して保有
することが見込まれる者が有する株
式交換完全子法人の株式(議決権の
ないものを除く。)の数を合計した
数
株式交換完全子法人の発行済株式
関係がある法人(いわゆる親法人)を含むこ
ととされています。
株式の継続保有要件は、移転資産に対する
株式の所有を通じた支配(間接支配)の継続
性を判定するための要件であるところ、合併
法人又は分割承継法人は移転資産そのものを
≧ 80%
直接的に継続支配するもの(事業継続要件(法
(株式交換完全親法人が有するもの、
株式交換完全親法人により発行済株
式の総数の100分の50を超える数の
株式を保有されている法人が有する
もの及び議決権のないものを除く。)
の総数
令4の2④四、⑧五)により担保)であり、
株式交換完全親法人は株式交換完全子法人を
直接的に継続支配するもの(株式交換完全親
法人の株式継続保有要件(法令4の2⑰六)
により担保)であること、また、親法人は合
併法人、分割承継法人又は株式交換完全親法
【改正後】
人を直接的に継続支配するもの(法令4の2
①④⑭)であることから、合併法人、分割承
株式交換により交付を受ける株式交
換完全親法人株式(議決権のないも
のを除く。)の全部を継続して保有
することが見込まれる者及び株式交
換完全親法人(注)が有する株式交換
完全子法人の株式(議決権のないも
のを除く。)の数を合計した数
株式交換完全子法人の発行済株式
(株式交換完全親法人により発行済
株式の総数の100分の50を超える数
の株式を保有されている法人が有す
継法人若しくは株式交換完全親法人又は親法
人の有していた被合併法人、分割法人又は株
式交換完全子法人の株式を、常に上記算式の
分子に含むこととされたものです。
≧ 80%
るもの及び議決権のないものを除
く。)の総数
親子間で分割型分
割が行われた場合
の株式継続保有要
件の割合計算
【前提】
交付を受けるA 株式(自己株式)の継続保有見込みなし
分割承継法人A
移転
資産等
10 株保有
A株式
分割法人B
<改正後>
<改正前>
0 株+ 10 株
0株
= 0
= 100%
10 株
10 株
要件満たさない
※発行済株式
10 株
(注) 分割時点で 100%支配関係にある法人間の
分割型分割でも、分割後の 100%支配関係の
継続見込みがない場合には、共同事業要件の
判定をすることとなる。
─ 344 ─
―法人税法の改正―
また、この改正に伴い、合併、分割型分割
のその消滅の直前のその消滅をした新株予
又は株式交換により被合併法人、分割法人又
約権の帳簿価額に相当する金額
は株式交換完全子法人の株主が交付を受けた
ロ 適格株式交換に該当しない株式交換…株
株式が会社法第135条等の規定によりその保
式交換完全子法人のその株式交換により消
有の制限をされるものである場合のその株主
滅をした新株予約権に代えて株式交換完全
が有していた被合併法人、分割法人又は株式
親法人の新株予約権を交付した場合のその
交換完全子法人の株式のうち、合併法人、分
新株予約権の価額に相当する金額
割承継法人又は株式交換完全親法人が有して
株式移転においても同様とされています(法
いたものが、上記算式の分母の発行済株式に
令8①十二)。
含まれないものとされる株式から除外されま
した(法規3の2③)
。
⑵ 改正の内容
株式交換により増加する株式交換完全親法人
の資本金等の額の計算の基礎となる株式交換完
⑶ 適用関係
上記⑵の改正は、法人が平成20年4月30日以
全子法人の株式の取得価額(法令119①九の取
後に行う合併、分割型分割又は株式交換につい
得価額)にその株式の取得をするために通常要
て適用し、法人が同日前に行った合併、分割型
する費用の額が含まれている場合には、その費
分割又は株式交換については従前どおりとされ
用の額を控除した金額とすることが明確化され
ています(改正法令附則3)
。
ました(法令8①十一)。
また、上記⑴②の債権を取得する場合には、
4 株式交換又は株式移転により増加する
資本金等の額
その債権の価額を上記⑴②イ又はロの金額から
⑴ 改正前の制度の概要
た(法令8①十一)。これは、平成19年11月15
減算する(改正前:控除する)こととされまし
株式交換により増加する株式交換完全親法人
日に企業会計基準委員会から公表された「企業
の資本金等の額は、株式交換完全子法人の株式
結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する
の取得価額から、次の①及び②の金額の合計額
適用指針」の改正において企業結合に際し旧新
(株式交換完全支配親法人株式を交付した場合
株予約権者に交付する新株予約権が取得の対価
にあっては、②にその株式交換完全支配親法人
に準じて処理することとされたことなどを踏ま
株式の適格株式交換の直前の帳簿価額を加算し
え、株式交換は株式交換完全子法人の株主及び
た金額)を減算した金額とされています(法令
新株予約権者の双方から株式交換完全子法人を
8①十一)
。
取得するものであるという考え方を徹底したも
① 株式交換により交付した株式交換完全親法
のです。
人の株式以外の資産の価額
株式移転についても同様の改正が行われまし
② 次のイ又はロの金額(その株式交換に伴い
た(法令8①十二)。
株式交換完全親法人がその交付した新株予約
権に対応する債権を取得する場合には、その
⑶ 適用関係
債権の価額を控除した金額)
上記⑵の改正は、法人が平成20年4月30日以
イ 適格株式交換…株式交換完全子法人のそ
の適格株式交換により消滅した新株予約権
に代えて株式交換完全親法人の新株予約権
を交付した場合のその株式交換完全子法人
─ 345 ─
後に行う株式交換又は株式移転について適用す
ることとされています(改正法令附則5①)。
―法人税法の改正―
入することとされています(法法62の8④∼⑧)。
5 非適格合併等による調整勘定の益金又
は損金算入
上記の非適格合併等とは、次に掲げるものを
いうこととされています(法法62の8①、法令
123の10①)。
⑴ 改正前の制度の概要
法人が非適格合併等により被合併法人等から
① 適格合併に該当しない合併
資産又は負債の移転を受けた場合において、そ
② 適格分割に該当しない分割、適格現物出資
の法人が交付した非適格合併等対価額がその移
に該当しない現物出資若しくは事業の譲受け
転を受けた資産及び負債の時価純資産価額を超
のうち、移転法人の直前において営む事業及
えるときはその超える部分の金額を資産調整勘
びその事業に係る主要な資産又は負債のおお
定の金額とし、被合併法人等から引継ぎを受け
むね全部が分割承継法人、現物出資法人又は
た従業者につき退職給与債務引受けをしたとき
譲受け法人に移転をするもの
はその退職給与債務引受けに係る金額を退職給
与負債調整勘定の金額とし、被合併法人等から
⑵ 改正の内容
移転を受けた事業に係る将来の債務のうち一定
事業の譲受けのうち適格事後設立が制度の対
ものについてその法人がその履行に係る負担の
象となる非適格合併等の範囲に含まれないこと
引受けをしたときはその債務の額に相当する金
が明確化されました(法令123の10①)。
額を短期重要負債調整勘定の金額とし、その法
人が交付した非適格合併等対価額がその移転を
⑶ 適用関係
受けた資産及び負債の時価純資産価額に満たな
上記⑵の改正は、平成20年4月30日以後に行
いときはその満たない部分の金額を差額負債調
われる事業の譲受けについて適用し、同日前に
整勘定の金額とすることとされています(法法
行われた事業の譲受けについては従前どおりと
62の8①∼③)
。これらの調整勘定の金額は一
されています(改正法令附則16④)。
定の方法で減額し、益金の額又は損金の額に算
五 企業再生関係税制
特定の事実とは、次に掲げるものとされてい
1 改正前の制度の概要
ます(法法25③、33③、法令24の2①、68の2
⑴ 民事再生等の場合の資産の評価益又は評価損
①)。
① 民事再生法の規定による再生計画認可の決
の益金又は損金算入
法人について民事再生法の規定による再生計
定があったこと。
画認可の決定があったこと等特定の事実が生じ
② ①に準ずる事実(その債務処理に関する計
た場合において、その法人がその有する資産の
画がイからハまで及びニ又はホに掲げる要件
価額につき①の事実が生じた時の価額による評
に該当するものに限ります。)
定又は②イの準則による資産評定を行っている
イ 一般に公表された債務処理を行うための
ときは、その資産の評価益の額又は評価損の額
手続についての準則に従って策定されてい
は、その特定の事実が生じた日の属する事業年
ること。
度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の
ロ 債務者の有する資産及び負債につきイの
額に算入することとされています(法法25③、
準則のうちに定められた資産評定に関する
33③)
。
事項に従って資産評定が行われ、その資産
─ 346 ─
―法人税法の改正―
評定による価額を基礎とした債務者の貸借
免除を受けた場合のその債務の免除を受けた
対照表が作成されていること。
金額
ハ ロの貸借対照表における資産及び負債の
ロ その事実が生じたことに伴いその法人の役
価額、その計画における損益の見込み等に
員等から金銭等の贈与を受けた場合のその贈
基づいて債務者に対して債務の免除をする
与を受けた金銭等の額
金額が定められていること。
ハ 上記⑴の制度の適用による資産の評価益の
ニ 2以上の金融機関等(次に掲げる者をい
益金算入額から評価損の損金算入額を減算し
い、その計画に係る債務者に対する債権が
投資事業有限責任組合契約等に係る組合財
産である場合におけるその投資事業有限責
任組合契約等を締結している者を除きま
た金額
2 改正の内容
⑴ 債務処理計画の要件の改正
す。
)が債務の免除をすることが定められ
上記1⑴②ニの金融機関等の範囲に信用保証
ていること。
協会が追加されました(法令24の2①四ホ)。
e 預金保険法第2条第1項各号に掲げる
近年の企業倒産の状況は、バラつきはあるもの
金融機関(協定銀行を除きます。
)
の全国的に中小・零細企業について増加してお
り、企業再生の対象となる企業の地方化・小規
[ 農水産業協同組合貯金保険法第2条第
1項に規定する農水産業協同組合
模化が進んでいます。こうした中で、今般の改
f 保険業法第2条第2項に規定する保険
正により、わが国の中小企業の約4割の先に信
会社及び同条第7項に規定する外国保険
用保証を行う信用保証協会(全国に52協会が存
会社等
在)が代位弁済により取得した求償権について
ホ 政府関係金融機関若しくは協定銀行が有
民事再生法に準ずる私的整理による債務処理計
する債権又は協定銀行が信託の受託者とし
画に基づき他の金融機関等とともに債権放棄を
て有する債権につき債務の免除をすること
行った場合に貸出先である債務者が資産の評価
が定められていること。
損益の計上及び青色欠損金等以外の繰越欠損金
の優先控除の適用を受けられることとなり、早
期の企業再生に資することとなると考えられま
⑵ 民事再生等による債務免除等があった場合の
す。また、2以上の金融機関等による債権放棄
欠損金の損金算入
法人について民事再生法の規定による再生手
が要件とされているのは、複数の利害関係者の
続開始の決定があったこと等の事実が生じた場
調整が行われることで再生計画の合理性を担保
合において、上記⑴の適用を受けるときは、繰
することにありますが、信用保証協会は都道府
越欠損金額で一定のもののうち、次のイからハ
県等が出資をする認可法人であり、協会が保証
までの金額の合計額(青色欠損金の繰越控除規
した保証債務について代位弁済を行った場合に
定(法法57①)及び災害損失欠損金の繰越控除
は求償権の回収に努めており(中小企業信用保
規定(法法58①)並びにこの制度の適用前の所
険法第7条)、企業の再生・破綻に際しても債
得の金額が限度となります。
)に達するまでの
権者として経済合理的に行動する能力に足りる
金額は、その事業年度の所得の金額の計算上、
ことからも債権放棄を行う金融機関等と同列に
損金の額に算入することとされています(法法
扱われるものと考えられます。
59②)
。
イ その事実が生じた時においてその法人に対
⑵ 政策金融改革に伴う整備
し債権を有する者からその債権につき債務の
─ 347 ─
上記⑴のほか政策金融改革に伴う所要の措置
―法人税法の改正―
が講じられました。具体的には、上記1⑴②ニ
平成20年10月1日に株式会社化されることとな
の金融機関等の範囲に株式会社日本政策投資銀
ります。なお、株式会社商工組合中央金庫につ
行が加えられました
(法令24の2①四ニ)
。また、
いては、同法による預金保険法の改正により上
上記1⑴②ホの政府関係金融機関については株
記1⑴②ニeの預金保険法第2条第1項各号に
式会社日本政策金融公庫及び沖縄振興開発金融
掲げる金融機関に加えられています。
公庫をいうこととされました
(法令24の2②一)
。
(注) 平成19年5月18日に「株式会社日本政策金融
3 適用関係
公庫法(平成19年法律第57号)
」が成立したこ
⑴ 上記2⑴の改正は、平成20年4月1日以後に
とにより、
平成20年10月1日に国際協力銀行(国
再生計画認可の決定に準ずる事実が生ずる場合
際金融等業務)
、国民生活金融公庫、農林漁業
について適用することとされています(改正法
金融公庫及び中小企業金融公庫が統合され、
令附則9②)。
⑵ 上記2⑵の改正は、平成20年10月1日以後に
株式会社日本政策金融公庫となります。
また、日本政策投資銀行及び商工組合中央金
再生計画認可の決定に準ずる事実が生ずる場合
庫は、平成19年6月6日に「株式会社日本政策
について適用し、同日前に当該事実が生じた場
投資銀行法(平成19年法律第85号)
」が、同年
合については従前どおりとされています(改正
5月25日に「株式会社商工組合中央金庫法(平
法令附則9①)。
成19年法律第74号)
」が成立したことにより、
六 その他
1 自己の株式の取得により減少する資本
金等の額
なした場合にその自己の株式が法人税法施行
令第119条第1項第5号から第8号まで又は
第25号に掲げる有価証券に該当するときにお
けるその自己の株式については、これらの号
⑴ 改正前の制度の概要
法人が自己の株式の取得等をした場合におい
に定める金額(同項第5号から第8号までに
て、その取得等の事由が法人税法第24条第1項
掲げる有価証券に該当する場合にあっては、
第4号に規定する政令で定める事由に該当する
その交付を受けるために要した費用の額を除
等のとき(すなわち、配当等の額とみなされる
きます。)に相当する金額の資本金等の額を
金額が生じないとき)は、その取得の対価の額
減算することとされました(法令8①二十一
に相当する金額の資本金等の額を減算すること
イ)。具体的には、合併、分割型分割、分社
とされています。ただし、適格合併による引継
型分割又は株式交換のうち、旧株(分社型分
ぎ等の一定の場合には、被合併法人のその移転
割の場合には、移転資産等)の譲渡損益の計
の直前の帳簿価額等一定の金額とされています
上が繰り延べられるものの対価として自己の
(法令8①二十一)
。
株式の交付を受けた場合には、旧株(分社型
分割の場合には、移転資産等)の直前の帳簿
価額に相当する金額(配当等の額とみなされ
⑵ 改正の内容
上記⑴のただし書きの場合の減算する資本金
る金額がある場合には、そのみなされる金額
等の額について、次のとおり規定の整備が行わ
を加算した金額)の資本金等の額を減算する
れました(法令8①二十一)
。
こととなります。また、剰余金の配当等によ
① その取得をした自己の株式を有価証券とみ
り自己の株式の交付を受けた場合や、旧株又
─ 348 ─
―法人税法の改正―
は移転資産の譲渡損益の計上が繰り延べられ
結子法人の株式を有するすべての連結法人は、
ない合併、分割型分割、株式交換、株式移転、
その譲渡等の処理の前に、その連結子法人の株
組織変更等の対価として自己の株式の交付を
式につきその連結子法人の連結期間中の連結個
受けた場合には、その交付を受けた時の価額
別利益積立金額の増加額又は減少額に相当する
に相当する金額の資本金等の額を減少するこ
金額の帳簿価額の修正を行うとともに、自己の
ととなります。
連結個別利益積立金額又は利益積立金額(以下
② 法人税法施行令第123条の3第4項、第123
「利益積立金額等」といいます。)につきその修
条の4又は第123条の5に規定するときにお
正金額に相当する金額の増加又は減少の調整を
けるこれらの規定に規定する資産に含まれる
行うこととされています(法令9①四、②∼⑤、
自己の株式については、同令第123条の3第
9の2①四、②③、119の3⑤、119の4①)。
4項に規定する帳簿価額、同令第123条の4
① 他の連結法人の株主である連結法人のいず
に規定する帳簿価額又は同令第123条の5に
れかが他の連結法人の株式について譲渡(適
規定する帳簿価額に相当する金額(その取得
格合併による譲渡等一定のものを除きます。)
のために要した費用の額が含まれている場合
によりその全部又は一部を有しなくなること。
には、その費用の額を控除した金額)に相当
② 他の連結法人の株主である連結法人のいず
する金額の資本金等の額を減算することとさ
れかが他の連結法人の株式について評価換え
れました(法令8①二十一ロ)
。具体的には、
等を行ったこと。
適格合併、適格分割型分割、適格分社型分割
③ 他の連結法人の株主である連結法人のいず
又は適格現物出資により被合併法人、分割法
れかと他の連結法人との間に連結完全支配関
人又は現物出資法人から移転を受けた資産の
係がなくなること(①に掲げる事由、適格合
うちに自己の株式が含まれていた場合には、
併に基因して連結完全支配関係がなくなるこ
被合併法人、分割法人又は現物出資法人のそ
と等一定の事由を除きます。)。
の移転の直前の帳簿価額に相当する金額の資
④ 連結法人が他の連結法人(以下「発行法人」
本金等の額を減算することとなります。
といいます。)の株式を保有している場合に
この改正は、
「自己の株式の取得価額に相
おいて、その発行法人の株式を直接又は間接
当する金額の資本金等の額を減算する」とい
に保有している連結法人(その発行法人との
う制度本来の趣旨にかんがみ、規定の方法を
間に連結完全支配関係がある法人に限り、連
資産の取得価額の規定を用いる方法に変更し
結親法人を除きます。)を他の連結法人とし、
たものであり、内容の改正を伴うものではあ
かつ、その連結法人の株式を他の連結法人の
りません。
株式としたときに、その連結法人の株式を保
有している連結法人につき①から③までに掲
げる事由が生じたこと。
⑶ 適用関係
上記⑵の改正は、法人が平成20年4月30日以
後に行う自己の株式の取得について適用するこ
⑵ 改正の内容
ととされています(改正法令附則5①)
。
連結法人の有する他の連結法人の株式の譲渡
に基因してその連結法人と他の連結法人との間
2 連結子法人株式の帳簿価額の修正
に連結完全支配関係がなくなる場合には、上記
⑴ 改正前の制度の概要
⑴①ではなく上記⑴③の事由に該当することが
連結法人が有する連結子法人の株式について
次の事由が生ずることとなる場合には、その連
─ 349 ─
明確化されました(法令9②)。
他の連結法人の株式の帳簿価額及び利益積立
―法人税法の改正―
金額等の修正(以下「投資簿価修正」といいま
渡若しくは消滅又は受取若しくは支払がなく、
す。
)は、上記⑴①から④までに掲げる事由が
かつ、そのデリバティブ取引等がヘッジ対象資
生ずる前に行うこととされていますが、連結完
産等損失額を減少させるために有効であると認
全支配関係がなくなる場合の投資簿価修正につ
められるときは、そのデリバティブ取引等に係
いては、仮に離脱後に投資簿価修正の処理を行
る利益額又は損失額の計上を繰り延べることと
うこととなると、離脱と同時に他の連結納税グ
されています(法法61の6①)。また、その繰
ループに加入する場合に、旧連結納税グループ
り延べられた利益額又は損失額は、ヘッジ対象
に関する投資簿価修正の額が新連結納税グルー
資産等の譲渡若しくは消滅又は受払予定金銭の
プの投資簿価修正の額の計算の基礎に含まれる
受取若しくは支払があった場合にはそのあった
こととなるなど、制度趣旨に合致しないため、
日の属する事業年度において、非適格合併、非
旧連結納税グループから離脱する前にその処理
適格分割、非適格現物出資又は非適格事後設立
を行う必要があると考えられます。今回の改正
(以下「非適格組織再編成」といいます。)によ
により、連結法人の有する他の連結法人の株式
り合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又
の譲渡に基因してその連結法人と他の連結法人
は被事後設立法人がその受払予定金銭を受け取
との間に連結完全支配関係がなくなる場合の投
り、又は支払うこととなる場合にはその合併の
資簿価修正について、譲渡の直前(すなわち譲
日の前日、その分割型分割の日の前日、その分
渡の日)ではなく連結完全支配関係を有しなく
社型分割の日、その現物出資の日又はその事後
なる直前(すなわち譲渡の日の前日)にその処
設立の日の属する事業年度において、それぞれ
理を行うことが明確化されました。
計上することとされています(法令121の5①)。
また、この改正に伴い、上記⑴①に掲げる事
由から除外される事由について規定の整備が行
⑵ 改正の内容
われています(法令9②一)
。
法人が事業の全部又は一部を譲渡したことそ
の他の事由(適格合併、適格分割、適格現物出
資又は適格事後設立を除きます。)によりその
⑶ 適用関係
上記⑵の改正は、連結法人が平成20年4月30
法人以外の者が受払予定金銭を受け取り、又は
日以後に行う他の連結法人の株式の譲渡につい
支払うこととなる場合に、その事由が生じた日
て適用し、連結法人が同日前に行った他の連結
(その事由が非適格合併又は非適格分割型分割
法人の株式の譲渡については従前どおりとされ
である場合には、その合併又はその分割型分割
ています(改正法令附則6⑤)
。また、同日前
の日の前日)の属する事業年度において繰り延
に他の連結法人の株式を譲渡したことにより他
べられた利益額又は損失額を計上することとさ
の連結法人との間に連結完全支配関係がなくな
れました(法令121の5①)。すなわち、合併、
った場合については従前どおりとされています
分割、現物出資又は事後設立以外の事由により
(改正法令附則6⑥)
。
その法人以外の者が受払予定金銭を受け取り、
又は支払うこととなる場合にも、繰り延べられ
3 繰延ヘッジ処理による利益額又は損失
額の繰延べ
た利益額又は損失額を計上することが明確化さ
れました。
⑴ 改正前の制度の概要
法人がヘッジ対象資産等損失額を減少させる
⑶ 適用関係
ためにデリバティブ取引を行った場合において、
ヘッジ対象資産等又は受払予定金銭について譲
─ 350 ─
上記⑵の改正は、平成20年4月30日後に上記
⑵の事由が生ずる場合について適用し、同日以
―法人税法の改正―
前に非適格組織再編成が行われた場合について
は従前どおりとされています(改正法令附則
15)
。
5 その他
⑴ 残余財産の分配に係る配当等の額とみなす金
額について、払戻対応資本金額等の計算上その
4 外貨建取引の換算
分配の直前の資本金等の額に乗ずる割合は、そ
の分配の直前の資本金等の額が0を超え、かつ、
⑴ 改正前の制度の概要
法人が外貨建資産等の取得又は発生の基因と
残余財産の全部の分配を行う場合には、1とす
なった外貨建取引を行った場合(合併、分割、
ることが明確化されました(法令23①三)。
現物出資又は事後設立により外貨建資産等の移
⑵ リース取引に該当するかどうかの判定に関す
転を受けた場合を含みます。
)には、申告書の
る要件のうちいわゆるフルペイアウト要件の形
提出期限までに、期末換算方法の届出をしなけ
式基準(賃借料の金額の合計額/資産の取得の
ればならないこととされています
(法令122の5)
。
ために通常要する価額≧100分の90)の適用に
なお、外貨建取引とは、外国通貨で支払が行わ
当たっては、算式の分母にその資産を事業の用
れる資産の販売、購入、役務の提供、金銭の貸
に供するために要する費用の額(賃貸借資産の
付け及び借入れ、剰余金の配当その他の取引を
取得に要する資金の利子、固定資産税、保険料
いうこととされています(法法61の8①)
。
等がこれに該当すると考えられます。)を含む
ことが明確化されました(法令131の2②)。ま
た、法人税法第64条の2第2項の規定により金
⑵ 改正の内容
期末換算方法の届出をしなければならない場
銭の貸付けがあったものとされる場合(いわゆ
合について、外貨建資産等の取得(適格合併又
るセール・アンド・リースバック取引に該当す
は適格分割型分割による引継ぎを含みます。
)
る場合)の賃貸に係る資産につき譲渡人が賃借
をした場合とされました(法令122の5)
。すな
料として経理した金額は償却費として損金経理
わち、合併、分割、現物出資及び事後設立以外
をした金額に含まれることが法令上明示されま
の事由により外貨建資産等の移転を受けた場合
した(法令131の2③)。
についても期末換算方法の届出をしなければな
⑶ 適格退職年金契約に係る予定利率については、
らないことが明確化されました。
国債の金利動向を勘案して定める「基準利率以
上」で設定することとされていますが、今回の
改正において、その基準利率が年1.6%(改正前:
⑶ 適用関係
上記⑵の改正は、法人の平成20年4月1日以
1.7%)に引き下げられました(法規附則5④)。
後に開始する事業年度の所得に対する法人税に
⑷ 公共法人の範囲について、日本年金機構が追
ついて適用し、法人の同日前に開始した事業年
加されるとともに、独立行政法人緑資源機構が
度の所得に対する法人税ついては従前どおりと
除外されました(法法別表第1、平15.9.30財
されています(改正法令附則2)
。
務告606号)。
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