リサイクルハイブリッドシステム開発 プロジェクト評価 - 経済産業省

第22回評価小委員会
資料5−3−1
エネルギー使用合理化製錬/リサイクルハイブリッドシステム開発
プロジェクト評価(事後)報告書
(案)
平成19年12月
産業構造審議会産業技術分科会
評
価
小
委
員
会
は
じ
め
に
研究開発の評価は、研究開発活動の効率化・活性化、優れた成果の獲得や社会・経済
への還元等を図るとともに、国民に対して説明責任を果たすために、極めて重要な活動
であり、このため、経済産業省では、
「国の研究開発評価に関する大綱的指針」
(平成1
7年3月29日、内閣総理大臣決定)等に沿った適切な評価を実施すべく「経済産業省
技術評価指針」(平成17年4月1日改定)を定め、これに基づいて研究開発の評価を
実施している。
資源エネルギー庁の補助により独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構におい
て平成14年度より平成18年度まで実施した「エネルギー使用合理化製錬/リサイクルハイ
ブリッドシステム開発」は、ハイブリッド自動車用使用済ニッケル水素電池及び自動車シュレ
ッダーダストから有価金属をリサイクルする際の処理プロセスの見直し等により、エネ
ルギー使用を合理化しつつ、効率的なリサイクルを可能とする技術を確立するため、実
施したものである。
今回の評価は、
「エネルギー使用合理化製錬/リサイクルハイブリッドシステム開発」の事後評価で
あり、実際の評価に際しては、省外の有識者からなる「エネルギー使用合理化製錬/リ
サイクルハイブリッドシステム開発」事後評価検討会(座長:藤田 豊久 東京大学 地球システム
工学専攻教授)を開催した。
当該検討会では、当該分野に関わる国内外の研究開発動向や社会情勢の変化も踏まえ
つつ、プロジェクトの目的・政策的位置付け、目標・計画内容、研究開発体制や運営状
況、成果の意義、実用化の可能性や波及効果、今後の展開等について評価を実施した。
今般、当該検討会における検討結果が評価報告書の原案として産業構造審議会産業技
術分科会評価小委員会(小委員長:平澤
泠
東京大学名誉教授)に付議され、内容を
審議し、了承された。
本書は、これらの評価結果を取りまとめたものである。
平成19年12月
産業構造審議会 産業技術分科会 評価小委員会
産業構造審議会産業技術分科会評価小委員会
委 員 名 簿
小委員長 平澤
泠
東京大学名誉教授
池村 淑道
長浜バイオ大学バイオサイエンス学部教授
伊澤 達夫
NTTエレクトロニクス株式会社相談役
菊池 純一
青山学院大学法学部・大学院法学研究科ビジネス法務専攻
教授
鈴木
潤
芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科教授
冨田 房男
放送大学北海道学習センター所長
畑村 洋太郎
工学院大学国際基礎工学科教授
山地 憲治
東京大学大学院工学系研究科教授
吉本 陽子
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
経済・社会政策部経済・産業調査グループ主任研究員
(敬称略:五十音順)
事務局:経済産業省 産業技術環境局 技術評価調査課
エネルギー使用合理化製錬/リサイクルハイブリッドシステム開発プロジェクト
評価(事後)検討会
委 員 名 簿
(平成19年7月現在)
委員長
藤田
豊久
東京大学
地球システム工学専攻
委員
浅川
和仁
社団法人日本自動車工業会
〃
伊藤
公久
早稲田大学
〃
香取
義重
株式会社三菱総合研究所
〃
神保
至
東海大学
理工学術院
工学研究科
教授
環境統括部
副部長
教授
科学技術研究本部
金属材料工学専攻
参与
教授
(敬称略、五十音順)
事務局:経済産業省
資源エネルギー庁
資源・燃料部
鉱物資源課
エネルギー使用合理化製錬/リサイクルハイブリッドシステム開発プロジェクト
の評価に係る省内関係者
【事後評価時】
資源エネルギー庁
産業技術環境局
鉱物資源課長
矢島
技術評価調査課長
敬雅(事業担当課長)
本橋
克広
【中間評価時】
資源エネルギー庁
産業技術環境局
鉱物資源課長
朝日
技術評価調査課長
弘(事業担当課長)
陣山
繁紀
【事前評価時】
(事業初年度予算要求時)
資源エネルギー庁
鉱物資源課長
本城 薫(事業担当課長)
エネルギー使用合理化製錬/リサイクルハイブリッドシステム開発プロジェクト評価(事後)
審 議 経 過
○第1回事後評価検討会(平成19年6月19日)
・評価の在り方及び評価の手順等について
・評価報告書の構成(案)、評価コメント、評点法等について
・プロジェクトの概要説明について
・質疑応答
○第2回事後評価検討会(平成19年7月27日)
・報告書(案)について
・質疑応答
○産業構造審議会産業技術分科会評価小委員会(平成19年12月25日)
・報告書(案)について
・質疑応答
目
次
はじめに
産業構造審議会産業技術分科会評価小委員会
プロジェクト評価(事後))検討会
委員名簿
委員名簿
プロジェクトの評価に係る省内関係者
プロジェクト評価(事後)
審議経過
ページ
評価報告書概要
第1章
……………………………………………………………………
ⅰ
評価の実施方法
1.評価目的
……………………………………………………………………
1
………………………………………………………………………
1
3.評価対象
……………………………………………………………………
2
4.評価方法
……………………………………………………………………
2
2.評価者
5.評価項目、評価基準
第2章
………………………………………………………
プロジェクトの概要
1.事業の目的・政策的位置付け
2.研究開発等の目標
……………………………………………
5
…………………………………………………………
11
………………………………………………………
17
3.成果、目標の達成度
4.事業化、波及効果について
………………………………………………
5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等
6.成果の普及、広報
第3章
24
…………………
26
…………………………………………………………
43
評価
1.事業の目的・政策的位置付けの妥当性
2.研究開発等の目標の妥当性
3.成果、目標の達成度の妥当性
…………………………………
45
………………………………………………
46
……………………………………………
46
4.事業化、波及効果についての妥当性
……………………………………
5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等の妥当性
6.総合評価
47
………
48
……………………………………………………………………
49
7.今後の研究開発の方向等に関する提言
8.個別要素技術について
第4章
2
評点法による評点結果
………………………………
50
…………………………………………………
51
…………………………………………………
54
参考資料
資料A.研究開発実施者提供資料
事
プロジェクト名
後
評
価
報
告
書
概
要
エネルギー使用合理化製錬/リサイクルハイブリッドシステム開発
上位施策名
社会基盤材料関連技術開発施策
事業担当課
資源エネルギー庁 資源・燃料部 鉱物資源課
プロジェクトの目的・概要
自動車の廃棄処分により発生するシュレッダーダストやニッケル水素電池等から金
属を回収するプロセスの見直しを行い、熱効率等を改善し、大幅な省エネルギーを達
成するとともに、効率的に多様な金属を回収するための技術開発。
予算額等
(単位千円)
開始年度
終了年度
中間評価時期 事後評価時期
事業実施主体
平成14年度
平成18年度 平成16年度 平成19年度
(独)石油天然ガ
ス・金属鉱物資源
機構
H14FY予算額
H15FY予算額
H16FY予算額
H17FY予算額
H18FY予算額
50,000
275,932
409,983
448,936
391,348
総予算額
総執行額
1,576,199
1,368,310
目標・指標及び成果・達成度
(1)全体目標に対する成果・達成度
1.希少有価金属回収技術(使用済みニッケル水素電池リサイクル技術)の成果・達成度
要素技術
金属回収率
回収金属の品質
省エネルギー
(対従来技術)
目標の達成度を
測定する指標
ニッケル≧95%
コバルト≧95%
ミッシュメタル≧95%
水素吸蔵合金としての特性
である、PCT曲線(圧力―組
成等温線)及び充放電特性が
現状品と同等であること
60%
成果
達成度
ニッケル:98.5%、
達成
コバルト:96.0%、
ミッシュメタル:98.0%
PCT曲線及び充放電特性が 達成
現状品と同等で、遜色なし
77.2%の削減
達成
2.スラグ再資源化技術開発(ASR処理技術)の成果・達成度
要素技術
有価金属回収率
スラグの品質
目標の達成度を
測定する指標
貴金属≧90%、銅≧90%、
鉛≧90%、亜鉛≧60%
(含有量)
鉛≦0.1%、亜鉛≦0.7%
i
成果
達成度
金100%、銀97%、銅=95%
鉛91%、亜鉛74%
(含有量)
鉛0.0042%、亜鉛0.134%
達成
達成
(JIS K 0058-2:2005)
(溶出量)
鉛≦0.01mg/l,
ヒ素≦0.01mg/l
(JIS K 0058-1:2005)
塩素≦0.02%
鉛・亜鉛残渣(製 (鉛+亜鉛)≧50%
錬原料)の品質
塩素≦0.5%
熱回収率
70%以上
(JIS K 0058-2:2005)
(溶出量)
鉛0.005mg/l、
ヒ素≦0.001mg/l
(JIS K 0058-1:2005)
塩素0.01%
(鉛+亜鉛)62.5%
塩素0.23%
64%
達成
未達成
(2)目標及び計画の変更の有無
無し
<共通指標>
論文数
0
論文の被
特許等件数
特許権の
ライセン
取得ライ
国際標準への
引用度数
(出願含む)
実施件数
ス供与数
センス料
寄与
0
0
1
0
0
0
評価概要
1.事業の目的・政策的位置付けの妥当性
急速な普及が予想されるハイブリッド自動車の使用済ニッケル水素電池や自動車シ
ュレッダーダストのリサイクル率の向上は重要な課題である。省エネルギー、低処理
コストを前提とした新たなリサイクル技術を開発することは、社会的、経済的に意義
があり、事業目的として妥当である。また、資源の乏しい我が国において、近年の金
属資源を取り巻く状況を考えれば、新たな有価金属の回収技術の開発はきわめて重要
であり、その意義は大きい。
自動車リサイクル率の向上、環境負荷の低減、省エネルギー等、政策的、公共的な
研究領域が多いことから、国が積極的にイニシアティブを取ることは妥当である。
成果を自動車分野に限ることなく広く普及させていくことも視野にいれ、技術的な
ディファクトスタンダードとすることが望ましい。
2.研究開発等の目標の妥当性
本事業においては実用化を前提とした具体的かつ明確な研究開発目標及び目標水準
が示されており、かつ、それらは現状の技術水準より高度であり妥当である。また、達
成すべき指標にも合理性があり、適切である。
3.成果、目標の達成度の妥当性
実験室スケールからパイロットプラントまでスケールアップして、技術の確立が
ii
行われた。学会での発表、特許の取得を行い、得られた成果は全体として評価でき
る。論文発表、特許取得件数などの数が少ないが、論文には時間を要するので、今
後の更なる発表が期待される。また、本事業で得られた成果は広く公表し、自動車
関連分野に限ることなく、他の分野でも幅広くその成果が有効活用されるようにす
べきである。
目標達成度については、ほぼ目標を達成しており、一部では目標を上回るレベル
に達しており、全体として評価できる。
4.事業化、波及効果についての妥当性
「希少有価金属回収技術」、
「スラグ再資源化技術」とも、技術開発レベルは事業化可
能なレベルに至ったと評価できる。処理すべき材料の供給量の確保が出来ないため「希
少有価金属回収技術」は直ちに事業化することは困難であるが、いずれ処理すべき材料
が大量に供給される見込みであることを考えると、適切な事業化の見通しが示されてい
る。「スラグ再資源化技術」で開発された技術は、現在「自動車リサイクル法」が本格
稼働されているところでもあり、早期の実用化が望まれる。
実際に事業化するためには、「材料の供給量の確保」や「既存のリサイクル業者との
競争」の現状及び今後の動向、「スラグから金属を回収した後の最終残渣の建設骨材等
としての販売計画」等を把握しておく必要がある。
波及効果は期待以上の効果があったわけではないが、妥当である。今後自動車に限
定することなく、他の分野にも幅広く波及することが期待される。「希少有価金属回
収技術」ではニッケル水素電池を扱っているが、将来的にはリチウムイオン電池のリ
サイクル技術も必要となると考えられる。
5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等の妥当性
基礎試験から実用試験に至る一連の研究開発計画は妥当であった。
研究開発実施者である独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構は、関連企業、
大学と連携を図り、2つの技術開発を同時に推進する上で、技術開発の進捗状況など、
共通する部分は情報共有をするなどして、2つの事業を連携することで、より効率的な
運営が出来たものと評価できる。
最終年度(平成18年度)に実施した、「湿式製錬法の適用可能性等に関する技術調
査」は当初の研究開発計画にはなかったものであり、情勢変化への対応として急遽実施
が必要になった要因を分析し、今後の研究開発計画の建て方に反映させていくべきであ
る。
6.総合評価
本技術開発で得られた成果は、まさに時代の要求に答えた、我が国にとって重要な事
業であり、「希少有価金属回収技術」、「スラグ再資源化技術」とも、各開発項目におい
て、当初の目標をほぼ達成しており、事業化可能なレベルに至った点で評価できる。早
iii
期事業化は困難であるが、いずれ必要となる技術であり、他の分野の廃棄物のリサイク
ルにも波及し、大いにリサイクル率の向上に貢献することが期待できる。
ハイブリッド自動車の電池としては、ニッケル水素電池から、携帯電話、パソコンな
どにも広く使用されるリチウムイオン電池に移行する可能性があるため、そのリサイク
ル技術開発を今後検討することが望まれる。
また、本技術開発の成果を自動車に限らず、その他の廃棄物のリサイクル技術の開発
に普及させることも検討するべきであり、そのために「エネルギー使用合理化製錬/リ
サイクルハイブリッドシステム」技術の特性を明確化し、関係学会や関係機関に幅広く
普及啓発し、ディファクトスタンダードとするべきである。
7.今後の研究開発の方向等に関する提言
個々の技術は、当初の目標を達成することができており、十分に実用化の見込みがあ
るものと思われる。近年ハイブリッド自動車の普及は著しく増加傾向にあり、近い将来、
使用済みニッケル水素電池が排出されることが予想されており、今後も更に実用化技術
の開発を促進していくことが望まれる。今後、自動車リサイクル料金として集めた費用
の配分も含めて、リサイクルの実用化を計って頂きたい。
今回の事業では有価金属回収とスラグ再資源化という 2 つの異なるプロセスを同時
に取り上げたが、両者の事業化時期は異なると思われ、今後は各々独立して、より実処
理量に近いスケールでの研究開発を行うことが望ましい。また、ハイブリッド自動車の
二次電池としては、将来、ニッケル水素電池以外に、リチウムイオン電池の使用も考え
られるので、その対策も必要と考えられる。
「スラグ再資源化技術」では、近年各種研究が進んでおり、さらなる亜鉛の回収率、
脱塩、熱回収率の向上が望まれる。また、自動車以外の組成の異なる廃棄物への本開発
技術の応用活用も今後検討すべき課題として残されている。
将来的なレアメタルの需給逼迫を考慮すれば、革新的なリサイクル技術の開発および
代替材料やメカニズムの開発などを進めていく必要があるものと考えられる。「湿式製
錬法の適用可能性等に関する技術調査」を踏まえて、新たな湿式製錬法の先進的な処理
方法を用いた省エネルギー型の回収技術調査を実施することが望まれる。
iv
平均点
(各項目:3点満点)
3.00
標準偏差
3.00
2.50
2.40
2.20
2.20
2.00
1.80
1.80
1.50
1.00
0.50
0.00
1. 事
6. 総
2. 研
5. 研
3. 成
4. 波
業の
合評
究開
究開
及効
果・
目標
目的
価
発マ
発等
果・
事業
の達
ネジメ
・政
の目
策的
化に
ント・
成度
標
の
体制
位置
の
つ
妥
い
妥
当性
・ 資金
付け
ての
当性
の妥
妥当
・ 費用
当性
性
対効
果の
妥当
性
v
第1章 評価の実施方法
本プロジェクト評価は、
「経済産業省技術評価指針」
(平成 17 年 4 月 1 日改定、
以下「評価指針」という。)に基づき、以下のとおり行われた。
1.評価目的
評価指針においては、評価の基本的考え方として、評価実施する目的として
(1)研究開発に対する経済的・社会的ニーズの反映
(2)より効率的・効果的な研究開発の実施
(3)国民への施策・事業等の開示
(4)資源の重点的・効率的配分への反映
(5)研究開発機関の自己改革の促進等
を定めるとともに、評価の実施にあたっては、
(1)透明性の確保
(2)中立性の確保
(3)継続性の確保
(4)実効性の確保
を基本理念としている。
プロジェクトに関する評価とは、評価指針における評価類型の一つとして
位置づけられ、プロジェクトそのものについて、同評価指針に基づき、事業
の目的・政策的位置付けの妥当性、研究開発等の目標の妥当性、成果、目標
の達成度の妥当性、事業化、波及効果についての妥当性、研究開発マネジメ
ント・体制・資金・費用対効果等の妥当性の評価項目について、評価を実施
するものである。
その評価結果は、本プロジェクトの実施、運営等の改善や技術開発の効果、
効率性の改善、更には予算等の資源配分に反映させることになるものである。
2.評価者
評価を実施するにあたり、評価指針に定められた「評価を行う場合には、
被評価者に直接利害を有しない中立的な者である外部評価者の導入等によ
り、中立性の確保に努めること」との規定に基づき、外部の有識者・専門家
で構成する検討会を設置し、評価を行うこととした。
これに基づき、評価検討会を設置し、プロジェクトの目的や研究内容に即
1
した専門家や経済・社会ニーズについて指摘できる有識者等から評価検討委
員会名簿にある5名が選任された。
なお、本評価検討会の事務局については、指針に基づき資源エネルギー庁
鉱物資源課が担当した。
3.評価対象
エネルギー使用合理化製錬/リサイクルハイブリッドシステム開発(実施期間:平成14年度
から平成18年度)を評価対象として、研究開発実施者(独立行政法人 石油
天然ガス・金属鉱物資源機構)から提出されたプロジェクトの内容・成果等に
関する資料及び説明に基づき評価した。
4.評価方法
第1回評価検討会においては、研究開発実施者からの資料提供、説明及び質
疑応答、並びに委員による意見交換が行われた。
第2回評価検討会においては、それらを踏まえて「研究開発事業評価におけ
る標準的評価項目・評価基準」及び要素技術、今後の研究開発の方向等に関す
る提言等について評価を実施し、併せて4段階評点法による評価を行い、評価
報告書(案)を審議、確定した。
また、評価の透明性の確保の観点から、知的財産保護、個人情報で支障が生
じると認められる場合等を除き、評価検討会を公開として実施した。
5.プロジェクト評価における標準的な評価項目・評価基準
評価検討会においては、経済産業省産業技術環境局技術評価調査課において
平成19年6月1日に策定した「経済産業省技術評価指針に基づく標準的評価
項目・評価基準について」の「プロジェクトに関する評価」の「中間・事後評
価」に沿った評価項目・評価基準とした。
1.事業の目的・政策的位置付けの妥当性
(1)国の事業として妥当であるか、国の関与が必要とされる事業か。
・国民や社会のニーズに合っているか。
・官民の役割分担は適切か。
(2)事業目的は妥当で、政策的位置付けは明確か。
2
・事業の政策的意義(上位の施策との関連付け等)
・事業の科学的・技術的意義
(新規性・先進性・独創性・革新性・先導性等)
・社会的・経済的意義(実用性等)
2.研究開発等の目標の妥当性
(1)研究開発等の目標は適切かつ妥当か。
・目的達成のために具体的かつ明確な研究開発等の目標及び目標水準を設
定しているか。特に、中間評価の場合、中間評価時点で、達成すべき水
準(基準値)が設定されているか。
・目標達成度を測定・判断するための適切な指標が設定されているか。
3.成果、目標の達成度の妥当性
(1)成果は妥当か。
・得られた成果は何か。
・設定された目標以外に得られた成果はあるか。
・共通指標である、論文の発表、特許の出願、国際標準の形成、プロトタ
イプの作製等があったか。
(2)目標の達成度は妥当か。
・設定された目標の達成度(指標により測定し、中間及び事後評価時点の
達成すべき水準(基準値)との比較)はどうか。
4.事業化、波及効果についての妥当性
(1)事業化については妥当か。
・事業化の見通し(事業化に向けてのシナリオ、事業化に関する問題点及
び解決方策の明確化等)は立っているか。
(2)波及効果は妥当か。
・成果に基づいた波及効果を生じたか、期待できるか。
・当初想定していなかった波及効果を生じたか、期待できるか。
5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等の妥当性
(1)研究開発計画は適切かつ妥当か。
・事業の目標を達成するために本計画は適切であったか(想定された課題
への対応の妥当性)。
3
・採択スケジュール等は妥当であったか。
・選別過程は適切であったか。
・採択された実施者は妥当であったか。
(2)研究開発実施者の事業体制・運営は適切かつ妥当か。
・適切な研究開発チーム構成での実施体制になっているか、いたか。
・全体を統括するプロジェクトリーダー等が選任され、十分に活躍できる
環境が整備されているか、いたか。
・目的達成及び効率的実施のために必要な、実施者間の連携/競争が十分
に行われる体制となっているか、いたか。
・成果の利用主体に対して、成果を普及し関与を求める体制を整えている
か、いたか。
(3)資金配分は妥当か。
・資金の過不足はなかったか。
・資金の内部配分は妥当か。
(4)費用対効果等は妥当か。
・投入された資源量に見合った効果が生じたか、期待できるか。
・必要な効果がより少ない資源量で得られるものが他にないか。
(5)変化への対応は妥当か。
・社会経済情勢等周辺の状況変化に柔軟に対応しているか(新たな課題へ
の対応の妥当性)。
・代替的手段との比較を適切に行ったか。
6.総合評価
7.今後の研究開発の方向等に関する提言
(個別要素技術に関するコメント)
4
第2章 プロジェクトの概要
1.事業の目的・政策的位置付け
1−1 事業に対する国の関与
本プロジェクトは、使用済自動車に由来する廃棄物(ハイブリッド自動車用
使用済ニッケル水素電池及びシュレッダーダスト(以下「ASR」という。
))から
有価金属をリサイクルする際の処理プロセスの見直し等により、エネルギー使
用を合理化しつつ、多様な有価金属のリサイクル技術を確立することを目的と
している。
一般に、ASR をはじめとする自動車に由来する廃棄物は全国的に大量に発生す
るものであり、現在問題となっている最終処分場逼迫の主たる要因の一つにな
っている。また、その処理・リサイクルのエネルギー使用合理化技術は、今後、
我が国の持続的な経済成長を実現する循環型経済社会システムの構築のために
不可欠であるため、公共財的性格を有している。さらに、開発された技術の実
用化にあたっては、廃棄物処理に関する法的規制や環境問題等の外部要因に大
きく左右される。
したがって、本テーマは、将来の不確実性によって市場の機能が不完全にな
る状態の「市場の不完全性」や複数の人が同時に消費し、対価の支払い(例えば
廃棄物処理費用)なしに消費を制限することが困難である「公共財的性格を持つ
財・サービスの供給」等の民間のみでは実施し得ない「市場の失敗」に該当す
るものであり、国が積極的に関与する必要がある。
1−2 事業目的・政策的位置付け
(1)事業目的について
本プロジェクトは、使用済自動車のニッケル水素電池及び ASR から有価金属
をリサイクルする際の非鉄金属製錬処理プロセスの見直し等により、エネルギ
ー使用を合理化しつつ、多様な有価金属のリサイクル技術を確立することを目
的としている。
使用済ニッケル水素電池については、乾式法に比較して大幅な省エネルギー
を達成可能な湿式法により、ニッケル、コバルト、ミッシュメタルを分離・回
収する技術の開発を行う。ASR については、有価金属、重金属を回収しつつ溶解・
スラグ化を行うことによりスラグの無害化、有効利用を図る技術の開発を行う。
本事業において、
「エネルギー使用合理化製錬/リサイクルハイブリッドシス
5
テム」とは、製錬プロセスの見直しや非鉄金属業界の製錬施設及び技術を活用
することにより、エネルギーの使用合理化及び環境負荷の低減を図りつつ、廃
棄物から有価金属を回収するとともに、溶融処理によって生成されるスラグの
再資源化を行う、これらの技術を統合したシステムのことを指す。
(2)事業目的の妥当性について
(a)社会的及び経済的背景
ハイブリッド自動車用二次電池として注目されるニッケル水素電池の急速な
普及により将来使用済ニッケル水素電池が大量に発生することが予想されるハ
イブリッド自動車は 1997 年 12 月の発売開始以来約 70 万台が販売されている
(2005 年末現在)。2004 年の㈱矢野経済研究所の予測ではハイブリッド自動車
の販売台数は、2010 年には世界計 250 万台、国内販売では約 100 万台と予測し
ている。ハイブリッド自動車のニッケル水素電池は寿命が7年程度と考えられ
てはいるが、自動車の寿命(約 10 年)と同程度の時期にスクラップ市場に出回
ると仮定すれば、2020 年には国内だけでも年間 Ni 量 9,500t、Co 量 1,150t、
ミッシュメタル 3,350tと膨大な量となる。(世界計では Ni 量 23,750t,Co 量
2,875t、ミッシュメタル量 8,375t)。一方で、既存のリサイクル技術を活用し
ても電池原料として回収することは困難であり、また現状の方法では消費エネ
ルギーが膨大であることから、革新的な省エネルギー・低環境負荷型のリサイ
クル技術の確立が急務となっている。
使用済自動車の処理に伴い発生する国内の ASR は 2005 年において、年間約 70
∼80 万tに及んでいると推測されるが、現在は ASR もしくは ASR を焼却処理後、
焼却灰を管理型処分場に埋立処分している。「使用済自動車の再資源化等に関す
る法律(自動車リサイクル法)」(2005 年 1 月に施行)により、使用済自動車の
ASR 処理の高度化(分別回収の進展、全部再資源化等)が予測されるため、ASR 排
出量は 2010 年までには現在の 70∼80 万t/年から 30 万t/年まで漸減するも
のと予想されている(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構調査
結果)。しかしながら、その発生量は依然として膨大である。
既存の非鉄金属製錬工程に ASR を直接供給した場合、生成するスラグは従来
のスラグに比べて不純物及び有価金属の含有量が多く、建設材料等に再利用さ
れずに、大量の廃棄物と化す懸念がある。
不適切な焼却に伴うダイオキシン類の発生や最終処分場の残余容量の減少は
大きな社会問題となっており、ASR の合理的な処理方法の開発及び、スラグを再
資源化するためのスラグの無害化が必要不可欠な技術となっている。
(b)技術的背景
現状、使用済ニッケル水素電池の一部が焙焼及び電気炉で溶融処理されフェ
6
ロニッケル原料としてリサイクルされているが、焙焼・溶融処理には多量のエ
ネルギーを要するため、エネルギー使用の合理化(省エネルギー化プロセス)
技術の開発・実用化が必要不可欠である。また、従来の処理法ではコバルトや
レアアース等の希少金属を分離回収しリサイクルすることは非常に困難な状況
である。
自動車等には、銅、鉛、亜鉛、ニッケル、コバルト、貴金属、カドミウム、
ミッシュメタル(レアアース合金)等、多種の非鉄金属が使用されているため、
ASR の処理には非鉄金属製錬業の技術を有効活用することが期待される。しかし
ながら、それらはハロゲン等製錬に有害な不純物を含み、合金もしくはプラス
チック等と複合して、あるいはメッキを施されて使用される等、鉱石とは著し
く異なる性状を有している。このため、既存の非鉄金属製錬工程に直接供給し
た場合、生成するスラグは従来のスラグに比べて不純物及び有価金属の含有量
が多い。
現状、ASR の焼却施設で産出する焼却残渣の一部は、手選別等の二次処理によ
って製錬原料化されているものの、残渣・飛灰等の大半がセメント固化等によ
り金属等の溶出を抑制した上で最終処分場に廃棄されている。ASR の一部は銅・
貴金属を他の廃棄物に比べて多く含むため、銅製錬炉で処理されているが、鉛・
亜鉛の有価金属は産出するスラグ中に残存したままで回収されていないので、
製錬スラグは一部骨材として使用されているが、重金属含有の問題があり、天
然骨材に比べて用途が限られている。
7
図1
プロジェクト概念図
8
(3)事業の政策的位置付け等について
本プロジェクトの技術開発は、資源有効利用の観点から、総合科学技術会議・
分野別推進戦略上の「環境分野」
「リサイクル・廃棄物適正処理処分技術」に位
置づけれられると共に、エネルギー使用の合理化の観点から「エネルギー分野」
「省エネ型素材製造プロセス技術」に位置づけられている。また、エネルギー
技術戦略上(図2)においては、
「総合エネルギー効率の向上」の「産業プロセ
スの省エネ化」に資するものとして位置付けられており、非鉄金属プロセス中
「高効率製錬、金属リサイクル技術」に該当するものである。更に、鉱物資源
の安定供給の確保の観点からも、国内のリサイクルの促進を通じた希少金属の
供給源の多様化に資するものとして位置づけられている。
ハイブリッド自動車のニッケル水素電池については、ハイブリッド自動車の
急速な普及により、将来使用済み製品が大量に発生することが予想されるため、
リサイクル方法の検討が進められているところである。従来の処理方法では、
多量のエネルギーを要するばかりでなく、ミッシュメタル等の回収が困難であ
るため、エネルギー使用の合理化、希少金属の供給源の多様化の観点等から、
高効率製錬、金属リサイクル技術を開発することが必要不可欠である。
「使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)」(2005 年
1 月に施行)により ASR の再資源化率の目標は 2005 年 30%、2010 年 50%、2015
年 70%と定められている。このため、ASR リサイクル施設で生じる当該 ASR 由来
廃棄物総重量を減らすことが求められており、ASR の処理により発生するスラグ
を再資源化する技術開発の重要性が高まっている。
現在、金属資源を取り巻く世界の現状は、海外大手企業の買収・合併による
市場支配力の強化、中国市場の急成長等による国際非鉄金属市場の拡大 (鉱石
確保を巡る競合)、国際非鉄金属価格の変動等の不安定要素が混在している。こ
のような状況下、金属資源の大消費国でありながら、その供給の大半を海外に
依存している我が国としては、リサイクル等による資源の有効利用を通じた金
属資源の安定供給を国の施策として実施する必要がある。特にレアアースの混
合体であるミッシュメタルのリサイクルは、世界のレアアース生産の約9割が
中国一国に集中していることを考慮すると極めて重要である。
9
図2
エネルギー技術戦略(総合エネルギー技術戦略マップ)
(2007年4月 資源エネルギー庁)
10
2.研究開発等の目標
2−1
研究開発目標
(1)事業全体の目標
製錬プロセスの見直しや非鉄金属業界の製錬施設及び技術を活用することに
より、エネルギーの使用合理化及び環境負荷の低減を図りつつ、使用済自動車
に由来する廃棄物(ニッケル水素電池及び ASR)から有価金属を回収するととも
に、溶融処理によって生成されるスラグの再資源化を行い、さらにこれらの技
術を統合した「エネルギー使用合理化製錬/リサイクルハイブリッドシステム」
の構築を目標とする。
本事業では、
「希少金属回収技術」及び「スラグ再資源化技術」のプロセスを
実施するが、この2つのプロセスは非鉄製錬技術を用いる点で、同等のもので
あり、両方を実施することによって「エネルギー使用合理化製錬/リサイクル
ハイブリッドシステム開発」の構築を達成する。
(2)研究開発項目毎の目標
使用済ニッケル水素電池及び ASR を対象に、希少有価金属回収技術(使用済
ニッケル水素電池処理技術)及び、スラグ再資源化技術(ASR 処理技術)の二つ
の技術開発を並行して実施し、それぞれの技術についてプロジェクト終了後直
ちに実用化に着手できるレベルの到達を目指している。
(2)−1 希少有価金属回収技術(使用済ニッケル水素電池処理技術)
本技術は、水素吸蔵合金製造及び電気ニッケル製造技術で培った製錬技術を
活用して、自動車用使用済ニッケル水素電池を解体・解砕し、正極主体部分と
負極主体部分に分別する。
正極主体部分からは化学的分離技術(イオン交換技術、沈殿分離技術等)に
より目的外元素を分離除去した後、溶媒抽出技術により、ニッケル、コバルト
を金属化合物として分離・回収する。
負極主体部分からは、雰囲気調整熱処理等の乾式処理方法により、ミッシュ
メタル(レアアース合金)、ニッケル等を含有した水素吸蔵合金を金属として回
収する。
なお、ニッケル水素電池には、角型と円筒型の 2 種類あり、その形状等によ
って、分別回収工程が違ってくる事から、この二つの電池について処理試験を
行うこととした。
表1 ニッケル水素電池の構成
構成物
正極主体部
水酸化ニッケル、水酸化コバルト、酸化亜鉛等
11
負極主体部
水素吸蔵合金(ミッシュメタル(レアアース合金)、ニッケル)等
(2)-1-1 技術開発項目
(a)最適破断・破砕・分別技術
使用済ニッケル水素電池を化学処理するための前処理として最適粉砕処理技
術(解体・分別処理プロセス)を開発する。また、解体・分別処理に付随する
前処理として電池の無害化(例えば失活処理)技術の開発を行う。
(b) 多元素系選択分離技術
使用済ニッケル水素電池処理で想定される不純物(または共存元素)を特定
し、その選択除去に最適な方法を選定し除去技術を確立する。
・正極主体部分:鉄、レアアース等の除去(溶媒抽出によるニッケル、コバルト
分離回収の前処理)
・負極主体部分:磁力選鉱による脱鉄
(c) 多元素系精製技術
既存のニッケル製錬技術を活用しつつ、ニッケル・コバルトを各々電池材料
として再利用可能な品質の化合物として回収する技術を開発する。具体的には、
正極主体物からのニッケル塩、コバルト塩の回収および負極主体物の水素によ
る還元、脱炭を行う。
図3
希少有価金属回収技術の概念図
12
(2)-1-2 技術の目標
(a)使用済ニッケル水素電池からの金属回収率は、ニッケル、コバルト、ミッシ
ュメタルそれぞれ 95%以上を目標とする。
<目標設定根拠>
一般的な既設製錬における妥当な実収率を持って設定
(b) 水素吸蔵合金としての特性である、PCT 曲線(圧力―組成等温線)及び充放
電特性が現状品と同等であること
<目標設定根拠>
本事業終了後、直ちに実用化に着手することが可能なレベルに設定
(c)従来法:フェロニッケル製錬におけるエネルギー使用原単位と比較した当該
技術のエネルギー使用量の削減率は 40%以上を目標とする。
<目標設定根拠>
現状、実現可能なレベルにて設定
(2)-1-3 技術開発課題とブレークスルーするための技術手段
(a)最適破断・破砕・分別技術(解体・分別処理プロセス)
使用済ニッケル水素電池は、ケース、電極、活物質、セパレーター等、多様
な形態や組み付けから成り立っており、以降のプロセスにおいて効率的な分
離・精製を行うためには、極力不必要な素材を取り除くとともに、最適な形態
(粒径等)にする必要がある。このため、解体方法、解砕・破砕方式、分別方
法、装置材質・運転条件等を検討して、電池のケース、電極及び活物質、セパ
レーター等を効率的に解体・分別する技術を開発し、最適な解体・分離前処理
を検討する。
(b) 多元素系選択分離技術(多元素系選択分離プロセス)
電池は、鉱石と異なり、数多くの元素成分を含有しているため、電池材料と
して再利用できる品質の回収物を得るには、既存の製錬技術を活用しつつ、目
的外の元素を除去する技術を確立し、従来のニッケル製錬技術やレアアース製
錬技術では想定していない元素が混入している場合でも適用できる分離・精製
技術を開発する必要がある。
b-1)不純物除去技術
― 正極主体物の溶媒抽出によるニッケル、コバルト分離回収の前処理−
解体分別された正極主体部分について、ニッケル及びコバルトの浸出技術並
びにニッケルとコバルトの分離・精製・回収に溶媒抽出法を適用した場合に除
去し難い、あるいは問題となる目的外元素の除去技術を開発する。
b-2)負極主体物の不純物除去技術
角型電池に含まれる微細な鉄粉の除去のため、磁力による除鉄を、また、円
13
筒型電池の場合は一次破砕・湿式分級の効率向上のための篩分技術を開発する。
(c)多元素系精製技術(多元素系精製プロセス)
c-1)正極主体物からのニッケル・コバルトの回収
既存のニッケル製錬技術から得られた知見を活用し、最適な溶媒の選定や抽
出条件を検討して、効率的な分離・精製技術を確立し、ニッケルとコバルトを
電池材料として再利用可能な仕様の化合物として分別回収する技術を開発する。
c-2)ミッシュメタル回収技術
−雰囲気調整熱処理等の乾式処理法の適用−
解体分別された負極主体部分からの水素吸蔵合金(ミッシュメタルとニッケ
ルの合金)の分離・精製・回収では、共存する酸素や炭素の除去技術を開発する
必要があるため、雰囲気調整熱処理等の乾式処理法により酸素や炭素の除去を
行う。
(2)−2 スラグ再資源化技術(ASR 処理技術)
本技術は、非鉄製錬設備及び技術を活用し、(a)ASR 焼却残渣・飛灰からの銅
製錬処理による有価金属回収、(b)焼却残渣・飛灰を処理した銅製錬スラグから
の還元揮発及び塩化揮発による鉛・亜鉛といった有価金属の回収と処理後のス
ラグの資源化、(c)上記(b)の工程における効率的な熱回収、(d)回収した含鉛・
亜鉛飛灰の湿式処理による製錬原料化を組み合わせたプロセスである。
(2)-2-1 技術開発項目
(a)ASR 焼却残渣・飛灰からの銅製錬処理による有価金属回収
ASR の焼却残渣・飛灰の一部は、手選別等によって銅線等が製錬原料化されて
いるものの、残渣・飛灰の大部分はセメント固化等により有価金属等の溶出を
抑制した上で最終処分場に廃棄されている。また、製錬原料化されたものから
銅・貴金属は回収されているが、鉛・亜鉛は産出するスラグに残存したままで
回収されていない。最近、銅製錬反射炉による ASR 処理が実施されているが、
日本の銅製錬の主流である自熔炉法において実施されている例はない。
よって、ASR 焼却残渣・飛灰を銅製錬自熔炉及び転炉に装入し、銅等の有価金
属を回収するための最適条件を見出す。
(b)焼却残渣・飛灰を処理した銅製錬スラグからの還元揮発及び塩化揮発による
鉛・亜鉛の有価金属の回収と処理後のスラグの資源化
ASR 焼却残渣・飛灰を処理した銅製錬スラグを電気抵抗で熔解し、鉛・亜鉛を
塩化物の形で揮発除去するとともに、コークス吹込みにより還元除去する。
(c) 電気炉からの効率的な熱回収
(b)の工程で使用する電気炉から有効な熱回収を行う。
14
(d)含鉛・亜鉛飛灰の湿式処理による製錬原料化
(b)の工程で回収した含鉛・亜鉛飛灰から塩素等の不純物を除去し製錬原料と
して適正なものとする。
貴金属
図4
スラグ再資源化技術の概念図
(2)-2-2 技術開発の目標
(a)ASR からの有価金属回収率
金・銀・銅・鉛:90%以上
亜鉛:60%以上
<目標設定根拠>
金・銀・銅の銅製錬における実収率は銅精鉱処理の場合 95%以上が一般的であ
るが、ASR 中金属含有量は銅精鉱と比較して低いため 90%以上とした。
また、鉛については一般的な銅製錬では実収率は低いが、スラグ中の鉛含有量
の低減を目標としているため、90%以上と高い数字を設定した。亜鉛についても
同様にスラグ中の目標品位を考慮し実収率 60%以上とした。
(b)生成するスラグの品質
・溶出量:鉛 ≦0.01mg/l、ヒ素 ≦0.01mg/l
・含有量:鉛 ≦0.1%、 亜鉛 ≦0.7%
・塩素:0.02%以下
<目標設定根拠>
15
溶出量については、JIS K 0058-1:2005 に基づく溶出試験による基準値をクリ
ア で き る 品 質 と し た 。 ま た 、 資 源 化 に 伴 っ て の ス ラ グ の 含 有 量 は JIS K
0058-2:2005 に基づき、土壌汚染対策法における鉛含有量基準および JIS
A5011-3 の規格(銅スラグコンクリート用スラグ骨材)に準拠する品質とした。
(c)鉛・亜鉛残渣の品質
塩素:0.5%以下
鉛+亜鉛:50%以上
<目標設定根拠>
一般的な鉛・亜鉛精鉱の品位条件に準じた。
(d)電気炉からの熱回収
熱回収率:70%以上
<目標設定根拠>
一般的にボイラーにおける熱回収率は 80%程度であるが本電気炉は飛灰発生
量が多く、それがボイラーチューブ表面に付着するため熱伝導率が低下する
ことが予想されるため、70%以上を目標値とした。
(2)-2-3 技術開発課題とブレークスルーするための技術手段
(a)ASR 焼却残渣・飛灰からの銅製錬処理による有価金属回収
本技術開発では、銅製錬工程における焼却残渣・飛灰の処理について最適な
方法を検証すると共に、本系統の処理量に対して焼却残渣・飛灰の処理量比率
の変化に伴う影響を実証炉レベルで確認し、最適条件を見出す。
(b) 焼却残渣・飛灰を処理した銅製錬スラグからの還元及び塩化揮発による
鉛・亜鉛の有価金属の回収と処理後のスラグの資源化(高度スラグクリーニング
技術)
銅製錬スラグから鉛、亜鉛を回収した実例はない。現在、鉛・亜鉛製錬スラ
グからの鉛・亜鉛の回収は Ausmelt 炉でのフューミングが実用化されているが、
処理後のスラグに残存する鉛は 0.1∼0.2%、亜鉛は 1∼2%程度である。
本技術開発では、塩化揮発および還元揮発によってスラグから鉛・亜鉛を回
収することにより、残存鉛・亜鉛品位のさらなる低減を目指す。
(c)電気炉からの効率的な熱回収(廃熱有効利用技術)
揮発した鉛・亜鉛を含むガスについては、一般に廃熱ボイラーで熱回収を行
うが、ダストが付着性を有するためボイラーの水管壁の汚染が著しい。
本技術開発では、電気炉を用いて熱回収を阻害する装入物のキャリーオーバ
ーを抑制し熱回収の向上を図る。
(d)含鉛・亜鉛飛灰の湿式製錬による製錬原料化(有価金属回収・不純物固定化技
術)
電気炉から飛灰として回収された鉛・亜鉛には製錬原料として有害な不純物
16
が含まれる。塩素が最も問題となると考えられるが砒素、アンチモンも同時に
揮発してくる可能性が高い。
本技術開発では、これら元素を従来から培ってきた製錬技術を駆使して有価
成分から分離し、製錬原料として適正なものとする。
3.成果・目標の達成度
3−1
研究開発成果
(1)研究開発成果
①全体の研究開発成果
平成 14 年度から開始した本研究開発は順調に推移し、平成 18 年度の技術実
証試験では所期の目標を達成した。表2、表3に主な研究開発項目の成果を示
す。
表2.共通指標の一覧表
要素技術
論文数
論文の被
特許等件
特許権の
ライセン
取得ライ
国際標準
引用度数
数(出願
実施件数
ス供与数
センス料
への寄与
を含む)
1.希少有価金
0
0
1
0
0
0
無し
0
0
0
0
0
0
無し
0
0
1
0
0
0
無し
属回収技術
2.スラグ再資
源化技術
計
表3
項
目
試
主な研究開発項目の成果
験
成
1.希少有価金属回 解体・分別試験
果
円筒型二次電池の前処理(-196℃で冷凍・
収技術
失活)後に破砕することで未破砕物残留率
を 4%まで低減できることが判明
正負極活物質分離試 解砕・湿式分級機により正極主体物、負極
験
主体物及び外装・セパレーター等に分離す
る技術について、解砕時間、湿式分級機の
攪拌条件等を試験することによって、効率
的な分離法を確立。
負極活物質の精製試 回収された負極活物質の雰囲気調整熱処理
験
等による精製条件の特定
17
・混入正極活物質還元:200℃(レアアース
の酸化を回避する最適条件の抽出)
・脱炭素:900℃にて除去した場合、残留炭
素濃度を 0.01%まで低減できることが判明
正極主体物からの有 浸出条件の改善、レアアース・鉄等を除去
価金属の回収試験
する条件の確認、溶媒抽出の連続試験条件
の確立による処理条件の特定
・繰り返し浸出により、ニッケル浸出率は
98%まで向上することを確認
・溶媒抽出において、亜鉛分離段は pH2∼
2.5、コバルト分離段は pH4∼4.5 で効率的
に精製分離できることが判明
最終開発成果
ニッケル 98.5%(目標値≧95%)
1)金属回収率
コバルト 96.0%(目標値≧95%)
ミッシュメタル 96.0%(目標値≧95%)
PCT 曲線及び充放電特性が現状品と同等
2)回収物
で、遜色なし
3)エネルギー消費 77.2%(目標値≧40%)
量削減率
2.スラグ再資源化 最適混合処理技術
転炉廃滓(5t)+焼却炉飛灰(1t)+コークス
技術
(5%)を、次いでスラグ(15t)+コークス(1%)
を乾燥・均一混合を行い、スラグ炉内へ供
給する条件・技術を確立
高度スラグクリーニ スラグ、転炉廃滓中の鉛・亜鉛を第 1 段階
ング技術
で飛灰中の塩素を利用して塩化揮発させ、
次いでコークス吹込み量 75∼100kg/Hr で
吹き込むことで、還元揮発させて、鉛、亜
鉛を除去する技術を確立
廃熱有効利用技術
スラグ炉排ガスの顕熱回収のために、ダス
トチャンバーの段数、伝熱効率向上のため
の飛灰除去設備、設備保温等の廃熱回収率
向上を実施
飛灰中の不純物処理 排ガス中の飛灰に濃縮している鉛、亜鉛を
技術
ジェットスクラバーで回収、更に塩素濃度
低減のためにコーンタンクでの洗浄を実施
最終成果
18
金 100%(目標値 90%)
、銀 97%(目標値 90%)
1)金属回収率
銅 95%(目標値 90%)、鉛 91%(目標値
90%)
、亜鉛 74%(目標値 60%)
溶出率:鉛 0.005mg/l(目標値≦0.01 mg/l)
2)スラグ品質
ヒ素≦0.001mg/l(目標値≦0.01 mg/l)
含有量:鉛 0.0042%(目標値≦0.1%)
亜鉛 0.134%(目標値≦0.7%)
塩素濃度:0.01%(目標値≦0.02%)
3)鉛亜鉛残渣品位
鉛+亜鉛濃度:62.5%(目標値≧50%)
塩素濃度:0.23%(目標値≦0.5%)
64%(目標値≧70%)
4)熱回収
特許については、
「希少有価金属回収技術」で1件取得しているが、スラグに
ついての技術開発は 1 年前に処理フローが固まり、平成 18 年度にやっとデータ
が出てきた段階であるので、解析・検証が進んで今後の特許出願が期待される。
なお、今年度の成果発表については下記項目を予定している。
・ 2007・9 月発行予定の資源素材学会「Journal of MMIJ」に「ハイブリッドカ
ー 用電池のリサイクル技術開発」のテーマ名で論文投稿済み
・ 2007・8 JOGMEC 主催成果報告会で「製錬/リサイクルハイブリッドシステ
ムの開発」を発表予定
・ 2007・9 月発行予定の JOGMEC「金属資源レポート」に「製錬/リサイクルハ
イブリッドシステムの開発事業」を掲載予定
②個別要素技術に係る研究開発成果
(i)希少有価金属回収技術開発(使用済ニッケル水素電池リサイクル技術)
a)解体分別技術
円筒型使用済ニッケル水素電池を対象に、脆化破砕条件の最適化を試み、液
体窒素(−196℃)15 分浸漬後破砕することにより、未破砕物残留率を 9%まで
低減できることを見出した。また、未破砕物を再度脆化破砕することにより、
未破砕残留率を 4%まで低減した。
b)正負極活物質分離技術
解砕・湿式分級機により正極主体物、負極主体物及び外装・セパレーター等
に分離する技術について、解砕時間、湿式分級機の攪拌条件等を試験すること
によって、効率的な分離法を確立した。
c)負極活物質からの有価金属の回収技術
回収された負極活物質の雰囲気調整熱処理等による精製条件について試験し、
レアアースの酸化を回避するために、抽出混入正極活物質の水素還元条件とし
19
て 200℃を特定した。また、脱炭素のための温度条件としては 900℃での温度条
件で残留炭素濃度を 0.01%まで低減できることを見出した。
d)正極主体物からの有価金属の回収技術
浸出条件の改善(浸出時間、ORP、温度、攪拌速度等)、脱レアアース工程の
反応条件(温度、反応時間、硫酸ナトリウム添加量、攪拌速度等)、脱鉄工程の
反応条件(pH、温度、ORP、攪拌速度等)を確立した。また、溶媒抽出において、
抽出剤として PC88A を選択し、脱亜鉛段、脱コバルト段でのpH2.0∼2.5、O/A=1.0、
また、逆抽出条件でのpH4.0∼4.5、O/A=2.0、等を確立した。
冷 却
Ni−MH電池
破 砕
湿式分級(16mesh)
回収粉
外装プラスチック
セパレーター
廃アルカリ液
粗 粒
磁 選
除 鉄
正極活物質
ろ過・乾燥
酸浸出
負極活物質
基板等
中 和
残渣
Fe−Ni原料
還元・脱炭
溶媒抽出
負極原料
正極原料(Ni,Co溶液)
図5
RE塩
Fe塩
角型廃ニッケル水素電池処理フローシート
20
冷 却
Ni−MH電池
破 砕
解砕・湿式分級(16mesh)
回収粉
粗 粒
篩 分(200mesh)
解砕・湿式分級(16mesh)
外装プラスチック
セパレーター
廃アルカリ液
正極活物質①
ろ過・乾燥
酸浸出
負極活物質
中 和
還元・脱炭
溶媒抽出
負極原料
残渣
基板等
Fe−Ni原料
正極原料(Ni,Co溶液) RE塩
図6
正極活物質②
Fe塩
円筒型廃ニッケル水素電池処理フローシート
21
(ii)スラグ再資源化技術(ASR 処理技術)
a)最適混合処理技術
転炉廃滓(5t)+焼却炉飛灰(1t)+コークス(5%)をパドルドライヤーで乾燥・均
一混合し、スラグ炉内へ供給する。その後スラグ(15t)+コークス(2%)をス
ラグ炉内へ供給して熔解する。転炉廃滓と飛灰、コークスの均一混合が特に
鉛の塩化反応の促進には重要であることが判明した。
b)高度スラグクリーニング技術
スラグ、転炉廃滓中の鉛・亜鉛を第 1 段階で飛灰中の塩素を利用して塩化揮
発させ、次いでコークス吹込み量 75∼100kg/Hr、吹き込み空気量 230∼300Nm3/Hr
で吹き込むことで、還元揮発により、鉛、亜鉛を低下させる技術を確立した。
c)廃熱有効利用技術
スラグ炉排ガスの顕熱回収のために、ダストチャンバーを 2 段に設定し、伝
熱効率向上のための飛灰除去設備としてエアブローを設置し、設備保温、フリ
ーエアーの防止措置等を検証し、スラグ炉での廃熱回収技術を見出した。
e)ダスト中不純物処理技術
排ガス中の飛灰に濃縮している鉛、亜鉛をジェットスクラバーで回収、更に
塩
素濃度低減のためにコーンタンクでの洗浄を強化することによって、回収残渣
中の塩素濃度を 0.23%まで低下させた。
(新) 実証試験フロー
凡例
関連工程
転炉廃滓
自溶炉スラグ
還元剤・溶剤
流動床炉飛灰
用水
本試験工程
塩化剤
貯鉱舎
調合原料
原料搬送設備
実証炉
メタル
溶体クリーンスラグ
揮発ガス・ダスト
銅・鉛製錬
放流場
ジェットスクラバー
クリーンスラグ
排ガス
洗浄水・飛灰
既存排ガス処理
コーンタンク・フィルタープレス
図7
洗浄飛灰
排水
鉛・亜鉛製錬
中和工場
シュレッダーダスト処理フロー
22
3−2 目標の達成度
平成 18 年度において、希少有価金属回収技術及びスラグ再資源化技術につい
て技術実証試験を実施し、金属回収率、回収金属の品質等個々の目標について
の達成度について検証したが、表4、表5に示すとおり、ほぼ目標を達成した。
表4
項
希少有価金属回収技術の目標及び実績(達成度)
目
目
標
実績(達成度)
金属回収率
ニッケル≧95%
※角型電池、円筒型電池 コバルト≧95%
の平均値
ミッシュメタル≧95%
ニッケル:98.5%、
コバルト:96.0%、
ミッシュメタル:98.0%
達
成
回収金属の品質
水素吸蔵合金としての PCT 曲線及び充放電特性が 達
特性である、PCT 曲線(圧 現状品と同等で、遜色なし 成
力―組成等温線)及び充
放電特性が現状品と同
等であること
省エネルギー
(対従来技術比)
40%以上の削減
表5
項
達
成
スラグ再資源化技術の目標及び実績(達成度)
目
有価金属回収率
77.2%の削減
目
標
実績(達成度)
貴金属≧90%、銅≧90%、 金 100%、銀 97%、銅=95% 達
鉛 91%、亜鉛 74%
鉛≧90%、亜鉛≧60%
成
※金、銀、銅については全体の
マテリアルバランスから算出
スラグの品質
(含有量)
鉛≦0.1%、亜鉛≦0.7%
(JIS K 0058-2:2005)
(溶出量)
鉛≦0.01mg/l,
ヒ素≦0.01mg/l
(JIS K 0058-1:2005)
塩素≦0.02%
(含有量)
鉛 0.0042%、亜鉛 0.134%
(JIS K 0058-2:2005)
(溶出量)
鉛 0.005mg/l、
ヒ素≦0.001mg/l
(JIS K 0058-1:2005)
塩素 0.01%
達
成
鉛・亜鉛残渣
(鉛+亜鉛)≧50%
(製錬原料)の品質 塩素≦0.5%
(鉛+亜鉛)62.5%
塩素 0.23%
達
成
熱回収率
64%
未達
成 *
70%以上
注
23
* 注:目標70%以上に対して、僅かに至らず64%となった。当該試験炉では、
鉛・亜鉛等の揮発除去を目的としていることから、鉛・亜鉛主体の飛灰発生量が
多いことは事前に予想されていた。このため、飛灰がダストチャンバー等、飛灰
集じん機設備へ堆積、付着し、熱回収効率を妨げるのを防止する対応を行い、熱
回収率70%以上という高い目標を掲げて努力してきた。しかしながら、飛灰集
じん機設備への堆積、付着量が予想をはるかに超えた為、試行錯誤を繰り返し、
ダストブロー等の飛灰除去設備の設置、伝熱面積の増強等考えられる全ての対策
を施して実証試験を行った。これらの対策を行った結果、目標値の 90%を達成し
ており、本設備での熱回収はこれが限度であると考えられるため、目標はほぼ達
成したと判断した。
4.事業化、波及効果
4−1 事業化の見通し
(1)希少有価金属回収技術(使用済みニッケル水素電池リサイクル技術)
本事業により得られた技術は、実用化に求められる目標値を達成しており、
ハイブリッド電池の廃棄回収量の確保等の経済的問題をクリアすることによっ
て実用化が可能となる。
本プロセスの特性上、実用化は、金属回収が可能な非鉄製錬業が主体となり、
ユーザーとしては使用済ニッケル水素電池の回収を行っている電池メーカーが
対象になると考えられる。
現在のところ、ニッケル水素電池を搭載しているハイブリッド自動車はまだ
あまりスクラップとして市場に出回っておらず、本開発成果を直接的に事業化
する段階までには至っていない。しかし、市場予測では、2010 年には世界計で
2,500 千台(国内 1,000 千台)の需要が予想され、それが 2020 年頃にはスクラ
ップとして市場に出回ってくる見込みである。事業化に必要なリサイクル原料
は、基本的には有償なので廃掃法の法的問題はなく、集荷システムについては、
トヨタはパナソニックエナジーと西濃運輸との共同運営システムを既に構築す
るなど、民間事業者によって着実に実用化に向けた検討が進んでいる。
本技術開発は、使用済みニッケル水素電池中の有価金属を電池材料として回
収することを可能とし、経済的合理性も試算されているため、リサイクル原料
の量が確保が可能となる 2020 年頃を目処に、非鉄製錬企業が当該事業で得られ
た成果を活用し、事業化していくと見込まれる。
(2)スラグ再資源化技術(ASR 処理技術)
実用化の担い手としては、有価金属の回収について、鉛・亜鉛が主体である
ため、非鉄製錬業界が最も有力である。
24
使用済自動車リサイクル法が平成 17 年 1 月に施行されたことにより、ASR の
発生量が現状の 70∼80 万トンから 30 万トン程度まで減少することが、予測さ
れている。また、発生した ASR については、殆どがリサイクル会社で処理され
ていく事も予想される。
しかしながら、リサイクル会社での ASR の処理はサーマルリサイクルが殆ど
であり、そこで発生する焼却灰若しくは溶融スラグ等を銅製錬で処理し、その
際生成するスラグから塩化揮発及び還元揮発により鉛・亜鉛を除去・回収し、
スラグを再資源化するために、本技術が必要とされる。ASR の発生量そのものが
減るとしても、これらの ASR 及び ASR の焼却灰、飛灰等を処理することによる
経済合理性があること、また、シュレッダーダストは ASR のみならず家電リサ
イクル等からも発生していること等から、事業化に必要な量は確保出来るもの
と考えられる。
本技術開発の実用化については、
① ASR 及び ASR の焼却灰、飛灰等の広域集荷体制の確立
② ASR 及び ASR の焼却灰、飛灰等の適正かつ合理的な処理設備の設置
③ 上記 ASR の処理プロセスと現行稼動の既存銅製錬所プロセスとの融合
が必要であり、これらを段階的に対処していくことで実用化が見込まれる。
4−2 波及効果
(1)希少有価金属回収技術(使用済みニッケル水素電池リサイクル技術)
廃小型電子・電気機器等はレアメタル等の希少金属を含んでいるが、まだ回
収技術は定まっていない。当該技術開発で得られた成果のなかで、破砕・湿式
分級技術、レアメタルの溶媒抽出技術等については、廃小型電子・電気機器か
らの希少有価金属回収のために応用可能な技術でもあり、今後のリサイクルに
幅広く転用されることが期待される。
(2)スラグ再資源化技術(ASR 処理技術)
平成 15 年 2 月に土壌汚染対策法が施行されて以降、スラグ類についても同様
なクリーン化を求める声が高まり、今後スラグ中の不純物を下げる要求がます
ます強まってくる。当該技術開発であるスラグからの不純物除去については、
現状の銅スラグ及び一般廃棄物の溶融スラグ等他のスラグ類の更なる不純物濃
度の低減への応用が期待される。
現在、当該技術開発の委託会社である DOWA メタルマイン㈱では子会社の小坂
製錬㈱に新炉(Ausmelt 炉)を建設中であり、スクラップ、焼却残渣等の処理を
計画しているが、この設備でのコークス吹込みについては当事業で開発した要
素技術が応用されている。
25
5.研究開発マネージメント・体制・資金・費用対効果等
5−1 研究開発計画と資金配分
本事業は、これまで特に大きな課題が発生することなく事業開始時に定めた
研究会開発計画に沿って順調に推進し、平成 18 年度には技術実証試験を完遂さ
せた。
本事業では、使用済み自動車に由来する廃棄物における「エネルギー使用合
理化製錬/リサイクルハイブリッドシステム」の構築のため、
「希少有価金属回
収技術」および「スラグ再資源化技術」という2つの技術開発を取り扱った。
2つの技術開発は、自動車由来の廃棄物の処理技術、製錬技術の応用という、
共通基盤からなりたっているため、同時に実施した。2つの技術開発を円滑に
かつ効率的に進めるため、有識者等による委員会や部会を事業実施者である
(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構内に設置して、委員および各委託会社
研究員が互いの技術認識を共有し、委員会の内外において意見交換等を活発に
行った。
技術開発と並行して、自動車に由来する ASR 及び使用済ニッケル水素電池の
発生・処理状況の実態・動向を把握するための実態調査、自動車に由来する廃
棄物処理技術の海外技術動向調査、平成18年度には「湿式製錬法の適用可能
性等に関する技術調査」を実施した。
「湿式製錬法の適用可能性等に関する技術調査」は、近年の非鉄金属資源を
取り巻く現状を踏まえ、本技術開発の成果を波及させてより多くの非鉄金属資
源のリサイクルを推進していく必要性があったことから、かかる情勢変化に対
応するために、湿式製錬法の技術調査を実施することとなったものである。本
調査の実施にあたっては、当初の研究開発計画や、実証試験に影響を与えない
よう、有識者からなる委員会を(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構内に設
置し、調査の実施方法や進捗状況が検討された。
26
表6
年度
項目
事業全体のスケジュール
H14
H15
H16
H17
H18
経費計(千円)
1.実態調査等
(経費内訳)
13,370
23,173
15,514
16,942 110,258*1
179,257
2.技術開発
(1)希少有価金属回収技術
基礎試験
設計
実証設備製作・要素運転
連続運転・評価
(経費内訳)
14,984
(2)スラグ再資源化技術
142,320
161,074
163,699
90,972
573,049
基礎試験
設計
実証設備製作・要素運転
連続運転・評
(経費内訳)
実 績 額 (単位:千円)
*1
:
12,888
78,694
195,218
225,674
103,530
616,004
41,242
244,187
371,806
406,315
304,760
1,368,310
湿式製錬法の適用可能性等に関する技術調査費
85,188 千円を含む
(1)希少有価金属回収技術(使用済ニッケル水素電池リサイクル技術)
①基礎試験
実証試験に先立って、ハイブリッド自動車用ニッケル水素電池の解体分別試
験、正極主体部分からのニッケル・コバルト浸出試験、負極主体部分からの水
素吸蔵合金精製試験等を実施し、実証試験の条件決定等を行った。
②設備設計・製作
基礎試験で得られたデータを基に実証試験設備の設計・製作を行った。主な
設備内容は以下のとおりである。
・正負極活物質分離装置
・電熱式雰囲気調整回転炉
・正極主体物連続化処理装置
③実証試験
製作した実証試験設備を用いて、ニッケル水素電池のリサイクルの実証試験
を行った。
研究スケジュールを表7に示す。基礎試験は平成 14 年度から開始し、技術実
証試験中も常に基本に立ち返っての継続試験を実施した。実証試験設備の製
作・導入は平成 16 年度(一部 15 年度)から平成 17 年度にかけて行い、平成 18
年度には技術実証試験を実施した。
27
表7
希少有価金属回収技術開発の研究スケジュール
年度
項目
H14
H15
H16
H17
基礎試験
解体・分別
負極活物質回収
正極活物質回収
実証試験設備導入
電熱式雰囲気
破砕(角)
正負極活物質
調整回転炉
解砕
分離装置
湿式分級
成型機
冷凍機
技術実証試験
28
H18
(2)スラグ再資源化技術(ASR 処理技術)
①基礎試験
実証試験に先立って、ASR 焼却残渣・飛灰の銅製錬処理による有価金属回収試
験、塩化・還元揮発による銅製錬スラグからの鉛・亜鉛回収試験、回収した含
鉛・亜鉛飛灰の湿式処理による製錬原料化試験等を実施し、実証試験の条件決
定等を行った。
②設備設計・製作
基礎試験で得られたデータを基に実証試験設備の設計・製作を行った。主な
設備内容は以下のとおりである。
・原料搬送設備
・電気炉設備
・排ガス処理設備
③実証試験
製作した実証試験設備を用いて、ASR 処理・スラグ再資源化の実証試験を行っ
た。
研究スケジュールを表8に示す。基礎試験は平成 14 年度から開始し、平成 17
年度まで実施した。実証試験設備の製作・導入は平成 16 年度から平成 17 年度
にかけて行い、平成 17 年度の後半には予察試験、平成 18 年度には技術実証試
験を行った。
表8
スラグ再資源化技術開発の研究スケジュール
年度
項目
H14
H15
H16
H17
H18
基礎試験
るつぼ試験
ジロー炉試験
実証試験設備導入
原料搬送設備
炉体耐火物更
新排ガス処理
設備
技術実証試験
(3)湿式製錬法の適用可能性等に関する技術調査
5−5(2)「湿式製錬法の適用可能性等に関する技術調査」の実施
29
参照
5−2 研究開発実施者の実施体制・運営
(1)研究開発実施者の事業体制
図8は、本事業の研究開発体制の概略を図示したものである。同図に示すよ
うに、本事業は、経済産業省の補助金を受けて、独立行政法人石油天然ガス・
金属鉱物資源機構(以下、「JOGMEC」という)(平成 16 年 2 月 29 日までは金属
鉱業事業団(MMAJ))が実施したものである。
なお、当該技術開発を効率的に進めるためには、自動車廃棄物発生側となる
自動車生産者と処理側となることが想定される非鉄金属業の有機的な連携が不
可欠なため、JOGMEC を中心として非鉄金属製錬技術等の学識経験者、国立研究
所の研究者、関係業界団体からなる「製錬/リサイクルハイブリッドシステム
の開発委員会」を設置し、当該研究分野に造詣が深い東北大学の中村崇教授を
委員長として、事業の適正な実施のため様々な観点からの助言を仰いだ。加え
て、委員会による事業推進の方向性を受け、その下に大学の専門家を中心とす
る希少金属回収技術部会及びスラグ再資源化技術部会を設置して、具体的な事
業内容につき議論を行った。
技術実証試験の委託先は、提案公募を行った結果、個別要素技術について優
れた知見を有すると判断された住友金属鉱山㈱及び三井金属鉱業㈱の共同企業
体並びに DOWA メタルマイン㈱の二者に決定した。
さらに、JOGMEC と大学等(北海道大学、岩手大学、東北大学、東京大学、秋
田県産業技術総合研究センター)との共同研究により、技術実証試験で得られ
る成果の理論付けあるいはデータの普遍性、信頼性等について学術的な視点で
事業をサポートした。
JOGMEC は昭和 63 年以来、超電導材用のレアアース金属のリサイクル技術開発
事業、鉱山廃さいからの金属回収技術開発事業、飛灰無害化技術開発事業等、
金属回収・リサイクル事業に関するノウハウの蓄積がある。
技術実証試験委託先の選定方法は、上述のとおり提案公募を採用し、提出さ
れた提案書について、外部評価者による「技術評価」と JOGMEC による「政策評
価」を実施した。この評価は、定量的な指標を用いた評点法によって行い、各
要素技術で最も高い得点を獲得した住友金属鉱山㈱及び三井金属鉱業㈱の共同
企業体並びに DOWA メタルマイン㈱を委託先企業として選定した。この結果、本
事業の政策的位置づけを理解し、かつ個別技術について優れた知見を有する企
業を委託先として選定することができた。
30
国(経済産業省)
定額補助
石油天然ガス・金属鉱物資源機構
共同研究
北海道大学
(JOGMEC)
東京大学
(希少有価金属回収技
委託
住友金属鉱山㈱・三井
研究連携
金属鉱業㈱共同企業体
東北大学
助言
岩手大学
秋田県産業技術総合研究センタ
(スラグ再資源化技術)
委託
研究連携
DOWA メ タルマイン
製錬/リサイクルハイブリッドシステムの開発委
希少有価金属回収技術部会(大学等)
員会
スラグ再資源化技術部会(大学等)
※ プロジェクトリーダー
独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構
金属資源技術グループ グループリーダー 辻本崇史
※ 開発責任者
住友金属鉱山株式会社 技術本部新居浜研究所長 尾島康夫
三井金属鉱業株式会社 機能材料事業本部電池材料事業部長付 菊田和幸
DOWAメタルマイン株式会社 取締役 井上 洋
図8
研究開発体制図
31
表9
研究分野
共同研究内容
共同研究者
研究テーマ
希少有価金属 北海道大学
回収技術
・正負極材の物理的分離方法に関する研究
・粉砕破砕時の微粉からの正負極材の回収
東京大学
・負極材からの不純物(正極材等)の化学的
分離方法に関する研究
・回収負極材の溶解による資源化およびそ
の前処理技術の開発
スラグ再資源 東北大学
化技術
岩手大学
・スラグ中の金属塩素化合物の挙動研究
・スラグ組成の鉛・亜鉛揮発に及ぼす影響
調査
・炉内雰囲気・スラグ還元度測定法の確立
秋田県産業技術総合研究 ・ダストの基礎物性研究
センター
・スラグを骨材に用いたコンクリートに関
する基礎的研究
(2)研究開発実施者の運営
事業全体及び個別技術要素毎の運営は、製錬/リサイクルハイブリッドシス
テムの開発委員会の助言を取り入れつつ、JOGMEC が最終的な意志決定を行った。
研究開発の進捗状況は、四半期毎に各委託先企業から JOGMEC に実施状況報告書
が提出された他、適宜、打ち合わせを行うことにより、的確に実施された。
研究開発に影響を及ぼすレベルの社会的・技術的情勢変化は無かったが、使
用済自動車及びハイブリッド自動車に関する社会的動向、法制面から見た課題、
技術動向等を把握するための実態調査を研究開発と並行して行い、情勢変化が
起こった場合にも対応できるよう積極的な情報収集、解析を実施した。
5−3 費用対効果と経済効果
(1)費用対効果
本事業は、総額 1,368 百万円を投じて実施した事業である。これに対し、将
来、本事業が実用化された場合に廃二次電池や ASR からの有価金属回収で期待
される経済効果は、金属価格によって大きく左右される。
32
H16 年平均価格
H18 年平均価格
ニッケル
1,510,800 円/t
2,804,000 円/t
コバルト
5,747,010 円/t
3,961,000 円/t
1,340,000 円/t
1,340,000 円/t
銅
356,800 円/t
834,100 円/t
鉛
137,500 円/t
192,600 円/t
亜鉛
156,600 円/t
423,400 円/t
ミッシュメタル
※1
※1 ミッシュメタルについての H16 年の実勢取引価格は不明のため
H18 年度実勢価格と同等とした。
①廃ニッケル水素電池における回収金属量および価格
前提:2020 年における国内の廃ハイブリッド自動車を年間 1,000 千台とする
金属含有量
回収率
(年間)
回収金属量
金属価格
金属価格
(年間)
(H16 年単価)
(H18 年単価)
ニッケル
9,500t
98.5%
9,357.5t
141.4 億円
262.4 億円
コバルト
1,150t
96.0%
1,104t
63.4 億円
43.7 億円
ミッシュメタル
3,350t
98.0%
3,283t
46.2 億円
46.2 億円
251.0 億円
352.3 億円
計
②ASR における回収金属量および価格
前提:2010 年における ASR 発生量を年間 300,000tとする。
金属含有量
回収率
(年間)
回収金属量
金属価格
金属価格
(年間)
(H16 年単価)
(H18 年単価)
銅
9,300t
95.0%
8,835t
31.5 億円
69.5 億円
鉛
1,080t
91.0%
982t
1.4 億円
1.9 億円
亜鉛
1,800t
74.0%
1,332t
2.1 億円
5.6 億円
35.0 億円
77.0 億円
計
(2)経済的効果
平成 18 年度に実施した実証試験の結果をもとに、当該事業を起業化した場合
の大凡の経済効果を試算する。
(2)-1 希少有価金属回収技術
2010 年のハイブリッド車の国内市場予測は 100 万台(世界市場予測 250 万台)
33
と予想されている。これが 10 年後の 2020 年に廃二次電池として回収されると
すれば、国内市場分のみで年間 Ni:9,500t、Co:1,150t、ミッシュメタル:3,350
tの量となる。
ここで、処理能力 5,000t-Ni/年を有する施設が 2 箇所必要となるものと仮定
する。
①建設費
・ 実証試験における設備取得価格:294 百万円
・ 当該施設以外に約 3 割程度余分に費用がかかると想定(実証試験では委託
会社設備を同程度使用)実際は 294/0.7=420 百万円程度かかったものと想
定
・ 実証試験設備能力1t/直(2直/日の稼動とする)
・ 稼動日数 330 日/年
以上の条件で、建設費を試算すると
建設費(5,000t/年能力)=(5,000/330×2)0.6×420 百万円=14.2 億円
国内 2 箇所で、約 28.4 億円
②原料処理費(実績値)
・消費電力費:8,300(kWh/Ni-t)×10(円/kWh:電力単価)=83,000(円/ Ni-t)
・液体窒素、水素、硫酸、苛性ソーダ、溶媒等の原材料費:171,000(円/Nit)
よって、9,500(Ni-t)×254,000(円/Ni-t)=24.1 億円
③労務費
2 億 4,000 万円/箇所×2 箇所=4.8 億円
(破砕、粉砕、分別工程:10 人、正極材処理精製工程:10 人、計 20 人/直、
1 日 2 直稼動として、人員総数は 20×2=40 人、単価 600 千円/人を想定)
④償却費
建設総額 28.4 億円(2 箇所)の償却費=28.4×0.95/9年=3.0 億円
⑤費用計
31.9 億円
⑥原料代
廃ニッケル水素電池を購入する場合、ニッケル、コバルト、ミッシュメタ
ルの相場の 85%で購入するものとする。
・ケース1 H16 年単価の場合の原料代:251.0×0.85=213.4 億円
・ケース2 H18 年単価の場合の原料代:352.3×0.85=299.5 億円
⑦投資効率
34
・ケース1 H16 年単価の場合
回収利益:251.0-213.4-31.9=5.7 億円
回収年数=28.4/5.7=5.0 年
・ケース2 H18 年単価の場合
回収利益:352.3-299.5-31.9=20.9 億円
回収年数=28.4/20.9=1.4 年
(2)-2 スラグ再資源化技術開発
2010 年には全国で年間約 300,000tの ASR が発生するものとし、ここで処理
能力 100,000t-ASR/年を有する施設が 3 箇所必要になると仮定する。
①建設費
・ 実証試験における設備取得価格:290 百万円
・ 当該施設以外のコストを同額程度かかるものとする。実際は 290/0.5=580
百万円程度かかったものと想定
・ 実証試験設備の能力は錬鍰炉スラグ 20t/日
・ ASR1t は焼却炉で1/3t に減少するとして、その焼却残渣 0.33tを処理す
るものと仮定する。
・ 稼動日数 300 日/年
以上の条件で、建設費を試算すると
建設費=(100,000×0.33/300×20)0.6×580 百万円=16.1 億円
国内 3 箇所で、約 48.3 億円
②原料処理費(実績値)
・消費電力費:239(kWh/ASR-t)×10(円/kwh:電力単価)=2,390(円/ ASR-t)
・コークス、電極等の原材料費:2,120(円/ASR-t)
よって、300,000(ASR-t)×4,510(円/ASR-t)=13.5 億円
③労務費
1.5 億円/箇所×3 箇所=4.5 億円
(電気炉 4 人×4 直=20 人、管理その他 5 人、24 時間の 3 交代、
人員総数は 21 人、単価 600 千円/人を想定)
④償却費
建設総額 48.3 億円(3 箇所)の償却費=48.3×0.95/9年=5.1 億円
⑤費用計
23.1 億円
⑥投資効率
・ケース1 H16 年単価の場合
回収利益:35.0-23.1=11.9 億円
35
回収年数=48.3/11.9=4.1 年
・ケース 2 H18 年単価の場合
回収利益:77.0-23.1=53.9 億円
回収年数=48.3/53.9=0.9 年
5−4 省エネルギー効果
本技術が確立され、実用化された場合には、プロセス全体において、原油換
算で合計年間 69,380 kl の省エネルギー効果が推定され、この削減原油金額と
しては 60US$/bbl、120 円/US$として、約 31 億円程度が見込まれる。
①希少有価金属回収技術でのエネルギー削減量
2010 年のハイブリッド車の世界市場予測は 250 万台(国内市場予測 100 万台)
と予想されている。これが 10 年後の 2020 年に廃二次電池として回収されると
すれば、国内市場分のみで年間 Ni:9,500t、Co:1,150t、ミッシュメタル:3,350
tの量となる。
従来技術エネルギー量 ※1
329 GJ/t-Ni
新技術エネルギー量(実績)
74.8 GJ/t-Ni
内訳 解体分別工程
10.5 GJ/t-Ni
回収負極活物質精製
39.6 GJ/t-Ni
回収正極活物質精製
24.7 GJ/t-Ni
削減エネルギー量
254.8 GJ/t-Ni
エネルギー消費量削減率
原油換算削減量
77.2%
※2
62,380 kL/年
※1
日本におけるフェロニッケル製錬の平均値(電気・ガス・石炭
のエネルギー量)
(BROOK HUNT:NICKEL INDUSTRY COST STUDY 2005)
※2 1J =0.239cal、1kcal=1.08×10-7 kL
②スラグ再資源化技術でのエネルギー削減量
<前提条件>
a. ASR 中の金属含有量は、銅:3.3%、鉛:0.4%、亜鉛:1%程度
b. 上 記 金 属 の ス ラ グ 中 へ の ロ ス を 考 慮 し た 場 合 の 回 収 量 は 、 (A) 銅 :
31kg/t-ASR、(B)鉛:3.6kg/t-ASR、(C)亜鉛:6kg/t-ASR
c. 新技術により再資源化されるスラグは、土木資材として利用が想定され、
その生成量は ASR 重量の 1/3
d. 2010 年の ASR 発生量を年間 300,000tとして計算(独立行政法人新エネル
36
ギー・産業技術総合開発機構調査結果)
(i)従来技術での処理エネルギー量
新技術は、焼却後の ASR を製錬原料とするためのものであるので、従来技術
の処理エネルギー量は鉱石を精鉱まで加工(採掘・選鉱)するために必要な
エネルギー量とする。金属を鉱石から製品(電気銅、電気亜鉛)まで処理す
るために必要なエネルギー量は以下のとおり。
鉱石⇒製品までの必要エネルギー 銅 97.2×103MJ/t
※1
亜鉛 64.9×103MJ/t
精鉱⇒製品までの必要エネルギー 銅 25.1×103MJ/t
※2 (自熔炉方式)
亜鉛 38.1×103MJ/t
(ISP 法)
銅 72.1×103MJ/t
亜鉛 26.8×103MJ/t
鉱石⇒精鉱までの必要エネルギー
※1 出典:H.H.Kellogg, "Energy for Metal Production in the 21st Century"
Productivity and Technology in the Metallurgical Industries
PP 145-154 (The Minerals, Metals & Materials Society, 1989)
※2 出典:H.H.Kellogg, "The State of Nonferrous Extractive Metallurgy"
Journal of Metals Vol.34 No.10 (1982) PP 35-42
以上から、ASR1tから回収される上記(A)、(B)、(C)の金属量を従来技術
で得るために必要なエネルギー量は、
72.1×103MJ/t×31kg/t-ASR+26.8×103MJ/t×6kg/t-ASR=2,396MJ/t-ASR
※ なお、ISP 法では鉛は亜鉛の副産物として回収されるため、鉛回収に必要
なエネルギーは計算対象外とする。
また、新技術により再資源化されたスラグは、土木資材として利用されるが、
土木用の骨材を採石・採砂する際のエネルギー量は 69,265kJ/t(国内骨材会
社6社の平均値)となり、従って、ASR1tから生成されるスラグと同量の骨
材を採石・採砂するためのエネルギーは、69,265kJ/t×0.33t-スラグ/t-SD=
23.0MJ/t-ASR で、以上から従来技術での処理エネルギー量は 2396+23=
2,419MJ/t-ASR となる。
(ⅱ)新技術での使用エネルギー量(実績値)
項目
(単位:MJ/t-ASR)
エネルギー原単位
調合コークス
163
吹込みコークス
247
黒鉛電極
122
37
軽油
92
蒸気
29
電気炉電力
784
プラント電力
80
合計
1,517
(ⅲ)新技術での削減エネルギー量
従来技術での処理エネルギー
量
2,419 MJ/t-ASR
新技術での使用エネルギー量
(実績値)
1,517 MJ/t-ASR
新技術での削減エネルギー量
902 MJ/t-ASR
原油換算削減量
6,980 kL/年
※1
-7
※1 1kcal=1.08×10
kL、ASR 発生量:30 万t/年
5−5 情勢変化への対応
(1)使用済みニッケル水素電池及び ASR の発生予測
本技術開発の対象としているハイブリッド自動車用使用済ニッケル水素電池
及び ASR の現時点の予測発生量は以下に述べるとおり膨大であり、技術開発の
必要性はプロジェクト開始時と比較して変わりない。
(参考1)使用済ニッケル水素電池の発生量予測
本事業では、開発技術の必要性を探るため、HEV 車の市場規模予測を実施した。
表10にその結果を示す。表10に示すとおり、HEV 車は 2010 年には世界計で
250 万台程度と予測されている。
表10 HEV 車の市場規模予測 (本事業実態調査:2004 年矢野経済研究所)
(単位:千台)
2005 年
2006 年
2007 年
2008 年
2009 年
国内
150
300
450
600
750
1,000
北米
130
220
300
530
750
1,000
欧州その
他
30
50
90
200
350
500
計
310
570
840
1,330
1,850
2,500
38
2010 年
(参考2)使用済自動車に由来する ASR 排出量
使用済自動車のシュレッダーレス処理(全部再資源化)の進展により、今後、
ASR 排出量は漸減すると予測されているが、2010 年の排出量はなお 30 万トン以
上に上る見込みである。
(出典:シュレッダーダストの排出量及び有効利用の現状と予測に関する調査、
2003 年 9 月 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
(2)「湿式製錬法の適用可能性等に関する技術調査」の実施
(i)調査を行った経緯
近年のレアメタル供給を巡る環境の変化により、レアメタルの安定供給の確
保は我が国産業の国際競争力を維持するために、極めて重要な課題となってい
る。金属は使用済みの製品からリサイクルして再度利用することが原理的に可
能であり、レアメタルのリサイクル技術の高度化、普及による回収率の向上の
必要性が高まってきている。このため、平成18年度には、本事業で得られた
技術を応用し、より多くの製品に適用することを目的に、本技術の応用を行う
ことが可能な分野を洗い出すための調査を行うこととした。
(ii)調査の目的
本事業で得られた技術は、自動車関連のみならず、その他の廃ニッケル水素
電池や家電シュレッダーダスト、廃電子基板の処理にも応用することが期待出
来るものである。
その他の分野に応用していくにあたり、個々に要素技術や社会的ニーズが異
なるため、未利用レアメタルや含レアメタル廃棄物を対象に基本的な調査・試
験等を実施し、今後の技術開発の方向性を検討することにした。
(iii)内容および結果
公募により採択した10テーマについて、調査を行った。それぞれの調査内
容は、使用済み触媒関係が 3 件、レアアース磁石に関して 2 件、その他 ITO 透
明電極、小型燃料電池、レアアース蛍光体がそれぞれ 1 件であり、その他に貴
金属に関する溶解基礎試験および LCA 調査となっており、その先端性、斬新性
等で各々評価できる内容であった。特に昨今のレアメタル、レアアース等の金
属価格の高騰、資源枯渇・偏在に伴う供給不安等の背景から、現在家電、触媒
等に必須金属である貴金属・レアアース・レアメタルについてのリサイクル技
術調査が大部分を占めており、今後の技術開発の方向性を表した結果となった。
39
表11
研究テーマ
1 Nd-Fe-B 系希土類磁
湿式製錬法の適用可能性等の技術調査の概要
目的
Nd-Fe-B 系希土類磁石
内容
結果
浸出試験、加水分解による ・1 モルの硫酸、硝酸それぞれ
石リサイクルへの湿
のリサイクルのため、 鉄沈殿除去、希土類の水酸
において、希土類は 100%の浸
式プロセスの適用可
希土類等の分離回収
化物での回収試験。鉄沈殿
出率であった。またpH4 の調
能性に関する調査研
方法及び、鉄水酸化物
において、マイクロバブル
整で鉄を 100%沈殿できた。
究
の沈殿法として、マイ
による浮遊選別実験を実
・マイクロバブルによる凝集
(東北大)
クロバブル浮上分離
施
浮上分離については鉄水酸化
法の有効性を調査す
物の固液分離に有効であるこ
る
とが分った。
(実績額 6,160 千円)
湿式製錬・リサイクル
低品位ニッケル鉱、使用済
・低品位ニッケル鉱について
レアメタルのバイオ
分野へのバクテリア
み触媒を用いて、鉄還元
の鉄還元菌による試験では有
リーチングに関する
リーチング技術の可
菌、硫酸酸化古細菌を使っ
効であった。
調査
能性を調査する
ての浸出試験を実施
・使用済み触媒についての硫
2 使用済み触媒からの
酸酸化古細菌によるリーチン
(大阪府立大)
グ試験は充分な効果なし。
(付
着石油成分および微生物の馴
化不足による)
(実績額 7,505 千円)
3 亜鉛蒸気処理による
貴金属の亜鉛蒸気処
Pt を亜鉛蒸気との反応に
・υ相とγ,相の Pt-Zn 化合物
貴金属の高速浸出技
理による高速浸出技
より金属間化合物をつく
をつくり、Pt の溶解速度を測
術に関する調査
術を確立し、貴金属リ
り、Pt の溶解速度を測定。 定。
(東京大)
サイクルの効率向上
・γ,相は純 Pt に比べて二桁
(実績額 8,500 千円) に資する
以上溶解速度が大きかった。
4 難処理有価物含有二
超臨界流体抽出法に
・使用済み触媒に含有する
・有機物をステアリン酸で代
次原料の新処理法に
よる使用済み触媒か
有機物を超臨界二酸化炭
表させた試験で、有機物除去
関する調査
らのニッケル、コバル
素により抽出分離する試
の可能性が示された。
(住友金属鉱山)
ト、白金族金属等のレ
験を実施
・白金族金属の抽出回収はβ
アメタルの回収可能
・超臨界二酸化炭素を媒体
ージケトンのキレート剤を用
性を調査する。
とし、キレート剤を用いて
いて回収できる可能性があ
使用済み触媒から白金族
る。
金属を回収する試験を実
(実績額 25,630 円)
施
ITO 透明電極を硝酸溶液に
・ITO 透明電極の浸出について
インジウムの回収に
クル率の向上のため、 溶かし、これから無機・有
は、80℃、1M 硝酸で溶解可能
関する技術調査
無機・有機複合吸着剤
機複合吸着剤を用いての
・新規の無機・有機複合吸着
(産業創造研究所)
を用いた回収方法を
インジウム吸着試験を実
剤での分離試験を実施し、イ
5 ITO 透明電極からの
インジウムのリサイ
40
検討する。
施。
ンジウムと Al、Ni、Cu との分
離が良好であることを確認し
た。
(実績額 6,998 千円)
6 レアアース磁石から
ネオジム含有ハード
・オートクレーブを用いて
・オートクレーブを用い、温
の有価金属高効率回
ディスクドライブに
の浸出試験を実施。
度 180℃での浸出試験で、希土
収システム開発に関
ついての浸出方法、溶
・MODGA を使っての抽出・
類はほぼ全量浸出した。
する調査研究
媒抽出剤の開発を目
逆抽出試験を実施
・MODGA による希土類金属の選
(産業技術総合研究
指す
択的抽出分離および純水によ
所)
る逆抽出について、良好な結
(実績額 7,150 千円)
果が得られた。
7 排ガス触媒からの高
自動車排ガス触媒中
・新規抽出剤として、
・抽出試験では MOTDGA 及び化
選択ロジウム分離法
のロジウムの回収に
MOTDGA および化合物 A(特
合物 A について試験を行い、
に関する調査研究
おいて、高選択性抽出
許出願中準備中)を用いて
抽出率はそれぞれ、70%及び
(産業技術総合研究
剤の開発を目指す
の抽出試験を実施
80%以上の結果を得た。
・逆抽出においては、MOTDGA
所)
は逆抽出困難であったが、化
合物 A については塩酸での選
択的回収が可能であった。
(実績額 6,010 千円)
8 小型燃料電池リサイ
モバイル機器用小型
小型燃料電池の膜ー電極
・超音波照射により、マイル
クルに係る PGM 濃縮
燃料電池からのプラ
接合体(MEA)をエタノール
ドなエタノール中に MEA を浸
技術の調査研究
チナ触媒およびフッ
中にマイルドな条件で浸
漬した結果、プラチナ触媒を
(産業技術総合研究
素系高分子膜の効率
漬し、プラチナ触媒と電解
回収することは可能であっ
所)
的回収を目指す
質膜との分離回収試験を
た。
実施
・回収した電解質膜について
の変形は抑制できなかった
(実績額 4,080 千円)
が、いくつかの改善点を見出
した。
9 レアアース系蛍光体
3波長蛍光体から希
3波長蛍光体について、硫
硫酸(30∼70g/l)により、7
の高効率リサイクル
土類を湿式法にて分
酸による浸出試験、酸性有
0℃で Y,Eu とも全量浸出可能
システム開発に係る
離回収する方法を確
機りん化合物による溶媒
であった。
調査研究
立するための基礎試
抽出試験を実施
・溶媒抽出においての溶媒は、
(産業技術総合研究
験を実施する
酸性有機りん化合物の中で、
所)
PC88A が最も Y,Eu の分離に適
(実績額 6,130 千円)
していることが判明した。
1
循環型社会における
・ニッケル、インジウ ・論文、報告書等をもとに、 Ni では、メッキ廃液、使用済
0
非鉄金属リサイクル
ムを対象に、需給状
フロー解析、二酸化炭素排
み電池、使用済み触媒、また、
のライフサイクルで
況、技術動向を調査
出量の試算を行い、リサイ
インジウムでは液晶パネルか
41
クル評価を実施
らのリサイクルとも二酸化炭
の二酸化炭素排出量
し、リサイクルに伴う
評価
ライフサイクルでの
素排出削減に寄与する可能性
(産業技術総合研究
環境負荷の推定を行
がある。また、回収 Ni 量あた
所)
う
りの削減効果は使用済み電池
の方が使用済み触媒より大き
(実績額 7,025 千円)
い。
(iv)成果
平成 18 年度に実施した湿式製錬法の適用可能性等の技術調査については各テ
ーマとも今後の技術の方向性を示すに値する有用な結果が得られたが、特にそ
の中で、レアアース磁石からのネオジム等の有価金属回収の技術調査について
は平成 19 年度のエネルギー使用合理化技術開発「希少金属等高効率回収システ
ム」の技術開発の中で一つの案件として取り上げられ、引き続き試験を行うこ
ととなった。
42
6.成果の普及、広報
本事業の結果は、「報告書」として取りまとめられ、関係企業、機関、大学等
に配布している。他に成果報告や学会発表を行い、成果の普及に努めている。
[報告書]
・平成 14 年度 エネルギー使用合理化技術開発(エネルギー使用合理化製錬/
リサイクルハイブリッドシステムの開発事業)成果報告書 希少有価金属回
収技術編
・平成 14 年度 エネルギー使用合理化技術開発(エネルギー使用合理化製錬/
リサイクルハイブリッドシステムの開発事業)成果報告書 スラグ再資源化
技術編
・平成 15 年度 エネルギー使用合理化技術開発(エネルギー使用合理化製錬/
リサイクルハイブリッドシステムの開発事業)成果報告書 希少有価金属回
収技術編
・平成 15 年度 エネルギー使用合理化技術開発(エネルギー使用合理化製錬/
リサイクルハイブリッドシステムの開発事業)成果報告書 スラグ再資源化
技術編
・平成 15 年度 エネルギー使用合理化技術開発 (製錬/リサイクルハイブリ
ッドシステムの開発事業)海外技術動向調査報告書
・平成 16 年度 エネルギー使用合理化技術開発(エネルギー使用合理化製錬/
リサイクルハイブリッドシステムの開発事業)成果報告書 希少有価金属回
収技術編
・平成 16 年度 エネルギー使用合理化技術開発(エネルギー使用合理化製錬/
リサイクルハイブリッドシステムの開発事業)成果報告書 スラグ再資源化
技術編
・平成 17 年度 エネルギー使用合理化技術開発(エネルギー使用合理化製錬/
リサイクルハイブリッドシステムの開発事業)成果報告書 希少有価金属回
収技術編
・平成 17 年度 エネルギー使用合理化技術開発(エネルギー使用合理化製錬/
リサイクルハイブリッドシステムの開発事業)成果報告書 スラグ再資源化
技術編
・平成 18 年度 エネルギー使用合理化技術開発(エネルギー使用合理化製錬/
リサイクルハイブリッドシステムの開発事業)成果報告書 希少有価金属回
収技術編
・平成 18 年度 エネルギー使用合理化技術開発(エネルギー使用合理化製錬/
リサイクルハイブリッドシステムの開発事業)成果報告書 スラグ再資源化
43
技術編
・エネルギー使用合理化技術開発(エネルギー使用合理化製錬/リサイクルハイ
ブリッドシステムの開発事業)
総括報告書
・エネルギー使用合理化技術開発(エネルギー使用合理化製錬/リサイクルハイ
ブリッドシステムの開発事業)
湿式製錬法の適用可能性等に関する技術調
査編
[成果報告・学会発表]
発表場所
3rd International Electronic
s Recycling Congress
(於:スイス・バーゼル)
(社)資源・素材学会平成 15 年度
(2004 年)春季大会
(於:早稲田大学)
平成 15 年度石油天然ガス・金属
鉱物資源機構成果報告会(生産
技術開発・鉱害防止開発事業)
(於:川崎)
(社)資源・素材学会平成 16 年度
(2004 年)秋季大会
(於:岩手大学)
平成 16 年度石油天然ガス・金属
鉱物資源機構成果報告会(生産
技術)
(於:川崎)
Earth 2005(中国非鉄金属学会
主催、資源素材学会共催)
(於:北京)
平成 17 年度石油天然ガス・金属
鉱物資源機構成果報告会(生産
技術)
(於:新橋)
(社)資源・素材学会平成 18 年度
(2007 年)春季大会
(於:早稲田大学)
発表年月
平成 16 年 1 月
平成 16 年 3 月
演題
Recovery of Valuable Metal
s from Wasted Secondary Ba
tteries
物理選別による廃 2 次電池中
の有価物回収
平成 16 年 6 月
製錬/リサイクルハイブリッ
ドシステムの開発
平成 16 年 9 月
希土類合金含有混合物からの
有価金属の分離回収
平成 17 年 10 月
製錬/リサイクルハイブリッ
ドシステムの開発
平成 17 年 11 月
Recycling of Nickel Metal H
ydride Battery for Hybrid V
ehicles
製錬/リサイクルハイブリッ
ドシステムの開発
平成 18 年 8 月
平成 19 年 3 月
電子・機能性材料の開発とそ
れらに用いられる金属資源の
確保
[特許申請]
出願番号
出願日
出願者
出願名称
2003-350282 2003.10.9 三井金属鉱業株式会 水素吸蔵合金攻勢元素回収
社
方法
44
第3章 評価
1. 事業の目的・政策的位置付けの妥当性
急速な普及が予想されるハイブリッド自動車の使用済ニッケル水素電池や自動車シ
ュレッダーダストのリサイクル率の向上は重要な課題である。省エネルギー、低処理
コストを前提とした新たなリサイクル技術を開発することは、社会的、経済的に意義
があり、事業目的として妥当である。また、資源の乏しい我が国において、近年の金
属資源を取り巻く状況を考えれば、新たな有価金属の回収技術の開発はきわめて重要
であり、その意義は大きい。
自動車リサイクル率の向上、環境負荷の低減、省エネルギー等、政策的、公共的な
研究領域が多いことから、国が積極的にイニシアティブを取ることは妥当である。
成果を自動車分野に限ることなく広く普及させていくことも視野にいれ、技術的な
ディファクトスタンダードとすることが望ましい。
【肯定的意見】
○ 資源の乏しい我が国において、省エネルギー、低処理コストを前提とした新たな有
価金属のリサイクル技術の開発は極めて重要である。本事業で開発された技術は、
先進性、先導性があり、評価できる。
○ 現在、廃棄自動車関係のリサイクル率の向上は重要であり、事業目的として妥当で
あり、政策的にも明確に位置づけられる。
○ 環境負荷の低減、リサイクル技術の開発、それらに伴うコストの負担など、諸般の
事情を考慮すれば、国としてイニシアティブを取るべき物として、十分に妥当であ
る。
○ 使用済みニッケル水素電池のリサイクルと、シュレッダーダスト中の有価金属のリ
サイクルは、自動車大国である我が国にとって、極めて重要な課題であり、その意
義は大きい。特に最近の金属資源を取り巻く状況を考えれば、本事業の優れた先見
性は高く評価される。
○ 有価金属のリサイクルが、我が国の重要課題であるとともに、省エネルギーの実現
によるリサイクル事業のコスト低減等、基礎的、公共的な研究領域が多いことを考
えれば、国が積極的にイニシアティブを取ることは妥当である。
【問題点・改善すべき点】
○ 成果を技術的なディファクトスタンダードとすることが望ましい。
○ 本研究開発で得られた成果は、自動車分野に限ることなく、他の分野でも広く応用
活用すべきと考える。
45
2.研究開発等の目標の妥当性
本事業においては実用化を前提とした具体的かつ明確な研究開発目標及び目標水準
が示されており、かつ、それらは現状の技術水準より高度であり妥当である。また、達
成すべき指標にも合理性があり、適切である。
【肯定的意見】
○ 各開発項目とも、達成目標は明確に示されており、そのレベルは現状の水準より高
いレベルにあり、妥当である。目標設定根拠は合理性があり適正である。
○ 目標設定は妥当であり、具体的な達成目標が定量的に示されている。
○ 本事業においては、実用化を前提とした具体的かつ明確な研究開発目標および目標
水準が示されており、かつ、それらは現状の技術水準より高度であり、妥当である
と判断される。
【問題点・改善すべき点】
○ 特になし
3.成果、目標の達成度の妥当性
実験室スケールからパイロットプラントまでスケールアップして、技術の確立
が行われた。学会での発表、特許の取得を行い、得られた成果は全体として評価
できる。論文発表、特許取得件数などの数が少ないが、論文には時間を要するの
で、今後の更なる発表が期待される。また、本事業で得られた成果は広く公表し、
自動車関連分野に限ることなく、他の分野でも幅広くその成果が有効活用される
ようにすべきである。
目標達成度については、ほぼ目標を達成しており、一部では目標を上回るレベ
ルに達しており、全体として評価できる。
【肯定的意見】
○ 発表、特許の出願など成果発表を行っている。
○ 各技術開発の目標達成度は、一部の項目(スラグ再資源化技術開発における熱回収
率割合)を除き、全ての項目において当初目標を達成しており、得られた成果は全
体として評価できる。
○ 十分に当初の目標を達成しているといえる。実験室スケールからパイロットプラン
トまで、スケールアップして、技術の確立が行われている。
46
○ 成果は明示され、目標は達成されている。
○ 「希少有価金属回収」および「スラグ再資源化技術」とも目標を上回る成果を上げ
ることが出来たと評価される。
【問題点・改善すべき点】
○ 論文には時間を要するので今後のさらなる発表が期待される。
○ 本事業で得られた成果は、広く公表し、自動車関連分野に限ることなく、広範囲の
分野でその成果が有効活用されるようにすべきと考える。
4.事業化、波及効果についての妥当性
「希少有価金属回収技術」、
「スラグ再資源化技術」とも、技術開発レベルは事業化可
能なレベルに至ったと評価できる。処理すべき材料の供給量の確保が出来ないため「希
少有価金属回収技術」は直ちに事業化することは困難であるが、いずれ処理すべき材料
が大量に供給される見込みであることを考えると、適切な事業化の見通しが示されてい
る。「スラグ再資源化技術」で開発された技術は、現在「自動車リサイクル法」が本格
稼働されているところでもあり、早期の実用化が望まれる。
実際に事業化するためには、「材料の供給量の確保」や「既存のリサイクル業者との
競争」の現状及び今後の動向、「スラグから金属を回収した後の最終残渣の建設骨材等
としての販売計画」等を把握しておく必要がある。
波及効果は期待以上の効果があったわけではないが、妥当である。今後自動車に限定
することなく、他の分野にも幅広く波及することが期待される。「希少有価金属回収技
術」ではニッケル水素電池を扱っているが、将来的にはリチウムイオン電池のリサイク
ル技術も必要となると考えられる。
【肯定的意見】
○ 使用済みニッケル水素電池は搭載されており、リサイクル技術を開発する事業化に
ついては妥当。将来は、2次電池としてリチウムイオン電池のリサイクル技術も必
要となるだろう。
○ 本事業で開発された技術は、
「有価金属回収技術」、
「スラグ再資源化技術」とも、実
用化に必要なレベルに達しており、これらの成果は今後各分野で広く有効活用され
ることが期待される。
○ 我が国の置かれた現状を見れば、いずれ必ず実用化しなければならない技術であり、
適切な事業化の見通しが示されている。
○ 技術開発結果は、事業化可能なレベルに達する成果をあげたものと評価できるが、
処理すべき材料の供給量の確保が出来ないため事業化の見通しが立っていない。
47
【問題点・改善すべき点】
○ スラグ再資源化技術で開発された技術は、現在「自動車リサイクル法」が本格稼働
されているところでもあり、早期の実用化が望まれる。
5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等の妥当性
基礎試験から実用試験に至る一連の研究開発計画は妥当であった。
研究開発実施者である独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構は、関連企業、
大学と連携を図り、2つの技術開発を同時に推進する上で、技術開発の進捗状況など、
共通する部分は情報共有をするなどして、2つの事業を連携することで、より効率的な
運営が出来たものと評価できる。
最終年度(H18年度)に実施した、
「湿式製錬法の適用可能性等に関する技術調査」
は当初の研究開発計画にはなかったものであり、情勢変化への対応として急遽実施が必
要になった要因を分析し、今後の研究開発計画の建て方に反映させていくべきである。
【肯定的意見】
○ 計画、実施者、資金配分、費用対効果は妥当と考えられる。将来の二次電池とし
て、リチウムイオン電池のリサイクル技術の必要性が生じる可能性があり、新たな
技術開発も求められる。
○ 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構、関連企業、大学が連携を図り、事
業は効率良く推進された。基礎試験から実用試験に至る一連の研究開発スケジュー
ルは妥当であった。
○ 産学共同で基礎的な開発がなされ、その後企業においてスケールアップしたプロセ
スで技術開発が行われており、適切な研究開発マネジメントがなされていた。
【問題点・改善すべき点】
○ 最終年度(H18年度)に実施した、
「湿式製錬法の適用可能性等に関する技術調査」
は当初の研究開発計画にはなかったものであり、情勢変化への対応として急遽実施
が必要になった要因を分析し、今後の研究開発計画の建て方に反映させていくべき
である。
48
6.総合評価
本技術開発で得られた成果は、まさに時代の要求に答えた、我が国にとって重要な事
業であり、「希少有価金属回収技術」、「スラグ再資源化技術」とも、各開発項目におい
て、当初の目標をほぼ達成しており、事業化可能なレベルに至った点で評価できる。早
期事業化は困難であるが、いずれ必要となる技術であり、他の分野の廃棄物のリサイク
ルにも波及し、大いにリサイクル率の向上に貢献することが期待できる。
ハイブリッド自動車の電池としては、ニッケル水素電池から、携帯電話、パソコンな
どにも広く使用されるリチウムイオン電池に移行する可能性があるため、そのリサイク
ル技術開発を今後検討することが望まれる。
また、本技術開発の成果を自動車に限らず、その他の廃棄物のリサイクル技術の開発
に普及させることも検討するべきであり、そのために「エネルギー使用合理化製錬/リ
サイクルハイブリッドシステム」技術の特性を明確化し、関係学会や関係機関に幅広く
普及啓発し、ディフェクトスタンダードとするべきである。
【肯定的意見】
○ 平成14年度から18年度の研究として妥当であり、良い成果が得られている。
○ 本技術開発で得られた結果は、
「希少有価金属回収技術」、
「スラグ再資源化技術」と
も、各開発項目において、当初目標をほぼ達成しており、多くの新たな技術が開発
された。本事業で開発された技術は、関連分野における今後のリサイクル向上に大
きく貢献するものと期待できる。
○ まさに時代の要求に答えた、我が国にとって重要な事業であり、当初の目標を十分
に達成しているといえる。個々の技術は他の廃棄物リサイクルにも応用可能であり、
早急な事業化が望まれる。
○ 早期実用化の可能性については、必ずしも明確ではないが、長期的な視野に立てば
確実に必要となる技術開発であり、着実に推進されるべきプロジェクトであると考
えられる。
【問題点・改善すべき点】
○ 今後、リチウムイオン電池のリサイクル技術を検討することが望まれる。
○ 本事業では、多くの貴重な成果が得られており、これらの成果の関連分野への更な
る広報活動を促進すべきと考える。
○ 「エネルギー使用合理化製錬/リサイクルハイブリッドシステム」という新しいプ
ロセスを今後のディファクトスタンダードの一つにするためにも、そのプロセス概
念を明確な形で関係学会や関係機関に広報していくことが必要であると思われる。
49
7.今後の研究開発の方向等に関する提言
個々の技術は、当初の目標を達成することができており、十分に実用化の見込みがあ
るものと思われる。近年ハイブリッド自動車の普及は著しく増加傾向にあり、近い将来、
使用済みニッケル水素電池が排出されることが予想されており、今後も更に実用化技術
の開発を促進していくことが望まれる。今後、自動車リサイクル料金として集めた費用
の配分も含めて、リサイクルの実用化を計って頂きたい。
今回の事業では有価金属回収とスラグ再資源化という 2 つの異なるプロセスを同時
に取り上げたが、両者の事業化時期は異なると思われ、今後は各々独立して、より実処
理量に近いスケールでの研究開発を行うことが望ましい。また、ハイブリッド自動車の
二次電池としては、将来、ニッケル水素電池以外に、リチウムイオン電池の使用も考え
られるので、その対策も必要と考えられる。
「スラグ再資源化技術」では、近年各種研究が進んでおり、さらなる亜鉛の回収率、
脱塩、熱回収率の向上が望まれる。また、自動車以外の組成の異なる廃棄物への本開発
技術の応用活用も今後検討すべき課題として残されている。
将来的なレアメタルの需給逼迫を考慮すれば、革新的なリサイクル技術の開発および
代替材料やメカニズムの開発などを進めていく必要があるものと考えられる。「湿式製
錬法の適用可能性等に関する技術調査」を踏まえて、新たな湿式製錬法の先進的な処理
方法を用いた省エネルギー型の回収技術調査を実施することが望まれる。
全体部分について
○ 非常によいチームで研究され、良好な成果を得ていると考えられる。
○ 省エネルギー効果等は、現行のプロセスとの比較によって評価されているが、今後、
LCA 的な観点から、プロセスを評価することが必要になるものと思われる。
実用化について
○ 個々の技術は、当初の目標を達成することができており、十分に実用化の見込みが
あるものと思われる。
○ 近年ハイブリッド自動車の普及は著しく増加傾向にあり、近い将来、使用済みニッ
ケル水素電池が排出されることが予想されており、今後も更に実用化技術の開発を
促進していくことが望まれる。
○ 今後、自動車リサイクル料金として集めた費用の配分も含めて、リサイクルの実用
化を計って頂きたい。
今後の研究開発の方向性について
○ 今回の事業では有価金属回収とスラグ再資源化という 2 つの異なるプロセスを同時
に取り上げたが、両者の事業化時期も異なると思われ、各々独立して、より実処理
50
量に近い段階での研究開発を行うことが望ましい。
○ ハイブリッド自動車の二次電池としては、将来、ニッケル水素電池以外に、リチウ
ムイオン電池の使用も考えられるので、その対策も必要と考えられる。
○ 「スラグ再資源化技術」では、近年各種研究が進んでおり、さらなる亜鉛の回収率、
脱塩、熱回収率の向上が望まれる。
○ また、自動車以外の組成の異なる廃棄物への本開発技術の応用活用も今後検討すべ
き課題として残されている。
○ 将来的なレアメタルの需給逼迫を考慮すれば、その関連資源の革新的なリサイクル
技術の開発および代替材料やメカニズムの開発などへ方向付ける必要があるものと
考えられる。
○ 「湿式精錬法の適用可能性等に関する技術調査」を踏まえて、新たな湿式精錬法の
先進的な処理方法を用いた省エネルギー型の回収技術調査を実施することが望まれ
る。
8.個別要素技術に関するコメント
①希少有価金属回収技術開発
成果に対する評価
当初の目標は達成され、一部で目標を上回る成果を達成したと評価できる。
これまで、処理困難であった希少有価金属の回収技術が本事業により開発され、社会的、
経済的な意義は大きい。
実用化の見通しに関する評価
早期実用化に向け、更なる処理費用の削減が必要になってくるが、ニッケル水素電池
の破砕における冷凍破砕は、液体窒素に費用がかかるので、更に各種の効率的な破砕方
法の開発が望まれる。
2020年頃を目処に、使用済みニッケル水素電池が大量に廃棄物として発生するこ
とが予測されるので、今後大量処理、スケールアップに伴う問題についても検討がなさ
れるべきである。一方で、ハイブリッド自動車の二次電池は、ニッケル水素電池から、
リチウムイオン電池に置き替わる見通しもあることから、その回収技術の開発も必要で
ある。
【成果に対する評価】
○ ニッケル水素電池の破砕における冷凍破砕は、液体窒素に費用がかかるので、更に
各種の効率的な破砕方法の開発が望まれる。
○ これまで困難であった希少有価金属の回収技術が本事業により新たに開発され、そ
の技術は先進性、先導性があり、達成された成果の意義は大きい。
51
○ 十分に目標が達成されており、期待できる成果が得られている。
○ 回収率等の目標は確かに達成されている。
○ 初期の目標を上回る成果を達成したと評価できる。
○ 従来のフェロニッケルとスラグ製造方式とは異なり、解体、分離、精製プロセスに
より、レアアース、コバルト塩、ニッケル塩を回収し、電池材料とした成果は大き
い。
【実用化の見通しに関する評価】
○ 現状では、実用化の見通しが期待される。
○ これまでの技術開発で残された「事業化達成のための課題」については、今後も継
続して検討すべきと考える。
○ 今後、使用済みニッケル水素電池が大量に廃棄物として発生することが予測される
ので、十分に事業化の可能性はあるものと思われる。
○ 大量処理、スケールアップに伴う問題についても検討がなされるべきである。
○ ハイブリッド車の二次電池が市場に出回るのは2020年頃であると予想される。
また、携帯用の小型二次電池は2000年をピークにリチウムイオン電池に置き換
えが進んでいることから、当該成果を直ちに事業化する見通しは立っていない。
②スラグ再資源化技術開発
成果に対する評価
当初の目標はほぼ達成され、一部で目標を上回る成果を達成したと評価できる。
得られた成果は廃棄物削減の観点から、その意義は非常に大きい。この成果は、他の
産業廃棄物処理にも応用可能であり、有価金属回収の重要な技術となると思われる。
亜鉛の74%の回収率、熱回収率64%を上げる更なる技術開発が望まれる。
実用化の見通しに関する評価
早期事業化に向けて、処理量の増大にも対応出来る技術開発を行うことが必要であ
る。一方で、広域集荷の進展による既存のリサイクル業者との競争、シュレッダーレ
ス処理の進展を考慮にいれて、損益分岐点を越えたASRの量が確保可能かを検討し
ておく必要がある。また、スラグから金属を回収した後の最終残渣の建設骨材等とし
ての販売計画の確立(販売先明確化)等も検討すべきである。
技術的には、さらなる亜鉛の回収率、脱塩、熱回収率の向上が望まれる。塩素を含
む工程の最終処理(塩化物処理、塩素を含む物質の処理廃棄、無害化)に関わる技術
開発を真剣に検討していく必要がある。
本開発技術の成果が自動車以外の廃棄物へ応用、活用されることが期待される。
【成果に対する評価】
52
○ 亜鉛の74%の回収率を上げるさらなる技術開発が望まれる。
○ 熱回収率64%を上げる更なる技術開発が望まれる。
○ 計画段階における当初目標は、ほぼ全ての開発項目において達成されており、得ら
れた成果は廃棄物削減の観点からその意義は非常に大きい。
○ 十分に目標が達成されており、期待出来る効果が得られている。他の産業廃棄物処
理にも応用可能であり、有価金属回収の重要な技術となると思われる。
○ 熱回収率以外は、目標を上回る成果を上げたものと評価できる。熱回収率について
も目標70%に対して64%と、ほぼ目標を達成している。
○ 銅製錬自溶炉・転炉にて銅・貴金属を、電気炉を用いて骨材に適したスラグを精製
し、揮発した亜鉛、鉛を効率的に回収した成果は大きい。
【事業化の見通しに関する評価】
○ 現状では、事業化の見通しが期待される。
○ 開発された技術の民間への転用が検討されており、今後、工業レベルでの実稼働が
早期に実現されることを期待したい。また、自動車以外の廃棄物への本開発技術の
応用活用についても今後さらに促進されることを期待したい。
○ 処理量の増大にも対応出来る技術開発を行うことにより、事業化は可能である。廃
熱処理における新たな技術開発も必要である。
○ 塩素を含む工程の最終処理(塩化物処理、塩素を含む物質の処理廃棄、無害化)に
関わる技術開発を真剣に検討していく必要がある。
○ 事業化に当たっては、広域集荷やシュレッダーレス処理の進展を考慮にいれて、損
益分岐点を越えたASR排出量が確保可能かを検討する必要がある。
○ 実用化に当たっては、既存のリサイクル業者との競争、スラグ(又はASR)の安
定供給、スラグから金属を回収した後の最終残渣の建設骨材等としての販売計画の
確立(販売先明確化)等今後さらに検討すべき課題はまだまだ残されている。
53
第4章 評点法による評点結果
「エネルギー使用合理化製錬/リサイクルハイブリッドシステム開発」に係るプロジェクト評価
の実施に併せて、以下に基づき、本評価検討会委員による「評点法による評価」
を実施した。その結果は「3.評点結果」のとおりである。
1.趣
旨
評点法による評価については、産業技術審議会評価部会の下で平成 11 年度に
評価を行った研究開発事業(39 プロジェクト)について「試行」を行い、本格
的導入の是非について評価部会において検討を行ってきたところである。その
結果、第 9 回評価部会(平成 12 年 5 月 12 日開催)において、評価手法として
の評点法について、
(1)数値での提示は評価結果の全体的傾向の把握に有効である、
(2)個々のプロジェクト毎に評価者は異なっても相対評価はある程度可能で
ある、
との判断がなされ、これを受けて今後のプロジェクト評価において評点法によ
る評価を行っていくことが確認されている。
また、平成 17 年 4 月 1 日に改定された「経済産業省技術評価指針」において
も、プロジェクト評価の実施に当たって、評点法の活用による評価の定量化を
行うことが規定されている。
上記を受け、課題(事業)の中間・事後プロジェクト評価においては、
(1)評価結果をできる限りわかりやすく提示すること、
(2)プロジェクト間の相対評価がある程度可能となるようにすること、
を目的として、評価委員全員による評点法による評価を実施することとする。
本評点法は、各評価委員の概括的な判断に基づき点数による評価を行うもの
で、評価報告書をとりまとめる際の議論の参考に供するとともに、それ自体評
価報告書を補足する資料とする。また、評点結果は分野別評価、制度評価にも
活用する。
2.評価方法
・各項目ごとに4段階(A(優)、B(良)、C(可)、D(不可)<a,b,c,d
も同様>)で評価する。
・4段階はそれぞれ、A(a)=3点、B(b)=2点、C(c)=1点、D(d)=
0点に該当する。
・評価シートの記入に際しては、評価シートの《判定基準》に示された基準を
54
参照し、該当と思われる段階に○を付ける。
・大項目(A,B,C,D)及び小項目(a,b,c,d)は、それぞれ別に
評点を付ける。
・総合評価は、各項目の評点とは別に、プロジェクト全体に総合点を付ける。
3.評点結果
評点法による評点結果
「エネルギー使用合理化製錬/リサイクルハイブリッドシステム開発」
評
価
項
目
平 均 点
標準偏差
1.事業の目的・政策的位置付けの妥当性
3.00
0.00
2.研究開発等の目標の妥当性
2.20
0.84
3.成果、目標の達成度の妥当性
2.40
0.55
4.事業化、波及効果についての妥当性
1.80
0.45
5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果の妥当性
1.80
0.45
6.総合評価
2.20
0.45
平均点
(各項目:3点満点)
標準偏差
3.00
3.00
2.50
2.40
2.20
2.20
2.00
1.80
1.80
1.50
1.00
0.50
0.00
1. 事
3. 成
2. 研
4. 事
5. 研
6. 総
業の
果、
業化
合評
究開
究開
目標
目的
発等
発マ
価
、波
ネシ ゙メ
の達
及効
・政
の目
策的
ン
成
果
標
ト
・体
度の
につ
の妥
位置
制
いて
妥当
当性
・資
付け
金・ 費
の妥
性
の妥
当性
用対
当性
効果
の妥
当性
55
参考資料 A
0
エネルギー使用合理化製錬/リサイクル
ハイブリッドシステム開発
1
目 次
1. 事業の目的・政策的位置づけ
2. 研究開発等の目標
3. 成果・目標の達成度
4. 事業化、波及効果
5. 研究開発マネジメント・体制・資金・費用効果等
6. 情勢変化への対応
1.事業の目的・政策的位置づけ
2
(1)事業に対する国の関与/(2)事業目的
国内100万台
社会的背景(緊急性・重要性)
不適切処理による不用物発生
最終処分場の逼迫(ASR)
技術的背景
焙焼・溶融処理に多量のエネルギー消費
回収可能な金属が限定(リサイクル不能)
非鉄製錬施設・技術の活用
有価金属回収&廃棄物適切処理
法的規制・環境諸問題への対処
これら技術を統合した製錬/リサイクル
トータルシステムの構築へ
(3)政策的位置づけ
① 低環境負荷型のリサイクル技術の確立
3
・分野別戦略(2003年3月総合科学技術会議)の環境分野「リサイクル・廃棄物適正処理処分
技術 」に位置づけられる技術開発。
・「使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法) 」(2005年1月施行)
最終処分削減量(目標) : 30%(2005年) → 70%(2015年)
②革新的な省エネルギー技術の確立
・エネルギー総合技術戦略(2007年4月資源エネルギー庁)「総合エネルギー効率の向上」の
「産業プロセスの省エネ化」に資するものとして位置付け。
・非鉄金属プロセスのCO2排出を抑制する「高効率製錬、金属リサイクル技術」を開発し、
エネルギー消費効率の向上に貢献する。
③ リサイクル等資源の有効利用を通じた金属資源の安定供給
・ 海外大手企業の統合による市場支配力の強化
・ 中国市場の急成長等による国際非鉄金属市場の拡大(鉱石確保を巡る競合)
・ 国際非鉄金属価格の変動等の不安定要素の混在
→ 金属資源の消費量が多くかつ海外依存の高い我が国としては、リサイクル等の資源の
有効利用を通じた金属資源の安定供給を、国の施策として実施する必要性有
(4)ハイブリッド自動車用ニッケル水素電池を巡る状況
4
社会的背景
(現状)
・環境問題や原油価格高騰等を背景に、将来、急速にハイブリッド自動車の普及が予想
(2010年の市場予測は250万台(国内100万台)→使用済ニッケル水素電池が大量に発生する見込み)
・電池に含有される主要金属 ⇒ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ミッシュメタル(Mm)
(問題)
・現状のリサイクル技術を活用しても電池原料として回収することは困難
・現状の回収方法では消費エネルギーが膨大
→ 革新的な省エネルギー・低環境負荷型のリサイクル技術の確立が急務
技術的背景
(現状)
・一部の電池は焙焼(ロータリーキルン)及び電気炉にて フェロニッケル原料 としてリサイクル化
(問題)
・焙焼・溶融処理には多量のエネルギーが必要
・コバルトやレアアース等の希少金属を現行施設で分離回収することは困難
→ エネルギー使用の合理化技術の開発・実用化が必要不可欠
(5)自動車シュレッダーダスト(ASR)を巡る状況
5
社会的背景
(現状)
・自動車等は多種の非鉄金属を使用
(廃棄物処理には非鉄金属製錬業の技術を有効活用することが期待される)
(問題)
・ハロゲンなど製錬に悪影響を及ぼす不純物を含む
・一般の製錬原料とは著しく異なる性状(合金、プラスチック等と複合、メッキ処理等)
・既存の非鉄金属製錬工程に直接供給した場合、生成するスラグは従来に比べ不純物及び有価金属
の含有量が増大する懸念
→ 建設材料等に再利用されず大量の廃棄物と化す懸念があり早急な対策が必要
技術的背景
(現状)
・ 焼却灰 →セメント固化処理等により金属成分等の溶出を抑制 →最終処分場に廃棄
(問題)
・一部のASRは、銅製錬炉で処理されているが、鉛・亜鉛の有価金属は生成するスラグ中に残留
したまま
→ 製錬スラグのクリーニング(含有金属の回収→資源化)が必要不可欠
2.研究開発等の目標
2-1. 希少有価金属回収技術(使用済みニッケル水素電池リサイクル技術)
(1)希少有価金属回収技術の開発概念
CoSO4等
NiSO4等
6
7
(2)希少有価金属回収技術の目的
ハイブリッド自動車の使用済ニッケル水素電池から、湿式製錬法によりニッケル、コバルト、
ミッシュメタルを分離・回収する技術の開発
(3)希少有価金属回収技術の目標
項 目
目 標
ニッケル≧95%
金属回収率
コバルト≧95%
ミッシュメタル≧95%
回収金属の品質 電池材料製造プロセスに直接再利用できる水準以上
エネルギー
消費量削減率
(対従来技術比)
40%以上
2-2. スラグ再資源化技術(ASR処理技術)
(1)スラグ再資源化技術の開発概念
貴金属
8
9
(2)スラグ再資源化技術の目的
自動車シュレッダーダスト(ASR)から、銅、鉛、亜鉛の有価金属を回収しつつ、溶解・
スラグ化を行うことにより無害化、有効利用を図る技術の開発
(3)スラグ再資源化技術の目標
項 目
目 標
銅≧90%
鉛≧90%
亜鉛≧60%
貴金属≧90%
金属回収率
含有量
鉛≦0.1%、亜鉛≦0.7%
スラグの品質
溶出量
鉛≦0.01mg/L、ヒ素≦0.01mg/L
銅スラグのJIS A5011-3の規格
(コンクリート用スラグ骨材)に準拠する品質
塩素≦0.02%
鉛・亜鉛含有飛灰
(製錬原料)の品質
熱回収率
鉛+亜鉛≧50%
塩素≦0.5%
70%以上
3.成果・目標の達成度
3-1. 希少有価金属回収技術(使用済みニッケル水素電池リサイクル技術)
試
験
成
果
-196℃で冷凍、失活後に破砕することで未破砕物残留率を4%ま
解体・分別技術の確立
で低減可能
湿式分級機による正極主体物、負極主体物及び外装・セパレータ
正負極活物質分離技術
等への分離技術の確立
負極主体物からの
混入正極活物質の還元条件確立:200℃、脱炭素条件:900℃
有価金属回収技術
正極主体物からの
浸出条件の確立、レアアース・鉄等を除去する条件の確立、溶媒
有価金属回収技術
抽出の連続試験条件の確立
--希少有価金属回収技術(実績・達成度)
項 目
金属回収率
回収金属の品質
エネルギー
消費量削減率
(対従来技術比)
目 標
実績(達成度)
ニッケル≧95%
ニッケル 98.5%
コバルト≧95%
コバルト 96.0%
ミッシュメタル≧95%
ミッシュメタル 98.0%
電池材料製造プロセスに直接再利用できる 実証試験で得られた回収物は、水素吸蔵
水準以上
合金としての電池特性に問題なし
40%以上
エネルギー消費量削減率 77.2%
10
11
3-2. スラグ再資源化技術(ASR処理技術)
試
験
成
最適混合処理技術
転炉廃滓、飛灰及びコークス5%混合による混合技術の確立
高度スラグクリーニング技術
廃熱有効利用技術
有価金属回収・
不純物固定化技術
果
スラグ中の鉛・亜鉛を塩化揮発、還元揮発で分離・回収する技術の確立
スラグ処理炉の排ガスから廃熱(顕熱)を有効に回収する技術の確立
スラグ処理炉の排ガス中の飛灰に濃縮している鉛・亜鉛を鉛・亜鉛製錬所
で使用可能な品質まで高める技術の確立
--スラグ再資源化技術(実績・達成度)
項 目
金属回収率
回収金属の品質
熱回収率
(対従来技術比)
目 標
銅≧95%、鉛≧90%、亜鉛≧60%
貴金属≧90%
含有量 鉛≦0.1%、亜鉛≦0.7%
溶出量 鉛≦0.01mg/L、ヒ素≦0.01mg/L
銅スラグ品質(JIS) 塩素≦0.02%
70%以上
実績(達成度)
銅 95%、鉛 91%、亜鉛 74%
貴金属(金100%、銀95%)
含有量 鉛 0.0042%、亜鉛 0.134%
溶出量 鉛=0.005mg/L、ヒ素≦0.001mg/L
銅スラグ品質(JIS) 塩素=0.01%
熱回収率 64%
3-3. 個別要素技術に係る研究開発成果
3-3-1. 希少有価金属回収技術(使用済みニッケル水素電池リサイクル技術)
(1)希少有価金属回収技術の概要
現状 : 焙焼後フェロニッケル原料化
廃電池処理の現状
問題点 : ①回収対象はNi、Feのみ
Ni鉱石
廃電池
②Coは無評価
③希土類は回収不能
事業目的 : 省エネ・省資源化
乾 燥
焙 焼
還元溶融
・Ni、希土類、Co 回収
・分別回収し電池材料に再使用
(水素吸蔵合金は金属のまま回収)
脱 硫
NiーFe
スラグ
(希土類)
12
(2)使用済ニッケル水素電池の本開発技術による処理フロー
HEV用Ni−MH電池処理フロー(角型タイプ)
Ni−MH
電池
HEV用Ni−MH電池処理フロー(円筒型タイプ)
Ni−MH
電池
破 砕
冷 却
13
冷 却
湿式分級
(16mesh)
回収粉
粗 粒
磁 選
解砕・湿式分級
(16mesh)
外装プラスチック
セパレーター
廃アルカリ液
除 鉄
回収粉
粗 粒
篩 分
(200mesh)
解砕・湿式分級
(16mesh)
正極活物質
ろ過・乾燥
負極活物質
外装プラスチック
セパレーター
廃アルカリ液
正極活物質①
酸浸出
脱Fe/RE
破 砕
基板等
ろ過・乾燥
酸浸出
負極活物質 脱Fe/RE
残渣
残渣 正極活物質②
基板等
Fe−Ni原料
還元・脱炭
負極原料
還元・脱炭
溶媒抽出
正極原料
(Ni,Co溶液)
RE塩 Fe塩
負極原料
溶媒抽出
正極原料 RE塩 Fe塩
(Ni,Co溶液)
Fe−Ni原料
14
(3)各研究開発・試験装置(解体/分別∼負極主体物からの金属回収)
脆化破砕装置
(冷却∼破砕)
電熱式雰囲気炉
(脱炭∼還元)
解砕機
湿式分級槽
(円筒のみ)
磁選機
除鉄機
脆化破砕試験
15
未破砕物残留率(%)
50
円筒-100℃
円筒-120℃
円筒-150℃
円筒-196℃
角型-100℃
角型-120℃
角型-150℃
角型-196℃
40
30
20
10
0
0
解体・分別 条件
10
20
30
冷却時間(min)
-196℃で冷凍、失活後に破砕することで未破砕物残留率を4%まで低減可能
回収負極主体物の精製(条件確立)
16
120
1.4
200℃
250℃
300℃
400℃
60
40
20
0
0
1
2
3
4
5
y = 1.4827e - 0 .0 0 4 x
R 2 = 0.9323
1.2
6
7
処理時間(hr)
混入正極活物質に係る還元の温度依存性
回収粉中のC量/%
80
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
6
0.0
5
400℃
300℃
4
ln ( C i/ C f )
水酸化Niのピーク(cps)
100
0
600
900
1200
H反応温度/℃
水素雰囲気における回収負極活物質中の
炭素濃度の変化
250℃
3
300
・脱炭素条件=900℃
2
1
・混入正極活物質還元条件=200℃
200℃
0
0
1
2
3
4
5
6 処理時間(hr)
混入正極活物質の水素還元における希土類酸化傾向
時間 (hr)
水素吸蔵合金の電池特性評価
17
水素吸蔵特性
単極充放電特性
10
350
単 極 放 電 容 量 (m A h/ g)
300
Pressure(MPa)
1
250
200
0.1
150
100
0.01
Original
Recycled
50
0
0.001
0
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9
Absorption Weight(H/M)
−●− Original H17-YRY-7 −○− Recycled
MM230製品
1
1 2 3 4 5 サイクル数
6 7 8 9 10 11 12 13
(4)各研究開発・試験装置(正極主体物からの金属回収→溶媒抽出)
主要技術実証試験設備
18
湿式処理工程全景
浸出槽
溶媒抽出槽
回収正極主体物(浸出におけるORPとNi浸出率の関係)
19
100
90
円筒型3、角型1
80
円筒型2(酸化は十分)
Ni浸出率(%)
70
円筒型1
60
50
40
30
20
10
0
-300
-200
-100
0
ORP(mV)
100
200
300
(ORP:Ag/AgCl)
溶媒抽出試験装置概念図
20
水相:11mL/min
Zn抽出槽
脱Zn有機相:11mL/min
亜鉛、コバルトの抽出・逆抽出
を連続で行うことが可能
水相
No.1Co抽出槽
有機相
水相
有機相
No.2Co抽出槽
脱Co有機相:22mL/min
水相
ニッケル・コバルト
の回収
(5)希少有価金属回収技術に係る目標達成度(まとめ)
21
実
対
有価金属
回収率(%)
象
希
土
類
目
角
型
円筒型
評価
Ni
98.5
98.5
○
Co
95.9
96.2
○
97.7
98.2
○
Ce
98.7
97.9
○
Nd
97.5
98.4
○
Pr
97.7
98.5
○
La
負極活物質
回収物の品質
標
績
正極活物質
エネルギー消費量削減率
≧95
直接利用
可能な事
≧40%
再利用可能
○
再利用可能
○
77.2%
○
3-3-2. スラグ再資源化技術(ASR処理技術)
22
(1)スラグ再資源化技術の概要
現状:
・シュレッダーダスト(ASR)の多くが廃棄
→ 処分場の逼迫
問題点:
・ASR中の銅、鉛、亜鉛等の金属未回収
・銅製錬で処理する場合、生成する
スラグの品質に悪影響を及ぼす
PJ の目的:
・非鉄製錬設備・技術を活用した、環境・
エネルギー負荷の少ないASR処理・
高効率リサイクルシステムの開発
・ASR焼却残分の銅製錬処理による
銅・貴金属回収
・銅製錬スラグからの銅・鉛・亜鉛 回収、
スラグの再資源化
スラグ再資源化フロー
現行フロー
ASR飛灰中の塩素を利用した塩化揮発
コークスの吹込みによる還元揮発
シュレッダーダスト
① Pb,Znリサイクル
②スラグ利用ができる
③KSR飛灰中のClの有効活用
④省エネルギー
KSR炉
焼却
銅鉱石
メリット
不燃物 飛灰
転炉廃滓 コークス
電気炉
銅製錬
スラグ
(スラグ炉)
粗銅
電気炉飛灰
精製
鉛/亜鉛製錬
地金
Cu Au Ag
クリーンスラグ
メタル
地金 Pb Zn
(2)研究開発・実証試験前提条件ほか(スラグ再資源化技術)
• 試験目標
使用原料濃度(%)
– 目標項目達成
– 安定操業条件・方法の確立
• 重点確認事項と方法
– 熱回収
• 保温設備補修効果の確認
– 有価金属回収率
•
•
•
•
KSR飛灰混合機械化
原料調合の変更(還元剤等)
還元剤微細化
吹込み条件最適化
→ 1∼3日毎に条件を修正
して最適条件を模索
– 鉛・亜鉛残渣
• 洗浄水の増量管理
23
Pb
Zn
Cl
錬鍰炉鍰
1.30
5.36
――
転炉廃滓
6.11
5.73
――
KSR飛灰
2.15
4.05
10.04
実証試験1バッチのスケジュール
開始
23時
3時
9時
21時
終了
3時
9時
21時
23時
工程
転炉廃滓5[t]+KSR飛灰1[t]+コークス5[%]溶解
錬鍰炉鍰15[t]+コークス2[%]溶解
還元剤吹込み
セットリング・抽出
(3)各研究開発・試験装置(主な実証試験設備)
天盤上部設備
電極
φ10インチ × 3本
極間距離 :1100[mm]
24
スラグ炉側面
外寸:φ4300[mm] × H4000[mm]
内寸:φ3000[mm] × H2800[mm]
煉瓦:マグクロ質・ダイレクトボンド
定格容量:2200KVA
スラグ保持量:30[t]
25
コークス
定量供給機
:30[Nm3/hr]
一次エア
最大供給量 :200[kg/hr]
混合機
二次エア:400[Nm3/hr]
ノズル内径:φ25[mm]
26
ジェットスクラバー
循環液量:120[Nm3/hr]
pH調整 :NaOH
ガス温度 :350→80[℃]
排ガスファン能力:4800[Nm3/hr]
:400[mm-Aq]
フィルタープレス
濾室容積:402[L]
(□1000[mm]×t30[mm]×20[室])
ケーキ量:9[WMT/D]
水分 :35[%]
(4)実証試験結果
27
実証試験経緯
原料処理/スラグ産出量
処理/産出量 [DMT]
30
25
KSR飛灰
転炉廃滓
錬鍰炉鍰
クリーニングスラグ
20
15
10
5
•
•
•
•
8/29
8/24
8/19
8/14
8/9
8/4
7/30
7/25
7/20
7/15
7/10
7/5
6/30
0
7/3 通電、錬鍰炉鍰処理で操業開始
7/14 還元剤選定試験開始
8/4 転炉廃滓装入開始
8/5
KSR飛灰装入(塩化揮発)開始・吹込み条件試験
0
8/29
8/24
8/19
8/14
8/9
8/4
7/30
スラグからのPb、Zn回収率推移
8/29
8/24
8/19
8/14
8/9
8/4
7/30
7/25
7/20
7/15
7/10
7/5
6/30
濃度 [%]
クリーニングスラグ成分濃度
7/25
7/20
7/15
7/10
7/5
6/30
回収率 [%]
実証試験操業結果
28
5
クリーニングスラグ濃度
4
3
2
Pb濃度
Zn濃度
1
0
100
Pb,Zn回収率
80
60
40
Pb
Zn
20
(5)スラグ再資源化技術に係る目標達成度(まとめ)
‒
計画通りに実証試験を行い、次の成果を確認した
目標項目
•
•
•
•
•
金属回収率は、全て目標を達成
スラグ品質は溶出・含有量(JIS)とも目標値を達成
鉛亜鉛残渣は残渣洗浄強化で目標濃度を達成
排熱回収の合理化を図り、目標値の91 % まで到達(もう少し)
吹込み装置等設備損傷は無く、長期連続操業が可能なことを確認
目標項目
有価金属回収率
目標値
実績値
判定
Pb
≧90[%]
91[%]
○
Zn
≧60[%]
74[%]
○
スラグ品質 溶出試験 Pb
≦0.01[mg/L] 0.005[mg/L]
○
As
≦0.01[mg/L] ≦0.001[mg/L]
○
含有量 Pb
≦0.1[%]
0.0042[%]
○
JIS
Zn
≦0.7[%]
0.1340[%]
○
濃度
Cl
≦0.02[%]
0.01[%]
○
鉛亜鉛残渣濃度
Pb+Zn
≧50[%]
62.5[%]
○
Cl
≦0.5[%]
0.23[%]
○
熱回収
≧70[%]
64[%]
△
29
4.事業化・波及効果
30
事業化の見通し
希少有価金属回収技術
*実用化主体:金属回収可能な非鉄製錬業
*ユーザー :使用済ニッケル水素電池の回収を実施しているメーカー
スラグ再資源化技術
*実用化主体:非鉄製錬業
*ユーザー :自動車業界・シュレッダー処理業界等
※技術的には実用化レベルに達しており、集荷体制や設備確立により実用化が見込まれる
∼波及効果∼
希少有価金属回収技術
*廃小型家電・電気機器等へのリサイクルにおけるレアメタル回収プロセスへの応用
スラグ再資源化技術
*冷蔵庫等の家電リサイクルに伴うシュレッダーダストの適切な処理
*既存のスラグ類の不純物除去技術への応用
成果普及等
*報告・学会発表 8件
*特許出願数
1件
5.研究開発マネジメント・体制・資金・
費用対効果等
31
5-1. 研究開発計画(スケジュール)及び資金配分
H14
H15
H16
H17
H18
1.実態調査等
179,257
2.技術開発
・実施企業による
研究継続
・事業化検討
基礎試験
設計
実証試験設備製作・要素運転
希少有価金属回収技術
連続運転・評価
基礎試験
573,049
・実施企業による
研究継続
・事業化検討
設計
実証試験設備製作・要素運転
スラグ再資源化技術
連続運転・評価
616,004
実績額(千円)
41,242
244,187
371,806
406,315
304,760 1,368,310(総計)
5-2. 事業実施体制・運営
32
経済産業省
補助金(定額)
委員会(外部有識者)
JOGMEC
ロンドン事務所
(委員長:東北大学 中村 崇教授)
(メンバー)
・日本鉱業協会
・大学
・産総研
・自動車工業会
・電池工業会
生産技術チーム
デンバー事務所
バンクーバー事務所
実態調査(海外)
研究連携
(希少有価金属回収技術)
(スラグ再資源化技術)
DOWAメタルマイン㈱
岩手大学
東北大学
秋田県産業技術
総合研究センター
委託研究
委託研究
共同研究
共同研究
共同研究
共同研究
共同研究
住友金属鉱山㈱
三井金属鉱業㈱
共同企業体
北海道大学
東京大学
研究連携
5-3. 共同研究テーマ
33
希少有価金属回収技術(使用済みニッケル水素電池リサイクル技術)
共同研究者
研究テーマ・内容
北海道大学
・正負極材の物理的分離方法に関する研究
・粉砕・破砕時の微粉からの正負極材の回収
東京大学
・負極材からの不純物(正極材等)の化学的分離方法に関する研究
・回収負極材の溶解による資源化及びその前処理技術の開発
スラグ再資源化技術(ASR処理技術)
共同研究者
研究テーマ・内容
東北大学
・スラグ中の金属塩素化合物の挙動研究
岩手大学
・スラグ組成の鉛・亜鉛揮発に及ぼす影響調査
・炉内雰囲気・スラグ還元度測定法の確立
秋 田 県 産 業 技 術・ダストの基礎物性研究
総合研究センター ・スラグを骨材に用いたコンクリートに関する基礎的研究
5-4. 費用対効果
34
回収金属価格
投入費用(事業費)
・回収金属予想量
使用済ニッケル水素電池 : ニッケル 9,500トン、コバルト 1,150トン、ミッシュメタル 3,350トン
ASR : 銅 9,300トン、 鉛 1,080トン、 亜鉛 1,800トン
前提条件
・実収率
使用済ニッケル水素電池 : ニッケル98.5%、コバルト96.0%、ミッシュメタル98.0%
ASR : 銅 95.0%、 鉛 91.0%、 亜鉛 74.0%
・金属価格 : 2006年LME平均価格から換算
*使用済ニッケル水素電池
①ニッケル
9,500トン/年×98.5%×2,804,000円/トン-Ni = 262.4億円
②コバルト
1,150トン/年×96.0%×3,961,000円/トン-Co = 43.7億円
③ミッシュメタル 3,350トン/年×98.0%×1,340,000円/トン-Mm = 46.2億円
費用対効果
事業費 13.7億円
合計 352.3億円
*ASR
①銅
②鉛
③亜鉛
9,300トン/年×95.0%×834,100円/トン-Cu = 69.5億円
1,080トン/年×91.0%×192,600円/トン-Pb = 1.9億円
1,800トン/年×74.0%×432,400円/トン-Zn = 5.6億円
合計 77.0億円
5-5. 経済的効果
(1) 希少有価金属回収技術(使用済みニッケル水素電池リサイクル技術)
35
※2020年ハイブリッド自動車(国内)100万台回収として
建設コスト28.4億円
操業コスト 31.9億円
1.原料処理費・・・・・・24.1億円
2.労務費・・・・・・・・・・ 4.8億円
3.償却費・・・・・・・・・・ 3.0億円
回収金額20.9億円
回収有価金属 352.3億円(換算)
使用済ニッケル水素電池入手299.5億円(有償)
経済効果
投資金額28.4億円に対して、28.4/20.9億円=約1.4年で投資分回収可能(試算)
(2) スラグ再資源化l技術開発(ASR処理技術)
36
※2010年ASR回収量(国内) 30万トンとして
建設コスト48.3億円
操業コスト 23.1億円
1.原料処理費・・・・・・13.5億円
2.労務費・・・・・・・・・・ 4.5億円
3.償却費・・・・・・・・・・ 5.1億円
回収金額53.9億円
回収有価金属 77億円(換算)
経済効果
投資金額48.3億円に対して、48.3/53.9億円=約0.9年で投資分回収可能(試算)
5-6. 省エネルギー効果
(1)省エネ効果(希少金属)
37
※2020年ニッケル回収量(国内) 9500トンとして
<出典:日本国内での製錬所平均値より>
<実証試験・各工程の実績値より積算>
エネルギー消費量削減率 77.2%
∵
329GJ/トン-Ni−74.8GJ/トン-Ni = 254.2GJ/トンーNi
254.2/329 GJ/トン-Ni ⇒ 77.2%
原油換算削減量
62,380kL/年
(2)省エネ効果(スラグ再資源化)
38
※2010年ASR回収量(国内) 30万トンとして
現行方法での必要回収エネルギー量(推定値)
577.5Mcal/トンーASR
<出典:製錬所資料他より>
<前提条件>
①鉱石⇒精鉱必要エネルギー量&ASR中の含有量
銅
17.2×103Mcal/トン * 31kg/トン-ASR
6kg/トン-ASR
亜鉛
6.4×103Mcal/トン *
⇒ ASR換算・必要エネルギー量 : 572Mcal/トン-ASR
②採石(砂)としての必要エネルギー量
:
5.5Mcal/トン-ASR
39
※2010年ASR回収量(国内) 30万トンとして
現行方法での必要回収エネルギー量(推定値)
577.5Mcal/トンーASR
<出典:製錬所資料他より>
<実証試験・各工程の実績値より積算>
削減エネルギー量 215.5Mcal/トン-ASR
∵ 577.5Mcal/トン-ASR−362Mcal/トン-ASR = 215.5Mcal/トンーASR
原油換算削減量
6,980kL/年
6.情勢変化への対応
40
6-1.使用済みニッケル水素電池及びASR発生予測
使用済みニッケル水素電池の発生予測
(単位:千台)
2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
国内
北米
欧州他
計
150
130
30
310
300
220
50
570
450
300
90
840
600
530
200
1,330
750
750
350
1,850
1,000
1,000
500
2,500
使用済み自動車に由来するASR排出量(国内)
2010年
排出予想量
30万トン以上
直近70∼80万トン発生
6-2.湿式製錬法の適用可能性等に関する技術調査
41
湿式製錬法の適用可能性等に関する技術調査の目的
将来のレアメタル需給逼迫に対応するため、未利用レアメタル資源及び含レアメタル
廃棄物を対象として、新たな湿式製錬法等の先進的な処理方法に拠る省エネルギー型
のレアメタル等回収技術の調査・研究を目的とする。
技術調査項目(10テーマ)
・Nd-Fe-B系希土類磁石リサイクルへの適用可能性に関する調査研究
・使用済触媒からのレアメタルのバイオリーチングに関する調査
・亜鉛蒸気処理による貴金属の高速度浸出技術に関する調査
・難処理有価物含有二次原料の新処理法に関する調査
・ITO透明電極からのインジウム回収に関する技術調査
・レアアース磁石からの有価金属高効率回収システム開発に関する調査研究
・排ガス触媒からの高選択ロジウム分離法に関する調査研究
・小型燃料電池リサイクルに係るPGM濃縮技術の調査研究
・レアアース系蛍光体の高効率リサイクルに係るPGM濃縮技術の調査研究
・循環型社会における非鉄金属リサイクルのライフサイクルでの二酸化炭素排出