青山スタンダード教育機構 - 青山学院大学 - Aoyama Gakuin University

執筆項目 1 教育目標等の具体的な表現による明示
1-1 教育目標
1991 年のいわゆる大綱化に伴い、従来の一般教育科目の改革に着手したが、本来「全学」的に検討
されるべき「全学共通科目」の諸問題について、ややもすると当該学部の利害を優先する傾向が見受
けられたため、それに対する反省を踏まえて、2001 年 5 月から見直しに着手した。そして、相模原
キャンパス開学と同時に、2003 年 4 月から「青山スタンダード科目」として実施するに至った。
青山スタンダード教育では、教養教育に関する理念として、
「およそ青山学院の卒業生であれば、
どの学部・学科を卒業したかに関わりなく、一定の水準の技能・能力と一定の範囲の知識・教養をそ
なえているという社会的評価を受けること」を掲げ、キリスト教の理念の基に、個々の専門にとらわ
れず広い視野から物事を見ることができ、社会に対する奉仕の精神と、国際感覚を持った学生の育成
に努めている。
1-2 青山学院教育方針、大学の理念との整合性
青山学院大学学則にある目的「青山学院大学は、青山学院の一貫した教育体系の最高の機関として、
キリスト教精神に基づき人格を陶冶しつつ、高度の教養を授けるとともに、学術の理論及び応用を教
授研究し、もって社会に奉仕し、文化の進展に寄与する人物を養成することを目的とする。
」に対し、
特に基礎課程における教育を担っているのが青山スタンダード教育であり、1-1 の教育目標はこの目
的と整合性を持っている。
1-3 各領域の関連性と整合性
青山スタンダード教育は、キリスト教理解関連領域、人間理解関連領域、社会理解関連領域、自然
理解関連領域、歴史理解関連領域という 5 つの学問領域と、言葉の技能、身体の技能、情報の技能と
いう 3 分野のスキル習得分野からなり、学習を通じて学生が自分の関心事、将来の進路を見出す際の
羅針盤となる役を演じるよう、整合性を考えて構成されている。また、青山スタンダード科目が学士
課程の専門教育課程への円滑な導入教育として機能を果すよう設計されている。
1-4 どのような人材を育成しようとしているか
1-1 で述べたように、キリスト教の理念の基に、個々の専門にとらわれず広い視野から物事を見る
ことができ、社会に対する奉仕の精神と、国際感覚を持った学生の育成に努めている。
執筆項目 5 「教育課程編成・実施の方針=カリキュラム・ポリシー」に基づく具体的なカリキュ
ラム構成
5-1 教育課程編成・実施の方針
1 年生を対象としたフレッシャーズ・セミナー、ウエルカム・レクチャー及びキリスト教理解、人
間理解、社会理解、自然理解、歴史理解の 5 領域の関連科目を含む教養コア科目と、言葉の技能、身
体の技能、情報の技能の 3 領域の関連科目を含む技能コア科目、さらに 2~4 年生を対象にそれぞれ
の領域におけるテーマ別科目が設けられている。
5-2 期待される学習効果
本学の教育方針に基づくキリスト教概論を必修とすることで、広い視野と高い倫理観に基づく判断
力を身に付けさせている。また、既成の学問の枠にとらわれない新しい分野をカバーする科目や、生
き方について考える科目、学際的な科目、総合的な科目など、それぞれの領域で多様性に富んだ科目
をバランスよく配置して、専門にとらわれず広い視野から物事を見ることができる能力を身につけら
れるようにしている。さらに、言葉の技能、身体の技能、情報の技能の 3 領域の科目を履修すること
により、関連するスキルを身につけることができる。なお、学生は自分の所属する学部・学科とは専
門の異なる他学部・他学科の学生との交流を通して、人間としての視野を広げることができるという
長所もある。
5-3 教育目標実現のための教育課程・教育内容の整備状況
どの学部・学科を卒業したかに関わりなく、一定の水準の技能・能力と一定の範囲の知識・教養を
そなえているという社会的評価を受けることを目的としているが、上述のようにさまざまな科目をバ
ランスよく配置することにより、目的に沿った教育が行われている。
また、テーマ別科目は、やや個別的なテーマや、各学部の専門基礎もしくは専門導入的な内容とな
っているので、所属学部・学科の専門接続科目として履修することも可能となっている。
執筆項目 6 適切な履修指導の実施
6-1 学生への学習指導の現状
学生の学習意欲向上のために、履修指導を年度初頭におけるオリエンテーション期間中に学部・学
科別に実施している。そこでは、機構の役職教員より、青山スタンダード科目の教育目標について、
『青山スタンダード科目履修ガイド』を配付して、説明をしている。また、フレッシャーズ・セミナ
ーでも、担当者ごとにオリエンテーションを実施している。学生は、これらをとおして、これから学
ぶべき全体像や道筋について理解を深めている。さらにすべての開講科目について、講義概要、授業
計画、成績評価法、教科書等を記した『講義内容〔青山スタンダード(フレッシャーズ・セミナー、
教養コア科目)
〕
』
・
『講義内容〔青山スタンダード(技能コア科目)
〕
』
・
『講義内容〔青山スタンダード
(テーマ別科目)
〕
』を作成し、学生に開示しており、科目選択の目安となっている。
6-2 学習支援
教育研究支援のために相模原・青山両キャンパスに担当職員が複数配置されている。それぞれのキ
ャンパスに、青山スタンダード教育機構室(青山は分室)を設置して、委託職員を配置し、科目担当
教員に対する各種サービスの提供を行い、学生の学習支援をサポートしている。
また、情報の技能においては、e-Learning による自学自習を行うシステムを導入している。言葉の
技能においても、CALL 教室を整備し、授業時間中の利用はもちろん、授業時間外にも開放して、
e-Learning 教材が利用できるようにしている。
全学的に制度化され、実施している教員補助員(TA)については、機構でも「青山学院大学教育補
助員規則」に基づき運用されている。TA は、担当教員からの申請により、実験・実習を伴う際の授
業補助、教材作成補助、OA 機器操作補助、平常提出物等の採点補助等を行っているが、これにより、
授業運営を円滑にし、学生へのきめ細やかな対応を可能にしている。
機構では、TA のほか、独自のスチューデントアシスタント(SA)を活用し、前述した教育機構室
が 300 名程度の登録学生を管理して、それら学生による授業出席管理、レポート整理など授業担当教
員に対する支援を行っている。また、情報スキルⅠについては、学生の自学自習を支援するため、情
報アシスタント(ITA)と呼ばれる学生が、自習可能なすべての時間、すべての PC 教室に適宜配置
され、学生からの質問や学習方法に関する相談を受けている。IT-A の対応は、直接答えを教えること
はせず、調べ方や解き方をアドバイスするのみである点も特色があるといえる。
執筆項目 8 初年次教育の方針や取り組み内容
8-1 初年次教育のあり方の検討状況
機構では、前述の理念・目的達成に向けて、青山スタンダード科目を通して、学生が個々に「基礎
的な技法」
・
「学問的な作法」
・
「知のマップ」を身につけることで、専門教育への架け橋となり、さら
には、一定の水準の技能・能力を保障するものとして「技能コア科目」を、一定の範囲の知識・教養
を保障するものとして「教養コア科目」をそれぞれ1年次に配置している。また、学び方への導入を
容易にするために「フレッシャーズ・セミナー」も 1 年次に配置している。さらに、初年次教育の重
要性に鑑み、2009 年度から、大学で学問を学ぶ意義について理解を深めること、とくに青山スタンダ
ード科目の履修が単に教養を身につけるだけでなく、学生生活を送る際、および社会に出たときに必
要なものであるということを伝えていく「ウエルカム・レクチャー」という講義科目を開設した。今
後、学生生活をどう送るかについてのスキルを教える科目の開設も予定している。
8-2 具体的プログラム
フレッシャーズ・セミナーは、1 年次生のみを対象とし、学部の枠にとらわれない 20 名程度の学生
によるセミナー形式で実施される授業である。この科目は、専任教員があたり、双方向的なやり取り
の中で、担当者のそれぞれの専門領域を通して、学問の面白さ、ものの見方・考え方、資料調査の手
法と能力、考えをまとめ発表する能力等を涵養すると同時に、主体的な知のあり方を手ほどきする。
教養コア科目には、5 領域があるが、キリスト教理解関連科目以外の 4 領域に配置されているコア科
目は、授業形態上、総合科目と個別科目に区分される。総合科目は、3 名の教員が担当する科目をさ
すが、この形式での授業は、1 つの特定テーマについて、専門領域を異にする教員が連携しつつ、そ
れぞれの視点から分析し、問題を提示することによって、科目内容を多面的・多角的に学ぶ機会の提
供が可能となる。また、ウエルカム・レクチャーでは専門の異なる 4 人の教員が学問の学び方につい
ての講義を行っている。
技能コア科目のうち情報の技能に属する情報スキルⅠでは、e-Learning を導入した自学自習とスキ
ルチェック(コンピュータによる達成度チェック)を組み合わせ、最終的な習熟度に到達するという
特色を持っている。
執筆項目 9 授与する単位の実質化への方策
9-1 単位の実質化に対する教員の認識
単位の実質化に対する教員の認識はそれほど高くない。しかし、一部の教員はレポートや演習を課
す等により、実際上単位の実質化を行っている。
9-2 学生の自習時間等の実態把握
学生の自習時間等の実態把握はほとんどなされていない。今後レポートや演習を課したり、日常的
に得られた成果を確認するための試験を行ったりすることが要求される。
9-3 単位の実質化に対する取り組み
ここ 2~3 年の間に、シラバスの充実化をはかる取り組みを行う中で、講義回数を標準学習時間に
近づける努力が始まっている。
執筆項目 10 授業評価アンケート結果の組織的な活用
10-1 授業評価アンケートの共有化、検証および効果
2003 年度より、全学的な自己点検・評価の一環として、科目ごとに「授業改善のための学生アンケ
ート」を実施している。その回答を授業担当者に返すとともに、統計処理した結果についても情報提
供している。これにより、担当者は自己の教育方法の改善に役立てている。また、機構の活動として
は、教育評価委員会を設け、同委員会が学生アンケート結果の分析から改善提案を行っている。ただ
し、結果の活用が各教員の自主性に任されているため、授業改善に実際に生かされたかどうかについ
ての点検が十分には行われていない。この点、定期的に開催される青山スタンダード教育フォーラム
等で教員に強く訴えるなどの試みを行っているが、ある程度の強制力を行使することも検討していく
必要がある。
執筆項目 11 義務化されている FD 活動への具体的な取り組み
11-1 FD 活動に取り組んでいる組織とメンバー構成
青山スタンダード教育機構では、教育評価委員会を設置し、5 名程度の委員で教育改善に対する取
り組みを行っている。また領域によっては独自に FD 活動を行っているところもある。
11-2 FD 活動の現状と成果
前述の「授業改善のための学生アンケート」の実施以外に、授業公開についても、取組を開始して
いる。また、全学的な FD プロジェクトによる活動にも積極的に参加し、継続的な取り組みを行って
いる。さらに、教育活動の経験や成果等を含んだ報告を、定期的に刊行している「青山スタンダード
論集」に掲載し、構成員全体で成果を共有するようにしている。
青山スタンダード科目の担当教員には多くの兼任教員がいるが、専任教員と兼任教員が一緒になり、
青山スタンダード科目のさらなる発展を求め、積極的な情報交換をするために、前期末と後期末の年
2 回全体フォーラムを開催している。そこでは、青山スタンダードの理念、カリキュラム構成などに
ついて周知徹底を図ると同時に、科目担当者としての立場からの忌憚のない意見交換が行われ、兼任
教員の意見も聴取している。さらに、機構の中におかれている領域担当者会(科目に関する事項、評
価に関するデータ収集、科目開発への提案等を行う)には、誰でも列席できることを規則上も認めて
おり、兼任教員に参加を要請し、個別具体的な問題について方針の徹底を図るとともに兼任教員が意
見を述べる機会も設けている。
11-3 今後の課題と問題点
FD 活動に参加する教員としない教員が、はっきりと区別できるきらいがあり、今後、構成員全体
で FD 活動を行える環境を作っていくことが求められる。
執筆項目 12 シラバスの掲載内容の充実
12-1 シラバス作成以前の授業担当者間の授業内容に関する確認方法
青山スタンダード機構は、基本的にカリキュラムの運営組織であり、機構所属の教員は存在せず、
全学部及び研究科、全専門職大学院研究科のすべての教員が授業担当者であり、すべての教員が機構
の構成員となっている。これを、全学協力体制という。
課程編成を具体的に実現するための教員間における連絡は、機構会議がその主な役割を担っている。
機構会議は、機構長(相模原キャンパス担当副学長)
、副機構長、各領域担当者会コンビナー、各学部
及び専門職大学院研究科の代表等が構成員となっており、機構会議における報告事項、審議事項は、
学部長会、学部・専門職大学院研究科教授会、各領域担当者会を通じてすべての科目担当者及びその
他の教員に情報が提供される。また、教員間の連絡を確実に行うために、各学部・研究科事務担当職
員に対しても同じ情報を提供し、その確認ができる体制をとっている。さらに、事務ポータルサイト
を通して機構会議の議事録等を公開し、教員間における連携をより確実なものとしている。こうした
連携を通して、授業担当者間の授業内容に関する確認を行っている。
12-2 シラバス記載の徹底に対する取り組み
授与単位の実質化、シラバス掲載内容の充実化が要請されて以降、それぞれの授業担当者に、詳細
な説明付きでシラバス記載方法が告知され、
それに基づいて概ね充実したシラバスが作成されている。
12-3 必要学修時間確保のための具体的な記載
すべての開講科目について、講義概要、授業計画、成績評価法、教科書等を記した『講義内容〔青
山スタンダード(フレッシャーズ・セミナー、教養コア科目)
〕
』
・
『講義内容〔青山スタンダード(技
能コア科目)
〕
』
・
『講義内容〔青山スタンダード(テーマ別科目)
〕
』を作成し、学生に開示しており、
科目選択の目安となっている。
執筆項目 14 成績評価基準の厳格化・統一化
14-1 成績評価基準の周知
成績評価は AA、A、B、C、欠席、不合格の 6 段階で評価しており、学生へ通知している。また、
授業担当教員はシラバスに成績評価法を記入している。成績開示後の学生からの問合せについては、
全学的な制度として、担当教員が学生からの疑義に直接回答する「成績調査制度」がある。
14-2 授業内容、レベル、成績評価基準の統一
成績評価方法については、科目の内容に応じたふさわしい方法で評価をするよう授業担当者に任さ
れている。キリスト教概論では、
『地の塩、世の光―人物で語るキリスト教入門』
(青山学院宗教セン
ター編)
、健康・スポーツ演習では、
『Health and Fitness』
(青山学院大学身体の技能領域担当者会編)
といった共通の教科書を活用して、教育内容の基本的な水準維持に努めている。また、教養コア科目
の総合科目については、担当者 3 名が授業内容のみならず評価についても綿密な打ち合わせの上で評
価方法を決定している。到達度試験を行っている第二外国語の言語では、到達度試験の得点を学期末
の評価に一定割合含めることを全担当者が合意している。
言葉の技能領域では、文法や単語といった学習内容の細部にわたって、専任教員が最低範囲を設定
し、兼任教員に周知を図り、学期末の評点に到達度試験の得点が一定割合組み入れられることも合意
されている。また、学生達にも各自の得点と全体平均を個別に通知しており、2 年次以降の学習計画
立案を促している。
情報の技能領域の 講習会方式で実施される情報スキルⅠにおいては、IT 講習会を受講することで、
単位数に見合う学習内容・到達度を確認している。また、最終的な習熟度に到達することで単位が認
定される。IT 講習会で実施されている自学自習内容とスキルチェック項目は、情報スキルⅠ授業担当
者会(各学部より 1 名選出)と情報科学研究センターが連携し、編成している。
14-3 GPA 制度との関わり
同一科目に複数教員が配置されている場合、授業内容やレベル、成績評価基準の統一が要求される
が、上述の一部の例を除いてまだ全体的なものとなっていない。ただし、2009 年度の青山スタンダー
ド全体フォーラムにおいて、教育評価委員長から具体的データに基づく成績評価基準統一の提言がな
され、今後機構会議で実現に向けての議論を深めていく予定である。
執筆項目 21 キャリア教育の充実
21-1 現在の状況
これまで、キャリアデベロップメントに関わる寄付講座や課外科目等を実施してきた。寄付講座や
講師派遣の協力をいただいている科目としては具体的に以下の科目を開講している(括弧内は寄付ま
たは協力企業・団体等)
。
2 年次
感性ビジネス A・B(IFI ビジネススクール)
国際ビジネス入門 A・B(NPO 法人国際社会貢献センター)
企業のモノづくりと人づくりのリテラシー(ソニークリエイト)
3 年次
感性ビジネス C・D(IFI ビジネススクール)
国際ビジネスと海外事情 A・B(NPO 法人国際社会貢献センター)
現代金融の諸問題(金融青山会)
パーソナル・マネー・マネジメント入門(三井生命)
21-2 課題と今後の展開
より多くの学生に対して、就業力を高めることが要請されており、そのために、これまで行ってき
たキャリア教育を整理統合し、
「キャリアの技能」として確立し、さらに新しい科目群を開発して体系
化を図る。新設を予定している科目は以下の通りである。
1 年次
キャリアデザイン論Ⅰ、学生生活のスキル
2 年次
キャリアデザイン論Ⅱ、仕事力基礎論
3 年次
キャリアデザイン論Ⅲ
さらに「キャリアの技能」を担当するプロジェクト教員を任用し、カリキュラム開発、科目の運営・
管理、成果報告を行っていただく。