Re-mind, Re-wind - キャリア・ポートレート コンサルティング

コラム集】
【キャリア・
Re-mind, Re-wind
リ・
マインド/リ・
ワインド
職をふと見つめなおす 自分のネジを巻きなおす
日々の仕事、業務に忙殺されていると、あっという間に1年、
2 年が過ぎてしまいます。そんなときに、ふと立ち止まって、
自分の職人生の来し方、行く末に思いを巡らせてみる。
このコラムでは、キャリアを思索する「種」をお届けします。
Vol. # 4
【30話】最初の仕事はくじ引きである
【31話】自立と自律
【32話】キャリア・台風・株
【35話】キャリアの“平和ボケ”
【36話】“志力格差”の時代
【38話】ドラッカーの言玉
代表
村山 昇
キャリアインキュベーション(株)様の
ウェブサイトに2003年12月より連載
キャリア・
ポートレート コンサルティング
http://www.careerinq.com/press/re_mind/
【39話】地・風・火・水―――力・観・志・人
© 2003-2006 Career Portrait Consulting.
http://www.careerportrait.jp
【37話】“志力格差”の時代(続き)
【30話】
る必要があります。職業人として大事なことは、むしろ、
最初の仕事はくじ引きである
そのくじ引き後の状況対応、状況創造なのです。その会社
の中で、職と自分が互いに馴染んでいけるようにあれこ
職人の手と道具は互いに馴染みあう
れ動いてみることで、自分の落ち着き場所がやがて見つ
私はかつて勤めていた出版社で、ある時期、デザイン雑
かるかもしれません。もし、それでも難しそうなら、転職
誌の編集をやっていたのですが、そのときに何人もの伝
というカードを切って、思い切って環境を一新してみる
統工芸の職人さんを取材したことがありました。同行し
ことも重要な選択肢のひとつです。その際も、最初は、や
たカメラマンと私が、毎回、共通に目を引かれたのは、も
はり多少の違和感はあるでしょう。しかし、
そこからの状
のづくりをする職人さんたちの手と道具です。長年の間、
況対応、状況創造で、自分の馴染む場所を得られてこそ、
力と根気を入れて使った手や指は、道具に沿うように曲
その転職は成功したといえます。つまるところ、
キャリア
がってしまいます。また、道具も、職人さんたちの指の形
づくりとは、職と自分の馴染み化のプロセスなのだと思
に合うようにすり減って変形してしまいます。時が経つ
います。
につれ互いが一体感を得るように馴染みあった手と道具
は、それだけで味わい深い絵(写真)になるものです。
こうした真新しい道具が手に馴染まず、なにか違和感
誰しも最初の会社・職・仕事というのは、運任せ、縁
任せ、成り行き任せで選んでしまうことが多いものです。
がありながらも、使い込んでいくうちに手に馴染んでい
キャリアづくりで大事なことは、むしろその後の状況対
く、もしくは手が馴染んでいくという経験は、
職人にあら
応、状況創造です。ハッピーなキャリアとは、職と自分と
ず と も、誰 も が 大 な り 小 な り 知 っ て い る の で は な い で
がうまく馴染んでいる状態をいいます。アメリカンフッ
しょうか。この手と道具の関係は、
職と自分との関係にも
トボールコーチのルー・ホルツという人がこんなことを
当てはまると思います。
言いました--「人生とは、 %
10の我が身に起こること、
そして %
90はそれにどう対応するかだ」。■
つまり、最初に出会う職・仕事で、自分に
%フィッ
100
トしたものなどありえません。仕事内容が期待と違ってい
**********
た、人間関係が予想以上に難しい、自分の能力とのマッチ
ング具合がよくないなど、
どこかしらに違和感は生じるも
のです。ただ、そうしたときに、職業人としての自分がや
らねばならない対応は、自分の行動傾向をその職・仕事に
【31話】
自立と自律
仕事をしやすいように、環境を自分向きに変えてやる方法
私が委託される 企業のキャリ ア研修の中で 多いの
もある。いずれにしても、職と自分が互いに馴染むように
が、入社3年目、もしくは入社5年目の従業員を対象と
調整や変形を行うことが必要です。もし、両者の違和感が
し た も の で す。こ の 年 次 は、い わ ば 各 自 の キ ャ リ ア が
大きく、両者が馴染めないほどの距離があるとすれば、そ
「自 立」か ら「自 律」へ の 移 行 期 に あ た る タ イ ミ ン グ
の際は、職人が道具を変えるのと同じく、
転職という選択
で、その意識付けや刺激が非常に大事になってきます。
肢で職を切り替えることになります。
この機を逸してしまうと、自立はしたものの自律への移
行が滞ってしまう、自律の芽が出ずに逆に他律(他者依
「くじ引き」以後、どうやって職と自分を馴染ませてい
くか
かの経営学者にして思想家のピーター・ドラッカー氏
存・組織依存)に傾いてしまう、自律の奥深いレベルに
チャレンジしなくなるなどの影響が考えられます。
そ う い っ た 意 味 で、私 の 研 修 プ ロ グ ラ ム で は、キ ャ
もこう言っています--「最初の仕事はくじ引きである。
リ ア の「自 立」と「自 律」に ど の よ う に 違 い が あ る の
最初から適した仕事につく確率は高くない。得るべきと
か、また自律マインドを醸成・強化するにはどうすれば
ころを知り、向いた仕事に移れるようになるには数年を
よいのかなどを軸に内容を組んで提供しています。本日
要する」と。
のこのコラムでは、その自立と自律の違いについて触れ
たいと思います。
新卒として最初に就職した会社、そして仕事が、自分
の中でそのままうまくいけばハッピーです。また、
うまく
経済的自立と技能的自立
いかなかった場合は、それはたまたまくじ引きの当たり
私 が 考 え る キ ャ リ ア に お け る 「自 立 と 自 律 の 違 い 」
が悪かっただけなのだとポジティブにとらえなおしてみ
について下図にまとめてみました。自立は、職業人とし
Career Portrait Consulting.
「自立」から「自律」への移行期
©2003-2006
したり、改善したりすることです。または、自分がその職・
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合うように少し変えてやる、もしくは自分の能力を継ぎ足
て 独 り 立 ち で き る レ ベ ル を 言 い ま す。英 語 で 表 現 す れ
なりませんし、それを他者にもはたらきかけることが求
ば、“
められます。このレベルは、多分に精神的な領域のもの
で す。こ の レ ベ ル で は、経 済 的 自 立
self-stood”
と技能的自立の2種類があります。
です。
よ く「大 企 業 病」と い う こ と が 言 わ れ ま す。企 業 が
まず、経済的 自立で すが、入社3年目から5年目に
ある成功で大きくなると、従業員たちはいつしか、組織
おいては、当然、経済的には親から独立し、自分の稼ぎ
が築いた過去のやり方を踏襲してそれを継続さえしてい
で生計を立てます。しかし、いよいよ 代
20後半から 代
30
にかけては、結婚や子供の誕生などの人生のイベントが
ればよい、そして、それでそこそこにいい給料がもらえ
るから安泰だといった、いわば技能的自立、経済的自立
予想されますから、経済的な基盤をより堅固にしていく
で満足してしまう傾向がでてきます。もっと悪症状が進
必要があります。人生におけるファイナンスの課題に対
めば、業務の行い方や事業の方向性は誰かの意思決定待
し、着実に手を打つことが職業人のキャリア自立には欠
ち、定 年 ま で は 雇 用 し て くれ る だ ろ う と い う 会 社 依 存
かせない要件となってきます。
心、などといった他律意識が蔓延してきます。企業が真
次 に、技 能 的 自 立 で す。誰 し も、入 社 し た て は 先 輩
に強くなるためには、従業員のひとりひとりが自立で満
従業員や上司について、仕事を教えてもらい業務の方法
足することなく、「自律した強い個」になるよう押し上
を覚えます。そしてやがて仕事の仕方を体得し、自分な
げていかねばなりません。
りに改善点や新しい工夫を加えていきます。また、今度
は自分が後輩にやり方を教える番になります。これが技
自律へのステップ:「守・破・離」
能 や 歌 舞 伎 と い っ た 日 本 の 伝 統 芸 能、そ し て 茶 道 や
能的自立です。
剣 道 な ど の 世 界 に「守・破・離」と い う 言 葉 が あ り ま
精神的自律が「強い個」を生む
す。これはその道を極めるための成長段階を示した言葉
そ し て、こ の 2 つ の 自 立 の 段 階 の 次 に 来 る の が、自
です。
律 で す。英 語で 表 現 す れ ば、“
で しょう
self-directed”
か。自分で「立った」後は、自分で「方向づけ」できる
●「守」
と い っ た ニ ュ ア ン ス で す。自 律 の「律」と は、規 範 や
= ま ず、師 か ら の 教 え を 忠 実 に 学 び、型 や 作 法、知
ルールといった意味ですから、その規範やルールをつく
識の基本を習得する第一段階。
りだすためには自分なりの基準や価値観を持たなければ
●「破」
= 経 験 と 鍛 錬 を 重 ね、師 の 教 え を 土 台 と し な が ら
段階。
こ の「守・破・離」の 成 長 3 段 階は、ま さ に 自 立 か
ら自律へのステップを表わしているともいえます。自分
自身のキャリアも、ひとつの「道」でしょうから、その
最終境地である「離」を目指したいものです。■
**************
【32話】
自立
自 律
キャリア・台風・株
キャリアは「ゆらぎ」の連続の中で
今年も夏が終わり、台風シーズンがようやく去りまし
た。今年もテレビで天気予報を見る機会が多かったので
すが、私は天気図に出てくる台風の動きを見るたびに、
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こ とな く、思う が ま ま に至 芸の 境 地 に 飛 躍 する 第 三
©2003-2006
= こ れ ま で 教わ っ た 型や 知識 に い っ さ い と ら わ れ る
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●「離」
-自分の生活を維持・発展する
ための稼ぎを得る
●経済的自立
-業務をこなす「HOW」(手段・
スキル)を習得する
【Self-stood】
他に依存しないで、
自力でやっていける
る第二段階。
●技能的自立
-業務上での「WHAT」(目的)
を設定できる
-その業務の「WHY」(意義・
価値)を見出せる
-自他をモチベートできる
●精神的自律
■キャリアにおける「自立」と「自律」
【Self-directed】
自らの価値観を持って
“律”(規範やルール)を
つくり出し、進んでいける。
他にもはたらきかける。
も、そ れを 打 ち 破 る よ う に自 分な り の 真 意 を 会 得 す
「キャリア」のことを連想してしまいます(職業病かも
するので、どの方向にどの程度動いていくのか見当がつ
しれません)。つまりどういうことかというと、不規則
きません。時々刻々の変化だけでみていると、この台風
で予想のつかないジグザクの動きをするあの台風の経路
は今後、赤道方向に南下するのではないか、あるいは中
や進路が、人びとがさまざまにゆらぎながら描いていく
国の内陸方向に漂流していくのではないかなどと思えて
「キャリアの経路・進路」と二重映しになるからです。
しまいます。また、株の値動きにしても、刻々と移り変
わる株価ボードだけを見ていると、例えば午前に勢いが
台 風 がな ぜ あ の よ う な 不規 則な ジ グ ザ グ の 運 動 する
増した株が午後も暴騰するのか、それとも午後は利益確
のかといえば、自然条件によって発生する大小さまざま
定に押されて下がり出すのか、まったく見当がつかない
な力が台風外部から加わるのと同時に、その影響で台風
ときが多々あるものです。
内部でもエネルギーが常に変化し、それが複雑な力学作
用となって台風を押し進めるからです(中学校のときに
と ころ が、目 線 を マ ク ロ に 移 し て、多 少 長 い 時 間 間
隔でみていくと、あるパターンが判明してきます。つま
「ブラウン運動」という言葉も習いました)。
私た ち職業 人と して のキ ャ リ アの 軌跡を 考える と き
り、台風は1週間や2週間経てば、ほとんどが東の方向
も、やはり同じようなことがいえます。つまり、自分個
へ カ ー ブ し て、オ ホ ー ツ ク 海 の か な た へ 消 え て 行 き ま
人の外部からは日々刻々、キャリアの選択肢に影響を与
す。ま た、株 価 で あ れ ば 3 ヶ 月 と か 数 年 の 動 き を 見 れ
える実にさまざまな力を受けており、同時に自分内部の
ば、上昇基調なのか、それとも下降基調なのか、また、
気持ちや志向、意欲もどんどん変化していきます。複雑
ど の 程 度 で そ の ト レン ド が転 換 しそ う か がみ えて き ま
な力学の中で、私たちは日々ゆらぎながらキャリア形成
す。
の行動をし、未来の意思決定を行っています。
そ れ は な ぜ で し ょ う か?そ の 理 由 は、台 風 は ミ ク ロ
複雑な力学作用を受けながら、こうしてゆらいでいく
では四方八方からさまざまな力を受け、一見行方知れず
動体は台風やキャリアのほか、株の値動きもそうかもし
ですが、マクロでは偏西風という大きな力の作用を受け
れません。
ていて、最終的には東に曲がる軌跡を描くからです。株
価も、ミクロでは刻々の売買取引の力を受けつつ、マク
ロではファンダメンタルズ(企業の業績や今後の事業見
マクロの力がある方向へ導く
さて、台風の進路にしても株の値動きにしても、ミク
ロ(分や時間の間隔)でみると、あまりに複雑な動きを
通し)や市場全体、景気全体という大きな力を受けて、
トレンドを形成するからです。
てしまう危険性があります。ですが、自分にとっての偏
西風、あるいはファンダメンタルズとなるマクロの力が
あれば、多少はゆらぎつつも、中長期ではある予想範囲
の進路にキャリアをたどり着かせることができます。マ
クロの力とは、言ってみれば、夢や志であり、なりたい
台 風 の 天 気 図、株 価 の チ ャ ー ト 図 を 見 る た び に、自
キャリアは
「ゆらぎ」の軌跡
【過去】 キャリア経路
像です。
分のキャリア進路に大きな力をはたらかせているか、と
いうことをふと考えてしまう昨今です。■
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なミクロの力に翻弄されて行方知れずのキャリアになっ
Career Portrait Consulting.
かしらの意思や目標がないとすると、それこそ複雑多様
©2003-2006
を受けて変化しています。もし、一職業人として、なに
人間関係
スキル・能力
価値観
私たちそれぞれのキャリア進路も日々刻々、多様な力
転職情報
健康状態
自分
現職環境
家族状況
カネ(経済状況)
意志
【未来】 キャリア進路
行方知れずのキャリアにならないために
【35話】
キャリアの“平和ボケ”
□この3年間に、社内報(もしく社外のメディア)で
取材されて もいいくら いの成功物語、業績エピソー
ドのネタがない。
『計画のグレシャムの法則』
「悪化は良貨を駆逐する」--これは誰しも一度は聞
□会社組 織内の 過去の 慣 習や方法を自分な りに変え
て、社内に提案したことがない。
いたことのある有名な『グレシャムの法則』です。そし
□未来よりも、まず現在に不安を感じる。
てこの法則を組織の意思決定論に応用した人がいます。
□ここ 最近、後輩社員が自分よりもいい仕事を して い
年 に ノー ベ ル経済学 賞を 受賞し たハ ー バー
1978
ド・ ・
サ
イ
モン教授です。サイモン教授は、「ルーチ
A
それは
ン な 仕 事 は ノ ン・ル ー チ ン(創 造 的)な 仕 事 を 駆 逐 す
る」という『計画のグレシャムの法則』を提唱したので
るなぁと思う機会が増えた。
□ 日 々 の 業 務 処 理 で、頭 と カ ラ ダ は め い っ ぱ い で あ
る。ちょっと疲れぎみ。
□「うちの会社に限ってリストラはない」と思う。 ■
す。つまり、人は日常の些細な仕事・業務ばかりに追わ
れていると、長期的に考えるべき重要な計画を考えなく
**************
なってしまうという法則です。
確 か に 日 々 の 雑 多な 業 務 に忙 殺 さ れて い る と、あ っ
という間に1ヶ月、1年、3年が経ってしまう。仕事の
【36話】
量をこなしてなんとなく「仕事をやった気分」になって
“志力格差”の時代
安心しているのですが、その実、1年前の自分、あるい
は3年前の自分と比べてみると、スキル上、キャリア上
で大して進歩や成長がなかったことに気づき、少なから
進む世の中の2極化
ずのショックを受ける。これが典型的なキャリアの「計
これまでの日本は、なにかと均質的な国、平等の国な
画のグレシャムの法則」症状です。
どといわれてきました。一億総中流で横並び意識が強い
キャリアづくりに「安定」ということは非常に大事で
文化は、いい意味でも悪い意味でもどことなく安心感が
すが、「安定=ルーチンワークの繰り返し」ではないは
あり、一体感がありました。しかし、そうした古き時代
ずです。常に時代の変化を感じつつ、自分という労働力
は終わり、現在では社会のさまざまな「格差」が指摘さ
の市場価値を意識し、行動を起こすときは積極的に行動
れています。
を起こす、それでこそ真の「安定」は得られるのではな
いでしょうか。
個人や家族においては、その所得格差が大きくなりつ
つありますし、企業においても「勝ち組」と「負け組」
ては、「売れる」ものはいくら高くても売れ、売れない
日々のルーチンワークに埋没してキャリアの“平和ボ
ものはいくら安くても売れない時代になりました。「情
ケ”が起こっていないかどうか、下にそのチェックリス
報デバイド」という言葉のとおり、情報を持つ者とそう
トを用意してみました。チェック項目の数が多いほど、
でない者の差も激しくなっています。世の中のさまざま
平和ボケ度が高まっているといえますので、その際はご
なことにおいて2極化の進行が加速しているように思え
注意ください。
ます。
ごと にステップアップしている というよ り、同じレ
5年後のキャリアに大きな差が・・・
さて、一人一人のキャリアの姿にも格差が見え始めて
ベルの1年を3回繰り返しているような気がする。
います。たとえば、現在の会社の同僚たちで5年後に同
□転職するしな いにかかわら ず、自分の 労働市 場にお
窓会を開くとしましょう。変化の激しい時代ですから、
ける 人材価値(例えば年収換算にして いくら くらい
5 年 後 と も な る と、個 人 個 人 の キ ャ リ ア は 悲 喜 こ も ご
か)に意識を払ったことがない。
も、千差万別の職人生模様がすでにそこに現れているに
□5年後の仕事上の目標や、理想のキャリ ア像・ワー
ちがいありません。終身雇用制が安定的に守られていた
ク ス タイ ル 像を 語ろ う とす る と頭 がう や むや にな
ひと昔前までなら、どの会社も年次や年代に合わせて、
る。
昇進・昇級が行われキャリアにさほどの差はつかなかっ
□「私のような人材は、ここに留まって いるほう が無
難だ」とついつい保身的に考えがち。
たでしょう。ところが、いまは違います。
現在のビジネス社会は、この今の時点からチャンスを
Career Portrait Consulting.
□例えば、ここ3年間の仕事を振り返ってみて、1年
©2003-2006
キャリアの「平和ボケ度」
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の差が顕著になりつつあります。製品やサービスにおい
つかんだ者とそうでない者、キャリアの成長回路に入っ
やっている」という確信レベルまで、志力の持ち様はそ
た者とそうでない者の差は、ますます激しくなっていま
の幅が広がっています。
す。現 状 で は、ど ん ぐ り の 背 比 べ で ス タ ー ト し た は ず
が、5年の間に、技能の差、人脈の差、年収の差、働き
G E の 元 C E O、ジ ャ ッ ク・ウ ェ ル チ は「自 ら の 運
甲 斐 の 差、充 実 度 の 差 と な っ て キ ャ リ ア の 差 が 明 確 に
命をコントロールせよ。さもなくば他の誰かがそれをす
な っ て い き ま す。い わ ば 自
る で あ ろ う」と 言 い ま し た。
分の職業に誇りと面白みを
志 力 と は、ま さ に 自 分 の キ ャ
感 じ 、自 己 成 長 を ど ん ど ん
リアをつくっていくための源
遂 げ て い く「ポ ジ テ ィ ブ
泉 パ ワ ー と な る も の で す。そ
組」と、職 業 に 対 し 冷 め た
れ が な け れ ば 、自 分 の キ ャ リ
目 線 を 持 ち、日 々 ス ト レ ス
アや人生は 他者や外部環境 に
を 溜 め て い く「ネ ガ テ ィ ブ
翻 弄 される こ と にな って し ま
組」の 格 差 が ど ん ど ん 広
います。
が っ て い ま す。(* 私 は、
キ ャ リ ア に つ い て は「勝 ち
「志 力」を 持 ち、強 化 す る た
組」「負 け 組」と い う 表 現
め に 特 別な こ とは 必 要あり ま
に違和感を持っていますの
せ ん。単 純 に「な り た い 目 標
で、こ こ で は そ う い う 対 比
イ メ ー ジ」を 描 く こ と で す。
は用いません)
そ し て そ の 思 い、願 い、あ こ
がれを 自分の中で継続的に保
さ て、こ の キ ャ リ ア の 状
持 さ せ る こ と で す。筋 力 や 知
況格 差はど こからくるので
Art Collaboration with Tatsuya Hirata 力 の 保 持・強 化 と 同 様、志 力
し ょ う か?本 人 の 能 力 差 で
も普段のちょっとした意識と行
しょうか?たまたま就職した会社の差、もしくは上司の
動の積み重ねが大事だと思います。それが1年後、3年
差でしょうか?それとも性格の差?運の差?育ちの差?
後、5 年 後、
容姿の差?・・・結論から言えば、その大元は「志力」
しょう。■
年
10 後 に 大 き く 効 い て く る こ と に な る で
の差であると私は思っています。キャリアは、短期的に
は運や縁、あるいはそのときの能力レベルに影響される
**************
志力さえあれば、自分が当初、能力的、機会的、諸環
境的に多少ハンディキャップを負った状況だったとして
も、それを補って余りあるほどに自身のキャリアを発展
させていくことができると思うからです。私がビジネス
雑誌の記者時代にお会いした数多くの成功者(=思うが
ままの満足なキャリア状況を獲得した人)たちは、例外
なく「志力」のみなぎる人たちでした。
志力とは「なりたいイメージ」を持つこと
私 は 自 ら の 事 業 で、企 業 の 従 業 員 や 大 学 生 に 向 け て
キ ャ リ ア 教 育 サ ー ビ ス を 行 っ て い ま す が、本 当 に こ の
「志力」格差が大きくなっていることを実感します。ま
ず も っ て「何 が や り た い の か、自 分 で も わ か ら な い」
「とりあえず働いている。うちの会社でリストラはない
だろう」という脆弱レベルから、「この仕事が面白くて
たまらない。やりたいことがどんどん湧いてくる」「目
指すべき方向がみえたので、ハラを据えてマイペースで
【37話】
“志力格差”の時代 (続き)
仕 事 柄、い ろ い ろ な 人 の キ ャ リ ア の 姿、働 き 様 を み
ま す が、志 力 の 強 い「キ ャ リ ア の ポ ジ テ ィ ブ 展 開 組」
と、志力の弱い「キャリアのネガティブ停滞組」には次
のような違いがあうように思われます。
志力が自分の固い地盤になる
「ポジティブ組」は、仕事や生活・人生の「こうした
い」「こ う な り た い」と い う ア イ デ ア が 自 分 の 中 か ら
次々湧いてきて、行動せずにはいられない、行動するの
が楽しい。そして、行動したときに、次の新しいアイデ
ア や 展 開 が 生 ま れ る の で、ま た つ い つ い 行 動 し て し ま
う。短期や中長期の目標の抱き方には差はあるものの、
「キャリアも人生もこの方向で大丈夫だ」という腹が据
わる固い地盤のようなものを感じています。
ま た、就 社(会 社 に 就 く)と い う よ り、就 職(そ の
職 種 に 就 く)と い う 意 識 が 高 い。自 分 の 人 財 価 値 基 準
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な要因となります。
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なりたい」という強い「意志の力」(=志力)が決定的
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こともありますが、中長期でみれば、本人の「将来こう
は、社外労働市場を向いていて、今この会社を出ても自
いはありません。
分を高く買ってもらえるか、その職種分野、業界で高い
レベルのプロフェッショナルとして認められるかに留意
選択肢が多すぎて戸惑う時代
しています。とはいえ、現在勤める会社をないがしろに
こ う し た ポ ジ テ ィ ブ 組 が い る 一 方、「ネ ガ テ ィ ブ
せず、むしろ仕事舞台を与えてもらっていることに恩義
組」もたくさんいます。志力が弱い(あるいは、ない)
を感じながら、真摯な貢献を続けます。この姿は、ビジ
ために、「働かされ感」や「なんとなく漂流感」、これ
ネスパースンにとって、高度なプロフェッショナルを目
でいいのか自分の人生といった漠とした不安感が常に内
指すことが大目的であり、会社はそのための手段、プロ
面に付きまとっています。それが、過労やストレスへの
セス、舞台であるというキャリア思想に立ち返ったもの
耐 性 を 低 下 さ せ、う つ 病 が慢 性 化 す る 人 も 増 え て い ま
と思われます。これまで「この大企業に入っておけば大
す。「自分は何をしたいか」「自分はどうなりたいか」
丈夫」という就社意識が前面に出たキャリア思想の振り
という思いを持つか持たないかだけで、生活や人生はい
子の寄り戻しかもしれません。
とも簡単に明暗が分かれてしまいます。
スローライフにも確固たる志力がいる
私は 企業の従業員に対するキ ャリア教育のほか、大
さ ま ざ ま な キ ャ リ ア を 観 察 し て 興 味 深 い のは、こ の
学生や場合によっては小中学生のキャリア教育プログラ
ポジティブ組に分類されるであろう別の一派です。上の
ムづくりに参加しています。学生や子供たちにまず投げ
ようにキャリアのポジティブ展開組というと、頭と行動
かける質問は、まさに「何をしたいか・なりたいか?」
の キ レ る ビ ジ ネ ス パ ー ソ ン が、か っ こ い い オ フ ィ ス で
です。子供たちにはもっとブレイクダウンして、「あこ
さ っ そ う と 働 い て い る イ メ ー ジ で す が、じ っ く り マ イ
がれている人はどんな人ですか?自分もそうなりたいで
ペースで自分の目指したい方向を進む人たちもいます。
すか?」です。生きる力の源泉は、「なりたい像」をイ
ストレスフルな会社勤めをやめてパティシエ(洋菓子職
メージすることから始まるからです。モノやコトが溢れ
人)になった 代
30の女性。その透明な海に惚れ込んで沖
縄移住し、ダイビングショップ経営する 代
30男性。平日
す ぎ て、逆 に そ こ か ら 何 かを 選 び 出 す こ と が で き な く
なっているのは逆説的ですが、これは事実のようです。
は 地 道 な サ ラ リ ー マ ン、週 末 は 人 気 ブ ロ グ を 編 集 し、
経 営 学者 で あ り 思 想 家 の ピ ー タ ー・ド ラ ッ カ ーは、
ネット通販で副収入を得る 代
20男性など。こうした事例
も、やはり強い志力を持ってキャリアを切り拓いている
著書『断絶の時代』でこのように述べています。「先進
人たちであり、ポジティブ組の仲間です。
国社会は、自由意志によって職業を選べる社会へと急速
に移行しつつある。今日の問題は、選択肢の少なさでは
なく、逆にその多さにある。あまりに多くの選択肢、機
要は、キャリ アの成功とは 何かを 問うたと き、私は
会、進路が、若者を惑わし悩ませる」と。
ろ変える、あるいは職に就いていないといった就労状況
のように社会のルールを逸脱して)働くのもひとつの価
が問題ではなくて、何もやりたいことが見つけられず、
値 観 で す が、「泰 然 欲」の 充 足 目 指 し て、ス ロ ー ラ イ
人生の時間を浪費していることが問題の本質だろうと思
フ、スローキャリアを志向するのもひとつの立派な価値
います。本人に何か夢や志が確とあって、たまたまある
観だと思います。スローにも相当な志力がいることに違
ア ル バ イ ト し て い る 状 況 な ら、問 題 は 深 刻 で は な い で
しょう。志力のある人なら、必ず、人生のうちで出会い
やきっかけを見つけ、しぶとく生きて、やがて自分を成
すはずです。むしろ、正社員としてしっかり雇用されて
いる人々の中で、やりたいことが見つからず漂流感があ
り、ストレスにさいなまれ、あるいは雇用組織への依存
意識べったりで居座り続ける人が増大するほうが、企業
にとっても、社会にとっても不健全なものではないかと
思ってしまいます。
「志力」を起こすために
と も か く も「幸 せ の キ ャ リ ア」を つ く る に は、「志
力」を湧き起こすしか方法はありません。そのきっかけ
Art Collaboration with Tatsuya Hirata
Career Portrait Consulting.
めに、がむしゃらに(場合によっては、ライブドア幹部
©2003-2006
・
い わ ゆ る フ リ ー タ ー ニ ー ト の 問 題 は、職 を こ ろ こ
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「自分が思うがままの満足したキャリア状態の獲得」と
思っています。物欲、金欲、出世欲、名誉欲を満たすた
を生む方法をお知らせしましょう。
【38話】
ドラッカーの言玉
①【理想イメージを持つ】
人 は 漫 然 と は 努 力 で き な い 。何 か 理 想 の イ メ ー ジ に
自分のキャリア哲学は何か
向かうときに努力できるし、長続きもする。まず、自分
こうしてキャリア教育開発の仕事をしていると、よく
がいいなと思う働き方、生き方をしているロールモデル
人から質問されることがあります。「村山さんは、ご自
(模範像)を見つける。そして自分なりのワークスタイ
身のキャリアについて悩まないのですか?」と。・・・
ル、キャリア像、獲得したい生活・人生像を思い浮かべ
答えはもちろん「おおいに悩んでいます」です。
よう。それが志力の源泉となる。
自身のキャリアをどうするか、どう拓いていくかは、
生涯にわたって継続する一大問題です。数学のように一
②【人脈を広げる】
発明解の公式があるわけでもなく、誰しも常に悩みなが
上で挙げた目標イメージに近い思いを持つ人たち
ら、自分なりの正解値を追い求めて、創り出していくも
や、自分の価値観と共感しあえる人たちのネットワーク
の で す。私 は「キ ャ リ ア 教 育 コ ン サ ル タ ン ト」で あ っ
を広げよう。情熱は伝染するものなので、一人で内にこ
て、「キャリアコンサルタント」ではないので、個人の
もるのではなく、他人から刺激をもらうことで志力も高
キャリア形成について職業的に相談にのることはありま
まり、維持もできる。
せん。ただ、個人的にはよく相談されることはあります
し、こうしたコラムでもそれに関連したことは書きます
③【行動で仕掛ける】
ので、そうしたときには古今東西の名著を引き出して、
ゼ ロ に 何 を か け て も ゼ ロ で あ る。大 小 問 わ ず、自 分
考えるヒントを差し出してあげるというスタンスをとっ
のキャリアに変化が起こるように「種」を仕掛けておく
ています。
ことである。スキルを磨くために学校に通う、情報取得
や読書への投資を惜しまない、ブログで自分をネット発
さ て、そ う し た 名 著 の 中 で、私 が 最 も よ く 引 用 し て
信する、転職セミナーに出かけてみる等々、さまざまに
いるのが、ピーター・ドラッカー氏のものです。彼はご
行動を起こしてゼロをイチにしておくことである。そこ
存知のとおり「経営学の父」と呼ばれ、 世
20紀の産業・
社会に大きな影響を与えた米国の経営学者です。『現代
から思いがけない展開が起こるものだ。
の経営』『イノベーションと起業家精神』など、生涯に
流に惑わされず、他人の成功をうらめしがらず、自分を
て、改めて数冊を読み返してみたのですが、キャリアを
持って、自分なりに構えて、楽観的に行く。
考えるには本当に含蓄の深い言葉の数々が随所に散りば
められています。
平 成 ニ ッ ポ ン の 世 は い ろ いろ な 社 会 問 題 も 抱 えて い
キ ャ リ ア づ く り は、具 体 的 な ア ク シ ョ ン も 大 事 で す
ますが、人類史上からみれば、そしてまた現在において
が、そ の 奥 底 に し っ か り と し た 自 分 な り の 就 職 思 想、
も世界中からみれば、これほど穏やかで安定的なところ
キ ャ リ ア 哲 学 のよ うな ものを 築 いて いた ほう がい い で
はなく、かつ個人の可能性が努力すれば最も報われやす
しょう。今回は、ドラッカー氏の言葉のいくつかを紹介
い国であると思います。となれば、志力を起こして、思
し、読者の方々のちょっとした気付きにつながれば幸い
うがままのキャリアを楽しまなければもったいない。そ
です。
のためには、「なりたい」イメージを描くことから始め
てください。それを強く思うことで、ことは実現してい
くのです。■
― ― ―「最 初の 仕 事 はく じ 引 き で あ る。最 初 か ら 適
した仕事につく確率は高くない。しかも、得るべきとこ
ろを知り、向いた仕事に移れるようになるには数年を要
する」。
(『非営利組織の経営』)
― ― ―「社 会は 一 人 ひと りの 人 間 に対 し、自 分 は 何
か、何になりたいか、何を投じて何を得たいかを問うこ
と を 求 め る。こ の 問 い は、役 所 に 入 る か、企 業 に 入 る
か、大学に残るかという俗な問題に見えながら、実はみ
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約 の
30著作を残しました。しかし、残念ながら、昨年末
歳
95でこの世を去りました。その死去のニュースを聞い
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キ ャ リ ア は 長 丁 場 の 建 設 作 業 で あ る。あ せ ら ず、時
©2003-2006
④【自分を持つ】
ずからの実存にかかわる問題である」。
(『断絶の時
代』)
マをその仕事に付加する。そして、そのために新しい能
力を積極的に吸収していく。このほんの小さなきっかけ
づくりが、自分の内にある成し遂げたい本能を刺激し、
誰 し も 最 初 の 就 職先、最 初 の 配属 先 が そ の ま ま 天 職
仕事や職場への向き合い方ががらり変わるかもしれませ
になることは極めて稀です。多くの人間は迷ったまま就
ん。い ま 目 の 前 に あ る、そ の な に げ な い 仕 事 が 金 色 の
職 を し、「こ の 方 向 で
チャンスに変わる可能性は
よ か っ た の だ ろ う か」
小さくないのです。
と迷った まま働 き続け
る。そ う し た 意 味 で
は、こ の ド ラ ッ カ ー の
― ― ―「問 題 の 解 決 に
言 葉 は、キ ャ リ ア 路 線
よって得られるものは、通
が 定 まら な い 悩 め る ビ
常 の 状 態 に 戻す こ と だ け で
ジネスパ ースン たちに
ある。せいぜい、成果をあ
ち ょ っと した 安 心 感を
げ る 能 力 に 対す る 妨 げ を 取
り除くだけである。成果そ
与えてくれます。
で す が、そ こ で 安 心
の も の は、機 会 の 開 拓 に
Art Collaboration with Tatsuya Hirata
し き って は い け な い。彼
よ っ て の み 得 る こ と が で き る」。
は私たちに、得るべきところを知り、数年のうちには向
営』)
(『創 造 す る 経
いた仕事を手に入れなさいよと言っています。ただし、
ヘタに焦ることもありません。少しある職場でやってみ
問 題 解 決 ば か り に 注 視 す る だ け で、機 会 を 創 造 し、
て、自分に合わないからすぐに異動だ、転職だというの
リスクを負って仕掛けることを忘れたマネジメントを、
も賢明ではない。職選びは、みずからの実存にかかわる
ドラッカー氏は随所で警告しています。これはキャリア
大きな問題です。自分は何者でありたいか、何をしたい
づくりにおいても同様のことがいえると思います。
のかをよく自問自答することがキャリアづくりの原点な
のです。
現状自分はこうだから、ああだからと弱点やハンディ
キャップの面ばかりを気にして、それを克服してからで
ないとなにもできないかのように気構えてしまう人は多
い も の で す。確 か に 弱 み 克 服 の た め の 努 力 は 大 事 で す
― ― ―「人 は 精 神 的、心 理 的 に 働 く こ と が 必 要 だ か
し、不足・不備の状況を補い、改善するのも大事です。
ら働くだけではない。人は何かを、しかもかなり多くの
何 か を 成 し 遂 げ た が る。み ず か ら の 得 意 な こ と に お い
年
300
あっても何か手ごたえのあることを成し遂げることはで
て、何かを成し遂げたがる。能力が働く意欲の基礎とな
きないでしょう。
に飛び込むことでしか可能になりません。そのチャンス
― ― ―「み ず か ら の 成 長 の た め に 最 も 優 先 す べ き
を成就する過程で、自分の弱みも克服できたり、不足分
は、卓越性の追求である。そこから充実と自信が生まれ
を補うこともできたりします。私個人もサラリーマンか
る。能力は仕事の質を変えるだけでなく、人間そのもの
ら独立する際は、足りないものだらけでした。しかし、
(『非営利
今では、自分が見出した機会から得たもので、おつりが
を変えるがゆえに、重大な意味を持つ」。
組織の経営』)
くるくらい成長させてもらえました。
仕 事 が 面 白 くな い、職 場 が つ ま ら な い。こ う い う と
き、私たちは往々にして仕事をやらされている、働かさ
― ― ―「今 さ ら自 分を 変え ようと し ては な ら な い。
れていることに気がつきます。仕事が面白くないのは会
うまくいくわけがない。自分の得意とする仕事のやり方
社や環境のせいと思って、ずるずると1年、2年が経っ
を 向 上 さ せ る こ と に、力 を 入 れ る べ き で あ る」。
ていきます。これでは、キャリア・人生にとって極めて
(『明日を支配するもの』)
大事な 代
20、 代
30の時間がもったいない。
そこで意識を転換してみてはどうでしょうか。やらさ
れ感のあるどんなつまらない仕事にも、自分なりの卓越
性を求めてみる、そして小さくとも何か成し遂げるテー
自 分 は 自 分 で い い の で す。さ あ、明 日 か ら 伸 び 伸 び
と仕事をしましょう。■
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何かを成し遂げるには、チャンスを見つけ出し、そこ
Career Portrait Consulting.
(『現代の経営』)
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る」。
しかし、そ の意 識のみ にと らわれ てい たら、人生
【39話】
リ ア の展 開は 望め ませ ん。目 的 や意 義な しに は、能 力
地・風・火・水―――力・観・志・人
的 に もマ ンネリ感 や 限界 感 が 出て きて、「力を 磨 く」
意欲も低 下して きます。キ ャリ アの 停滞は そ のような
ところから始まります。
キャリアをつくる4大要素
地 球 の 4 大 要 素 を よ く「地・風・火・水」な ど と い
4要素の好循環がキャリアを大きく展開させる
そ こ で 必 要 な の が、「観 を 得 る」こ と で す。す な わ
います。
こ れ に あ や か っ て、個 々 のビ ジ ネ ス パ ー ソ ン が キ ャ
ち 自 分の 価値 軸を 持 ち、自律的 に考 え、リ スクを 負っ
リ ア を つ く る 4 大 要 素 を 考 え て み る に、 私 は そ れ が
て も 果 敢 に 行 動 する こと で す。自 分 の「観」で 見 極 め
「力・観・志・人」で は な い か と 思 っ て い ま す。つ ま
た行動で すから、た とえ 失 敗しても 悔いは な いは ずで
り、私た ち一 人 一人 が 職 業人 と して、自 分な りに 満 足
すし、その失敗は未来に必ず活きるものです。
の い くキ ャ リ ア(働 き 様、生 き 様)を 体 現 し て い くた
自 分 の 中 に「観」が で き て く れ ば、次 は そ れを 基 盤
」
「
」
「
め に は、「力」を 磨 き、 観 を 得、 志 を 抱 き、
と し て、目指 すべ き理 想 像は 何 か、情熱を 燃やす こ と
「人」と 交 わ っ て い く ことで、そ れ がな され て い くと
ので きる 目標は 何 か とい った「志」を 抱 ける よう にな
いうことです。
り ま す。そ う す れ ば、そ れ を 実 現 す る た め に ど ん な
それを細かくみると、こうなります。
「力」が 必 要 に な って くる の か が 明 確に な る。とな る
と、それを 身 につける ため にまたが んばろ う という 新
【力】を磨く
・技能(スキル)を身につける
・知識、経験(ナレッジ)を得る
・行動特性(コンピテンシー)を強める
鮮な 意欲 がわいて くる。キ ャリ アの 停滞や 中だる みを
打破するブレイクポイントはまさにここにあります。
ま た、同 じ 方 向 の 想 い や 価 値 観 を 持 っ て いる「人」
たちとの 人脈交 流も重要 で す。そう した 人たち と社内
外で 出会 い、結び つ き あう こ と で、さま ざま に触 発を
【観】を得る
・価値軸(バリュー)を持つ
・自律精神、プロ意識(スピリット・マインド)を
持つ
受け、「観」や「志」が い っ そ う 深 く 固 ま って くる こ
とにもなります。
こ の よ う に 力・観・志・人 の 要 素 は 相 互 に 影 響 し
あ っ てお り、この 4要 素 の好循 環 が 起きる と、3 0 代
は一気にキャリアが拓けてきます。
・情熱(パッション)を持つ
4要素を樹木にたとえてみると、
・使命(ミッション)を感じる
・力=幹、枝葉
・観=根
【人】と交わる
・人脈(ネットワーク)を築く
・志=陽の光
・人=水
さらに言えば、
力を磨くだけでは不十分
確 か に 日 々 の 業 務を こ な し、キ ャ リ アを つ くっ て い
くた め に は「力を 磨 く」こと が大 事で す し、そ れ が 一
・仕事舞台(担当プロジェクト、雇用組織、業界、
社会)=大地
・仕事上の成果=花、木の実
番 の 基本 にな りま す。で すから、私 たちは 自 己研 鑽を
・自分のキャリア=樹木の姿
怠 っ て は い け ま せ ん し 、会 社 も 従 業 員 に い ろ い ろ な 能
ということになるでしょうか。
力研修を施そうとしてくれます。
し か し、「力 を 磨 く」こ と は、キ ャ リ ア を つ く る 上
力・観・志・人の4要素は どれも大切です が、その
で 一 部 の 役 割 し か 果 た し ま せ ん。そ れ は、技 能 や 知
中 で も や は り 私 は「観」が 一 番 肝 心 だ と 思 っ て い ま
識、経 験 とい った 力 は、あ くま で仕 事を 成す た めの 手
す。職 業 人と して 根っ こ にな る 部分で す か ら、こ こを
段 に す ぎ な い か ら で す。手 段 の 取 得 に 終 始 し て い る
基 点 に して こ そ 他 の 3 つ の 要 素 も 次 々 に 活 き て くる と
キャリアには早晩行き詰まりがみえてきます。
思うからです。
3 0 歳 前 後 から は、仕 事 の目 的 や 意 義を 自 分な り に
い ずれ に し て も、み な さ ん が 職 業 人 と し て「な ぜ 働
見 出 し 、自 分 の 仕 事 を つ く り 出 し て い か な け れ ば キ ャ
くの か?」「自 分 の 仕 事 にど んな 意 義・意 味 を 持 って
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力・観・志・人=幹・根・陽・水
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・目標像(イメージ)を描く
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【志】を抱く
いるのか?」「自分はこの仕事を通して何を世に提供した
いのか?」と言う問いかけを一度やってみてください。自
分 に あ る 程 度 納 得 の い く 答 え を 持 っ て い る 人 は、す で に
根っこ(=観)ができていますから、自分のキャリアとい
う樹木は今後大きくなっていくでしょう。もし、まだ答え
を持ち合わせていないようであれば、樹木の成長にはいっ
たん限界がくるかもしれません。
「観」をどうやって醸成すればよいかという方法論に関
しては、万人に効く統一のハウツーやマニュアルのような
ものはありません。自分でもがきながら徐々に固めていく
ものだからです。ですが、その醸成を促すきっかけを他か
ら与えることは可能であると思っています。したがって、
人 財 教 育 サ ー ビ ス を 生 業 と す る 私 の 最 大 の 関 心 も、こ の
「観」を醸成するお手伝いをどうできるのか、どう研修プ
ログラム化できるのか、にあります。それに関しては、こ
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のコラムでまた別途紙面を割くことにしましょう。■