銅系非鉄金属スクラップの 高度分離・選別技術に関する調査研究 報告書

システム技術開発調査研究
20-R-6
銅系非鉄金属スクラップの
高度分離・選別技術に関する調査研究
報告書
- 要旨 -
平成21年3月
財団法人 機
械
シ ス テ ム 振
興
協
会
委 託 先 財団法人 クリーン・ジャパン・センター
この事業は、競輪の補 助 金 を 受 け て 実 施 し た も の で す 。
http://ringring-keirin.jp
序
わが国経済の安定成長への推進にあたり、機械情報産業をめぐる経済的、社会的諸条件
は急速な変化を見せており、社会生活における環境、防災、都市、住宅、福祉、教育等、
直面する問題の解決を図るためには、技術開発力の強化に加えて、ますます多様化、高度
化する社会的ニーズに適応する機械情報システムの研究開発が必要であります。
このような社会情勢に対応し、各方面の要請に応えるため、財団法人機械システム振興
協会では、財団法人JKAから機械工業振興資金の交付を受けて、機械システムに関する
調査研究等補助事業、新機械システム普及促進補助事業を実施しております。
特に、システム開発に関する事業を効果的に推進するためには、国内外における先端技
術、あるいはシステム統合化技術に関する調査研究を先行して実施する必要がありますの
で、当協会に総合システム調査開発委員会(委員長 東京大学
名誉教授 藤正 巖氏)を設
置し、同委員会のご指導のもとにシステム技術開発に関する調査研究事業を実施しており
ます。
この「銅系非鉄金属スクラップの高度分離・選別技術に関する調査研究報告書」は、上
記事業の一環として、当協会が財団法人クリーン・ジャパン・センターに委託して実施し
た調査研究の成果であります。今後、機械情報産業に関する諸施策が展開されていくうえ
で、本調査研究の成果が一つの礎石として役立てば幸いであります。
平成21年3月
財団法人
機械システム振興協会
はじめに
我が国は天然資源の多くを海外に依存しているので、国内で発生する金属スクラップ
は貴重な国内資源と言えます。しかし、近年の中国等の急激な成長に起因する世界的な
資源需給の逼迫により、国内で発生する非鉄金属の中国等海外への流出が起きています。
国内で鉱石を原料とした金属製錬を実施している非鉄金属の中では一番生産量が多
い銅系スクラップについても海外への流出が急増しており、国内発生量の約 30%、市中
回収分に限定するとその約 40%が中国等に輸出されていると推定されています。
国内で回収された銅系スクラップを原料として製錬所等に直接投入するには銅品位
が低いため、更に銅品位を上げるための分離・選別が必要ですが、それができずに海外
に輸出されています。中国等では人手により分離・選別され原料として現地で使用され、
国内資源として活用できていません。
このような状況を踏まえ、銅系スクラップの海外への流出を防止し、国内資源循環シ
ステムを再構築することを目的として、製錬所で直接使用できる品質の確保と中国の低
い作業コストを凌駕できるコストとが両立する分離・選別技術について調査研究しまし
た。
本調査研究は法律でリサイクルが定められている家電製品及び自動車において回収
された銅系スクラップの銅の分離・選別技術の現状調査をもとに、ミックスメタル(銅
とアルミの混合物)及び解体時に取り出された部品(銅と鉄の複合体)を国内で分離・
選別し、銅製錬所等で直接使用できる品質の確保と中国を凌駕できるコストとが両立す
る技術システムを検討するとともに、それを実現するためのシーズ技術、技術開発項目、
実用化に向けての課題を調査研究しました。
本調査の情報が各種の製品リサイクルに携わる事業者、銅製錬、伸銅品等の製造事業
者、各種選別装置を取り扱う事業者の今後の事業展開に幾分でも参考になればと願って
います。
平成21年3月
財団法人
クリーン・ジャパン・センター
目
次
序
はじめに
目次
1.調査研究の目的 ·····································································································
2.調査研究の実施体制 ··························································································
3.調査研究の成果の要約 ······················································································
3.1 銅系非鉄金属リサイクルの現状 ······························································
(1)銅系スクラップの輸出動向 ········································································
(2)銅系リサイクル原料の再資源化の流れ ·························································
(3)各種銅製品とリサイクル原料の使用状況 ·····················································
(4)銅製品の工業連関とリサイクルの流れ ·························································
(5)銅の製錬 ······································································································
(6)銅の国内循環のニーズ ·················································································
3.2 使用済み家電製品より回収された銅系スクラップからの銅の分離・
選別技術に関する調査 ··············································································
(1)家電製品(家電リサイクル法対象4品目)への銅の使用状況 ··················
(2)家電製品における銅使用量の多い部品 ·····················································
(3)家電製品より回収される銅系スクラップの再資源化の流れ ······················
(4)使用済み家電製品の解体・再資源化 ·························································
(5)部品の取り外し、解体作業の省力化 ·························································
(6)家電リサイクルプラントにおけるミックスメタルの選別技術 ··················
(7)使用済み家電製品に係る銅の分離・選別技術の高度化方策 ·······················
3.3 使用済み自動車より回収された銅系スクラップからの銅の分離・
選別技術に関する調査 ··············································································
(1)自動車への銅の使用状況 ··········································································
(2)自動車における銅使用量の多い部品 ·························································
(3)使用済み自動車の解体・再資源化 ····························································
(4)自動車解体における部品の取り外し作業の省力化 ····································
(5)自動車破砕工場での非鉄金属の選別技術 ··················································
(6)自動車解体に係る銅の分離・選別技術の高度化方策 ································
3.4 使用済み家電及び使用済み自動車における銅スクラップの分離・選
別技術の統合化検討 ·················································································
(1)銅含有部品及びワイヤーハーネス類の処理 ··············································
(2)非鉄金属の分離・選別技術の最近の技術開発研究の動向 ·························
(3)使用済み家電製品系、使用済み自動車系に共通して適用できる銅
スクラップの分離・選別技術及びシステムについて ··································
3.5 銅系非鉄金属スクラップの国内循環向上に向けた技術のあり方の提言 ····
(1)全体のシステムのあり方 ··········································································
(2)新規技術の開発等 ························································································
4.調査研究の今後の課題及び展開 ··············································································
(i)
1
3
5
5
5
6
9
9
11
11
12
12
12
13
14
19
21
22
24
24
24
25
29
30
34
36
36
38
53
55
55
57
60
1.調査研究の目的
天然資源の乏しい我が国では、天然資源の多くを海外に依存しているので、国内で発生する金属
スクラップは貴重な国内資源である。また、金属スクラップは再生利用することにより天然資源使
用量の削減、省エネルギー、温室効果ガスの排出抑制など様々な効果が期待できる素材である。し
かし、直近の中国等の急激な成長に起因する世界的な資源需給の逼迫により、国内で発生する非鉄
金属の中国等への流出が起こっている。銅は国内で鉱石を原料とした金属製錬を実施している非鉄
金属の中では一番生産量が多いにもかかわらず、国内発生量の約 30%、市中回収分に限定するとそ
の約 40%の銅系スクラップが中国等に輸出されていると推定されている(2007 年)
。それらは原料
として製錬所等に直接投入できる品位まで分離・選別されていない状態で海外(中国等)に輸出さ
れ、現地で人手により分離・選別されそのまま現地で使用されため国内資源として活用できない。
このような状況を踏まえ、銅系スクラップの海外への流出を防止し、国内資源循環システムを再
構築することを目的として、
① ミックスメタル(銅とアルミニウムの混合物)の分離・選別技術
② 解体時に取り出された部品(銅と鉄の複合体)の分離・選別技術
について、製錬所で直接使用できる品質の確保と海外の低い作業コストを凌駕できるコストとが両
立する技術システムを実現するために、シーズ技術、技術開発項目、実用化に向けての課題を調査
研究を行った。
なお、銅系スクラップは廃伸銅製品と廃電線に大まかに分類できるが、廃電線については(財)
電線総合技術センターが電線被覆材を有償でリサイクルすることにより配電線の国内でのリサイク
ルが促進すると結論してその開発を推進しているので、本調査研究は電線以外の伸銅製品(銅管、
裸銅線、端子・コネクターなど)
、特に法律でリサイクルが定められている家電製品並びに自動車か
ら回収された銅系スクラップからの銅の分離・選別技術について調査研究を行った。
(1)廃家電製品から回収された銅系スクラップからの銅の分離・選別技術に関する調査
家電リサイクル施設では廃家電製品をまず手作業で筐体と部品に分離し、モーター、コンプ
レッサー、トランス、銅管などを取り出している。取り出されたモーター、コンプレッサーな
どは、そのままの状態で売却され、多くは商社等を介して海外に輸出されている。また、残り
の物も更に機械破砕し、磁力選別や渦電流装置で鉄、非鉄に選別した上で、非鉄金属スクラッ
プ事業者に売却されているが、非鉄金属スクラップはミックスメタル(銅、アルミなどの混合
物)として、国内でこれ以上分離・選別されることは少なく、通常、この状態で海外へ輸出さ
れている。
このような銅系スクラップの流れを前提として、①手解体で取り出されたモーター、コンプ
レッサーなどの鉄と銅の複合部品からの銅回収の高度化技術、②ミックスメタルからの銅回収
の高度化のための技術、③家電リサイクル施設内の破砕・選別技術の高度化について調査研究
を行った。
- 1 -
(2)廃自動車から回収された銅系スクラップからの銅の分離・選別技術に関する調査
廃自動車は、ディーラー等を経由して自動車解体施設にて解体される。その後、破砕して、
金属類、プラスチック類等を分離・選別して回収再資源化する方式とプレスして電炉に投入す
る全部利用方式の 2 つの処理方法がある。
自動車解体施設では自動車リサイクル法に則りエアーバッグ、フロンが回収される他、中古
部品やハーネス・各種モーター・コンプレッサーなどの銅含有部品が取り外される。
その後、廃自動車はシュレッダー事業者又はプレス事業者に引き渡され鉄スクラップに加工
される。シュレッダー事業者に引き渡された廃自動車はシュレッダーマシンで処理された後、
鉄スクラップ、銅系スクラップ、ミックスメタルに分離・選別される。鉄スクラップは主に国
内で利用されるが、銅系スクラップラとミックスメタルは中国に輸出されることが多い。
一方、プレス事業者に引き渡された廃自動車はそのままプレスされ国内で製鉄原料として利
用される。なお、通常、鉄スクラップ中の銅含有量は 0.3%以内であることが求められるので
解体業者やシュレッダー事業者はこの品質要求を満たすように銅含有部品等を分離・選別する。
このような銅系スクラップの流れを前提として、ハーネス・各種モーター・コンプレッサー
など銅含有部品からの銅スクラップの分離・選別技術の高度化方策について調査研究を行った。
なお、ミックスメタルからの銅回収については、前記(1)での検討技術が同様に適用でき
ると考えられるのでその状況を確認した。
(3)廃家電及び廃自動車における銅スクラップの分離・選別技術の統合化の検討
共通の課題として挙げられる、ミックスメタルからの銅の分離、ハーネス類の国内循環でき
る方策、部品類の国内での解体とその後の分離・選別システムへの接続等について検討し、全
体システムのあり方、新規技術の開発等の提言を行った。
- 2 -
2.調査研究の実施体制
(1)実施体制(委員会の設置等)
本調査研究は(以下「調査」という。
)
(財)機械システム振興協会より(財)クリーン・ジャ
パン・センターが委託を受け、
(財)機械システム振興協会内に設置された「総合システム調査開
発委員会」の指導のもと、
(財)クリーン・ジャパン・センターが調査を実施した。
更に、
(財)クリーン・ジャパン・センター内に学識経験者、家電リサイクル事業者、自動車解
体事業者、非鉄金属の業界団体、金属素材選別装置メーカー等の委員で構成する「銅系非鉄金属
スクラップの高度分離・選別技術に関する調査」委員会(以下「本委員会」という。
)を設置し、
計画の立案、検討審議及び結果の評価を行い、その決定に基づき事業を推進し、この活動から得
られる成果を報告書にまとめた。
なお、具体的な調査遂行は、
(財)クリーン・ジャパン・センターが実施した。
(財)機械システム振興協会
総合システム調査開発委員会
委託
銅系非鉄金属スクラップの高度分離・選別
(財)クリーン・ジャパン・センター
技術に関する調査委員会
(2)委員会構成
総合システム調査開発委員会及び銅系非鉄金属スクラップの高度分離・選別技術に関する調査委
員会の委員構成は、以下のとおりである。
a. 総合システム調査開発委員会
総合システム調査開発委員会委員名簿
(順不同・敬称略)
委員長
東京大学 名誉教授
藤正 巖
委
員
埼玉大学 総合研究機構 教授
太田 公廣
委
員
独立行政法人産業技術総合研究所
エレクトロニクス研究部門 研究部門長
委
員
金丸 正剛
独立行政法人産業技術総合研究所
デジタルものづくり研究センター
招聘研究員
志村 洋文
委
員
東北大学 工学研究科 教授
中島 一郎
委
員
東京工業大学大学院 総合理工学研究科 教授
廣田 薫
委
員
東京大学大学院
藤岡 健彦
委
員
東京大学大学院
工学系研究科 准教授
新領域創成科学研究科 教授
- 3 -
大和 裕幸
b. 銅系非鉄金属スクラップの高度分離・選別技術に関する調査委員会
銅系非鉄金属スクラップの高度分離・選別技術に関する調査委員会委員名簿
(順不同・敬称略)
委員長
早稲田大学理工学術院 教授
大和田秀二
委 員
東京大学 教授 大学院工学系研究科システム創成学専攻
藤田 豊久
委 員
(株)ハイパーサイクルシステムズ 代表取締役社長
菱
委 員
東京エコリサイクル(株) 取締役工場長
川上 信彦
委 員
(株)啓愛社 執行役員 金属事業部 部長
小林 史佳
委 員
中田屋(株) 代表取締役社長
伊藤 清
委 員
(株)リーテム 取締役会長
中島 賢一
委 員
DOWAエコシステム(株) 環境ソリューション室 室長
加藤 秀和
委 員
日本伸銅協会 事務局長
谷
敬三
委 員
(株)アーステクニカ 機械技術部 産業機械技術室 部長
西
昌彦
委 員
日本エリーズマグネチックス(株) 代表取締役社長
丹野 秀昭
孝
(オブザーバー)
経済産業省 リサイクル推進課 課長補佐
篠原 康人
経済産業省 リサイクル推進課 調査2係長
高橋 圭多
経済産業省 リサイクル推進課
山田 淳太郎
経済産業省 非鉄金属課 課長補佐
瀧川 利美
(株)アーステクニカ八千代事業所機械技術部産業機械技術室
富岡 順一
東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻
ドドビバジョルジ
〈事務局〉
(財)クリーン・ジャパン・センター 企画調査部長
名木 稔
(財)クリーン・ジャパン・センター 企画調査部 主席部員
正木 剛大郎
- 4 -
3.調査研究の成果の要約
3.1 銅系非鉄金属リサイクルの現状
(1)銅系スクラップの輸出動向
我が国は天然資源に乏しく、その多くを海外に依存している。そのなかで国内で発生する金
属スクラップは貴重な国内資源と言える。
しかし、
近年の中国等の急激な経済成長に起因して、
世界的な資源需給の逼迫が起こり、国内で発生する非鉄金属スクラップが海外へ大量に流出し
ている。
特に銅系スクラップは 2007 年のデータによると国内発生量に対してその約 30%、市中から
回収される使用済み品から発生する銅スクラップに限定すれば、その約 40%が中国に輸出され
ていると推定されている。図1に銅系スクラップの輸出量の推移と中国向けの輸出量がその中
で占めている量を示す。
450
424
合計
銅スクラップ輸出量(千ton)
400
423
412
396
その他
輸出先
中国
350
330
307
300
237
250
200
385
373
381
2005
2006
2007
156
150
120
296
111
360
319
225
100
147
52
50
105
2
0
1,990
31
1,995
2000
2001
2002
2003
2004
2008 年
出所:財務省貿易統計
図1 銅スクラップの輸出推移
輸出される銅スクラップの主なものとして廃電線、銅・銅合金の切削くずや端材等がある。
その他、電気部品が鉄スクラップの雑品スクラップ等の分類で輸出され、使用済み自動車、使
用済み家電製品から出るハーネス類も輸出されている。鉄と銅の複合製品であるモーター、コ
ンプレッサー等の電気部品を国内の銅製錬所に戻すためには、鉄と銅の分離が必要である。し
かし、その分離にコストがかかるために家電製品、自動車から取り出されたままの状態、また
は、破砕後に鉄とプラスチックを除いたミックスメタルの状態で輸出され、海外で人手により
分離・選別されている。その後、現地の素材メーカーに売却され現地で再利用されているが、
銅資源の国内循環から外れている。
銅はロンドン金属取引所が公表した電気銅地金の価格(LME価格)を基準として国際的に
取引が行われている。5年前の 2003 年には 1,600 ドル/トン程度であったのものが、2004 年
- 5 -
頃から 3,000 ドル/トン程度に上がり、2006 年以降は更に高値が続いて 2008 年には 8,414 ド
ル/トンに達した。
2008 年は資源の需給について激動の年であった。夏までは原油価格、鉱産物価格が高騰し、
過去最高の記録を示した。しかし、秋以降、米国のサブプライムローン問題を発端とする世界
金融危機の煽りを受け、各製造業が一斉に減産体制に入った。そのため、鉱工業資材の価格が
急速に下がり始め、銅の価格も 2008 年 12 月現在で 3,100 ドル/トン程度まで下がっている。
2003 年以降のLME銅価格及び電気銅の国内価格の推移を図2に示す。
12,000
LME(銅)
取極値
($/MT)
1,200
電気銅
国内銅価格
電気銅
国内銅価格
(千円/MT)
(千円/MT)
10,000
1,000
8,000
800
6,000
600
LME(銅)取極値
($/MT)
4,000
400
200
2,000
0
2003年1月
2004年1月
2005年1月
2006年1月
2007年1月
図2 銅LME価格の推移
2008年1月
出典:日本伸銅協会提供
0
2009年1月
年月
鉄スクラップや銅スクラップの海外への輸出も、
海外のバイヤーの買いが急に弱まったため、
中国向け及び全体量ともに前年度に比べて減少している。
国内資源である銅スクラップから回収できる銅リサイクル原料を安定して国内に循環させる
システムを推進するのに丁度良い機会であると言える。
(2)銅系リサイクル原料の再資源化の流れ
銅スクラップを資源として再利用するためには、排出されたスクラップを銅と他種金属に分
離・選別して、銅製錬所、銅系金属加工業者が使える状態まで加工する工程が必須となる。銅
系非鉄金属の取扱業界では、このような再生資源として選別され、一定の品質が確保されてい
るもの、または、資源としての再生を目的として手配される使用済み製品のことを“リサイク
ル原料”と呼んで、単なる排出物と区別している。本報告書においても、その趣旨に沿ってリ
サイクル原料という用語を用いることとする。
銅スクラップには建設物の解体・補修時に発生する電線屑や銅管、電力会社、通信会社、鉄
道で使用する電線の更新時に発生する電線屑、銅製品加工工場で削り粉、端材等の副産物等の
形として排出されるものや、一般家庭及び前記以外の事業者が使用している設備・機器が使用
- 6 -
済みとなって排出される際の設備・機器に含まれるものがある。それらを収集し再生資源とし
て再利用されるまでの流れを図3に示す。
建設工事現場
使用済み製品
鉄スクラップ
電力・通信・鉄道 銅製品加工工場 一般家庭 その他
銅系リサイクル原料
その他
一廃・産廃業者
収集・集荷
電炉業者
海外
商
リサイクル事業者
鉄スクラップ業者
その他解体
家電リサイクル工場
自動車リサイクル工場
シュレッダー工場
社
非鉄金属専門リサイクル業者
(金属スクラップの処理・卸売事業者)
鉄スクラップ
製品スクラップ
中国・
韓国等
袋物・
その他
電線
伸銅品
銅製錬
埋立・
その他
図3 銅系リサイクル原料の再資源化の流れ
使用済みとなった銅及び銅合金を含む設備・機器は産廃事業者や各種リサイクルシステムで
定められた収集、集荷のルートを経て、リサイクル事業者に持ち込まれ、解体・選別される。
そこで選別された銅は更に非鉄金属専門リサイクル事業者(金属スクラップの処理・卸売事業
者)の手で専門的に選別されて、国内の電線、伸銅事業者や銅製錬所に売却される。それに適
合しないものや選別に手間のかかるものなどは商社等を経由して海外に輸出されている。
電力・通信・鉄道業、銅製品加工工場等から排出されるものは金属の種類などの性状が明確
で、量がまとまって出るので、その回収品は電線や伸銅製品の原料として再利用される割合が
高い。建築物解体からの場合も選別をしっかりすれば、量が多いので再利用されやすい。これ
に対して、使用済み製品からの回収品の場合は少量回収の寄せ集めとなるため、品質も安定せ
ず、電線、伸銅工業原料等の純度の高いものを要求される分野にはほとんど使われていない。
また、銅系リサイクル原料には電線やブスバー(電気制御盤内で使われる)のような純銅系
リサイクル原料と、黄銅(真鍮)
、洋白、青銅等の合金が使われた、端子、バルブ、ドアノブな
どの合金系リサイクル原料がある。純銅系リサイクル原料は電線、伸銅等、様々な用途の原料
に再利用できるが、合金系リサイクル原料は伸銅製品の同じ合金系の原料には使用可能である
が、そこに使えないものは銅製錬工程にまで遡ってリサイクルする必要がある。
一般家庭から収集・集荷されるルートの代表として、使用済み家電と使用済み自動車を取り
- 7 -
上げ、その中で銅が十分に国内で循環せず、海外に流れている原因を調べ、それを国内へまわ
すための対策を考える手掛かりとした。
家電、自動車の場合も使用済み部品、ハーネスから純銅に近い品質で回収されれば、伸銅原
料、鋳物等の原料として再利用の可能性も考えられるが、他種金属の混入があり、国内で再利
用される場合も銅製錬を経た再生ルートが中心である。
2007 年の銅系リサイクル原料の国内循環量として表1にリサイクル銅等の供給量(国内回収
量及び輸入量)を、表2にその国内での用途を示す。伸銅品、電線等を加工する際に発生するリ
サイクル原料(新リサイクル原料という)が 38 万t排出され、使用済み製品の排出物に含ま
れる老廃スクラップ(古リサイクル原料という)が 116 万t排出されている。リサイクル原料
として輸入される輸入スクラップの 14 万tを含めて 168 万tがリサイクル原料等の国内供給
量となる。
表1 リサイクル原料等の供給量(国内回収量及び輸入量)
新リサイクル原料
銅
21
銅合金
17
計
38
古リサイクル原料
古リサイクル原料
回収量
在庫・未回収分
1000
16
100
16
単位:万トン
輸入
7
合計
168
7
14
168
(平成 19 年度の経済産業省統計並びに日本伸銅協会・
(社)日本電線工業会の統計資料を元に
(社)日本メタル経済研究所 が算出した)
一方古リサイクル原料(使用済み製品から排出されたもの)の排出量 116 万tのうち約 9 万
tは在庫となり、約 7 万tは鉄スクラップに混入したり、廃棄・埋立されたり、行き先不明の
分であったりしており、それらを合わせたものが 16 万 t あると推計される。その分を差し引い
た 100 万tが再利用されている銅及び銅合金の量であるが、国内で使われずに海外に輸出され
ているものが 44 万tあり、結局国内での再生資源として利用される銅及び銅合金の量は輸入
分の 14 万tを含めて合計 108 万tとなる。
国内でのこれらリサイクル原料の使用状況の内訳は、電線向けに 16 万t、伸銅品向けに 59
万t、製錬所戻しが 22 万t、その他 11 万tである。
表2 リサイクル原料の用途
単位:万トン
電線
伸銅
他
製錬
国内計
輸出
合計
銅
16
21
5
0
42
16
58
銅合金
0
38
6
22
66
28
94
(含む雑品)
0
0
0
0
0
計
16
59
11
22
108
44
152
(平成 19 年度の経済産業省統計並びに日本伸銅協会・
(社)日本電線工業会の統計資料を元に
(社)日本メタル経済研究所 が算出した)
リサイクル原料には純銅と合金(主に黄銅)があり、リサイクル用途別に見ると、伸銅品に
- 8 -
はリサイクル原料使用量 59 万tのうち 38 万tが合金系リサイクル原料である。その他製品分
野でもリサイクル原料使用 11 万tのうち 6 万tが合金系リサイクル原料の使用である。製錬
所戻されるのは、これらに使えなかった合金系リサイクル原料がほとんどである。勿論、電線
用途に戻せるリサイクル原料は純銅のリサイクル原料でなければならない。
輸出される銅系スクラップとは銅くず(廃電線や合金スクラップからなる)と雑品スクラッ
プ(鉄と銅の複合部品を分離しないでそのまま輸出)とを言っている。
(3)各種銅製品とリサイクル原料の使用状況
銅の主要製品には電線、伸銅品、銅鋳物、電解銅箔がある。2007 年のそれらの生産量は電線
が 86 万t、伸銅品が合金を含んで 100 万t、銅鋳物が 10 万t、電解銅箔が 2 万tとなってい
る。それぞれの製品の製造には電解銅とリサイクル原料が使われている。電線の場合は純銅の
リサイクル原料が使われ、伸銅製品の場合には純銅及び銅合金系のリサイクル原料が使われて
いる。表3に電線、伸銅品それぞれのリサイクル原料の使用率を示している。
表3 伸銅と電線の原料内訳
電気銅
リサイクル原料
(平成 19 年)
その他
生産量
電線
83%
17%
-
86 万t
伸銅品
42%
53%
6%
104 万t
(経済産業省、日本伸銅協会資料)
電線の場合は製品の電気特性の要求からリサイクル銅の使用割合は 17%程度となっている。
伸銅品の現在のリサイクル原料使用割合は現在 53%程度に止まっている。この値は 10 年程
前には 60%近くあったが、近年海外のバイヤーの買付が活発で国内の業者がリサイクル原料を
買い負けて少しずつ低下して現在の率に至っている。
(4)銅製品の工業連関とリサイクルの流れ
銅の鉱石輸入から国内での銅製錬、その製品である銅地金を使った電線、伸銅等の銅加工、
更にこれら銅製品を使った様々な部品及び各種機械への組み込み、そして、それらが回収され
る、新リサイクル原料、古リサイクル原料の流れを図4に示す。
a.銅製品の工業連関
銅は製錬業で銅地金を生産し、銅加工業で電線、伸銅品、銅鋳物、電解銅箔等の基材が生
産される。電線・伸銅品等の基材が各種機械部品に加工される。通信電力、鉄道、電気機械、
自動車・船舶、金属製品、建設等のあらゆる分野の製品に使われている。
銅合金には黄銅、青銅、洋白等といった種類がある。回収されて、銅リサイクル原料は電
線及び伸銅品、銅鋳物、電解銅箔の原料としてリサイクルされるが、合金系のリサイクル原
料は電線向けには使われず、伸銅製品、銅鋳物、電解銅箔に使われる。純銅がつかわれてい
ることが明確な電線や配電盤内のブスバー等は古リサイクル原料からも回収再利用されてい
る。
- 9 -
海外銅鉱石
銅製錬
国内鉱石
(
)
銅製錬所
銅地金
リサイクル原料
(銅)
伸銅品
棒・
線加工
)
新リサイクル原料
板・
条加工
管加工
部品製造
部品組立
新リサイクル原料
製品製造
通信電力鉄道
電気機械
自動車・
船舶
その他の機械
金属製品
建設業
銅鋳物
電解銅箔
銅使用製品・部品の利用分野
銅加工
電線製造
棒・
線製造
管製造
銅鋳物(
バルブ等)
製造
電解銅箔製造
板・
条製造
銅鋳物
電解銅
電線
(
リサイクル原料
(銅合金)
(
リサイクル原料
)
古リサイクル原料
(銅合金)
製品製造
国内消費
鉄スクラップ回収及びその他の加工処理業者
非鉄金属リサイクル業
ミックスメタル
部品のスクラップ
古リサイクル原料
(銅:電線・ブスバー等)
電線・ハーネス類
輸出
図4 銅製品の工業連関とリサイクルの流れ
- 10 -
b.銅加工段階へのリサイクル原料の循環
銅製品の加工段階で発生する新リサイクル材は純銅は勿論、合金材でも素性が明確なため
製錬所に戻すことなく、銅の加工段階へのリサイクルがなされている。銅(純銅)は一般に
純度 99.90%以上のものを言い、タフピッチ銅、無酸素銅、リン脱酸銅等の製法、物性によ
る種類がある。純銅のリサイクル材としての利用においても、電子部品向けの板・条の原料
に使う場合はこれらの違いを厳密に仕分けして使う必要のある場合がある。
c.銅製錬へのリサイクル原料の循環
回収したリサイクル原料の品位が銅加工業界の原料基準に適合しない場合には銅製錬所に
戻して鉱石からの製錬工程と一緒に処理される。その概要を以下に示す。
(5)銅の製錬
a.世界の銅生産量
世界の銅生産量(銅地金ベース)は 2007 年で約 1,800 万トンあり、その中の約 20%の 350
万トンが中国で生産され、日本の占める割合は約 9%の 160 万トンである。
b.銅の製錬方式
製錬の方式は主に次の3種類に分けられる。
① 銅溶錬方式(~1250 万トン/年)
:
[日本の全ての銅製錬所は本方式によっている]
黄銅鉱鉱山採掘→破砕・選鉱→銅精鉱製錬→電解精製
②SXーEW方式(~300 万トン/年)
酸化鉱鉱山→硫酸リーチング→溶媒抽出→電解採取
③再生銅製錬方式(280 万トン/年)
電線等スクラップ→手選別→溶解・鋳造→電解精製
世界総生産量:~1800 万トン/年のほとんどは銅溶練方式で生産されている。
中国では③に示した再生銅製錬方式が使われている。本方式は①の様な鉱石が持っている
硫黄分の燃焼熱の活用ができないため、外部から熱補給が必要で、製錬のエネルギー消費が
大きい欠点があるいが、逆に自由にスクラップ銅を処理できる特徴がある。
(6)銅の国内循環のニーズ
l 開発途上国の経済発展により各国のインフラ整備が続くため海外の銅の需要が今後とも増加
する。そのような環境のもと我が国が必要とする銅資源の入手は今後益々難しくなると考え
られ、
折角国内に存在する銅資源を国内産業向けに有効に活用する手段を講じるべきである。
l 世界金融危機の余波として、平成 20 年後期には、海外バイヤーによる銅スクラップの買付
が停滞し、上手く循環せず混乱した。このような事態を避け、安定したリサイクルを行うた
めには、国内でも再資源化できる競争力のあるリサイクル技術の開発が必要である。
l 既に国内に電線をナゲット処理する設備も技術もあるのだが、被覆材を回収するためのコス
トが回収した被覆材の再利用メリットを上回るため、リサイクル原料を海外のバイヤーに買
い負けて、原料不足のために工場の稼働率が下がり、コストアップに陥り衰退している。
- 11 -
3.2 使用済み家電製品より回収された銅系スクラップからの銅の分離・選別技術
に関する調査
(1)家電製品(家電リサイクル法対象4品目)への銅の使用状況
家電リサイクル法対象の家電4品目に使われている銅の量はエアコンが最も多く、次いで冷
蔵庫、洗濯機でCRT式テレビはガラスの重さが大部分を占めるため、全体重量に対する銅の
比率はかなり低い。製造された年代によって若干の差があるようだが、全体重量に対する銅の
比率はエアコンで 17%、冷蔵庫、洗濯機で 5%、テレビでは 3%程度である。
(2)家電製品における銅使用量の多い部品注)
家電製品には熱交換器、モーター、トランス、配線、電子基板、スイッチ、コネクター類等
に銅が使われている。多くの家電リサイクル工場ではこれら銅使用量の多い部品を手解体によ
り取り出している。後ろの機械選別プロセスとの兼ね合いにより手解体で取り外す部品の対象
は異なってくるが、ハイパーサイクルシステムズ(株)の例で、取り外される主な部品の大きさ
と銅に使用量はおおよそ次のようである。
エアコンの場合は手解体で全体重量の約半分の重量が事前に部品として取り外しており、そ
の中で最も銅の使用量の多い部品は熱交換器である。室外機用は約 3.8kg、室内機用では約
2.4kg 程度の部品重量があり、その素材構成はアルミ約 50%、銅約 40%、残り約 10%が鉄で構
成されており、室外機で約 1.5kg、室内機で 1kg 程度の銅が使用されている。
熱交換器に次いで銅使用量の多い部品はコンプレッサーで、重量が約 10kg 程度あり、頑丈
な鉄のシェルで保護されている。素材は鉄 75%、アルミ 15%、銅 10%程度で構成されており、
1個当たりの約 1kg 程度銅が使用されている。その他エアコンには室外機、室内機それぞれモ
ーターが付いており、
1 個当たりの重さが約 1.2~1.3kg 程度で、
鉄が 73~75%、
銅が 17~20%、
アルミが 3~5%の構成で、モーター1個当たりの銅の使用量は約 250g 程度である。その他に
もトランスは鉄 85%、銅 15%で構成され、1 個の重さ約 800g程度で、1個当たりの銅使用量
で 120g 程度の部品である。
テレビはCRTガラスの取り外しが行われるが、その周辺に偏向ヨーク、トランス、スピー
カーなどが付いておりそれらにも銅が使われているが、手解体による金属部品の回収量は少な
い
冷蔵庫、洗濯機では全体重量の約 10%程度が部品として取り外されている。大きなものは、
冷蔵庫のコンプレッサーがあり、1 個約 7kg 程度の重量で、鉄 75%、アルミ 15%、銅 10%と
エアコンコンプレッサーと同じような素材構成である。これには約 700g の銅が使われている
ことになる。
洗濯機モーターの重量は約 2.7kg で、鉄 75%、銅 20%、アルミ 5%の構成でモーターの銅使
用量は 1 個当たり約 540g 程度と推定される。その他に冷蔵庫、洗濯機にもトランスが手解体
されるが銅の量は少ない。
注)
ハイパーサイクルシステムズ(株) プレゼンテーション資料より
- 12 -
(3)家電製品より回収される銅系スクラップの再資源化の流れ
a.使用済み家電4品目の排出状況及び再使用、再商品化の状況
平成 13 年4月から施行された家電リサイクル法ではエアコン、CRT式テレビ、冷蔵庫・
冷凍庫、洗濯機の4品目が特定家庭機器として指定し、新しい製品と買い替えたりして不要
になった際には販売店等の小売事業者の販売ルートを逆流通させてメーカーに回収する仕組
みがつくられた。そして、そこで回収される家電製品から素材を取り出し再商品化すること
を家電製品メーカーに義務付けている。そのための施設として、各家電製品メーカーは、A、
B2つの共同管理会社を作り、それぞれ全国にある家電リサイクル施設と契約して、回収し
た家電製品の再資源化に取り組んでいる。
平成 19 年度末現在家電リサイクル施設が 48 ある。
使用済み家電には、まだ商品として使用が可能なものもあり、それらは小売業者や中古品
取扱業者を経て国内向け、または海外向けの中古製品としてリユースされている。また、製
造業者の手を経ないで資源回収して主に海外に輸出されるケースもある。
産業構造審議会(電機・電子機器リサイクルワーキンググループ)及び中央環境審議会(家
電リサイクル制度評価ワーキンググループ)の合同会合は平成 20 年 2 月にこれらの実態を
まとめて報告書を出している。
同報告書によると、平成 17 年度の家電4品目の排出台数 2,287 万台のうち 75%の 1,720
万台が小売業者により引き取られている。小売業者から再商品化のためにメーカーに引き渡
されている台数は 1,162 万台で排出家電の約 51%に当たっている。
リユースに廻されている使用済み家電製品が約 697 万台(小売業者経由のものが約 303 万
台、中古品の取扱事業者経由のものが約 394 万台)あり、そのうち 107 万台が国内でリユー
スされ、残り 594 万台が海外に中古製品として流れている。中古品の取扱事業者への持ち込
みのルートは回収業者、引越業者、排出者自ら(リース・レンタル業者を含む)の持ち込み
等がある。
メーカーによる再商品化の割合は廃棄家電台数(排出台数-リユース=1,590 万台)の約
73%の 1,162 万台に達している。メーカーの手を経由せず、資源回収業者により再資源化さ
れている量が残りの 421 万台程度ある。
b.家電リサイクル施設で分離・選別された銅系リサイクル原料のその後の流れ
家電リサイクル施設で再商品化された段階で既に鉄、銅、アルミの原材料として製錬所等
で直接使用できる品位のものもあるが、多くは有価金属含有部品、あるいは非鉄金属の混合
物(ミックスメタル)として既存の国内の非鉄金属スクラップ処理・卸売業者に売却され、
そこで更に詳細に分離・選別して銅製錬所や伸銅製品原料向けに使われる。この段階で分離・
選別に手間の掛かるものは海外のスクラップ業者に売却され、国内で循環できなくなる。平
成 20 年前半までは海外業者の買いが強く、銅のリサイクル原料の海外流出が続き、国内で
の循環が少なくなってきている。
図5にこれらの現状流れと新しい技術の開発による精緻な解体、金属スクラップの分離・
選別の精緻化等により国内循環を増加させるために今後増強すべき技術のイメージを示す。
- 13 -
銅高含有部品
(鉄と銅の複合部品)
(現状)
海外
(現状)
ミックスメタル
家電リサイクル施設
銅高含有部品
(鉄と銅の複合部品)
国内循環へ
(技術開発後)
金属スクラップ
処理・卸売事業者 (現状)
ミックスメタル
中品位 銅スクラップ
銅高含有部品
(鉄と銅の複合部品)
精緻な
解体
金属スクラップ
の精緻な分離・選別
中品位
銅スクラップ(増加)
高品位 アルミ+銅
精緻な解体技術の開発
(シェル切断技術)
(部品解体の自動化)
(解体作業
ボ 化)等
超高品位 銅
銅製錬所
アルミ鋳物
添加剤
伸銅原料用
国内
国内循環
(増加)
精緻な分離・選別技術の開発
(ミックスメタルの高性能分離技術)
(成分識別による合金成分分離技術)
(冶金技術による合金の成分調整技術)
現状
技術開発後
図5 家電製品より回収される銅系スクラップ高度再資源化のイメージ
家電リサイクルプラントで回収され、その後海外に流れている主なものは、ミックスメタ
ル及び部品・ハーネス類で、ミックスメタルは現地で手選別によって金属種別に分けられ、
現地で使われている。また、部品・ハーネス類も、部品は手作業によって分解され鉄と銅に
分離されている。ハーネスも手作業で被覆材を分類して、簡単な工具またはナゲット処理機
を使って芯線と被覆材を分離し、銅及び被覆材を回収して現地で再利用されている。
これらを国内で処理するには、銅製錬所等が受け入れる品位まで銅の濃度を高めることが
必要で、そのためには、家電リサイクルプラントで取り出した部品類を後工程の選別が容易
になるような形に分解する、精緻な分解技術が必要である。
また、家電リサイクルプラントで破砕されてミックスメタルとして取り出されるものを、
①もう一段選別機に掛け、銅製錬所等に受け入れられる品位に濃度を高める
②アルミ鋳物に使いやすいように、銅、アルミ以外の金属混合物が一切無い高品位なミッ
クスメタルにする
③伸銅品の原料として使えるような純銅または黄銅素材だけに選別する
等の精緻な選別技術が求められる。
黄銅品用途での利用拡大には、黄銅を含まれる亜鉛含量の違いによってグレード分けする選
別技術や合金成分を調整できる冶金技術等の技術の開発が望まれる。
(4)使用済み家電製品の解体・再資源化
a.使用済み家電4品目の素材別再商品化実施状況
環境省発表によると平成 19 年度全国の家電品目毎の“部品及び材料等の再商品化量 (製品
の部品又は材料として利用する者に有償又は無償で譲渡し得る状態にした場合の当該部品及
- 14 -
び材料の総重量) ”の銅の回収量はエアコンから 5,076t、テレビから 4,951t、冷蔵庫・冷凍
庫から 1,994t、洗濯機から 1,240t であった。図6に品目別に円グラフで示す。エアコン、
テレビからの銅の回収率が高い。また、非鉄・鉄などの混合物の項目には銅を含有する部品
が含まれている。即ち、エアコン、冷蔵庫・冷凍庫にはコンプレッサー、モーターや熱交換
器が、洗濯機にはモーターなどの部品が含まれている。
エアコン
テレビ
銅
その他の有
価物
アルミニウ
ム
鉄
その他の
有価物
鉄
非鉄・鉄な
どの混合
物
非鉄・鉄など
の混合物
ブラウン管
ガラス
アルミニウム
銅
洗濯機
冷蔵庫・冷凍庫
その他の
有価物
その他の
有価物
アルミニウ
ム
非鉄・鉄な
どの混合
物
鉄
鉄
非鉄・鉄な
どの混合
物
アルミニウ
ム
銅
銅
図6 品目別の部品及び材料等の再商品化量の構成状況
b.使用済み家電製品リサイクルプラントの概要
家電リサイクルプラントの機能を模式的に示すと図7の様になる。全体が手解体工程、破
砕工程、選別工程より構成される。手解体工程はそれぞれ品目別に専用の解体ラインが組ま
れ、その後の工程は、断熱材フロンの回収やブラウン管ガラスの処理のために、冷蔵庫及び
テレビはそれぞれ別の処理ラインが組まれている。冷蔵庫の断熱材にはフロンが含まれてい
るものがあるため、破砕に伴って発生するフロンを回収することが必須で、専用の破砕機で
破砕してフロンと断熱材ウレタンを回収した後で、他製品ラインと合流して金属選別される
ことが多い。テレビはブラウン管の処理が工程の主要部分をなしている。エアコン、洗濯機
は各施設の考え方で同じラインで処理されるところもあり、それぞれ別系列で処理するとこ
ろもある。
手解体で取り出した部品の処理は社外で行っている例が多い。
- 15 -
手解体工程
洗濯機テ
冷蔵庫
冷蔵庫
破砕
部品の
分解
鉄
鉄
別業界または海外
鉄の分離
フロン
回収
破砕
断熱材ウレタン
フロン回収
エアコン
選別工程
非鉄金属の分離
手解体による部品の取り出し
ブラウン管
分離
テレビ
破砕工程
非金属
非鉄金属
ミックスメタル
(銅、アルミ)
鉄の分離
アルミ
非鉄金属分離
銅
図7 家電リサイクル施設の模式図
設備のシンプルさからは破砕機1台、選別装置1系列で全ての製品を処理する方法が望ま
しいが、回収した素材の品質等を考えると必ずしもこれがベストとは言えないことがある。
一緒に破砕した混合物からそれぞれの素材を後で選別分離するのでは再利用に適した品質の
素材が得られないことが多い。プラスチックがその典型で、素材別に分けて破砕して樹脂を
混ぜないようにして品質を確保している例が多い。銅等の非鉄金属の場合にも選別機の性能
と目標とする品質によっては同様の事情が生じる場合がある。
銅系非鉄金属は高価なリサイクル原料であるため、上手く(効率よく)回収できれば、必
ず収益向上に寄与できる素材であり、その回収(分離・選別)技術が注目されるところであ
る。プラントの収益性を上げるために、各社それぞれ高品位な素材を高収率で回収するプロ
セス上の工夫がなされている。
その一つの方向は、手解体等による事前処理を徹底すること、もう一つの方向は、できる
だけ異種製品系の処理と合流しないで、その製品に特化した専用選別ラインを目指すものが
ある。
- 16 -
c.回収部品、ミックスメタルの金属スクラップ処理・卸売事業者等による処理状況
家電リサイクル施設で分離・選別された部品及び金属スクラップは図8に示すようなルー
トをたどって国内の銅製錬所、製鉄所等に再生資源として供給される。
金属スクラップ処理・卸売事業者は家電リサイクル施設から出た銅含有部品やミックスメ
タル等の金属スクラップを更に細かに分離・選別し、国内の製鉄所、銅製錬所、アルミ第二
次製錬所、電線、伸銅各メーカー等が利用できるようにする工程を担っている。
しかし、近年、中国等アジア諸国の発展により、これらの国々が先進国の再生資源を活用
する傾向にあること、使用済み家電のモーターなどの解体は国内では人手をかけられないこ
となどの理由により、使用済み家電部品やミックスメタル(銅、アルミなどの混合物)は「家
電リサイクル施設」⇒「金属スクラップ商社」
、あるいは「家電リサイクル施設」⇒「金属ス
クラップ処理・卸売事業者」⇒「金属スクラップ商社」という経路で、金属スクラップ商社
が輸出手続を行い、海外へ輸出されることが多くなっている。
金属スクラップ
処理・卸売事業者
金属スクラップ
商社
海外
金属スクラップの
粗分離・選別
処理は行わないが、
資源別に利用可能な製錬所、
製鉄所、海外に販売
銅製錬所・
製鉄所
家電リサイクル施設
製錬用金属原材料化
(緻密な分離・分別)
図8 家電4品目の金属スクラップ再資源化の流れ
家電リサイクル施設において大まかに分離・選別された使用済み部品・材料(金属スクラ
ップ)はまだいろいろな種類の金属が混在しているなどのため、国内の銅製錬所等で原料と
してそのまま投入できない。そのため、金属スクラップ処理・卸売事業者において、さらに
きめ細かく手分解・機械破砕・手選別し、銅製錬所や製鉄所で使用できる単一金属主体の金
属原料(製錬原料用スクラップ)に加工されている。 家電製品に由来する使用済み部品・材
料の処理方法は各金属スクラップ処理・卸売事業者により異なり、また金属スクラップの価
格変動や中国における輸入規制などの影響により処理方法に大きく影響する。
主な部品の家電リサイクル施設及び金属スクラップ処理・卸売事業者における再資源化処
理の事例を以下に示す。
①熱交換器
熱交換器はアルミ、銅を純粋に取り出せ、高価に売却できるため、国内で循環している。
・熱交換器の耳と呼ばれる取付部の鉄の部分を切断除去し、アルミ第二次製錬所に売却
し、アルミ合金原料としてそのまま使われるケース
・耳の部分を切断除去した後、裁断機により破砕し、振動式選別機等で銅とアルミに選
別して銅製錬所、アルミ第2次製錬所に売却されるケース
- 17 -
②コンプレッサー
潤滑油に起因する輸送中のトラブル等のため中国が未解体の状態での輸入を規制して
いるため、シェルとコアを分離して油を抜く作業が必須となっている。
・輸出の場合は、ケーシングとコアを分離して油を抜いて輸出される。
国内でコンプレッサーを再資源化している例では、
・油を抜いて、そのまま、高炉に投入するケース
・シェルを切断し、鉄と銅をそれぞれ製鉄所、銅製錬所に売却するケース
・一部の家電リサイクル施設では油を抜いた後で破砕機による常温破砕を行い、破砕片
の銅と鉄を選別して製鉄所、銅製錬所に売却している。
③モーター
・そのままの状態で中国へ輸出するケース
・手解体でケーシングと銅コイルを分離し、銅コイルを銅製錬所に売却するケース
・特殊な破砕機にそのままモーターを投入し破砕しその後各種機械(風選、磁選、篩選、
渦電流選)による選別を行い鉄と銅に分離し国内の製鉄所、銅製錬所に売却するケー
スが見られる。
④コード類、消磁コイル等銅類、基板類
家電ハーネスと呼ばれるコード類は雑多な被覆材が使われているため、被覆材を再利用
できるようにナゲット処理をして銅と被覆材を回収しようとすると、手間が掛かってコス
トが嵩む。
・そのまま海外(中国等)に輸出されることが多くなっている。
・ナゲット設備を持つ金属スクラップ処理・卸売事業者(ナゲット設備を持たない一般
の金属スクラップ処理・卸売事業者はナゲット処理を行う事業者に販売するか、その
まま銅製錬所に販売)はこれらナゲット処理し、
・銅の純度を高め銅製錬所に販売する。
・基板類はアルミ、プラスチックを手解体で除去後、コード線材、偏向ヨークとともに
破砕して各種機械(風選・磁選・アルミ選)による選別を行い銅製錬所に金銀銅滓と
して売却される。
・或いは他のものと一緒に焼却処理したあと、金銀銅滓として、金の含有量 の評価によ
って銅製錬所に有償で販売されるかまたは逆有償物として引渡される。
⑤ミックスメタル
ミックスメタルは銅、ステンレス等金属種別に分離されれば、高価で売れるため、各事
業者はコストの許容できる範囲で、手選別や装置導入などで細かい選別を実施し国内の製
錬所に売却している事業者もあるが、おおよそ次のように流れている。
・そのまま海外(中国等)に輸出されるケースが多く見られる。
・自動車系のミックスメタルと一緒に重液比重選別でアルミを除去して、銅の濃度を銅
製錬所が引き取れるレベルまで濃縮しているケースもある。
・手選別で選別された銅は国内製錬業者等に売却される。
・近年ソーター式選別機を使ってミックスメタルのそれぞれの金属片を分離して回収率
を上げようとする動きも見られる。
- 18 -
d.家電リサイクル施設内での銅リサイクル原料の精密分離の動き
東京エコリサイクル(株)では、専用のナゲット処理装置を開発導入し、自工場内での銅と
被覆材の再資源化を目指して取り組み始めている。
また、西日本家電リサイクル(株)では渦電流選別機を出た後のミックスメタルをCCDカ
メラで色彩判別してソートする色選別機を導入し、銅製錬所へ直接納入できる品質レベルの
銅を回収している。
また、プラスチックの品位を上げるために、金属検知方式の検出器を使ったソーターを使
ってプラスチックに混入する配線くずを除去することを試みている。
(5)部品の取り外し、解体作業の省力化
a.部品取り外し作業の省力化
家電リサイクルプラントに受け入れられた家電製品は、製品毎の分解ラインで手作業によ
り部品の取り外しが行われている。どの部品まで事前に取り外すのかは各施設の設計ポリシ
ーによるが、先に述べたように、破砕機の設備コストを抑えようと一台の破砕機で共通破砕
処理しようとすると、各製品ラインとも並行して流れ作業で進んでいるので、どうしても混
合破砕になり、その後の選別工程は様々な装置を駆使しないと高品質な素材への分離が難し
くなる。
解体作業は部品の大きさから考えて、現在行われている、簡単な工具を使った人手による
解体作業が当分中心となるが、家電製品の部品の場合は再使用されることを考えなくてもよ
いので、いかに作業時間を短くするかが課題である。
国内リサイクルを続ける限り、リサイクル施設での部品の取り外しは必要で手解体作業の
人件費コストを抑えるには将来的にはロボット的な装置の導入による作業員負荷の軽減が
求められる。
b.エアコン熱交換器の銅とアルミの分離
エアコン熱交換器はアルミと銅を分離してアルミ、銅の単一素材に分離すれば、それぞれ
の受け皿となる国内事業者が既にあり、家電4品目の中で最も再資源化価値の高い部品と言
われている。この分離作業は主に非鉄金属スクラップの処理業者が行っているが、家電リサ
イクルプラント内で行われている場合もある。
パナソニックエコテクノロジーセンター(株)では熱交換器を専用の裁断ラインを持ち、裁
断後、振動デーブルでアルミと銅を分離し、99.9%の純度の銅を回収できている。伸銅原料
向け等銅加工段階へのリサイクルへの期待が持てる方法である。
西日本家電リサイクル(株)でも小型の裁断機を使い手作業で銅パイプとアルミフィンの分
離を行い銅をパイプ形状で回収している。
なお、冷蔵庫にも熱交換器が組み込まれているが、断熱材と一体化されているため熱交換
器を事前に取り外しているプラントは少なく、本体と一緒に破砕しその後に鉄、プラスチッ
ク、アルミ、銅とそれぞれ分離・選別する方法がとられている。
また、エアコン熱交換器は分離しないでそのままアルミ合金に使うことも可能で、解体の
- 19 -
コストと売却価格の差額いかんに掛かっている。
c.コンプレッサー、モーターの分解技術
先に述べたように、コンプレッサーをそのままの形で中国へ輸出することが規制されるこ
とになり、輸出して部品の銅と鉄の分離のための細かい作業を海外に依存する場合でも、最
低限国内でコンプレッサーシェルを切断して、潤滑油を抜き取る必要がある。切断はガス溶
断、プラズマ溶断、カッター切断等の手段が取られているが、この段階の分解の作業性の改
善が望まれている。
東京エコリサイクル(株)では1日 600 台切断できる装置を導入して対処しているという。
中国でも欧州経由で輸入されたコンプレッサーは中国内でも溶断方式で解体を実施している
と言われており、熟練者においては1台 30 秒程度で処理できているという。
このようにして切断されたコンプレッサーのシェル、回転子は国内の鉄鋼原料として受け
入れられている。しかし、固定子は銅のコイルと鉄芯から構成されていて、更に分解が必要
である。そのため、折角シェルを切断して取り出した固定子を海外に輸出して海外で細分解
しているケースもある。
コイルを切断して鉄芯とコイルを分離する装置が開発されているが、それで取り出された
コイルはまだ伸銅メーカー等に次のような問題で忌避されているという。 即ち、固定子か
ら取り出したコイルは絶縁紙等の可燃物が多く付着しており、銅溶解炉に投入すると黒煙を
発する等の環境問題がある。そのため絶縁紙の除去作業または事前に焼却処理をする工程を
追加する必要がある。
パナソニックエコテクノロジーセンター(株)でも冷蔵庫コンプレッサーのシェル切断によ
る固定子の取り出し及びコイルと鉄芯の分離までを家電リサイクルプラント内で行うことに
より国内で循環しているという。
d.コンプレッサー、モーターの破砕法による銅の回収
潤滑油を抜いたあと、常温破砕でコンプレッサーを処理している例として次のような例が
ある。パナソニックエコテクノロジーセンター(株)ではエアコンコンプレッサーをハンマー
式破砕機に投入し常温破砕して、破片を磁力選別、渦電流選別装置を使って鉄と銅と非金属
に分離し、約 80%程度の純度の銅を得ている。
これら常温破砕は自動車スクラップ処理用の大型破砕機を持っている(株)青南商事(青森)
、
ハリタ金属(株)(富山)でも行われ、自動車系のミックスメタルの選別装置で銅の選別回収
が行われている。ただ、破砕に多大のエネルギーを要し、設備の寿命も短い等の課題もある。
e.小型モーターの破砕によるミックスメタル回収工場への接続
小型モーターは現在そのまま海外に流れているが、国内での高性能のミックスメタル選別
工場が実現すれば、小型モーター類破砕専用の破砕工程を設け同工場に選別対象物として供
給して国内循環に繋げることができる。
- 20 -
(6)家電リサイクルプラントにおけるミックスメタルの選別技術
a.振動式選別機による比重分離
専用ライン処理等選別対象がはっきりしている場合には、
振動式、風力等そのプロセス専用選別機を用いることがで
きる。パナソニックエコテクノロジーセンター(株)では手
分解で取り出したエアコンの熱交換器を専用の裁断機(シ
ェアー式)で裁断し、振動テーブル式の選別機で破砕片を
アルミと銅に選別して純度 99.9%の銅を得ている(写真1
参照)
。他種素材の混入を排除して専用の装置を使えばその
破砕片に特化した選別機、選別条件に設定できて、純度の
良い素材が回収できるという事例と言える。
写真1 エアコン熱交換器から回収した銅
しかし、一般にはまた、冷蔵庫や洗濯機本体をプラスチック含有のまま破砕し、それから
鉄、非鉄金属を回収する場合には磁選機で鉄を除去し、その後の風力選別機によりウレタン
フォームの除去を行い、非鉄金属選別(渦電流式)工程で更に非鉄金属と非金属(プラスチ
ック等)を除去したものがミックスメタルとして残る。
b.ソーターによる選別の例
ミックスメタルからの銅の回収のため、家電リサイクル事業者が自らソーター式選別機を
導入している例として西日本リサイクル(株)の例が挙げられる。
検出端としてCCDカメラによる画像色彩識別技術、高周波(渦電流)式金属検知、X 線
機よる比重検知、近赤外線対するプラスチックの吸収波長の違いの検知等が使われている。
西日本家電リサイクル(株)では、CCDによる色彩認識方式のカラー選別機を導入し、95%
純度の銅を選別している(写真2参照)
。
写真2
カラー選別機で回収された銅
また、西日本家電リサイクル(株)ではプラスチック側からも金属検知式ソーターを使って、
被覆電線の破片を回収する試みが行われている。
- 21 -
(7)使用済み家電製品に係る銅の分離・選別技術の高度化方策
a.コンプレッサーへの対応
①コンプレッサー切断の効率化
コンプレッサーの切断には、ガス溶断、プラズマ溶断、カッター切断等の手段が使われ
ているが、切断機へのコンプレッサーの取付や切断位置決めに人手を要している。1台当
たりのコンプレッサー切断の作業時間短縮がコンプレッサーの解体コストを大きく左右
し、一般に 30 秒以下で作業が終わることが要求されている。
大きさの形状の異なるコンプレッサーの切断装置への取付や切断位置の判断が自動的
にできるようになれば、完全自動化(ロボット化)ないし半自動化が実現し、解体作業員
費用が削減され、或いは完全自動化でなくても作業員1人当たりの処理個数を上げること
によりコンプレッサー解体のコストダウウン可能になる。
②切断されたコンプレッサー部品の固定子からの銅コイル抜き出しの効率化
切断されたコンプレッサーの固定子は鉄芯とコイルから構成され、コイルを切断して銅
と鉄に分離する必要がある。この段階から海外バイヤーの買付対象になり、折角ここまで
国内で解体されたものが海外に輸出されるケースが多い。コイル切断用の装置も既に開発
されてはいるが、この作業単独で考えると国内処理のコスト競争力は弱い。①で述べたシ
ェル切断の半自動化(または完全自動化)と組み合わせて装置化すべきである。
③解体された銅コイルを銅製錬所に売却可能な品位にする技術の開発
コンプレッサーを切断しその固定子から抜き出されるコイルは純銅であり、伸銅用等の
銅加工工業の原料としても使える筈であるが、絶縁紙、エナメル等が含まれるために、溶
解時に黒煙を発する等の環境上の問題が指摘されていて、そのままでは受け入れられない。
国内で循環させるためには、これらを除去する工程が必要となる。
それには、コイル分離操作に併せて絶縁紙等を除去する工程を設けて選別して使える様
にする方法と銅製錬の溶解炉への投入前に培焼炉を設けて、絶縁紙、エナメルを焼却する
方法が考えられる。
コンプレッサーのコイルはもう少し手を掛ければ国内循環に繋がることが期待できる。
b.モーター類への対応
①モーター類の分解の効率化
家電製品で使われるモーターは洗濯機モーターが一番大きいがそれでも 2~3kg 程度で
銅使用量も 0.5kg 位で、小さなものが多く、コンプレッサーの様に一つずつ分解して対応
していてはコストが合わない。モーター類を効率よく解体(専用破砕機による破砕)して、
国内の非鉄金属の大量処理プロセスでの選別に繋げる必要がある。
c.ミックスメタルからの銅回収技術への対応
①ソーター式選別機の導入促進
手選別効率を助けるためにソーター式選別機を導入し、ターゲット素材を検知・識別し
てその破片をエアジェットで吹き飛ばして回収したり、ターゲット以外の金属を選択的に
- 22 -
飛ばしてターゲット金属の濃度を高めたりする方法が可能である。家電リサイクルプラン
トでもそれらの装置の導入が望まれる。
②色識別によるソーター式選別機(銅、アルミ)
ソーター式選別機の一種である色識別機による銅の分離がかなり使われている。ベルト
コンベヤ上の一線上に焦点を定めたCCDカメラを並列に並べておき、そこを通過する破
片の色相を解析して、銅、黄銅とアルミ、亜鉛などを破片の表面色彩で選別しようとする
装置で、西日本家電リサイクルプラントなど家電リサイクルプラントへの導入例も現われ
ている。選別される素材の純度は手選別に及ばないが比べると劣っているが、手選別の能
率を高めて全体の選別作業の生産性を著しく高める効果が期待できる。
d.非鉄金属処理業界の育成
①ミックスメタルの集合処理工場
家電製品の製品全体重量に対する銅の使用量は、エアコンの場合の 17%程度を別にする
と、2~5%程度であり、各家電リサイクル施設ではミックスメタルの段階になると、工程
を流れる量が小さく、この先銅を更に選別する工程を個々のプラントが実施するには適正
な規模と言えなくなる。
そのため家電リサイクルプラントの手を離れ、非鉄金属処理業者や問屋の手に委ねるこ
とになる。家電リサイクル業者側でやるか、非鉄金属処理業者側でやるかは別として、適
正規模で非鉄金属ミックスメタルの選別を専門に行うソーター式選別工場を設ければ、人
件費コストを下げ競争力のある銅資源の回収が期待できる。
②自動車系ミックスメタルとの合併処理
自動車系ミックスメタルはアルミ回収を主目的に、既にミックスメタルからの選別が本
格的に行われている。重液選別によるアルミの回収、ソーター式選別機の実用化がなされ
ている。
家電系ミックスメタルを自動車系事業者との協同体制をとり、自動車系ミックスメタル
処理プラントの適当な工程に合流させた処理を考えることが必要である。
③銅製錬向け基準に適合するための前処理施設(可燃物等の前焼却処理等)
先にも述べたように、被覆材やエナメル等の電線被覆材をリサイクル原料として既存の
設備にそのまま使って投入しようとした時に、黒煙発生等の環境トラブルに繋がるとして
受入が忌避されているケースが多い。回収銅資源を伸銅メーカー等の原料溶解炉投入する
前に被覆材等を焼却処理する培焼炉を設置することで、それらのトラブルを避けることが
できる。
家電製品の解体で取り出されるハーネス類も、ナゲット処理にかけることを前提にその
被覆材と芯線の両方の回収を考えている。しかし、被覆材の材質選別・整理の作業コスト
がネックとなって実際には国内で回収できないでいる。この際、銅の回収のみに注目して
その回収を単純化して考えてみることが必要である。
- 23 -
3.3 使用済み自動車より回収された銅系スクラップからの銅の分離・選別技術に
関する調査
(1)自動車への銅の使用状況
自動車は多くの部品の複合体であり、それぞれの部品及びそれらを繋ぐ配線に銅が多く使わ
れている。車をその構成素材の比率に分解してみると鉄が最も多く約 70%、プラスチック、ゴ
ム、ガラス、繊維等の非金属類が約 22%、非鉄金属類が合計で約 9%あり、非鉄金属のうち銅
の使用量は車全体の約 1.5%(18kg)程度と平均してしまうと少ない。しかし、発電機・モー
ター、スイッチやワイヤーハーネスと言った電機部品やその配線として使われており、解体に
際しても中古部品として再利用が可能な部品があること等により自動車からの部品の取り外し
が広く行われている。また、自動車スクラップの素材への再資源化の中心をなす鉄スクラップ
のリサイクルにおいて、銅はトランプエレメントと言われ、製鋼プロセスで抜けずに鉄鋼の中
に蓄積することにより、銅の鉄スクラップへの混入が厭がられている。鉄スクラップから銅を
いかに除去するかが課題となっている。
自動車解体においては、銅資源の有効活用及び鉄スクラップ品質上両面からの要求からの銅
の分離が重要な課題である。
(2)自動車における銅使用量の多い部品
解体時に取り外し得る部品の中で銅が多く使われているものを表4に示す。表中で特に銅
使用量の多い部品(使用量 0.5kg 以上のもの)を網掛けで示している。銅使用量の多い部品
としては、エンジン周りのハーネス、オルタネータ、スターター等があり、その他にエンジ
ンルーム内のハーネス、室内のハーネス、ヒーターコアやドアハーネスがある。
表4 普通乗用車に使われる銅使用量の多い部品例
エンジン
ハーネス
オルタネータ
スターター
コンプレッサー
ディストリビューター
本体重量(kg)
1.779
5.334
2.884
6.191
0.680
銅量(kg)
0.866
0.700
0.630
0.273
0.220
エンジンルーム
ハーネス
ヒューズボックス
ワイパーモーター
ラジェター、ファンモーター
2.401
1.021
1.251
6.586
1.260
0.268
0.094
0.142
室内
ハーネス
ヒューズボックス
ブロワーモーター
ヒーターコア
5.406
1.050
1.138
0.820
3.002
0.325
0.109
0.820
ドア
ハーネス
パワーウインドモーター
1.221
3.761
0.580
0.124
リア
銅合計(kg)
ハーネス
0.437
-
0.192
9.603
(平成 15 年度 経済産業省委託「自動車リサイクルに係る処理技術等の調査」
:(財)金属系材料研究センター 平成 16 年 3 月)
- 24 -
これらの部品に含まれる銅の量は、1 車当たり室内ハーネスが 3.0kg、エンジンルームハ
ーネスが 1.3kg、エンジンハーネス 0.9kg 等と言われる。ハーネス類が取り外し可能な部品
に使われている銅のうちの約 60%を占めている。
これらハーネス類や部品は解体前に事前に取り外したり、車体破砕後に磁力選別機による
非鉄金属を分離したりすることによって鉄に混入しない対策が取られている。
(3)使用済み自動車の解体・再資源化
a.使用済み自動車解体の流れ
先に述べたように、自動車の構成素材の約 70%は鉄である。解体に当たっては、先ず再利
用可能な部品が優先的に取り外され、中古部品、リビルト部品のベース等として再利用され
る。再利用の対象とならない部品類は素材としてリサイクルされる。ワイヤーハーネスは取
り外しの困難な部位のものもあるが、操作性の許せる限り事前に抜き取られている。
これら、部品とハーネスを除去した後の廃車ガラは鉄スクラップとして処理される。鉄ス
クラップの回収方法は大きく分けて2つの方式がある。一つは、廃車ガラをシュレッダーマ
シンに掛け、破砕したあと、風力選別でシュレッダーダストを除去し、磁力選別機で鉄分を
吸着して回収する方式である。もう一つの方式として廃車ガラをそのままプレスして電炉メ
ーカーに鉄鋼原料として売却する全部利用と言われる方式がある。
前者の場合は鉄回収後に残るアルミ、銅等の非鉄金属混合物(ミックスメタルという)を
更に選別機に掛けて銅を選別することが可能であるが、後者の場合には廃車ガラに残った非
鉄金属もそのまま電炉に投入される。そのために、プレスする前の段階での事前の部品、ハ
ーネス等の除去が重要となっている。
プレス業者
新車ディーラー
中古車販売業者
自動車整備業者
廃自動車
371 万台
1)
解体業者
全部利用(A プレス)
国内電炉
43 万台1)
廃車ガラ
シュレッダーダスト
367 万台1)
鉄スクラップ
シュレッダー業者
323 万台1)
ミックスメタル
フロン
エアバッグ
手選別
(今後)
高度分離・選別技
術を開発し、すべ
て国内で原料とし
て利用。
(現状)
銅系リサイクル原料(大)
国内
ミックスメタル(細)
輸出
中古部品
廃タイヤ
(現状)
銅系リサイクル原料(廃部品)
輸出
図9 使用済み自動車の解体の流れと銅系リサイクル原料の課題
特に銅はトランプエレメントと言われ、製鋼の工程で除去ができず、鉄鋼中の銅規格を満
たすためにはフレッシュな銑鉄で希釈するしか手段がないため、スクラップ中に銅が残るこ
- 25 -
とは厭がられる。電炉向けAプレス(全部利用ののための廃自動車プレス)では銅濃度が全
体の 0.3%以下に納まるように銅含有量の高い部品やハーネスを除去することが必須となっ
ている。
銅回収の点から使用済み自動車の解体を見ると、いかに徹底してハーネスを回収するかと
言う点と、事前に取り外された銅使用量の多い部品を、どの様にして銅素材回収システムに
乗せるかが課題で、これらの回収技術の確立が焦点となる、また、シュレッダー処理された
後のミックスメタルからいかに効率よく銅を選別するかの選別技術がもう一つの焦点である。
図9にこれらの流れと銅のリサイクル上課題となっている工程網掛けして示している。
b.使用済み自動車の銅保有量の推定
2007 年度の解体自動車台数 367 万台1)のデータと自動車1台当たりの平均銅使用量を
18kg 程度(写真3参照)と仮定した時、自動車の解体に伴って排出される銅の量は約 6.6 万
t/年と推定される。
そのうち中古部品、リビルト部品として再利用される分は解体車からは排出されないこと
になるが、ほぼ同量の部品が修理工場等から排出されているものと考えられる。
写真3 普通乗用車 1 台分のワイヤーハーネス
((株)啓愛社提供)
c.自動車解体・破砕工場の概要
自動車の解体工場でのフロンガス、エアバッグ、廃油等の適正処理や部品類の取り外しの
手順の例を図10に示す。
解体工場に持ち込まれた使用済み自動車は、個々の車体の型式に応じて中古部品として販
売可能な部品、再資源化素材となる部品、適正処理のために事前に取り外すべきもの等の情
報が作業指示書に書き込まれる。それに従って、適正処理、部品の回収を行っていく。
全部利用として電炉原料として処理される場合には、
解体の最後に重機を使ってエンジン、
ラジェーター、室内ハーネス等を取り除き、シート等の繊維、プラスチック製品を含んだま
まハードプレスされる。繊維・プラスチックは電炉の中で燃料として利用され、鉄は鉄鋼原
料となる。
ハードプレスされる前に取り除かれた、ワイヤーハーネス、モーター類等の銅含有部品で
1
) 環境省資料(平成 20 年 6 月 30 日発表)
- 26 -
中古部品及びリビルト部品ベースにならなかったものは、国内、海外の非鉄金属回収業者に
売却される。
ワイヤーハーネスはナゲット処理を行えば国内循環できる技術、設備があるが、付着した
油分(グリース等)を除去しないと、被覆材と銅の分離ができないことによって、海外に輸
出され、海外で処理される。
モーター類は家電製品4品目のモーターに比べ種類も形状も様々で、小型なものも多いた
め、
その解体を人手に頼るとコスト的に厳しくなるためこれも海外で分解されることが多い。
使用済み自動車(ELV)の買付
車両の搬入
(入庫チェック)
(作業指示書の作成)
・中古部品として再利用可能な
パーツをチェック
・車両の経歴情報調査
(車体番号、車名、色、エンジン・ミッショ
ンの型式、フロン、エアバッグの有無、購入
先情報等)
重機(ニプラ)による
有価物の選別
(鉄スクラップからの非鉄金属除去)
・エンジン、ラジェーター取外し
→アルミスクラップ
・エンジンルーム、インパネメイン、
室内フロアー等のハーネス抜取り
ボデーガラの
ハードプレス
適正処理①
(タイヤ・ホイール、バッテリーの取り外し)
・ホイール →専門処理業者→アルミ資源
・バッテリー→専門処理業者→鉛製錬
・ドアー&トランクモーター、配線くず
の取り外し(手作業で)
・残燃料抜き取り →社内利用
適正処理②
(廃油、廃液処理)
・フロンガス 回収→専門業者の破壊処理
・オイル類(エンジン、ミッション、デフ用)抜
き取り 再生業者に委託再生→社内利用
・LLC(クーラント)
、ウォッシャー液の抜き
取り →専門業者にて焼却
・エアバック処理
・バッテリー →専門処理業者→鉛製錬
再資源化用部品
取り外し
中古部品取り
(国内、海外(輸出)向け)
・触媒取り外し
・エンジンルーム内、室内の主な
ワイヤーファーネス抜取り
(写真4,5,6参照)
・外装中古部品 →リサイクルパーツ
・機能中古部品 →リサイクルパーツ、リ
ビルと製品のコア
・足回りの中古部品 →リサイクルパーツ
(いずれも指示書で指定)
電炉原料として
使用
シート等のプラスチック製品は
そのまま燃料となる
図10 自動車解体における適正処理及び部品取り外しの手順(全部利用の例)
((株)啓愛社パンフレットより)
写真4 ドアーモーターの取り外し
写真5 ダイナモの取り外し
- 27 -
写真6 ドアハーネスの取り外し
シュレッダー方式の場合は、主要な部品を取り外した後に、ソフトプレスしたものを自社
又は破砕専門業者の手で破砕してその後に選別処理される。その例を図11に示す。
シュレッダーマシンで破砕された自動車ガラのプラスチック類はサイクロンで吸引され同
伴する鉄混じり品を磁選機で除去し、トロンメル→粗選機→精選機で 10mm 以上のプラスチ
ックを選別する。残ったダスト類はシュレッダーダストとして自動車リサイクル法に則り自
動車メーカーに引き取られ適正処分(焼却、埋立処分)されている。
金属分は磁力選別機で鉄を除去し、残ったものが非鉄金属のミックスメタルとなる。更に
ミックスメタルからのアルミ、
銅、
ステンレスの分離を自社内で行っているところもあるが、
多くの場合は手選別で簡単に取れる大きな破片のみを回収し、大部分は専門の選別業者に売
却され、そこで処理されている。この段階からは売却先が国内に留まらず、海外の業者が買
い取って海外の安い人件費で選別する場合も生じる。
廃自動車ガラ
プレシュレッダー
シュレッダー
風力選別機
磁力選別機
吊下磁選機
磁気プーリー
製錬
トロンメル
10mm アンダー
非鉄選別機
150mm オーバー品
再粉砕へ
SUS 選別機
ダスト
粗選機
精選機
サイクロン
手選別
アルミ
150mm オーバー品
再粉砕へ
ダストライントロンメル
鉄
ハーネス
モーター
サイクロン
鉄混じり品
手選別
銅
ミックスメタル
ステンレス
ステンレス
ゴム
ダスト
減容機
減容ダスト
指定引取場所
図11 自動車ボデーの破砕、選別工程
((株)フェニックスメタルの例)
モーター類を事前に取り外さず、そのまま破砕した場合、モーターは鉄スクラップ側につ
いて行き、
手選別によって廃モーターとして回収される。
銅と鉄が複雑にかみ合ってしまい、
益々銅、鉄の分離に手間の掛かる形状になってしまう。ここから手選別されたモーターの例
を写真7に示す。
自動車ガラの破砕処理においては、エンジンを事前に取り外さずにそのまま破砕機に掛け
ることもあり、自動車系の非鉄金属のミックスメタルにはアルミが大量に含まれている。
このミックスメタルからのアルミ回収装置として、重液選別装置が用いられている。この
段階になると個々の破砕業者単位ではミックスメタルの発生量は少ないために、アルミの再
利用ルートを確保している専門の処理業者のもとで行われている。
- 28 -
写真7 鉄スクラップより回収されたモーター類
((株)青南商事)
アルミを除去した後の混合物は“ヘビーミックスメタル”と言われ、銅、ステンレス、ア
ルミ等の混合物であるが、そのままではまだ製錬所に受け入れられない。大きなものは手選
別で回収して、その後は更に自社または専門選別業者の手で、銅リッチミックスメタルに濃
縮して国内の製錬業者に引き取られる品位まで国内で品位の改善をしたり、
海外に輸出され、
海外で細かい破片を手選別して現地での再資源化にまわされたりしている。
この段階での選別装置として、色識別や渦電流検知器やX線による金属密度識別等を使っ
たソーター式選別機がある。
(4)自動車解体における部品の取り外し作業の省力化
a.発電機、モーター等の取り外しと国内循環のための分解作業
自動車には中古部品市場やリビルト部品としての再利用の道もあり、車体解体に先立ち、
手作業により部品の取り外しが行われている。中古部品、リビルト用に活用する場合には、
取付座等も正常に保たれていることが要求されるために慎重な作業が必要となる。一方、素
材としての再資源化する場合には、廻りのものが機能利用の対象でなければ、作業能率が最
も重要なテーマとなる。既に、これらの作業の迅速化、省力化のためのニーズに対しては自
動車解体業者をバックアップする工具等を提供する事業者も多く存在している。
しかし、取り外したモーター等の再資源化の出発点であるモーターを分解して鉄と銅に分
離する作業は国内では行われておらず、折角取り出されたモーターのほとんどが海外に流れ
ている。これらの作業を国内で行い、鉄及び銅を資源として国内で循環させるには、家電系
のものについて述べたように、大型のものに対しては、モーター類を短時間で分解するため
の工具及び装置の開発が必要である。そして、理想的にはモーター類の自動分解ロボットが
できれば、人件費に左右されなくなり、高品位の銅が海外の安い労働力に対抗したコストで
利用できるようになる。また、小型のものに対しては、国内での高性能のミックスメタル選
別工場が実現すれば、小型モーター等を専用破砕機で破砕し、銅工場の選別対象物とし供給
するようなシステムを構築すれば、国内循環が進むようになる。
b.ハーネス類の取り外しと再資源化
ハーネス類は鉄スクラップの品質上の問題から自動車解体では車体から引き抜かれている。
- 29 -
国内には廃電線をナゲット化して被覆材を除去する技術と業者が存在する。
しかし、自動車系ハーネスには潤滑油、グリース等付着による油汚れがあって、そのまま
ナゲット処理した場合、破砕された銅片に被覆材片が粘着して、水比重分離や風力選別で分
離できないため、予め油分の除去が必要と言われ、国内ではほとんど処理されていない。
(5)自動車破砕工場での非鉄金属の選別技術
a.渦電流選別装置(一般)
破砕機で破砕した後に磁力選別機で鉄を回収し、その後に非鉄金属と非金属を分離する手
段として設置される選別機である。破砕して選別する殆どのプラントに設置されている。
原理はベルトコンベヤの末端プーリーで交番磁界を発生させる(プーリーに磁石のN極、
S極を交互に配置することで発生)ことによりベルト上を通過する導電性金属の内部に渦電
流が発生し、渦電流による磁界とプーリーの磁界との間に反発力が発生し、非鉄金属片を遠
くに飛ばすことにより選別する。
その後に大きな破片で価値の高いものは人手を掛けて手選別されていることが多い。破砕
機―磁力選別機―渦電流選別機―手選別工程までが一つのセットになっていて、粒度を揃え
るために途中にトロンメル装置が入っている(図11参照)
。
b.強磁力選別装置によるステンレスメタルの選別
オーステナイト系ステンレス(SUS304、SUS316L 等)は非磁性体であるが、破砕時の打
撃により塑性変形が起こり、高強力磁石に吸着されるように変質する。非鉄金属の選別工程
で 1 万ガウスレベルの高磁力を掛けてのステンレスメタル吸着装置を使って選別している例
もある。
(フェニックスメタル(株)
)
c.重液選別
高比重液を使えば比重 2.7 のアルミと比重 8.9 の銅を浮沈法で分けることができる。
また、
近年欧州車を中心に比重 1.8 のマグネシュウム合金が使われるようになり、自動車のミック
スメタルからアルミを回収するには 2 段式の重液選別が必須になってきている。前段は比重
2.0 程度に調整したマグネタイト水溶液が使われ、マグネシュウム合金を浮かせ、アルミ、
銅、ステンレス等は沈降し分離される。プラスチックが混入していれば、プラスチックも浮
上側に移動する。近年マグネタイトの入手が困難になりつつあり、フェロシリコンを低濃度
で使用する例もあるようだ。
第2段の比重液は比重 3.0 程度に調整したフェロシリコン水溶液が用いられる。この段階
でアルミは浮上して回収され、銅、ステンレスは沈降側に行く。NNY(株)の例を図12に
示す。
- 30 -
図12 2 段式重液選別工程
(NNY(株)の例)
①NNY(株)の例
NNY(株)は約 20 年前重液選別装置を導入して中田屋(株)系の関連会社のミックスメタ
ルを集中して処理している。
同工場の原料の平均的な組成はプラスチック類が約 55%、金属分が約 45%といわれる
(様々な製品に由来するミックスメタルが集められている模様)
。
工程は先ず洗浄工程でプラスチック込みミックスメタルを水洗しプラスチックの除去
を行う。その後、トロンメルでサイズ分けを行い、小粒度(10~30mm)と大粒度(30~
100mm)の2グループに分けて重液選別処理をする。重液選別装置は2段あり、第1段
マグネタイト水溶液(比重 1.6~2.0)が使われ、本来はマグネシウムを除去する設計であ
るが、日本ではマグネシウムはほとんどなく、アルミ缶、プラスチックが浮上してくる。
第2段重液選別機ではフェロシリコン水溶液(比重 2.8~3.0)が使われ、アルミが浮上
し、銅、黄銅、ステンレス等がヘビーミックスメタルとして沈降物となる。
選別されたアルミは約 98~99%純度で国内のアルミ2次合金メーカーに売却されてい
る(年間約 3,000t)
。
沈降物のヘビーミックスメタルの銅含有量は小粒度品で銅純度が約 40~45%、大粒度品
で約 30%の純度でそのまま輸出されている(写真8参照)
。
ヘビーメタルの抜き出し系列に手選別工程があり、ピッキングされた、銅、黄銅、ステ
ンレスは国内市場に売却されている(写真9参照)
。
トロンメルで 10mm 以下に分離されたミックスメタルはプラスチックを除いたミック
スメタルの金属分の約 10%を占め、そのまま国内の処理業者の選別を経て製錬所に売却さ
れている。
- 31 -
写真8 重液選別された銅
写真9 重液選別後手選別された銅
(NNY(株))
(NNY(株))
②(株)青南商事の例
15 年前から重液選別装置を導入している。過去に自社でアルミ溶解炉を持ち、自動車エ
ンジン等のアルミ回収のために重液選別装置を使い始めた。当初、重液選別の第1段をマ
グネタイト水溶液、第2段をフェロシリコン水溶液と使い分け、粒径範囲も2種類に分け
ていたが、現在は第1段をソーター式装置で対応し、重液媒体はフェロシリコンだけにし
た。
回収したアルミを現在は国内外アルミメーカー向けに売却している。重液選別でのアル
ミと銅を含むヘビーミックスメタルの収率の比率が 50:50 位であり、ヘビーミックスメ
タル組成はアルミ 2~3%、銅約 40%、亜鉛が約 30%、ステンレス約10%である。
④ハリタ金属(株)の例
約3年前に重液選別機を導入した。同社は鉄スクラップ回収業からスタートし、シュレ
ッダー業、自動車のエンジン解体、アルミスクラップの溶解再生等を行っており、アルミ
手選別能力の不足を補い、アルミ地金原料の安定確保のため約3年前に重液選別機を導入
した。重液媒体はフェロシリコンで、水溶液濃度を調整して、2種の比重の擬似重液を作
っている。選別装置は1胴式で内部に隔壁があり、2段階の比重選別を1基の装置で行う
方式である。第1段でマグネシウムを浮かせ、第2段でアルミを浮かせて回収し、残った
ヘビーメタルに銅が含まれる設計になっている。
日本車でのマグネシウムの使用は少ないが欧州の車では多く使われ始め、アルミに混入
するとアルミ合金の硬度が増し、成形流動性が悪くなり、成型品の割れ等の問題の原因と
なるため、欧州では自動車系非鉄金属からのアルミ回収には重液選別装置は必須の装置に
なっているという。
同社では、自社内で回収したアルミを溶解し、アルミ二次合金を製造しており、製造し
たアルミ二次合金はアルミダイカストメーカー等に納入している。アルミ二次合金には珪
素の他に、銅を添加する種類もあり、アルミ側への若干の銅の混入が許される。
重液選別から出るヘビーミックスメタルは更にカラーソーターに掛けられ、条件を切り
- 32 -
替えて、黄銅、銅のソーティングによって純度アップをしている。なお、そこで選別した
銅の一部はアルミ地金製造工場で銅成分調整のために使われているという。
d.ソーター式選別
①ハリタ金属(株)の例
重液選別後のヘビーミックスメタルをカラーソーターで黄銅、銅を色判別して圧縮空気
で吹き飛ばしてより分けている。
カラーソーターは手選別の補助装置として位置付けられ、実生産ベースで処理した場合、
カラーソーターで選別される黄銅、銅の純度は約 90%程度である(写真10.11参照)
。
その後手選別でピッキングして、手選別の能率アップに寄与している。手選別は国内製
錬所に供給可能な量、品質を前提に行われるので、ここまで選別してからの海外流出はな
い。
写真10 色選別前のヘビーミックスメタル
写真11 色選別で選別された銅
(ハリタ金属(株))
(ハリタ金属(株))
②(株)青南商事の例
重液選別後のヘビーミックスメタルを対象にカラーソーターに掛けている。
重液選別後のヘビーミックスメタルを強磁界磁選機に掛け鉄、ステンレスを除去し、その
後粒度の篩い分けをし、投入される母材により、感知させる色を切換え、組合せることに
より、銅リッチのミックスメタルを生産している。
処理する粒度が大粒度の場合は濃縮銅の純度が約 70%、
小粒度のもので銅純度 60~65%
程度であり、国内の銅製錬所に売却される。
尚。径の比較的大きな破砕片は、カラーソーターではなく、ハンドピッキングにより選
別される。ピッキングされた銅は伸銅用に売却可能な品質レベルという。
(6)自動車解体に係る銅の分離・選別技術の高度化方策
a.取り外されたハーネス類の処理
自動車ガラをそのまま電炉に投入する全部利用の場合は鉄スクラップの品質維持のために
- 33 -
解体時のハーネス類の取り外しは必須の作業となっている。また、シュレッダー処理で鉄と
非鉄金属を分離する場合でも、銅リサイクル原料が高値で買い取られることから、複雑な場
所の配線を除き、比較的容易に取り外せる場所のハーネス類は破砕機に掛ける前に重機や手
作業によって取り出されている。しかし、折角取り出したハーネス類の多くは、海外に輸出
され、国内での循環に繋がっていない。その理由は、回収したハーネスにグリース等の油脂
分が付着していて、事前に油脂分を除去しないとナゲット処理機で破砕し、銅と被覆材の風
力選別や水比重選別で分離する際に、芯線に被覆材が粘着して分離できなくなるためと言わ
れている。
廃電線から銅を回収するナゲット処理装置は以前からあり、それによって電線被覆を除去
する事業者も存在するが、被覆材を有効に再資源化するためにコストが掛かり、国内での循
環が衰えている。
自動車ハーネス類は太い線も多く含まれることから、もし、脱脂されておれば国内でナゲ
ット処理前に被覆材の仕訳処理をしてもメリットが期待できる。回収したハーネスからのグ
リースの除去工程を解体事業者側またはナゲット処理事業者側に取り入れられれば国内循環
の増加が期待できる。
b.モーター類の分解による銅と鉄の分離
自動車のモーター類は破砕機に掛ける前に部品として取り出しているものと、自動車ガラ
に残したまま破砕機にかけられるものがある。破砕機にかけら場合、破砕後の鉄スクラップ
側に一部破壊された鉄と銅の混じったモーターとして手選別で回収される。完全に破砕され
たコイルは非鉄金属ミックスメタルの側に入っていく。
一方破砕前に部品として回収したモーター類で中古部品やリビルト部品のベースにならな
かったものは、再生資源にまわされるが、国内での循環ルートに乗るためには、部品を分解
して、銅と鉄を分けて取り出す必要がある。
この部分でも国内での解体はコスト的に難しく、海外に輸出され現地で処理されており、
国内にて分離する手段がないと国内に循環しない。
発電機、スターター等比較的大きなものもあるが、ワイパーモーター、パワーウインドウ
モーター等小型のものも多く、家電系のコンプレッサーの様に一つ一つ個別に分解していて
はコスト的に合わない。集めた部品一括して裁断して銅と鉄の破片にして、ミックスメタル
の選別によって銅を回収するプロセスが必要である。
c.ミックスメタルの分離
自動車ガラをシュレッディングプラントで破砕して、鉄スクラップを回収した後に、非鉄
金属ミックスメタルが発生する。ミックスメタルには銅、アルミ、亜鉛、鉛、ステンレス等
が含まれアルミが最も多い。最近は欧州系の車にはマグネシウム合金も使われている。
また、
自動車エンジンはアルミ製で破砕前に取り外すところと、
取り外さないで破砕して、
ミックスメタルの選別工程で回収しているところがある。
ミックスメタルの発生量は破砕する自動車ガラに対し十分の一以下の量であり、シュレッ
- 34 -
ダー業者が個々に回収するのでは効率が悪いため、自社内にその分離選別工場を持っている
ところもあるが、ミックスメタルの状態でリサイクル原料として売却される。
この段階でミックスメタルとして海外に流れることもあるが、自動車系ミックスメタルに
はアルミが多く、回収アルミの国内需要がしっかりしていることから、国内で重液選別機や
ソーター式選別機を導入した専用の選別プラントが稼働している。
この工程は別の新たな一つのリサイクル施設であると考えて良い。重液選別機やソーター
式選別機では、先ず、アルミが回収され国内に循環する。アルミを回収した後に残った混合
物はヘビーミックスメタルと言われ、銅濃度が高くなっているが、まだ、ステンレス、亜鉛、
アルミ等が混在しており、まだ国内の銅製錬所に受け入れられる規格に到達していない。
d.非鉄金属類からアルミを除去したあとのヘビーミックスメタルからの銅の回収
上記のヘビーミックスメタルから大きな破片は手選別で銅を回収して国内循環しているが、
手選別で分けきれないものはやはり海外に輸出されて、海外で更に手選別されている。
この工程は、将来ソーター式選別機の性能向上により、人手をあまり掛けずに自動操業等
で代替可能な分野と考えられるので、海外の安い人件費に対抗できる、高能率で安い選別装
置の開発が望まれる。
- 35 -
3.4 使用済み家電及び使用済み自動車における銅スクラップの分離・選別技術の統
合化検討
(1)銅含有部品及びワイヤーハーネス類の処理
a.ワイヤーハーネスからの銅の回収
家電系、自動車系のいずれの場合も回収される配線くず(ワイヤーハーネス)は国内で処
理できず、海外に輸出されている。
①家電系ハーネスの処理
家電リサイクル施設で回収されたハーネス類は、自社内でナゲット処理までして銅の回
収をしているところも一部にはあるが、多くは非鉄金属リサイクル業者、商社等を経由し
て被覆線のまま輸出されて海外で処理され、現地で使われている。
ハーネス類は国内の銅製錬所や伸銅メーカーで受入られるためにはそれから更に銅と
被覆材を分離し、銅だけにする必要がある。
電線リサイクル協議会によると、3~4 年前まではこれらハーネス類も国内で処理されて
いたが、現在ではコストが合わず、ほとんど国内処理されなくなっているという。現在国
内でナゲット処理されているのは、電線工場、電力、鉄道、通信業から排出される電線が
主だとのことである。
特に家電系ハーネスは、線が短く、細線が多く、しかも被覆材の種類が雑多であるため
にナゲット処理の前に配線の被覆材材質別に選別・整理等する作業が必要となる。近年、
国内で処理しないで海外に輸出する道が開かれ、逆に海外の処理業者が被覆線を活発に買
い集めてしまい国内での設備の稼働率が低下し、更に設備償却のコスト負担が増える等の
ため、国内での電線系リサイクル事業は縮小してきている。
家電系ハーネス類の処理手順は先ず芯線のメッキの有無をチェックし純銅と錫メッキ
銅線に分ける。次いで被覆材別の選別・整理等を行い、その後ナゲット処理機で裁断し、
風力選別又は水比重選別によって銅と被覆材を分離してそれぞれ回収する。電線被覆材の
素材選別は人手による作業が中心で、その人件費コストが大きい。
被覆材がPVC系だけであった時には、被覆材のことは考慮せず銅側の取れる品位によ
って以下のような流れで処理できた。
・線だけのものはナゲット化し、銅を電線、伸銅メーカーに売却
・端子付(真鍮)のものはナゲット化し、真鍮混じりナゲットとして伸銅メーカーに売却
・アルミ、真鍮付のものはナゲット化し、製錬所で再製錬
被覆材の種類が増加し、現状では被覆材にはPVC、PE、ゴム等が使われている。しか
し、それぞれの素材毎に分離して回収すれば被覆材もリサイクル材として使用可能であるが
そのためのコストアップ解消が課題である。
また、PVC被覆材に含まれる鉛安定剤の規制の動きがあり、新しい電線の製造段階では
既に、鉛レスPVC電線に切り替えられた。しかし、回収の段階では今後とも 20~30 年先
まで混在した形で入ってくるため、ナゲット処理によって回収されるPVCの需要がなくな
- 36 -
ってしまう。そのため使用済み製品ハーネスを国内でナゲット化することが益々難しくなっ
てきている。
②自動車系ハーネス
自動車から回収したワイヤーハーネスの場合油(グリース)による汚れが問題で、油脂分
を除去してからナッゲト処理機に掛けないと、被覆材との選別工程での分離が不十分となる
ため事前の脱脂が必要である。そのためほとんど国内でナゲット処理されていない。
太い線もあるので脱脂さえされておれば、コスト的には家電ハーネスより有利と思われる
とのこと。
b.銅含有部品の解体
①コンプレッサー・モーター類(個別解体が可能なもの)から取り出されたコイルの処理
コンプレッサーのシェル切断で取り出されるコイルは、もう少し手を加えれば銅製錬所、
伸銅メーカー等で受け入れられるところまで来ている。供給側で絶縁紙等を除去する工程
を分解装置に併設するか、受入側に培焼炉等の前処理設備を設ければスムーズに受け入れ
られるようになると思われる。
②小型モーター類(個別解体が無理でバルクでの処理が必要なもの)の処理プロセス開発
折角取り出された小型モーターが、ほとんど海外へ銅資源として輸出されている現状で
ある。また、使用済み自動車のシュレッダー処理でも、取り外されずに破砕機に掛けられ
たモーター類が銅と鉄芯が絡み合ったコイルの固まりとして回収され、海外に輸出されて
いる。これらを集めて細かく裁断してやれば、既存のミックスメタルの処理プラントで分
離可能になる。
c.ミックスメタルの分離・選別
①自動車系ミックスメタルとの合併処理
自動車系ミックスメタルはアルミが最も多く、回収アルミの国内需要がしっかりしてい
ることから、国内で重液選別機やソーター式選別機を導入した選別プラントが稼働してい
る。アルミを回収した後に残った混合物はヘビーミックスメタルと言われ、銅濃度が高く
なっているが、まだ国内の銅製錬所に受け入れられる規格に到達していない。ソーター式
選別機はその性能向上により、自動操業等で代替可能な分野と考えられるので、海外の安
い人件費に対抗できる、高能率で安い選別装置の開発が望まれる。
家電系ミックスメタルを自動車系事業者と協同体制をとり、これらのプラントの適当な
工程に合流させるミックスメタルの処理方式を考えることが必要である。
②家電系ミックスメタルの集合処理工場
個々のプラント毎にやっていては適正規模が確保できない。家電系ミックスメタルを集
め、適正規模で非鉄金属ミックスメタルの選別を専門に行うソーター式選別工場を設けれ
ば、競争力のある銅資源の回収が期待できる。
- 37 -
(2)非鉄金属の分離・選別技術の最近の技術開発研究の動向注)
a.非鉄金属の選別のための破砕工程
1)粉砕方法
自動車スクラップや廃電子機器、その他の金属含有スクラップ類は、通常、スイングハ
ンマ・クラッシャ(シュレッダー)によって破砕される。破砕の目的は、以降の選別処理
に都合のよりサイズ分布を作りだすこと、及び、対象物を構成する各種成分間の単体分離
性を向上させることである2)。横型シュレッダーの概念図を図13に示す。
(a)上部フィード式スイングハンマ型シュレッダー、 (b)ダブルロータ式スイングハンマ型シュレッダー、
(c)金属スクラップ用スイングハンマ型シュレッダー(Lindemann)
、
(d)スイングハンマ型シュレッダー(Lindemann)
、
(e) スイングハンマ型シュレッダー(HRT)
、
(f)コンディレータ(Lindemann)
、
1 インパクタ付きロータ、 2 アンビル、 3 排出グレート、 4 非破壊物排出口、 A:フィード、 P:産物
図13 種々の横型シュレッダー3)
廃電子機器の破砕には、強い切断力・せん断力を与えることのできるシュレッダーが用
いられる(図144))。廃電子機器が破砕室に導入されると、まずシュレッダーに設置され
たカッタにより切断され、それらはシュレッダー内壁との間に供される。通常のシュレッ
ダーでは、図中、左右は非対称であり、まずは左側の破砕室で切断が起こり、非切断物は
シュレッダー内壁に押しつぶされて破砕が進行する。排出スクリーンのサイズを調節する
ことによって、リング・シュレッダー産物のサイズを制御することができる4)。
注)
本節の技術開発研究動向調査は 委員長大和田教授の研究グループ(リーダー:大和田秀二(早稲田大学)
、所
千晴(早稲田大学)
、大木達也(
(独)産業総合研究所)
、柴山敦(秋田大学)
、伊藤真由美(北海道大学)
、ドドビバ
ジョルジ(東京大学)諸氏)の協力を得た。
- 38 -
図14 リング型シュレッダーの断面図 4)
電子基板(PWB)から銅箔を回収する目的で、スイングハンマ型シュレッダー(図15
参照)が用いられることがある。Koyanaka ら 5)は、実験的に PWB 小片を同シュレッダーに
供し、基板を構成する銅とプラスチック類の粉砕挙動を、ロータの回転速度とスクリーン
サイズを変えて調査ししている。
図15 インパクトミルの概念図 5)
- 39 -
b.非鉄金属ミックスメタル選別技術
廃棄物からの資源回収においては、各種構成成分の単体分離を達成するための適当な破砕
ののちに、種々の固固分離技術が組み合わされて最適の処理フローが構築される。ここに、
従来鉱物処理で用いられてきた、
あるいは新たに開発された技術が大いに役立つ。
図16に、
廃棄物処理でよく使用される主な分離技術の組み合わせを示した。
図16 廃棄物処理においてよく用いられる主たる選別技術
1)非鉄ミックスメタルの選別
廃棄物中の銅の多くは、通常、破砕・磁選非磁着物・渦電流選別導電産物となり、ここ
でアルミニウム・黄銅・ステンレス等とともに、非鉄ミックスメタルと呼ばれる産物中に
濃縮される。これらをそのまま銅製錬所にて処理することもできるが、より付加価値を高
めるためには、これらミックスメタルから高品位の銅を回収率高く回収することが肝要で
ある。その目的達成のためにはいくつかの方法の適用が可能であり、それらを分類して表
5に示した。
基本的に乾式処理は大粒子の大量処理に、湿式処理は小粒子の精密・少量処理に向いて
いる。また、これらの技術は、多粒子の同時処理を行うバルク処理と、ソーティングに代
表される固体粒子一つずつを識別して分離する個別処理に分類することができ、前者は後
者に比べて大量・粗選別に向いており、粗選・精選・清掃選を組み合わせた選別フローを
組むことにより、高品位・高回収率の分離を可能としている。個別処理では、各固体粒子
が種々のセンサーにより識別され、最終的に高圧空気噴射や機械的操作によって分離する
ものであり、近年、種々のセンサーを組み合わせ、複数の情報を総合して固体粒子を識別
する精度の高いソーターも開発されている。また、ごく最近では、空気中で蛍光 X 線(XRF)
分析を行い、各種(重)元素の含有率を測定して識別を行う XRF ソーターも開発され、
各種金属・合金類の相互分離への利用も検討されている。
また、バルク処理での最近のトピックスは、乾式の流動層選別である。この手法は長年
にわたって検討されてきたが、実用化されたのはごく最近であり、数百µm の媒体層をう
まく制御することにより、ミックスメタルからのアルミニウム回収が実現されている。
- 40 -
基本的に、個別処理はその処理速度にもよるが比較的精密処理が可能であるが、その処
理速度は粒子径の 3 乗に比例するので細粒への適用は困難であり、これらへの対応にはバ
ルク処理が不可欠である。今後の選別技術の高度化においては、各種センターを駆使した
個別処理のみならず、こうしたバルク処理の検討の必要性も高い。特に、有害成分は微粒
子と行動を共にすることが多いので、それらについてはバルク処理の適用が必須である。
表5 非鉄ミックスメタル処理を目的とする選別法の分類
バルク処理
乾式処理
湿式処理
渦電流選別
重選
静電選別
磁性流体選別
流動層選別
比重選別
ソーティング
サイズ検知
個別処理
色彩検知
渦電流検知
X 線透過率検知
蛍光 X 線検知
2)金属を種類別に分けるための既存の選別技術
主な選別機の特徴を以下に示す。
①磁選機:
磁着物と非磁着物とに分ける。磁性のある鉄や一部のステンレスの回収に有効である。
ある種のステンレスは、衝撃を受けることで磁化するため、再破砕処理をした後に再度、
磁選を行うことでステンレスの回収率を上げることができる。
②渦電流選別機:
外部の磁界変化により試料内部に生じる渦電流によって生まれる磁気的反発力により
試料を跳ね飛ばして分ける方法。渦電流を生じる金属と、生じにくい非金属の分離に用い
られる。導電率を密度で割った値(σ/ρ)が大きいほうが渦電流選別機で飛びやすく、非金
属やスクラップからのアルミや銅の回収に有効である。
③重液バス:
比重の重い擬重液による選別:比重 2.2 及び 3.3 程度の擬重液を用いて、
軽比重金属
(Al、
アルミ合金、マグネシウムなど)と重比重金属(Cu、Pb、Zn など)を選別する(p43
参照)。古くから知られている簡便な方法であるが、重液材のロスや湿式法に起因する
水分付着や脱水の問題が生じるため、乾式法への置き換えが進んでいる。
④乾式流動層型比重選別機:
粒径 100-400µm の砂・ジルコニウムシリケイト・ヘマタイトなどを流動媒体として見か
け比重を調節し、アルミなどの軽金属を浮揚させ、銅などの重比重産物を沈下させて分離
させる。処理時間は 20 秒程度であるが、事前に乾燥させ、選別後は媒体と試料を篩いわ
- 41 -
けで分離する必要がある。この装置では媒体流動化のために多量の送気が必要であり、コ
ストがかかる。粒径は 10-50mm 程度が適している。
⑤ソーター:
渦電流検知型、X 線透過型、カラー画像型などがあり、より高精度な判別のための研究
開発が行われている(p46 参照)
。
3)比重選別
空気及び水の流れを利用する比重選別が、特に自動車シュレッダーダストの事前処理に
利用される。上昇する産物中にはプラスチック類が沈降する産物中には金属類が濃縮され
る。
①ジグ選別:
ジグは特に軽い素材間の相互分離に効果的である。水中では分離対象の2種類に素材
のそれぞれの比重から水の比重を引いた値の比で分離精度が表される。したがって、比
重1.1と1.2のものを分ける場合と比重3.0と5.0のものを分けるときの分離精度はほぼ
同様なのである。
ジグ分離は、比重選別でも最も古い方法のうちの一つで、もともと石炭の処理に利用
されている方法であるが、現在でもその高い分離精度、費用対効果そして高い処理量の
ために廃棄物処理に利用される8)。ジグ選別では、固体粒子の初期沈降速度(終末速度
になる前の沈降速度)を利用するので、また粒子層の中で分離が起こるので、その挙動
に粒子径の影響が少なく、広い粒度範囲のものでも比重による選別が可能となる。図
17は、高桑によって開発された空気動ジグの一種TACUBジグである。通常のU字管型の
ダイヤフラム式ジグに比べて、水の脈動ジグの幅全域にわたって均一であり、精度の高
い分離が期待できる。
図17 TACUB ジグの概念図 8)
- 42 -
②重液選別:
重液選別は浮沈分離であり、流体中を固体粒子の運動速度は比重と粒径の両者に影響
されるが、基本的に比重のみの差で分離が可能である。図18は、3産物製造型のドラム
型重液選別機である。重液材としては微粒のフェロシリコンが使用され、懸濁液比重は
2.4と3.1の2種類に調整され、その軽産物にはプラスチックやゴム等の有機物及びMg合金
等が、中産物にはアルミニウム、ガラス、石部が、重産物には高密度の重金属類がそれ
ぞれ濃縮される6)。
図18 3 産物製造式ドラム型重液選別機 1)
。
・ドラム型浮沈分離機と浮遊選別を組み合わせた新型選別機を示した7)(図19)
この装置は、水を媒体とする傾斜したドラム型の浮沈選別機と、起泡剤で条件付けをす
る浮遊選別を組み合わせたものである。浮沈分離では基本的に比重差によって分離が行わ
れるが、この装置ではそこに気泡が導入され、粒子表面の水に対する濡れ性の差によって
も分離されるのが特徴である。
図19 浮沈分離と浮遊選別を組み合わせた選別機
・遠心式重液選別機 LARCODEMS9)(図20)は、石炭処理(選炭)のため開発された装置で
ある。フィードは円筒形装置の中央部から行われ、重液中を旋回しながら、軽粒子は装
置中央部に形成されるエアコーンの表面を通ってフィードと反対の装置中央部から排
出され、重粒子は装置壁面を通って抜き出される。
- 43 -
図20 遠心式重液選別機 LARCODEMS9)
4)渦電流選別装置
ベルトコンベヤの末端プーリーで交番磁界を発生させる(プーリーに磁石のN極、S極
を交互に配置することで発生:図21参照)ことにより試料内部に生じる渦電流によって
生まれる磁気的反発力により試料を跳ね飛ばして分ける方法。
導電率を密度で割った値が大きいほうが渦電流選別機で飛びやすく、表6から分かるよ
うに、ミックスメタルスクラップ及び非金属スクラップからのアルミや銅の回収に有効で
ある。
渦電流
反発力
導電性金属
交番磁界
図21 渦電流非鉄金属選別機の原理
より高精度に選別するため、ドラム型渦電流選別機のドラム内の磁石を小さくして最適
位置に磁石を移動できるタイプの装置(変芯型)が開発され、販売されている。また、8mm
以下の細粒子は気流にのりやすく、また、ジャンプ効果により大粒子よりも手前で上方に
ジャンプし大粒子よりも手前に落下するため、既存のドラム型渦電流選別機では選別が困
難である。この課題を克服するための新型機(IDECS、SDECS、ADECS、湿式型等)が
研究されている。
- 44 -
Metar
Al
Cu
Ag
Zn
Bronze
Sn
Pb
表6 金属の導電率/密度(σ/ρ)
Electric Conductivity
Density
(σ)
(ρ)
0.35
2.7
0.59
8.9
0.63
10.5
0.17
7.1
0.14
8.5
0.09
7.3
0.05
11.3
σ/ρ
13.0
6.7
6.0
2.4
1.7
1.2
0.4
①エリーズ社製渦電流選別機 ECS
アルミ、真鍮、銅といった導電性の高い金属の選別が可能。処理粒径は数 mm~70mm 程
度、形状は板状が好ましい。
②フジテックス社(偏芯型渦電流選別機)
フジテックス社から偏芯型の渦電流選別機が販売されている。従来型はベルトコンベヤ
端にロール型の磁石を設置するため、コンベヤ端のロール直径=磁石径であるが、変芯型
では、ロール直径よりも磁石径が小さく、ロール内の磁石の軸をベルト付近に近づけるこ
とができる。さらに磁石の径を小さく(磁束の勾配を密に)できるので試料を遠くに飛ば
すことが可能。また、磁石の位置の微調整によりロール上で試料を飛ばす位置(打ち上げ
角度)の最適化も可能である。
概要図を図22に示す。銅・真鍮・アルミの高精度選別が可能で、-30mm+5mm のメタ
ル(アルミ、真鍮、銅など)が選別可能である。
図22 偏芯型渦電流選別機
5)ソーター
①メタルソーター(渦電流検知、X線透過タイプ、色選別タイプ)
:
「渦電流検知タイプ」や「渦電流検知+色選別タイプ」
、
「X線透過タイプ」などがあり、
ソーティングで有名なのは、ComoDas(現在は Titech 社が吸収)社と Shteinelt 社、SGM
社、Wendt 社、Wiltscheck 社製などである。いずれも基本原理は同じである。日本では
- 45 -
ComoDas 社製はアーステクニカ社など、Shteinelt 社製はフジテックス社などが取り扱っ
ている。これらはエアノズルから空気を噴射し、対象物を吹き飛ばす。これに対し、パド
ルにより対象物を跳ね上げるタイプの渦電流検知型ソーターがエリーズ社から販売され
ている。パドルタイプはエアジェットで吹くことのできない大粒子の選別も可能である。
②渦電流検知タイプの原理
図23のように金属(Metal)粒子の上部に Transmitter coil、下部に Receiver coil
を配置し、Transmitter coil からの交流電磁界により金属粒子内に誘導される渦電流を
Receiver coil で検知する。金属は異なる電気的、磁気的特性を持っており、導電率は金
属によって異なる(表7及び図24参照)
。たとえば、ステンレススチールの値は銅の値
の 1/40 以下である。
非鉄金属粒子内に生じる渦電流の量はいくつかのファクターの影響を受ける。すなわち、
試料の導電率、透磁率、Transmitter coil の周波数、厚みや面積などである。試料内への
渦電流の侵入深さは、材質と Transmitter coil の周波数によって異なり、一般に、周波
数が小さいほうが侵入深さが大きく、アルミ>銅>スチールとなる。このことを利用して、
判別したい試料の材質と試料厚みに応じて、周波数を適切に設定することで、アルミと銅
の判別などが可能となる。試料の厚みがばらつく場合は、厚みを測定する必要があり、デ
ュアルX線検知センサーやカメラと組み合わせることで、より正確な同定が可能となる。
このようなマルチセンサーシステムも開発されている。
さらに、パルス型渦電流検知(PEMS:pulsed electromagnetic field sensor)も開発さ
れており、ステンレスの高精度検出が可能になった。
図23 EMS の原理
- 46 -
表7 銅の導電率を 100 とした場合の、各金属の導電率比較
Metal
Cupper
σ[%IACS]
100
Aluminium
wrouht
Aluminium
cast
Mgunecsium
Brass(yellow)
60÷30
35÷27
38÷30
27
Zinc
Stainless
Steel
28
2.5
IACS:International Annealed Capper Standard
80
60
40
銅
アルミ(99%)
アルミ合金(6061)
マグネシウム(99%)
アルミ合金(7075)
アルミ合金(2024)
亜鉛
真鍮(Cu-Zn,70-30)
燐青銅(Cu-Sn-P)
鉛
0
Cu-Ni 70-30
20
ステン(316)
導電率比較[%]
100
図24 銅の導電率を 100 とした場合の、各金属の導電率比較
③X線透過タイプの原理
X線透過量は原子量に比例して減少する。これを利用して金属同士の判別が可能となる。
特に、アルミニウムとマグネシウムの合金の判別に利用される。また、片刃状態(たとえ
ばスチールの釘が刺さったアルミ片)の粒子を判別し、とりのぞくこともできる。
さらにデュアルX線検知センサー(DE-XRT:X-Ray dual energy transmission sensor)
が開発され、X線透過量に加え、厚みなどの情報も検知し、総合的に判定を行うことで、
選別精度が向上した(国際特許 WO 02/50521 A2)
。ソフトウェアも開発されている。
CommoDas 社(現在は Titech 社が吸収)社製(日本における販売元:アーステクニカ社)
の製品はこの原理を利用している。
- 47 -
④メタルソーターの種類と特色
[アーステクニカ社]
<商品>
原子量が重いものほど白く表示される(金属と非金属の識別だけでなく、「アルミ」
X600/1200
と「アルミ+ステンネジの片刃」の識別も可能)
(X線透過タイプ)
F600/1200
電磁センサーにより渦電流を検知することで、金属と非金属の識別が可能。また、
(渦電流検知タイプ)
C600/1200
金属も種類によって導電率が異なるため、金属の種類別の識別も可能
カラー情報から得られる色(真鍮など)と渦電流検知結果から、高度に、金属の種
類識別が可能。例:ミックスメタルからのステンレス回収、シュレッダー暗色金属から
(渦電流検知+
CCDカラー画像認識)
の銅、真鍮の選別、シュレッダー真鍮からの銅の選別、シュレッダーアルミからの亜
鉛の選別など。銅品位98%まで高めることも可能
*600シリーズ、1200シリーズはベルト幅60cm、120cmを示す。
<処理量>
層厚∝体積で決まるので、比重によって処理量は異なる。層厚 1cm×ベルト速度
(300cm/s)×ベルト幅(60cm または 1200cm)×みかけ比重×3600(秒→時間)で 1 時間当
たりの処理量が計算できる。
X600 で 4t/h(1200 シリーズはその 2 倍)
、F600 で 7t/h、C600 で 4t/h である(カタロ
グ記載)
。
<投入サイズ>
X シリーズは 6-150mm、F シリーズは 10-120mm、C シリーズは 5-60mm(カタログ)であり、
最小粒径は 5-10mm 程度である。ノズル径は 2mm が限界であり、X シリーズは 0.1mm 四方の
分解能がある。
<想定される処理フロー>
想定される処理フローは以下のとおりであり、アルミ、銅、ステンレスを個々に回収で
きる。回収産物は手選によりさらに品位を高め、販売する。
投入コンベヤ→プレシュレッダー(プレス物の場合の解砕)→シュレッダー(-60~-
150mm 程度)→風力選別(砂・ガラス・ウレタン等の軽量物の除去)→磁選(鉄の回収)
→トロンメル(φ10~80mm)
(網下産物はダスト)→(+10-150mm 程度の産物)→ソーテ
ィング1(Xシリーズで Al 回収)→ソーティング2(C シリーズで Cu・真鍮回収)→破
砕工程等で磁化した弱磁性のステンレス回収
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[エリーズ社]
<商品>
ProSort
産物を選択的にはじくのに、パドルを使用するため、エア噴射型に必要な圧縮
(渦電流検知タイプ)
空気製造設備及びそのコストが不要である。また、はじかれた産物は9フィート先ま
で飛ぶため、まぎれこみを少なくできる。エアジェットで吹き飛ばせない大粒子も複
数のパドルで同時にはじくことで飛ばすことができる。この装置は新型パドルをも
つ装置であり既存のタイプよりもパドルの故障等が少ない。1台のベルトを左側と右
側の2つに分け、金属/非金属の選別と、その金属産物からの特定金属の選別の2
段階の選別を行うことが可能。ミックスメタルからのステンレス回収などが可能。
<パドル幅と投入サイズ>
2inchのパドル幅であり、処理粒径は約10mm~150mm程度
<想定される処理フロー>
投入コンベヤ→プレシュレッダー(プレス物の場合の解砕)→シュレッダー(-60~-
150mm程度)→風力選別(砂・ガラス・ウレタン等の軽量物の除去)→磁選(鉄の回収)
→トロンメル(φ10~80mm)(網下産物はダスト)→(+10-150mm程度の産物)→渦電流
選別機(アルミなどの非鉄金属を回収)→残渣物に取り残しの非鉄金属がある場合は、
ProSort(左)で銅・真鍮・ステンレスなどの非鉄金属を回収)→回収物をProsport(右)
にフィードし、ステンレスのみを検出して回収、残渣は銅・真鍮産物となる
6)新しいソーター技術
金属の種類別選別法の原理を以下に解説する。
①DE-XRT(デュアルX線検知センサー・ソーティング:X-Ray dual energy transmission
sensor)
空港の手荷物検査で使われているのと同じ原理である。これまでのタイプ(シングルX
線検出)では、X線透過型のセンサー出力値が導電率と厚みによって変動するため、試料
厚みが異なると、判別制度が低下するのが問題であった。
デュアル型では、波長の異なる 2 つのX線の透過強度の比をとることで厚みに依存しな
い特性値が得られ、材質の選別精度が向上する。これを利用したソーティング装置がいく
つか販売されている(たとえば CommoDas 社(現在は Titech 社が吸収)製、日本における
販売元:アーステクニカ社)
。試料は 5mm 以上の大きさのものであれば処理可能で、5-20t/h
処理できる。X線管は 60keV と 250keV の2つを利用する。
また、X線透過型のセンサー出力値が導電率と厚みによって変動することを逆に利用し
て、デュアル型で同定された試料の導電率の値を入れてやることで、試料の厚みが算出可
能であり、実際の試料厚みと比較することで、空洞や発砲状などの状態も把握することが
できる。
- 49 -
②渦電流ソーティング:
(EMS 型と PEMS 型がある)
EMS 型では交流磁界下におかれた試料に生じる渦電流を試料下の Receiver コイルで検知
する。材質により渦電流の侵入深さが異なること、印加する交流の周波数によっても侵入
深さが異なることを利用して、Receiver コイルによる渦電流の検知量で材質判断を行う。
試料厚みが変動すると判定が正確にできないことから、カメラや DE-XRT の厚み算出原
理を利用して厚みを補正する必要がある。
PEMS 型は、パルス状の磁界変化を与えるもので、ステンレスの選択的識別が可能である。
ステンレスだけに特徴的に現れる Receiver コイルの出力波形変化を検知する。
渦電流検知でもX線検知型と同様に、検知したシグナルは比重や導電率だけでなく、試
料の大きさや形状の影響を受ける。そのためこれらの影響をできるだけ小さくするために
装置の最適化をしたり、他の方法で測定した粒径や形状情報を入れることで識別精度を上
げるなどの工夫が必要となる。
③LIBS(Laser-induced Breakdown Spectroscopy)ソーティング:
OES(opticla emission spectrograph)と原理が似ている。強力レーザーで揮発した元
素の光学スペクトルを分析するレーザ誘起ブレークダウン分光分析法で、アルミ合金やマ
グネシウム合金を高速で判定できる。
④画像(形状)解析:
cast 合金と wrought 合金はシュレッダー時の砕け方が異なる。cast はもろいため、破
断面が鋭角で、wrought 合金は延性であるため、平滑で丸い形状となる。
カメラ画像で試料の画像解析を行い、cast と wrought を判別するシステムがデルフト大
学により開発された。粒子はベルト上の軌跡や形、サイズなどの情報を元に判別される。
⑤色識別:
カメラを用いた色識別により、銅と真鍮を判別する。表面の変化(ペンキによる着色や
汚れ、風化など)を受けたものは処理できない。
c.今後の研究動向の予測
金属の回収率及び品位を向上させる方法としては、処理フローの見直しと新しい選別装置
の導入がある。以下に選別技術の分類や研究課題をまとめた。
①金属/金属選別に関する現在の研究課題
・微粒子の選別技術
・各種金属の安価な選別技術
・高品位産物を得るための技術:「スチールボルト+アルミ合金」などの片刃を選別除
去する方法など
・金属回収率を増大させるための非金属への紛れ込みの少ない(取り残しの少ない)金
- 50 -
属選別回収技術
②金属/金属の選別技術(大きく分けて3つに分類される)
・磁性や導電率などの電磁気特性を利用するもの:磁選機、渦電流選別機
・比重の差を利用するもの:重液バス、ジグ、乾式流動層選別
・ソーティング:X線センサー、渦電流検知センサー、画像解析
ソーティングでは検出粒子をエアーやパドルで跳ね上げる。そのため処理できる最小
粒径は約 5-10mm であり、微粒子の選別は困難である。
③金属/金属選別のための最近の研究・開発動向
・微粒子選別装置:小粒子の回転力を利用する渦電流選別機がいくつか開発されている。
・ 金属の種類別の高度な選別:ソーティングのための各種の検知技術が開発されており、
X線検知と渦電流検知を組み合わせることで、各種の金属(銅、cast アルミ、wrought
アルミ、マグネシウム、真鍮、ステンレス)の相互選別が可能である。また、放熱特
性や濡れ性の差を利用したソーティング技術も提案されている。
④銅やアルミなどの金属回収率及び品位を向上させるための方法(大まかに2つある)
・既存の装置を上手く組み合わせることで、特定の金属を特定箇所に回収する方法
・新技術を導入して、金属/金属選別を行う方法
⑤金属/金属選別の前工程での処理について
シュレッダー破砕産物の処理は、
「分級」→「金属/非金属選別」→「金属ミックスの種
類別分離」の順で行われることが多い。
・金属/非金属選別を行う際に磁選+渦電流選別や磁選+渦電流検知ソーティングを使っ
た場合はミックスメタル産物(鉄以外の金属)が得られる。この場合、ミックスメタル
からの金属の種類別分離がさらに必要となる。
・金属/非金属選別に磁選+X線検知ソーティングや磁選+重液バスを用いると、軽比重
(原子量:小)の非鉄金属産物と、重比重の金属産物(原子量:大)がそれぞれ得られ
る。この場合、軽比重産物及び重比重産物の更なる選別が必要となる。軽比重産物では
マグネシウム、cast アルミ、wrought アルミの選別と wrought アルミの種類別選別が必
要となる。銅は重比重産物に含まれ、亜鉛や鉛などと相互選別をする必要がある。
このように、金属/金属選別の前工程でどのような処理を行うかによって、金属/金属選
別工程で分けるべき金属の種類や組み合わせが異なるため、全体のフローの最適化が肝要
である。
- 51 -
引用文献
1) Rousseau et.al., (1989). Resources, Conservation and Recycling, 2, pp. 139-159.
2) Schubert, H., (1996). Aufbereitung fester Stoffe. Band II: Sortierprozesse, 4th edn. DVG,
Stuttgart, p. 195 ISBN 3-342-00555-6.
3) Schubert et.al., (2004). Int. J. Miner. Process. 74S, S19–S30.
4) Zhang S., Forssberg, E., (1999). Powder Technology 105, 295–301.
5) Koyanaka et.al., (1997). Powder Technology 90, 135–140.
6) Willson et. al., (1994) Minerals Engineering, Vol. 7, No. 8, pp. 975-984.
7) Dodbiba, G., et al., (2002). Int. J. Miner. Process., 65 14 11–29.
8) Tsunekawa, M. et al., (2005). Int. J. Miner. Process., 68 76 67–74.
9) Pascoe R. D. and Hou, Y. Y., (1999). Mineral Engineering, Vol. 12. No. 4, pp. 423-431.
- 52 -
(3)使用済み家電製品系、使用済み自動車系に共通して適用できる銅スクラップの
分離・選別技術及びシステムについて
a.ミックスメタルから銅選別のための専用工程
自動車のシュレッダー方式のシステムで発生する非鉄金属ミックスメタルは重液選別装
置等を導入してアルミの回収が行われている。しかし、その後に残るヘビーミックスメタル
は銅濃度が濃縮されてはいるが、そのままでは国内の銅製錬所に受け入れる濃度になってい
ない。このヘビーミックスメタルから更に銅と他種金属を分離・選別するためにソーター式
選別機が導入され始めている。
家電系リサイクルプラントでも、対象製品をそれぞれ別々に破砕し、混じっている金属種
が特定のものに限られている場合は、振動テーブル機、風力選別機、渦電流選別機等によっ
て、高濃度の銅お回収ができているが、混合して破砕した場合には、プラスチック、鉄を取
り除いたミックスメタルは、そのまま海外に流れていることが多い。
近年、コンピューター技術の進歩により、破砕された金属片一つずつを識別して分離する
ソーター方式選別機が開発されている。家電系ミックスメタルプラントでの選別に使用して
いるところも一部にあるが、まだ家電リサイクル施設の基本設備にはなっていない。元来こ
の段階の非鉄金属の分離・選別は p17 で述べたように、金属スクラップ処理・卸売業者のも
とで選別して国内循環されることを想定していたが、手選別主体だと、どうしても海外との
競争に負けてしまう。
ミックスメタルの海外流出を止めるには、高性能自動選別機を導入し、人手によらない選
別で、国内銅製錬所に受入可能な品位のものを選別することが必要である。複数のプラント
よりミックスメタルを集め、専用の自動選別工場で処理することが唯一の対抗手段となると
思われる。
b.部品解体技術
①小型モーターの破砕工程の導入(使用済み家電、使用済み自動車)
家電製品で使われるモーターは小さなものが多く、コンプレッサーの様に一つ一つ分解
して対応していてはコストが合わない。また自動車でもワイパーモーター、パワーウイン
ドウモーター等小型のものが多く、折角取り外されたのに、海外バイヤーに買い取られて
いるものがある。
モーター類を効率よく解体(専用破砕機による破砕)して、国内の非鉄金属の処理プロ
セスでの選別に繋げる必要がある。手解体工程で取り外されたモーター等の小型部品を集
め、一ヶ所で銅と鉄の破片に破砕して、上記ミックスメタルの選別装置で処理し銅を回収
することが必要である。
②コンプレッサーシェルの切断(使用済み家電)
家電製品のエアコン、冷蔵庫コンプレッサーは油を抜いて、破砕機で破壊している例も
あるが、いきなり破砕するにはシェルが頑丈で、大きすぎ、エネルギー負荷がかかりすぎ
る。
多くのプラントではシェルの切断を行っているが、大きさ、形状の異なるコンプレッサ
- 53 -
ーの切断装置への取付や切断位置の判断が自動的にできるようになれば、完全自動化(ロ
ボット化)ないし半自動化が実現し、解体作業員費用が削減され、或いは完全自動化でな
くても作業員1人当たりの処理個数を上げることによりコンプレッサー解体のコストダ
ウウン可能になる。
③モーター固定子からのコイル分離(使用済み家電コンプレッサー)
切断されたコンプレッサーやモーターのコイルを切断して銅と鉄に分離する装置は既
に開発されてはいるが、コンプレッサーやモーターの解体の自動化と連動したシステムと
して装置化が必要である。
c.被覆付電線を受け入れられる様な銅精錬所、伸銅メーカー側での設備改良
①伸銅メーカー等の前処理設備の整備
コンプレッサーコイルの例のように、銅の純度は問題ないにもかかわらず、絶縁紙やエ
ナメルが既設のプロセスに投入しようとすると黒煙が出る等環境トラブルで敬遠されてい
る例がある。これらに対処するためには、原料投入前に培焼炉で可燃物を除去してやれば
できるようになる。これらの設備の整備を進めればもっと国内循環できるものが増える。
②外部加熱方式銅製錬技術の整備
現在日本で行われている銅製錬は銅鉱石の製錬で最適化されたシステムで、鉱石のS分
の燃焼熱で炉の温度を維持しているため、大量に回収銅が入ってくると対応できなくなる。
これに対して外部加熱方式の溶解炉を使った製錬方式はエネルギーの外部からの補給
が必要となるが、回収銅を自由に投入できる利点がある。銅の国内循環を進めるために、
回収銅の製錬に主眼を置いたプロセスを実現する必要がある。
その際、ハーネスの被覆材も焼却で対処できれば、ナゲット処理をしなくてもすむ。P
VC被覆やエナメル線による問題も排ガス処理対策の強化でも対処できて、リサイクルシ
ステムの単純化が期待できる。
③銅リサイクル原料の受入検査法の向上により伸銅向け利用の推進
伸銅メーカーでは銅合金をリサイクル原料として使用しているが、受け入れる材料の品
質の振れを問題にしている。そのためリサイクル材発生の履歴で判断している部分が多い。
分析手段が発達し、リサイクル材の受入検査が迅速化できればもっと受け入れる材料の範
囲を広げられる可能性がある。
d.ハーネス類の国内循環促進のための被覆材回収を考慮しないリサイクルシステムの構築
廃電線からの銅の回収には電線のナゲット処理業者等、既に確立されている国内の銅リサ
イクルルートがあったが、使用済み電線の海外流出のため原料が確保できず、国内処理のル
ートが縮小してきている。
国内の処理コストが掛かる大きな要因は、被覆材を再利用可能にするためにナゲット処理
の前準備を人手に頼らざるを得ないことにある。銅製錬所側で前処理として被覆材を培焼炉
等で焼却処理をできるようにすれば、被覆材の再利用を前提にしないシンプルな処理に戻れ
る。それによって国内循環が可能になる。
- 54 -
3.5 銅系非鉄金属スクラップの国内循環向上に向けた技術のあり方の提言
(1)全体のシステムのあり方
家電リサイクル施設、自動車リサイクル施設から出る銅含有部品、配線くず、ミックスメタ
ルは国内に銅製錬所、伸銅メーカー等が存在するにもかかわらず、他素材の分離が不十分なた
めに国内のこれら事業者に受け入れられていない。更に精密な選別を必要としているが、その
ためにはコストが掛かるとして輸出されており、折角回収した銅資源が国内循環していない。
銅系非鉄金属の国内循環を増大させるための課題と対応案を図25にまとめた。
a.複数プラントのミックスメタルを集めて銅を高品位に選別する集合処理プラントの設置
①各家電リサイクル施設からのミックスメタルを集合して処理するプラントの設置
家電リサイクル施設で再商品化された家電4品目から回収される各種素材の量(再商品
化量)は銅で 13,261t/年、非鉄金属・鉄などの混合物で 58,755t/年程度である(環
境省発表)
。それを全国のリサイクル施設の数で平均すると、1施設当たり、銅で 280t/y、
非鉄金属・鉄の混合物で 1,200t/y 程度の量にしかならない。
したがって、ミックスメタルの高度選別装置を各家電リサイクルプラントがそれぞれ単
独で持つことは効率が悪いと言える。複数の施設から出るミックスメタルを集めて処理量
を増やして設備の高効率運転をできる環境を作ることが重要である。
自動車系ミックスメタルの場合はアルミの回収が主目的ではあるが、グループ会社や社
内各工場で発生するミックスメタルを一ヶ所に集めて処理して効率を上げている。家電系
の場合は各社がそれぞれ自社で処理しようとする傾向が強いが、解体、破砕、簡単な選別
の一次処理の段階と、ミックスメタルになったものから更に銅等を精密に分けようとする
段階を切り離して処理システムを考える必要がある。
A,B系列のそれぞれのグループ内の拠点工場にミックスメタルを集中して、高性能な
ソーターを備えた専用処理工場を設けることで国内でも銅の循環が可能になる。
家電系は自動車系に比べると銅系非鉄金属の比率が高いので 2~3 のプラントの集合で
も対応できる可能性がある。ミックスメタルで 1,000~2,000t/y 程度の量で、モーター類
を含めると 10,000t/y 程度の規模での選別技術について検討をしてみる価値があろう。
②使用済み家電、使用済み自動車の小型モーター等を専門に破砕する工程の設置
ミックスメタルの集合処理設備が設置されれば、従来は分解が困難として、部品のま
ま海外に輸出されていた小型モーター類も、専用破砕機等で選別に適した粒度に破砕し、
銅と鉄の破片としてミックスメタルの選別工程を通すことによって銅を回収でき、その
分、銅の国内循環が増加することが期待できる。
③自動車の小型部品の破砕工程の設置
自動車のモーター以外の部品も破砕してミックスメタルとして処理できるようになる。
- 55 -
家 庭 等
使用済み家電
使用済み自動車
家電リサイクルプラント
車体
その他
コンプレッサー
モーター
エアコン熱交換器
配線
自動車解体工場
配線
部品
プレス業者
シュレッダー業者
筐体と
一緒に破砕
破砕機
(c)
切断機
裁断機
ナゲット処理
破砕機
渦電流式選別機
渦電流式選別機
(a)
(f)
設備A
(d)
(e)
重液選別
設備B
ソーター式選別
(色、形状、渦電流検知等)
伸銅品製造業
設備B
銅製錬業
複数プラントの発生物を集合処理するための新規設備の導入
A:電系ミックスメタル選別工場 B: 被覆材付着ハーネスの受入設備設置 自動車系選別設備に合流
(a) (b) (c)
(d)
(e)
家電系
ミックスメタル
破砕機
渦電流式選別機
培焼設備
培焼設備
(f)
自動車系ソーター式選別
(色、形状、渦電流検知等)
ソーター式選別
(色、形状、渦電流検知等)
伸銅品製造
銅製錬業
銅製錬業
:国内循環が停滞
:新規または増強のルート(案)
:海外への輸出
:強化すべき設備
:新規に設置する設備
図25 家電系、自動車家リサイクルプラントからの銅含有部品、ミックスメタルの課題と対応案
- 56 -
複数リサイクル施設から集合処理
(b)
振動選別機
(e)
ナゲット処理
自動車系
ミックスメタル
家電系
ミックスメタル
b.被覆付配線を受入られるような銅製錬所、伸銅メーカー側での設備改良
①伸銅メーカー等の設備に被覆材等付着のままで投入できる前処理設備の整備
コンプレッサーのシェルを切断して取り出したコンプレッサーのコイルも絶縁紙やエ
ナメルが溶解炉に投入時に黒煙発生等の環境トラブルになるとして伸銅メーカー等では
敬遠されている。絶縁紙、エナメル付のものも処理できる選別機あるいは培焼炉等を設置
すれば、これらを高品位が要求される用途にも国内循環可能になる。
②国内循環促進のためにナゲット化を経由しないハーネス類の回収システムの構築
ハーネスに使われている銅は品質も信頼でき、取り時期価格も長期的に見れば国際価格
を基準に取引されるので国内と海外との銅の売却益の格差は、それほど問題ではないと思
われる。しかし、被覆材の同時回収による経済性の向上を狙ってナゲット処理をしている
が、現状はそのためによけいに人件費が掛かりコスト競争力を失っている。銅の回収を最
優先にしたシンプルな処理システムを構築し、上記の培焼炉設備と結び付け、被覆材を培
焼炉で焼却処理できるようになれば、輸出のための運賃及び輸入国の増値税等を加算した
輸出のデメリットと比較して有利な条件でハーネス類の銅を国内循環が可能になる。
③外部加熱方式銅製錬技術設備の整備
現行の製錬方式では回収銅の比率が増加した時にエネルギーバランス上から受入可能
量の制約があるといわれている。外部加熱方式の溶解炉を使った製錬方式ではその懸念か
ら開放される。将来回収量が増加したときに備え、安定して原料を入手できる仕組みを検
討し、回収銅の製錬に主眼を置いた新しい製錬設備の整備が必要である。
経済的に成り立てばとの前提はあるが、60~70%の銅品位の回収銅が 20 万トン程度の
量がまとまって供給可能になれば、新たに溶解炉を建設し、そこで銅を溶かして、電解で
精製する方式のプロセスの銅製錬所建設の議論が可能になるといわれている。
④自動車系ミックスメタル選別施設への家電系ミックスメタルの合流処理
家電系のミックスメタルを既に稼働している自動車系のミックスメタル選別設備に合
流させて一緒に銅の濃縮を行うことで、銅の回収率を上げることができる。
(2)新規技術の開発等
a.高品位銅の回収による伸銅での利用の拡大
エアコン熱交換器やコンプレッサーシェルの切断により抜き出したコイル等では家電リサ
イクル施設内でかなりの高純度な銅が回収されている例があるが、伸銅品等への利用にはあ
と一歩のところで止まっているものがいくつかある。回収する銅の品位上げることにより伸
銅業界で受け入れられる銅系リサイクル原料の範囲を広げていく必要がある。
コンプレッサー等は作業の自動化等省力化をはかって高純度な銅を安いコストで取り出せ
るような装置の改善が望まれる。
- 57 -
b.全国に配置されている家電リサイクル工場でも対応できる小型装置の開発
家電製品のリサイクル施設は運搬コストを最小にすると言う意味で、排出場所に近いと
ころで分散して処理している。全国にある使用済み家電製品の持ち込み、解体、再商品化
処理をしている小規模プラントでも採用できる小型選別機の開発が望まれる。排出地に近
い地でのプラントでも使える少量でも競争力の出る安価な小型設備が重要となる。
c.ソーター式選別装置の高性能化
家電製品系ミックスメタル、自動車系のヘビーミックスメタルから銅を自動選別する装置
としてソーター式選別機が期待される。銅系非鉄金属(銅、黄銅、青銅等)は特有の色をし
ていることから、CCDカメラによる画像解析技術を応用した色彩選別機が注目される。こ
の他にも高周波(渦電流)式金属検知方式、X線による金属密度検知や蛍光X線分析方式等
の金属(種)検知手段があり、それらを組合せて判断したり、同じ装置で対象物により検知
端を切り替えて操作する等様々な技術が開発されている。それらを普及させるには、検知シ
ステムの高度化、高速化による処理能力アップ、検知後の分離機構の改良(3種以上の産物
分離)や装置全体の低価格化のための技術開発が望まれる。
d.エコデザインの拡充
効率的な各種破砕・選別を行うには、対象物に含有される素材が単体分離しやすい状態に
あることが望ましい。すなわち、製品設計時に active disassembly 等の工夫がなされた設計
がなされれば、
従前に比べてはるかに少ないエネルギーで素材ごとの単体分離が可能である。
各種素材の分離回収には、なるべくあり姿のままで行うことが省エネルギー的・環境調和的
であり、ここでもエコデザインの重要性を最後に指摘しておきたい。
e.破砕・選別技術のあり方
① 解体段階:
現状ではこの段階はほとんどの場合手選によって行われているが,これに置き換わる AI
等を活用したエキスパートシステムなどを活用する必要ことが重要である。前節で取り上
げたエコデザインはまさにこれとの連動が前提となる。将来的には各種製品・部品に素材
情報・解体情報等を盛り込んだ IC チップ上が取り付けられ,それをもとに解体ロボット
等が利用されることも予想される。特に,重要な解体情報としては,有害成分・有価成分
の濃縮している部位の特定とその取り出し方などであるが,後者については,製品使用時
には付与されることのない特殊なエネルギーを与えることなどにより,その部位が解体さ
れるなどが理想的である。
② 破砕段階:
破砕・粉砕の目的は,本文中でも触れたが,選別・成分分離の前処理との位置づけと考
えれば,分離対象となる成分の単体分離である。この現象を進行させるには微粉砕が手っ
取り早いが,それには多くのエネルギーが必要であり,省エネルギー・省コスト的なリサ
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イクリングを考える場合には,異相境界面を選択的に破壊する破砕法統の検討が今後の技
術開発項目として必須である。後段の選別(固固分離)においては,この単体分離の善し
悪しにより分離精度が決定するため,破砕段階においては特にこの向上を図る必要がある。
③ 選別段階:
選別には多くの粒子(塊)を一体として行うバルク処理とそれらを一つずつ識別する個
別処理の2とおりがある。バルク処理は比重選別・磁気的選別・電気的選別等々多くの方
法があるが,最近,個別処理であるソーティング技術が IT の進歩とともに急速に進化を遂
げている。CCD カメラによるサイズ検知・色彩検知,電磁誘導を利用する渦電流(導電率)
検知はもとより,素材による赤外線・X 線等の透過・吸収率の違いによる識別,さらには
ラマン分光や蛍光 X 線検知による有機・無機物質構成成分の分析など,これまでは研究室
等での精密分析手法であったものが自動選別に応用されるようになってきた。こうした精
緻な個別処理は今後の選別技術開発の方向の一つであると思われ,それらを取り入れたソ
ーティング技術のますますの発展が期待される。ただ,こうした検知技術の進歩に比べて,
ソーティングにおける分離部分の技術開発は比較的停滞しており,エア噴射に代わるより
省エネルギー的な分離システムや複数(3 以上の)産物を得るための分離システムの開発
等が待たれるところである。
一方,バルク処理の精密化も今後の開発項目の一つであり,そのための要素技術として
は,新規選別技術の開発とともに,各種先端技術の適用による既存選別装置の高度化と,
種々のセンシング技術の適用による選別環境の均一化などが考えられる。後 2 者の例とし
ては,選別場における磁界・電界分布の均一化や比重選別における流体(空気や水)の流
れの制御などがこれにあたる。
現状での選別の基本は,簡易的な大量処理にはバルク処理,精密少量処理には個別処理
の適用が原則であり,それらを組み合わせて一つの選別プロセスが構築されるが,今後は,
分離の精密化と大量処理の両利点を併せ持つような選別の単位操作の開発が,バルク・個
別両処理の両面から進むことを期待したい。
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4.調査研究の今後の課題及び展開
国内で発生する銅系スクラップのうち現在海外に輸出されているものを国内循環させるための技
術システムに関するシーズ技術、技術開発項目、実用化に向けての課題が明らかになった。
この成果を基に技術開発、実用化が進むことが期待できる。その結果として、天然資源使用量の
削減、省エネルギー、温室効果ガスの排出抑制等が確実に実現できる。本調査研究はこのような銅
系スクラップの課題を解決するためのシーズ、
開発の方向を見出すための先導的な調査研究である。
具体的には次のような事項の推進をはかる。
• リサイクル銅のユーザー団体である日本伸銅協会等と協力して使用済み製品から回収さ
れる銅の国内循環に向けた課題の解決を推進する。
• 委員長大和田教授の研究グループと共に国内循環に必要な技術開発を推進していく。
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-無断転載禁止-
システム技術開発調査研究
20-R-6
銅系非鉄金属スクラップの
高度分離・選別技術に関する調査研究
報告書
(要旨)
平成21年3月
作
成
財団法人機械システム振興協会
東京都港区三田一丁目4番28号
TEL
委託先名
03-3454-1311
財団法人クリーン・ジャパン・センター
東京都港区赤坂一丁目9番20号
(第 16 興和ビル北館 6 階)
TEL
URL
03-6229-1031
http://www.cjc.or.jp