基礎光学 PDF版 - メレスグリオ

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1
基礎光学
基
礎
光
学
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
基礎光学
W 1.2
近軸公式
W 1.3
レンズ系の結像特性
W 1.6
レンズ結合公式
W 1.8
性能ファクター
W 1.11
レンズの形状
W 1.17
レンズの組み合わせ
W 1.18
回折効果
W 1.20
レンズの選択
W 1.23
スポットサイズ
W 1.26
収差バランス
W 1.27
用語の解説
W 1.29
近軸のレンズ公式
W 1.32
主点の位置
W 1.36
W1.1
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光
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の
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様
材
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特
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特
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基
礎
光
学
基礎光学
Fundamental Optics
本カタログに記載される数千点を越える光学部品から用途に
合った適当なものを選び出すのは、容易なことではないように思
えますが、多くの場合少し計算することによって、光学部品の選
択範囲を大幅に絞り込むことができます。
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ム
光
学
倍率や物/像距離等の基本的な
システムパラメータを決める
実質的には全ての光学技術的問題の解決プロセスは、2つの主
だったステップに分けられます。
第 1 のステップで、近軸計算により倍率、焦点距離、有効径
(直径)および物像位置を決定します。近軸計算については、この
近軸公式と既知のパラメータを
用いて残りの必要な値を決める
章の最初の節で説明します。
次のステップでは、このような近軸の値を基に実際の光学部
品を選択し、収差の影響を中心とする実際の光学性能を評価しま
す。光学システムの性能を厳密に評価するには、単純な場合を除
近軸値に基づいてレンズを選ぶ
いて、一般的にコンピューターによる光線追跡が必要になります
が、特に、ある決まった部品形状の群のみからレンズを選択する
場合には、簡単な一般法則的なことが存在します。
光
学
の
仕
様
実際上、性能評価の段階で、部品のサイズやコストや製品が手
に入るかどうか等の設計上の制約条件とのマッチングが困難な
選んだレンズが
システムの基本的な制約
条件を満たすかどうかを
調べる
場合がありますが、そのときはシステムのパラメータの変更も必
要になり得ます。
本章で用いられる用語に馴染みのない読者のために、本章の
後部に用語の解説と近軸公式をまとめています。
本章での議論は、一様な光が入射するシステムについてのみ
当てはまることを最後に注意しておきます。ガウシアンビーム用
システムの性能特性を見積もる
の光学システムについては、次の章で説明します。
材
料
の
特
性
通常よく使うアプリケーション用のカタログレンズを選択する
ためには、本章記載の情報で十分です。しかし、それ以上の
光学技術上のサポートが必要な場合でも、CVIメレスグリオ
はできる限りお手伝いいたします。
性能特性が
元 の 設 計目 標を
満たすかどうかを
調べる
CVIメレスグリオには、お客様のお役に立てるようワールド
ワイドの拠点に知識と経験共に豊かなスタッフが常駐してお
ります。CVIメレスグリオの製品について不明な点がございま
したら、お気軽にCVIメレスグリオまでお問い合わせください。
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近軸公式
Paraxial Formulas
近軸公式を矛盾無く適用するには、例えば次のように符号を取り決めておく必要があります。
レンズについて:
(図1-1参照)
ミラーについて:
f < 0:凸面鏡(発散光)のとき
f > 0:凹面鏡(収束光)のとき
s > 0:物体が H の左にあるとき
s < 0:物体が H の右にあるとき
s" < 0:像が第 2 主点 H" の右にあるとき
s" > 0:像が H" の左にあるとき
m > 0:倒立像のとき
m < 0:正立像のとき
s < 0:物体が H の右にあるとき
s" > 0:像が第 2 主点H" の右にあるとき
s" < 0:像が H" の左にあるとき
m > 0:倒立像のとき
m < 0:正立像のとき
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光
学
薄肉レンズ近似を用いる場合は、主点の代わりにレンズの右か左と言い換えられます。
前側焦点
光
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の
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様
後側焦点
h
物体
φ
H H"
θ
F"
F
像
h"
f
f
s
s"
主点
材
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特
性
前側および後側焦点に対する物体および像の位置関係に注意。
φ= レンズ径
m = s"/s = h"/ h=倍率もしくは共役比 s"または
sが無限遠の時、m が無限大または無限小という。
θ= Arc sin(φ/ 2s )
s = 物体距離、
(実物体であれ虚物体であれ)物体が主点
Hの左にあれば正値。
s"= 像距離、
(実像虚像の区別無く)主点H" の右にあれば
正値。
(s と s" と一緒にして共役距離、物面と像面を
まとめて共役面と呼ぶ。)
h = 物体高
f = 有効焦点距離( EFL )、図のように正値を取ることも、
h"= 像高
また負値を取ることもある。空気中のようにレンズの
左右の媒質が同じである場合には、f は距離 FH と
H" F"の両方を表す。
図1.1
符号の規約
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光
学
通常、光学の問題を解決するのに先ず最初に行なうのは、倍
率や物像距離等の制約条件に基づいて、光学系の焦点距離を決
物体
めることです。焦点距離と物体位置と像位置との関係は次式で
F2 像
与えられます。
F1
1
1
1
= +
f
s
s"
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光
学
200
この公式には、図 1.1を参照し、P.1.3の符号の規約を適用し
てください。
図 1.2
66.7
f= 50 mm、s= 200 mm、s" =66.7 mm
倍率とは、像のサイズと物体のサイズの比のことで、次式で与
えられます。
例 2 : 焦点の内側に物体を置く場合
s" h"
m=
=
s
h
例1と同じ物体が、同じレンズの主点から30 mm左の位置
に置かれた場合の、像位置と像倍率を求める。
(図 1.3 参照)
この式を用いて、最初の式を次のように変形できます。
f=m
1
1
1
=
−
s"
50
30
(s+s")
2
(m+1)
s" =−75 mm
ここで、
(s+s")は物-像距離にほぼ等しい値です。
m=
sm
f=
m+1
光
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の
仕
様
正立)
(高さ 2.5 mmの虚像で、
s+s"
f=
−75
s"
=
= −2.5
s
30
1
m+2+ m
この場合、レンズは拡大鏡になっており、像はレンズを通
してのみ観察できます。
s(m+1)=s+s"
厚みのある実際のレンズの場合、像距離や物体距離や焦点距
離等は全てレンズの主点からの距離であり、レンズの中心からの
距離ではないことに、注意してください。
「トビ」になっている
レンズの主点間距離を無視するとs+s″は物像距離になります。
薄肉レンズ近似と呼ばれるこの近似法を用いれば、計算が素早く
F1
できますので、簡単な光学系を扱うのに有効です。
物体
F2
像
材
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の
特
性
例 1 : 焦点の外側に物体を置く場合
図 1.3
01 LDX 103(f=50 mm)の左側(前側)主点から200 mm
左側の光軸上に高さ1 mmの物体を置く場合の像位置と像倍
率を求める。
(図 1.2参照)
例 3 : 焦点位置に物体を置く場合
01 LDK 019(f=−50 mm)の第 1 主点から50 mm左側の
光軸上に高さ1 mmの物体を置く場合の、像位置と像倍率を
求める。
(図 1.4 参照)
1
1
1
=
−
s"
f
s
1
1
1
=
−
s"
−50
50
1
1
1
=
−
s"
50
200
s" =−25 mm
s" =66.7 mm
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の
特
性
f=50 mm、s=30 mm、s" =−75 mm
m=
s"
66.7
=
= 0.33
s
200
m=
正立)
(高さ 0.5 mmの虚像で、
倒立)
(高さ 0.33 mmの実像で、
W1.4
−25
s"
=
= −0.5
s
30
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光
学
物体
φ
2
像
F2
f
θ
F1
主面
図 1.4
f= −50 mm、s= 50 mm、s"= −25 mm
図 1.5
F 値と開口数
簡単な作図法を用いて、近軸近似での像位置と倍率を求める
どのような光線についても、その光線の共役距離とその光線
こともできます。この作図法は、光学系についての以下の 2 つの
が光学系の主面と交わる高さ、従って直径が判れば、その光線の
単純な特性を用いています。第 1 に、光軸に平行に入射する光線
光線 F 値を定義することも可能です。
は、全て焦点位置で光軸を交差すること。第 2 に、光学系の第 1
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光
学
主点に入射する光線は、入射光線と平行に第2主点から出射する
こと(つまり、光軸に対する入射角と出射角とは等しいこと)
。
今までの例の図 1.2 から図 1.4 に、この作図法を適用していま
す。薄肉近似では、上記の第 2 の特性は、
「レンズの中心を通る
光線は屈折されずに直進する」と言い換えることができます。
F 値(f / #)と開口数(N.A.)
この章で与えた符号の規約は、普遍的なものではありません
ので、光学のテキストによっては、近軸公式の表現が異なる場
合があります。しかしながら、公式と符号規約が正しく決め
られたセットを使う限り、
どれも同じ正しい結果が得られます。
光
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の
仕
様
レンズの径を決めるのに用いる近軸計算式は、F 値( f/# )また
はその逆数の口径比、および開口数( N.A. )の概念に基づいてい
ます。F 値は、レンズの焦点距離と有効径の比です。
F 値=
f
φ
F 値を視覚化するために、正の焦点距離のレンズに一様な平行
光を入射させるとしましょう。F 値は、レンズを出て 1 点で集光
する光錐の頂角を規定します。このことは、モノクロメーターや
高出力の投影光学系等に光を集光させる時のように、光学系の
集光能力が重要になる場合には、大事な概念になります。
この光錐の頂角を規定するのに、開口数( N.A. )という言葉
材
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の
特
性
もよく使われます。開口数とは、周縁光線が光軸となす角度の
正弦( sin )です。図 1.5と簡単な三角関数を用いて、開口数は次
のように与えられます。
N.A. = sinθ=
φ
2f
または
N.A. =
1
2( F 値)
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学
レンズ系の結像特性
Imaging Properties of Lens Systems
受光部 N.A. 固定の場合
光学的不変量
開口数 N.A. の重要性を理解するのに、それが倍率とどう関係
ターの入射スリットに光を導光する、2つの卑近な例を考えま
するかを観ましょう。図 1.6 を参照して、
N.A.(物体側)= sinθ=
ガ
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光
学
N.A.(像側)
"
= sinθ" =
しょう。この2つの例は、互いにかなり異なっているように見受
φ
けられますが、どちらも受光部の N.A. に制約があります。ファ
2s
イバーもモノクロメターも N.A. が固定され、ある決まった光錐
φ
の外の光は取り込めません。モノクロメターの場合、この制約を
2s"
F 値で表現するのが慣わしで、その上、入射瞳(像)サイズも固
定されています。
これを書き直して、
φ= 2s sinθ、および
例として、直径 1 mmのフィラメントの白熱電球をコア径 100
φ= 2s" sinθ"
μm開口数 0.25 の光ファイバーに導光する場合を考えましょ
う。光源からファイバーまでの距離を110 mmと設定しましょ
これより、
う。物像サイズから倍率は0.1×になります。近軸レンズ公式
s"
sinθ
N.A.
=
=
s
sinθ"
N.A."
光
学
の
仕
様
簡単な光学系の応用として、光ファイバーまたはモノクロメ
f=m
2
s"
は単に系の倍率ですから、
次式を得ます。
s
N.A.
m=
N.A."
を用いて得られる焦点距離の値は 9.1 mmとなります。
共役距離 s 、s" を決めるには、次式を用います。
つまり、系の倍率は、系の物体側のN.A.と像側のN.A.との比
これから、
s =100 mm、s" =10 mmが得られます。
s =( m+1)= s+s"
に等しくなります。これは個々の光学系の特殊性に無関係に一
次に、
関係式N.A.=φ/2 s または N.A."=φ/2s" を用いて、
レンズの最適化された有効径 φ を計算します。
般的に成立する非常に有用な表式です。
では、レンズの径を選ぶのに、この関係式をどのように適用
像のN.A." を0.25、像距離( s")
を10 mmとすると、
φが次の
ように決まります。
するのでしょうか?レンズや光学系を用いて光源の像を結像さ
せる場合、レンズの径(φ)を大きく取ればそれだけ集光力が増
して像の明るさも増大するものと自然に思い込んでしまいます
0.25 =
が、倍率とN.A. との関係式のために、集光力に上限が存在しま
す。ある場合では、ある値のN.A. で最大の像輝度に達し、N.A.
材
料
の
特
性
( s+s")
( m+1)
φ
20
φ = 5 mm
をそれ以上大きくしても集光能力はそれ以上増加しません。
上の例では、必要な単レンズの焦点距離は9.1 mm、有効径
さて、光線N.A. はφ /2s で与えられますので、焦点距離と倍
は5 mm となります。これ以上大きな径のレンズを用いても、
率が決まると、N.A. の値がφの値を規定することになります。
ファイバーのN.A.の制約で、入射光量の増加は見込めません。
従って、取り扱う系の物体側または像側のN.A.に制限条件があ
このアプリケーションに適したカタログ単レンズとしては、平
る場合、レンズをこの制約値以上に大きくしても、単にサイズ
凸レンズのLPX-5.0-5.2-Cか、両凸レンズのLDX-6.0-7.7-Cと
とコストが増すだけで、スループットや像輝度等の特性が更に
LDX-5.0-9.9-Cが適当でしょう。
良くなるわけではありません。上記の倍率とN.A. との関係式
上の例では、極めて簡単な計算により、候補レンズを三つに
は、光学的不変量とも呼ばれています。
絞り込むことができました。第 2 章「ガウシアンビーム光学」で、
計算例
コ
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の
特
性
特性条件に基づいてレンズを最終的に決める方法が示されてい
この倍率とN.A. との関係式の用法を理解するために、実際
ます。
のレンズの径を決める例をみます。図 1.7 を参照してください。
W1.6
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開口数
s"
s
φ
2
θ"
θ
φ
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光
学
像側
物体側
図 1.6
開口数と倍率
倍率 = h" = 0.1 = 0.1X
h
1.0
光学系
f = 9.1 mm
フィラメント
h = 1 mm
N.A. =
φ
= 0.025
2s
N.A." =
φ
= 0.25
2s"
光
学
の
仕
様
φ = 5 mm
ファイバーコア
h" = 0.1 mm
s = 100 mm
s" = 10 mm
s+s" = 110 mm
図 1.7
白熱電灯からの光束を光ファイバーに集光するための光学系の配置図
材
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の
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光
学
レンズの結合公式
Lens Combination Formulas
組み合わせ系の第 2 主点位置
近軸近似でのレンズの結合公式
近軸計算の議論を完結するためには、組み合わせレンズにつ
ガ
ウ
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ン
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ム
光
学
大抵の組み合わせレンズ系では薄肉レンズ近似は不適当で
いての取り扱い方も示しておく必要があります。と言うのも、
すから、第 2 主点位置を正確に求めることが、もう 1 枚のレンズ
特性の満足できる光学系を実際に構成するのに数枚のレンズを
を加えるときの間隔 d を正確に割り出すために必要になります。
要することが、ごく普通に起こるからです。
系の最後のレンズ自体の第 2 主点位置から系全体の第 2 主点位
置までの距離 z は、次式を満たします。
組み合わせレンズに対する一つのアプローチとして、1 枚の
z = s 2" − f
レンズの像がその次のレンズの物体として、1 枚ごとのレンズ
の像位置を順番に計算していく方法があります。この方法で正確
組み合わせレンズの例
な結果を得られますが、不必要に面倒な計算を強いられます。
組み合わせレンズまたはレンズ系によっては、主点がレンズ
これよりもっと簡単なアプローチとして、まずレンズ系全体
系から遠く離れることもあり得ます。このようなレンズ系同士
の焦点距離と主点位置を計算して、これに対して近軸近似を適
を組み合わせて、負の d 値を作り出すことも可能です。2 つの曲
用する方法があります。この方法にも、前節の光学的不変量の
率のきついメニスカスレンズの頂角同士を向かい合わせて接触
議論が適用できます。
させたレンズ系が、負のd値の一番簡単な例になります。
有効焦点距離(EFL)
任意の2つのレンズを組み合わせた系の焦点距離と主点位置
光
学
の
仕
様
の計算法を、以下に示します。3 枚以上のレンズの系についても
計算は簡単で、まず最初の 2 枚のレンズの系の値を計算し、次
にこの組み合わせレンズと 3 枚目のレンズとの合成系について
計算します。この手続きを最後のレンズまで続けていけば、全
系の焦点距離と主点位置が求められます。
組み合わせ系の焦点距離の表式は、レンズ間隔の大小や、f 1 と
f
f 2 の正負に拘わりなく、次式で与えられます。
f=
f1 f2
f 1 +f 2 − d
f1 = 1 枚目のレンズの焦点距離(EFL)
f2 = 2 枚目のレンズの焦点距離(EFL)
この式を変型した以下の式の方が、
分り易いかもしれません。
材
料
の
特
性
d = 1 枚目のレンズの第 2 主点(H1")と2 枚目のレンズの
第 1 主点( H 2 )の間の距離( H 1" が H 2の左にあれば
正、逆なら負)。
1
1
d
1
= + −
f
f1 f2
f1 f2
s 2 = 2 枚目のレンズの第 2 主点から結合系の焦点(つまり
左側無限遠の物体の最終結像点)までの距離。焦点
が 2 枚目のレンズの第2主点の右にあれば正値。
この式は、間隔 d を変えずにレンズ 1 とレンズ 2 を入れ
換えても、結果は不変です。しかし、次に記す 2 つの公式で
は、レンズを入れ換えると値が変わります。
z
組み合わせ系の焦点位置
2 枚目のレンズの第 2 主点から全系の焦点までの距離 s 2 " は d
s 2"=
W1.8
= 2 枚目のレンズの第 2 主点(H2")から結合系の第 2 主
点( H ")までの距離。H "がH 2" の右にあるとき正値。
注記:れらの公式は近軸近似で、厚肉と薄肉の区別無く、一様な
の値と f 1 と f 2 の正負に拘わりなく、次式で与えられます。
コ
ー
テ
ィ
ン
グ
の
特
性
= 結合系の焦点距離(EFL)。結合系の後側焦点が結合
系の第 2 主点の右に位置するとき f は正値、その逆の
とき f は負値。
屈折率の媒質中の同軸の組み合わせレンズ系に対して適用できます。
ここでは、光が光学系の左から右へ伝播するものと仮定しています。
f(
2 f 1 −d )
f 1 +f 2 − d
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光
学
個々のレンズ
2 枚目のレンズ
1 枚目のレンズ
d
z(公式から)
組み合わせ系の第 2 主面
ガ
ウ
シ
ア
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ム
光
学
組み合わせ系
3 枚目のレンズ
2 枚目のレンズ
d
サブシステムの第 2 主面
サブシステム
システムに追加された n 枚目のレンズ
n - 1 枚のレンズ
d
z(公式から)
システムの第 2 主面
完全なシステム
主面は逆転していない
システムの第 1 主面
(第 2 主面は z の公式から求められる)
レンズの組み合わせもしくはシステムによっては、主面が逆転する場合がある(単レンズではあり得ない)
光
学
の
仕
様
サブシステムの第 2 主面
サブシステム
主面は内部にあるが、逆転している
システムに追加された n 枚目のレンズ
n - 1 枚のレンズ
d
サブシステムの第 1 主面
図 1.8
組み合わせ系からシステムへの概念
1
2
3 4
d>0
3 4
1
2
材
料
の
特
性
d< 0
図 1.9 主面がレンズの外にくる極端なメニスカスレンズを用いた、負のd値の例。2枚のレンズを互いに接触するまで近づけること
(図は概念図)
により、負の d 値の状態が起こり得る。
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光
学
z
d
f
s2"
f1
z<0
f2
ガ
ウ
シ
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ム
光
学
焦点面
結合系の第 2 主面
結合系の
第 2 主面
図 1.10 2 枚の凸レンズを焦点距離の和 f1+f2 以上の距離 d 隔
てた場合。レンズの対称性は必要ない。fは負値、s2"と z は正値。
f1
光
学
の
仕
様
H2
H1"
材
料
の
特
性
図 1.12 望遠レンズ系:望遠系の最も重要な特性は、焦点距離
が最初の凸レンズの焦点距離よりずっと大きくなり得るので、
凸レンズのみによる像より遥かに大きなサイズの像が得られ
ることだ。系は凸レンズの後に凹レンズを組み合わせたもの。
例えば f 1 を正とし f 2 = − f 1 / 2 とする。このとき d < f 1 / 2 でf
は負値、d = f 1 / 2 で f は無限(ガリレー式望遠鏡またはビーム
エクスパンダー)そしてd > f 1 / 2 で f は正値となる。具体例と
して、カタログ内のレンズ LDX-50.8-130.4-C と LDK-42.052.2-Cを用い、 d = 78.2 mmとすると、s 2 " = 2.0 m、 f =
5.3 mおよびz = −3.3 mとなる。
H2"
tc
n
f2
図 1.11 アクロマティックな組み合わせ:2 枚のレンズ間を空
隙とした組み合わせで、例えレンズの材質が同じであっても、
設計波長で焦点距離の波長に関する微分値がゼロで、設計波長
近辺での焦点距離変化量が小さい、アクロマティックな系を構
成することが出来る。ホイヘンスとラムデンの接眼鏡は、この
原理に基づいている。薄肉レンズ近似のもとでは、次の式が成
立すれば上記の意味でのアクロマティズムが実現できる。
d=
(f1 + f2)
2
レンズが厚肉であっても、大抵の場合は、上の近似が当てはま
る。ここで、f 1 と f 2 の値に制約はないが、d はレンズ間が空隙
になっている必要がある。レンズの形状の制約はないので、他
の収差を補正するような形状を選ぶと良い。
コ
ー
テ
ィ
ン
グ
の
特
性
結合系の焦点
tc
n
d
W1.10
s2"
d
f<0
H H"
s
s"
図 1.13 空気中で頂点同士を互いに付けた 2 枚の同じ平凸レ
ンズの系。コンデンサー用。非球面の平凸レンズでもよい。コ
ンタクトしているので d = 0 、f = f 1 / 2 = f 2 / 2 、s 2 " = f 1 / 2
従って z = 0 となる。つまり、結合系の第 2 主点と 2 枚目のレン
ズの第 2 主点とは同じ位置 H" で、 2 枚目のレンズの頂点から
t c / n の深さにある。ここで、t c はレンズの中心肉厚で、n はレ
ンズの屈折率。同様に、結合系の第 1 主点は 1 枚目のレンズの
第 1 主点に一致。結合系の共役距離は、これらの主点から測っ
た距離のこと。
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基
礎
光
学
性能ファクター
Performance Factors
近軸公式に基づいて単体レンズの焦点距離と直径を決めまし
たが、設計の最終段階では実際のレンズを選択します。選択の過
収差
レンズ系の 1 面ごとにスネルの法則を適用して次々に光線の
程は、一般のエンジニアリングの問題と同様に、ここでも、性能や
軌跡を求める光線追跡の方法により、レンズ系の性能を正確に
コスト、重量、環境ファクター等のバランスを考えて行ないます。
求めることができます。光線追跡計算は、通常コンピューターを
実際の光学系の性能は、いろいろの要素で制限されますが、
算で得られる点や位置から大なり小なりズレますが、この理想
用いて行なわれます。光線追跡で求められる光線群は、近軸計
その内でもレンズの収差と光の回折効果が取り分け重要なファ
クターになります。この 2 つの効果は、比較的簡単に計算で見
積もることができます。
像点からのズレのことをレンズ収差と呼んでいます。
互いに異なる屈折率を有する 2 つの等方的均質媒質の境界面
これら以外でも、レンズの製造公差や部品の軸合わせ精度な
ど、光学性能の制約ファクターが種々ありますが、この章では
採り上げません。しかしながら、要求される光学性能を計算上
で屈折を受けた後の光線の方向は、スネルの法則:n 1 sin θ1 =
n 2 sin θ2 で与えられます。ここでθ1 は入射角、θ2 は屈折角で
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
す。角度は、図 1.14 に示すように、両者とも境界面の法線方向
から測定します。
ぎりぎり満たすような光学システムでは、実際組み付けてみる
と、計算上とは別のファクターの影響で、要求光学性能を満た
さなくなることがよく起こります。従って、光学性能が特に重要
な場合には、計算上の必要性能以上のオーバースペック気味の
レンズを選ぶのが良いでしょう。
光
学
の
仕
様
回折
波
長
回折効果は、光の波動性に起因した光そのものが有する性質
で、全ての光学系に根本的な制約を課します。回折効果は必ず
d
現れますが、収差の大きな光学系では、その効果が隠されてし
媒質 1
まうことがあります。収差が十分に補正されて無収差と見なせ
屈折率 n1
る光学系では、その光学性能は回折効果のみで制約され、回折
θ1
限界と呼ばれます。
回折の計算では、レンズの焦点距離と開口径が判ればよく、
レンズの形とか屈折率等の情報は必要ありません。
媒質 2
屈折率 n2
F 値が大きくなると、回折効果は増大しますが、収差は減少
θ2
材
料
の
特
性
しますので、光学系の設計では、両者の効果のバランスをみな
がら最も光学性能の良くなる F 値を決めることが、しばしば行
図 1.14
なわれます。
誘電体境界面での光の屈折
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コ
ー
テ
ィ
ン
グ
の
特
性
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光
学
光学系の正確に解析する道具の使い勝手が良くなって広く
球面収差
普及するようになってきてはいるのですが、レンズの性能を手
早く概算する簡便法は、まだまだ重宝されています。この簡便
法は、光学系の初期の仕様決定を手早く行なうのに役立つだけ
でなく、次のステップのコンピューターによる最適化計算のた
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
めの一層優れた出発点を決めるのにも有効です。
図 1.15 に、収差のないレンズによる入射平行光の集光の様
子を示します。全ての光線が焦点 F "を通っています。図中の2
番目の図は、単レンズで通常起こる状況を示します。入射光線
の内、レンズへの入射点が光軸から離れた光線ほど、焦点より
一層手前側で光軸を切ります。光軸近傍の入射光線が光軸を切
このような大雑把な指標造りの最初のステップとして、スネ
ルの法則に含まれる正弦関数を、次のようにテーラーの無限級
数展開します。
る点とレンズの周近くを通る光線(周縁光線)が光軸を切る点
との間の距離が、縦の球面収差(L S A )です。これらの光線が近
軸焦点面を切る点の高さのことを、横の球面収差( T S A )とい
います。縦 / 横の球面収差は、
(横収差)=(縦収差)×tan u"
sinθ1=θ1−θ13/3 +θ15/5 −θ17/7 +θ19/9 −・・・
最初の近似は、
全ての正弦関数をその引数で置き換えること、
のように結びついています。
つまり、例えば sin θ1 をθ1 と置くことです。この近似は、上記
の展開式の第 1 項のみを使うことから、第 1 近似や近軸近似等
と呼ばれます。どんな光学系でも、設計の最初のステップでは、
この近軸近似に基づく近軸計算を行ないます。
光
学
の
仕
様
θがゼロに近ければ、つまり大きな F 値では、sin θ=θが良
い近似で成り立ちます。面の曲率がきつくなると(特に周縁光
線について)sin θ=θの近似が悪くなるので、近軸近似の計算
と実際の特性との乖離が大きくなります。この乖離が、収差と
いわれるものです。完全な(無収差の)光学系では、近軸計算通
りの像位置と像倍率で結像しますので、収差は実際の像の近軸
計算とのズレの目安を与えます。
前述のように、実際のレンズ形状を解析し決定するには光線
F"
追跡の方法を用いざるを得ませんが、コンピューターのない時
代に於ては、光線追跡は非常に時間を要するうんざりする仕事
でした。ザイデルは、この問題を簡素化するために、θ1 3 /3! の
無収差のレンズ
項による収差を計算する方法を開発しました。このため、三次
材
料
の
特
性
のレンズ収差はザイデル収差と呼ばれています。
近軸焦点面
収差計算の簡素化のために、ザイデルは光学システムの収差
u"
を幾つかの異なる組みに分類しました。単色光に於ける分類は、
球面収差、非点収差、像面湾曲、コマ収差および歪曲収差です。
F"
多色光では、軸上色収差と倍率色収差が加わります。ザイデル
TSA
は、数多くの光線で正弦関数の全ての展開項について計算する
ことなく、これらの収差を近似計算する方法を与えました。
LSA
収差は、実際には、単体ではなくお互いに絡み合って現れま
すが、収差を分類することによって、解析作業が簡単になり、
縦の球面収差
光学システムの結像特性を上手く記述することができます。実
コ
ー
テ
ィ
ン
グ
の
特
性
横の球面収差
際、強力な光線追跡ソフトが普及している今日でも、球面収差
図 1.15
のザイデルの公式がいまだに広く使われ続けています。
W1.12
平凸レンズの球面収差
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光
学
球面収差は、レンズの形状と向き、そのときの共役比および
材質の屈折率等に依存します。特定の用途での最適のレンズの
形状と向きを選ぶ方法について、この章の後側で述べています。
しかしながら、平凸レンズを無限共役比で使うときの3次の単色
非点収差
軸外にある物体を球面レンズで結像すると、その軸対称性の
破れにより非点収差が生じます。光学系が恰も 2 つの異なる焦
点距離を有するように見えます。
の球面収差は、次のような簡単な表式で見積もることができます。
球面収差によるスポットサイズ =
図 1.16 に示されるように、光軸と物点の両方を含む平面を
0.067 f
f/#3
子午切断面といいます。この面内の光線を子午光線といいます。
この面内にない光線をスキュー光線といいます。主光線とは、
理論的には、レンズの面を非球面つまり曲率が変化する面に
することが、球面収差を無くする一番簡単な方法です。非球面の
形状は、大きな角度で sin θとθとの誤差を補正するように決め
物点から出てレンズ系の開口中心を通る光線のことです。主光
線を含み子午切断面と直交する面を球欠切断面といいます。
られます。実際上は、ほとんどの面精度の良いレンズは、砂擦り
図の中で、物体からの子午光線の方が球欠面内の光線よりも
と研磨により製造されるため、球状か円柱状の表面形状に限られ
レンズの近くで結像しているのが見とれます。子午面内での共
ます。非球面の製造はもっと複雑で、非球面の持つメリットを十
役結像点は、球欠面上では線状の像(焦線)になります。同様に、
分に引き出せるほどの面精度のレンズを造ることは困難です。
球欠面内での共役結像点は、子午面上では線状の像になります。
しかしながら幸運にも、一定の条件のもとでは、2 つまたはそれ
この 2 つの結像点の中間部では楕円または円状のぼけた像にな
以上の球面(または円柱面)の組み合わせ効果で、球面収差を十
ります。非点収差は、この 2 つの結像点間の間隔として定義さ
分に補正することが可能です。
れます。
一般的に、凸の単レンズは球面収差が補正不足で、凹の単レン
非点収差の量は、開口絞りが考えているレンズと異なる位置
ズは補正過多です。低屈折率の凸レンズと高屈折率の凹レンズを
にあるときは、レンズの形状に依存します。
(どの光学系にも開
組み合わせて、屈折力を保持しながら球面収差を補正することが
口絞りがあるものですが、系の一つのレンズの有効径がその系
可能です。この最も簡単な例が、LAOシリーズのような貼り合
わせレンズで、適正に用いると球面収差を極小に抑えることが
の開口絞りとなる場合が多々あります。
)非点収差は、共役比に
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
光
学
の
仕
様
も強く依存します。
できます。
子午的像(焦線)
子午切断面
材
料
の
特
性
球欠的像(焦線)
主光線
球欠切断面
光軸
光学系
物点
図 1.16
近軸焦点面
非点収差は、図中の 2 枚の切断図で表示
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コ
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テ
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グ
の
特
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光
学
コマ収差
正の横方向コマ
軸外光源からの光線が球面レンズ面を通る位置によって像
倍率が異なる現象により、コマ収差が発生します。図 1.17 に
示されるように、レンズの 1 つの同心円を通る光線は 1 つのコ
マ円と云われる円環状の像を結びます。この現象により、軸外
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
の点光源の像がシャープに結像せず、彗星のフレアーのように
ぼやけます。球面収差が十分に補正されて光軸上でシャープに
結像するレンズでも、軸外の物体に対してはコマ収差のため結
像特性が劣化します。図 1.18 を参照して下さい。
焦点面
球面収差の場合と同様に、コマ収差も複数のレンズ面を用い
図 1.18
正の横方向コマ
て補正することができますが、光学系内の適切な位置に開口絞
りを置いて余計な周縁光線をカットすることでもシャープな像
が得られます。
球面状の焦点面
像面湾曲
光学系は、非点収差が無くても、結像面が平面ではなく湾曲
する傾向があります。この効果は像面湾曲と云われます。図
光
学
の
仕
様
1.19 を参照してください。非点収差が存在すると、子午的結像
面と球欠的結像面とがズレるため、2 重の湾曲像面が生じます。
像面湾曲による像面移動量は、視野角の 2 乗あるいは像高の
2 乗に比例しますので、視野角を 1 / 2 に減少すると、像面湾曲に
よる像のぼけ量が元のぼけ量の 1 / 4 になります。
図 1.19
像面湾曲
レンズ上の入射点
1
S
4
1
材
料
の
特
性
2
3
0
2
3
像面Σ上の対応点
1
4
1
1
4
1
2
P、0
3
Σ
コ
ー
テ
ィ
ン
グ
の
特
性
60 °
図 1.17
正の横方向コマを有するレンズによる軸外の点光源の像
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光
学
像面湾曲の向きは、通常、正のレンズでは内向きで、負のレ
光学材料の屈折率は、波長に依存します。この現象は、分散
ンズでは外向きになります。それ故、正のレンズと負のレンズ
と呼ばれ、第 4 章「材料の特性」で述べられています。スネルの
を組み合わせることによって、像面湾曲をある程度補正するこ
法則( P1.11 )に因ると、屈折率が波長に依存するため、波長も
とが出来ます。
しくは色が異なれば屈折角も異なることがいえます。図 1.20
歪曲収差(ディストーション)
示します。波長が短くなると、屈折率が増すために、長い波長
に、多色の平行ビームが正の単レンズに入射するときの様子を
像面は、湾曲しているのみならず歪曲してもいます。軸外の
の色よりもレンズに一層近い位置に集光します。軸上色収差は、
光源の像は、この面の位置に結像し、近軸計算の位置からずれ
レンズから軸上で最短の(短波長側の)集光点と最長の(長波
ています。この歪曲収差はコマ収差とは異なります。コマでは、
長側の)集光点との距離のことです。
軸外の光源からの光線が像面の 1 点に結像しません。歪曲収差
では、1 点に結像しますが、結像点の位置が理想点とずれてい
球面収差の場合と同様に、レンズの正負で色収差の符号が逆
ます。その上、歪曲の度合いは、通常、像高と共に増加します。
転します。前回同様、色収差の大きさがほぼ等しく符号が逆の
この効果により、図 1.20 に見られるように、糸巻き型と樽型の
2 つのレンズをダブレットにすることで、色収差をある程度補
2 つの形状の歪曲収差が現れます。歪曲収差は、像の形状を歪曲
正することが出来ます。この場合、弱い負のレンズ要素で強い
するだけで、光学系の分解能を劣化させるのではありません。
正のレンズ要素と色収差バランスが取れるよう、互いに分散特
歪曲収差は、像の理想像高からのズレ量そのもので表記された
性の異なる硝材を用いる必要があります。
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
り、ズレの % 割合で表記されたりします。
レンズもしくはレンズ系を順方向で使う場合と逆方向で使う
場合とでは、歪曲収差が逆転します。従って、もし写真を取る
収差量の開口絞りと視野角度および像高の依存性
のに使ったカメラレンズでフィルムを投影すると、投影スクリ
ーンの歪曲収差の無い画像が得られます。また、等倍の完全に
収差
開口絞り径
視野角
像高
対称な光学系には、歪曲収差もコマ収差も発生しません。
横球面収差
φ3
―
―
縦球面収差
φ2
―
―
コマ
φ2
θ
非点収差
φ
θ
像面湾曲
φ
θ
ですので、単色光でも現れます。これら以外に、光学系の光源
歪曲
―
θ
y
2
y
2
y
3
y
が複数の波長を含む場合に具現する収差があります。
色
―
―
―
色収差
今まで説明した収差は、全てレンズの形状だけに関わるもの
2
2
3
白色平行光
物体
糸巻き型の
歪曲収差
赤の焦点
樽型の
歪曲収差
軸上色収差
赤の光線
歪曲収差を図示すると、これら 2 つの像タイプになる。
図 1.21
軸上色収差
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料
の
特
性
青の焦点
青の光線
図 1.20
光
学
の
仕
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光
学
倍率の色収差
アプリケーションノート
図 1.22 には、単レンズとそれから離れて開口絞りがあると
きの主光線を描いています。屈折率の波長依存性により、青の
光線が赤よりも強くレンズで屈折されます。このため、色によ
って異なった高さで光線が像面を切ることになります。つまり、
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
アクロマティックダブレットは、球面収差と色収差について
補正されていますので、平行光の集光および点光源からの
光のコリメートの用途では、単波長の光でも単レンズより
優れているのが普通です。レーザー光の集光およびレーザ
ービームエクスパンダーのコリメーティングレンズ等に使
われます。
像倍率が色によって異なります。この倍率の色収差は、開口絞
りの位置に強く依存します。
大抵の光学系では、収差のおおよその大きさを観るのに、3
次の収差項だけで十分ですが、高精度の光学系、あるいは、開
口径もしくは視野領域が大きな光学系では、3 次の収差項だけ
では不十分です。このような場合には、正確な光線追跡による
平凸レンズの場合とは異なり、ダブレットの場合はスポット
サイズの簡単な概算式はありませんが、P1.26の表に記載
のサンプル値を基に、他のカタログアクロマートの集光特
性を推測することができます。
評価が、どうしても必要になります。
倍率色収差
赤の光線
青の光線
光
学
の
仕
様
開口絞り
焦点面
図 1.22 倍率の色収差は、赤光線の像点と青光線の像点との
像高差のこと。
材
料
の
特
性
コ
ー
テ
ィ
ン
グ
の
特
性
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光
学
レンズの形状
Lens Shape
前節で述べられた収差は、レンズの用途、形状および材料
無限共役比でのガラス製の典型的な単レンズでは、凸面を無
(正確には屈折率)に、大きく依存します。ある特定の共役比で
限共役側に向けた q = 1 の平凸形状が、ほぼベストフォームに
球面収差が最小となるようなレンズの表面形状のことを、ベス
なっています。平凸レンズは、両面の曲率が非対称の両凸レン
トフォーム(最適形状)といいます。どのような共役比であれ、ベ
ズに比べて製作コストが廉価なため、よく使われています。そ
ストフォームとなるためには、周縁光線の屈折量がレンズの各面
の上、平凸レンズは、無限共役比で使う場合、全体の横収差が
で同じであることが必要です。この条件によって、sin θ≠θに
ほぼ最小で、軸外でのコマ収差もほぼゼロになることから、重
よる誤差が最小化されます。この条件は、レンズの表面反射ロ
用されています。
スの最小化条件でもあります。また、無限の共役比でも1:1の
等倍の結像(s=s"=2 f)では、同様な解析により、対称な両
共役比でも、ベストフォームでコマ収差もほぼ最小化される点
も、利点の一つです。
凸レンズが最適化形状になることが判ります。この場合、球面
収差が最小になるだけではなく、コマおよび歪曲、倍率色収差
収差のレンズ形状依存性を調べるために、以下に定義される
コディントンの形状ファクター q を導入します。
q =
が完全に消えます。この結果は、材質の屈折率にも波長にも全
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
く依存せず、対称凸レンズや対称な光学系で一般的に成立しま
す。しかし、開口絞りによりレンズ系の対称性が悪くなってい
(r2 + r1)
る場合は、上記の収差は完全には消えません。
(r2 − r1)
図 1.23 に、縦と横の球面収差を形状ファクター q の関数と
一方、大視野角で使う場合には、特に無限共役比での使用では、
して描いています。この例では、焦点距離100 mm、絞り値 f/5 、
ベストフォームは、像面湾曲が極めて大きいため、最適の形状の
ガラスの屈折率1.518722(水銀の緑線546.1 nm でのBK7)で、
単レンズとは云えません。ケースバイケースでレンズの最適形状
無限の共役比で使用すると仮定しています。また、レンズその
を決めますが、光線追跡による厳密な解析が必要になります。
ものが開口絞りになっているとも仮定しています。q=0.7426
に対応した非対称なレンズ形状が、このような使用条件下での、
軸上の結像に関する最適化単レンズ形状になっています。ベス
光
学
の
仕
様
トフォーム形状は、CVI メレスグリオのレーザーライン集光用
単レンズに用いられています。ベストフォーム形状が屈折率に
依存することは、重要な点で、例えば、シリコンのような高い
屈折率の材質の、無限共役比でのベストフォームレンズは、メ
ニスカス形状になります。
5
材
料
の
特
性
4
正確な縦の球面収差(LSA)
収
差
︵
mm
︶
3
正確な横の球面収差
(TSA)
2
1
0
−2
−1.5
−1
−0.5
0
0.5
1
1.5
2
形状ファクター(q)
図 1.23
無限共役比での、形状の関数としてみた単レンズの収差(n=1.5187、f=100 mm、f / 5)
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コ
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テ
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光
学
レンズの組み合わせ
Lens Combinations
組み合わせレンズを用いることにより、光学系を一層よく補
正することが出来ます。ここでも、無限共役比の系と等倍の共
平凸レンズ
役比の系の 2 つについて調べます。
光線 F 値
無限共役比
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
近軸の像面
1.5
1.9
2.5
3.8
7.5
以前の議論で示したように、無限共役比のもとでの単レンズ
のベストフォーム形状は、通常は平凸に近い形状です。図 1.24
に、平凸レンズ( LPX-15.0-10.9-C )に波長546.1 nmの平行
光を入射させる場合を示します。この図は、レンズの大きさも
光線の軌跡も等倍で描かれています。周縁光線(光線 F 値 1.5 )
が光学軸からかなり下側で焦点面と交わることが、図から判り
ます。
LPX-15.0-10.9-C
2 枚レンズを使えば、この状況は改善されます。右の図中の下
側の図は、正の低屈折率(クラウンガラス)レンズと負の高屈折
アクロマート
率(フリントガラス)メニスカスレンズを貼り合わせた精密ア
1.5
1.9
2.5
3.8
7.5
クロマート(LAO-21.0-14.0)を描いたものです。上記の平凸レ
ンズの場合と同じく、この図も等倍で描かれています。球面収
光
学
の
仕
様
差は、図からは読み取れないほど小さくなっています。精密アク
ロマートの球面収差量は、平凸レンズの場合のようなmm単位
ではなく、μmで測る必要があるほど小さくなっています。これ
に加えて、図には示しませんが、ダブレットでは色収差も善く
補正されています。これらのレンズは、アクロマティック(色消
し)ダブレットという名でよく知られていますが、単色の光に
LAO-21.0-14.0
対しても、ダブレットの特性が単レンズよりずっと優れている
ことも忘れないでください。
図 1.24
平凸単レンズと 2 枚構成アクロマートとの比較
右の図から、単レンズの特性が許容できなくなる F 値を読み
取ることができます。f/7.5 の光線は実際上近軸焦点に集光す
るといえますし、f/3.8 の光線でもかなり近いといえます。任意
材
料
の
特
性
の両凸レンズのそれにほぼ等しくなります。第 2 のレンズ系が
の径と焦点距離の平凸レンズに合うように、この図のスケール
最初の両凸レンズに比べて光学特性が格段に優れる理由は、以
を変えて用いることにより、そのレンズの球面収差量のおおよ
下のように考えれば理解できるでしょう。まず、両凸レンズを
その大きさを見ることが出来ます。レンズの厚みの効果は、結
真ん中から縦に切り離すと、2 枚の同じ平凸レンズになります。
果に若干の影響を与える程度です。
この平凸レンズの各々は無限共役比で作用していますが、平凸
レンズの最適配向とは逆に、凸面部が焦点側に向いています。
等倍の共役比
したがって、これらの 2 枚の平凸レンズの向きを反転させるこ
図 1.25 に、等倍の共役比で用いる 3 種類のレンズ系を示しま
す。3 種類とも、同じ表示倍率、同じ F 値の546.1 nmの波長の
とで、つまり図の2番目のレンズ系にすることで、最適配向にな
り、球面収差の補正が格段に向上します。
光束になっています。最初のレンズ系は、1 枚の対称両凸レンズ
コ
ー
テ
ィ
ン
グ
の
特
性
( LDX-21.0-19.2-C )で、これは等倍での使用時にベストフォ
前の例で、小さな F 値で無限共役比で使用する場合には、ア
ームであることを、既に見ました。f/2.7 でこのレンズの球面
クロマートが単レンズより格段に光学特性が良いことを見まし
収差がかなり大きいことが、はっきり見て取れます。f/13.3 以
た。等倍の共役比の場合は、無限共役比でのレンズを 2 枚組み
上の光束でないと、近軸焦点近傍に集光しません。
合わせたものと見なせるので、次のステップでは、単レンズを2
枚ともアクロマートで置き換えて 4 枚構成の系にするのが自然
2 枚の同じ平凸レンズを凸側を向き合わせて接近させて配置
でしょう。図の 3 番目のレンズ系は、2 枚のLAO-40.0-18.0の系
した系では、集光特性が格段に向上します。図では 2 枚のLPX-
です。ここでは、f/2.7 の光線に対してでさえ、球面収差が無視
20.0-20.7-Cを用いています。このレンズ系の焦点距離は、最初
できるほど小さくなっています。
W1.18
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礎
光
学
対称両凸レンズ
光線 F 値
2.7
3.3
4.4
6.7
13.3
近軸の像面
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
LDX-21.0-19.2-C
同一の平凸レンズ
2.7
3.3
4.4
6.7
13.3
光
学
の
仕
様
LPX-20.0-20.7-C
同一のアクロマート
2.7
3.3
4.4
6.7
13.3
材
料
の
特
性
LA0-40.0-18.0
図 1.25
等倍の共役比で用いる 3 種類のレンズ系
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コ
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グ
の
特
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光
学
回折効果
Diffraction Effects
円形開口
全ての光束に共通していえますが、幾何光学的な光の領域の
円形開口に於けるフラウンホーファー回折は、円形レンズの
外にも幾らかの光エネルギーが分布しています。この効果は回
集光特性に原理的な制約を規定します。ここでは式の導出は行
折として知られ、回避できない基本的な物理現象です。
ないませんが、円形レンズの回折による限界スポットサイズは、
次式で与えられます。
回折効果は、光の波動性によって理解できます。ホイヘンス
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
d = 2.44 ・f / #
の法則(図 1.26)に因ると、進行する波面の個々の点は二次的
ここで、d は平面波の照射光による限界スポットサイズで、
な波束の源になっています。これらの発散波束の包絡面が進行
波面を形成します。2 次波束通しの干渉に因って生じるフリン
λは照射光の波長です。限界スポットサイズを規定するのはレン
ジパターンは、観測方向と光波の進行方向とのズレ角が増える
ズのF値であり、レンズの径そのものではないことが判ります。
に従って、急速にその振幅が減衰します。ホイヘンスの法則で
回折効果を上手く説明できますが、その定量的説明には波動論
による詳細な考察が必要になります。
均一に照明された円形開口による回折パターンは、エアリー
ディスクと呼ばれる中央部の明るい領域とその周りの幾重かの
同心円状の薄い円環より成ります。円環同士は強度がゼロの円
回折理論は、伝統的にフレネルタイプとフラウンホーファータ
イプに分類されます。回折物体もしくは開口のごく近傍での光波
で別けられています。この回折パターンの放射照度分布は、次
式で記述されます。
の振る舞いを扱います。光源もしくは微小センサーが回折物体ま
たは開口の直ぐ近くにある時のみ、フレネル回折が問題になりま
1
I x = I o 2J(x)
x
すが、それ以外の、大抵の光学設定では、殆ど問題にされません。
光
学
の
仕
様
2
ここで、
I o =像の最大放射照度。
フラウンホーファー回折は、フレネルとは違って、しばしば重要
∞
n=1
(または物体)からの光を開口から遠視野(ファーフィールド)で
x 2n-2
2n-1
(n−1)
!n!2
n+1
J(x)
= xΣ(−1)
1
な影響を与えます。無限遠の光源つまり平行光で照明された開口
J(x)
= 1 次の第 1 種ベッセル関数
1
計測するときの光の拡散現象は、この回折効果に因るものです。
x=
このように単純化してしまうと、
「フラウンホーファー回折は
πD
sinθ、ここで
無限共役比の光学系でのみ重要になり、有限共役比ではフレネ
=波長
ル回折の公式を適用すべし。
」と考えてしまうかもしれません
が、これは正しくありません。正の焦点距離を有するレンズま
D =開口径、そして
たはレンズ系に平面波を入射すると、その開口絞りのフラウン
ホーファー回折パターンを焦点面に結像します。従って、光学
θ =最大放射度方向からの角度
系の限界性能を決めるのはフラウンホーファー回折であるとい
材
料
の
特
性
この有用な公式は、均一に照射された直径Dの円形開口の遠
えます。もっと一般的に、どのような共役比でも、遠視野の角
度は、結像面での空間的変位に変換されるといえます。
視野の放射照度を与えます。
いくらかの光がこの領
域に回折されます。
アプリケーションノート
結像の用途での空間的分解能は、究極的には回折効果で制
約されます。光学系の最大分解能を計算するには、
どういう
状況であれば空間の 2 点が分解されているといえるかの適
コ
ー
テ
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グ
の
特
性
2 次的微小波源
当な定義付けが必要です。レイリーの判断基準では、異な
る位置の 2 点が分解される限界というのは、一方の点のエ
アリーディスクの中心と他方の点の回折パターンの最初の
暗円環とが重なるときと、定義されます。このときの最小分
解距離 d は、次式で与えられます。
d=
W1.20
0.61
=1.22
N.A.
波面
波面
開口
f/#
図 1.26 ホイヘンスの原理によると、伝播波面の各点は 2 次的
な微小波源になっています。
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光
学
エネルギー分布表
円形開口およびスリット開口による純粋(無収差)フラウン
ホーファー回折パターンの主要な特徴を、下の表にまとめます。
表には、各々の円環またはバンドについての位置、相対強度お
よびパターン内の総エネルギーのパーセントが、記されていま
す。1 つの共通の変数xで、どのパターンの位置をも規定する
と便利です。円形開口の場合、この変数は次のように視野角と
関連しています。
エアリーディスク直径=2.44
図 1.27
x
sinθ =
πD
f /#
円形開口による代表的回折パターンの中央部
スリット開口
ここで、
Dは開口径です。スリット開口の場合には、次式が上式に
代わります。
スリット開口は、数学的に一層簡単で、円柱レンズ等の光学
x
πw
sinθ =
部品に適用されます。均一に照明されたスリット開口による回
折パターンの放射照度分布は、次式で与えられます。
I x = I o sin x
x
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
ここで、w はスリット幅、πは円周率です。D、w およびλは、
同じ単位で表すものとします。mm単位が便利でしょう。
2
視野角の代わりに直線位置で表すには、次式を用います。
ここで、
r = s" tan(θ)
Io=像の最大放射照度
x=
ここで、s" は第 2 共役距離です。この関係式は、回折限界スポ
π w sinθ
ットサイズの表式という別の表式で、よく現れます。円形開口
では、前頁のアプリケーションノートに記したように、次式で
与えられます。
=波長
光
学
の
仕
様
d = 2.44 ・f / #
w =スリット幅
この値は、与えられた F 値のもとでの円形開口の光学系の最
小限界スポット径を表します。
θ =最大放射度方向からのズレ角
円形開口とスリット開口の回折パターン内のエネルギー分布
円形開口
スリット開口
位置
相対強度
リング内エネルギー
位置
相対強度
リング内エネルギー
円環またはバンド
(X)
( IX / I0 )
(%)
(X)
(IX / I0)
(%)
中央最大値
0.0
1.22π
1.64π
2.23π
2.68π
3.24π
3.70π
4.24π
4.71π
5.24π
1.0
0.0
0.0175
0.0
0.0042
0.0
0.0016
0.0
0.0008
0.0
83.8
0.0
1.00π
1.43π
2.00π
2.46π
3.00π
3.47π
4.00π
4.48π
5.00π
1.0
0.0
0.0472
0.0
0.0165
0.0
0.0083
0.0
0.0050
0.0
90.3
第 1 暗点
第 1 明点
第 2 暗点
第 2 明点
第 3 暗点
第 3 明点
第 4 暗点
第 4 明点
第 5 暗点
7.2
2.8
1.5
1.0
4.7
1.7
0.8
0.5
注)位置変数(x)は本文中に定義してあります。
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グ
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光
学
図 1.28 に、円形開口とスリット開口の回折パターンを、同
分布が不均一な場合には、今までの公式と結果が当てはまらな
様に規格化して描いています。図では、開口径 Dとスリット幅
くなります。レーザー光を用いた光学系では、入射瞳での放射
w を等しい値に取っているので、遠視野における x 値とズレ角
照度が不均一な場合が一般的ですので、この点は特に重要です。
との関係式は、どちらも同じ表式になります。
TEM00モードで発振しているレーザーの出力ビームの空間的
ガウシアンビーム
ビームによる集光スポットサイズを決める公式は、P 2.6で論じ
強度分布は、なだらかなガウシアン形状です。このような入射
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
アポダイゼーション、つまり開口中央部からなだらかに減少
して開口端でゼロになる不均一な強度のビームで開口を照射す
ます。加えて、ガウシアンビームによる集光位置は、本節の近
軸計算で得られる集光位置からズレています。
ると、回折パターンの様子が変化します。入射瞳での放射照度
円形開口
(光量)
第 1 の明円環部に更に 7.2 %
2
yc =
エアリーディスク
内に 83.8 %
2J1(x)
x
∞
光
学
の
仕
様
ここで
規 1.0
格 .9
化
回 .8
折 .7
パ .6
タ
ー .5
ン
放 .4
射 .3
照 .2
度
︵ .1
y
︶ 0.0
J1(x)= x
Σ
n+1
(−1)
n=1
x
2n−2
(n−1)
!n!2
2n−1
注意:J1(x)は 1 次の第 1 種ベッセル関数。
x=
スリット開口
D sinθ
= 波長
円形開口
D = 開口径
θ= パターンのピークからの(放射)角
−8 −7 −6 −5 −4 −3 −2 −1
0 1 2 3 4 5 6 7 8
2
像面内の位置(x)
ys =
sin x
、ここで
x=
w sinθ
x
= 波長
材
料
の
特
性
w = スリット幅
中央の明バンド内
に 90.3 %
θ= パターンのピークからのズレ角度
両隣りの明サイドバンド
内に更に 4.7 %
スリット開口
図 1.28 単一スリットによる回折パターンと円形開口による回折パターン
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光
学
レンズの選択
Lens Selection
今まで、レンズまたはレンズ系の性能に影響する最も重要な
従って、光源のサイズによるビームの拡がり効果のため、こ
ファクターについて調べてきました。ここでは、特定の用途に
の例の光源用のレンズとしては、理想的な平行入射光に対する
合った光学部品の、カタログ製品の中からの選択方法について
集光スポットが1 mm程度の集光特性を有するもので十分とい
述べましょう。
うことになりますので、1 枚の平凸レンズで十分です。
選択する際、以下の有用な関係式を考慮して探してください。
焦点距離が増すと発散角が減りますが、一定 F 値とすると、
焦点距離が増すと球面収差量も増えます。従って、平凸レンズ
■ 回折限界のスポットサイズ = 2.44 ・f / #
に関する球面収差によるスポットサイズの公式(P 1.13)の右辺
■ 平凸レンズの球面収差による
を光源サイズ 1 mmに等しいと置くことにより、最適な焦点距
軸上スポットサイズ概略値 =
■ 光学不変量: m =
0.067 f
f/#3
離の値が決められます。
0.067 f
= 1 mm
f/#3
N.A.
N.A."
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
上式で、F 値の任意性を用いて、都合の良い焦点距離fを決め
例 1 : 白熱光源の光のコリメーション(図 1.29)
フィラメントサイズ約 1 mm角のハロゲンランプの光をコリ
メートすること。ビームの拡がり角を抑制しながら、出来るだ
ます。上式から、F 値を小さくすると(つまり集光効率を大きく
すると)
、焦点距離を短くする必要があり、発散角が大きくなっ
てしまいます。
け多くの光量を集めること。
この例では、f/2 の F 値を選ぶと、焦点距離は120 mm程度
これは、集光光量を増すことと解像度を上げること(もしく
はコリメートする場合はビームの平行度を増すこと)とのトレ
ードオフを図る代表的な問題です。集光能を増すには、レンズ
になります。f/2 を得るには、60 mmのレンズ径が必要ですが、
LPX-60.0-62.2-Cが条件をぴったり満たします。ビームの発散
角は、8 mradほどです。
のF値を小さくする必要がありますが、解像力を上げるには、
逆にレンズの F 値を大きくして収差を抑える必要があります。
光
学
の
仕
様
最後に、この例の1 mmスポットサイズではほとんど自明で
すが、考察している光学特性が回折限界より十分悪いことを確
解像力に関する最初の注意点として、どのようなレンズ系で
あれ、ビームの発散角(ラジアン単位)を、光源サイズと焦点距
離の比の値より小さく出来ません。光源の縁からレンズ系の第
認しておく必要があります。
回析限界スポットサイズ
= 2.44 × 0.5 μm × 2= 2.44μm <
< 1 mm
1 主点に入射する光(主光線)は、入射角と同じ角度で第 2 主点
から出射します。これが光源のサイズによるビームの拡がり効
よって、この例では回折効果は全く問題になりません。
果を与えます。ですから、レンズ系の焦点距離を大きく取れば、
材
料
の
特
性
主点からの光源の視野角が小さくなって、ビームの発散角が小
さくなります。
θmin
θmin =
f
図 1.29
光源サイズ
f
白熱光源からの光を平行光にすること
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光
学
論じました。問題の中の光学不変量とその他の制約条件を用い
これは、本質的に等倍結像の場合に当りますので、N.A.=
0.15 あるいはf / 3.3で集光して 8 μmのスポットサイズで結像
するレンズを探すことになります。P 1.18での議論に基づけば、
平凸レンズかアクロマートの同一レンズ 2 枚の前面同士を向き
て、システムの焦点距離を 9.1 mm 、直径= 5 mm 、s = 100
合わせた系が適当でしょう。平凸レンズの焦点距離を決めるた
mm 、s" = 10 mm 、NA" = 0.25 および NA = 0.025(または、
f/2 と f/20 )と決めました。このような仕様を満たす単レンズ
として、平凸レンズ LPX-5.0-5.2-C、または 両凸レンズ LDX6.0-7.7-C か LDX-5.0-9.9-C があります。アクロマートで近い
ものに LAO-10.0-6.0 があります。
めに、球面収差評価公式をここでも使います。
例 2 : 白熱光のファイバーへの導光
P 1.6 ∼ 1.7 で、フィラメント径 1 mmの白熱ランプの光をコ
ア径 100μmで開口数 0.25の光学ファイバーに導光する問題を
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
0.067 f
= 0.008 mm
3.33
上式から、焦点距離 4.3 mm 、最小直径 1.3 mm を得ます。
LPX-4.2-2.3-BAK1が、この条件を満たします。しかしながら、
以前に調べた球面収差の観点から、両凸レンズはまず度外視
します。球面収差の公式を用いて平凸レンズ LPX-5.0-5.2-C の
このレンズは極めて小さくて焦点距離も短いので、取り扱い、
装着および位置合わせが厄介です。もっと焦点距離の長い平凸
集光能力を概算します(無限共役比になっていない点には、取
レンズでは、スポットサイズがコア径を越えてしまうので使え
り敢えず目をつぶります)
。
ませんので、次のステップとして、焦点距離と直径の若干大き
な、LAO-10.0-6.0 のようなアクロマートを検討してみます。
0.067(10)
スポットサイズ =
mm = 84 μm
23
光
学
の
仕
様
P 1.26 に記載の特性データによれば、このレンズは、スポット
サイズ 8 μm以下の条件を満たします。
これは、目指す100μmスポットサイズより少し小さな値で
かなり小さなスポットサイズをここで問題にしているので、
すが、実際には無限共役比ではないので、正確な計算でのスポッ
トサイズは、もう少し大きな値になります。従って、色収差も
レンズ系の回折限界スポットサイズを計算すると、次のように
考慮すると、このレンズは、問題の光学系にはぎりぎりの性能
なります。
といえます。この場合、アクロマートレンズを使う方が良いで
2.44 × 0.5 μm × 3.3 = 4 μm
しょう。正確な光学特性を得るにはコンピューターによる光線
これは、設定問題の要求解像度 8 μmの半分ですので、回折
追跡の手法が必要ですが、必要最小限の情報だけなら、このよ
うな簡易計算で十分に得られます。
効果について考慮しなくてもよいといえます。
例 3 : ファイバー同士の対称的結合(図 1.30)
として、P 8.64 の球ボールレンズ(LMS シリーズ)のペア、ま
このファイバーカップリングの問題への全く別のアプローチ
コア径 8 μ m 、N.A. = 0.15 のファイバーを同形のファイバ
ーに結合すること。波長は 0.5 μ m と仮定する。
たは、P8.66 の屈折率分布型レンズ(LGT シリーズ)を用いる
方法もあります。
材
料
の
特
性
s=f
コ
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グ
の
特
性
図 1.30
ファイバー同士の対称的結合
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s"=f
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光
学
例 4 : 回折限界性能
無限共役比での平凸レンズが回折限界特性となる F 値を求め
アプリケーションノート
る。
(回折効果が収差の効果を上回る時の F 値)
。波長は0.5μm
とする。
回折効果によるスポットサイズと球面収差によるスポット
サイズを等しいと置くと、次式が得られます。
2.44 × 0.5 μm × f / # =
0.067 × f
f/#3
従って、f を mm単位で表すと、
ファイバー端がボールレンズの焦点に来るようにボール
レンズを置きます。ボールレンズからの出射ビームはコリメ
ートされています。2つのボールレンズ同士を軸合わせを
しますと、初めのボールレンズの前側焦点から後側のボール
レンズの後側焦点にビームを移行することができます。
ビームを拡げれば、軸合わせの必要精度を低減できます。
全ての結合光学系に共通して、ボールレンズの場合も負方
向に少しデフォーカスすることにより3次の球面収差の影響
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
を低減できます。
詳しくは、"Lens Coupling in Fiber Optics Devices :
1/4
f/# =(54.9 × f )
結果は焦点距離に依存しますが、これは、回折効果がF値の
みに依るのに対して、収差の影響は焦点距離に比例することか
ら来ています。具体的に計算して、f = 100 m で f / 8.6 、f = 50
Efficiency Limits、"A.Nicia、Applied Optics、Vol.20、
No.18、pp3136-3145 をご参照ください。
ファイバーの径がボールレンズの焦点距離に比べて十分に
小さいので、軸外の収差は無視できます。
mm で f/7.2 、および f=10 mm で f/4.8を得ます。
上の結果の意味するところは、これらの焦点距離のレンズを
用いる場合、
(既述の条件のもとで)上記の F 値以上に絞って使
うと回折限界の特性が得られるということです。しかし、注意
しておきますが、ここでは製造公差や多波長光源の場合に問題
LMS-LSFN
ボールレンズ
LMS-LSFN
コリメート光
ボールレンズ
光
ファイバー
光
ファイバー
光
学
の
仕
様
になる色収差等の影響は考慮に入れておりません。
fb
無コート帯
fb
ボールレンズを用いたファイバーカップリング。
この方法では、面方向の精密な位置調整は必要ありません。
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光
学
スポットサイズ
Spot Size
と仮定しています。収差によるスポットサイズが回折限界のス
特定の状況でのレンズまたはレンズ系の特性は、一般的には
ポットサイズを下回る場合、スポットサイズの右横に“DL ”
光線追跡の手法を用いて評価されるべきです。しかし場合によ
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
光
学
の
仕
様
っては、簡単な指針を用いてレンズを選ぶことが出来ることも
と記入されています。焦点距離が小さいとスポットサイズも小
あります。一部のカタログレンズに関して、その最適使用条件
さくなることに注意してください。これは、レンズが相似的に
を、既に議論しました。標準のカタログ光学部品を用いて構成
大きくなると、それに比例してレンズの収差も増加することを
できる種々の単レンズまたは複合レンズ系によるスポットサイ
意味します。
ズの計算結果を、以下の表にまとめています。
球面収差のために、スポットサイズは F 値に強く依存します。
これらの値は、コンピュータ光線追跡による計算値で、光学
平凸の単レンズでは、球面収差はF値の3乗に逆比例します。両
系が理想的に仕上がっているものと仮定しており、製造公差の
凸レンズでは、F 値依存性がもっと強まります。他方、回折効果
影響は考慮されていません。複数のレンズを使った系では、補
によるスポットサイズは、F 値に比例しています。従って、この
正の自由度は増えますが、軸合わせが難しくなります。レンズ
ようなレンズタイプでは、F 値を一方向に変化させるにつれ、
またはレンズ系を実際に選ぶに際して、個々のCVI メレスグリ
スポットサイズが初めは減少しますが、ある所からまた増加に
オのレンズに関して、その製品リストに明記された公差と仕様
転じます。つまり、収差と回折の効果が合わさって、ある特定
に十分に目を通してください。
の F 値でスポットサイズが最小値を取ります。
表には、種々なレンズの、幾つかの F 値のときのスポットサ
軸外のスポットのサイズに関しては、残念ながら上の結果は
イズが与えられています。表のスポットサイズは、全て軸上の
適用できません。特に、アクロマートとメニスカスの組み合わせ
値で、波長 632.8 nm の均一な平行入射光に関するものです。
レンズ系では、その結像特性は光軸から離れるにつれて急速に
レンズは、スポットサイズが最小になる方向に向けられている
劣化します。
焦点距離=10 mm
スポットサイズ(μm)*
F値
LDX-5.0-9.9-C
LPX-8.0-5.2-C
LAO-10.0-6.0
f /2
f /3
f /5
f /10
550
120
30
15
(DL)
95
25
(
8 DL)
15
(DL)
95
25
(
8 DL)
15
(DL)
*DLは、回折限界特性であることを意味します。
材
料
の
特
性
焦点距離=30 mm
スポットサイズ(μm)*
F値
LPX-18.5-15.6-C
f /2
f /3
f /5
f /10
LAO-30.0-12.5
350
90
17
15
(DL)
L AO-50.0-18.0 & MENP-18.0-4.0-73.5-NSF8
80
11
(
8 DL)
15
(DL)
4
5
(
8 DL)
15
(DL)
*DLは、回折限界特性であることを意味します。
焦点距離=60 mm
スポットサイズ(μm)*
F値
コ
ー
テ
ィ
ン
グ
の
特
性
LDX-50.0-60.0-C
f /2
f /3
f /5
f /10
800
225
42
15
(DL)
LPX-30.0-31.1-C
LAO-60.0-30.0
600
200
30
15
(DL)
LAO-100.0-31.5 & MENP-31.5-6.0-146.4-NSF8
80
35
9
15
(DL)
6
5
(
8 DL)
15
(DL)
*DLは、回折限界特性であることを意味します。
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礎
光
学
収差バランス
Aberration Balancing
レンズ系の性能を改善するのに、光学設計者が用いる主な手
球面収差の符号は焦点距離の符号に等しいので、ガリレータイ
法は、レンズ系の各面で発生した収差の総和が打ち消し合って
プのビームエクスパンダーでは、正の焦点距離の対物レンズと
殆どゼロになるようにすることです。このような手法を取るに
負の焦点距離の接眼レンズの組み合わせ系ですから、球面収差
は、通常、コンピュータを用いての解析と最適化処理が必要で
の補正が可能になります。
す。しかしながら、カタログ内のレンズを用いてこれを行なう
ための、簡単な指針があります。この手法を用いて、単体のレ
正常な方向に向けた焦点距離 f 1 の平凸レンズと逆方向に向け
ンズで使用できる値よりさらに小さなF値で使用できる光学
た焦点距離 f 2 の平凹レンズを用いると、系全体の球面収差は次
系を組むことが出来ます。
式で与えられます。
L.S.A. =
具体的に、単色の平行入射光に対して、球面収差がゼロのレ
ンズ系を 2 枚またはそれ以上の単レンズの組み合わせで構成す
ることを考えましょう。この技法は、レーザービームの集光と
0.272 f 1
f/#2
+
1.069 f 2
f/#2
上式をゼロと置くと、
次の関係式を得ます。
f1
拡大の光学系を組む場合に、特に有効です。
f2
=−
1.069
0.272
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
= −3.93
図 1.31 に、ごく一般的な 4 つの正と負のレンズ形状に対し
系を構成する 2 枚のレンズの球面収差が丁度打ち消し合うと
て、単色の平行入射光の場合の、3 次の縦の球面収差係数を示
いう条件を課すと、凸レンズの焦点距離が凹レンズのそれの
します。平凸レンズと平凹レンズの両方とも、曲率のある面を入
3.93 倍に固定されてしまいます。
射側に向けるとき、球面収差が最小になります。それ以外の配置
では、全て球面収差が増加します。レンズタイプのこうした性
図 1.32 の一つ目の図は、カタログの標準レンズで 4 : 1 焦点
質を用いて、種々の光学系の球面収差を補正する方法を説明し
距離比のビームエクスパンダーを構成したものです。このよう
ましょう。
な簡単な系で、f/4のとき、20 mm 径という大きな範囲内で、
632.8 nmの波長での波面収差が 1 / 6 波長に補正されておりま
まず、2 枚構成のレーザービームエクスパンダーを例に取り
す。ダブレットを用いないで、ここまで良好な補正ができるの
ましょう。ここでは、2 枚のレンズの間隔がレンズの焦点距離
は、驚くべきことです。ただし、ここでは、製造公差の影響は考
の和になっているので(共焦点系)
、レンズ系の焦点距離は無限
慮に入れておりません。
光
学
の
仕
様
大になります。このレンズ系は、入射平行ビームを集光するの
ではなく、ビームの径を変えます。定義から明らかなように、
系の中の 2 つのレンズは、同じ F 値で使われています。
もう少し低い倍率のビームエクスパンダーも、この情報から
求められます。対称両凸レンズと逆向きの平凹レンズとの組み
合わせでは、球面収差係数の比が 1.069/−0.403=−2.65とな
縦の球面収差( LSA )の公式によると、同じ F 値の 2 つのレン
ズでは、球面収差はレンズの焦点距離そのものに比例します。
ります。図 1.32の中央に、
(この比に最も近い)倍率2.7のカタロ
グレンズによる系を紹介しています。
材
料
の
特
性
正のレンズ
平凸(逆方向)
対称両凸
平凸(順方向)
平凹(逆方向)
対称両凹
平凹(順方向)
1.069
0.403
0.272
負のレンズ
収差係数(k)
縦の球面収差(3 次)=
図 1.31
k f
f/ # 2
代表的なレンズ形状の3 次の縦の球面収差
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コ
ー
テ
ィ
ン
グ
の
特
性
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光
学
このレンズ系の対物側の F 値を f / 3.3としても、系の波面収
差は 1 / 4 波長しかありません。
a )補正された 4 ×ビームエクスパンダー
このようなタイプのビームエクスパンダーは、全長が短く、
特に Nd : YAG やアルゴンのような出射ビーム径の大きなレー
ザービーム用に向きます。
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
同様の原理を用いて、レーザーの集光用レンズとして使える
f =−20 mm
10 mm 径、
f = 80 mm
22.4 mm 径、
平凹
平凸
高い開口数の対物系を造ることが出来ます。図 1.32の下部に、
始めに負のレンズとその後に 2 枚の同一の平凸レンズを配置し
た対物系を紹介しています。ここでも、各レンズは、同じ F 値で
使用されているため、球面収差の発生量は各レンズの焦点距離
に比例します。この系の球面収差の総量がゼロになるのは、以
b )補正された 2.7 ×ビームエクスパンダー
下の条件が成り立つときです。
1.069 f 1 + 0.272 f 2 + 0.272 f 2 = 0
従って、
光
学
の
仕
様
f =−20 mm
10 mm 径、
f = 54 mm
32 mm 径、
平凹
対称両凸
f1
f2
= −0.51
つまり、補正された系では、負のレンズの焦点距離は正の各
レンズ=の焦点距離のほぼ半分の値となります。図の例では、
c )球面収差を補正した f = 25 mm 、f / 2 .0 の対物系
f =−25 mm
25 mm 径、
平凹
f 1=−25 mm、f 2=50 mmと選ばれ、全系の焦点距離はほぼ
25 mm で F 値は約 f / 2 になります。この対物系の波面収差は
1 / 6 波長で、作動距離が非常に長いという長所があります。
f = 50 mm
27 mm 径、
平凸
2枚
図1.32 カタログレンズの組み合わせによる収差バランスの例
材
料
の
特
性
コ
ー
テ
ィ
ン
グ
の
特
性
CVI メレスグリオでは、193 ∼ 355 nm の波長用に多岐に
わたる UV 用オプティクスを製造販売しています。
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光
学
用語の解説
Definition of Terms
通過後、光軸と平行になります。この性質を用いて、両方の焦
焦点距離
点位置が求められます。
各レンズまたはレンズ系についての焦点距離という言葉は、
第1主面
2 つの異なる意味で使われます。最初の意味合いは、倍率つまり
像サイズを決める、有効焦点距離( EFL )または等価焦点距離
(図 1.33でfと表記)のことです。この場合、f の起点である主点
が通常はレンズ内にあるため、レンズを目で調べても、f の値が
前側焦点 F を通る光線(つまり、レンズ透過後に光軸と平行
に進む光線)が、実際のレンズで起こるようにレンズの表裏で
2 回屈折される代わりに、ある仮想面で一回屈折されると、想
直ぐ判るわけではありません。
定しましょう。このような仮想面は、実際に定義できて、主面
といわれています。
焦点距離の 2 つ目の意味は、焦点からレンズの頂点までの距
離のことで、直感的に理解できる量です。これは、像サイズと
このユニークな面の位置を割り出すために、前側焦点 F から
は直截に関係しませんが、レンズの正しい位置関係や機械的
レンズを通ってレンズの後方へ抜ける一本の光線を考えます。
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
クリアランスに関して述べるときには、特に便利な概念です。
この 2 つ目の意味の焦点距離の具体例としては、前側焦点距離
この光線は、レンズによって 3 つの線分に分割されます。そ
(FFL、図 1.33で f fと表記)と、後側焦点距離(BFL、f bと表記)
の内の 2 本はレンズの外部の線分で、残りの 1 本はレンズ内の
があります。
線分です。レンズ外部の 2 本の線分を互いに延長すると(レンズ
の近傍で、通常はレンズの内部で)交点が得られます。このよ
光線は左から右へと進むように描くのが(意図的に 1 本を逆
うな点の軌跡が(前側もしくは第 1 )主面になります。無収差の
方向に描くのを除き)
、作図上の決まり事です。
レンズでは、主面は焦点を中心とする 1 つの球面になります。
焦点(FまたはF″)
光学軸近傍では、主面はほぼ平坦と見做せるため、主面のこ
一方の焦点を通る、もしくは焦点から発する光線は、レンズを
とを主平面とも呼ぶこともあります。
tc
第 1 主点
第 2 主面
第 2 主点
te
第 1 主面
無限遠の物体からの光線
後側(第 2 )焦点
無限遠の物体からの光線
r2
第 1 頂点 A 1
F
光学軸
H
H"
r1
前側(第 1 )焦点
ff
F"
A 2 第 2 頂点
材
料
の
特
性
逆入射光線は前側焦点を通過
fb
A
f
B
f
前側焦点
後側焦点
A = 前側焦点 - レンズの前側
f = 有効焦点距離(EFL)
エッジ間距離
te = エッジの厚み
正(図示)でも負でもあり得る
B = 後側エッジ- 後側焦点間
ff = 前側焦点 距離(FFL)
距離
r1 = 第 1 面の曲率半径(曲率中心が
右側にあるとき正値)
tc = 中心の厚み
r2 = 第 2 面の曲率半径(曲率中心が
左側にあるとき負値)
fb = 後側焦点 距離(BFL)
図 1.33
焦点距離と焦点
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ー
テ
ィ
ン
グ
の
特
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光
学
第 2 主面
実像
第 1 主面と同じように定義されますが、光線の方向は逆で、
左側からの平行入射光がレンズで屈折されて後側焦点に集光す
実像は、光が実際に集光して形成される像です。集光場所
にスクリーンを置くと、実際にその上に像が映ります。
るとします。光軸近くの光線は、レンズの両面で屈折される代わ
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
りに、この第 2 主面で一度屈折されると見做すことが出来ます。
虚像
第 1 主点(H)
像は、拡大鏡による像のように、光学系を通して覗き見ること
虚像は、光が実際に集光して出来る像ではありません。虚
によってのみ観察できます。
第 1 主面と光軸との交点
F 値(f / #、絞り値)
第 2 主点(H″)
レンズの F 値は、有効焦点距離をレンズの有効開口径で割っ
第 2 主面と光軸との交点
た値で定義されます。光線 F 値とは、光線の共役距離を光線が
主面を通る高さの 2 倍で割った値です。
共役距離( s と s ″)
共役距離とは、物体距離sと像距離s″のことです。具体的に
f/# =
は、sは物体からHまでの距離、s″はH″から像位置までの距
f
φ
離です。無限共役比というのは、平行入射光束をレンズで集光
する場合か、逆にレンズでビームをコリメートする場合です。
光
学
の
仕
様
(つまり、s か s″が無限遠になる場合です。
)
開口数(N.A.)
レンズ系の開口数は、周縁光線(系の周縁を通って出て来る
光線)が光軸となす角θ1 の正弦関数(sin)に媒質の屈折率 n を
第 1 頂点(A 1)
掛けた値です。
レンズの第 1 面と光軸との交点
また、どの光線についてもその光線の光学軸となす角度θの
第 2 頂点(A 2)
正弦関数に媒質の屈折率の掛けた値で開口数が定義されます。
レンズの第 2 面と光軸との交点
N.A. = n sinθ
有効焦点距離( f )
レンズの周りの媒質は空気(屈折率 1.0 )として、有効焦点距
像倍率
離は、前側焦点(F )から第 1 主点( H )までの距離であり、後側
焦点( F ″)から第 2 主点(H″)までの距離でもあります。後に、
材
料
の
特
性
設計波長(λ0 )に関する近軸焦点距離を表すのに( f )という記
号を使います。
正のレンズを、例えば固定倍率 4×の様な、単なる拡大鏡と
して使う場合が、よくあります。人の目で見る虚像を形成する
のなら、原理的には、どの正のレンズでも任意の可変倍率で使
えます。でも、人の目で楽に見えるのは、狭い倍率範囲のみで
す。目から250 mm程度の距離に虚像が出来ると、大抵の人に
前側焦点距離( f f )
とって楽に見えます。このときの、像倍率は、次式で与えられます。
前側焦点(F)から第 1 頂点( A 1 )までの距離
像倍率 =
後側焦点距離( f b )
250 mm
f
(f は mm単位)
従って、例えば焦点距離 25 mm のレンズでの像倍率は、
第 2 頂点( A 2 )から後側焦点( F ″)までの距離
10×となります。
レンズバックとも呼ばれる
エッジ-焦点距離( A と B )
コ
ー
テ
ィ
ン
グ
の
特
性
A は、前側焦点からレンズの前側エッジまでの距離、Bはレ
ンズの後側エッジから後側焦点までの距離です。どちらも常に
正の距離と見なされます。
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学
ヂオプター
ヂオプターは、メガネレンズで一般的に使われている焦点
アプリケーションノート
距離を表す別の表記法で、次式のように焦点距離の逆数として
定義されます。
ヂオプター =
1000
f
(f は mm単位)
従って、焦点距離が小さい程、ヂオプターが大きくなります。
ここで述べられた定義および公式について、詳しくは以下の
書籍を参照してください。
Rudolph Kingslake, Lens Design Fundamentals
(Academic Press)
Rudolph Kingslake, System Design
(Academic Press)
被写界深度と焦点深度
結像系において、被写界深度とは許容できる程度にシャープ
な像がその光学系によって得られる、物体側の深度のことです。
シャープさの許容値は、ユーザーが任意に決定します。被写界
深度は、F 値に比例します。
焦点深度とは、許容できる程度にシャープな像がその結像系
によって得られる、像側の深度です。つまり、これは(スクリー
ンやフィルム面のような)像面上の像のシャープさが許容範囲
内に保たれる最大デフォーカス幅(像面移動幅)のことです。
Warren Smith, Modern Optical Engineering
(McGraw Hill).
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
Donald C. O Shea, Elements of Modern Optical Design
(John Wiley & Sons)
Eugene Hecht, Optics
(Addison Wesley)
Max Born, Emil Wolf, Principles of Optics
(Cambridge University Press)
光
学
の
仕
様
ここでも、像のシャープさの許容値については、ユーザー側で
任意に決定します。
レーザーの集光のような、非結像の用途での焦点深度とは、
集光スポット径が適当に選んだ値以下になる像面側での深度の
ことです。
材
料
の
特
性
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コ
ー
テ
ィ
ン
グ
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光
学
近軸のレンズ公式
Paraxial Lens Formulas
空気中にあるレンズの近軸公式
表面サジッタ s と曲率半径 r(図1.34 参照)
以下の公式は、常に光軸の近傍にあって光軸とのなす角が小
2
さな、近軸光線の振る舞いに基づいています。近軸領域では、
レンズの表面は光軸とほぼ垂直で、近軸光線に対する入射角と
射角と屈折角の sinは各々の角度そのもの(ラジアン単位で)
として近似できます。
r =
近軸公式には、周縁光線が被るような球面収差の影響が考慮
2
2
>0
d2
s
+
2
8s
第1項の s/2を無視する近似が、
よくつかわれます。
されていません。本カタログの表に記載の全ての有効焦点距離
( f )は、近軸公式に対応する近軸値です。
d
2
d
s = r − r 2− 2
屈折角は共に小さい値です。そのため、スネルの法則の中の入
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
2
r =(r−s)+
対称レンズ(r2 =−r1)
以下に記載の公式は近軸公式で、特に断わりのない限り、厚
レンズの厚みを考慮して、
肉と薄肉の両方のレンズに適用できます。レンズ硝材の屈折率
r1 =(n−1)f ± f 2−
nは、光の真空中での伝播速度と硝材中での伝播速度の比にな
ftc
n
ります。その他の変数については、図 1.33 に示されています。
=(n−1)f 1+ 1−
焦点距離
光
学
の
仕
様
2
1
1
1
(n−1) tc
=(n−1) −
+
f
r1
r2
n
r1 r2
tc
nf
ここで、
第 1 式で、
f が正のときには+サインを、負のときには−サ
f の正負に拘わらず、
+サインを取ります。
インを取ります。第 2 式では、
ここで、nは屈折率、t cは中心肉厚、半径 r 1 と r 2 に関しては、
エッジの厚みの効果まで考慮すると、
r1の式は次のようになります。
前述の符号の取り決めが適用されます。薄肉レンズの場合は、
2
φ
1 2(n−1) (n−1)
=
ー
tc +2r1 1ーcos arcsin
f
r1
nr12
2r1
t c∼0、平凸レンズの場合は、r 1 とr 2 のどちらかが無限大になり
ます。どちらの場合でも、上式の第 2 項が消えて、次のよく知ら
れたレンズメーカーの公式が得られます。
ここで、
φはレンズの直径です。この式から、
数値解析によりr1が
1
1
1
=(n−1) −
f
r1
r2
求められます。
片面が平面のレンズ
s>0
材
料
の
特
性
r2 が平面とすると、
主点位置(レンズ頂点からの符号付き距離)
0
r>
A2H″
=
d
2
A1H =
−r1tc
n(r2−r1)+ t(
c n−1)
ここで、
前述の符号の規約を適用します。
( r −s )
コ
ー
テ
ィ
ン
グ
の
特
性
−r2tc
n(r2−r1)+ t(
c n−1)
図 1.34 表面サジッタ s と曲率半径 r
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光
学
対称レンズ
(r2 =−r1)
では、
後側焦点距離
A 1H = 0
f b = f + A 2 H″
t
A 2 H″
=− c
n
=f−
r2 tc
n(r2−r1)+ t(
c n−1)
r1とr2のどちらかが無限大のときは、微積分学のロピタルの公式
P1.17にある正しい向きの片側平面レンズに
を適用します。従って、
A 2 H″
と半径に対して、
既述の符号規約を適用します。r2 が
ここで、
ついて、
次式を得ます。
無限大のときは、
微積分学のロピタルの法則を用いて、
次式を得ます。
A 1H = 0
tc
n
fb = f −
および
t
A 2 H″
=− c
n
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
前側焦点距離
f f = f − A 1H
平面プレートは、
対称レンズで r1 として、
tc
= 2n となります。
A 1 H = A 2 H″
= f+
r1 tc
n(r2−r1)+ t(
c n−1)
これらの結果は、
既述の組み合わせレンズの公式を適用するときに
役に立ちます。
ここで、A1Hと半径に対して、既述の符号規約を適用します。r1 が
無限大のときは、
微積分学のロピタルの法則を用いて、
次式を得ます。
主点間距離(間隙)
HH″
=tc 1ー
tc
ff = f−
n
2
1 (nー1) tc
ー
f
n
r1 r2
f
n
エッジ-焦点間距離
薄肉近似を適用するか、
片平レンズの場合は、上式から次式を
正のレンズの場合は
得ます。
A = f f + s 1
HH″
=tc 1ー
1
n
光
学
の
仕
様
B = f b + s 2 s1と s2 は、各々第1面と第2面のサジッタです。
ここで、
立体角
倍率と共役比
軸上の像点から見たレンズの立体角は、
次式で与えられます。
m=
Ω =2π
(1ーcosθ)
=4πsin2
θ
2
=
ここで、単位はステラジアンです。
θは、像点からレンズの有効径の
=
半角で、
与えられます。
θ=arctan
s″
s
材
料
の
特
性
f
s− f
s″
−f
f
φ
2s″
任意の媒質中のレンズの近軸公式
の代わりに sとします。ステラジアン
軸上の物点から見る場合は、s″
一般的に、物体側の媒質の屈折率( n )、
レンズの屈折率(n′
)、
からもっと直感的なスフェアー(球)単位に書き換えるには、
Ωを4π
像側の媒質の屈折率( n ″)
としたときの、
レンズ公式を与えます。
で割ります。アッベの正弦条件を満たすレンズ系の場合には、
θを
この場合、
( 今までfで表記した有効焦点距離)EFL は、物体側と
与える上式の右辺の arctan を arcsinに替えます。
像側とで異なる値になり、物体側を f 、像側を f ″
と表記します。
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コ
ー
テ
ィ
ン
グ
の
特
性
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基
礎
光
学
レンズの式(ニュートンの公式)
また、
この一般的な場合では主点と節点は互いに異なる点になりま
す。
レンズはレンズとしての役割だけではなく、物側の媒質と像側の
xx″= f f″
=
媒質とを区切るウィンドウの役割も併せ持ちます。
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
の特別な場合で、
均一な液体にレンズを浸けた場合は、n = n ″
−f ″
ここで、x = s − f 及び x ″= s ″
f と f ″は再び同じ値になり、
レンズの組み合わせ公式が液体に浸し
(2種の異なる媒質)の一般
たレンズについても成立します。n≠n″
主点位置
的な場合は、状況は複雑で、面ごとに光線追跡する方法が必要に
A 1H =
なります。
レンズ定数(k)
s=
屈折率n′
)
と両側の媒質の屈折率( n 、n″)
を陽に含む関数です。
ーn(
)n″
ーn ′
)
n′
ーn
n″ー n′ t(
c n′
+
ー
r1
r2
n′
r1 r2
n
k
f ″=
ー n″
tc
k
n′
ーn
n′
r1
ns″
ks″ー n″
第 2 主点-像距離
有効焦点距離
f=
n″ー n′
n′
r2
物体-第 1 主点距離
これは、以下の公式の中に頻繁に使われる定数のことで、次の
k=
ntc
k
A 2 H″=
ように定義された、
レンズの全てのパラメータ
(曲率半径、
中心肉厚、
光
学
の
仕
様
nn″
k2
n″
k
s″=
n″s
ks ー n
m=
ns″
n″s
倍率
レンズの式(ガウスの公式)
n
n″
+
=k
s″
s
屈折率 n = 1(空気または真空)
屈折率 n = 1.333(水)
f
fb
ff
材
料
の
特
性
A1
F
コ
ー
テ
ィ
ン
グ
の
特
性
A2
N
H
屈折率 n = 1.51872(BK7)
図 1.35
物側と像側で屈折率の異なる媒質の場合の対称レンズ
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学
立体角(ステラジアン単位)
レンズメーカーの公式
n
n″
=
=k
f″
f
Ω =2π
(1ーcosθ)
=4πsin 2
節点位置
ここで、θ= arcsin
A 1 N = A 1 H + HN
A 2 N″
= A 2 H″+ H″
N″
φ
ガ
ウ
シ
ア
ン
ビ
ー
ム
光
学
2s
Ω″=2π
(1 ー cosθ″
)
節点と対応する主点との間の距離
=4πsin 2
(n ″
ー n)
HN = H″
N″
=
θ
2
θ″
2
ここで、
θ″
= arctan
k
が H″
の右側のとき正値。
各々N が H の右側 および N″
φ
2s″
上記のΩとΩ″
を 4 πで割れば、
ステラジアンからスフェアーに
単位が変わります。
後側焦点距離
+ A 2 H″
fb = f ″
前側焦点距離
光
学
の
仕
様
f f = f − A 1H
アプリケーションノート
F値
f
f″
および 、 ここでθはレンズの有効開口径。
φ
θ
開口径
非常に簡単になります。このような単純化は、薄肉レンズ
近似として知られています。
n sin θ
ここで、θ= arcsin
これまでの公式で f=fb=ff と置き、s と s″を各々レンズ
と物体間距離およびレンズと像間距離とし、かつ共役距離
の和 s + s″を物像間距離と単純化することにより、計算が
φ
2s
n″sin θ″
ここで、θ″
= arcsin
φ
アプリケーションノート
2s″
レンズの第1 節点Nに向けられた光線は、光線の方向は変
わらずに、第 2 節点 N ″
から出射するように振る舞います。
材
料
の
特
性
逆に、第 2 節点 N″
に向けられた光線は、光線の方向は変わ
らずに、第1節点Nから出射するように振る舞います。無限
共役比の場合に、光軸と垂直で第 2 節点 N ″
を通る回転軸
の周りにレンズを回転しても、像は動きません。節点の位置
は、
この事実を用いたノーダル・スライド法で測定されます。
物体側と像側の屈折率が同じ(n=n″
)とき、節点とそれに
対応する主点とが一致しますので、
ノーダル・スライド法に
よって主点位置を極めて正確に測定することが出来ます。
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主点の位置
Principal-Point Locations
図 1.36は、様々な形状の標準レンズに関して、レンズ表面に
方の主点がレンズ境界の外に位置する場合があります。対称形
対する主点のおおよその位置を示しています。実際の位置は、
のレンズについては、光軸上の頂点間の距離を、主点がほぼ等
レンズの硝材の屈折率およびレンズの曲率半径に依存し、公式
しい3つの部分に分割します。平面を持つレンズについては、
により求めることができます。極端なメニスカス形状(小さな
主点が曲率側の頂点にある場合と、平面側に向かって 3 分の 1
半径もしくは深く落ち込んだカーブを持つ)のレンズでは、双
ほど入り込んだ位置になる場合があります。
ガ
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シ
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ビ
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光
学
光
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様
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図 1.36
一般的なレンズの主点位置
W1.36
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