2004年度 経済学研究 アマルティア・センと厚生 経済学 テキスト: 鈴村興太郎・後藤玲子 『アマルティア・セン 経済学と倫理学』 担当:須賀晃一 講義の目的 アマルティア・センの経済学と倫理学・哲 学を紹介する | センの経済学の展開をたどり、厚生経済 学の現状を見る | センの中に新たな厚生経済学・経済哲学 の発展の可能性を探る | 社会科学としての経済学の可能性と限 界について考察する | 第1章 プロローグ センのプロフィールと講義の概要 2.センのプロフィール | | | | | 1933年インド、ベンガル地方シャンティニケタン に生まれる ダッカ(バングラデシュの首都)、マンダレー(ミャ ンマー)を経て、タゴールの寄宿学校へ シャンティニケンのカレッジで2年間数学と物理 学を学ぶ 1951年カルカッタ大学に進み1953年に経済学 の学士号取得 1953年ケンブリッジ大学留学、1959年博士号 Choice of Techniques: an aspect of the theory of planned economic development (1962) | | | | カルカッタのジャダプール大学経済学教授、経 済学部長(1956-58) ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジのフェロー (1957-63) デリー・スクールオブ・エコノミックスの経済学 教授(1963-71) 『集合的選択と社会的厚生』(1970) ロンドン・スクール・オブ・エコノミックスの経済 学教授(1971−77) 『不平等の経済学(初版)』(1973) | | | | | オックスフォード大学ナッフィ−ルド・カレッジの フェロー兼経済学教授(1978-90) オックスフォード大学オール・ソールズ・カレッジ のフェロー兼ドラモンド政治経済学教授(198088) 『貧困と飢餓』(1981)、 『福祉の経済学』 (1985) ハーヴァード大学ラモント特任教授(1988-97) 『不平等の再検討』(1992) トリニティ・カレッジのマスター(1997∼) 1998年ノーベル経済学賞受賞 『自由と経済開発』(1999) 3.厚生経済学とはなにか | ミクロ経済学ーー資源配分 z z | ピグーの《旧》厚生経済学 z z | 事実解明的アプローチ 規範的アプローチ=厚生経済学 功利主義:最大多数の最大幸福 効用の基数性+個人間比較可能性 《新》厚生経済学:1930年代後半∼ z z z 序数的効用理論 パレート最適、パレート効率的 厚生経済学の基本定理 | 補償原理 z z z z | パレート原理の適用可能性を拡大する試み カルドア基準 ヒックス基準 シトフスキー基準(二重基準) 社会的厚生関数 z z バーグソン、サミュエルソン 社会構成員の判断・選好を考慮して社会状態を 倫理的に順序付ける方法 4.社会的選択の理論とはなにか | アローの一般可能性定理 z z z z 『社会的選択と個人的評価』(1951) 社会構成員が表明する個人的評価・判断に基 づいて社会的評価・判断を形成する集計プロセ ス・ルールを研究対象とする 望ましいいくつかの性質を同時に満たす集計 ルールは存在しない 単純多数決ルール • 選択肢Aを選択肢Bより望ましいと判断する人の数が BをAより望ましいと判断する人の数を上回る場合、A の方がBより社会的に望ましいとする | | 単純多数決サイクル 1:A,B,C 2:B,C,A 3:C,A,B → 循環が生じる 公理 z z z パレート原理 情報効率性 社会的合理性 5.センの経済学と倫理学 最初のスケッチ | A.C.ピグー z | E.ミシャン z | 厚生経済学=人間生活改良の道具 厚生経済学=良心の痛みを感じて立ち返る場 A.K.セン z z 厚生経済学の貧困の打破 社会的選択理論の単純化・透明化 • • • • 社会的判断の情報的基礎 社会的合理性条件の再検討 単純多数決の公理的特徴づけ 厚生の個人間比較可能性の導入 | センの不朽の功績 z z | | 不平等の経済学と倫理学(第3章) 厚生主義・権利・自由—正統派批判(第4章) z z | 合理的な愚か者=貧困の根本理由 帰結主義的厚生主義 厚生経済学の新構想(第5∼7章) z | 社会的選択理論の研究領域を飛躍的に拡大 純粋理論と公共活動との連結環を意識した理 論構成 潜在能力アプローチ、自由と経済発展 社会的選択理論の再構成(第8章)
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