取扱説明書 三相誘導電動機 巻線(電動引上げ装置付)形 - TMEIC 東芝

DN-3ZW371
取扱説明書
三相誘導電動機
巻線(電動引上げ装置付)形
本 取 扱 説 明 書 は
必 ず エ ン ド ユ ー ザ ー
ま で 届 け て 下 さ い 。
DN-3ZW371
本取扱説明書には、下記の内容を記載しています。
1、安全上のご注意・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
E7091153
2、本体用取扱説明書・・・・・・・・・・・・・・・・・
E7091190
3、電動操作形コレクター及び
ブラシ引き上げ装置取扱説明書・・・・・・・ E7090796
電 動 機
取 扱 説 明 書
安全上のご注意
電 動 機 を お 使 い に な る 前 に
必 ず お 読 み く だ さ い
目 次
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
まえがき
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
安全上のご注意 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
基本的注意事項 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
据付について
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
保守・点検について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
廃棄について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その他 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
1
9
11
15
16
17
E7091153
1.まえがき
当社(巻き線形・かご形)三相誘導電動機(発電機)をご購入いただきありがとうございます。
当社の電動機(発電機)を安全に能率よくご使用願うため,この取扱説明書を発行いたしました。
なお、本取扱説明書には主に「電動機」と記載されている箇所がありますが,ご購入頂いたもの
が誘導発電機の場合,「発電機」として読み替えてご使用しても差し支えありませんので、予めご
承知ください。
2.安全上のご注意
製品および取扱説明書には,お使いになる方や他の人への危害と損害を未然に防ぎ,商品を安全に
正しくお使いいただくために,重要な内容を記載しています。
本電動機(発電機)の取扱者は据付、運転、保守・点検の前に,必ず「取扱説明書-安全上のご注意」
および合冊の「取扱説明書」とその他の付属書類をすべて熟読頂き、正しくご使用ください。
■ 取扱説明書のほかに,電動機(発電機)本体に取り付けられている警告ラベルや扱銘板をご使用前に必
ずお読みください。また,これらのラベル・銘板は、常時読めるように良好な状態で保持し,決してはがし
たり取り外したりしないでください。ラベル・銘板の表示がかすれたり,破損した場合は,当社にご連絡くだ
さい。
■ 取扱説明書は,お読みになった後も,大切に保管し,機器使用の際は適宜ご使用ください。
■ 電動機(発電機)を他の機器と組み合わせて,エンドユーザーにお渡しになるとき,および,他のユーザ
ーに電動機(発電機)を譲渡されるときには,この取扱説明書を添付してください。
- 1 -
E7091153
[取扱者の資格]
■この電動機(発電機)の据付、運転、保守・点検は法規(労働安全衛生法など)に準拠して,有資格
者が行ってください。
■法規で規制されていない作業についても,電動機(発電機)および作業を理解し習熟している専門
家の指導のもとで行ってください。
■作業のときは,定められた保護具(長袖作業着・安全帯・ヘルメット,安全靴,手袋)を着用してくだ
さい。
[表示と図記号の説明]
製品および取扱説明書には,お使いになる方や他の人への危害と財産の損害を未然に防ぎ,製品
を安全に正しくお使いいただくために,重要な内容を記載しています。
次の内容(表示・図記号)をよく理解してから本文をお読みになり,記載事項をお守りください。
また,関連する機器・部品の取扱説明書も必ずお読みください。
危険
: 回避しないと、死亡又は重傷を招く差し迫った危険な状況を示す。
警告
: 回避しないと、死亡又は重傷を招くおそれがある危険な状況を示す。
注意
: 回避しないと、軽症又は中程度の障害を招くおそれがある危険な
状況及び物的損害のみの発生するおそれがある場合を示す。
なお、
注意
に記載した事項でも、いずれも重要な内容を記載していますので必ず守ってくだ
さい。この取扱説明書では、警告メッセージを伝える図記号を併用していますが、これは、注意,禁止,
指示に区分してあります。基本形状は3種類であり,各々,
:注意事項
:禁止事項
を意味します。
- 2 -
:指示事項
E7091153
安全上のご注意(つづき)
[免責事項について]
■火災,地震,第三者による行為,その他の事故,使用者の故意または過失,誤用,その他異常な条件下で
の使用により生じた損害に関して,当社は一切責任を負いません。
■本製品の使用または使用不能から生ずる付随的な損害(事業利益の損失,事業の中断など)に関し
て,当社は一切責任を負いません。
■取扱説明書で説明された以外の据え付け,取り扱い,または使い方によって生じた損害に関して,当社
は一切責任を負いません。
■接続機器との組み合わせにより生じた損害に関しては,当社は一切責任を負いません。
[本体警告ラベルの確認]
指定個所(8ページの図 1 または提出図参照)に本体警告表示ラベルが表示されていることをご確認くださ
い。もし,ラベルが紛失していたり,汚損により見にくいときは,当社にご連絡ください。
危険
■爆発性雰囲気中では使用しないで下さい。防爆形電動機(発電機)を使用してくだ
さい。
爆発,火災のおそれがあります。
■活線状態で作業しないでください。必ず電源を切って作業してください。
感電のおそれがあります。
■空気冷却器付電動機(発電機)の場合は、空気冷却器に規定の冷却水温・流量の
水を流してから電動機(発電機)を運転してください。
異常過熱し,火災から爆発にいたるおそれがあります。
■電動機を吊り上げるときは,ステータフレームの吊り耳(※)を使用してください。
端子箱の蓋や熱交換器などの吊り耳を使うと落下し,けがをする恐れがあります。
※:詳しくは「提出図」をご参照ください。
■提出図または質量表示銘板に記載されている質量に見合った運搬機材を使用して下さ
い。
落下により,けがをする恐れがあります。
■外被カバー類とワイヤロープの間に,木材または厚布を当ててください。
ワイヤロープの損傷・切断により落下し,けがをする恐れがあります。
■吊り荷の下には入らないでください。
落下したとき,けがをする恐れがあります。
- 3 -
E7091153
■電動機は単体で吊してください。
落下により,けがをする恐れがあります。
安全上のご注意(つづき)
危険
■輸送保護装置は試運転開始前に取り外してください。
取り外さないで運転すると,電動機が加熱したり輸送保護装置が飛散したりして,火
災・けがの恐れがあります。また,電動機によっては,直結側だけでなく反直結側にも
輸送保護装置が取り付けられていますので,試運転開始前に確認し,取り外してくだ
さい。
再輸送のときは輸送保護装置を取り付けてください。
■主軸に仮り付けされているキーは,試運転開始前に取り外してください。
取り外さないで運転すると,キーが飛散し,けがをする恐れがあります。
■使用条件(※)に合ったところに据え付けてください。
据付条件が合わないと,火災・感電の恐れがあります。
※:詳細は仕様書をご参照ください。
■1.5m(メートル)以上の高所作業は,安全帯を使用してください。
落下しけがをする恐れがあります。
■据え付け・保守点検の作業場所をロープなどで区画し,作業者以外の立ち入りを制
止してください。
作業者以外が近づくと,感電・けがの恐れがあります。
■電源側に接地リレーなどの安全保護装置を取り付けてください。
安全保護装置がないと漏電などにより,火災・感電の恐れがあります。
■アース用端子を確実に接地してください。
感電のおそれがあります。
■機械側と直結するカップリング部には,巻き込み防止のカバーを取り付けてくださ
い。
カバーがないと,けがをする恐れがあります。
■耐電圧試験・絶縁抵抗試験の前に,人が接近・接触していないことを確認してくだ
さい。また,試験中は接近・接触しないよう,近くにいる人に喚起してください。
試験電源により感電の恐れがあります。
■耐電圧試験の電圧を印加しない巻線は接地してください。
巻線に触れ感電の恐れがあります。
■耐電圧試験の電圧を印加するときは,電圧可変な印加装置を使用してください。
感電の恐れがあります。
- 4 -
E7091153
■ネジ・ボルト類は規定のトルク(※)で締め付けてください。
規定のトルクで締め付けないと,部品が飛散したり,配線接続部が加熱して,火災・
けがの恐れがあります。
※:詳細は表 1(15 ページ)をご参照ください。
安全上のご注意(つづき)
危険
■耐電圧試験の終了時に巻線を接地し放電してください。
放電しないと感電の恐れがあります。
■扉・蓋およびカバーなどを開けたり,外したまま運転しないください。
感電・けがの恐れがあります。
■運転中は周囲に可燃性のものを置かないでください
火災の恐れがあります。
■通風冷却機を運転してから電動機を運転してください。
過熱し,火災の恐れがあります。
(他力通風冷却式電動機)
■定期点検作業を開始する前に全ての電源を遮断してください。
感電・けがの恐れがあります。
開放した遮断器に“操作禁止”の札を掛け,作業中の誤操作予防をしてください。
■停電時は電源を遮断してください。
再通電したとき, 感電・けがの恐れがあります。
■軸受を分解した状態で火気を使用するときは,次の事項を守ってください。
・軸受の潤滑油をぬきとる
・軸受部を損傷しないように養生する
・火気の使用場所を火災にならない場所に限定する
・暖房・喫煙などの火気を近づけない
守らないと火災のおそれがあります。
■フィルターは定期的に清掃してください。
目詰まりすると過熱し,火災の恐れがあります。
(フィルター装置機種)
■ブラシ回りを目視点検するときは,回転部や充電部に接近したり触れたりしないでく
ださい。
感電・けがの恐れがあります。
■防爆形電動機の保守点検は当社に連絡してください。
当社以外が行うと,火災・感電・けがの恐れがあります。
(防爆形電動機)
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E7091153
警告
■運搬,設置,配管・配線,運転・操作,保守・点検の作業は,専門知識のある人が
実施してください。
感電,けが,火災等のおそれがあります。
■電圧のかかっている電気回路や回転中の回転体には触れないでください。
感電,けがのおそれがあります。
安全上のご注意(つづき)
警告
■電動機(発電機)の仕様以外で使用しないでください。
感電,けが,破損等のおそれがあります。
■電動機(発電機)の周辺には,取扱者以外の人を近づけないでください。
感電,けがのおそれがあります。
■電動機(発電機)の開口部に指や物を入れないでください。
感電,けが,火災等のおそれがあります。
■損傷した電動機(発電機)を使用しないでください。
けが,火災等のおそれがあります。
■集電装置の扉・蓋は保守点検時以外開けないでください。
感電,けがのおそれがあります。
■お客様による製品の改造は,当社の保証範囲外ですので,責任を負いません。
注意
■据付・保守点検時には,長袖作業服・安全帯・保護メガネなど定められた保護具を着
用してください。
感電,けがのおそれがあります。
■機械加工,プレス加工された部品に触れるときは,軍手などを着用してください。
部品には鋭利な部分があり,けがのおそれがあります。
■日常および定期の保守点検を実施してください。
故障・異常を発見できず,火災,感電のおそれがあります。
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E7091153
■インバータで電動機を駆動する場合,インバータ駆動用電動機を使用してください。
過熱,絶縁破壊による破損,火災のおそれがあります。
■銘板が常に見えるように障害物を置かないでください。
■銘板を取り外さないでください。
■二次側端子を開放状態にして運転しないでください
端子間に高電圧が発生し,変流器を焼損することがあります。
安全上のご注意(つづき)
注意
■運転中,電動機(発電機)はかなり高温になります。手や体を触れないように
ご注意ください。
やけどのおそれがあります。
■コイルを巻き変える場合は,事前に当社に相談し,指示に従ってください。
コイルなどに用いられている絶縁物は,加熱処理の条件によっては有毒ガスが発生するこ
とがあります。
■電動機(発電機)を廃棄する場合は,事前に当社に相談し,指示に従ってください。
加熱処理により,有毒ガスが発生するおそれがあります。
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E7091153
図1 注意銘板取り付け位置と注意銘板の例
- 8 -
E7091153
3.基本的注意事項
取扱い者は下記の内容に従い、本機を安全にご使用ください。
危
険
本機は電気的・機械的に大きなエネルギーを持っていますので、取扱いには十分ご注意ください。 正
しい取扱いをしませんと、故障の原因となり周囲の設備を破損したり、取扱い者や周囲の人に致命的
な障害をおよぼす可能性があります。人身災害・機器の破損を防ぐため、下記の事項は必ずお守りく
ださい。
■電動機の周辺には、取扱い者以外
あるキーを必ず取り外すこと
の人を近づけないこと
■電圧がかかっている電気回路や回
転中の回転体には触れないこと
■電動機に付属している接地端子
を必ずアースすること
■ 機械側と直結するカップリング部分
■電動機の改造は行わないこと
改造の必要がある場合は必ず当社
には、巻き込み防止の
カバーを設置すること
にご連絡の上、指示に従うこと
■蓋・カバー類を含む保護器具・安全
装置をはずしたり、その機能を停止
■ 仕様書・規格・定格銘板等に定
められた出力・電流・電源電圧
周波数・回転速度・運転時間
させたまま運転しないこと
内で運転すること
■定められた保護具を使用すること。
■ 他力通風冷却の場合は、電動機
据付・保守点検時には、巻き込まれ
通電前に必ず他力通風機の電源を
や感電などの事故を防ぐため、長袖
ON のこと
作業服・安全帯・保護メガネなどを
■ スペースヒータは、電動機停止
時に通電のこと
着用こと
■試運転前に、輸送保護装置を必
ず取り外すこと
■試運転に、主軸に仮付けして
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基本的注意事項つづき
注
意
電動機の軸受けに使用されている潤滑油やグリ-スは、高温になると燃え、火災の原因となることがあります。
人身災害・機器の破損を防ぐため、下記の事項は必ずお守りください。
■ 電動機の周囲に可燃性のものを
■軸受けを分解した状態で火気を使用
置かないこと
する場合は、次の事項を守ること
・軸受けの潤滑油を抜き取る
・軸受け部に適切な養成を行う
・火気の使用場所を火災の危険性のな
い場所に限定する
・暖房・喫煙など一般火気を近くで使用
しない
注
■機械加工、プレス加工された部品
意
■ 運転中は、動機外被が高温に
には鋭利な部分がある恐れがあり
なり、火傷の恐れがあります。
ます。軍手など使用のこと
身体を直接触れないように
注意すること
■停電時は、必ずスイッチを切ること。
知らぬ間に電気がきて思わぬ事故
を起こす恐れがあります。なお、電
磁開閉器、電磁接触器を使用され
る場合は、この心配は無用です。
- 10 -
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4.据付について
4.1 電動機運搬のご注意
警告
■吊り荷の下には,絶対に入らないでください。
落下によるけがのおそれがあります。
■端子箱の蓋・熱交換器などにある吊耳は,電動機(発電機)全体を吊るときに使用しない
でください。
落下,転倒によるけがのおそれがあります。
■電動機は単体で吊ってください。
落下により,けがをする恐れがあります。
■クレーンで電動機(発電機)を吊るときは,固定子枠側面の吊りフックにワイヤーロープを
掛けてください。
この場合,電動機(発電機)は必ず単体で吊ってください。
■外被カバー類との間に,木材または厚布などを当ててください。
電動機(発電機)外被,ワイヤーロープが損傷するおそれがあります。
■電動機(発電機)を吊り上げる時は,質量(※)に見合った運搬器材を使用して
ください。落下,転倒によるけがのおそれがあります。
※銘板または提出図をご参照下さい。
■ワイヤーロープは,力の方向がなるべく垂直になるように,また,十分バランスをとって吊
ってください。
電動機吊り上げ例
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E7091153
4.1 電動機運搬のご注意(つづき)
警告
■輸送保護装置は試運転開始前に取り外してください。
取り外さないで運転すると,電動機が加熱したり輸送保護装置が飛散したりして,火災・け
がの恐れがあります。
また、電動機によっては,直結側だけでなく反直結側にも輸送保護装置が取り付けられて
いますので,試運転開始前に確認し取り外してください。
再輸送のときは輸送保護装置を取り付けてください。
■1.5m(メートル)以上の高所作業は,安全帯を使ってください。
落下事故の原因となります。
■据え付け・保守点検の作業場所をロープなどで区画し,作業者以外の立ち入りを禁止し
てください。
作業者以外が近づくと,感電・けがの恐れがあります。
輸送注意カードの例
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4.2 据付場所のご注意
警告
■使用条件(※)に合ったところに据え付けてください。
据付条件が合わないと,火災・感電の恐れがあります。
※:詳しくは仕様書をご参照ください。
■電動機(発電機)を試運転する前に,軸固定金具を取り外してください。
軸固定金具が飛散し,けがのおそれがあります。
注意
■電動機(発電機)の周囲には可燃物を絶対に置かないでください。
火災のおそれがあります。
■作業場所の周囲はロープなどで区画し,作業者以外の人の立ち入りを禁止してください。
感電,巻き込まれの原因となります。
■1.5m(メートル)以上の高所作業では,安全帯を使用してください。
落下事故の原因となります。
■電動機(発電機)の軸端部のキー溝は,素手でさわらないでください。
けがのおそれがあります。
■電動機(発電機)は,仕様書に記載している使用条件(温度、湿度)を満たした,ほこりの
少ない場所に設置してください。
火災,感電の原因となることがあります。
■電動機(発電機)は,仕様書に記載している使用条件以上の外部振動が伝わってこない
ようにしてください。
破損・部品の緩みなどにより,けがのおそれがあります。
■回転部分に触れないようカバー等を設けてください。
けがのおそれがあります。
■機械との結合前に回転方向を確認してください。
けが、装置破損のおそれがあります。
■電動機(発電機)の周囲には通風を妨げるような障害物を置かないでください。
冷却が阻害され,異常過熱による爆発,火災,やけどのおそれがあります。
■ファンカバー付き電動機(発電機)の場合,ファンカバー吸気口から壁までの距離を 200
mm(ミリメートル)以上確保してください。
冷却不足になり,過熱して焼損するおそれがあります。
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4.2 据付場所のご注意(つづき)
お 願 い
■ 湿気のない場所
■ 塵埃の少ない場所
・ 配管などの漏水の恐れのない場所
・ 塵埃はコイルの絶縁抵抗低下の原因になります。
・ 屋根がガラスまたは金属の類で,水滴が凝縮 ・ 塵埃は潤滑油の汚染,軸受メタルの摩耗など軸受
事故の原因になります。
し,落下する恐れのない場所
・ 床上に据え付ける場合,基礎面より少し高くし,
排水を良くしてください。
■ 保守・点検の容易な場所
■ 通気の良い涼しい場所
・ 周囲温度を40℃または銘板記載温度以内に保 ・将来の分解・点検を考慮し,電動機を引き出し易い
場所
ってください。
・ 周囲温度・冷却媒体温度が仕様値を超える場
所では定格出力で使用できません。
■ 有毒ガスのない場所
■ 外部振動が伝わってこない場所
・ 腐食性ガス・有毒ガスの少ない場所
・他機の振動が,基礎・床面などを伝わってこないよう
にしてください。
・ 爆発性の気体・液体の貯蔵場所の付近も避けて
ください。
■ 電動機設置時の保護装置
■ 電源の電圧変動の少ない場所
・ 運転中の電圧変動や始動時の電圧降下の値 ・ 要求なき場合には,保護装置がついておりませ
ん。
が,仕様書または規格に定められた値以内の場
・ 機器によっては,クリクソンやRTDなどの温度センサ
所
・ 雷による外部サージおよび遮断器操作によるス
ーを設置することを推奨します。
イッチングサージに対し,これらのサージを抑え ・ 保護装置の取り付けが必要な場合は必ず当社に
ご連絡ください。
る保護装置を付けてください。
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5.保守点検について
保守の優劣は電動機寿命に大きな影響を与えます。運転中一定時間ごとに保守点検基準書に基づいて
記録してください。電動機の運転状態を記録しておくことにより,運転状態の変化が正確に把握でき,事故を
未然に防ぐことができます。
危険
■活線状態で作業しないでください。必ず電源を切って作業してください。
感電のおそれがあります。
開放した遮断機に“操作禁止”の札を掛け,作業中の誤操作予防をしてください。
■ネジ・ボルト類は規定のトルク(※)で締め付けてください。
規定のトルクで締め付けないと,部品が飛散したり,配線接続部が加熱して,火災・けがの
恐れがあります。
※:詳細は表4(36ページ)をご参照ください。
警告
■電源ケーブルとの結線は,端子箱内の結線図又は取扱説明書によって実施してくださ
い。
感電,火災のおそれがあります。
■ブラシまわりの保守・点検は、取扱説明書に従い,専門知識のある人が実施
してください。
感電,巻き込まれのおそれがあります。
(巻線形電動機)
注意
■防爆電動機の保守点検の際は,必ず当社に連絡ください。
防爆性能を維持できなくなるおそれがあります。
■修理,分解,改造は,必ず専門家が行ってください。
感電,けが,火災等のおそれがあります。
■作業場所の周囲はロープなどで区画し,作業者以外の人の立ち入りを禁止してください。
感電,巻き込まれの原因となります。
■1.5m(メートル)以上の高所作業では,安全帯を使用してください。
落下事故の原因となります。
■定期的に主端子箱を点検し,腐食,パッキンの劣化が無いことを確認して
ください。
地絡・短絡,端子箱飛散等のおそれがあります。
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5. 保守点検(つづき)
注意
■軸受を分解した状態で火気を使用するときは,次のことを守ってください。
・軸受の潤滑油をぬきとる
・軸受部を損傷しないように養生する
・火気の使用場所を火災にならない場所に限定する
・暖房・喫煙などの火気を近づけない
守らないと火災のおそれがあります。
■電動機(発電機)の周囲には可燃物を絶対に置かないでください。
火災の危険があります。
■絶縁抵抗測定の際は,端子に触れないでください。
感電のおそれがあります。
■ベアリングへのグリース注入,排出時には、給油銘板にしたがって行い,回転体にご注意
ください。
けがのおそれがあります。
■フィルタ付き電動機(発電機)は,定期的にフィルタを掃除してください。
フィルタが目詰まりして,過熱,焼損のおそれがあります。
■ブラシ回りを目視点検するときは,回転部や充電部に接近したり触れたりしないでくださ
い。
感電・けがの恐れがあります。
(巻線形電動機)
6.廃棄について
電動機を廃棄する場合は,専門の処理業者に依頼することを勧めます。その際,処理業者に下記注意
事項を通知してください。
注意
■電動機(発電機)を廃棄する場合は,事前に当社に相談し,指示に従ってください。
加熱処理により,有毒ガスが発生するおそれがあります。
■電動機(発電機)を廃棄する場合は,一般産業廃棄物として処理してください。
■コイルを巻き替える場合は,事前に当社に相談し指示に従ってください。
加熱処理により,有毒ガスが発生するおそれがあります。
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7.その他
部品を交換する場合は、以下の事項を必ずお守りください。
注
意
■ コイルを巻き変える場合は、事前に当社に相談し指示に従うことコイルなどに用いられている絶縁
物は、加熱処理の条件によっては有毒ガスが発生することがあります。
お 願 い
■ 軸受けに装備されている計装品(ダイヤル温度計やサーモカップルなど)を更新する場合は、同
等品をご使用ください。特に、軸受けの計装品には軸電流による軸受けの損傷を防止するために、
絶縁(感温部に絶縁チューブ装着)をおこなっている場合がありますので、その際は必ず絶縁チュ
ーブを装着してください。
■ ブラシが装着されている電動機で、ブラシ材質を変更する場合は、集電性能に影響しますので
当社にご連絡ください。
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危険
■ネジ・ボルト類は規定のトルク(※)で締め付けてください。
規定のトルクで締め付けないと,部品が飛散したり,配線接続部が加熱して,火災・けがの
恐れがあります。
※:詳細は表4をご参照ください。
注意
■電動機(発電機)単体で回転させる場合、主軸に仮付けしてあるキーを取り外してくださ
い。
けがのおそれがあります。
締付ボルト,ナット,ノック類がゆるんでいる箇所がないか点検します。特に指定の無い場合は,表4の締
付トルクで締め付けてください。
表1 ボルト類締結規定トルク
ねじの呼び
基準値
N・m
M5 × 0.8
3.24
2.75
~
3.63
M6
5.49
4.71
~
6.37
M8
13.2
11.3
~
15.3
M10
26.5
22.6
~
30.4
M12
46.1
39.2
~
53.0
M16
110
93.2
~
127
M20
216
181
~
245
(M22)
284
245
~
333
M24
363
314
~
422
M30
735
628
~
843
M36
1280
1090
~
1470
M42
2050
1750
~
2350
M48
3090
2650
~
3520
M56
4950
4220
~
5680
M64
7350
6280
~
8420
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許容範囲
N・m
E7091153
お問い合わせ先
東芝三菱電機産業システム株式会社
大形回転機第二部 品質保証課
〒852-8004 長崎県長崎市丸尾町 6-14
TEL:(095)-864-2480
URL: http://www.tmeic.co.jp/
- 19 -
E7091190
取扱説明書
三相誘導電動機
かご形(ころがり軸受)
本 取 扱 説 明 書 は
必ずエンドユーザー
まで届けて下さい。
東芝三菱電機産業システム株式会社
E7091190
はじめに
三相誘導電動機をご購入いただきありがとうございます。
この取扱説明書は、三相誘導電動機のうち、かご形(ころがり軸受)をご使用いただくための
ガイドを示したものです。(以降、電動機という)
主な内容は、電動機の据付け・運転前点検・保守点検に関する取扱い手順ならびに確認事項で実
際に取り扱う方を対象に説明しています。初めてご使用になる方はもちろん、ご使用いただいた
方も知識や手順を再確認する上でお役に立つものと考えます。
なお、ご採用品と、この取扱説明書との内容の整合については万全を期していますが、電動機の
研究改良等により詳細点で異なる場合がありえます。ご採用品およびこの取扱説明書の内容にご
質問等がありました場合には、ご遠慮なくお問い合わせください。
お願い
この説明書は実際にご使用になる方のお手元に届くよう、お取り計らいください。
エンドユーザあるいは他のユーザに、駆動機と組み合わせて電動機をお渡しにな
るときは、この取扱説明書を添付してください。
ご使用の前にこの取扱説明書をお読みください。
いつも取り出せる場所にこの取扱説明書を保管してください。
本書の内容の一部または全部を無断で転載することは禁止されています。
I
E7091190
安全上のご注意
電動機本体および取扱説明書には、運搬・据付け・保守・点検を行う方やお使いになる方ある
いは関連する他の人に、危害と財産の損害を受けず安全に正しくお使いいただけるよう、重要な
内容を記載しています。
次の内容(表示・図記号)を良く理解してから本文をお読みください。
[表示の説明]
表
示
表
示
の
意
味
危険
誤った取り扱いをすると人が死亡する、または重傷を負う可能性
注意
誤った取り扱いをすると人が障害を負う可能性、または物的損害
があることを示します。
のみが発生する可能性のあることを示します。
[図記号の説明]
図記号
図
記
号
の
意
味
禁止(してはいけないこと)を示します。
具体的な禁止内容は、図記号の中や近くに絵や文章で指示します。
強制(必ずすること)を示します。
具体的な強制内容は、図記号の中や近くに絵や文章で指示します。
危険を示します。
具体的な危険内容は、図記号の中や近くに絵や文章で指示します。
注意を示します。
具体的な危険内容は、図記号の中や近くに絵や文章で指示します。
[免責事項について]
火災、地震、第三者による行為、その他の事故、使用者の故意または過失、誤使用、
その他の異常な条件下での使用により生じた損害に関して、弊社は一切責任を負いま
せん。
電動機の使用または使用不能から生ずる付随的な損害(事業利益の損失、事業の中断
など)について弊社は一切責任を負いません。
取扱説明書で記載した以外の取付け、取扱い方、または使い方によって生じた損害に
関して弊社は一切責任を負いません。
接続機器との組合わせによる誤動作などから生じた損害に関して弊社は一切責任を負
いません。
II
E7091190
[作業者の資格について]
この電動機の据付け・運転・保守は法規(電気設備技術基準、労働安全衛生法など)
に準拠して、公的機関あるいは事業者による所定の教育訓練を受けた有資格者が行っ
てください。
法規で規制されていない作業についても、電動機および作業を理解し習熟している専
門家の指導のもとで行ってください。
危険
■電動機の改造は行わないこと
火災・感電の恐れがあります。改造の必要がある場合は弊社にご連絡いただき
指示に従ってください。
禁止
■電動機の周辺には、取扱者以外の人を近づけないこと
けがや感電の恐れがあります。
■電圧がかかっている電気回路や回転中の回転体には触れないこと
接触禁止
感電の恐れがあります。
■重量表示銘板(*)に記載されている重量に不適合な運搬機材を使用しな
いこと
適合した運搬機材を使用しないと落下してけがをする恐れがあります。
*:仕様書(外形図、または本体貼付けの銘板)に記載
■固定子枠側面の吊りフック以外にワイヤロープを掛けないこと
禁止
複数台の電動機を吊らないこと(単体で吊ること)
これらを守らないと、落下してけがをする恐れがあります。
■吊り荷の下には、絶対に入らないこと
落下するとけがをする恐れがあります。
やむを得ず入る場合は、受け台に吊り荷を乗せてください。
■ワイヤロープは、力の方向が垂直になるように、また、バランスをとって吊
強制
ること
吊りかたが悪いと、落下してけがをする恐れがあります。
■電源ケーブルやモータリード線を無理に曲げたり引っ張ったり挟み込んだり
しないこと
禁止
感電・火災の恐れがあります。
III
E7091190
つづき
危険
■適切なケーブルサイズを使用すること
過熱等による火災が発生する恐れがあります。
■ 電動機は、仕様書に記載している使用条件(温度、湿度他)に適合した場
所に設置すること
火災・感電の恐れがあります。仕様書で使用条件を確認してください。
強制
■本体表面や端子部などに触れるときは、電源を切ること
活線中での作業は感電の恐れがあります。
■試運転前に、輸送保護装置を取り外すこと
また試運転時に、主軸に仮付
けしてあるキーを取り外すこと
破損したり過熱焼損して火災・感電の恐れがあります。
■耐電圧試験中の電動機に近づかないこと
禁止
また、耐電圧試験を受けた巻線
は放電させ、それまでは手を触れないこと
感電の恐れがあります。
■耐電圧試験で、電圧印加しない巻線はすべて接地すること
強制
接地しないと感電の恐れがあります。
■電源側に接地リレーなどの適切な保護リレーを取り付け、電動機に付属し
ている接地端子をアースすること
強制
接地しないと、漏電したとき感電の恐れがあります。
■ 運転中、回転体へは絶対に接近、または接触しないこと
禁止
巻き込まれ・けがの恐れがあります。
■ 機械側と直結するカップリング部分には、巻込み・跳返りおよび飛散防止
のカバーを設置すること
巻き込まれ・けがの恐れがあります。
■仕様書・規格・定格銘板等に定められた出力・電流・電源電圧・周波数・
回転速度・運転時間内で運転すること
守らないと破損、焼損により、けがや火災の恐れがあります。
■他力通風冷却の場合、電動機通電前に他力通風機の電源を入れておくこと
強制
また、スペースヒータは電動機停止時に通電のこと
守らないと過熱し、火災の恐れがあります。
■空気冷却器付の場合、冷却器規定の冷却水温・流量の水を流してから電動機を運転すること
過熱し火災の恐れがあります。
■据付け・保守点検時には、長袖作業服・安全帯・保護メガネなど定められ
た保護具を着用すること
着用しないと巻き込まれや感電などの恐れがあります。
IV
E7091190
つづき
危険
■蓋・カバー類を含む保護器具・安全装置を外したり、その機能を停止させ
たまま運転しないこと
禁止
けがや火災の恐れがあります。
■作業を開始する前に、電動機に接続されている全ての電源を遮断すること
感電の恐れがあります。
■1.5メ-トル以上の高所作業では、安全帯を使用すること
落下事故の恐れがあります。
強制
■ 作業場所の周辺はロ-プなどで区画し作業者以外の人の立ち入りを禁止す
ること
感電、巻き込まれの恐れがあります。
■日常および定期の保守点検を行うこと
保守点検をしないと、故障・異常を発見できず火災・感電の恐れがあります。
注意
■電動機の周囲に可燃性のものを置かないこと
発火し焼損する恐れがあります。
禁止
■電動機に外部振動が伝わってこないようにすること。
破損、部品の緩みなどにより、けがの恐れがあります。
■回転方向が外形図または銘板で指示してある回転方向と一致していること
電動機付属の回転方向銘板が一方向を示している場合は逆回転できません。
誤接続などにより逆回転すると、電動機が過熱損傷します。
■軸受を分解した状態で火気を使用する場合は、次の事項を守ること
・軸受の潤滑油を抜き取ること
強制
・火気に対して軸受部を養生すること
・火気の使用場所を火災の危険性のない場所に限定すること
・暖房・喫煙など一般火気を近くで使用しないこと
引火する恐れがあります。
■フィルタが装着されている電動機は、定期的にフィルタを掃除すること
フィルタが目詰まりすると、過熱して焼損、火災の恐れがあります。
■電動機内部に異物または聴診棒のような棒状の物を入れないこと
禁止
聴診棒を使用した振動・音響調査時は回転部に触れないこと
破損やけがの恐れがあります。
V
E7091190
つづき
注意
■絶縁測定後は必ず放電させ、それまでは手を触れないこと
感電の恐れがあります。
禁止
■運転中は、電動機外皮に身体を直接触れないこと。
運転中は電動機が高温になり、火傷の恐れがあります。
■停電時は、スイッチを切ること
強制
突然復帰して思わぬ事故を起こす恐れがあります。
■機械加工、プレス加工された部品に触れるときは軍手などを使用のこと
鋭利な部分があり、使用しないとけがの恐れがあります。
■ ボルト類締付けは、特に指定がないかぎり表1(16ページ)の規定トル
クで締め付けること
規定トルクで締め付けないと、緩んで破損したり接触不良で過熱し火災の恐れ
があります。
強制
■コイルを巻き替える場合は、事前に弊社にご連絡いただき指示に従うこと
コイルなどに用いられている絶縁物は、加熱処理の条件によっては有害ガスが
発生することがあります。
■廃棄するときは専門の廃棄処理業者に依頼するか、弊社にご連絡いただき
指示に従うこと
廃棄処理業者により処理しないと環境破壊の恐れがあります。
VI
E7091190
[本体警告表示ラベルの確認]
指定箇所に本体警告表示ラベルが貼り付けられていることをご確認ください。
もし、ラベルが紛失していたり汚損により見にくいときは、弊社にご連絡(62ページ)くださ
い。(指示ラベルも含みます)
図1 警告表示ラベルの取付け位置と例
VII
E7091190
目 次
題目
ページ
はじめに
…………………………
Ⅰ
安全上のご注意
…………………………
Ⅱ~VI
1.銘板の見かた
…………………………
3
■
形式、枠番号
……………………………
3
■
極数、定格回転速度、定格周波数
……………………………
3
■
定格出力、定格電圧、定格電流
……………………………
4
■
二次電圧、二次電流
……………………………
4
■
定 格
……………………………
4
■
最高冷媒温度、標高
……………………………
4
■
絶縁耐熱クラス
……………………………
4
■
保護方式、冷却方式、規格
……………………………
4
■
製造番号、製造年
……………………………
4
2.受入れ時の確認事項
…………………………
5
3.据付けのしかた
…………………………
6
3.1 運搬のしかた
……………………………
6
3.2 据付け場所の選びかた
……………………………
7
3.3 基礎の設計施工のしかた
……………………………
8
3.4 芯出しのしかた
……………………………
8
3.5 モルタルの流し込みかた
……………………………
9
3.6 軸電流防止装置について
……………………………
10
3.7 配管のしかた
……………………………
10
4.配線
…………………………
11
4.1 配線要領
……………………………
11
4.2 接地(アース)
……………………………
11
4.3 インバータ駆動時の注意事項
……………………………
11
4.4 Y-Δ始動方式の注意事項
……………………………
13
5.試運転前の準備点検
…………………………
14
5.1 絶縁抵抗測定
……………………………
14
5.2 各種配線の点検
……………………………
14
5.3 接地線の点検
……………………………
14
5.4 軸受点検
……………………………
14
5.5 耐電圧試験
……………………………
15
5.6 固定部点検
……………………………
16
1
E7091190
6.試運転時の点検確認
…………………………
17
7.通常運転時の実施事項
…………………………
18
7.1 始動時の確認事項
………………………………
18
7.2 運転中の確認事項
………………………………
18
8.保管のしかた
…………………………
19
9.保守・点検
…………………………
21
9.1 点検の内容
……………………………
21
9.2 定期点検の周期
……………………………
22
9.3 主要点検項目
……………………………
22
9.4 点検後の試運転確認事項
……………………………
23
10.軸受の保守
…………………………
29
10.1 正規運転前の実施、確認の事項
……………………………
29
10.2 ころがり軸受の保守点検
……………………………
29
10.3 潤滑剤の選択と使いかた
……………………………
35
10.4 軸受の故障診断と対策のしかた
……………………………
38
10.5 ころがり軸受の分解・組立のしかた
……………………………
43
10.6 ころがり軸受の構造図
……………………………
47
11.保守、点検のための正しい知識
…………………………
49
11.1 電動機の始動頻度について
……………………………
49
11.2 電動機の温度上昇について
……………………………
50
11.3 電動機の絶縁抵抗について
……………………………
51
11.4 電動機の振動について
……………………………
51
11.5 電動機の騒音について
……………………………
55
11.6 電源変動の影響について
……………………………
57
11.7 電源電圧不平衡の影響について
……………………………
58
12.電動機の故障診断と対策のしかた
…………………………
59
13.修理・廃棄
…………………………
61
13.1 修理等について
……………………………
61
13.2 廃棄について
……………………………
61
お問い合わせ先
…………………………
2
62
E7091190
1.銘板の見かた
電動機は、準拠する規格で決められた必要事項を、銘板に表示するように義務づけられていま
す。この銘板を定格銘板といいます。代表的な定格銘板を図2に示します。
三相誘導電動機
定格出 力
形式
定格電 圧
定格電 流
定格周 波数
定格回 転速度
二次電 圧
二次電 流
kW
V
A
Hz
min
V
A
-1
保護方 式
冷却方 式
製造番 号
極数
枠番 号
絶縁 耐熱クラス
定格
最高 冷媒温度
規格
℃
軸受 番号 負 荷側
反 負荷側
製造 年
N 東芝三菱電機産業システム株式会社
図2
定格銘板
定格銘板以外に、必要に応じて補助的な銘板を取り付けてありますので、確認のうえご使用く
ださい。以下に定格銘板の見かたを説明します。
■
形式、枠番号
電動機の電気的および機械的特徴を表すものとして当社で定めた記号を記載します。
■
極数、定格回転速度、定格周波数
固定子コイルのN、Sの極数を極数Pで示します。電源周波数がfHzであると1分間の回転
速度Nmin-1は次のようになります。
N=
120×f
P
min-1
ご使用のときは電源周波数と銘板記載周波数を合わせてください。
定格負荷をかけた場合、回転子の1分間の回転速度はほぼ定格銘板の値となります。
3
E7091190
■
定格出力、定格電圧、定格電流
出力は電動機が連続して出し得る最大の軸出力(P)をkWで示したものです。電圧は電源電圧
の値でボルト(V)で示します。電流は定格電圧、定格周波数のもとで定格負荷をとった時の電
流値で、アンペア(A)で示します。これら3者の間は電動機の力率(pf)と効率(η)を%
で示すと次の式で表せます。
3・V・I×η×pf
P=
(kW)
10
7
ご使用のときは電源電圧を銘板記載値に合わせてください。出力、電流は銘板記載値以内で運転
してください。
■
二次電圧、二次電流
巻線形回転子を持つ電動機のときに記載します。
二次電流は定格電圧、定格周波数のもので定格負荷をとった時の回転子電流でアンペア(A)で
示します。二次電圧はボルト(V)で示し、始動時の最大値を記載します。
銘板記載値以内で運転してください。
■
定
格
定格負荷の種類を示します。無記入の場合は連続使用できます。時間、分で数値が記入されてい
るものは銘板記載時間のみ運転できます。後者では、コイル温度が周囲温度まで冷却してから再
運転することが必要です。
■
最高冷媒温度、標高
無記入の場合は、冷媒温度は40℃以下、標高は1000m以下で使用できます。
■
絶縁耐熱クラス
絶縁の種別を示します。温度上昇値は測温方法によって異なりますので準拠する規格を参照して
ください。(JEC-2137)
■
保護方式、冷却方式、規格
「保護方式」は、IPXXのように記入されており、1桁目は人体および固形異物に対し、2桁
目は水の浸入に対しての保護形式を示しています。
「冷却方式」はICXXのように記入されます。詳細は規格を参照してください。
「規格」は準拠する規格を示しますがJEC-2137が標準です。
■
製造番号、製造年
製造番号は各々の機械固有のもので、その番号で機械の記録が探し出せるようになっています。
製造年は製品が完成した年を記入します。
4
E7091190
2.受入れ時の確認事項
次の事項を確認してください。
(1)
納入品に送品案内が別送されています。確認してください。
(2)
損傷しないよう開梱し、変色、変形、外傷がないか確認してください。
(3)
銘板に記載してある電動機の出力、電圧、周波数、形式などが、ご要求のものと一致し
ていることを確認してください。
(4)
電動機の軸受部分は輸送中、保護装置を取り付けてある場合があります。添付の「電動
機の輸送」ラベルの記載事項に従い取り外してください。
(5)
電動機全体を注意深く点検し、損傷個所、錆の生じた箇所、汚損箇所、異物の侵入がな
いことを確認してください。
点検の際、不明点がありましたら、当社までご連絡ください。
★ご連絡していただきたい事項:
銘板記載の定格(形式、極数、出力、電圧、周波数)
製造番号(銘板に刻印があります)
ご不審の内容
5
E7091190
3.据付けのしかた
3.1
運搬のしかた
危険
■ ワイヤロープは、力の方向が垂直になるように、また、バランスをとって吊る
こと
強制
吊りかたが悪いと、落下してけがをする恐れがあります。
■重量表示銘板(*)に記載されている重量に不適合な運搬機材を使用しない
こと
適合した運搬機材を使用しないと落下してけがをする恐れがあります。
*:仕様書(外形図、または本体貼付けの銘板)に記載
■固定子枠側面の吊りフック以外にワイヤロープを掛けないこと
禁止
複数台の電動機を吊らないこと(単体で吊ること)
これらを守らないと、落下してけがをする恐れがあります。
■吊り荷の下には、絶対に入らないこと
落下するとけがをする恐れがあります。
やむを得ず入る場合は、受け台に吊り荷を乗せてください。
電動機を移動させるときは、本体の大きさ、質量、梱包状態等に留意し、特に次の事項を守り
作業を進めてください。なお、運搬・移動でのクレーンの使用および玉掛け作業は、公的機関あ
るいは事業者による所定の教育訓練を受けた有資格者の方が行ってください。
電動機を吊り上げて移動させるときは、固定子枠側面の吊りフックを使用し、安定した状
態で吊り上げること
吊り上げたワイヤ角度は垂直線から30度以下になるようワイヤ長さとすること
重量表示銘板に重量が記載されています。ワイヤロープ等運搬機材を使用すること
吊上げワイヤで電動機本体を損傷しないよう外被カバー類との間には、木材または厚布な
どを当てること
お願い
電動機には輸送中の保護のため軸固定金具を付けてある場合があります。運転の際は、
「電動機の輸送」ラベルの記載事項に従って、取り外してください。また再輸送される
場合は、軸固定金具を取り付けてください。
油潤滑方式の場合、必ず潤滑油を抜いて輸送してください。
6
E7091190
3.2
据付け場所の選びかた
危険
■ 電動機は、仕様書に記載している使用条件(温度、湿度他)に適合した場所
強制
に設置すること
火災・感電の恐れがあります。仕様書で使用条件を確認してください。
以下に述べる条件を満たす設置場所をお選びください。、受入れや保管時など一時的に仮置きす
る場合も、同じ環境を確保してください。
なお、据付け作業の高さが2m以上になる場合にはプラットフォーム取付けが義務づけられてい
ます。該当する場合はプラットフォームの設置スペースを確保し取付けを行ってください。
■湿気のない場所
・配管などの漏水の恐れのない場所
・屋根がガラスまたは金属の類で、水滴が凝縮し、落下する恐れのない場所
・床上に据付ける場合、基礎面よりいくぶん高くして、排水を良くすること
■じんあいの少ない場所
・じんあいはコイルの絶縁抵抗低下や潤滑油の汚染、軸受メタルの摩耗など軸受事故の原因
になります。
■通気の良い涼しい場所
・周囲温度を40℃または銘板記載温度以内に保つこと
周囲温度・冷却媒体温度が仕様値を超える場所では定格出力で使用できません。
■保守・点検の容易な場所
・将来の分解・点検を考慮し電動機を引き出しやすい場所
■有害ガスのない場所
・腐食性ガス・有毒ガスのない場所
・爆発性の気体・液体の貯蔵場所の付近も避けること
■外部振動が伝わってこない場所
・他機の振動が、基礎・床面などを伝わってこないようにすること
■電源の電圧変動の少ない場所
・運転中の電圧変動や始動時の電圧降下が、仕様書または規格に定められた値以内のこと
・雷などの外部サージおよび遮断器操作によるスイッチングサージに対し、これらのサージ
を抑える保護装置を付けること
お願い
ご要望がない場合は保護装置がついておりません。機器によっては、サーモスタット
やRTDなどの温度センサーを設置することをおすすめします。
保護装置の取付けが必要な場合は当社にご連絡ください。
7
E7091190
3.3
基礎の設計施工のしかた
基礎の設計施工には土木工学の専門知識が必要です。特に以下の事項に留意してください。
(1) 電動機の静荷重、動荷重をもとに、機械振動に耐えるようにする。
据付け剛性(固有振動数)のお願い:
①回転数のn成分の±10%、と②電源周波数fの2倍±5%、を離調して据付けのこと
(2) 地盤の沈下・しゅう動・浮動・回転などがないよう、基礎底面積・形状・重量などを考慮
する。地盤の悪い場合は杭打ちなどを行ない、荷重に耐える設計とする。
地盤の支持力は考慮しないのが普通です。
(3) 基礎に通風ダクトを設けて冷却風を吸い込むときは、壁面から地下水が漏れないように
する。水漏れがあると電動機内部に湿気を吸い込んでコイルの絶縁を劣化させます。
(4) コンクリート面は、むしろ・布・砂などでおおって散水し、少なくとも夏期で1週間、冬
期では2週間、常に湿潤状態を保ち養生する。
コンクリートは打設後約4週間、特に最初の1~2週間に急激に強度を増大します。この
期間のコンクリート面の養生は重要です。
(5) 基礎ボルト埋込み用穴には、異物を落とさないよう蓋をする。
(6) 基礎の上面を水平に仕上げる。
(7) ベース芯出し、据付け後のモルタルと基礎との密着をよくするために、基礎表面より約
50mm ハツリ、表面にでこぼこを造るとともに、基礎の強固な膚を出しておくようにする。
3.4
芯出しのしかた
基礎が固まった後、据付けで最も重要な芯出し作業を行います。
芯出し作業は電動機の構造によって異なりますが、ここでは標準的な軸受ブラケット形の電動機
の場合の芯出し作業を示します。すでに負荷機械が据付け完了している場合は、負荷機械のカッ
プリングを基準にして芯出しを行います。次の手順で作業を進めてください。
3.4.1
軸中心調整
(1) 電動機側のカップリングにダイヤルインジケータを取り付ける。(図3参照)
(2) カップリング部を使って電動機の回転子を静かに回しながら、アライメントが 0.025mm 以
下になるように軸中心を合わせる。(本数値は、リジットカップリングの値である。)
なお、相手機械の種類により異なる場合もありますので、相手機械製作者とも打ち合わせ
て実施してください。
負荷側
電動機側
ダイヤルインジケータ
図3
カップリング基準の芯出し法
8
E7091190
3.4.2 ギャップ調整
(1) カップリング面間のギャップをシックネスゲージなどで測定し、アライメントが 0.025mm
以下を目処にできるだけ均一になるよう調整する。
(本数値は、リジットカップリングの値である)
なお、大形機や高速機では回転子のたわみや危険速度と運転速度の関係などで、
・ジャーナル部での水平度やカップリング部での2軸中心位置
・カップリング両面のすき間などの調整
に、特殊な考慮を払うなど高度の技術を要しますので、個々の場合について当社技術者ある
いは機械製作者の技術指導をおすすめします。
3.5
モルタルの流し込みかた
芯出しが終り、電動機各部が定位置に据え付けられ、締付けボルトの締付けが終了したら、
ベースの下部および内部基礎ボルト埋込穴などにモルタルを流し込みます。
このとき次の諸点に留意してください。
(1) 基礎工事のコンクリート面を清浄し、面にでこぼこをつけモルタルを密着させる。
(2) モルタルづめの部分に空間が生じないように、よく突きながら入れる。
(3) モルタルづめの作業中、誤ってパッカやサブパッカを動かさないようにする。
(4) モルタルづめの後は基礎工事に準じて養生する。
期間は夏期で1週間以上、冬期で2週間以上要します。
コンクリート硬化後、次の事項を実施してください。
地形ボルトを増締めし、芯出し記録をチェックし異常の無いことを確認する。
確認後、フロアプレート・配管などを組み立て、固定子脚にノック穴がある場合は、これ
をガイドにしてリーマ通しを行う。
電動機によって試運転再調整してからノックを打つこともあります。
9
E7091190
3.6
軸電流防止装置について
電動機によっては軸電流防止装置を施してあります。軸電流防止装置が取り付けられている位
置は、図4に示すとおり一般には反負荷側の軸受部です。
したがって、両軸の場合にはカップリング部にて絶縁を施す必要があります。
電動機
相手機械
絶縁
絶縁
電動機
回転計発電機
相手機械
絶縁
絶縁
電動機
電動機
相手機械
図4
3.7
軸電流防止装置の位置
配管のしかた
貴社で配管を設計工事されるときは、次の事項にご留意ください。
排油管は外形図指定の太さ、またはそれ以上の太さのものを使用し、急激に落として落差
を大きくとる。
貯油槽までの本管も径の大きい管を使用して、1/30~1/50 の傾斜をつける。
給油・給水管には圧力計・流量計を取り付け、排油・排水管にはオイルサイト・ウォータ
ーサイトを取り付け、常に流体の圧力・流量を点検できるようにする。
配管はなるべく機体に沿って行い、支持金具で固定する。
10
E7091190
4.配線
4.1 配線要領
配線は優良な配線器具を使い、電気設備技術基準及び内線規定に従ってください。特に配線距離の長い
ときは電圧降下が大きくなり電動機の始動に支障を来たすことがありますので注意してください。
電動機の絶縁の種類は銘板に表示してあります。F種絶縁など高温絶縁材料を使用した電動機では端子
箱の温度も比較的高温となるので、使用する配線用ケーブルや絶縁テープは耐熱性の高い材料を使用し
てください。
4.2 接地(アース)
電動機の絶縁物は、絶縁体であると同時に誘導体でもあります
ので、電動機は大地間に静電容量を有します。そのために接地
をしていないときは、固定子枠と大地間に、この静電容量に比
例して、電源電圧の 50~60%位の誘起電圧を生じることがあり
ます。したがって、感電による事故を防ぐため、電動機には必
ず、電気設備技術基準により、接地工事を行なってください。
電動機の端子箱又は固定子枠などに接地用ねじ又は端子がつ
いておりますのでこれを使用してください。
区 分
1
2
3
4
1000kW 超過
750kW超過~1000kW
300kW 超過~ 750kW
37kW 超過~ 300kW
アース線
(mm2)
100
80
60
38
4.3 インバータ駆動時の注意事項
高速スイッチングを行うインバータのコモン・モード電圧が、電動機や機械(減速機を含む)浮遊容量に
印加されると、軸受の電食に至る可能性が考えられます。
上記要因による電食を防止する観点から、下記の点に注意してください。(図5参照)
(1)インバータと電動機間の主回路ケーブルは最短経路で配線し(L分の低減)、
極力 3 芯(U、V、W)一括のケーブルを使用してください。(浮遊容量の低減)
(2)インバータのアース線は最短経路で配線してください。(L分の低減)
(3)電動機のアース線は最短経路で配線してください。(L分の低減)
また、十分に低インピーダンス※の接地極に接続願います。
※機械側の接地(通常は建屋のアース)インピーダンスと同等、またはそれ以下。
(4)電動機と機械(減速機を含む)が別々の台床に設置されている場合には、電動機のア―ス
と機械のアースを追加配線し、各々の台床を電気的に接続してください。
※追加するコモンアース線は、
・高調波特性の良い平網線を使用する。
・電動機のアース線と同様、もしくはそれ以上の太さとする。
・最短経路で、2 条以上で配線する。(1000kW超過時は 3 条)
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図6 アース線の接続(台床が共通な場合)
図5 アース線の接続
注1)
電動機と機械(減速機を含む)間の接続に「絶縁カップリング」を使用する対策も有効です。
但し、大容量機では強度的問題で採用不可の場合があります。
12
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5)アースブラシ(取り付いている場合)
・はたらき
インバータ電源等で電動機を駆動すると静電誘導により、軸とアース間に軸電圧を発生します。
その大きさは電動機の容量やインバータ等の種類によっても異なりますが大きい場合には、軸
受がその流れる電流により損傷する事があります。それを防止する為、当社ではインバータ電
源で駆動の電動機を対象にアースブラシを取付け、軸受に流れないように電流をブラケット(ア
ース)に落とす対策をとることがあります。
アースブラシ部では電気火花が出る可能性がありますのでご注意願います。
・取付け要領
アースブラシは、一般的に電動機連結側ブラケットに取付けています。
再取付等の際は、電動機と負荷機械を切り離した後取付け願います。
・メンテナンス要領
アースブラシの磨耗は周囲環境や運転時間などにより異なりますので、1~2 ケ月毎の
定期点検時、点検を実施ください。
電動機本体に図6の「アースブラシ点検要領」注意銘板を取付けておりますように
ブラシが20mmまで磨耗した場合を使用限度としております。
・交換
ブラシを新しく交換する際は材質によっては性能が異なる為 当社までご連絡ください。
図6 アースブラシ点検要領銘板
4.4 Y-△始動方式の注意事項
電動機が休止中、中性点を切ったのみで常時電圧が印加され、塵埃、高湿度の環境に設置されている
場合、絶縁を劣化させ損傷する場合もありますので、下記の点に注意してください。
(1)Y-△始動器の選定にあたっては、一次側電磁開閉器付のものを選定し、
電動機停止中の電動機巻線への電圧印加を防止してください。
(2)一次側電磁開閉器を使用しない場合、電動機停止時には必ず電源側開閉器を開路してください。
(3)高圧のY-△始動の場合は開閉機(特に真空開閉器)の投入・遮断時及びY-△切替時の
サージ電圧を抑える保護装置を取り付けてください。
13
E7091190
5.試運転前の準備点検
電動機は工場試験に合格したものですが、輸送中の思わぬ事故や長期保管後の場合、その影響な
どが考えられますので、以下の項目を再確認してください。
5.1
絶縁抵抗測定
電動機の定格電圧が 600V 未満の時は 500V メガー、
600V 以上では 1000V メガーを使用します。
絶縁抵抗値については、11.3項(51ページ)を参照してください。
5.2
各種配線の点検
配線図と照らし合わせて電源関係、保護装置関係の配線を点検し、併せて各接続部の締付け
具合、絶縁ならびに電気的に接触してはいけない箇所の間隔を点検します。
危険
■適切なケーブルサイズを使用すること
強制
過熱等による火災が発生する恐れがあります。
■電源ケーブルやモータリード線を無理に曲げたり引っ張ったり挟み込んだりしな
禁止
いこと
感電・火災の恐れがあります。
■電源側に接地リレーなどの適切な保護リレーを取り付け、電動機に付属して
強制
5.3
いる接地端子をアースすること
接地しないと、漏電したとき感電の恐れがあります。
接地線の点検
接地端子がステータフレームと端子箱に付いていますから、外形図と照合して指定位置に完全
に接続してあるか点検してください。
5.4
軸受点検
電動機の仕様書および外形図に記載されている軸受冷却方式にしたがって点検してください。
軸受冷却方式の記載がないものは自然冷却方式です。
自然冷却方式のうち、ころがり軸受ではグリース潤滑、油浴潤滑ではオイルリングによる油潤
滑を行うものです。
自然冷却方式(グリース潤滑方式)
グリースは出荷時に充填してありますが、場合によって補給を要します。軸回り、油切り、
ブラケット等のまわりにグリースが漏れていないか点検してください。
自然冷却方式(油浴潤滑方式)
電動機停止中に、潤滑油をオイルゲージに指定されているレベルまで入れます。
油がレベルより多い時は油漏れ、少ない時は温度上昇増大の原因となります。
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5.5
耐電圧試験
危険
■耐電圧試験中の電動機に近づかないこと
また、耐電圧試験を受けた巻線は
放電させ、それまでは手を触れないこと
禁止
感電の恐れがあります。
■耐電圧試験で、電圧印加しない巻線はすべて接地すること
強制
接地しないと感電の恐れがあります。
耐電圧試験は、絶縁抵抗を測定し規定値以上であることを確認後、実施してください。
以下の事項を守り実施してください。
試験電圧は、以下に規定する実効値で、高調波を含まず要求された電圧まで可変なものをご
使用ください。
印加電圧は 1000V/秒の割合で規定値まで上げ規定の時間に到達後、すばやくゼロに戻して
ください。電圧可変な印加装置を用い、スイッチを用いて全電圧をオンオフしないでくだ
さい。
同じ定格電圧の端子はまとめて結び、この結んだ端子と大地間に規定電圧を印加してくださ
い。電圧印加しない巻線は、すべて接地してください。
あるひとつの相または、ある巻線の1部分について耐電圧試験を行うときは、その相あるい
は1部分の末端を完全に切り離し、それぞれの端子をまとめて大地間に電圧を印加してくだ
さい。他のすべての相、巻線は接地しておいてください。
耐電圧試験電圧の規定については、電気設備技術基準を参照してください。
電気設備技術基準、第1章、第3節、第15条
回転機および整流器の絶縁耐力
第15条
発電機、電動機、調相機、その他の回転機(回転変流機を除く)はその最大使用電圧に従
い、下記の各号の試験電圧でその巻線と大地との間の絶縁耐力を試験し連続して10分間
これに耐えるものでなければならない。
最大使用電圧が 7、000 ボルト以下のものは最大使用電圧の 1.5 倍
最大使用電圧が 7、000 ボルトをこえるものは最大使用電圧の 1.25 倍
(試験電圧が 10、500 ボルト未満となる場合は 10、500 ボルト)
500 ボルト未満となる場合は 500 ボルトとする
なお、上記耐電圧試験電圧は電動機が新品の場合の規定値であり、本格点検等の後に耐電
圧試験を行う場合は、電圧値について検討する必要があります。
15
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5.6
固定部点検
危険
■電源ケーブルやモータリード線を無理に曲げたり引っ張ったり挟み込んだりしな
いこと
禁止
感電・火災の恐れがあります。
注意
■ボルト類の締付けは、指定がないかぎり規定トルクで締め付けること
規定トルクで締め付けないと、緩んで破損したり接触不良で過熱し火災の恐れ
強制
があります。
取付け穴サイズに応じて下表のねじサイズが適用されます。
締付けボルト・ナット・ノック類が緩んでいる箇所がないか点検してください。
特に指定がないかぎり下表のねじサイズに応じた締付けトルクで固定してください。
表1
ねじサイズ
M6
M8
M10
M12
M16
M20
M24
M30
M36
M42
規定トルク
締付けトルク(N・m)
標
5.49
13.2
26.5
46.1
110
216
363
735
1280
2050
準
許容範囲
4.71
11.3
22.6
39.2
93.2
181
314
628
1090
1750
~ 6.37
~ 15.3
~ 30.4
~ 53.0
~ 127
~ 245
~ 422
~ 843
~ 1470
~ 2350
取付け穴標準サイズ
(電動機脚部)
φ14.5
φ18.5 または 19
φ24
または 25
φ28
または 29
φ35
または 36
φ42
または 43
φ48
お願い
作業時、電動機の上に乗ったり、足をかけたりしないでください。
電動機の上部あるいは近辺で工事を行うときは電動機全体を覆い工具などによる
損傷、塵埃による汚損防止をお願いします。
16
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6.試運転時の点検確認
危険
■ 試運転前に、輸送保護装置を取り外すこと
また試運転時に、主軸に仮付
けしてあるキーを取り外すこと
破損したり過熱焼損して火災・感電の恐れがあります。
■ 機械側と直結するカップリング部分には、巻込み・跳返りおよび飛散防止
のカバーを設置すること
強制
巻き込まれ・けがの恐れがあります。
■本体表面や端子部などに触れるときは、電源を切ること
活線中での作業は感電の恐れがあります。
■通風冷却機を運転してから電動機を運転すること(他力通風冷却式電動機)
■規定の冷却水温・流量の水を流してから電動機を運転すること(空気冷却器付電動機)
過熱し火災の恐れがあります。
■電圧がかかっている電気回路や回転中の回転体には触れないこと
接触禁止
感電の恐れがあります。
■蓋・カバー類を含む保護器具・安全装置を外したり、その機能を停止させ
禁止
たまま運転しないこと
けがや火災の恐れがあります。
注意
■回転方向が外形図または銘板で指示してある回転方向と一致していること
強制
電動機付属の回転方向銘板が一方向を示している場合は逆回転できません。
誤接続などにより逆回転すると、電動機が過熱損傷します。
初回運転時は中間軸等も外して電動機の単独運転をし、異常のないことを確認してから相手機械
と直結し、運転を行います。なお試運転を含めた通電時には、端子箱の蓋を取り付けてください。
次の点検、確認を行ってください。
(1) 電源電圧を測定し、三相平衡しているか、電動機の定格電圧にほぼ合っていることを確認
する。
(2) 電動機を始動する場合、相手機械は無負荷にしておき、始動直後いったん電源(寸動運転)
を切って、慣性により回転している間に次の点検を行う。
外形図または銘板で指示してある回転方向と一致しているか。
軸受のオイルリングは回っているか。
異常音・異常振動がないか、絶縁物のこげるにおいはないか。
(3) (2)項の点検で異常が無ければ再度始動し、軸受温度・振動・エンドプレー・オイルリ
ングの回り具合を点検する。
(4) 軸受温度が一応飽和するまで無負荷運転を継続し、異常がないことを確認してから全負荷
運転に入る。
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7.通常運転時の実施事項
危険
■仕様書・規格・定格銘板等に定められた出力・電流・電源電圧・周波数・回
転速度・運転時間内で運転すること
守らないと破損、焼損により、けがや火災の恐れがあります。
■他力通風冷却の場合、電動機通電前に他力通風機の電源を入れておくこと
強制
■空気冷却器付きの場合、規定の冷却水温・流量の水を流してから電動機を運転すること
また、スペースヒータは電動機停止時に通電のこと
守らないと過熱し、火災の恐れがあります。
7.1
始動時の確認事項
(1) 始動条件が確立していることを確認してください。
軸受が強制給油の場合、給油されていること。
始動装置を使用する場合は、始動条件で回路ができていること。
(2) 通常の始動状況であることを確認してください。
始動電流、始動時間
(3) 始動失敗のときは始動頻度の条件にしたがってください。
詳細は、 「11.1
電動機の始動頻度について」(49ページ)を参照してください。
お願い
再始動可能な場合でも、電源断後すぐ再始動すると、誘起電圧が残り異常な始動電流が
流れ、モータ損傷の可能性があります。電源を切った後10秒は待ってください。
(4) 2週間以上の長期停止後の再始動は次の点を確認してください。
モータ回路の絶縁抵抗測定
11.3項に記載した値に満たないときは、スペースヒータ等で乾燥し、絶縁抵抗が回
復した後再始動する。
軸受の油面が指示位置であること。
始動時音・振動・オイルリングの回り具合が今までどおりであること。
表3(23,24ページ)の日常点検を行う。
(5) 始動異常
表14(59、60ページ)でチェックしてください。原因、状況がつかめないときは当社
へ連絡してください。
7.2
運転中の確認事項
運転中は表3(23,24ページ)により点検し異常のないことを確認してください。
18
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8.保管のしかた
(1) 短期保管の場合
電動機をすぐに据え付けずに、荷造りされたままある期間(6ヶ月未満)保管する場合は、
次の事項を実施してください。
屋内の風通しのよい乾燥した所で、直射日光を受けず、激しい気温変化のない場所に保管し
てください。温度の高い場所に保管すると、気温が低下したような場合に金属表面に湿分が
結露し錆を生じる原因になることがあります。
荷解き後、据付けから運転までの保管には、湿気・異物・小動物の侵入、外傷などを防止す
るための保護を行ってください。電動機の巻線は、保管中吸湿により絶縁抵抗が低下したり、
鉄心・端子箱・その他の金属表面に湿分が結露し、錆を発生することがありますので注意す
る必要があります。
グリース潤滑方式のころがり軸受にはグリースが封入してありますが、油浴潤滑方式のころ
がり軸受には潤滑油が入っていません。軸受箱内に錆が発生しないように外形図または銘板
に指示された潤滑油が常に覆っているようにしてください。
発錆を嫌う金属表面、特に機械加工面には、工場出荷時に錆止め塗料・防錆油あるいはグリ
ースが塗ってありますが、これらの部分の防錆塗料が剥げた跡がある場合には、錆や湿気を
完全に取り除いてから、錆止め塗料を塗り直してください。
電動機にスペースヒータが付属されている場合は、ヒータの電源を入れてください。
お願い
スペースヒータに電源をいれるとき、電圧やスペースヒータ周りに異物がないこと等
を確認してください。
電源入後数時間は異常加熱していないかチェックしてください。
(2) 長期保管の場合
目安として6ケ月以上の保管、あるいは運転停止される場合がこれに該当します。この場合は
短期保管と同様の処置を行い、さらに表2(20ページ)の処置が必要になります。
この表は電動機の品質維持のための標準的な処置を示したもので、電動機の機種・接地場所等
によって異なってきますので、長期保管の場合は当社へご相談ください。
なお、運転前の最終点検・処置・調整等には専門的な知識と技術を必要としますので、電動機の
運転前には当社技術者の派遣を要請されることをおすすめします。
19
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表2
交流電動機組立品の長期保管形態と品質維持方法
内容
部
品名
品質維持適用基準
保管
場所
保管形態
1) ポリエチレン
シートにて全
体を包装の上
枕木を介して
据付け状態で
床面に置く
固定
子
屋内
保管
回転
子
軸受
空気
冷却
器
2) ポリエチレン
シート内に乾
燥剤を封入の
上包装する
(1m3 あたり
シリカゲル
300~500g
程度)
点検方法
防錆および防湿
変形および損傷
1)ベース取付け
面は前処理後
自然乾燥ワニ
スを塗布する
1) 外傷防止のた
め雨除けシー
トにて保護を
施す
1) 包装分解の上
外観部の損傷
有無を点検す
る
2) 各部機械加工
面の露出部は
油をふき取っ
た後自然乾燥
ワニスを塗布
する
2) 製品の積み重
ねおよび他の
部品を上に置
かない
2) 巻線の絶縁抵
抗値を確認す
る
3) 電動機内部に
スペースヒー
タを取り付け
常時通電して
おく
1)シャフトジャ
ーナル、油切
り部はふき取
り清掃後防錆
油を塗布する
1)グリース注入
を行なう
チューブ内部に
N2 ガスを封入す
る
20
3) 計器類はベニ
ヤ板で保護す
る
3) 軸端、カップ
リング部は6
ケ月毎に防錆
剤を除去し目
視にて点検す
る
点検
期間
6ケ
月毎
4) シャフトジャ
ーナル部は6
ケ月毎に点検
する
5) 6ケ月毎に空
廻しの上グリ
ース注入
冷却フインを損
傷させないよう
保護する
圧力計を取り付
け N2 封入状態を
確認する
3ケ
月毎
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9.保守・点検
保守・点検の実施は、事故を未然に防ぎ、電動機の寿命を延ばし、また保守の優劣は電動機寿
命に大きな影響を与えます。以下に述べる保守点検基準に基づき点検作業を保守計画に組み入れ
確実に実施してください。
また運転中一定時間ごとに点検内容、結果を記録してください。電動機の運転状態を記録してお
くことにより、運転状態の変化が正確に把握でき、事故を未然に防ぐことができます。
危険
■作業を開始する前に、電動機に接続されている全ての電源を遮断すること
感電の恐れがあります。
■1.5メ-トル以上の高所作業では、安全帯を使用すること
落下事故の恐れがあります。
■作業場所の周辺はロ-プなどで区画し作業者以外の人の立ち入りを禁止するこ
と
感電、巻き込まれの恐れがあります。
強制
■据付け・保守点検時には、長袖作業服・安全帯・保護メガネなど定められた
保護具を着用すること
着用しないと巻き込まれや感電などの恐れがあります。
■日常および定期の保守点検を行うこと
保守点検をしないと、故障・異常を発見できず火災・感電の恐れがあります。
注意
■電動機内部に異物または聴診棒のような棒状の物を入れないこと
聴診棒を使用した振動・音響調査時は回転部に触れないこと
禁止
破損やけがの恐れがあります。
■機械加工、プレス加工された部品に触れるときは軍手などを使用のこと
鋭利な部分があり、使用しないとけがの恐れがあります。
強制
■フィルタが装着されている電動機は、定期的にフィルタを掃除すること
フィルタが目詰まりすると、過熱して焼損する恐れがあります。
9.1
点検の内容
電動機の点検はその内容により次の2通りに分類されます。
9.1.1
日常点検
電動機の外観上から目視、触感、聴感等により点検します。
21
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9.1.2
定期点検
(1) 簡易点検:電動機のベアリングブラケットを分解し、コイルエンドまわり軸受関係を中
心に点検します。
(2) 本格点検:電動機のロータを引き抜き、細部について綿密に点検します。
その他給油装置等の補機類についても、各々の取扱説明書に基づいて電動機と同様に定
期的な保守を行ってください。
9.2
定期点検の周期
保守点検の基本は、計画的監視であり必要項目を適正間隔で継続的に実施することです。定期
点検の規模と周期は、使用環境・始動頻度・始動時間の長さ・機械の重要性等を考慮し、次の点
検区分をもとに計画してください。
(1) 簡易定検
本格定検の間に行います。
(2) 本格点検
初回点検
・運転開始後1~2年
運転開始時では確認できなかった事項(例えば環境等に対する構造上の適合、輸送または
現地組立時の異物混入、構造物のなじみ等)が原因で故障(いわゆる初期故障)を誘発す
ることがあります。これらの初期故障の要因を運転開始後の適当な時期に取り除くための
点検でその後の安定運転に極めて有効です。
初回点検以降の定期点検インターバル
・初回点検後約4年毎
9.3
主要点検項目
日常点検時および定期点検時には下記の主要点検項目を含めて、各々表3~表6(23~28
ページ)の保守点検基準に基づき点検を行ってください。以下の点検ポイントとその重要性を
ご参考に進めてください。
(1) 固定子コイル楔および固定子コイルエンドしばり部のゆるみの点検
固定子コイルでは、鉄心スロット部は楔により、またコイルエンド部は糸しばりにより、コ
イルに与える電磁振動を抑制しています。コイル絶縁・楔・スペーサ・緊縛糸等は絶縁物で
構成されており、運転による電磁振動やヒートサイクル等によるなじみから、楔ゆるみや糸
しばりゆるみを生じる場合があります。
これらを長期間放置しますと、電磁力や機械振動でコイルが加振されて、絶縁物の摩耗を生
じ、絶縁破壊へ結び付くことがあります。
定期的にこれらを点検し処置してください。
22
E7091190
(2) ロータバーのゆるみ、ロー付部剥離および軸方向移動の点検
かご形誘導電動機でロータバーロータの場合、始動時のラッシュ電流によりロータバー・
短絡環およびそのロー付部には、熱応力・電磁力・遠心力等が重畳し、始動の度に疲労が蓄
積していきます。その結果としてロータバーにゆるみが出たり、ロータバー全体が軸方向に
移動していたり、またロータバーと短絡環とのロー付部が部分的に剥離したりしている場合
もあります。
この状態で運転を継続されますと、ロータバーエンド部の亀裂折損や短絡環の破断に進展し、
端部が遠心力で径方向に拡がり、ステータコイルに損傷を与え、絶縁破壊に発展する場合が
あります。したがって、定期的なこれらの点検は重要です。
(3) 軸受まわりの点検
軸受まわりは温度・異音および振動によるジャーナル面の傷や異物の点検を行う必要があ
ります。特に次の項目に着目して点検してください。
・オイルリングの動き・変形
・摩耗油黒化またはグリースの変色
・油面
・油もれ
詳細は、10章「軸受の保守」を参照してください。
(4) ステータコイル、鉄心通風ダクト部へのダスト付着の点検
ステータコイルへのダスト付着は熱伝導を悪くし、鉄心通風ダクト部へのダスト付着は冷
却通風量を低下させます。いずれも温度上昇増大の原因となります。
ダスト付着がある場合は、ダスト量に合わせて清掃インターバルを決め実施するか、ダスト
侵入を防止するための対策を行うか、ご検討の上実施してください。
(5) ファンカバーおよび電動機上部風道内の吸音材の点検
吸音材は消耗品です。点検時に老朽化している場合は交換してください。
(6)
交換推奨対象品目としては軸受、パッキン類等です。
(7)
再組立時には、シール剤・液体パッキンなどが塗布されていた個所へのシールを適切に塗
布ください。
9.4
点検後の試運転確認事項
保守点検後の試運転については5章「試運転前の準備点検」(14~16ページ)および6章
「試運転時の点検確認」(17ページ)の内容に基づき実施してください。
表3
点検対象
1.電源状態
保守点検基準-日常点検(運転時)
点検項目
点検項目
周期
電圧
毎日
点検方法
電 圧 計
判定基準
許容値…定格値の±10%以内
(定格周波数のもとで)
周波数
〃
周波数計
許容値…定格値の上限 3%、下限 5%以内
23
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表3
点検対象
2.運転状況
保守点検基準-日常点検(運転時)
つづき
点検項目
点検項目
周期
点検方法
振動
毎週
触覚、振動計
判定基準
平常に比べ、振動増加を感じた場合振動値
を測定する。判定:図13(52ページ)による。
電流
毎日
電流計
定格値以下で正常電流であること
臭気
〃
臭覚
焦げくさいにおいがないこと
異常音
〃
聴覚、聴診棒
発生箇所を調査する。必要により聴診棒を使
用
温度
〃
触覚、温度計
温度上昇が納入時と変化のないこと
目視
取付けボルトの脱落、ゆるみのないこと
〃
取付けボルトの脱落、ゆるみのないこと
フレーム
軸受
コイル
カバー類
はしご・ プラ
毎週
〃
ットフォーム
3.環 境
腐蝕のないこと
周囲温度
毎週
通風状態
〃
温度計
規格値以内で平常であること
目視
換気口などに目詰りのないこと
電動送風機がある場合、正常に運転されている
こと
4.軸 受
4.1 グリー
ス潤滑
回転音
温度
毎日
聴覚、聴診棒
正常であること
〃
触覚、温度計
異常な温度を感じたとき温度計で測定
油切り部
軸受温度限度 95℃以下(読み値)
を含む
グリース
4.2 油浴潤滑
指定
補給
時
温度
毎日
グリースガン
補給すること
触覚、温度計
異常な温度を感じたとき温度計で測定
軸受温度限度 95℃以下(読み値)
油面と油も
〃
目視
油面指示位置にあること
〃
〃
平滑に回転していること
目視
水もれがないこと
れ
オイルリン
グ
5.冷却器
水もれ
毎日
水圧
〃
圧力計
指定圧力であること
流量
〃
フローサイト
流れていること
24
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表4 保守点検基準ー日常点検(随時停止時)
点検対象
1.調査
点検項目
点検項目
運転記録で
周期
点検方法
1ケ月
日常点検記
不適合点確認
2.外観
判定基準
録
フレーム、端子部
1ケ月
目 視
の損傷、汚損
手入れ、清掃すること
目詰りなど手入れ、清掃すること
冷却管、風道、
〃
〃
フィルタ
3. 軸受
3.1 グリース
排出グリース
1ケ月
排出口
潤滑
3.2 油浴潤滑
グリースに金属粉など異物混入、汚損がな
いこと
油汚れ
〃
〃
潤滑油に金属粉などの異物混入、汚損
がないこと
表5
保守点検基準ー定期点検
(簡易点検、トップハット、ベアリングブラケット上半分解)
点検対象
1. 調査
点検項目
点検項目
運転記録にて異
周期
1年
常有無確認
2. 測定
コイル絶縁抵抗
判定基準
点検方法
日常点検記
異常があれば手入れ、補修
録
1年
メガー
測定方法および目標値については
11.3「電動機の絶縁抵抗について」による
空げき
3. 外観
フレームの汚れ
〃
1年
ジ
最大値-最小値 ×100≦20%
平均値
目視
清掃、手入れ
ギャップゲー
塗装
異常があれば補修
端子
〃
清掃、手入れ(必要により交換)
フィルタ
〃
ゆるみ、脱落、損傷のないこと
ボルト締結部
25
E7091190
表5
保守点検基準ー定期点検
つづき
(簡易点検、トップハット、ベアリングブラケット上半分解)
点検項目
点検対象
4. 固定子
判定基準
点検項目
周期
点検方法
鉄心、コイル
1年
目視
ほこり、油気、水気、異物のないこと
鉄心
〃
〃
不揃い、過熱、変色、損傷、錆などないこと
鉄心端
〃
〃
外側間隔片の倒れ、脱出のないこと
ゆるみ、打こんのないこと
コイルエンド
〃
〃
変形、損傷、汚損などがないこと
絶縁物
〃
〃
ワニスの吹出し、ボイド、トラッキング
などがないこと
5. 回転子
楔
〃
〃
ゆるみがないこと
コイル支持部
〃
〃
ずれ、脱出、ゆるみのないこと
防風板
〃
打音、目視
ゆるみ、クラックのないこと
鉄
1年
目視
錆、ゆるみ、ほこり、油気、水気、異物
心
、過熱、変色、損傷のないこと
ローターバー、
〃
〃
クラックがないこと、バー移動がないこと
1年
目視、聴覚
錆、変形、傷、損傷、磨耗(異音)
〃
目視
グリースの交換
〃
スキマゲージ
許容値以内であること
〃
目視
変形および著しい摩耗のないこと
エンドリングの
接続部
6. 軸受
開放軸受、菊座金
6.1 グリース グリースのよご
潤滑
れ
6.2 油浴潤滑 油切り
オイルリング
止めのビスにゆるみがないこと
よごれ、劣化、異物のないこと
7. 計装品
油よごれ、損傷
1年
目視
ほこり、油気、水気、異物、損傷のないこと
8. カップリ
軸端の振れ
随時
ダイヤル
許容値以内のこと 3.4項(8ページ)
ゲージ
参照
〃
〃
直結
目視
ボルト、ナットのゆるみがないこと
損傷
〃
キー溝の損傷、割れのないこと
必要によりカ
ギアカップリングの歯面に異常な摩耗のな
ラーチェック
いこと
聴覚、触覚
異常のないこと
ング
センタリング
9.負荷運転
異常音、振動、
〃
1年
異臭
10. 軸電流
臭覚
回転方向
〃
目視
正規回転方向であること
防止装置
1年
目視
清掃手入れの上、絶縁抵抗測定
500V メガー
0.5MΩ以上
26
E7091190
表6
保守点検基準ー定期点検(ロータ抜き本格点検)
* 周期4年は初回点検以降のインターバルを示します。初回点検は運転開始後1~2年です。
(9.2項
点検項目
点検対象
1.調査
点検項目
運転記録にて異常
周期
22ページ
参照)
判定基準
点検方法
4年*
日常点検記録
異常があれば手入れ、補修
4年*
水準計
両端ジャーナル部で測定し、その差が
有無の確認
2.測定
軸水平度
1m当り0.05mm以内
コイル絶縁抵抗
〃
メガー
規定値以上 、表5参照
スペースヒータ絶縁
〃
〃
500Vメガーにて1MΩ以上
空げき
〃
ギャップゲージ
表5参照
フレームの汚損、
4年*
目視
清掃、手入れ
フィルタ
〃
〃
清掃、手入れ(必要により交換)
ボルト締結部
〃
〃
脱落、損傷のないこと
4. 固定
鉄心、コイル
4年*
目視
ほこり、油気、水気、異物のないこと
子
鉄心
〃
〃
不揃い、過熱、変色、損傷、ゆるみ、錆
抵抗
3.外観
塗装
などないこと
鉄心端
〃
〃
外側間隔片の倒れ、脱出のないこと
ゆるみ、打こんのないこと
エアーダクト
〃
〃
目詰りのないこと
コイルエンド
〃
〃
変色、損傷、汚損などないこと
絶 縁 物
〃
〃
変色ワニスの吹出し、ボイド、トラッキ
ングなどないこと
コイル支持部
〃
〃
ずれ、ゆるみのないこと
接続部に異常のないこと
楔
〃
ハンマーリング
枯れ、緩み、脱落のないこと
コイル緊縛系
〃
目視、触感
ずれ、ゆるみ、変色、劣化のないこと
口出しケーブルおよ
〃
目視
損傷、劣化、端子の変形のないこと
び端子
ほこり、油気、水気、異物の付着がない
こと
防 風 板
〃
〃
溶接部異常のないこと
締付け部ボルトゆるみのないこと
スペースヒータ
〃
〃
締付け部ゆるみ、ほこり、油気、水気、
異物、付着物がないこと
27
E7091190
表6
点検項目
点検対象
5. 回転子
つづき
点検項目
鉄心
周期
4年*
判定基準
点検方法
目 視
錆、ゆるみ、ほこり、油気、水気、異物
過熱、変色、損傷のないこと
ローターバー、エ
〃
ンドリングの接続
目視、カラー
クラックのないこと、銀ロー剥離は接合面
チェック
各辺で 50%以下のこと
部
バー移動のないこと
ローターバー
〃
ハンマリング
ゆるみのないこと
ファン
〃
目視
ファンブレード変形がないこと
バランスウエイト
〃
ハンマリング
締付けのゆるみのないこと
軸ジャーナル部
〃
目視、触覚
キズ、打痕、圧痕のないこと
寸法測定
6. 軸 受
開放軸受、菊座金
〃
6.1 グリース
グリースのよご
1年
潤滑
6.2 油浴潤滑
錆、変形、傷、損傷、磨耗(異音)
目視
グリースの交換
れ
油切り
〃
スキマゲージ
許容値以内であること
オイルリング
〃
目視
変形および著しい摩耗のないこと
止めのビスにゆるみがないこと
油
〃
*
〃
よごれ、劣化、異物のないこと
6.3 ブラケット
ハウジング寸法
4年
寸法測定
許容値以内であること
7. 計装品
較正
4年*
基準との比較
JIS規定値以内であること
8. カップリン
軸端の振れ
随時
ダイヤルゲー
許容値以内のこと
グ
9. 負荷運転
ジ
センタリング
〃
〃
〃
直結
〃
目視
ボルト、ナットのゆるみがないこと
損傷
〃
〃
キー溝の損傷、割れのないこと
必要によりカ
ギアカップリングの歯面に異常な摩耗の
ラーチェック
ないこと
聴覚、触覚、
異常のないこと
異常音、振動、
1年
異臭
10. 冷却器
11. 配管
臭覚
回転方向
〃
目視
正規回転方向であること
内部点検
4年*
目視
異常な腐食、ピンホールのないこと
水圧試験
〃
水圧試験
漏洩変形のないこと
目視
締付部のゆるみ、水洩れ、油洩れ、腐食
損傷
4年*
のないこと
12. 軸電流
防止装置
1年
目視、
清掃手入の上、絶縁抵抗測定 0.5MΩ以上
500V メガー
13. 吸音材
ファンカバー・風道
4年*
目視
固定部のゆるみ、枯れ、脱落のないこと
14.パッキン
ファンカバー・風道
4年*
目視
劣化のないこと
28
E7091190
10.軸受の保守
10.1
正規運転前の実施、確認事項
(1) グリースの補給(グリース潤滑方式)を行ってください。
初めての正規運転開始直後、あるいは運転休止後に運転を開始するときにはグリースを補給
してください。詳細は、10.3項に記載の10.3.1.2グリースの補給(36ページ)
を参照してください。
(2) 潤滑油の補給(油浴潤滑方式)を行ってください。
油浴潤滑方式ころがり軸受を使用している電動機では、軸受には潤滑油が入っておりません。
停止中に、指定の潤滑油を油面計の指示点まで注入してください。
使用する潤滑油は、電動機に取り付けてある軸受銘板を参照してください。
(3) 内外の軸受蓋が、密着して取り付けられ、ごみなどの入る隙間がないか、確認してくださ
い。
(4) 回転子をゆっくり回転させ、異常音がないことを確認してください。
10.2
ころがり軸受の保守点検
軸受は電動機寿命上、重要な部品です。保守・点検は電動機の使用条件にもとづき、適正な点
検計画を立てて実施する必要があります。
10.2.1
日常の保守点検
10.2.1.1 運転中の軸受音響
ころがり軸受の異常の有無は、軸受の発生音響から判断するのが最も確実な方法です。毎
日軸受の音響をチェックしてください。
軸受箱に耳を押し付けるかまたは軸受部に金属棒をあてがって耳に押し付けて、軸受音響を
聞いてください。軸受の異常音としては下記のようなものがあります。
(1) 摺動音
シャーシャーという動音で外輪の転走面転動体表面の凹凸やビビリで起こります。単調
でやわらかな感じの音なら問題ありません。
(2) 金属音
かん高い感じの摺れるような音で潤滑性、付着性の悪いグリースを使用したとき、あるい
は、軸受隙間の過小や潤滑剤の量が不足している場合に起こります。
(3) 打音
ゴトゴトという振動音で軸受隙間が過大か、あるいは軸受外輪が無理に組み立てられた場
合に起こります。
(4)雑音
シャーシャーと言う不連続音で、ごみまたは帯磁した金属粉が混入した場合に起こります。
連続音の場合は転動体や転走面に初期の剥離があるか、または電食の傷がある場合で高速
回転で起こります。
29
E7091190
(5) うなり音
玉軸受に多い響くような振動音で、回転子の重量によって軸受箱に異常なひずみができ
ると、このひずみが拡大され軸受外輪に伝わって発生します。
グリースの潤滑性能が悪いと、軸受内外輪の転走面と転動体が局部的に滑りをおこし、
うなりに似た音響を発生します。
軸芯の狂い、直角度の不良があると振動や軋みに似たうなり音を発生します。この音は
コロ軸受の場合に大きく、回転数の低い間は大きい音響、高速回転では微細な高周波振
動音となります。
(6)コロ落ち音・玉落ち音
低速回転でラジアル荷重のみ受けている場合に発生することがあります。転動体が負荷を
受けている領域から、負荷を受けない領域にはいる際に、自由な運動が可能となるため、
重力により転がりだして、保持器や軌道に衝突して発生する音です。
10.2.1.2 軸受の温度
ころがり軸受の温度はすべり軸受にくらべて一般に低く、軸受温度が高い場合でも一概に
異常であるとは言えず、個々に判断することが必要です。特に高速回転機で稠度の高いグリ
ースを使用した場合には、軸受温度は上昇しますがグリース攪拌が良好に行われているため
の温度上昇であり、温度がグリース使用温度可能範囲内にあれば問題ありません。
しかし、通常と異なる温度上昇のある場合は、グリースの過剰・グリース劣化・保持器のや
せ・剥離等何らかの異常があることが考えられます。
毎日の軸受温度を記録し、大きく変化していないか監視してください。。
ころがり軸受の温度測定には、軸受箱表面に棒状温度計をパテで取り付け、温度を読みとっ
てください。読みそのものは一応の目安ですが、毎日の変化を見れば異常を検出することが
できます。
10.2.1.3 油量(油浴潤滑方式)
電動機の油面計の指示点は、静止時での油面を示します。静止時での油面が油面計の指示
点にあるか確認してください。運転中、若干油面は変動または変化しています。
油量の過不足は油洩れ、温度上昇の要因になりますので適量に保ってください。
10.2.1.4 オイルリング
オイルリングが正常に回転しているか、点検窓から監視してください。
10.2.1.5 油洩れ
油受回りに油洩れのないことを確認してください。
10.2.1.6 軸受の振動
軸受に剥離・摩耗・圧痕・かじり・破損・電食等が生じるような状態では大きな異常音、
発熱、振動を伴い、軸受を交換しなければなりません。初期に異常を認められた時に適切な
処置をしておくと、故障を未然に防ぐことができます。異常振動の発生を検出するため、日
常電動機軸受の振動状態を点検記録しておいてください。
30
E7091190
異常診断として次のものがあげられます。
(1) 比較的短い期間で、振動や音響が増大する場合には次に述べる荷重のかかり具合をチェ
ックしてください。
電動機や直結機械の熱膨張により過大なスラスト荷重の作用
直結時の不良で軸受に過大なスラスト荷重の作用
据付け時のベットのねじれや基礎の狂いなどで軸受に過大なラジアル荷重の作用
(2) 玉軸受の場合、軸方向に異常に高い周波数の振動を発生する場合があります。これは軸
受の内外輪と転動体の接触部に関する軸方向のばね定数が、軸方向の振動に共振して、回
転子が異常に振動するために起こります。不規則に発生、消滅、ときには軸受箱の軸受部
が共鳴して異状なうなり音を発生します。この場合には次の対策を行ってください。
軸受を交換する。(ばね定数の異なる軸受を使用する)
軸受箱の軸受部付近の構造を補強する。
外輪と軸受箱の嵌合を公差の範囲内でゆるめにする。
外輪にスラスト方向の予圧を若干与える。
グリースを潤滑性能のよいものに交換する。
10.2.1.7 日常点検時の留意事項
軸受にごみ、金属粉等が混入しますと軸受を損傷しますから、軸受蓋をあけるとき、これ
らの異物が混入しないようにしてください。
お願い
軸受が特に異常と認められる時以外は、軸受蓋をあけないようにしてください。
10.2.1.8 長期間停止および保管
次の対策を行ってください。
長期間停止あるいは予備機としている電動機は2週間程度に1度のならし運転を行い、ジ
ャーナル部の発錆防止対策を実施してください。
軸受を長期間保存するときは、防錆油を塗って耐油性の包装をした上、密閉容器に納め、
塵埃、熱および湿気の少ない所に保管してください。大形の軸受は平らな棚の上に置いて
ください。
31
E7091190
10.2.2
6ケ月~1年毎の保守点検
10.2.2.1 グリース取換えまたは補給
軸受に使用するグリースにはグリース寿命があり、一定期間使用するとグリースが劣化し
ます。グリースが劣化したままで電動機を運転すると、軸受過熱を生じ破損事故となります
ので、以下の要領で新しいグリースを充填してください。
なお、グリース取換えまたは補給時間は表8(36ページ)に例を示してあります。また、
電動機の軸受銘板(本体側面)にも記入されておりますので参照ください。
(1) 電動機停止可能な場合
電動機を停止させ、軸受部の外側油切りを分解{水切りカラー(図10参照)付きの場合は
水切りカラーを加熱し取り外しておくことが必要}して、劣化グリースを掃除した後、
後述の「10.5.3項
軸受交換時の留意事項(45ページ)」の「(6)グリースの
初充填」の要領でグリースを填めてください。なお、掃除の際にはグリース受け⑤の中
にも劣化グリースが溜まっておりますから、これを取り出して内部を洗ってください。
(2) 電動機停止不可能な場合(図10:46ページ参照)
(a) グリース受け⑤を取り外し、この中に溜まっている劣化グリースを洗い落としてくだ
さい。
(b) グリース受け⑤を外側油切り②に取り付けてください。この際、グリース受けの蓋は
開けておきます。
(c) グリースニップル⑦の周囲をきれいに拭き、ごみ等を取り除いてください。
(d) グリースガンを使用してグリースニップルからグリースを補給してください。劣化グ
リースは補給グリースに押し出されて排油口から外部に流れ出ます。
(e) グリース受けから新しいグリースが出るようになったら、補給を中止し、グリース受
け蓋をはずしたまま、しばらく電動機を運転し余剰グリースを排出させてください。
余剰グリースが入ったまま蓋をしますと、軸受が異常過熱する場合がありますから、
すべての余剰グリースを排出させてください。
(f) 通常の運転状態になった所でグリース受け蓋を取り付けてください。
10.2.2.2 潤滑油交換(油浴潤滑方式)
油の取換え度数は周囲温度・周囲の清潔度・運転の連続性・苛酷度等の環境、使用条件に
より異なりますが、一般的に6ケ月毎の取換えをおすすめします。
潤滑油の劣化は油の色が黒く汚れているかどうかで判断するのが一般的ですが、科学的には
タービン油の酸化が 0.2~0.3mgKOH/g 程度に達したら交換をおすすめします。0.5 以上になっ
たらすぐ交換してください。
潤滑油を交換するときは電動機を停止して行ってください。
お願い
運転中には潤滑油の補給を行わないでください。
32
E7091190
10.2.2.3 オイルリング点検(油浴潤滑方式)
オイルリング側面が異常摩耗していないか、また結合ねじがゆるんでいないか点検してく
ださい。
図7
オイルリング
10.2.2.4 気抜管(油浴潤滑方式)
高速機には軸受ブラケット上部に気抜管を付ける場合があります。これは軸受箱内を大気
圧とバランスさせオイルベーパーを抜くためのものです。これが目詰まりすると油洩れの原
因となることがありますので、定期的に清掃を行ってください。
図8
気抜管
33
E7091190
10.2.3
定期点検時の保守点検
定期点検時には、軸受を取り外し各部品の点検手入れを行いますが、転がり軸受に関しては
「6ヶ月~1 年毎の保守点検」の要領と同様の点検を行なうと共に、以下の作業を行なって
ください。
●ころがり軸受の推奨交換周期
下記にころがり軸受の交換周期を示します。これを目安として軸受を交換してください。
個々の詳細については 当社へお問い合わせください。
推奨交換周期
結合方式ほか
極数
推奨交換周期
2P
4年
4P以上
4年
4P以上
3年
カップリング結合など、
負荷機械から荷重を受けないもの
ベルト結合など、
負荷機械から荷重を受けるもの
10.2.3.1 軸受取り外しのしかた
軸受取り外しの際には次の点を守ってください。
(1) 軸受を取り外した場合は、必ず新品の軸受に交換してください。
(2) 軸受回り、すなわち軸・軸受箱・油切りの洗浄・清掃をします。この時、グリース誘導
管内部等給油系統も十分洗浄・清掃してください。
(3) 反負荷側の軸受ハウジングには、軸電流防止のため、絶縁物が挿入されているものもあ
りますので、分解再組立の際には、破損しないようにしてください。また、この個所にゴ
ミなどが付着して電流の経路とならぬよう保守してください。また、軸受温度計が取り付
けられている場合には、素子部にも軸絶縁処理を行なっておりますので傷付けないように
してください。
10.2.3.2 軸絶縁抵抗の測定
軸受部に軸電流防止装置のあるものは、その絶縁抵抗を測定してください。
測定器
:500V級メガー
良否の判定:0.5MΩ以上
良
34
E7091190
10.3
10.3.1
潤滑剤の選択と使いかた
グリース
10.3.1.1 グリースの選定
(1) 推奨グリース
グリースは、電動機に付属(主銘板付近)の軸受保守内容とグリース名を記入してある軸受
保守銘板に記載のものをご使用ください。当社の標準グリースは次の通りです。
メーカ
品名
JX 日鉱日石エネルギー
協同油脂
石ケン基
・マルチノックスーパーデラックス
・レアーマックススーパー
リチュウムコンプレックス
ポリウレア
他にモータ用として推奨できるグリースは下記の通りです。その他のグリースにつきまして
は、お問い合わせください。
表7
国内で市販されているグリース一覧
メーカ
品名
・マルチノックデラックスNo.1(リチュウム系)
JX 日鉱日石エネルギー
・マルチノックNo.1、No.2(リチュウム系)
・マルチノックウレアNo.2(ウレア系)
・マルテンプ SRL,SRH(リチュウム系)
協同油脂
・ユニルーブNo.2(リチュウム系)
・レアーマックススーパー(ウレア系)
・アルバニヤRL2(リチュウム系)
昭和シェル石油
・スタミナグリース RL2(ウレア系)
・ビーコン325(リチウム系低温用)
EMG マーケティング
・モビリスSHC100(リチュウムコンプレックス)
合同会社
・ユニレックスN2(リチュウムコンプレックス)
・ポリレー EM(ウレア系)
コ ス モ 石 油 ル ブ リ カ ・ダイナマックスNo.2(リチュウム系)
ンツ
・コスモワイドグリース WR
SKF
・LGHP2(ウレア系)
(2) 用途別選択基準
高速の軸受には、耐圧性が大のものをご使用ください。
音の面では稠度の大きいものをまた撹拌損失の面は稠度の小さなものを選んでください。
一般にNo.1またはNo.2のグリースをご使用ください。
低速高荷重のものには、耐圧性が大で稠度の小さいものをご使用ください。
長期間無給油で使用するものには、酸化防止剤のはいったもので、復元性(軸受が停止し
ている間に使用前の状態にもどる性質)の大きいものをご使用ください。
特に高温の軸受には、非金属石ケン基(ノンソープ)のグリースをご使用ください。
水分のある場所には耐水性のあるものをご使用ください。
本シリーズの標準電動機の使用グリースは、「Li+Na石ケン基、稠度265~29
5」を使用しています。異種のグリースを使用しても差し支えありません。ただし、異種
グリースと混用しないでください。
35
E7091190
異種グリースに変える場合は、従来のグリースを洗い落としてから異種グリースを充填して
ください。
なお、同一石ケン基(Li+Na)グリースまたはLi石ケン基、グリースの場合は、少し
多めに補給し古いグリースを排出させて運転しても、実用上問題ありません。
耐熱、耐水、耐寒の場合には下記グリースをご使用ください。
・耐熱(150℃まで):耐熱性シリコーングリース(ただし高速回転軸受には不適)
・耐水耐薬品性(か性ソーダ以外):シリコーングリース(高速回転軸受には不適)
・耐寒性(-60℃まで):耐寒性シリコーングリース(高速回転軸受には不適)
お願い
回転中の軸受の温度は一般に軸受箱で測定した温度より数℃高くなります。
軸受温度をカバーできる温度仕様のグリースを選んでください。
10.3.1.2 グリースの補給
(1)
グリース補給量と補給間隔
グリースの補給量と補給間隔は、電動機に付属の軸受保守銘板に記載の内容で管理して下
さい。グリースは使用時間の経過とともに劣化し潤滑機能が低下するので、適宜グリースの
補給を行わなければなりません。表8にマルチノックスーパーデラックスを使用した時の、
グリース補給量と補給間隔を示します。
表8
グリース補給量と補給間隔(マルチノックスーパーデラックス使用の例)
ベアリング
初期充填量
補給量
1日24時間運転としての補給間隔(月)
番号
(g)
(g)
2極
4極
6極
8極
6216
105
30
3
-
-
-
-
-
6218
170
45
2
-
-
-
-
-
6221
280
65
-
9
12
12
12
12
6224
410
80
-
6
12
12
12
12
6226
430
85
-
6
9
12
12
12
6228
540
95
-
6
9
12
12
12
6230
640
115
-
6
9
12
12
12
6232
740
130
-
5
9
12
12
12
6234
850
150
-
-
6
9
9
9
NU216
75
30
3
-
-
-
-
-
NU218
130
45
2
-
-
-
-
-
・初期充填量は軸受部の分解清掃後に新たに充填する量
・補給量は補給間隔ごとに軸受に注入するグリース量
36
10極 12極
E7091190
(2)補給時の留意事項、確認事項
購入後、運転を開始する時、または2ケ月以上の運転休止後に運転を開始するときは、
運転開始直後にグリースを補給してください。
グリース補給時はグリース排出口をあけた状態で補給してください。
補給間隔は、銘板記載の時間を1日24時間運転としてグリースを補給することをおす
すめします。(これが軸受寿命を延ばし、良い状態を持続する秘訣です。)
しかし、運転時間が12時間の日、8時間の日、3時間の日など変わる場合には、毎日
12時間運転されるものとして補給間隔を定めてください。
お願い
電動機の軸受注意銘板に記載されたグリース補給量を確実に注入してください。
補給量の多過ぎは、軸受過熱、高温状態の長時間持続、グリース洩れの可能性があ
り、また補給量の少な過ぎは軸受本体の内部までグリースがまわらなくなります。
2極の電動機、4極、6極の大口径軸受については、据付け後や2ケ月以上休止後
の運転開始時の補給、および銘板記載の補給間隔に基づいた周期的補給を行わない
と、軸受音不良・異常摩耗・軸受焼損などの可能性が高くなるので確実に保守
(補給)してください。
10.3.1.3 グリースの排出
2~3回のグリース補給で1度、グリース排出口の蓋を取り外してグリースをかき出してく
ださい。
お願い
グリースが外側油切りの排出グリース溜りに溜まりすぎると軸受の撹拌抵抗のため、
軸受を過熱させたり、グリース洩れを生じたりする恐れがあります。排出グリースは
早めに取り除いてください。
10.3.2
潤滑油(油浴潤滑方式)
油浴潤滑ころがり軸受には潤滑剤として添加タービン油ISOVG32または
ISOVG46を使用します。グリースと同様異種潤滑油との混用は避けてください。
10.3.3
潤滑油交換
保守の項を参照してください。
37
E7091190
10.4
軸受の故障診断と対策のしかた
(1) 運転中発見される異常の原因と対策
ころがり軸受は、運転状態で、音・振動・発熱などに異常がないかをよく観察することによ
り、大きい事故を防止できます。異常が生じた場合は、下表に基づき対策してください。
項目
異常現象
1. リテーナ音の過大
(ジャラジャラ、チャラ
チャラ音)
原
因
対
策
保持器が振動して玉やころと衝
グリースを補給(できるだけ案内
突する音で、著しく大きくなけれ
すきまに入るよう)してみる。
ば異常ではない。
一時減ってすぐ大きくなるような
グリース不足や保持器の摩耗
ら軸受を交換。
により大きくなる
2. 著しいきしり音
グリース切れ、潤滑性能の良
振動を伴う大きい音でない限り
くないグリース、ラジアルすき
寿命に影響しないので使用して
ま過大。
よい。
の本質的な音であり、
(発生が不安定で原因が明確
グリース補給、軟らかい油性の
振動を伴わなければ、
でないことがある)
よいグリースの使用、すきまの
(金属性の高い音)
*きしり音自身は軸受
異常音
品質上問題はありま
小さい軸受に交換。
せん
3. きず音
(ガラガラまたは
ジャーと連続した音)
4. ごみ音
軌道面や転動体の傷
グリースを注入してみる
(さびが連続騒音の原因になる
短時間で再発するときは軸受
こともある)
を交換
ごみや磁化した鉄粉の混入
(ジャージャーと不
放置すると傷に発展する恐れ
連続な音)
5. うなり音、共振音
(ウワーンウワーン
がある
潤滑性の悪いグリース、軸心
の狂い、直角度の不良など
とうなる音)
1. 継続して調べてい
軸受原因の振動
る軸受部の振動が
以前より大きくなっ
軸受の洗浄または取り換え、
油性のよいグリースと取り換
え、適正な予圧、適正なはめ
あいに修正
軸受の傷、摩耗、異物の混入
グリース不足や劣化による
軸受を交換
グリースを注入、古いグリ
潤滑不良
ースを排出
軸受の取付け不良
分解再組立、取付けを再調
(直角度不良、こじられた組立)
整、ラジアルすきま記号を
ている
2. オーバホール後、
以前より振動が
大きい
確かめる
38
E7091190
つづき
項目
異常現象
原
因
対
策
据付け当初に比べ
軸受の傷やごみの混入
軸受を交換または洗浄
て温度が高い
グリース不足や劣化による潤滑
グリースを注入、古いグリース
不良
を排出
グリースの注入過多
オーバグリース防止構造のも
(注入直後の一時的な温度上昇
のは排出口を開き運転しなが
は故障ではない)
軸受の取付け不良
ら注入する
取付けを修正
グリース注入により改善されな
(こじり、曲がり)
軸受の荷重増大
いときは、音、振動などと総合
(ベルト張力大、直結狂い、
的に判断して再組立や軸受交
軸受部の温度上昇過大
負荷からのスラスト増大)
換などを行う
負荷増大で本体回転機の
過負荷を除く
温度が上がったため
★油浴潤滑方式の場合
オイルリングの回転不良
(変形、摩耗、合せ目締付け
ゆるみ、くい違い)
摩耗による変形、重量減は交換
給油量の不足
(注油量不足、油洩れ)
潤滑油不良
給油
油質不適
銘柄違い
(粘度高すぎまたは低すぎ)
色、酸化を調べる
変質、劣化
油温高すぎる
(室温高すぎる)
混入経路調査
油に異物混入
(水、固形物…ごみ、金属粉)
39
E7091190
(2) 分解点検で発見された異常原因と対策
異常音、異常振動、破損などで取り外した軸受の損傷状態を点検して、その原因を推定し、
対策することは事故の再発防止のため重要です。以下をご参照ください。
項目
損傷状況
1. ラジアル玉軸受のみぞ
の片側フレーキング
原
因
対
策
スラスト荷重過大
負荷のスラスト荷重を検討
負荷のスラスト過大、点検後
組立時の予圧を適正にする
の組立で調整不良など
2. 自動調心軸受などの
二つ割ハウジングの組立で
点検のため上半を外したり再組
外輪軌道面の対称位
異物かみ込みなどで外輪圧
立する時にハウジングの合わせ
置に生じたフレーキン
迫
面を清掃する
グ
早期フレーキング(
金属表面の局部的なはがれ)
3. ラジアル玉軸受の軌道
1) ブラケットやスタンドの
面に傾いて生じたフレ
組立が狂って両側軸受の
ーキング
中心があっていない
組立を正しく行う。軸受すきま
の大きいものを用いる
軸受の取付けが傾いてい
る
4. 軌道面に転動体のピッ
チに合った間隔のフレ
ーキング
1) 取付けの際、転動体を介
取付けの方法を検討
して力を加えたための傷
2) 円筒ころ軸受などの組込
みきずから発展したフレ
適正な残留すきまと正しい取付
けにより組込みきずを防止
ーキング
5. 軌道面に局部的なフレ
ーキング
1) はめあい面に異物のかみ
込み
面の清掃および修正
2) はめあい面の傷による軌
道輪の局部的変形
6. その他の早期フレーキ
ング
軸やハウジングのはめあい
1) 荷重過大
2) 振動衝撃荷重大
3) 軸受すきま不適正
4) 取付け不良
5) 潤滑不良
6) さび
40
E7091190
つづき
項目
損傷状況
1. 転動体の割れ
2. 軌道輪の割れ
原
因
対
策
すきま過大のとき異常な衝
摩耗してすきまが過大となった
撃荷重を受けたため
軸受は早めに交換する
割れ
1) 取付け時異物のかみ込み
取付けの際に再確認正しい補
2) 軸の修正過度などではめ
修を行う
あいが緩くなってフリク
ションクラックを発生
3) 押え金の締付け不足で端
面で滑って端面クラック
を発生
欠け
ころ軸受内輪のつば欠
軸受取付けの際つば部を直
つばに力がかからぬよう取り付
け
接打撃したためクラックが入
ける
った
軌道面に生じた転動体
1) 軸受取付けのとき転動体
圧痕
のピッチに合った間隔の
に大きい力が加わったた
圧痕
め
あばた状の圧痕
2) 静止中に大きい荷重が軸
取付け時に注意
運転、据付け時に取扱いを慎
受に加わったため
重にし衝撃を与えない
軸受に入った異物が転動体
取付け時の異物混入を防ぐ
でロール軌道面や転動体に
グリースにごみの混入を防ぐ
圧痕を生じた (ごみ圧痕)
軌道面に生じた転動体
1) 輸送時などに外部からの振
ング
フレッティ
のピッチに合った間隔の
動で軌道面と転動体との間
摩耗
で微動摩擦を続けたため
2) 剛性が十分でない基礎・床
に据え付けられた状態で、
輸送時には回転部を固定する
手段を講じる
基礎・床の剛性を上げる
外部振動を低減させる
電動機停止中に外部からの
振動で軌道面と転動体との
間で微動摩擦を続けたため
かじり
ころ軸受の軌道面、つ
1) 急な加速、減速でころの
ば面、ころの転動面に
運動が正常でなく滑るた
現れるかじり
め
2) グリースが硬すぎたり、
不良で油膜が切れ易いな
極端な急加速、急減速を避け
る
軟らかい耐圧性のよいグリー
スの使用
ど潤滑不良のとき
3) 取付け誤差などで接触状
態が正常でないとき
41
取付け誤差をなくし、接触状態
をよくする
E7091190
つづき
項目
損傷状況
原
因
対
策
異常摩耗およびさび
軌道面・転動体・つば
セメント粉などの異物が入る
取付け時の異物混入あるい
面の異常摩耗
とこれが研磨剤となって摩擦
はグリースへの異物混入を
面に異常摩耗が生じる
防ぐ、密封装置を点検する
軌道輪や転動体にさびを生
雰囲気を改善する
じると上記と同様になる
水、酸などの浸入によるさび
を予防する。
クリープ
はめあい部の摩耗、か
じり
潤滑剤の不足、不適、劣化
潤滑剤の適正化
1)軸やハウジングの修正過度で
正しい補修を行う
はめあいが緩くなった
2)振動や衝撃荷重がかかった
エロージョン
コンタクト
はめあい部に生じたさび、 1)はめあい部の修正不良で局
摩耗
据付け、連結を調べる
正しい補修を行う
部接触している
2)荷重が極端に大きく、弾性変
形により微動すべりが起こっ
た
電食
軌道面または転動体に
電流が軸受内を導通してスパ
ピッチング状の小穴また
ークした
軸電流防止絶縁の清掃
は洗濯板状のひだみぞ
損傷
保持器の
保持器の損傷、摩耗
1) 保持器の不良
大形のものは組込み時、適
2) 潤滑不良
正な潤滑剤を案内すきまに
3) 取付け時の損傷
注入する
42
E7091190
10.5
ころがり軸受の分解・組立のしかた
注意
■軸受を分解した状態で火気を使用する場合は、次の事項を守ること
・軸受の潤滑油を抜き取ること
・火気に対して軸受部を養生すること
強制
・火気の使用場所を火災の危険性のない場所に限定すること
・暖房・喫煙など一般火気を近くで使用しないこと
引火する恐れがあります。
横軸、ブラケット形ころがり軸受の分解、再組立は部品に傷をつけないように次の要領で行っ
てください。なお図10,11(46、47ページ)をご参照ください。
10.5.1
分解手順
(1) 相手機械との直結を切り離してください。
(2) 温度計等の付属品を取り外してください。
(3) 油浴潤滑式の場合はドレーンプラグを外して潤滑油を抜いてください。
(4) 油浴潤滑式の場合はオイルリングの合せ目を上部とし、結合ねじを外します。
(5) 図9に示すような引抜具や市販のころがり軸受引抜工具等を使用して軸受を取り外して
ください。
引抜き金具
レバー
ジャッキ
支え金具
ボールベアリング
スタッド
図9
10.5.2
引抜き金具は図示の
とおり内輪のみに当
ててください。
軸受引抜き方法の一例
再組立の手順
10.5.2.1 再組立
(1) 準備
組立場所、作業台、工具、布類および手は清潔に保ち、特に布は、けばのないものを使
用してください。
軸や軸受箱などの挿入面は傷、さびなどの有無を確かめ、挿入面のかどは軽く面取りし、
金属粉や塵埃などを除去した後ベンジンで洗浄し、乾燥しておいてください。
新しい軸受を使う場合は、組立直前に包装から取り出し、洗浄せずご使用ください。
嵌合部の寸法をチェックし、適正な嵌代であることを確認してください。
43
E7091190
(2) 挿入
軸受は、軸受番号が刻印してある側を外側にし、軸芯に直角になるよう次のような方法で取
り付けます。
お願い
圧入時にごみ等の異物が付着しないよう用具類は事前に清掃しておいてください。
圧入、打込みのとき
① 圧入する際、軸にうすく油を塗ってください。
② 小形プレスまたはジャッキを用いて圧入するか、または金づちなどで打ち込んでくだ
さい。この場合外輪には力を加えないようにしてください。常に内輪だけに力を加える
ようにしてください。
焼きばめのとき
① 120℃以下の油中に入れ一様に加熱してください。
油中にごみ、異物のないように濾過しておいてください。
乾燥炉の設備がありましたら、密閉した缶の中に入れた軸受を100~120℃の炉
内に入れて加熱します。(誘導加熱器を使用する場合も加熱温度は同一です。)
お願い
約150℃で軸受材の焼もどしが始まります。120℃を越えないようにしてくだ
さい。
一様に加熱することが大切です。トーチランプなどて加熱しないでください。
② 軸受を軸に焼嵌めた後、そのまま自然冷却させてください。
③ 常温になってから締付けナットを取り付けてください。
(3) オイルリングの組立(油浴潤滑方式)
① 一対のオイルリングを組み合わせてください。
お願い
オイルリングの一対の組合わせは、正しく行ってください。組合わせを取り違える
と、合せ目に食違いを生じたり楕円になったりして、回転不良の原因となります。
② 合せ目のねじはリング側面より出ないように仕上げ、緩み止めのポンチングをしてく
ださい。
10.5.3
軸受交換時の留意事項
(1) 軸受番号:軸受交換の際は、定格銘板に記載のものと同じ軸受番号(補助記号を含む)
の軸受をご使用ください。
44
E7091190
(2) 軸受の嵌合:一般電動機のラジアルころがり軸受の嵌合は次のとおりです。
軸受と軸受箱の嵌合(軸受は内輪回転)
軸受箱内径公差……………
J6………玉軸受
K6………ころ軸受
軸受外径公差………………
軸受メーカカタログによること。並級
軸受と軸の嵌合(軸受は内輪回転)
軸受内径公差………………
軸受メーカカタログによること。並級
軸外径公差…………………
k5………玉軸受
m5………ころ軸受
常に回転側を固く、回転しない側はゆるくし、転動体の圧力が転走面の小面積に集中しない
ようにしておき、熱膨張による移動が可能のようにしておきます。
お願い
嵌合が固すぎたりゆるすぎたりしないようにしてください。
固すぎると転走面に無理を生じたり、転動体が圧縮をうけて過度の摩耗や早期破損
を起こします。ゆるすぎると負荷がかかったときにすべりを生じ、侵食腐蝕などを
おこし、軸受の機能を損なうほか、いちじるしく軸受寿命を早めます。
(3) 軸受装着後、締付けナットの回り止め用座金の爪が確実に折り曲げられているか、また
亀裂などが入っていないか確認してください。
(4) 確認が終ったら清潔な紙や布類で軸受回りを覆い、ごみ等が入るのを防いでください。
(5) 内外の軸受蓋が密着して確実に取り付けられているか、ごみなどの入る隙間がないか回
転子をゆっくり回して異常音がないか確認してください。
(6) グリースの初充填(グリース潤滑方式)
図10の斜線部分にグリースを充填します。
グリースは内側油切りの給油セクタ部、グリースニップルからの給油道および軸受の内
部に充填してください。他のセクタ内には2/3程度充填し、軸受の排出側周囲“A”部
には塗ってください。
★定期点検分解や軸受交換分解時の再組立:
まず内側油切り③の軸受側およびころがり軸受①の内部にグリースを充填し、
軸受回りを組立て、“A”部にグリースを塗ったのち、グリースニップル⑦と
軸受ブラケット(あるいは外側油切り②)を組立てます。
45
E7091190
NO
部品名称
1
ころがリ軸受
2
外側油切り
3
内側油切り
4
水切りカラー
5
グリース受け
6
締付けナット
7
グリースニップル
8
グリース誘導管
9
グリースバルブ
図10
ころがり軸受構造
(7) 潤滑油(油浴潤滑方式)
2極機では油浴潤滑方式ころがり軸受を使う場合があります。
この場合はグリース潤滑方式と異なり分解時に潤滑油を抜きますので組立完了後、指定の潤
滑油を油面計の指示点まで注入してください。
46
E7091190
10.6
ころがり軸受の構造図
反直結側
直結側
NO
図11
部品名称
1
水切りカラー
2
ベアリングブラケット
3
玉軸受
4
外側油切り
5
内側油切り
6
締付けナット
7
グリースバルブ
代表的なグリース潤滑方式によるころがり軸受の構造
47
E7091190
反直結側
直結側
③
①
⑦
⑤
④
⑥
②
NO
図12
部品名称
1
気抜管
2
ベアリングブラケット
3
玉軸受
4
外側油切り
5
内側油切り
6
オイルリング
7
oリング
代表的な油浴潤滑方式によるころがり軸受の構造
48
E7091190
11.保守、点検のための正しい知識
11.1
電動機の始動頻度について
かご形誘導電動機の許容始動頻度は、冷時2回、熱時1回が標準です。
冷時2回とは「周囲温度(冷時)の状態から連続2回で、2回目は1回目の始動後ただちに電源
を切り自然停止後に始動すること」を意味します。
熱時1回とは「定格運転状態から自然停止後に1回の始動を行うこと」を意味します。
運転計画上頻繁に始動停止を繰り返すような場合、表9の始動頻度ランク表からランクが
Normalの範囲内にあるか確認してください。
仕様に記載されていない場合の始動頻度ランクは下表のNormalです。
それ以上の始動頻度では補強や改善が必要となります。特に1日4回以上の始動回数が計画され
ている場合は多頻度始動用の電動機を使用する必要があります。
表9
始動頻度ランク表示
始動頻度表示
始動回数( 回/年 )
Normal
300以上1000未満
Heavy
1000以上3000未満
Extra heavy
3000以上
49
E7091190
11.2
電動機の温度上昇について
電動機各部の絶縁種別の許容温度上昇は、基準周囲温度を 40℃で表10の通りです。(詳細は
JEC-2137参照、規格により異なる場合がありますので、詳細は各規格を参照してくださ
い。)
表10
項
空冷形誘導機の温度上昇限度 (単位:K)
耐熱クラスA
温 抵 埋
度
込
計 抗 温
法
度
法 計
法
電動機の部分
耐熱クラスE
温 抵 埋
度
込
計 抗 温
法
度
法 計
法
耐熱クラスB
温 抵 埋
度
込
計 抗 温
法
度
法 計
法
耐熱クラスF
温 抵 埋
度
込
計 抗 温
法
度
法 計
法
耐熱クラスH
温 抵 埋
度
込
計 抗 温
法
度
法 計
法
1 固定子巻線
a.出力 5000kW以上
- 60 65 - 75 80 - 80 85 - 105 110 - 125 130
b.出力 200kW 以上 5000 未満
- 60 65 - 75 80 - 80 90
(1)
105 115 - 125 135
c.出力 200kW 以下で d.e.以外
(1)
(1)
d.出力 600kW 未満(2)
(1)
(2)
(2)
e.冷却扇なしの自冷形・モールド形
2 絶縁を施した回転子巻線
60 -
(1)
65 -
(1)
- 65 -
75 -
(1)
80 -
105 -
(1)
125 -
75 -
(1)
85 - - 110 -
(1)
130 -
75 - - 85 - - 110 - - 130 -
- 60 - - 75 - - 80 - - 105 - - 125 -
3 かご形巻線
4 整流子・スリップリング・ブラシ
この部分の温度上昇は、いかなる場合もその部分の絶縁物や近傍
5 巻線と接触に関係なく鉄心と全ての の材料に有害な影響を与えないこと。
構造構成物(軸受を除く)
注(1)製造者と購入者間で合意のある場合、温度計法によって決定しても良い。
(2)耐熱クラスA,E,B,Fであり、定格が200kW以下である誘導機の巻線に重ね
合わせ等価負荷法を適用する場合は、抵抗法の温度上昇限度を5Kだけ超えても良い。
巻線の絶縁劣化の主な原因は熱劣化と部分放電劣化です。その他に機械的劣化、汚損、吸湿
等
の環境的劣化があります。
したがって、ダストによるダクト目詰り等で許容温度上昇以上になると熱劣化による絶縁劣化が
早まり寿命が短くなります。
50
E7091190
11.3
電動機の絶縁抵抗について
注意
■絶縁測定後は必ず放電させ、それまでは手を触れないこと
強制
感電の恐れがあります。
絶縁抵抗値は電動機の絶縁状態を知る上で重要な数値です。しかし、絶縁抵抗値は電動機の出
力・電圧・回転数・絶縁種別の他、温度・湿度・絶縁表面の汚損度、さらには試験電圧値・試験
電圧印加時間によっても変化するので、値で良否の判別を行うことは困難です。
そのため許容値について明確な規格はありませんが、当社では次の値を目標として定めています。
目安としてください。
絶縁抵抗値
≧
定格電圧(kV)+1
[MΩ]
測定は以下のようにしてください。
・測定個所:固定子巻線、回転子巻線ともに電動機の端子
・測定器:固定子巻線では定格 600V 以下は 500V メガー、600V 超過は 1000V メガー
・測定方法:絶縁抵抗値は加電圧後1分経過したときの値を測定
このとき、測定時の巻線温度を記録しておくことも重要です。
11.4
電動機の振動について
電動機は出荷時にバランスをとってありますが、負荷機械に直結した場合、負荷機械との直結
精度や負荷機械から生じる振動の影響があり、または基礎やベースの状態によっても変化します。
振動が大きいと軸・軸受・鉄心・巻線などの疲労破断・絶縁損傷や基礎などが破壊する場合もあ
ります。したがって振動を許容値内に保守監視することが重要であり次の事項をお読みいただき
対応してください。なお、衝撃に対しては標準構造の電動機では、許容振動加速度は 5m/s2(0.5
G)程度までですので、プレス用などでそれ以上の振動加速度が電動機に加わる場合は、当社に
ご相談ください。
11.4.1
許容振動値
JEC-2137には「定格電圧、定格周波数で無負荷運転し、そのときの振動速度を
測定する」と規定されています。当社では現地における軸受ブラケット上の振動速度の目標
値として下記の値を定めています。
振動速度目標値 4.5mm/s r.m.s 以下
また、慣例的には振動振幅値でも評価しており、一般に機械振動の振動振幅許容値をまと
めたものとしては、ドイツのVDI振動部門委員会のVDI2056があり、またISOで
も振動シビアリティという表現でその測定と評価を行っております。
これらにまとめられている許容値は、経験的要素を含んだ推奨値です。
許容振動値は据付け条件によっても変化するものです。
図13に直結後の軸受箱上での当社の推奨振動振幅管理値を示します。振動周波数(回転数)
は実測値の最大振幅に対するものであり、必ずしも電動機の回転数とは一致しません。
「長期運転に対し対策を要す-Sライン」を越えたときは、その原因を調査し対策を講じて
ください。
51
E7091190
-1
回転数 N(min )
図13
現地振動振幅許容値
52
E7091190
11.4.2
振動の原因
振動の原因として考えられるものに、次のようなものがあります。
(1) 機械的要因による振動
(1.1)定振幅値の振動
回転数・電圧が一定のとき、時間の経過につれて振幅値が変わらない振動であって、次の
場合があります。
(1.1.1)回転数と同期している振動数の場合
(a) アンバランスの発生
:
アンバランスの発生
据付け不良……………
固定子の据付け時
ねじれなど
カップリング不良……
カップリング面平行度・
直角度不良など
直結不良………………
レベルの相違など
回転体の経年的な……
鉄心・ファンなどにごみ
アンバランス発生
の付着、コイルその他の
動きなど
(b) 回転子軸曲がり
(c)
構造物の剛性不足・共振
(d) 静止部(軸受など)との金属接触
(e)
:構造物との共振・据付け基礎軟弱による過大振動
:ふれ回り方向は回転方向と逆となる
回転子偏心による空げきアンバランス :電圧発生と同時に電磁力により振動が増加する
(1.1.2)回転数の2倍の振動数の場合
(a) 軸受が楕円形
(b) 特定方向に回転子はめ代不足
(1.2)振動振幅値変化の振動
回転数、電圧が一定のとき、時間の経過により振動幅が変化する振動であって次の場合があ
ります。
(1.2.1)回転数同期の振動数
熱的原因による軸曲り
振動現象に熱的要因が加わる場合、現象としては複雑となり、原因を見つけるのも難しく
なってきます。したがって原因と現象のパターンを系統だてて整理することが必要です。
熱的軸曲りのケースには次のようなものがあります。
53
E7091190
(a) 回転子導体の熱膨張による軸曲り
(b) ラビリンス・油切りその他の静止物が、回転軸にわずかに接触したり、また軸受の片
当たりなどする熱的原因による場合は、振動位相が変化することが多く特に後者の場
合には位相変化が周期性を持つ特徴があります。
(2)電気的要因による振動
一般的に、電磁力が振動加振力として作用し、機械的共振を伴って振動を発生します。
(2.1)電源周波数の2倍
空げき不平衡、電源不平衡、固定子巻線の不平衡、固定子鉄心の締り不良などに起因する
もの
(2.2)電源周波数の整数倍
固定子および回転子の溝数組合せにより、半径方向力波が発生し鉄心を変形させて脈動す
るもの
(2.3)すべり周波数の2倍
2極機の空げき不平衡、回転子鉄心の締り不良、ロータバー折損などによる磁気的アンバ
ランスから発生
(2.4)ビート(うなり音)
空げき不平衡とすべりの影響によりすべり周波数の2倍(2sf)成分のビートを発生
することがある。
11.4.3
振動原因の調査
振動原因の調査は系統的に行うことが必要です。
一般的には次の方法によります。
(1) 電気的原因か機械的原因か分類する。
電源を切り、振動の継続状況を調査する。電気的な原因の場合には振動が消滅する。
(2) 直結機械の影響か否か分類する。
直結機械を切り離してみる。
(3) 振動数、振幅、位相変化を測定する。
(4) 振幅が時間的に変化するかどうか調査する。
(5) 回転数と振幅の関係を調べ共振の有無を調査する。
(6) 給油温度・機内温度・軸温度などの温度変化と振動との関係、および軸の動き状況な
どを調査する。
(7) データを整理し振動原因を分析する。
54
E7091190
11.5 電動機の騒音について
電動機の騒音をその発生源により大別すると表11のようになります。
表11
騒音の分類
基本波磁束に基づく騒音
電磁騒音
高調波磁束に基づく騒音
うなり音
軸受騒音
騒音
機械騒音
機械的アンバランスによる振動騒音
その他
通風騒音
ファン騒音
通風ダクト騒音
その他の騒音
(1) 電磁騒音
電磁騒音は、主として固定子と回転子のエアギャップ磁束によって生ずる電磁力波が、固
定子鉄心・フレームあるいは回転子を振動させる振動音が原因となって生じます。電磁騒音
は電源を切るとなくなりますので、他の騒音と容易に区別できます。
(1.1)基本波磁束に基づく騒音
基本波磁束による電磁力波は電源の2倍の周波数の振動音を発生します。この振動音は
主としてエアギャップ長や磁気回路の不平衡、一次電圧の不平衡などによって増大するた
め、異常に大きくなった場合にはエアギャップなどの点検が必要です。
(1.2)高調波磁束に基づく騒音
この騒音は固定子・回転子のスロット高調波が相互干渉することによって発生する電磁
力波によるもので、通常 1000Hz 以上に現われる騒音です。
(1.3)うなり音
二次抵抗に不平衡がある場合や、回転子に偏心や楕円変形がある場合に発生するもので、
2倍のスリップ周波数のうなり音となります。うなり音発生時において、2倍のスリップ
周波数の電流変動または振動が発生した場合には、二次抵抗の不平衡が原因と考えられま
すので、回転子の点検が必要ですが、電流変動・振動が発生しない場合は、許容範囲内で
の回転子の偏心・楕円変形が原因と考えられますので、そのままご使用頂けます。
(2) 機械騒音
機械騒音は軸受騒音とフレームの振動による振動騒音に分類されます。
(2.1)軸受騒音
ころがり軸受の発生する騒音の形態は複雑ですが、その原因の主なものは表12のよう
に分類されます。
55
E7091190
表12
騒音の原因
レース音
正常音
軸受自体の騒音
ころ落ち音
きしり音
ケージ音
ころがり軸受騒音
異常音
びびり音
きず音
ごみ音
軸受を組み込んだ
場合に生ずる騒音
うなり音(ベアリング
フレームが関係する)
これらのうち、レース音(ころがり軸受の基本的な音で通常 1,000Hz 以上の周波数成分を
持つ)、ころ落ち音、およびきしり音は正常音で性能への影響はありません。残りの各項の
音は異常音です。異常音で代表的なものに、きず音があります。
きず音は軸受のレース面、および転動体にきずなどのある場合に生ずる音で、時には非常に
大きな音となります。音の周波数は回転数や転動体の数に比例します。
このきず音が認められた場合には軸受を交換することが必要です。
(2.2)機械的アンバランスによる振動騒音
回転子にアンバランス荷重があると、軸受に力が働き、回転周波数を基本波とした振動
が発生します。この振動周波数は一般に低いため、電動機の騒音に与える影響は少なく、問
題となることはまれです。
(3) 通風騒音
通風騒音は広い周波数帯域にわたって、ほぼ一様なスペクトルをもっているのが普通で、
ファンの羽根枚数やダクト数に関係した単一周波数成分も含んでいます。
(3.1)ファン騒音
ファン騒音は、ファンの形状・回転数などに影響され、一般に回転の早い程、ファンの
寸法が大きい程大きくなります。
(3.1.1)ファンの回転によって発生する騒音
ファンの回転による騒音は、羽根が周期的に空気に圧力衝撃を与えることにより発生
します。このファン音は、羽根枚数と回転数の積が基本周波数になります。
(3.1.2)羽根によって発生するうずによる騒音
羽根の前後で圧力勾配があり、空気の流れにうずが発生します。このうずによる騒音
は一般に広い周波数帯域に連続スペクトルとなります。
(3.2)ダクト騒音
固定子および回転子が直径方向に通風ダクトをもつ場合には、固定子スロットと回転
子スロットが相対的に円周上の位置を変化することによって、通風ダクトの入口または
出口において空気の疎密が生じ、サイレン効果が現われます。
この騒音は一般に高周波音であり、ダクト数と回転数の積が基本周波数となります。
56
E7091190
11.6 電源変動の影響について
JEC-2137では電源変動について次のように規定しています。
電動機をこの範囲内で使用すれば実用上支障ありません。また電源が変動した場合、電動機の
特性は表13のようになります。
(1) 電圧変化
誘導電動機は、始動特性および最大トルクに関し特別の要求のあるものを除き、定格周波
数のもとで端子電圧が定格値の上下10%にわたって変化しても、定格出力で使用して実用
上支障があってはならない。
(2) 周波数変化
誘導電動機は、定格電圧のもとで電源周波数が定格値の上限3%、下限5%にわたって変
化しても定格出力で使用して実用上支障があってはならない。
電源の電圧および周波数が同時に変化する場合には、電圧の変化は定格値の上下10%
以内、周波数の変化は定格値の上限3%、下限5%以内であって、その両変化百分率の絶対
値の和が10%以内であるときには、定格出力で使用して、実用上支障があってはならない。
表13
電源変動の場合の特性変化
始動
および
最大
トルク
同期
速度
%
すべり
全負荷
速度
全負荷
電流
110%電圧
(+)21%
変化せず
(-)17%
(+)0.4%
(-)7%
電圧の関数
(電圧)2
一定
-
-
90%電圧
(-)19%
変化せず
(-)0.5%
(+)11%
103%周波数
(-)3%
(+)3%
(+)3%
(-)僅少
周波数の関
1
数
(周波数)
-
-
95%周波数
(+)5%
(-)5%
(+)僅少
項目
変動
電圧変化
周波数変化
(周波数)
(-)5%
1
(電圧)2
(+)23%
実用上
変化せず
-
実用上
変化せず
57
始動
電流
(+)10
全負荷時 磁 気 騒 音
の
特に
温度上昇 無負荷時
(-)3
~20%
~4%
(電圧)
-
(-)10
~12%
(-)3
~5%
1
(周波数)
(+)6
~7%
(+)10
~15%
(+)僅少
-
(-)僅少
(-)僅少
(-)僅少
-
-
(+)僅少
(+)僅少
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11.7
電源電圧不平衡の影響について
(1) 不平衡率の定義
一般に、電圧および電流の不平衡率は下記のように定義されます。
逆相分電圧
電圧不平衡率= 正相分電圧 ×100(%)
逆相分電流
電流不平衡率= 正相分電流 ×100(%)
(2) 電源電圧不平衡の影響
(2.1)電動機に不平衡電圧が印加された場合の、各相電流の一例を図14に示します。
不平衡電圧下では、入力が増大し、出力、トルクおよび効率が低下します。
不平衡電流の多く流れる相は、損失増加に伴う電力費が増大し、また極度に過熱される危
険がありその巻線寿命を著しく縮めます。
また電圧不平衡率が大きいと、振動、騒音が増加する事もあります。
(2.2)電圧不平衡の極端な場合が、単相運転となります。この場合には、全負荷スベリは
ほぼ三相運転時の2倍程度となり、線電流も√3倍以上の電流となります。したがって、
長時間運転するとコイルの焼損につながるので単相運転はしないでください。
電
流
電圧不平衡率
図14
電圧不平衡による各相電流の例
58
→
(%)
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12.電動機の故障診断と対策のしかた
各種の故障とその原因および対策を列記すると、表14のようになります。大きな故障と判定された
場合は、早急に当社にご連絡くださるようお願いします。
表14 故障とその処置
故障状態
原
因
対
策
始動条件ができてい
各種インタロックが解けてい
回路をたどって配線
電源スイッチ
ない
ない
および接点を調べる
を入れても音
電源から電動機端子
始動器まで電圧がきていない
がしない
までの回路不良
始動接触器の接触不良
1. 始動しない
ヒューズ2相溶断
ヒューズ交換
過負荷保護装置(OCR)の異常
端子部分を調べる、
固定子巻線の断線
2. 始動しないで
単相になっている
異常音を発す
る
巻線修理
始動器の回路1相開路
回路をたどって配線
接触器の接触不良
および接点を調べる
相手機械のロック
機械的ロック
連結不良(極端なベルト張り、
機械および連結状態
アライメント不良、据付けの
を調べて処置する
ずれなど)軸受焼付き
軸受破損によりギャップ接触
1相分の断線
固定子巻線の断線
3. 電源を入れる
巻線修理
始動器の故障
過熱、振動、衝撃などによる
と保護継電器
回転子巻線の短絡
絶縁劣化
が作動してし
または接地
上記2項に同じ
まう
機械的ロック
巻線修理
保護継電器の設定
値不適合
4. 異常音および
振動
単相運転している、
回路断線、ヒューズ溶断、
各相電圧をたどって
電圧の機械的異常
接触不良
処置する
回転子バランス狂い
分解調査
エンドリングき裂、バー切断
〃
鉄板の緩み
〃
ギャップ不均一、または接触
〃
異物侵入
〃
軸曲り、き裂
〃
負荷側振動
機械側の振動
電動機を切り離して
連結不良
軸曲り
確かめる
直結精度不良
締め直す
手直しする
59
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表14 つづき
故障状態
5. 温度上昇過大
原
電源異常
および発煙
因
対
策
不平衡電圧、単相運転
電源および始動器を
電圧、周波数の間違い、
調べる
電圧低下
過負荷
負荷の機械が不調なため過
電動機を切り離して電流
負荷
を確かめる
頻繁な始動停止や可逆運転
電動機の選定を再調
査清掃する
冷却不良
フィルタつまり、通風口の異
清掃する
物など通風路の閉そく
巻線不良
固定子巻線の短絡、接地
巻線修理
機械的な不適合
ギャップでの接触
2項に同じ
連結(ベルト張力大、アライ
メント不良など)による軸受
の過熱
6. グリース潤滑
騒音、振動、温度
軌道面、転動体の疲労剥離
軸受を洗浄して調べ、
方式ころがり
により不調が発見
同上取扱い上の圧痕などの
不良のときは交換す
軸受の故障詳細
される。
傷
る
については
グリースに起因す
グリース不足、グリース過剰
10 章「軸受の保
る不調が多いので
グリース変質または不適当
指定のグリースを指
守」を参照くださ
音が高いときはま
銘柄
定量、注入する
い
ずグリースを注入
金属粉などごみの侵入
軸受を洗浄する
して様子をみると
保持器の変形、破損
軸受交換
よい
軸受取付けかたの不正
組立直し、電動機連
過大スラスト荷重
結修正
すきま過小
負荷も調査
7. 電流計が振れ
る
上記故障の初期徴候
巻線故障、軸受焼付き、断
線しかかり、接触不良など
バー切れ、負荷変動
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13.修理・廃棄
13.1
修理等について
部品を交換する場合は、以下の事項をお守りください。
注意
■コイルを巻き変える場合は、事前に当社にご連絡いただき指示に従うこと
コイルなどに用いられている絶縁物は、加熱処理の条件によっては有害ガスが
強制
発生することがあります。
(1) 故障のご照会
電動機はグレードの高い絶縁処理をしています。 修理に当たっては注文先、または当社支社
店、営業所にお問い合わせください。故障のご照会には次の事項を明記願います。
故障のご照会
・故障箇所(写真があれば添付)
・銘板記載事項(・形式、・極数、・定格出力、・製造番号)
・経緯(・使用状態、・使用日数、・相手機械)
補修用品
・銘板記載事項
・ご用命部品とその個数
お願い
軸受に装備されている計装品(ダイヤル温度計やサーモカップルなど)を更新する場
合は、同等品をご使用ください。
特に、軸受の計装品には軸電流による軸受の損傷を防止するために、絶縁(感温部に
絶縁チューブ装着)をおこなっている場合がありますので、その際は絶縁チューブを
装着してください。
13.2
廃棄について
電動機を廃棄する場合は、以下の事項をお守りください。
注意
■廃棄するときは専門の廃棄処理業者に依頼するか、当社にご連絡いただき
指示に従うこと
強制
廃棄処理業者により処理しないと環境破壊の恐れがあります。
61
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お問い合わせ先
東芝三菱電機産業システム株式会社
大形回転機第二部
品質保証課
〒852-8004 長崎県長崎市丸尾町 6-14
TEL:(095)-864-2480
URL: http://www.tmeic.co.jp/
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取扱説明書
電動操作形コレクター及び
ブラシ引上装置(TIP)
E7090796
目
題
次
目
頁
1.構 造
(1) コレクター短絡及びブラシ引上げ部分・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
(2)ワークハンド操作部分・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
2.動
作・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5
3.手動操作の仕方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5
4.マイクロスイッチ接点の調整・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6
5.保守の仕方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6
6.点検及び注油・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9
7.接続方法について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9
8.操作電源回路の点検・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9
9.ワークハンドモータの保護・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10
10.機構部部品の摩耗耐量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10
11.主要部品形番号表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
14
12.電動機構造断面図・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
-1-
E7090796
コレクター短絡及びブラシ引き上げ装置
1.構
造
(1) コレクター短絡及びブラシ引き上げ部分
コレクター構造図(第1図および第3図)を参照してください。
本体電動機のシャフト端部にコレクターをはめ、その内側に各々コレクターリング
28 (固定接触子)があります。
に接続する三対の突出した、ナイフ状のブレード◯
29 (可動接触子)は、短絡カラー◯
30 に取付けられカ
ブレードに対向して6個の接触体◯
ラー端面で短絡されています。短絡カラーは本体電動機のシャフト面を軸方向に、滑
らかに移動します。短絡カラーの外周には溝が加工されており、その溝ヘミニベアリ
23 を介して鳥居形したハンドルレバー⑥が連結します。このハンドルレバーの支
ング◯
31 の突出座にあります。ハンドルレバーの上端部は、アーム⑦を介して
点はロッカー◯
操作シャフト⑧に連結されています。
立軸形の短絡カラー摺動部には、第3図に示す如く短絡カラーの位置決めとしてス
トッパーピンを使用しています。
一方コレクターリング面を摺動するブラシは、ブラシホルダーにピン止めされ、ピ
グテールはブラシホルダーシャンクで中断して(第6図参照)へ引出されております。
ブラシホルダースタッドは、ロッカーで支持され、2枚の板カム⑤の変位をピンで伝
えて、スタッドを回転させるようになっております。このためスタッド先端部に固定
されたブラシは、コレクターリング面より引き上げられたり、コレクターリング面へ
押しつけられたりするものです。
(2) ワークハンド操作部分
ワークハンド操作部分図(第2図)を、参照してください。
直線往復駆動する電動ワークハンドは、コレクターブラケットに固定されたレール
部にオーバーハングされております。電動ワークハンドの駆動部にジョイントが固定
され、ジョイントのピンを介して、操作シャフトにシュパンリングで固定された、レ
バーおよびハンドルに連絡されております。レバーとハンドルは止め金によりロック
されており、止め金の尾部が、コレクターブラケットにセットされたストッパーに当
たるとハンドルとレバーのロックが外れるようになっています。
-2-
-3-
コレクター構造図
第1図
接
ガイドベアリング
レール
板カム
ハンドルレバー
アーム
操作シャフト
スプリング
軸端カバー
ロートル口出し
モールドコレクター
ブラシ
ワークハンド
板バネ
止め金
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
ミニベアリング
端子箱(二次用)
コレクターカバー
ブスリング
リード線(二次用)
ブレード
接触体
23
24
25
26
27
28
29
コレクターブラケット
インターロック装置
22
ロッカー
シュパンリング
21
32
ナット
20
31
止めネジ
19
短絡カラー
ストッパー
18
30
レバー
17
手
ハンドル
2
部分名称
1
№
E7090796
E7090796
側面図
駆動途中の図
停止完了の図
第2図
ワークハンド操作部分図
立軸形用
横軸形用
第3図
短絡カラー摺動部構造図
-4-
E7090796
2.動
作
第1図は現在ブラシが下限にあり、コレクターは短絡されていない状態(電動機の始動
位置)になっております。
本体電動機が始動を完了し運転状態に入りますと、ワークハンドに通電されワークハン
ドの駆動部が押し出されます。ハンドルおよびレバーは、ワークハンドに従動して操作
シャフトに固定されたアームによりハンドルレバーを駆動し、ハンドルレバーに固定さ
れたミニベアリングにより、短絡カラーを主電動機シャフト面で移動させ接触体とブレ
ードをかみ合わせてコレクターの短絡を行います。この短絡カラー移動の際、短絡カラ
ーとミニベアリングとの間で、接触摺動音(ジャー)が発生しますが、始動を完了し運
転状態に入りますとこの音は、消失します。
一方ブラシの引き上げは、板カムの曲面によりコレクターが短絡した時点から徐々に板
カム自体をばねにより上方へ引っ張り、ブラシホルダースタッドに固定されたピンを引
き上げます。このため、ブラシホルダースタッドが回されてブラシホルダースタッドに
固定されたブラシを引き上げます。
コレクターの短絡およびブラシの引き上げが完了しますと、レバーとハンドルの中央部
に設けられた止め金の尾部が、ストッパーにより押されてレバーとハンドルのロックを
外します。さらにワークハンドを駆動しますと、ハンドルの側面がストッパーに当たり
ストッパーを支点とする運動に変わります。このためレバー以下が逆方向に駆動されて
ミニベアリングが短絡カラーより逃がされて、運転中の当りを防止させております。
ワークハンドの停止は、ワークハンド駆動部ジョイントが止めねじに当ると反力が作用
してワークハンドに内蔵されたマイクロスイッチを作動させるようになっております。
第1図の想像線はモーターの運転状態を示します。
3.手動操作の仕方
操作電源の事故、停電等で手動による操
作の必要な場合は次の通り実施してくだ
さい。
(1)
ワークハンドの端部のキャップをド
ライバー等で取り外してください。
(2)
付属のターニングハンドルを中空シ
ャフト端部より挿入し中空シャフト
のスリットに合わせてください。
(第5図参照)
(3)
操作ターニングハンドルでワークハ
ンドのロータを回して行います。
(第4図参照)
(4)
時計方向は運転→始動位置へまた反
時計方向は始動→運転位置に装置は
移動します。
(5)
手動操作に際し、透明カバーよりワークハンド駆動部のジョイントが、制限いっぱ
-5-
E7090796
いに移動してターニングハンドルが重たくなるのを確認してください。
4.マイクロスイッチ接点の調整
マイクロスイッチの接点の調整は、弊社で実施していますので、通常は調整する必要が
ありません。マイクロスイッチや制御用端子箱を動かすと、マイクロスイッチの接点タ
イミングがずれることがありますので、この部分は動かさないよう注意ください。やむ
を得ず調整が必要な場合のみ実施してください。
4.1
ワーク・ハンド内、マイクロスイッチ接点の調整(第4図、第5図参照)
1)調整は、運転方向にターニングハンドルを回してください。(第4図参照)
2)スプリングが働き、ハンドルが重くなってから約 1/3 回転まわしてください。
3)その時点でマイクロスイッチの接点が、OFF となるように調整してください。
4)始動方向も同様に調整してください。
4.2
コレクターブラケット内、マイクロスイッチ接点の調整(第 13 図参照)
1)カムの戻りを考えて、図示“X”寸法を約3mm のところにセットしてください。
2)“OFF”になった接点が、カムの戻りにより“ON”になるのを防止するためです。
3)インターロック接点 72,73、上限指示ランプ接点とも同じように調整してください。
5.保守の仕方
(1)
ブラシの交換
ブラシが約 1/2(12mm)まで摩耗したら、コレクターカバーを取り外し次の通りブラ
シ交換を行ってください。(第6図参照)
まず割ピンを抜いてブラシ固定用の
ピンを取り外します。次にシャンク
固定用の六角ボルトを緩めてブラシ
ピクテール線を取り外しブラシを引
き抜いてください。
新しいブラシを取り付けましたらブ
ラシの位置(ブラシホルダースタッ
ドに対するシャンクの取付角度)を
調整してください。この場合、短絡
装置をブラシ上限位置(運転位置)
にセットした状態でコレクターリン
グとブラシの隙間を約4~5mm に調
整してください。ブラシの交換は1
台分6個を同時に行ってください。
28 と◯
29 のかみこみ量が1mm)状態で、ブラシが
ブレードと接触体が1mm 以上接触した(◯
コレクターリング表面より浮く状態を確認してください。もし、ブレードと接触体がか
みこむ前に、ブラシが浮き上がった場合はブレードと接触体部で、スパークが発生し溶
損することがあります。
(2)
短絡カラー駆動用ミニベアリングの交換
ミニベアリングの破損、異常音の発生等がありましたらコレクターカバーを取り外し、
-6-
E7090796
次の通り行ってください。
(第7図参照)
コレクターを短絡の状態にしますと、ミニベ
アリング部分は最寄りの位置になります。こ
の状態でコレクターブラケット内側のベア
リング取付ボルトを緩めてください。ベアリ
ング取付ボルトにミニベアリングが固定さ
れた状態で取り外せます。
新しいミニベアリングをベアリング取付ボ
ルトに打ち込んでからハンドルレバーに締
め付けてください。
ミニベアリングが破損してベアリング取付
ボルトより取り外し困難な場合は、ベアリン
グ取付ボルトも新しいものをご使用願いま
す。
(3)
第7図
ブレード、接触体の交換
ブレードおよび接触体のスパーク等による面荒れ、過大摩耗が発生しましたらコレ
クターカバーを取り外し、次の通り行ってください。
(第8図参照)
交換するブレード、接触体部が最上部に来るようにロートルを回してください。
図示の六角ボルトを緩めて短絡カ
ラーより接触体を、またコレクタ
ーリングよりブレードを取り外し
てください。
新しいブレード、接触体の組み付
けは、まずブレードをコレクター
リングに固定します。
次にブレード先端に合わせて接触
体を短絡カラーに固定します。
この際コレクター短絡時のブレー
ドによる接触体の挟み量は、(第
9図)の寸法を目安として行って
ください。
また第 10 図の(A),(B),(C)の如く
にならぬように特に注意してください。
-7-
第8図
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第9図
接触片と板ばねに
隙間ができていな
いかチェックして
ください。
接触片とブレード
が片当りになって
いないかチェック
してください。
ブレードと接触片
が不平行になって
いないかチェック
してください。
第 10 図(A)
第 10 図(B)
第 10 図(C)
(4) 電動機本体部分解に伴なうコレクター部の分解、電動機のオーバーホール等でコレ
クター部の分解を必要とする場合は、次の通り行ってください。分解に際しては、
操作シャフトとレバーの分解は、短絡位置のタイミングがずれることがありますの
で極力避けてください。
万一操作シャフトとレバーの分解を行った場合は、弊社サービスステーションまた
は弊社工場へご相談ください。
コレクター部の分解は次の順序で行ってください。
① コレクターカバーを取り外してください。
② ブラシホルダー取付のシャンク固定ボルトを緩めて、ブラシをコレクターリン
グ面より引き上げてください。
③ コレクターリングよりロートルターミナル線を取り外してください。
④ コレクターリングを本体シャフトより引き抜いてください。
⑤ 短絡カラー駆動用のミニベアリング取付ボルトを両側共取り外してください。
⑥ 短絡カラーの本体シャフトより抜き取ってください。
⑦ ロッカーの取付ボルト(6ヵ所)を取り外しロッカーをコレクターブラケット
より取り外してください。この場合板カムのコイルばねを外してください。
⑧ コレクターブラケットを電動機本体部より取り外してください。コレクターブ
ラケットは、操作シャフトワークハンドが組立てられた状態で分解できます。
-8-
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6.点検および注油
(1)
短絡カラーしゅう動部
長期に渡り運転を中止した後は、電動機シャフトと短絡カラーしゅう動部に発錆す
ることがありますので、短絡カラーがスムーズにしゅう動できるかどうか、確認し
てから使用してください。
もし、錆付いてしゅう動困難な場合は、短絡カラーに外力を加え、シャフト面に薄
くグリースを塗布してください。グリースを多量に塗布しますと、飛散して接触体
部に付着し接触不良を起こす心配がありますので注意願います。
(2)
板カムしゅう動部
ハンドルレバーの板カムしゅう動部は、コロによるころがり接触となっております
ので、約3ヶ月に一度少量のマシンオイルを注油してください。
注油の際接触体部に油が付着しないように注意してください。
(3)
その他の注油箇所
図1〔
油 〕部に少量のマシンオイルを注油、また〔
グリース
〕部
に少量のグリースを塗布してください。
注油間隔は約 5000 回始動毎、または2~3ヶ月毎を目安に実施してください。
7.接続方法について
(1)
操作電源は、標準の場合、三相 200V―50/60Hz をご用意ください。400V等、他の
電源の場合もありますので銘板で確認ください。
(2)
リミットスイッチの端子接続は、端子配列通りにしてください。(第 11 図 端子配
列参照)ワークハンド(電動操作用モーター)の制御用には、7-13、9-14 の端
子をご使用ください。7-15、72-73 を使用しますと、電動操作用モーターが途中
で停止、電動操作機構に不具合の発生する原因になります。
(3)
ブラシ引き上げ回路図は、第 12 図を参照してください。
8.操作電源回路の点検
操作電源の接続に誤りがないかどうか、次の順序で確認してください。
(1) 電動機を始動状態にしておいてください。この場合、主回路は開放にして操作回路
のみ活かしてください。
(2) 手動操作の仕方を参照のうえ、手動にて、ワーク・ハンド駆動部のジョイントが透
明カバー中央部に位置するようにしてください。その後ターニングハンドルは、必
ずワークハンドシャフトから取り外しておいてください。
(3) 操作電源を投入してください。このとき、ジョイント部が起動側へ移動しているこ
とを確認してください。もし、ジョイント分が運転側へ移動した場合、ワーク・ハ
ンド・モータの回転が反対となるように接続変更願います。
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9.ワークハンドモータの保護
ワークハンドモータの焼損事故を事前に防止するために、サーマルリレー接点(L1 -
L2)を、ブラシ引上装置用操作電源の遮断および警報発信用の信号接点として使用して
ください。
10.機構部部品の摩耗耐量
下表に部品の摩耗耐量を示します。各部品の摩耗耐量は、短絡装置の使用状況によって
差異は出ますが、下表の寿命を目安として、部品取替の実施をお願いします。
表1
P№
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
部 品 名
ミニベアリング
接触体
ブレード
ブラシ
板カム
ブラシホルダースタッド
アーム
ハンドルレバー
レバー
短絡カラー
ストッパーピン
部品の寿命
寿命(回)
5000
10000
10000
右 記
30000
30000
30000
30000
30000
60000
10000
- 10 -
備
考
約 12mm 摩耗したら交換
立軸形のみあり
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端子配列
モーター側
+ + + + + ++ + ++ + +
W
V
U
L2
L1
13
7
15
9
14
72
73
+ + + + + ++ + ++ + +
リミットスイッチ適用
端子符号
適
用
備
7
13 ブラシ上限 OFF(ワークハンド押出制限用) ワークハンドの接点
7
15 ブラシ上限 ON(ブラシ引上完了信号)
9
14 ブラシ下限 OFF(ワークハンド引込制限用) ワークハンドの接点
72
73 ブラシ下限 ON (インターロック用)
U V W
L1
考
操作モーター制御専用
モーター本体より引き
込み
操作モーター制御専用
モーター本体より引き
込み
ワークハンド電源用端子
運転中 ( ブラシ引き上げ完
了信号専用)
ブラシ引き下げ完了、始
動可能
200V-50/60Hz(標準電源の場合)
L2 サーマルリレー端子
クリクソン2個
シリーズ接続
リミットスイッチの動作範囲
斜線部 ON
ブラシ上限
(運転)
空白部 OFF
ブラシ下限
(始動)
72
73
13
7
15
9
14
リミットスイッチの接点
①常閉端子
②常開端子
③共通端子
①-③常時 ON
②-③常時 OFF
第 11 図
巻線形電動機
電動操作形のリミットスイッチ説明図
- 11 -
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注、太枠範囲内は、電動機本体の装置に組み込まれています。
第 12 図
ブラシ引き上げ回路図
- 12 -
(注)
- 13 -
第 13 図
リミットスイッチ構造図
図示“X”寸法は、約3mm にセットすること
7-15 ブラシ上限表示用
72-73 インターロック用
フレキチューブ
シャフト
9
鍋小ネジ
6
8
鍋小ネジ
5
リード線
クリップ
4
7
マイクロスイッチ
3
称
取付プレート
名
2
ム
品
カ
部
1
№
E7090796
E7090796
11.主要部品形番号表
形 格・図 面 番 号
部 品 名 称
備 考
* 125CL
ワークハンド
* 160CL
* 200CL
200V-50/60Hz
IKCS-4P-0.1kW
WF-15SM
短絡装置
P 7078077 G1
P 7078130 G1
P 7081042 G1
コレクター
P 7081319 G1
P 7074861 G4
P 7081034 G3
コレクターブラケット
P 7078076 G1
P 7077598 G1
P 7081036 G1
ブラシホルダースタッド
V 37001553
K 7022439 G1
K 7018103 G1
ブラシ
K 7008685 G2
K 7022443 G1
K 7028102 G1
1台分6ケ
ブレート
K 7013291 #2
K 7016744 #1
K 7028088 #1
1台分3ケ
接触体
K 7009207 G1
K 7016875 G1
K 7028084 G1
1台分6ケ
ミニベアリング
626 ZZMW2
1台分2ケ
ベアリングボルト
V-37000855
1台分2ケ
マイクロスイッチ
V-10-1 A8-VAL2
1台分4ケ
ハンドル組立
M-7061143 G1
シュパンリング
K 7024570 G1
板カム
K 7026002
#1,2
K 7026003
#1,2
K 7028100 #1
アーム
V 17000579
V 17000580
K 7028097 #1
短絡カラー
K 7009205 #4
K 7016669 #1
K 7028089 #1
横軸形用
短絡カラー
K 7022492 #1
K 7026992 #1
K 7030997 #1
立軸形用
ストッパーピン
K 7038028 #2
K 7038028 #1
立軸形用(3ケ)
*125CL,160CL,200CL は、それぞれコレクターリングの外径がφ125mm,φ160mm,φ200mmの
ものを示します。
注)上表の図番号は代表例であり、手配が必要な場合は、弊社製造番号を明示され、問い合わせ
確認をお願いします。
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12.電動機構造断面図
№
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
部 品 名 称
固定子枠
固定子巻線
固定子押え板
固定子鉄心
回転子鉄心
回転子巻線
防風板
冷却ファン
軸受ブラケット
軸受
№
11
12
13
14
15
16
17
18
部 品 名 称
軸端キー
主軸
一次側端子箱
コレクターブラケット
コレクターカバー
点検カバー
ワークハンド
二次側端子箱
」
防滴保護形構造図
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№
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
部 品 名 称
固定子枠
固定子巻線
固定子押え板
固定子鉄心
回転子鉄心
回転子巻線
ファンカバー
内扇冷却ファン
軸受ブラケット
軸受
№
11
12
13
14
15
16
17
18
19
部 品 名 称
軸端キー
主軸
一次側端子箱
コレクターブラケット
コレクターカバー
点検カバー
ワークハンド
二次端子箱
外側冷却ファン
全閉外扇形構造図
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№
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
部 品 名 称
固定子巻線
固定子鉄心
回転子鉄心
回転子巻線
風道
内扇
軸受ブラケット
軸受
軸
一次側端子箱
№
11
12
13
14
15
16
部 品 名 称
コレクターブラケット
ブラシ
コレクター
コレクターカバー
ワークハンドモータ
二次側端子箱
立軸防滴保護形構造図
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E7090796
お問い合わせ先
東芝三菱電機産業システム株式会社
大形回転機第二部 品質保証課
〒852-8004 長崎県長崎市丸尾町 6-14
TEL:(095)-864-2480
URL: http://www.tmeic.co.jp/
東芝三菱電機産業システム株式会社
DN-3ZW371B
TM127B(201309)