裏サイトがいじめに 与える影響について - 阪南大学

裏サイトがいじめに
与える影響について
2013 年 1 月 25 日
阪南大学経営情報学部
5109215 播本佳大
1
目次
第 1 章 はじめに................................................................................................................... 3
第 2 章 学校裏サイトなどのネット上のいじめ ................................................................... 5
第 1 節 ネット上のいじめとは ......................................................................................... 5
第 2 節 学校裏サイトとは ................................................................................................ 6
第 3 章 学校裏サイトについての分析 .................................................................................. 8
第 1 節 目的 ...................................................................................................................... 8
第 2 節 「S 小学校」
、
「M 小学校」の裏サイト ............................................................... 8
第 3 節 分析方法 ............................................................................................................. 10
第 4 節 分析の適用 ......................................................................................................... 13
第1項
「S 小学校裏サイト」 ................................................................................ 13
第 2 項「M 小学校掲示板&裏サイト」 ........................................................................ 16
第 5 節 分析結果 ............................................................................................................. 19
第 4 章 考察 .................................................................................................................... 21
第 5 章 まとめ .................................................................................................................... 22
参考文献 ............................................................................................................................... 22
2
第 1 章 はじめに
近年、マスコミなどの、マスメディアで、子供の自殺についての、ニュースが、たくさ
ん取り上げられている。平成 22 年に、学生・生徒の自殺者が 1029 人に達した[表1参照]。
1200
(人)
1000
876
800
600
829
634
673
400
675
621
617
767
618
569
509 535
592 562 554
482
617
653 617
549
825
740
818 756
788
673
861
972
885
784 873
1029
928
945
200
0
S
5
3
S
5
5
S
5
7
S
5
9
S
6
1
S
6
3
H
2
H
4
H
6
H
8
H
1
0
H
1
2
H
1
4
H
1
6
H
1
8
H
2
0
H
2
2
表1 学生・生徒の自殺者の推移
この子どもの自殺の原因は、
「受験ノイローゼ」、
「学校の先生によるパワーハラスメント」
、
「両親による虐待」など、様々な原因がある。しかし、その数ある中で、「学校裏サイト」
が関わっているには、
「いじめ」である。この「学校裏サイト」というものは、インターネ
ットというものが急激に広がっていくうちに、でてきたものである。しかし、インターネ
ットの急激な広がりの反面、親や学校の教師、つまり大人の、子どもに対する情報倫理教
育が不十分であったと判断できる。それに加え企業も、子どもの健全な育成などを考えな
い商売を行ってきた。とくに「いつでもどこでも便利におもしろく使える」携帯電話の子
どもへの売り方、与え方は、情報倫理教育が不十分な子ども達にとって魅力的なものであ
った。インターネットというメディアの利用には、大人にはよくても子どもには悪いとい
うものが多々ある。携帯電話という商品は、子育てや教育の助けにならず、むしろ妨げに
なりうる場合が多いと考えている保護者もいる。しかし、そういった悪い面ばかり、クロ
ーズアップされているが、コミュニケーションのツールとして、大人のみならず子どもに
も今や必要不可欠なものとなっている。本論文ではその理由を、子どもたちが夢中になっ
ている人気のインターネット・サービスの利用の実態で説明する。
なお、今の子どもたちが持っている「携帯電話」は、「電話」としての機能を大幅に超え
ている。通話はもちろん、それ以上にインターネットができるように進化してきた。画像
や動画や音楽などを、ダウンロードしたりアップロードしたりできる上に、ショッピング
やオークションのサイトに行けば何でも買うことができる。インターネットという点に限
3
り、今や家庭のパソコンと比べても遜色のないレベルの機能が付いている。
2007 年7月におきた滝川高校いじめ自殺事件で、
「学校裏サイト」と呼ばれるインターネ
ット遊びの内容が、大人達にも知られるようになった[2]。それは子ども達によるわいせつ
情報や誹謗中傷など、有害な情報の発信基地ということである。本論文では実例を紹介し
ながら、
「学校裏サイト」の現状を紹介し対策を解説する。第2章では「学校裏サイト」を
含む「ネットいじめ」についての現状について説明をする。第3章では実際の「学校裏サ
イト」の現状を分析し、第4章では分析の結果をもとに、「学校裏サイト」についての対策
を検討」する。
4
第2章
第1節
学校裏サイトなどのネット上のいじめ
ネット上のいじめとは
「ネットいじめ」とは、図1に示すように、インターネット上で「学校裏サイト」や掲
示板などを利用し、特定の者(いじめられる者)に対して行われる誹謗中傷などの新しい
形のいじめを指す。携帯電話が、社会全般に急速に普及し、子供たちのメールやインター
ネットの利用が増加する中で起きた問題である。携帯電話やパソコンなどの機器で、
「学校
裏サイト」などのネット掲示板に、いじめようとする相手に対する悪口や、その相手の個
人情報を無断で掲載する行為である。
学校裏サイトなどネット掲示板
誹謗・中傷
誹謗・中傷
ショック
閲覧
図1
ネットいじめ
「ネットいじめ」には、従来の「いじめ」にはなかったいくつかの特徴がある。インタ
ーネットや携帯が出現する前は、学校や塾などで辛い「いじめ」遭っても、その場を離れ
て自宅へ戻れば、一時的ながらも「いじめ」から逃れることができた。いじめる相手から
物理的に距離を置くことで、つかの間の休息を得られたのである。
ところが「ネットいじめ」では、24 時間、どこにいても攻撃の手が伸びてくる。学校か
ら家に帰って、晩御飯を食べてお風呂に入って、お気に入りの音楽でも聞きながらリラッ
クスしている時に「死ね」と携帯にメールが入るのだ。土日ともなれば、暇にまかせて「学
校裏サイト」へ大量の誹謗・中傷が書き込まれる。被害者は、食事をしている時でも、テ
レビを見ている時も、常に針のむしろに座らせられている状態からは逃れられない。この
ようにして、被害者は精神的に追い詰められる[2]。
「ネットいじめ」がそれまでの「いじめ」と決定的に違う点は、「匿名性」である。ネッ
トへの書き込みやメールの送信は、本名を明かさなくても行うことができる。書き込みや
5
メールを見た被害者は、相手が誰であるのかを知ることができないのである。被害者が普
段仲良くしている友人でさえも、陰でこっそり書き込んでいるのではないかと疑ってしま
う。このようにして、顔の見えない「ネットいじめ」は、被害を受けている子供を人間不
信に陥らせる。加害者を見つけられないため、教師や親に相談することを諦めてしまう。
いじめる方も、ばれないことがわかっているので、内容がエスカレートしていく。インタ
ーネットの登場は、いじめる側にとっての様々な障害を取り払い、「いじめ」という行為へ
の敷居を低くしてしまったのである。
第2節
学校裏サイトとは
学校裏サイトとは、狭義では「ある特定の学校の話題を扱う非公式の匿名掲示板」のこ
とを指す。また、
「学校非公式サイト」や「学校勝手サイト」とも呼ばれおり、子供が勝手
に実在の学校の名前をつけて開設したサイトで、子供たちのインターネット上での溜まり
場になっている。
「学校裏サイト」には、図2のように、
「全国版」と「地方版」の二つに
分類できる。
「全国版」とは、文字通り全国の小中高生の利用、活用を目的とした「学校裏
サイト」である。全国の小中高が掲示板を閲覧でき、書き込みをすることもできる。特定
地域、特定の学校の生徒たちの利用、活用を目的として、子ども自身が開設し、実際の学
校名を掲げた掲示板が「地方版」の「学校裏サイト」である。この「地方版」の「学校裏
サイト」を閲覧したり、書き込みをしたりするのは、ほとんどがその学校の生徒である。
この「全国版」と「地方版」では利用目的が基本的に異なっている。
Teen’s 学園
学生の性知識
全国版
高校生広場
「全国学校サイト
ランク」などのポ
ータルサイト
東京都○区○中
大阪府○市○中
地方版
福岡県○市○○高校
図2
学校裏サイトの構造
「全国版」は、学校名がついていない「学校裏サイト」で、全国あるいは広域ブロック
例えば、関東、関西、九州からの生徒の閲覧書き込みを想定した「学校裏サイト」である。
この「全国版」は、小中高生からの広域の交流を目的としたものである。この「全国版」
6
でやりとりされる内容の多くは、恋愛のことや趣味を同じくする者同士の交流であったり
する。つまり小中高生の広域的情報交流場である。そしてそのような情報交流を通じて、
出会ったことのない男女が実際に会うこともできる仕組みになっている。
「地方版」は、実在の学校名が付けられた「学校裏サイト」である。この「地方版」で
のやりとりの多くは、特定の学校に関する話題であることが多い、例えば、学校生活のこ
とや部活動、教師のことなどである。その学校と関係がない人間が会話に加わることは難
しいが、在校生や卒業生である場合は、
「全国版」より身近で親しみのある話題が多い。そ
のために参加が容易な掲示板である。生徒らの情報交流の場として「地方版」は、一見無
難で楽しいものである。しかし、
「地方版」には問題点が存在する。
実名や実名が推定できる書き込み、例えば虫食いといわれるもので○本○大などでの誹
謗中傷が多い点である。
「地方版」の「学校裏サイト」は、匿名性を利用し、自分の正体を
明かさず、陰湿な手口で自分の気に入らない相手を傷つけることもできる媒体である。
7
第3章
第1節
学校裏サイトについての分析
目的
近年、マスコミなどの様々なメディアで「いじめ」というものが、大きくクローズアッ
プされている。2012 年、全国公私立の小中高校などのいじめの認知件数が、文部科学省の
緊急調査で判明した〔3〕
。その件数は 14 万件を超えていた。メディアで「いじめ」の問
題が取り上げられる場合は主に学生が自殺をした時が多い[4]。そのニュースの際、「学校
裏サイト」の名前がメディアに登場する。「学校裏サイト」という言葉そのものは、メディ
アでも扱われることが多くなっているので、世間の認知度は非常に高い[5]。しかし、その
実際の状況はあまり知られていない。本項目では、その現状を明らかにするとともに、そ
の対処方法も検討したい。
しかし、ただ実際の状況を書くだけでは、対処方法を検討することができない。そのた
めに本論文では、
「学校裏サイト」内のコメントを分類別に分け、分析する。そして、その
コメントから考えられるコメントした者の心理を推測する。そして、その推測された内容
から、
「なぜそのようなコメントを書き込んだのか」を考える。 そうして、どのような問
題が発生しているのかを見つけ出す。その見つけた問題に対する対策を講じる。それが本
項目の目的である。
第2節
「S 小学校」、
「M 小学校」の裏サイト
本項目で分析の対象とする「S 小学校」と「M 小学校」の「学校裏サイト」とは、どの
ようなものであるかの説明をする。
この二つの「学校裏サイト」は、どちらも、「MILK CAFÉ」というサイトに、存在し
ている。サイト自体は健全なサイトであり、情報交換の場としての機能を果たしている。
しかし、このサイトの中には、いくつかの小学校の掲示板が存在している。そして、その
中のいくつかには、この「MILK
CAFE」というサイトの「中高生・大学受験の掲示板」
というスローガンに違反している。何故、本論文内で、二つの「S 小学校」と「M 小学校」
の「学校裏サイト」を分析したのかというと、それには2つの理由がある。
まず、第一にこの二つのサイトのタイトルに堂々と「S 小学校裏サイト」
、「M 小学校掲
示板&裏サイト」と「学校裏サイト」であることが堂々と明記されているからである。他
の掲示板は「A 小学校掲示板」や「B 小学校の人集まれ~」等の、コメントであった。それ
に対しこの二つは「学校裏サイト」であることを隠そうともしていない。
近年は「学校裏サイト」という言葉はメジャーなものとなっている。その為、生徒や先
生も「学校裏サイト」という言葉に敏感になっている。そのためにタイトルを偽造し、中
身が「学校裏サイト」だとしてもタイトルは全然違うものにするといった方法が常套手段
となっている。このような手段を用いる理由は「裏サイト」と明記すれば学校関係者にそ
8
のサイトの存在を知られるリスクが高くなるからである。知られるリスクが高いと利用者
が増えない。そうなることを危惧した上での手段である。
タイトルを偽って運営されているサイトが多いなか堂々と「裏サイト」と名乗っている
このサイトは、非常に稀有な存在である。しかし、ほかのサイトよりも利用者が多い。そ
の理由は「S 小学校」と「M 小学校」の生徒にとって、学校関係者に知られるリスクと天
秤にかけてもプラスになる旨味が、この2つのサイトにあると考えたからである。
9
第3節
分析方法
①侮辱
②理解不能の発言
学校裏
サイト
③個人情報の掲載
手動
分析
④普通のコメント(雑談)
⑤問題発言に対する注意
⑥授業や行事の感想
図3 コメント分類
今回の分析にあたっての作業は図3のようにコメントを6つに分類することである。コ
メントを分けるこの作業の方法はサイト内のコメントを読み、手動で分類することである。
その中で、比較的にコメントのわかりやすいもの、例えば「侮辱」や「授業や行事の感想」
などは、比較的容易分類した。しかし、
「普通のコメント」や「理解不能の発言」の分類は、
「侮辱」や「授業や行事の感想」のように容易に分類できない。
「普通のコメント」や「理
解不能の発言」は、前後のコメントとのつながりを分析する。「普通のコメント」は、周り
のコメントとのつながりがある。逆に「理解不能の発言」は周りとのつながりが一切ない。
このつながりがあるかないかの判断方法は、サイト内のコメントを全て読むことで実現し
た。
このように、
「S 小学校裏サイト」、
「M 小学校掲示板&裏サイト」の2つの「学校裏サイ
ト」内にある全てのコメントを何回も読み返すこと。それが今回、自分が行った分析方法
である。次からの①から⑥までの項目では全部で6つに分けた分類の各々に対する自分の
根拠を述べる。
① 侮辱
侮辱の意味は、相手を軽んじ、はずかしめること。見下して、名誉などを傷つける
ことと、辞書にはある。しかし、今回自分が分析した「S 小学校裏サイト」
、「M 小学
校掲示板&裏サイト」の二つのサイトのコメントは、ハッキリといって雑なものが多
い。その上、侮辱する相手を定めていないコメントも多い。例えば、唐突にバ~カと
いうコメントである。しかし、ここでは、そのようなコメントもここに分類する。そ
10
の理由は、コメントを読む自分にはわからないが、書いた本人には明確にその侮辱の
言葉をぶつけたいと思う相手がいると考えるからである
②理解不能の発言
分類名のとおり、理解ができないコメントを分けた分類である。例えば、
「 Unknown
to Death」という英語である。前後のコメントには、この英語に関係のある会話はな
かった。この英語の意味を翻訳サイトで調べたのだが、意味は「死ぬほど未知です」
だった。英語の授業についての会話など、この文が答えになるような質問、この文に
対する回答を前後のみならず履歴全てを見たのだが、見当たらなかった。
このように、そのコメントだけが、周りのコメントから完全に孤立しているコメン
トをこの分類に分ける。
③個人情報の掲載
個人の情報を掲載しているコメントを分けた分類である。ここで、規定する個人の
情報とは、個人を特定できる情報を指す。例えば「N 林の事は、よく知っていますよ。
N 林、六年 A の中の B と付き合っているそうですよ~」である。
このコメントは「N 林」という個人名を出すだけではなく、
「A 組の B」という人物の
イニシャルをも出している。仮に、この二人が付き合っているという情報がでたらめ
であっても、小学生という非常に敏感なお年頃の子供にとっては格好のからかいの温
床となってしまう。そして、そのからかいがキッカケとなって、いじめに発展してし
まうかもしれない。もし、
「N 林」
、
「A 組の B」という人物名すらウソだった場合でも、
「誰かと誰かが付き合って」いるかもしれないという情報は一つのクラスに波紋をよ
ぶには十分である。
このように、そのコメントが本当かウソか、重い情報か軽い情報かに関わらず、個
人の情報が掲載されているコメントをこの分類に分ける。
④普通のコメント(雑談)
分類名のとおり、普通のコメントを分けた分類である。この分類は、他の分類と比
べて、コメントを読んだ者に与える影響は少ない。しかし、ただのコメントであって
も、
「初めてこれを見た! ヤバコメいっぱいだああああああ」と無神経に侮辱コメン
トを煽るコメントも多々見受けられた。
ここに分けられているコメントは、そのコメントだけでは害のないものが多いが、
悪影響を少なからず与えるものもまたある。
⑤問題発言に対する注意
注意や警告のコメントを分けた分類である。この分類のコメントは、基本的に受け
11
身のコメントが多い。コメントした者が問題と感じるコメントに、ついて注意し、コメ
ントの撤回もしくは、反対意見を述べる場合が多い。なので、分類は比較的に簡単であ
った。分類は簡単ではあったが、注意の仕方は人さまざまで、熱心に長文で注意する者、
呟くように短文で注意する者、とこの分類の中だけでいくつかの分類分けができるほど
多種多様であった。
⑥授業や行事の感想
分類名のとおり、授業や行事の感想を分けた分類である。この分類は、あくまで行
事や授業についてのコメントなどで、クラスメイト等、学校関係者についてのコメン
トは、侮辱や個人情報の掲載、普通のコメントに分類している。
この分類は感想のコメントを分けたものであるが、その大半は「~がだるかった」、
「~がつまんなかった」などの否定的なものが多かった。
12
第4節
分析の適用
今回、分析した「S 小学校裏サイト」、
「M 小学校掲示板&裏サイト」の二つの「学
校裏サイト」のコメントの特徴について説明する。
第1項
「S 小学校裏サイト」
図4 「S 小学校裏サイト」管理人コメント(黒線には学校名が入る)
こ
の図4のコメントの「いい子サンはお断り」という言葉は、このサイトが「学校
裏サイト」であることへの背徳心の表れである。学校では言えないようなことを
書き込むことが、このサイトのメインであり、そのためには、反対意見をいう者
はいらないということを述べている。このコメントから、わかることは、このサ
イトの管理人が、世間一般の人が持っている「学校裏サイト」のイメージ、
「誹
謗中傷が多い」というものを体現しようとしているサイトである。
図 5 「S 小学校裏サイト」侮辱コメント
この図5のコメントには、ストレートに先生への侮辱が書かれている。ここ
に書かれていることは、大人からすれば、書いている側が理不尽なことを言っ
ているようにしか見えない。しかし、これ書いているのも、見ているのも小学
生である。子供たちの中には、このコメントを読んで「ウザい先生が6年生に
いる」と思ってしまう。これを先生が知れば、誰がこのようなコメントを書い
13
たのかわからない状況は先生を追い込むことになる。書いた本人には先生を追
い込もうという思いはない。なぜなら、本当に追い込むならば実名を挙げるハ
ズである。しかし、このコメントには実名はない。先生という呼称しか書かれ
ていない。このことからわかることコメントをしたものの真意は「先生への愚
痴」であろう。しかし、先生という呼称は相手を特定することが比較的容易で
図 6 「S 小学校裏サイト」理解不能のコメント
ある。このような人物を挙げて、侮辱することは、書き込んだ本人に意図はな
いのだろうが、相手を追い込む可能性のある非常に危険なコメントである。
この図6のコメントには、見てわかる通り、ひたすら笑い声が書いてある。
分析方法で書いたとおり、このコメントの周りのコメントは全て読んだが、こ
のコメントは、周りとのつながりはなかった。この「名無し」という者のコメ
ントもこの一つしかなかった。このコメントからわかることは、このコメント
を書いた者に意図はないということだ。このようなコメントは、現実の社会で、
例えるのなら、とるに足らない野次のようなものである。
図7「S 小学校裏サイト」個人情報の掲載
この図7のコメントの黒い部分は学校名であり、赤い部分には名前が書いて
ある。この名前の部分は、この図7では隠してあるが、本文には名前がバッチ
リ書かれていた。分析方法の節でも書いた通り、名前が書かれている上に、恋
愛というからかいの的となりやすいものである。このコメントからわかるこの
コメントを書いた者の意図は、中○志君のことを、からかいたいというもので
ある。このようなコメントは、書いた者にとっては軽い気持ちあっても書かれ
たものである。しかし、書かれたものにとっては、自分の名前がからかいの対
象になる恐怖がずっと続くことになる。
14
図8「S 小学校裏サイト」普通のコメント
このコメントは、見ての通りのあいさつのコメントである。分析方法の項に
は悪影響を与えるものもあると書いたが、図8のように悪影響のないものの方
が多い。このようなコメントが多いのが正常な掲示板であり、「学校裏サイト」
もまた、このようなコメントが多ければ問題も起きにくい。
図9 「S 小学校裏サイト」注意コメント
このコメントは、非常に善意溢れるコメントである。このように、善意ある
コメントは多々ある。このコメントからわかるこのコメントを書いた者の意図
は、
「一言物申したかった」である。このようなコメントは、非常に読むと共感
を覚えるが、
「学校裏サイト」を誹謗中傷のために利用するものにとっては邪魔
なものとである。したがって、このコメントに、何かを強制する力はない。
図 10
「行事や授業の感想」注意コメント
この図 10 のコメントには、入学式の手伝いが、めんどうくさかったことが書
15
かれている。このコメントを書いた者に深い意味の真意はない。ただのストレス
解消のつもりで書いているのであろうが、このコメントはたくさんの者が読むも
のである。下級生がこのコメントを読んだ場合、入学式がつまらない、めんどう
くさいものと思ってしまう可能性がある。
第 2 項「M 小学校掲示板&裏サイト」
図 11 「M 小学校掲示板&裏サイト」管理人コメント(黒線には学校名が入る
この図 11 のコメントは、掲示板の最初のコメントとしては、非常にオーソドック
スなものである。
「S 小学校裏サイト」のコメントと違い、このサイトを「裏サイト」
然としたものに、作ろうといった意図は見えない。ただ普通に雑談などをしたい
といった風である。このコメントからは、管理人が「裏サイト」然としたものを
作ろうとは思っておらず、いたって健全な掲示板を作ろうとしていることがわか
る。
図 12
「M 小学校掲示板&裏サイト」侮辱コメント
この図 12 のコメントは、侮辱のコメントとしては、非常に簡易なものであ
る。この「M 小学校掲示板&裏サイト」の全コメントを読んだが、「侮辱」の
コメントは、この文のような簡易なものしかなかった。このコメントからわ
かることが1つある。このサイトは、世間一般の持つ「誹謗中傷が多い」と
いう面を持たないということである。
16
図 13 「M 小学校掲示板&裏サイト」理解不能コメント
この図 13 のコメントは、英文である。この文の訳は「生命に知られていま
せん」である。英語としての形は間違っていなかったが、このコメントには
周りとのつながりはない。この「俱利伽羅」という者は、他にもコメントを
いくつも書き込んでいるが、このコメントに関しては周りの者は一切の返答
をしていなかった。このコメントからわかることは、この「俱利伽羅」とい
う者には、なにかこのコメントをキッカケに会話をしたかったということで
ある。しかし、周りからの返信がなく、結果的に理解不能になったコメント
である。
図 14
「M 小学校掲示板&裏サイト」個人情報の掲載
この図 14 のコメントには、個人情報に関する情報が掲載されている。こ
のコメントだけでも、「名無し」という人物が特定するには十分な情報であ
る。このサイトは、このコメントだけではなく、他にも個人情報に関する
コメントが多々ある。このサイトは「S 小学校裏サイト」と違い、「誹謗中
傷」のコメントが少なく、
「学校裏サイト」然としていない。それが原因な
のか、このサイトは個人情報の掲載コメントが多い。このサイトの閲覧者
に個人情報が知られることには不都合がないかもしれない。しかし、ネッ
ト上に名前などの情報が掲載されることは、どんなに安全なサイトであっ
ても危険である。このコメントからわかることは、このサイトは「誹謗中
傷」が少なく、個人情報が掲載されても、安全であるとコメントした者は
思っていることである。しかし、ネット上に個人情報を掲載する危険を理
解していないということである。
17
図 15
「M 小学校掲示板&裏サイト」普通のコメント
この図 15 のコメントは、趣味に関する情報が掲載されている。このコメン
トは「モンハン」と言われているゲームについての雑談の中の一部である。
このサイトは、このコメントのように、趣味についてのコメントが多い。そ
の為、
「S 小学校裏サイト」では多かった「侮辱」のコメントが少なかった。
その理由は、趣味などの会話が多く、その会話より楽しくするために、
「侮辱」
というも場の空気を悪くするものが淘汰されたのが原因である。
図 16
「M 小学校掲示板&裏サイト」注意コメント
この図 16 のコメントは、注意というより怒りに近い。この「M 小学校掲示
板&裏サイト」は、雑談などの普通のコメントが多く、注意を受けるコメント
自体が少なかった。その為、「S 小学校裏サイト」のように真剣なコメントは
ない。会話の延長線上としての、簡単な注意しかなかった。
図 17 「M 小学校掲示板&裏サイト」行事や授業の感想
この図 17 のコメントは、体育の感想である。このような内容は授業の終わ
りに教室で交わされている。このコメントの真意は特になく、軽い気持ちで、
言うなれば教室で友達に話しかけるような思いで書いたのである。このコメ
ントの内容自体は、日頃誰しもが心に持っているものである。その為、閲覧
者に与える影響は少ない。
18
第5節
侮辱
76 件
分析結果
理解不能の
個人情報の
普通のコメ
注意コメ
コメント
掲載
ント
ント
60 件
40 件
32 件
28 件
図 18
行事や授業の感想
20 件
「S 小学校裏サイト」のコメント統計
「S 小学校裏サイト」のコメント数は全部で 256 件である。その6割が読んだもの
に悪影響を与えるものであった。このサイトのコメントは「侮辱」、「個人情報の掲載」
のコメントは明らかな悪意のあるものが多かった。それとは逆に、
「注意」のコメントは
明らかな善意のあるものが多かった。「普通」のコメントはあいさつなどの必要最低限の
ものしかなかった。
「行事や授業」のコメントは愚痴などの悪口などがほとんどであった。
全体的にこのサイトは「誹謗中傷」が多い、
「学校裏サイト」然としたものだった。
19
侮辱
13 件
理解不能の
個人情報の
普通のコメ
注意コメ
行事や授業
コメント
掲載
ント
ント
の感想
15 件
71 件
520 件
18 件
43 件
図 19「M 小学校掲示板&裏サイト」のコメント統計
このサイトは8割近くが普通のコメントであった。
「普通」のコメントはたいていが
趣味のコメントであり、
「学校裏サイト」というより、ただの掲示板のようなものであ
った。しかし、
「学校裏サイト」然としていないので、「個人情報の掲載」が相手のこ
とを直接知れる程、純度の高いものであった。このサイトの利用者は倫理観をしっか
りとしたものを持っている。しかし、インターネットを使う上での基本的な知識が不
完全であった。
20
第4章
考察
今回、分析した「S 小学校裏サイト」、
「M 小学校掲示板&裏サイト」の二つの「学
校裏サイト」についての考察をここで述べる。
「S 小学校裏サイト」
、
「M 小学校掲示板&裏サイト」の2つの内容はどちらも名
前に「」小学校裏サイト」と冠しているが、内容は全く違うものであった。しかし、
この二つのサイトのコメントには共通点がある。それは、コメントが良いか悪いか
を別にして、コメントをした者が自分の気持ちを素直に書いていることである。そ
の証拠にコメントは短文かつ、文脈、形成のおかしいものが多い。これは、コメン
トをした者が掲示板での会話の中で反射的に書いたことが原因である。しかし、
「S
小学校裏サイト」は誹謗中傷が多く、「M 小学校掲示板&裏サイト」は雑談が多い。
この違いはどこから生まれるのか。それを自分は管理人の姿勢と注意のコメントの
質であると考える。
「S 小学校裏サイト」の管理人は、最初のコメントに「イイ子サンはお断り」と書
いてある。この「イイ子」という言葉を見た利用者は、
「イイ子がいらない=悪いコ
メントを書いてもいい」と考える。
「M 小学校掲示板&裏サイト」の管理人は、最初
のコメントに「お話しましょ~」と書いている。このコメントからは、閲覧者は、
この掲示板を「話をする場」と考える。このように最初の管理者コメントは、その
掲示板の趣向を決めるのに非常に重大なものである。
注意のコメントの質は圧倒的に「S 小学校裏掲示板」の方が長文かつコメント数も
多い。
「M 小学校掲示板&裏サイト」の注意のコメントは全体の3%しかなく、短文
である。しかし、結果として、
「M 小学校掲示板&裏サイト」は「S 小学校裏掲示板」
より、良い環境で掲示板が運営されている。これは、注意のコメントが侮辱行為の
抑止力にならず、反対に「火に油」のようなものになっている証明になる。この油
が上質であればあるほど、サイト内に「誹謗中傷」が多くなる。
この2つのサイトからわかることは、インターネットでの発言は気が大きくなり、
大胆な発言が増え、気持ちをストレートに書く傾向があるということである。そし
て、子どもは誹謗中傷を書くより、雑談などの自分の趣味の話をするのが好きであ
る。これは、2つのサイトのコメントの総数の違いから明らかである。
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第5章
まとめ
近年、いじめを苦に自殺する子どもが増えている。その原因としてインターネットを
使ったいじめ「ネットいじめ」が考えられる。
「ネットいじめ」とは、インターネットを
使い、相手に正体を知られずに、相手を追い込むことである。
「ネットいじめ」の主な場
として、
「学校裏サイト」というものが利用されている。この「学校裏サイト」とは、子
供が勝手に実在の学校の名前をつけて開設したサイトである。このサイトの利用者はそ
の学校の生徒が多く、
「学校裏サイト」でのいじめは現実の社会にも多大な影響を与える。
今回、自分が分析した2つのサイト「S 小学校裏サイト」、
「M 小学校掲示板&裏サイト」
から、実際の「学校裏サイト」の状況がわかった。そのわかったこととは、良い方にも
悪い方にも発言がストレートであるということ。人をけなすことを話すより、雑談など
の話をする方が好きであるということである。
「学校裏サイト」はいじめの温床であり、非常に危険である。しかし、その反面、情
報交換の場として有用な面もある。今後は、危険と思われる「学校裏サイト」を減らし、
有用なものについては継続させていくべきである。今後の課題としては、子どもへのイ
ンターネット教育を充実させ、危険と思われる「学校裏サイト」を開設させないように
していきたい。
参考文献
[1] http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/whitepaper/w-2012/html/gaiyou/s1_4.html
[2]http://www.j-cast.com/2007/09/27011729.html?p=all
[3]http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/24/09/__icsFiles/afieldfile/2012/09/11/1325
751_01.pdf
[4] http://www.j-cast.com/2012/07/10138897.html?p=all
[5] http://www.mobile-research.jp/investigation/research_date_071221.html
謝辞
本論文を作成するにあたって、期限ぎりぎりの時期の、卒論マラソンに一緒に参加した
北川照樹氏、五通佳来多氏、内匠航一氏、寺杣直也氏、中川貴智氏、西大輝氏、平田滉陽
氏、三好健太氏に感謝します。そして最後に専門分野とは、かけ離れたこの論文に最後ま
で付き合って頂きました花川典子教授に感謝します。お世話になりました。ありがとうご
ざいました。
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