材摠事務所 鈴木龍一郎 森林のCO2吸収・生物多様性調査 報告書

材摠事務所 鈴木龍一郎
森林の CO2 吸収・生物多様性調査
報 告 書
目
次
1.対象森林の概要
-------------------
1
2.森林管理・経営に関する評価
-------------------
3
3.森林吸収源の評価
-------------------
11
4.生物多様性の評価
-------------------
14
5.評価・算定数値向上のための指摘事項
-------------------
15
6.今後のモニタリングのためのデータ
-------------------
15
平成 23 年 6 月
株式会社 富村環境事務所
1.対象森林の概要
1.1 森林所有者の名称、対象森林面積
所有者名称
鈴木けい、材摠木材株式会社、
鈴木泰二郎、鈴木佳代子
鈴木けい、九鬼綾子、九鬼絵美、
九鬼裕美、鈴木龍一郎、
材摠木材株式会社
鈴木けい、鈴木龍一郎
対象森林所在地
三重県津市美杉町
面積
234.27 ha
三重県松阪市飯高町
277.62 ha
三重県多気郡大台町
238.12 ha
面積合計
750.01 ha
1.2 対象森林の所在地
三重県津市美杉町、三重県松阪市飯高町、三重県多気郡大台町
1.3 森林吸収源・生物多様性等評価基準
平成 22 年 3 月時点の有効基準
1.4 沿革
材摠山林が位置する三重県は、森林率 65%(約 37 万 ha)で、そのうちの民有林約 35
万 ha の人工林率は 62%であり、全国平均 46%に対して高い人工林率を誇り、古くから林
業が盛んに行われてきた地域である。とくに林業地として尾鷲ヒノキで有名な尾鷲林業、
隣接する奈良県吉野林業の影響を受け発達した熊野林業が有名である。特に、飯高
町の波瀬地区は波瀬林業と呼ばれる古くからの林業地として栄え、多くの中小製材所
もある。
材摠山林は、三重県津市美杉町、松阪市飯高町、多気郡大台町また北海道に山林
を所有しているが、これらは昭和 9 年~昭和 15 年にかけて木材生産地として山林を取
得し、材摠事務所によって管理されてきた。材摠事務所代表の鈴木龍一郎氏は、元禄
初期より材木商を営み続け、現在は材摠木材株式会社(昭和 9 年 材摠木材株式会社
として設立)の代表取締役である。
1.5 森林と管理等の概要
・ 山地は 30 度超す急傾斜が多い地形からなる。
・ フォレストック認定対象森林面積は 750.01ha。人工林率は 85%である。
・ 当初は作業員 25 名を雇用し森林管理、施業を行っていたが、平成 15 年頃より各森林
組合に管理を委託している。組合からは毎年施業実績や境界確認状況等の報告が
文書によって行われている。
・ ただし、現在でも各地に主任 1 名(計 3 名)を置き、組合に対する森林整備依頼、また
その確認、境界管理、組合や住民との折衝等を行っている。
・ 名古屋の事務所には管理統括を行う担当者が常駐し、組合への管理委託業務の指示、
交渉をおこなっているが、その監督業務については適切に行われていると判断される。
・ 山林管理を行っている各森林組合は、FSC 森林認証(グループ認証)を取得しており、
1
その中に材摠山林も含まれるため、組合がそのグループマネージャーとして FSC 森林
管理計画書に基づいた管理が行われている。
1.6 森林構成
面積(ha )
人工林・天然林別森林構成
140
120
100
80
スギ・ヒノキ人工林
60
広葉樹天然林他
40
20
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
齢級
・ 認定対象森林 750.01ha のうち、人工林は 626.95ha、天然林は 122.97ha であり、その
他に崩壊地として 0.09ha ある。人工林率は 83.6%である。
・ 人工林の内訳はスギ 68%、ヒノキ 32%である。
・ 人工林の林齢構成は、4 齢級までは存在せず、9 齢級をピークとし 5~13 齢級に集中
しており、人工林の 96%を占めている。
・ 80 年生以上の高齢林も 1%ほど存在する。
2
2.森林管理・経営に関する評価
2.1 森林管理・経営に関する定性評価
森林管理・経営面の具体的な審査チェックリストとして整理すると、以下のような評価
法が提示できる。なお、評価・採点の方法はチェックリストの下欄の「水準適合度」に基
づく。
森林管理・経営面評価チェックリスト
1 生物多様性・水土保全面
評価項目
所見
人工林率が高く、スギ・ヒノキ林が多くを占めるが、所
有地内には広葉樹林地も散在している。高齢林内
景観レベルでの多様性が には亜高木層、低木層が形成され、林内の階層構
造による多様性は維持されているものと推察される
維持されているか
が、多くの林分は、シカにより林床植物は食害を受
けており、階層構造が成立しにくい状態となってい
る。
渓流沿いに林道が付設され、渓畔林が形成されて
いない部分もあるが、所有者はバッファーゾーンの
必要性に関する認識はある。また、広葉樹等によっ
渓流沿いに広葉樹等の緩
て構成される渓畔林が維持されている小班もみられ
衝林帯(バッファゾーン)が
る。しかし、林内の小渓周辺では土壌の流亡が見ら
あるか
れる場所や、渓流沿いに伐倒木が散在・堆積してい
る状況が一部で確認された。
高齢林やシカによる食害の少ない林分では、亜高
木層、低木層が成立されている。ただし、当該地域
林分内は広葉樹が亜高木
はシカによる林床植生、皮剥ぎなどの食害が甚大で
層まで達しているか
あるため、発達した階層構造の形成は難しいものと
思われ、特に草本層が欠如している場合が多い。
美杉町内山林ではさえずり・地鳴きともに少なかった
鳥類種数は多いか
が、他の山林については、カラ類など樹林地性鳥類
の鳴き声が多く聞かれた。
やや間伐が遅れている過密の状態の林分も見られ
人工林が間伐遅れ等で荒 たが、荒廃状態にはない。全体的には適切に間伐
廃していないか
が行われ管理された森林であると言える。
自然保護区域として特に設定されていないが、広葉
自然保護区域等を設けて 樹林については、自然環境保全を進めていく区域と
いるか
している。また、約 80 年生の巨木林を保存林と位置
付けている。
急傾斜地であり、またシカによる摂餌圧が高いた
め、下層植生の被覆率は低い林分が多く見られた。
根上りや雨裂など、土壌侵 また、土壌侵食や根上がりなどはほとんど見られな
食の兆候が見られないか
いが、急傾斜地の多い大台町流域の山林では、渓
流沿いの表土が流亡した箇所が何カ所か確認され
た。
50~60 年生の立木は根張りが良い。また、調査地
林分内の樹木は根元が太
における完満度の平均は 70%であり、正常な状態で
く、根張りが良いか
ある。
水準
適合度
2
2
2
3
3
3
2
3
3
平均本数密度は 121%であり、全体的には適切な状
立木密度が適正で、等間 態であると言える。ヒノキ林において 50%前後の林分
隔で育っているか
が見られたが、ヒノキの適地ではなく、樹高成長が低
いためと考えられる。
林縁木は十分に葉量が多いとは言えない。また、
前述のとおり、シカによる食害の影響で低木群落
林縁木は葉量が多く、また
も形成されていない林分が多い。ただし、立木の
周囲に低木群落があるか
形状、根張り具合から風倒の恐れは低いと言え
る。
大台町は急傾斜地が多く、多雨地帯であるため小
規模の土砂崩壊は度々発生しているが、他の地域
災害の多発地帯でないか は災害の多発地帯ではない。各山林の流域には治
山堰堤が設置されているほか、山林内には山腹崩
壊、土壌流亡を防止する対策が施されている。
シカによる下層植生の食害は多く見られた。ま
病虫害などが蔓延していな た、大台町では特に樹皮にも被害が見られた。全
いか
国的に広く見られるスギノアカネトラカミキリ
によるアリクイ材が多発しつつある。
管理委託を受けている各森林組合は FSC のグル
ープ認証を取得しており、環境への影響軽減につ
環境影響軽減について認
いてはよく認識されており、環境対策方針等を作
識しているか
成している。森林所有者である材摠事務所も認証
メンバーとして、それらを認識している。
保安林、鳥獣保護区、砂 80~90%は保安林であり、材摠事務所および委
防指定地がある場合、これ 託管理者(森林組合)は保安林・鳥獣保護区・砂
を理解しているか。
防指定地に係る法規制を理解し、順守している。
土砂災害により崩壊した林道が修繕されていな
林道等の維持管理状況は
い状態が見られたが、次回施業時には改修の予定
適切か
である。
3
2
3
2
3
4
2
2 社会貢献面
評価項目
所見
収穫はあまり行われていないが、収穫された場合に
収穫材のトレーサビリティ は、数量、販売先等明確に記録され、委託管理先
は明確か
から材摠事務所へ報告がされている。これは、FSC
でも義務付けられている。
各地域に 1 名ずつ配置されている主任は、地元住
民であり、また委託管理先は森林組合であるため地
地域住民等との関わりが 元住民、地域社会との関わりは深い。
深いか
そのほか、山林内を流れる沢水の地元住民による
利用、山菜採取なども認めており、地域社会へ貢献
度は高い。
前述のとおり、山林管理において、地元住民の直
地域の経済の発展・維持 接・間接的雇用の場となっており、地域経済の発
に役立っているか
展・維持に貢献している。今後の収穫材は、各地の
市場から地元の製材所まで利用されると言える。
各森林組合が作成した FSC 管理計画書において
森で働く人の安全を確保し 安全管理体制等を明言している。ただし、年次監査
ているか
レポートにて現場作業者の足回りの装備が不十分
であるとの指摘を受けている組合もあった。
水準
適合度
3
4
4
3
4
森林を対象とした体験学習
材摠事務所独自では行っていない。
等を行っているか
1
森林法等に基づき、各森林組合により団地施業計
画が樹立されている。また、山林管理実務において
管理森林に関わる各種法 は委託管理先である各森林組合が、関係法令集を
を順守しているか
保持し、それに基づき法を順守している。
隣接山林との境界は明瞭であり、定期的に境界巡
視を行い、境界紛争は見られない。
4
3 経済面
評価項目
所見
人工林は 4 齢級までは存在せず、9 齢級をピーク
多様な林齢で構成され、林 とし 5~13 齢級に集中し人工林の 96%を占めてい
齢構成が平準化している る。収穫期を迎える林分が多いため、今後の更新
が見込まれるが、現状では林齢構成は偏っており
か
平準化されていない。
現在は継続的な収穫は行われていない。林齢構成
森林から何らかの持続的
や収穫に値する小班も多いこと等より今後の収穫
収穫があるか
増加が想定される。
管理の基盤となる森林簿・
森林基本図などは正確か
林道密度が高く、かつ機械
化が進んでいるか
森林経営は健全で、毎年
収益を持続して上げている
か
森林作業に従事する場を
提供し、安定雇用となって
いるか
点数
0点
1点
2点
3点
4点
材摠事務所が作成した森林施業図と委託管理先が
使用する森林基本計画図はおおよそ一致してい
る。また、植栽年度が明確であり、森林現況につ
いても正確であると言える。
林道密度は高くはない。林道開設に対し意欲があ
るが、基幹林道から所有地までの間に、複数の他
の所有者の山林が多く、奥地への林道、作業道の
設置が進まない団地もある。
現在、収穫はほとんど行われていないため、木材
販売による持続的な収益はない。しかし、齢級構
成等から今後の収穫が見込まれる。
前述のとおり、委託管理先は各地の森林組合であ
るため、材摠事務所は間接的に森林作業従事者の
雇用の場を提供している。
水準
適合度
2
2
3
2
2
3
水準適合度
判定内容
全体的な水準に関して森林資源が十分に管理されていない。このような状況が続く
または正しい行動がなされないと多大なる危険を生む可能性がある。
水準の最も大切な部分は満たされているが、長期的に見て森林管理責務遂行のた
めには改善の余地がある。
一定の規模、種類、多様性において良く管理されたとされるレベルを表している。こ
のレベルは良質な森林管理と言える。
森林管理者が結果を生むために特殊な障害を乗り越えた場合や、いくつかの水準
における特に高い評価が下された場合に付けられる。
革新的なまたはすばらしい管理状態によって、規準を達成して目覚ましい成果とな
ったことを認めるものである。
5
■森林管理経営面採点■
森林管理・経営面評価チェックリストの「1 生物多様性・水土保全面」「2 社会貢献面」、「3 経
済面」の各項目の水準適合度合計は以下のとおりである。また、社会貢献面・経済面の採点
は、合計得点を 1.25 倍し、60 点満点を最優良として評価した。その結果を下表に示す。
適合水準度合計点
評価得点
生物多様性・水土保全面
39
39
社会貢献面
19
経済面
14
41
生物多様性・水土保全面の評価得点は 39 点である。
社会貢献面、経済面の評価得点は 41 点である。
6
■現地写真とコメント
60 年生以上の高齢林では低木層も繁茂。
根張りが良くどっしりとした木。
間伐が遅れ、樹冠が閉鎖した林分
(樹冠開放度 10%)。
立木の成長、下層植生の生育にも十分な光量
(樹冠開放度 30%)。
シカによる樹皮の剥ぎ取り。材質に影響する。
林床に光が届いてもシカによる食害等の影響があ
り、下層植生は貧弱。
渓流沿いで確認したホンドテンの死骸。
枯れ木で確認したキツツキの摂餌跡。
7
渓流の河床に泥が堆積。自治体による、適切な管
理が必要。
山腹からの土壌の流亡を抑える丸太筋工。
沢水の引水施設。地域住民による利用を認めてい
る。
2 年ごとに境界確認。写真は巡視記録。境界は境
界杭やマーキングにより明確。
谷地(渓流)に溜まった伐倒木。渓流環境保全、災
害防止のためできるだけ処理することが望ましい。
渓畔林が形成されているが、記録的な台風により
渓流に土砂が堆積し、流木も散在している。
傾斜度 40 度を超す急傾斜地の林内。
スギの枝で確認された着生ラン。
8
2.2 林況指標による定量評価
現地で標準地を設定して、樹種、直径、樹高、樹冠長、曲がり度、病虫害等を調査し、
三重県林業研究所が作成した「三重県スギ・ヒノキ人工林 林分収穫表(長伐期施業対
応版) 平成 22 年 3 月」を用いて、林況を以下の総括表にまとめた。この結果、対象地
の森林に関しては次のような特徴等が所見として指摘される。
・ 本数密度指数の平均は 121.0%と、適正な値を示している。間伐が適切に行われて
いることが伺えるが、ヒノキ林で密度指数 50%程度の過伐気味の林分や、150%超の
間伐が遅れている林分もみられた。
・ 完満度の平均は 70.0%と全体的には正常な範囲である。しかし、林分によっては
80%を超すやや細り気味の立木や 60%を下回るずんぐりとした立木が見られた。
・ 樹冠長比は平均 24.2%であり、各調査地ともに 20%程度はあり、肥大成長を促す限
度の葉量は確保されている。
・ 病虫傷率は平均 4.8%であるが、シカによる樹皮への被害が多く見られた林分では
45%を示す。枯損率は平均 0.2%と低いが間伐が顕著に遅れている林分では 20%を
示す。曲がり率は 0%であり、曲がりのない通直な立木によって構成されている。局所
的にやや健全度の劣る林木が見られるが、全体的には健康な状態である。
・ 樹冠開放度は 18.0%とやや低く、間伐が遅れている林分が見られる。しかし、10%以
下の林分はヒノキ林であり、本数密度指数を見ると、必ずしも高い値を示してはいな
いため、樹冠の回復が早いことが原因とも考えられる。
林況調査総括表
調査地点
NO.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
調査地点
NO.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
樹種
スギ
スギ
スギ
ヒノキ
ヒノキ
スギ
スギ
スギ
ヒノキ
スギ
中勢1
中勢2
中勢3
飯南1
飯南2
飯南3
飯南4
飯南5
宮川1
宮川2
スギ・ヒノキ 宮川3
スギ 宮川4
平均
樹種
スギ
スギ
スギ
ヒノキ
ヒノキ
スギ
スギ
スギ
ヒノキ
スギ
スギ・ヒノキ
スギ
平均
林齢
年
62
30
54
58
35
36
62
69
30
30
40
41
林齢
年
62
30
54
58
35
36
62
69
30
30
40
41
平均直径 平均樹高 平均樹冠長 曲がり率 病虫傷率
cm
28.4
23.0
29.7
23.4
17.1
27.1
33.2
41.8
17.9
16.9
19.7
23.1
25.1
m
21.6
16.2
23.5
17.0
8.1
18.6
19.9
23.2
11.1
13.1
17.1
19.3
17.4
立木本数 立木材積
本/ha m3/ha
824 451.1
1,347 360.8
1,015 659.5
2,021 588.1
1,620 119.8
1,029 438.9
817 563.8
520 662.1
1,079 119.2
2,052 241.7
2,307 481.3
1,416 457.3
1,337 428.6
m
5.6
3.9
5.2
3.2
2.7
4.8
5.1
6.5
3.0
2.6
3.4
3.7
4.1
完満度
%
75.9
70.5
79.0
72.5
47.5
68.6
60.0
55.5
61.9
77.7
86.8
83.5
70.0
%
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
%
0.0
0.0
0.0
5.3
0.0
0.0
0.0
0.0
45.0
0.0
7.4
0.0
4.8
標準直径 標準本数
cm
本/ha
29.5
758
19.7 1,218
33.2
633
22.6 1,042
8.0 3,519
23.8
951
26.3
883
32.6
667
12.4 2,067
14.6 1,850
22.9
992
25.2
894
22.6 1,289
枯損率
%
0.0
0.0
0.0
20.8
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
1.7
最大/
最小直
1.9
2.1
2.0
3.4
1.8
1.8
2.2
1.4
1.5
1.6
2.2
1.7
2.0
樹冠開放度 樹冠長比
%
25%
15%
20%
10%
25%
30%
10%
30%
5%
15%
10%
15%
18%
%
26.2
23.8
22.0
18.6
33.3
26.0
25.8
28.0
27.4
19.8
20.1
19.3
24.2
直径指数 本数密度
%
96.5
116.3
89.4
103.6
212.5
113.5
126.1
128.1
144.0
115.5
86.1
91.5
118.6
%
108.7
110.6
160.4
193.9
46.0
108.2
92.4
78.0
52.2
111.0
232.6
158.4
121.0
9
■林況主要定量指標による評価採点■
森の健全度
評価採点
林況指標 本数密度指数
(調査結果) 完満度
枯損木率
樹冠長率
最大・最小直径比
良
3
121.0
平均的
2
不良
1
荒廃
0
0
0
70.0
1.7
24.2
2.0
林況指標
(採点)
本数密度指数
完満度
枯損木率
樹冠長率
最大・最小直径比
各事項得点
合計
評価得点
優良
4
3
4
4
2
8
3
6
2
16
32
林況指標による定量評価の各項目の得点を合計し、2 倍して、40 点満点を最優良として評
価した。その結果、林況指標による定量評価では、評価得点が 32 点である。
2.3 森林管理・経営に関する評価
■森林管理・経営に関する評価採点■
森林の管理・経営面に関する定性評価のうち、社会貢献面、経済面の評価得点及び林況
指標による定量評価の得点を合計し、100 点満点を最優良として以下の得点範囲で評価した。
その結果を下表に示す。
社会貢献面・経済面の評価得点
林況指標による定量評価得点
総合得点
総合得点
森林の管理・経営評価
100~81
優良
41
32
73
80~61
良
60~41
平均的
40~21
やや不良
21~
不良
森林管理・経営面では、総得点が 73 点であり、「良」と評価される。
10
3.森林吸収源の評価
3.1 森林吸収量
森林吸収源の評価においては、認定対象森林 750.01ha より崩壊地 0.09ha を除く、
749.92ha を対象とした。人工林は 626.95ha と、天然林 122.97ha を対象とした。
材積成長量は、森林資源調査および森林施業計画現況より判断し、「三重県スギ・ヒ
ノキ人工林 林分収穫表(長伐期施業対応版)」より、スギは地位区分Ⅱの地位指数 17、
ヒノキは地位区分Ⅲの地位指数 13 と判定され、ha 当たり材積から 5 年間の定期平均成
長量を計算し、面積を乗じて算出した。広葉樹天然林においては、森林家必携 1974
年版「内地一般雑木林平均収穫表」を用いて、スギ・ヒノキ人工林と同様に算出した。
拡大係数は人工林スギ、ヒノキには、それぞれスギ、ヒノキを、広葉樹林はすべてカシの
拡大係数を用いた。
炭素吸収量に関する計算は以下の計算式を用いた。
炭素量=材積成長量×容積密度×拡大係数×(1+地下部比)×炭素含有率(0.5)
3.2 森林吸収源の算定期間
平成 23 年 8 月 1 日~平成 24 年 7 月 31 日
3.3 森林吸収源に関わる森林状況と炭素吸収量
スギ林 齢級別蓄積、年間成長量及び年間森林吸収量
11
ヒノキ林 齢級別蓄積、年間成長量及び年間森林吸収量
広葉樹林 齢級別蓄積、年間成長量及び年間森林吸収量
年間炭素吸収総量は、1,436 t・C で、炭酸ガスに換算すると 5,270 t・CO2 である。
12
3.4 主伐・更新により吸収量から控除又は追加される森林吸収量(当初1年間)
◎ 吸収量から控除される樹種別齢級別主伐等はなし。
◎ 吸収量に加算される樹種別更新植量等はなし。
当初の 1 年間の主伐による控除される炭素排出量、更新による追加される炭素吸収
量により、差し引き炭素排出量は、0 t・C で、炭酸ガスに換算すると 0 t・CO2 が控除
される。
■森林吸収量の算定■
森林吸収源の評価対象森林 749.92ha の年間炭素吸収総量は、1,436 t・C で、炭酸ガス
に換算すると 5,270 t・CO2 である。
また、当初 1 年間の実炭素吸収量は、1,436 t・C で、炭酸ガスに換算すると 5,270 t・CO2
である。
13
4.生物多様性の評価
■生物多様性主要定量指標による評価採点■
森の健全度
評価採点
生態・環境
相対照度
指標
植物種数
(調査結果)
植生被度
A0 層の厚さ
土壌 A 層厚さ
相対照度
植物種数
(採点)
植生被度
A0 層の厚さ
土壌 A 層厚さ
各事項得点
合計
評価得点
優良
4
良
3
平均的
2
18
不良
1
荒廃
0
0
0
45
21
2.1
23.4
生態・環境
指標
2
3
2
2
4
4
3
6
13
26
生物多様性定量指標の 5 項目の得点(20 点満点)を合計し、それを 2 倍して(40 点満点)
評価し、これに定性指標である森林管理・経営に関する定性評価の「1 生物多様性・水土保全
面」の 15 項目の評価得点(60 点満点)を合算して以下の得点範囲で評価した。その結果を下
表に示す。
生物多様性指標による定量評価得点
生物多様性・水土保全面の水準適合度
総合得点
総合得点
生物多様性評価
100~81
優良
26
39
65
80~61
良
60~41
平均的
40~21
やや不良
21~
不良
生物多様性面では、総得点が 65 点であり、「良」と評価される。
14
5.調査・算定数値の向上のための指摘事項
・ 認定対象山林のみならず、当該地域はシカによる下層植生の食害や樹皮への被害が多
く見られる。試験区を設け、シカによる影響を受けない場合の生物多様性を図ることが望
まれる。本提案に対し、認定申請者も積極的に検討している。
・ 渓流への土砂、細粒物質の流入は、下流の流域の環境に大きな影響を与える。この現
象は上流域全体の問題であるが、対象山林の渓流部、谷地形部分では、土砂の流亡を
抑止する渓畔林が形成されていない部分が見られた。このような場所に対しては、山腹
保全工などの設置により、土砂を安定させ、植生の形成を促せるような対策が望まれる。
・ 林道の多くは、渓流に沿って設けられている。場所によっては林道沿道の植生が失われ
ているところがある。上記の渓流への対応と同様に、渓畔林の保全・回復対策が望まれ
る。
・ 一部の渓流で泥分が堆積し、渓流性動物の生息環境が劣化している状況が確認された。
これも山体全体の涵養機能に関わり、材摠山林に限ったことでない。しかしながら、治山・
砂防施設の設置に伴う土砂の流入が影響しているものと思われ、公共事業の実施にあた
っては、事前に環境影響の軽減化を図る対策を地域の担当者と十分に協議することが望
ましい。
・ 路網密度は低いが、今後の収穫増加が見込まれるため計画的に路網を整備してくことが
望まれる。
・ 管轄の森林組合に管理を委託しているが、各地に独自の主任を置き、材摠事務所として
森林整備に積極的に取り組み、自らの山林として責任持って管理している。しかし、材摠
山林全体の統一的な管理計画等が見られない。今後は、持続的な森林経営に向け、森
林資源情報の整備、管理とともに管理・経営計画を作成していくことが望まれる。
6.今後のモニタリングのためのデータ
(1) 森林認証データ
森林認証を認定した機関の名称 : ソイルアソシエーション ウッドマーク
認証の有効期間 : 2009 年 7 月 27 日~2014 年 7 月 26 日(中勢森林組合)
2009 年 1 月 28 日~2014 年 1 月 27 日(松阪飯南森林組合)
2008 年 3 月 5 日~2013 年 3 月 4 日(宮川森林組合)
認証対象面積 : 各森林組合の下記グループ認証面積内に含まれる。
1,281ha(中勢森林組合)
2,352ha(松阪飯南森林組合)
1,832ha(宮川森林組合)
(2) 森林施業計画データ
森林施業計画を認定した市町村の名称:津市、松阪市、大台町
施業計画の期間 : 平成 19 年 10 月 1 日~平成 24 年 9 月 30 日(中勢森林組合)
(団地計画)
平成 22 年 12 月 1 日~平成 27 年 11 月 30 日(松阪飯南森林組合)
平成 21 年 4 月 1 日~平成 26 年 3 月 31 日(松阪飯南森林組合)
平成 22 年 6 月 1 日~平成 27 年 5 月 31 日(松阪飯南森林組合)
平成 23 年 1 月 1 日~平成 27 年 12 月 31 日(松阪飯南森林組合)
平成 19 年 5 月 1 日~平成 24 年 4 月 30 日(宮川森林組合)
施業計画対象面積 : 各森林施業計画(団地)のうち、材摠事務所管轄森林の内訳は次のと
とおりである。234.27ha(中勢森林組合)
、328.67ha(松阪飯南森林組合)、240.54ha(宮
川森林組合)
、計 803.48ha である。
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認定調査 補足情報
1.調査日程
2011 年 5 月 18 日~20 日
2.調査者名簿
名前
中西修一
望月亜希子
原田敦子
所属
株式会社森林再生システム
株式会社森林再生システム
公立大学法人横浜市立大学
役職
主任研究員
研究員
研究補助
3.調査認定者
本認定調査の認定は、FSC 審査員の富村周平により行われた。
4.調査地点数
調査名
地点数
林分構造調査
植生調査
土壌調査
針葉樹林
12
12
9
広葉樹林
0
2
0
計
33
2
5.調査地点図
三重県津市美杉町
※青ピンは林分構造調査地点、赤ピンは植物調査地点
16
三重県松阪市飯高町
三重県多気郡大台町
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