情報科教育法第2回 「情報A」の授業づくり1

東京理科大学 理学研究科 理数教育専攻
情報科教育法後期第6回
授業を設計する(2) 情報A
太田 剛
(東京理科大学 清水克彦 先生のPPを使用しています。)
東京理科大学 理学研究科 理数教育専攻
授業を構成する要素
授業の目標
教師
教材
生徒
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授業作りの基本
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目標をよく理解する(学習指導要領解説を参考
にして)
内容をよく理解する(情報の内容)
生徒をよく理解する(レベル、興味関心など)
教材・教具をよく理解する(内容を具現化するも
のとして教材・教具)
指導方法の特質を理解する(教えやすいか、自
分に合っているかなど)
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授業の基本的なフェーズ
段階
その中身
導入
生徒に課題を把握させ、学習の目当ても持たせ、学習内
容について興味関心をもち、時間や単元を通じて、学習が
進んでいくようにする。
展開
実際の学習活動が展開する段階である。内容についての
理解や技能の定着、問題解決力の育成などを行なう
まとめ
単元や授業においてどのようなことが学ばれたのかにつ
いてまとめる段階。特に、習得に関する評価は大切
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授業と形成的評価
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授業の目標が達成されたかについて、評価を行
なっていく必要がある。
授業のなかに、先に評価のポイントを決めておく
必要がある。
評価結果に従って、授業の展開を変更していく
必要がある。
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情報科の実習の形態
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問題解決、調べ学習、プロジェクト型学習などの
「協同学習型」の実習
スキルの習得を目指した個人学習(ここでも「教
えあい」などの活動は大切)
協同学習型の実習では、グループ活動をどのよ
うに「運営するのか」ということが大切になる
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グループ活動における問題点
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グループ内で作業や学習への参加度に差が生
じてしまう。
グループとしての学習の成果がメンバーに共有
されたり、還元されてない
個人レベルの学習に散らばりがある:ある人は
きちんと学習でき、ある人はそうでない
グループ間の活動や学習の成果に差が生じる
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グループ活動の問題点を克服し、協同活動
を実現する
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グループの活動を、全員が参加し、生産的なも
のにする:協同学習
グループとしての学習の成果を、個人レベルの
学習の成果に:知識・技能の共有化
グループ間の学習の成果を、クラス全体の学習
の成果に:プレゼンテーション
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協同学習とは
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Cooperative Learning:複数の人間が一つのグ
ループになり、同一の課題に取り組む
協同の形態:
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協力型の協同:一つの課題をみんなで
分担型の協同:課題を分解して、それぞれが責任を
競争型の協同:競い合うことでよりよい成果を
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協同のための「協調」、協同による「協調」
成果をみんなが手に入れることが大切
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知識・スキル・方法の獲得:教えあう、相談する
認識の共有:一人の気づきをみんなのものに
発見・創造:個人では成し得ない成果を
リフレクション能力、メタ認知の獲得:自分とメン
バー、自己と他者の間で観察
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情報Aの目標
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「コンピュータや情報通信ネットワークなどの活
用を通じて、情報を適切に収集・処理・発信する
ための基礎的な知識と技能を習得させるととも
に、情報を主体的に活用しようとする態度を育て
る」
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情報Aの下位目標
情報Aの教育目標
情報活用の実践力の育成
基礎的な知識と技能の帰納的な理解
情報社会に主体的に参加する態度の育成
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情報Aの授業づくりの原則
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実習を中心として展開する
知識や技能は、帰納的・経験的に習得させる
身のまわりにある具体的な問題を解決すること
に取り組ませる
ここの内容をばらばらに扱うのではなく、一つの
まとまりのある課題に取り組ませる
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情報Aの授業スタイルのモデル
問題解決プロジェクト
型の学習
個人やグループが、一つのテーマ
に一定期間取り組んで、主体的に
学習や問題を解決していくという
教育方法
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指導要領に挙げられているプロジェクトのテーマ例
1:問題解決の工夫
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ある条件を満足するパソコンの機種と購入方法
を決める
模擬店の経営
修学旅行先での班別の行動計画
文化祭での研究発表の企画
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指導要領に挙げられているプロジェクトのテーマ例
2:情報伝達の工夫
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自己紹介
クラブ活動紹介
学校案内
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指導要領に挙げられているプロジェクトのテーマ例
3:情報の収集・発信
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作家○○の作品と生涯
行ってみたい国の仮想旅行記
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指導要領に挙げられているプロジェクトのテーマ例
4:情報の統合的な処理
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学校の歴史
文化祭の記録
遠足の記録
私たちの町の自慢
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指導要領に挙げられているプロジェクトのテーマ例
5:情報化の進展が生活に及ぼす影響
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販売業のPOSシステム
銀行のオンラインシステム
交通機関の予約サービス
電話等のコミュニケーションシステム
防災通報システム
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指導要領に挙げられているプロジェクトのテーマ例
6:情報化の進展が生活に及ぼす影響
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情報化の進展に伴う生活スタイルや仕事の内
容・方法などの変化
商取引や決済方式の変化
テクノストレス
コンピュータ犯罪
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情報Aの教科書の例
第1章
コンピュータネットワークの利用
第2章
電子情報ネットワークへの参加
第3章
電子情報ネットワークの成り立ち
第4章
電子情報ネットワークへの情報発信
第5章 インターネット社会における「自由・平
等・公正」
社団法人情報処理学会 情報処理教育委員会
初等中等情報教育委員会 作成
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単元を構成する
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目標を定める
目標に応じた学習課題を設定する
評価の観点・項目、その方法を定める
学習指導計画を立てる
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例えば、「(1)情報を活用するための
工夫と情報機器」では、どのようになる
か。(愛知県総合教育センターの例)
目 標
・情報Aの学習活動の導入的な位置付けとなるので、学習してい
く内容の見通しを大まかに示し、興味・関心をもたせる。
・実習を通して体験的に次のことを認識させる。
解決の手順を考えることの重要性
コンピュータや情報通信ネットワークの適切な活用の有効性
解決方法による作業効率や結果の違い
・伝達する情報により、適した提示方法があることを理解
伝達する相手にとってよく分かる表現の工夫
受け手に配慮した情報の伝達方法の工夫
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実習課題の設定
アについては、一つの問題に対して複数の問題解決の方法を試
み、それらの結果を比較する実習を設定する。学校の実習環境
に慣れ、今後の学習活動を円滑に行う準備となるようにする。
イについては、日常的で、様々な伝達方法が考えられるものを
題材とし、プレゼンテーションソフトウェアを用いた実習を設定す
る。次の(2)の導入ともなるので、(2)の実習とつながるように
課題を工夫し、ここだけで完結した活動にする必要はない。
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評価の観点
問題解決の手順の観点
・題材に対する問題を見つけ出しているか。事実を他の人に伝
わるように書き表しているか。
・意味をとらえ、問題の分類・構造化がされているか。
・問題の解決目標を決め、解決策を考えているか。
・目的に応じた情報機器の活用が行われ、適切な内容の情報を
収集しているか。
・一般に入手できる情報のほかに,独自の情報を入手するため
にどのような工夫を行っているか。
情報の伝達の観点
・受け手に分かりやすい表現を工夫しているか。
・適切な情報を、適切に発信しているか。
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実際の単元の構成
小単元
ア 問題解決の工夫
目標
解決手順の工夫と情報機器の適切な活用が、問題解決に有効
であることを理解する。
時間
6時間
学習
内容
実習
内容
1.身のまわりにある具体的な問題を解決する方法
2.情報機器の適切な活用方法
課題例:身のまわりにある問題解決の具体例は何か(文部科学省指導
要領の解説にあるもの)
グループごとに、テーマを設定させ、様々な情報機器を活用して、
問題解決を行わせる 。
実習課題例 :通学・通勤方法を考えよう。 携帯電話の料金を考
えよう。 旅行社を経営しよう。 ハンバーガー割引セール 虫の
歩み おこづかいの多い、少ない
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実際の単元の構成
小単元
イ 情報伝達の工夫
目標
伝達内容に適した提示方法を、実習を通して理解する。
時間
6時間
学習
内容
目的に応じた表現ツールの使い分け
実習
内容
[課題]伝達ツールにはどのようなものがあるか。(文部科学省指導要領
の解説にあるもの)
自己紹介・クラブ活動紹介・学校案内をするのにどのようなツー
ルを利用したらよいか考える。
実習課題例 :メールの使い方、暗号化を体験する、テクニカルラ
イティング
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情報Aの授業
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実習型、プロジェクト型の学習活動を中心に授
業を展開していく。
そのなかで、情報Aの基本的な内容を登場させ、
習得させていく。
情報科の基本的な内容には、技能、知識・理解、
関心・態度などがある
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コンピュータネットワークに関する基本
的な内容1
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「情報」とは何か
「メディア」とは何か(マルチメディアとマスメディ
アも含む)(メディアとメッセージ)
インターネット
WWW(World Wide Web)
ブラウザー(ソフト)
サーバー(プログラム)
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コンピュータネットワークに関する基本
的な内容2
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Webページ
ディレクトリー(ディレクトリー・サービス)
検索サービス
情報の伝達と評価(正しさなど)
個人情報とプライバシー
LAN(Local Area Network)とWAN(Wide Area
Network)
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コンピュータネットワークに関する基本
的な内容3
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プロバイダー
ネットワーク上のプロジェクト
プロトコール(プロトコール階層)
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電子情報ネットワークへの参加におけ
る基本的な内容1
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ファイル(入力、保存、読み出し)
ファイルとディレクトリー
電子メイル
利用者の認証(IDとパスワード):利用者の保護
電子メイルの受信・送信
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電子情報ネットワークへの参加におけ
る基本的な内容2
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ニュースグループ
メイリングリスト
Web上のBBS(Bulletin Board System)
メッセージ作成の原則
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電子情報ネットワーク成り立ちについて
の基本的な内容1
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情報の単位(ビット)
情報の表現(デジタルとアナログ:マルチメディア
情報とは)
符号化
さまざまな表現:整数、実数、画像、図形、音声、
動画
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電子情報ネットワーク成り立ちについて
の基本的な内容2
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文字の表現:さまざまなコードの存在(ASCII、
漢字コード、テキストとバイナリ-)
コンピュータの構成(いくつかの説明の仕方がで
きる:メタファー(比喩)の利用)
マルチメディア・テキスト
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ネットワークでの情報発信についての
基本的な内容
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プレゼンテーションとは
ハイパーテキスト(Hyper Text):階層、構造、始
まり
リンクという考え方
HTML(Hyper Text Markup Language):言語
そのものを教える必要性は現在はない。
よい表現とは:
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インターネット社会への参画に関する基
本的な内容1
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自由性(とモラルや責任)
平等性
公正性
著作権に関する考え方(文章のみならず音楽や
写真などあらゆるものに:課金をともなう)
引用と参照
商標などの取り扱い
東京理科大学 理学研究科 理数教育専攻
インターネット社会への参画に関する基
本的な内容2
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個人情報の保護(プライバシー)
盗用
反社会的な参画
バリアフリーの考え
インターネット社会の光と影
テクノストレスなどの身体への影響
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このような基本的な内容を、どの
ように学習活動の中に登場させ、
習得させていくかをデザインする
のが情報科の教員の役割である