物理フラクチュオマティクス論 Physical Fluctuomatics 第2回 確率とその基本的性質 2nd Probability and its fundamental properties 東北大学 大学院情報科学研究科 応用情報科学専攻 田中 和之(Kazuyuki Tanaka) [email protected] http://www.smapip.is.tohoku.ac.jp/~kazu/ 2009/4/23 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 1 確率の基礎知識 a. b. c. d. e. f. g. h. 2009/4/23 事象と確率 結合確率と条件付き確率 ベイズの公式と事前確率,事後確率 離散確率変数と確率分布 連続確率変数と確率密度関数 期待値,分散,共分散 一様分布 ガウス分布 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 今回 次回 2 試行と標本空間と事象 試行 (Experiment) :ある操作を行って得られる可能性のあ る結果の全体はわかっているが,そのうちのいずれかが得ら れるかは予知できない操作 標本点 (Sample Point):試行の結果得られる可能性のある 個々の結果 標本空間 (Sample Space):標本点の全体集合 事象 (Event):標本空間の部分集合 根元事象 (Elementary Event):1個の標本点だけからなる事象 空事象 (Empty Event):標本点がない事象 2009/4/23 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 3 試行と標本空間と事象 「サイコロを1回振る」 という試行の例 2009/4/23 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 4 全事象・余事象と差事象 「3の目がでない」 という事象は 「3の目がでる」 という事象の余事象 「3の目がでない」 という事象は 全事象と「3の目がでる」 という事象の差事象 2009/4/23 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 5 和事象 「奇数の目がでる」 という事象は 「1の目がでる」 という事象と 「3または5の目がでる」 という事象の和事象 2009/4/23 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 6 積事象 「3または4の目がでる」 という事象は 「4以下の目がでる」 という事象と 「3以上の目がでる」と いう事象の積事象 2009/4/23 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 7 空事象 「3以下の目がでる」 という事象と 「4以上の目がでる」と いう事象の積事象は空 事象である. 「3以下の目がでる」 という事象と 「4以上の目がでる」と いう事象は互いに排反 であるという. 2009/4/23 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 8 様々の事象のまとめ 全事象: Ω 事象 A の余事象(Complementary Event): Ac=Ω╲A 事象 A と B の差事象: A╲B 事象 A と B の和事象 (Union of Event): A∪B 事象 A と B の積事象 (Intersection of Event): A∩B 事象 A と B が互いに排反 (Disjoint): A∩B=Ф 事象 A, B, C が互いに排反 (Disjoint): [A∩B=Ф]Λ[B∩C=Ф]Λ[C∩A=Ф] 2009/4/23 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 9 確率の定義 Laplace による定義: 起こりうる標本点の総数が N 個あり, それらは同様に確からしい(Equally Likely)と仮定する. ある事象Aの標本点の個数が n 個であれば事象 A の起 こる確率(Probability) は p=n/N と定義する. 統計的定義: ある試行を R 回繰り返し行う.事象 Aの起 こる回数を r とする.試行の回数 R を増やしていくとき, r/R が一定の値 p に近づくならば,事象 A の起こる確率 (Probability) を p と定義する. r p R Pr A p R 2009/4/23 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 10 確率の定義 Kolmogorov による定義: 標本空間Ωから定義される任意 の事象 A に対して確率 (Probability) Pr{A} は次の3つの 公理を満たすものとして定義される. 確率の公理1. 任意の事象 A に対して PrA 0 確率の公理2. 全事象Ωに対して Pr 1 確率の公理3. 任意の2つの互いに排反な事象 A, B に対して PrA B PrA PrB 2009/4/23 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 11 確率の定義 公理2. 全事象Ωに対して 2009/4/23 Pr 1 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 12 確率の定義 公理3. 任意の2つの互いに排反な事象 A, B に対して PrA B PrA PrB 2009/4/23 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 13 結合確率と条件付き確率 事象Aの起こる確率 Pr{A} 事象 A と事象 B の結合確率 PrA, B PrA B 条件付き確率と結合確率 PrA, B PrB A PrA PrA, B PrB APrA 2009/4/23 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) A B 14 結合確率と事象の独立性 事象 A と事象 B が互いに独立である PrA, B PrAPrB 事象 A と事象 B が互いに独立であるときの 条件付き確率 PrB A PrB 2009/4/23 A A B B 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 15 周辺確率 標本空間Ωが互いに排反である M 個の事象 A1,A2,…,AM によって Ω=A1∪A2∪…∪AM と表されるとき PrB PrAj , B M j 1 結合確率 Pr{Ai,B} における事象 B の 周辺確率 (Marginal Probability) 簡略表記 PrB PrA, B A Ai B 周辺化 A B 事象 A の取り得るすべての互いに排反な事象についての和 2009/4/23 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 16 結合確率と周辺確率 事象 B の周辺確率 PrB PrA, B, C, D A C D A B C D 周辺化 2009/4/23 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 17 ベイズの公式 (Bayes Formula) PrA B PrB APrA PrB APrA 事前確率 (A Priori Probability) A 事後確率 (A Posteriori Probability) A Bayes 規則 (Bayes Rule) とも言う. B ベイジアンネットワーク 2009/4/23 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 18 ベイズの公式の導出 PrA, B PrA BPrB A PrA, B PrB APrA B P rA, B P rB AP rA P rA B P rB P rB PrB P rB AP rA P rB AP rA P rA, B P rB AP rA PrA, B A A A 2009/4/23 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 19 ベイズの公式による確率的推論の例 A 教授はたいへん謹厳でこわい人で,機嫌の悪いときが 3/4 を占め, 機嫌のよい期間はわずかの 1/4 にすぎない. 教授には美人の秘書がいるが,よく観察してみると,教授の機嫌の よいときは,8 回のうち 7 回までは彼女も機嫌がよく,悪いのは 8 回中 1 回にすぎない. 教授の機嫌の悪いときで,彼女の機嫌のよいときは 4 回に 1 回で ある. 秘書の機嫌からベイズの公式を使って教授の機嫌を確率的に推論 することができる. 甘利俊一:情報理論 (ダイヤモンド社,1970) より 2009/4/23 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 20 ベイズの公式による確率的推論の例(2) 教授は機嫌の悪いときが 3/4 を占め,機嫌のよい期間はわずかの 1/4 にすぎない. 1 Pr教授機嫌良い 4 3 Pr教授機嫌悪い 4 教授の機嫌のよいときは,8 回のうち 7 回までは彼女も機嫌がよく, 悪いのは 8 回中 1 回にすぎない. 7 Pr秘書機嫌良い 教授機嫌良い 8 教授の機嫌の悪いときで,彼女の機嫌のよいときは 4 回に 1 回である. Pr 秘書機嫌良い 教授機嫌悪い 2009/4/23 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 1 4 21 ベイズの公式による確率的推論の例(3) P r秘書機嫌良し P r秘書機嫌良し 教授機嫌悪い P r教授機嫌悪い P r 秘書機嫌良し 教授機嫌良し P r教授機嫌良し 7 1 1 3 13 8 4 4 4 32 1 Pr 教授機嫌良い Pr教授機嫌悪い 4 Pr 秘書機嫌良い 教授機嫌悪い 2009/4/23 3 4 1 7 Pr 秘書機嫌良い 教授機嫌良い 4 8 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 22 ベイズの公式による確率的推論の例(4) P r 教授機嫌良し 秘書機嫌良し 7 1 P r 秘書機嫌良し 教授機嫌良し P r教授機嫌良し 8 4 7 13 P r秘書機嫌良し 13 32 7 Pr 秘書機嫌良い 教授機嫌良い 8 Pr教授機嫌良い 1 4 13 Pr秘書機嫌良い 32 2009/4/23 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 23 確率の基礎知識のまとめ a. b. c. d. e. f. g. h. 2009/4/23 事象と確率 結合確率と条件付き確率 ベイズの公式と事前確率,事後確率 離散確率変数と確率分布 連続確率変数と確率密度関数 期待値,分散,共分散 一様分布 ガウス分布 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 今回 次回 24
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