異文化マネジメント

多国籍企業論:June 17, 2013
多国籍企業論の再検討
「戦略的知識創造の国際的メカニズムと
ダイナミック・ケイパビリティ」
1
第9 回(6/17)
多国籍企業のダイナミック・ケイパビリティと
戦略的知識の創造
第10回(6/24) 日本企業の多国籍化と課題(良品計画)
第11回(7/1)
第12回(7/8)
休講(海外出張)
多国籍企業のBOP戦略の重要性と
ソーシャル・ビジネス
第13 回(7/15)
多国籍企業のBOP戦略の課題
第14回(7/22)
多国籍企業論まとめ
7月29日:
定期試験

個人の心理(Mind)
消費者の心理(Mind)
市場(Market)の心理(Mind)
3
市場は多様な消費者心理の集合体
• 国内市場・国際市場・地域市場
市場に適合した新製品の開発は難しい
=何が売れるかわからない
=日本で売れても中国で売れるとは限らない
多様な認知アプローチの必要性
新製品開発プロジェクトチーム・リーダー
と「多様な人材」「場のマネジメント」が重要
4
Speedo
Welding by Ultrasonic
Technology(超音波溶接技術)
sports science
Australian Institute of Sports
Hydro Dynamics(流体力学)
Air Resistance (空気抵抗)
NASA(US)
ペトラテックス社
(Petratechs??)(PORTUGAL)
?
LZR Racer
Aero Dynamics(航空力学)
University of Nottingham
(UK)
Testing in the Water
University of Otago
(NZ)
Global Open Innovation System
R
Clothing Fabrics(生地)
メクテックス
(MechTechs??) (ITA)
Thermal Dynamics(熱力学)
Optical Solutions Inc. (US)
Zipper(ジッパー)
YKK ( JPN)
5
Nikkei Business, 7/7/08
「戦略的知識創造の国際的メカニズムと
ダイナミック・ケイパビリティ」
―花王、P&G、ユニレバーの比較分析-
6
ダイナミック・ケイパビリティ
(Dynamic Capability)
動態的組織能力
• 技術的変化を中心とする競争環境の変化
に対して、新たな世界的規模での競争優
位性を再生産していく国際的な組織的知
識創造能力」
7
本日のポイント
• グローバルに戦略を展開している多国籍
企業が新製品開発のプロセスにおいて、
「ダイナミック・ケイパビリティ」の源泉として
の戦略的知識をどのような国際的メカニズ
ムによって創造しているのか
8
• 多国籍企業、特に文化的要因に規定される程度の
高い産業に属する多国籍企業ほど、文化的多様性
に規定される分、多様なマインドとニーズによって構
成される海外市場に適合的な製品の開発を必要と
することになる。
•その結果、こうした企業群ほど、本国でのR&D組織を
中心としながらも、本国内のR&D諸機関
(大学・研究所・他企業等)との共同R&Dのみならず、
海外市場の多様なニーズにも対応しうる製品開発を
志向して海外拠点でのR&D能力の向上と海外R&D諸機関
(大学・研究所・他企業等)の活用をも不可避としてくる。
9
市場の文化的特質に影響を受けやすい産業の
多国籍企業であるほど、4つの特徴点が導き出さ
れうる。
特徴点1:海外市場への依存度が高い文化要因依
存型多国籍企業ほど、研究開発組織のメンバーは多
様化し、かつ協働組織化してくる。その結果、研究開
発の成果も単独型から知識共創型へ、単一国籍から
複数国籍からなるプロジェクトメンバーによるものとな
る。
• 特徴点2:海外市場への依存度が高い文化要因依
存型多国籍企業ほど、その企業のR&D活動は海外
のR&D組織(大学、研究所、企業)のR&D能力を活
10
用する。

• 特徴点3:文化要因依存型多国籍企業ほど、海
外市場への依存度を高めるにつれて、
現地適応型製品を開発する必要上、現地子会
社のR&D能力に依拠する程度を高めてくる。
• 特徴点4:文化要因依存型多国籍企業ほど、海
外市場への依存度を高めるにつれて、現地適
応型製品を開発する必要上、現地子会社は現
地R&D機関(現地の大学・研究所・企業)との
ネットワーク化を進めてくる。
11
3社の海外売上高比率
海外売上高比率
19911993
19961998
20012003
20062008
20092011
Kao
20.76
27.09
25.81
27.90
25.17
P&G
48.23
50.83
48.63
59.33
60.66
Unilever
44.29
51.86
59.3
64.38
70.82
(注)Unileverの同比率は、本社のイギリスとオランダ以外ではなく、西ヨーロッパ以外が対象となっている。なお、データの都合上、
UnileverとP&Gの2009-2011年比率は2009年比率、花王の同期間の比率は2009-2010年比率。
(出所)花王本社、外国会社年鑑、オンラインデータベースのLexis-Nexis Academic, およびMergent onlineより入手作成。
12
花王、P&G、Unilever各社の単独論文比率と
他組織との共同論文比率の推移
The ratio of sole papers and joint papers with other institutions
- Kao, P&G, and Unilever 90
84.7
80
71.4
70.2
70
61.0
64.9
60
50
57.1
53.2
53.1
47.0
44.2
52.0
42.9
40
72.6
45.1
43.5
37.5
30
20
10
31.7
24.8
21.3
24.5
20.2
20
9.3
17.1
19.3
12.0
16.3
2.6
7.9
8.4
10.1
7.3
4.3
0
1981-1983
Kao 1
1986-1988
P&G 1
1991-1993
Unilever 1
1996-1998
Kao 2
2001-2003
P&G 2
6.3
5.6
1.2
2006-2008
Unilever 2
13
(注)単独論文とは、著者が1名だけの論文。他組織との共同論文とは、大学、研究所、他企業に所
属する研究者・技術者との共同論文を指す
花王、P&G、Unilever各社発表論文の
著者国籍数推移
Number of Authors' National Origins - Kao, P&G, and Unilever
35
30
31
25
23
20
15
10
0
13
12
10
8
5
1
3
1981-1983
3
1986-1988
25
20
18
15
23
25
7
6
5
1991-1993
Kao
P&G
1996-1998
2001-2003
2006-2008
Unilever
14
海外機関所属の著者が参加している
国際共同論文比率
50.0
45.2
45.0
46.6
44.3
40.0
36.9
35.0
30.0
26.7
26.2
25.0
20.0
15.0
12.8
11.6
0.0
13.0
9.0
10.0
5.0
16.1
12.9
11.4
8.2
0.8
0.0
1981-83
4.7
1986-1988
5.2
1991-93
Kao
1996-1998
P&G
2001-2003
Unilever
2006-2008
15
海外子会社論文比率の推移
海外子会社論文比率の推移
18
16.4
16
16.2
15.3
14
11.5
12
12.7
10
8
6
7.8
4.1
4.5
4
2
0
6.6
4.8
3.9
0.8
2.2
0
1981-83
0
0
1.3
0
1986-1988
1991-93
Kao
1996-1998
P&G
2001-2003
Unilever
注;海外機関は、海外子会社、海外関連会社、海外の大学、研究所、企業を含む。
2006-2008
海外子会社と現地R&D機関との共同論文比率
海外子会社と現地R&D機関との共同論文比率
9
8.36
8
8.40
8.35
7.94
7
5.95
6
5
4
3
2
2.59
0.90
1
0
1.41
0.96
1.32
0.00
0
1981-83
0
0
1986-1988
1991-93
Kao
0
1996-1998
P&G
0
2001-2003
0
2006-2008
Unilever
現地R&D機関とは、海外子会社とその所在国にある現地の大学、研究所、企業を指す。
著者所属機関国籍
1981-1983
著者国籍
Unilever
1
Australia
(**)
2
Belgium
*
3
Canada
*
4
Switzerland
*
5
Germany
(*)
6
Spain
*
7
Finland
(**)
8
France
(*)
9
Ireland
*
10
Israel
*
11
Japan
*
12
Netherlands
***
13
South Africa
*
14
UK
***
(*)
15
USA
**
***
著者国籍数
15
Kao
P&G
(*)
***
1
注1:*=論文数4本以下、**=論文数5-9、***=論文数10本以上
3
2006-2008
著者国籍
Unilever
Kao
P&G
1
Australia
**
2
Austria
*
3
Belgium
***
4
Bangladesh
5
Bulgaria
**
6
Canada
**
*
**
7
Switzerland
**
*
(**)
8
China
(***)
9
Czech
10
Germany
(***)
***
11
Denmark
**
*
12
Spain
**
13
Finland
(*)
*
14
France
(***)
**
15
Greece
*
*
16
Hungary
*
17
India
(***)
18
Iran
*
**
*
(***)
*
*
(**)
*
*
*
*
19
Italy
***
20
Jamaica
*
21
Japan
*
22
Kenya
(*)
23
Korea
(*)
24
Lithuania
*
25
Mexico
*
26
Netherlands
***
27
Norway
28
New Zealand
*
29
Poland
*
30
Russia
*
31
Singapore
(*)
32
Sweden
33
Turkey
34
Taiwan
*
35
UK
***
36
Ukraine
*
37
USA
著者国籍数
*
(**)
***
(***)
**
*
**
*
***
*
*
*
*
*
*
(***)
(***)
*
***
31
10
27
結論
• 4つの特徴点に対する検証の結果、P&G社と
Unilever社に関しては、いずれの特徴点も適
合的となっているが、花王社の場合は、特徴点
の3と4に関しては明らかに適合していない。
• むしろ、花王社の場合は海外の知識活用の程
度が低水準であることと、海外売上高比率が
低位のままであることとが相関性を有している
ともいえる。
新たな知識創造論への展望
• 従来、多国籍企業のダイナミック・ケイパビリティを
R&D能力の視点から論じる場合には、主に、本国で
の研究開発能力やあるいはグローバルな研究開発
能力一般から論じられてきた。しかしながら、企業一
般のダイナミック・ケイパビリティではなく、多国籍企
業固有のダイナミック・ケイパビリティの源泉として
の知識創造能力を論じる場合には、多国籍企業に
よる「国際的なR&Dネットワークを通した知識の移
転と創造のメカニズム」、および「海外子会社固有の
研究開発能力」の分析が不可欠となってくる。
• 多国籍企業による知識創造のメカニズムが、
本国を中心とした従来型のメカニズムから、本
国と海外子会社を含む国際的なR&Dネットワ
ークを通した国際的な知識創造のメカニズム
へのパラダイムシフトが生じてきていること、そ
してこうした海外子会社のR&D能力の向上と
海外研究機関との国際的な知識創造のメカニ
ズムこそが現代的多国籍企業のダイナミック・
ケイパビリティの源泉となってきている。
「戦略的知識創造(研究開発)の国
際的展開の必要性」をダイナミック・
ケイパビリティ
の視点から、3社の事例を参考に
して論じてください
24
参考文献
•
林・古井編
『多国籍企業とグローバルビジネス』
第6章
(税務経理協会、2012年)
25