集合、辞書とハッシュ法 第8回 集合と辞書 ~ データ構造(4)~ 1 (問1)解答 [0] [1] [2] [3] [4] [5] label left child right child a b c d e f 1 -1 -1 4 -1 -1 3 2 -1 5 -1 -1 0 b a 3 1 2 c d 4 5 e f 2 集合(Set) 要素aが集合Aに属する 要素aが集合Aに属さない : Aの要素の個数(Aの位数(cardinality) : |A|<∞のとき、Aは有限集合(finite set) : B 集合Aのその要素も集合Bの要素となって いるときAはBの部分集合(subset): A⊆BかつA≠BのときAはBの真部分集合 (proper subset): A a b c f e 3 集合と要素 有限集合は通常… 要素をすべて列挙して記述する A={ } B={ } B 要素の並べ方によって区別しない A = { a, c, e, f } = { a, e, f, c } A a b c f e 4 和集合、積集合、差集合 和集合(union) A∪B = { } 積集合(共通集合, intersection) A∩B = { } 差集合(difference) A-B = { } p.49 A a B b d c 5 空集合、互いに素 φ 要素を1つも持たない集合 E=φ A∩B = φ p.49 E A a c B b A∩B = φ のときにA∪Bを求めること 集合族(family of sets) 集合の集合 6 集合に関する基本的演算と操作 UNION(A, B, C) INTERSECTION(A, B, C) DIFFERENCE(A, B, C) MERGE(A, B, C) A∩B =φ (AとBは互いに素)のとき A∩B ≠ φ のとき,未定義またはエラー A a c C b B 7 集合に関する基本的演算と操作2 MEMBER(x, A) INSERT(x, A) DELETE(x, A) EMPTY(A) x ∈ A : yes を返す x ∈ A : no を返す x A A x A 空集合φ 8 配列による集合の実現 すべての要素が普遍集合={0, 1,2,…, N-1}から選ばれ、Nがあまり大きくないも のとすると右図のように表現できる 配列A [0] [1] [2] [3] A={1,2,4}のときの例 i ∈ A のとき1、 i ∈ A のとき0で表現 割当を逆にしてもよい [4] [5] [6] [7] 9 積集合を求める void intersection(int *A, int *B, int *C){ A int i; for ( i = 0; i < N; i++ ) [0] 0 [0] C[i] = A[i] * B[i]; [1] 1 [1] } [2] 1 [2] [3] [4] [5] [6] [7] 0 1 0 0 0 [3] [4] [5] [6] [7] B 0 0 1 1 1 0 0 0 C [0] [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] 10 連結リストによる集合の実現 普遍集合がうまく定義できない場合や、Nが大きい 場合は連結リストで表現すると良い A = { a, c, e, f } init a A c 領域量は MEMBER, INSERT, DELETEは INTERSECTION, DIFFERENCEは e f で実行可能 かかる 11 辞書(Dictionary) 集合Aに対し、以下の3つの演算のみが適用されると きAを と呼ぶ INSERT 挿入.データ(レコード)を登録する. DELETE 削除.与えられた値(検索キー)と同じデータ(レコー ド)を探し出して,削除する. MEMBER 与えられた値(検索キー)と同じデータ(レコード)が存在 すれば ,存在しなければ を出力する. 12 概念図 検索キー orange MEMBER(“orange”, D) ⇒ yes MEMBER(“banana”, D) ⇒ no 辞書D 13 ハッシュ法(hashing) 辞書は、しばしば を用いて実現される ハッシュ法では,検索キーの値を,データが格納 される位置(配列の添字)に直接関連付ける これにより,データの個数によらず,データの探 索が一定時間で行える 計算量 (一定時間) 14 ハッシュ法の概要 ハッシュ法による探索 キー”apple” は どこ? x=“apple” h(x) ハッシュ関数 4 (ハッシュ値) Table[4]にアクセス ハッシュテーブル banana kiwi apple orange mango table[0] table[1] table[2] table[3] table[4] table[5] table[6] table[7] 線形探索 キー”apple” は どこ? 違う 違う banana orange 違う mango 見つけた! apple 先頭から順番に探していく必要がある kiwi 15 用語 (hash function) h(x) : キーの値x を配列 の添字へ写像する関数 (hash value) : ハッシュ関数h(x)が返す値 (hash table) : データを格納する配列 (bucket) : ハッシュ表の各要素 16 ハッシュ関数の例 int hashfunc(char *s) { int i = 0; while (*s) i += *s++; return i % 100; } 文字列 文字 コード a p p l e \0 97 112 112 108 101 各文字の文字コード を足しこむ 0 530 % 100 = 100の剰余をとることで, ハッシュ値が0~99の範 囲に収まる s ハッシュ値 30 17 文字コード 6×16+1=97 American Standard Code for Information Interchange 1文字1byte(8bit)で表現 char型が表現できる範囲 -128 ~ 0 ~ +127 128種類 18 衝突(コリジョン, collision) 異なるキーに対して同一のハッシュ値が生成されるこ とを、 という x=“apple” h(x) 4 (ハッシュ値) x=“almond” ハッシュ関数 4 (ハッシュ値) 衝突 コリジョンが発生した場合の対策には以下の2通りの 方法がある (教科書と異なる名称なので注意 ) = 外部ハッシュ法 = 内部ハッシュ法 19 注意:用語の別名 D. E. Knuth, “The Art of Computer Programming,” Vol. 3:Sorting and Searching, Addison-Wesley, 1973 チェイン法(chaining) オープンアドレス法(open addressing) N. Wirth, “Algorithms + Data Structures = Programs,” Prentice Hall, 1976 この呼び方を使用 こちらの呼び名を 使っている本の方が多い 直接チェイン法(direct chaining) オープンアドレス法(open addressing) A. V. Aho, J. E. Hopcroft, J. D. Ullman, “Data Structures and Algorithms,” Addison-Wesley, 1983 オープンハッシュ法(open hashing) クローズドハッシュ法(closed hashing) オープンが 逆なので注意!!!! 20 チェイン法(chaining) 同一のハッシュ値を持つデータを連結リストで処理 データの格納 almond table[0] ハッシュ値 4 table[1] table[2] 衝突 kiwi orange banana mango table[3] apple table[4] table[5] バケット数6のハッシュテーブル almond 21 チェイン法におけるデータの探索 データの探索 orange 違う 見つけた! ハッシュ値 0 table[0] kiwi orange banana table[1] table[2] mango table[3] table[4] almond apple table[5] 22 チェイン法の解析 データの個数Nに対してバケット数Bが十分 場合 • 一定時間 で探索可能 • 使用されないバケットが発生する可能性あり(メモリの無駄) table[0] table[1] table[2] データの個数Nに対してバケット数Bが • 探索に時間がかかる ( • 空きバケットは減少 場合 ) table[3] table[4] table[0] table[5] table[6] table[7] table[8] あらかじめデータの個数を見積もり, それに見合った数のバケットを用意する table[9] 23 ハッシュ関数の効率 効率のよいハッシュ関数 ⇒データが各バケットに一様 に割当てられる 効率のよくないハッシュ関数 ⇒データが特定のバケットに偏る table[0] table[0] table[1] table[1] table[2] table[2] table[3] table[3] table[4] table[4] table[5] table[5] 24 オープンアドレス法(open addressing) すでにバケットが使用されていた場合,空いている 別のバケットにデータを保存 データの 格納 table[0] table[1] banana table[2] kiwi table[4] apple table[5] almond table[6] orange table[7] ハッシュ値 4 衝突 table[3] バケット数8の ハッシュテーブル almond 再ハッシュ ハッシュ値 5 空いてる 25 オープンアドレス法におけるデータの探索 データの 探索 table[0] table[1] banana table[2] kiwi almond ハッシュ値 4 違う table[3] table[4] apple table[5] almond table[6] orange 再ハッシュ 見つけた! ハッシュ値 5 table[7] 26 空のバケットの区別 データが削除されたのか,使われたことがないのか を区別しない場合 lemon table[0] 別のバケットに 入っているかもし れない… table[1] banana table[2] kiwi 再ハッシュ ハッシュ値 3 table[3] table[4] ハッシュ値 1 apple 再ハッシュ ハッシュ値 5 table[5] table[6] orange table[7] almond 再ハッシュ 27 空のバケットの区別(deletedとempty) データが削除された (deleted)のか,使われたことが ないのか(empty)を区別することで,emptyのバケット を見つけた時点で探索を打ち切れる 0: empty -1: deleted lemon table[0] ハッシュ値 1 table[1] banana table[2] kiwi 再ハッシュ table[3] -1 ハッシュ値 3 table[4] apple table[5] 0 table[6] orange table[7] almond 再ハッシュ ハッシュ値 5 探索終了 28 再ハッシュ(rehashing) 1次ハッシュ B = 8 の場合 lemon hi ( x) (h( x) i) modB i : 再ハッシュの回数 バケットがふさがっていた 場合,循環的に直後のバ ケットを調べることになる ⇒ふさがったバケットが並び がちになる h(x) = 0 table[0] grape table[1] banana table[2] table[3] kiwi h1(x) = 1 h2(x) = 2 h3(x) = 3 29 衝突をランダムに処理する方法 1からB-1までの数字が必ず1回だけランダムに出 現する数列d1, d2, … ,dB-1を用い, 次式により求める hi ( x) (h( x) di ) modB 例)数列{ 5, 1, 2, 4, 3, 6, 7}を用いた場合(B=8) キーh(x)=3のとき 0, 4, 5, 7, 6, 1, 2 3以外のバケットを ランダムな順番で 調べられる ランダムな数列をどうやって作るかがポイント ⇒シフトレジスタを利用するなど 30 オープンアドレス法の解析 探索時に調べるバケット数(探索1回あたりの平均) 再ハッシュ時に 順番に バケットを調べる場合 再ハッシュ時に ランダムな数によって バケットを調べる場合 データが見つかった 場合 (探索成功) 1 / 2 1 1 log e 1 データが見つからな い場合 (探索失敗) 1 1 2 2(1 2 ) 1 1 1 31 探索成功時の比較バケット数 ハッシュ表の 使用率 α 再ハッシュ時に 順番に バケットを調べる場合 再ハッシュ時に ランダムな数によって バケットを調べる場合 80% 3.0個 2.0個 90% 5.5個 2.6個 32 ハッシュ法の比較 チェイン法 オープンアドレス法 = バケット数B 登録データ数 N の上限 なし 操作の効率 N ≧B のとき急速に N が B に近づくにつ データ数N の目安 (ただし,データ数が多すぎる と探索時間が長くなる) 低下 れ急速に低下. 2B ≧ N 0.9B ≧ N 33 乱数列の生成例 d1 =5 <<1 k B=8(=23 ), k=3, di=5の場合 1~7の乱数が 得られた d2 d3 d4 k d5 d6 k=5でもうまくいくが, その他のkではうまくいかない =1 =2 =4 k d7 0 1 1 1 0 1 1 0 1 1 0 0 1 =3 =6 1 1 1 =7 34 シフトレジスタによる乱数列の生成 B : 2のべき乗の数 (例: 21,22,23, …) k : 1~B-1までの間のある定数 di : 最初の値 1~B-1の乱数をうまく生成できるk を あらかじめ見つけておく必要がある ① diを2倍 (1ビット左シフト) ② 結果がBを超えていたら,Bを減算し,減算 結果と,あらかじめ決めておいたkとの排他 的論理和をとる 乱数が得られる 35 乱数列の生成例 d1 k B=8(=23 ), k=3, di=5の場合 1~7の乱数が 得られた d2 d3 d4 k d5 d6 k=5でもうまくいくが, その他のkではうまくいかない k d7 1 1 0 0 0 0 1 1 0 0 0 1 1 0 1 0 0 1 1 0 1 1 0 0 0 1 =5 <<1 0 1 1 1 0 1 1 0 1 1 0 0 1 =3 =6 =1 =2 =4 1 1 1 =7 36 まとめ 集合 辞書とハッシュ法 37 本日の課題 バケット数5のハッシュ表を考える.ハッシュ関数 h(x)= x mod 5 を用いて,空のハッシュ表に数値 データ x ={23, 48, 35, 4, 10}を格納する場合 について以下の問に答えよ. (問1) チェイン法を用いてデータを格納した場合,ハッシュ表はどうなるか? 図を描け. (問2) オープンアドレス法を用いてデータを格納した場合,ハッシュ表はどう なるか?図を描け.ただし再ハッシュには一次ハッシュを使用するもの とする. 38
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