現代の金融入門 第7章3節 「金融危機後の規制監督」 (p.245-p.256) 08ba231c 松江沙織 1項 : 政府の失敗 現代における望ましいプルーデンス効果 銀行の自己資本充実度とリスク管理体制に対する公的当局による監督 事後的な対応の面での早期是正措置 信用秩序の維持 今回の金融危機により プルーデンス政策のあり方に と 欠陥があることが分かった 公的当局による監視活動 預金者の保護 ⇒銀行の経営状態とガバナンス体制の監視 異常なし⇒全面的に行動の自由を認める 異常あり⇒直ちにしかるべき是正措置をとる 1項 : 政府の失敗 システム危機 銀行間の債権債務関係の存在を通じて危機が伝播 従来 本来、プルーデンス政策を適切に実施していれば防止可能 ↓ 1つの銀行の支払い不能が取り付けを誘発 ヘッジファンドや投資専門会社は.. 資金調達において高いレバレッジをかけていた 今回 負債の満期限が運用対象に比べて短期であった 不安に駆られた資金提供者が一斉に解約を求めたり借 つまり米国の金融規制監督体制に欠陥があった り換えに応じなくなったりした 1項 : 政府の失敗 非伝統的金融に対する規制監督の不備 【非伝統的金融とは】 影の銀行システムとよばれるゾーン 1,相対取引のため、不透明な取引が行われている 2,会計の連結決算の対象外のため、母体の業績には反映しない 3,投資ビークル、ヘッジファンドは非公開で資本規制などの 規制がなく、金融当局の監視もない 1項 : 政府の失敗 非伝統的金融に対する規制監督の不備 1994. 米商品先物取引委員会(CFTC) 財務省、FRB、SECの反対 OTCデリバティブに対する規制を提案 2004. 今回の米国での金融危機の発生は 規制監督上の無作為が放置されてきた 政府の政策対応の失敗によるものが大きい 米証券取引委員会(SEC) 大手投資銀行に対し自己資本比率規制緩和 ⇒高レバレッジの認可 2004-2007. サブプライム・ローン急増 劣悪な融資基準、不透明な取引横行の看過 2項 : 市場型システミック・リスク 市場型システミック・リスクとは 金融機能の分解が進行し、市場型間接金融が発達し たことからシステム危機に至るメカニズムが変容し、 予期しないほどのマーケット・インパクト、市場流動 性の蒸発が起こること。 特定の(あるいは特定の種類の)資産市場で価格が 急落し、これが市場流動性の低下に繋がることから発 生する。 2項 : 市場型システミック・リスク 市場流動性=取引の実行のしやすさ ネガティブ・フィードバック 通常⇒最終的な売り手と買い手、トレーダー、マー ケット・メーカーによって確保できる 資産価格下落 しかし 資産価格急落 トレーダーによる買い 価格回復 ポジティブ・フィードバック トレーダー介入せず 下落の一方 トレーダーが損失を被っているとリスクをとれない! 2項 : 市場型システミック・リスク トレーダーの活動停止による市場流動性の低下 その市場でファンディングを行う主体の資産流動性低下 悪循環に陥り、売りが売りを呼ぶ さらなる資産価格の下落 他の資産価格に伝播 広範な資産市場における 突然の流動性の枯渇 3項 : 規制監督体制の見直し 今回の金融危機を経て、規制監督体制などの枠組みを 見直す動きが見られる 市場型システミック・リスクに対し、従来からのプルーデンス政策の第 一の柱である自己資本利率規制は有効! 1. 2. 3. 4. 5. 新たなシステミック・リスクの経験 資本の概念 ⇒市場型システミック・リスクはトレーダーなどが プロシクリカリティ(景気循環増幅効果) レバレッジをかけるほどより発生しやすくなると 時価会計が市場型システミック・リスクに与える影響 考えられる 規制監督体制 • 資産価格の下落がトレーダーの自己資本を毀損す る度合いが大きくなる • 外部からの資金調達の必要性が大きくなり、「市場 流動性低下→資金流動性低下→一層の市場流動 性低下→…」といった悪循環に陥りやすくなる 3項 : 規制監督体制の見直し 劣後債は本来、Tier1(自己資本の中核的自己資本)を構成する資本である。 返済や配当支払の義務がある(負債的性格)ため しかし 1. 新たなシステミック・リスクの経験 資本の概念 3. プロシクリカリティ(景気循環増幅効果) 4. 時価会計が市場型システミック・リスクに与える影響 CoreTier は、劣後債や優先株などを控除した自己資本である。 5. 規制監督体制 2. 危機時のバッファーになりにくい。 1 普通株と利益剰余金で構成される。 CoreTier1がどれだけあるかを重視する考え 3項 : 規制監督体制の見直し 景気後退期 BIS規制 貸倒れ損失増大 1. 新たなシステミック・リスクの経験 自己資本毀損 資本の概念プロシクリカリティの原因が 3. すべて自己資本比率規制にあるわけではないが、 プロシクリカリティ(景気循環増幅効果) 対策が講じられるべきである たとえば 景気拡大期 4. 時価会計が市場型システミック・リスクに与える影響 5. 景気拡大期にバッファーとして追加的な資本の積み上げを求め、 規制監督体制 景気過熱 資産価格上昇 積極的な貸出し 景気後退期にその取り崩しを認めるような自己資本比率規制の 枠組みを設ける 2. 自己資本増大 3項 : 規制監督体制の見直し 時価会計 資産の下落に応じて損失を計上しなければならない 1. 2. 3. 4. 5. 新たなシステミック・リスクの経験 資本の概念 損失を穴埋めするために保有資産を売却 プロシクリカリティ(景気循環増幅効果) 時価会計が市場型システミック・リスクに与える影響 しかし 規制監督体制 システミック・リスク的な状況下で 市場価格はファンダメンタル価格を反映していないのでそ うした時価での評価は適切ではない 3項 : 規制監督体制の見直し 1. 2. 3. 4. 5. 個々の金融機関の経営の健全性の 新たなシステミック・リスクの経験 監督(ミクロ・プルーデンス政策)では不十分 資本の概念 プロシクリカリティ(景気循環増幅効果) 時価会計が市場型システミック・リスクに与える影響 規制監督体制 システム全体の安全性に 配慮すること(マクロ・プルーデンス政策)の必要性 米国では システミック・リスク規制当局の創設が提案されている 論点 OTCデリバティブ取引規制の 望ましいあり方について
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