インターネットの有害情報への対処

1998.5.28 13:00-14:00
Seminar E-14 (UCHIDA New Education Expo '98)
倫理的課題の存在
有害情報問題
1
インターネット上の
有害情報への対処
Seminar E-14
個人情報問題
その他の課題
高橋邦夫
東金女子高等学校
倫理的課題の存在

「情報化の『影』の部分」を補う対応を
– 昭和61年4月 臨教審第二次答申

高度情報化の倫理的問題点
– 能動的場面
• ネットワーク犯罪
• プライバシーの侵害
• 著作権,ネチケット
– 受動的場面
• 有害情報
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視点の持ち方


実態の把握
問題はどこに所在するのか
– ネットワークか,社会か

理想的状況のイメージ化
– 理想と現実のすり合わせ
– 理想状況具現化のための妥協点の見極め

対処策
– どこにどのような対策を施すのがどう有効か
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ネットワークか,社会か



ネットワーク上の問題は,社会の問題の投影
根本的対策は,社会問題の解消
理想社会の非現実性
– 理想と現実のすり合わせ=妥協点
– せめて何ができるのか,何をすれば十分か
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対処はどのように

教育か,テクノロジーか
– まず教育
– 援用手段(テクノロジー,制度等)で補完

ワークフロー
○
教育で対処
○
×
援用手段で対処
×
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有害情報問題



青少年健全育成条例
→ 有害図書指定
条例=地域限定的
インターネットはWorld Wide
– わいせつ=犯罪
– 規制の緩やかな国/厳格な国
(日本~比較的緩やか)
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事例

小学生男子 いかがわしい画像を閲覧
– 周囲の女子児童から笑われ反省した

男子高校生 授業中にわいせつ画像を閲覧
– 教師の事前指導(禁止行為)にもかかわらず
– クラス全員が以後のアクセスを禁止された

小学生 「磯野サザエ」について検索
– 偶発的にいかがわしいサイトに接続された
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有害情報とは


有害情報 → 「不適切な情報」
児童生徒の視聴に「不適切」
– ⊃ 有害
– ⊃ 有害である可能性がある
– ⊃ 不適切

「不適切」の範囲は「限定的」
– 児童の権利に関する条約(平成6年5月)
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児童の権利に関する条約




児童=18歳未満
あらゆる種類の情報および考えを求め、受け
および伝える自由についての権利がある。
(13条 表現の自由)
13条に留意しつつ,児童の福祉に有害な情
報および資料から児童を保護するための適
当な指針を発展させることを奨励(17条)
【自由】←→【保護】
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不適切な情報の例 (1/2)

社会的安全保障
– 兵器(爆弾)製造、違法な薬物製造、テロ活動、
排他的政治結社、カルト信仰

犯罪、不法行為
– 犯罪の奨励、犯罪手口の開示、詐欺行為、
不正販売

人権
– 人種差別、性差別の奨励、中傷、著作権侵害
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不適切な情報の例 (2/2)

安全性信頼性
– デマ、誤報、誤解や偏見を与える情報、
不正確・未確認情報
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身体的精神的健康
– 薬物乱用、暴力、ポルノ、過度の恐怖、
退廃的嗜好
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社会では

子どもの閲覧に不適切な情報が氾濫
– 新聞広告,中吊り広告
– テレビ,雑誌
– 有害図書を子どもが閲覧できる環境



アメリカ…Vチップの導入(暴力番組阻止)
インターネットのみの問題ではない
インターネットでは技術援用により対処可能
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情報発信側の規制は×

非現実的
– 表現の自由
– 海外への法権不到達

アメリカCDA法案違憲判決
– 通信品位法改正案
– アクセス者年齢の特定方法なく,表現の自由侵害
– インターネットは図書か放送か→「図書」=選択的

受信側で選択することが最も有効な対策
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実態の把握

意図的な閲覧は少ない
– 周囲の目
– アクセス速度の遅さ
• 不要不急のコンテンツよりも有益なものを優先
– 事前の道徳的指導の効果大
– 小学生は少なく高校生に多い=素直さ,自我

偶発的遭遇が顕著
– 検索サービス,URLリンク集からの接続
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対処方法

道徳的指導による意図的閲覧の防止
– 効果:★★★★☆
– 大部分を阻止


子ども向けの安全な検索サービス・リンク集
の利用による偶発的閲覧の防止
フィルタリングの利用
– 技術手段の援用による補完
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対策1:
道徳的指導

利用目的の明確化
– 学校の教育設備は学習の目的に用いる

事故時の対応方法
– 不快・不適切な情報が表示されたら消す
– 不快に感じることを見たら教師に相談する
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対策2:
安全な検索サービスの利用




Yahoo! きっず
http://kids.yahoo.co.jp/
こねっとgoo
http://www.goo.wnn.or.jp/
学校検索
http://sagasu.jr.chiba-u.ac.jp/
Super Snooper
http://snooper.com/
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対策3:
フィルタリング

ホワイトリスト方式
– 原則不許可:推奨コンテンツのみ許可
– 最新の情報は入手できない

ブラックリスト方式
– 原則許可:不適切なコンテンツのみ禁止
– 禁止(ブロック)リストに もれ落ちがある

十分な量が登録されれば,どちらもほぼ同じ
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フィルタリングの方式

規制リスト方式
– 許可/禁止の一律なリスト管理
– 年齢や教科単元に応じた調整はできない

キーワード方式
– 特定の語句を含む情報を非表示
– コンテキスト(文脈)に応じた調整はできない

レイティング(多段階評価)方式
– 格付け評価データにより保護レベル設定
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保護の程度は

保護の程度は発達段階により異なる

小学校低学年の閲覧は精神的外傷を与え健
全な発達にとって「危険」な情報がある
– 高校生には社会理解の「好資料」となることも

どのような情報が,どの年代の子どもに
どの程度有害なのか(科学的研究の必要性)
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レイティング方式

商用ソフト/サービス
– Safe Surf
– Cyber Patrol, Cyber Sitter, Net Shepherdなど

レイティングデータの共有→国際標準規格
PICS(Platform for Internet Content
Selection)
– 欧米・アジアで国際的にも採用を検討
– 無償のレイティングサービスが存在
– MS-Internet Explorer, Cyber Patrol等が対応済
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規制リストによるブロック
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PICS方式のレイティング
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市販フィルタリングソフト

Cyber Patrol
– PROXY版:○ PICS:◎ KW:○ データ:¥3,600/年

Cyber Sitter
– PROXY版:× PICS :× KW:○ データ:¥2,000/年

Kids GoGoGo
– PROXY版:× PICS :× KW:× データ:¥5,000/年


SmartFilter
WebSENSE
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Proxy○
Proxy○
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PICS対応ソフト
– PROXY
• Internet Connection Secure Server (IBM)
– クライアント
• Cyber Patrol (microsystem, ASCII)
• Internet Explorer 4.0 (MicroSoft)
• Netscape Communicator 4.06 (Netscape)

レイティングサービス
– RSACi
http://www.rsac.org/
– SafetyOnline http://www.nmda.or.jp/enc/rating/
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個人情報保護問題



ホームページでの情報発信による公表公開
電子メール等による情報発信,公表公開
プライバシー保護
– 自治体の個人情報保護条例等

肖像権,パブリシティ
– 法制化は未整備
– 現状では精神的・金銭的損害に対する
賠償請求等
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個人情報とは


個人が特定できる情報
組み合わせることで特定可能なものも含む
– 氏名,住所,電話番号など

ガイドライン
– 官公庁・公的機関~政令,条例
– 民間機関~通産省プライバシーガイドライン
http://www.gip.jipdec.or.jp/policy/infopoli/privacy.
html
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社会では

新聞・雑誌に生徒氏名・写真を公表
(高校野球など)
プレゼント応募,アンケートなどで
氏名,住所,電話番号を平気で開示する
→名簿業者への転売被害

社会的な意識の高揚と保安知識の普及要す

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情報公開のリスクとメリット

リスク
– 犯罪に利用される可能性
– プライバシー侵害の可能性

メリット(教育的効果)
– 表現の自由・表現力の向上
– プロフィール交換による親密・誠実な交流

保護か自由か
– 学校においては,保護を優先
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個人情報問題の実態

対応模索中(さまざまな対応)
– ホームページ開設を禁止
– ホームページは開設できるが,氏名・写真・作品
をすべて禁止
– 氏名・集合写真はいいが,個人写真は禁止
– 本人同意があれば特に規制しない
(良識に委ねる)

犯罪への利用については 事例なし
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全面的禁止の問題点

他の人権を侵害するおそれ
–
–
–
–


表現の自由・言論の自由侵害(憲法)
検閲行為・通信の秘密侵害(憲法)
著作物公表権の侵害(著作権法)
著作者氏名表示権の侵害(著作権法)
教育的効果の阻害
一律全面的な禁止は適当ではない
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安全と自由の両立


「WWW掲載=公開」ではない
一般公開と限定公開
– 一般公開 誰でもアクセスできる
– 限定公開 パスワード保護など,特定の者のみ


プライバシーに関わらない一般的情報は公開
プライバシーに関わる情報内容は非公開
(=限定公開:特定の者のみにアクセス許可)
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限定公開の方法


利用者認証(ユーザ登録・パスワード)
学校間相互認証
– サイト間の相互信頼関係を設定
– ed.jpドメイン名によるサイト識別

将来
– 公証サーバを設ければ,多数の学校間に拡張可
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個人情報保護条例の解釈

某県個人情報保護審議会の事例
– 住所,電話番号は不可
– 新聞等で公表済みの情報で公開可能なもの
• 氏名,学年,性別,個人写真,集合写真,作品
– 研究発表・意見交換・情報提供時
• 氏名,学年,性別,集合写真,作品
• 電子メール等で受信者限定時は個人写真可
– その他有効な場合(校長判断)
• 氏名,学年,性別,個人&集合写真,作品,趣味
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学校としての対応
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情報内容に応じて判断(内規を作成)
– 一般公開
– 非公開(限定公開)
– 非掲載
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児童生徒・保護者の承諾を得る
– アカウンタビリティ(インフォームドコンセント)
• メリットとデメリットの両方を理解した上で判断でき
るように説明する
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その他の課題



著作権
ネットワーク犯罪・迷惑行為
明るい展望
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著作権
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法的な問題として議論できない
– マルチメディアの著作権は法整備途上
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教育の問題としては対応は容易
– 著作者に許諾を求めることは「礼儀として常に正
しい行為」として推奨
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ネットワーク犯罪・迷惑行為
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道徳的指導で防止
– モラル,対人関係のマナー,
ネチケット(ネットワークエチケット)
– 事前指導がなければ,学校の責任も問われる
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問題事例が発生したら
– まず被害者に謝罪すること
– 個別に生徒指導上の問題として対処
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明るい展望

学校教育でのインターネット体験は,責任あ
る社会参加の態度を養う
– 仮想的体験であり,身体的危害の可能性は低い
• 飛行機事故死の確率よりも低い
– ネットワークの大人は,よく注意してくれる
– 情報モラルの習得を通して,責任ある社会参加態
度を身につける「心の教育」手段として有効
– 10年後,20年後の明るい社会を築く人材育成

社会的荒廃を阻止する有効な手段にできる
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