途上国金融システム発展 とその経路

途上国金融システム発展
とその経路
藤井
開発金融システムの発展とその経路
 制度:人々の相互作用に安定した構造を与え不確
実性を減少させるために考案されたルール。
① 一国の制度的な枠組みが、取引費用に大きな影
響を与える。
② 組織の行動に影響を与え、シュムペーターの創
造的破壊を引き起こす。
 4つの性質とは?
① 制度を守ることが自己の利益にかなっているので各
自が進んで制度を守ろうとする。
② 各種の制度は補完的に働くことで制度全体としての
機能が強化されている。
③ 経済制度には多様なバリエーションがみられる。
④ 制度には慣性が働くため、歴史的な経路に従って
徐々にしか変化していかない。
内部的な力に克つだけの力やショックが必要
金融の未発達と低水準均衡
 実物経済
貯蓄水準と資産蓄積水準が低い
 金融部門
リスク分散機能・プロジェクト評価機能が低い
 制度・インフラの未整備
法律会計制度が未整備
金融制度の発展と経路
・低水準均衡から離脱するためには、どのような
金融制度を利用すればよいのだろうか。
① 異なる経済システムとの接触
→企業や個人が互いに協調出来るようなコーディ
ネートの必要性。
② 現行システムの破局
→制度の全面的な再構築、システム移行の端緒と
なる。
開発金融パラダイムの転換
 韓国政府の政策
・輸出実績に応じた資金配分
・リスクの高い戦略産業に対しては、政策的に資
金誘導
・特定部門へは金利規制や業務規制で補完
 情報の非対称性について
① 戦略産業の選定や海外借入資金の公的保証は
投資リスクを政府から分担する効果を生む
② 民間企業や金融機関が負担する情報生産費用
を軽減させた。
何故、韓国政府は非効率な資金配分を回避するこ
とが出来たのか?
輸出志向型工業政策の実施
 メリット
・輸出実績に応じて資金配分が可能=効率的な資
金配分
・輸出実績を高めれば、優先的に資金配分を受け
ることが出来るので、企業側にとって輸出競争力
拡大のインセンティブとなる。
※ラテンアメリカ諸国
ラテンアメリカでは輸入代替工業化政策が採られ
ていたため、どの企業が投資効率が良いか分から
ず、非効率的な資金配分がなされていた。
グローバル化以後のタイ経済
 実物面
→外国資本・企業を積極的に誘致しリーディング
セクターとなる輸出産業を育成。
 金融面
→金融自由化政策が実施され、金利規制・業務規
制・外国為替規制の緩和が進められた。
◎低水準の罠からの脱出を狙って積極的に海外の
海外の金融機関・企業を誘致した。
韓国とタイの銀行部門の違い
◎タイ
工業化と併存しながらも、製造業とは距離を保っ
て成長をし続けた。製造業において、資金調達構
造の主要部分を担っていたのは直接投資を中心と
する外資である。
◎韓国
銀行による資金供給は、工業化の重要な案件とし
て政策的に行われた。また、国内の工業化の水準
程には活動水準が高くない。
グローバリゼーションと開発金融システム
 タイの経験は、グローバル化した世界経済におけ
る途上国金融システムの在り方を考える端緒。
◎タイの金融システム
外資系金融機関・海外金融市場に依存
→地場金融機関のレベルアップが進まず見かけの
資産規模の拡大にも関わらず経済発展に取り残さ
れた。
金融・実物部門の発展に齟齬が生じる。
タイ金融システムの欠陥とは
 国内金融機関能力は未熟なままであった。
 企業の所有構造が寡占的で企業情報の開示は極め
て限定的
→情報の非対称性
 法律や会計制度の未整備
 政府と企業の癒着
金融構造の破綻を解決するための経済改革が実施
された
タイで行われた経済改革
① 制度インフラの整備
→銀行制度改革と企業制度改革が行われた。
② 外国金融機関への国内市場開放
→国際金融市場の豊富な資金の活用で、金融面
での障害を克服。
③ 証券市場の育成
→銀行への過度の依存を緩和
これからの制度進化の経路を巡って
 資本主義経済システムの多様性
 制度の持つ戦略的補完性と経済システム内部の制
度的補完性
 経済システムの以降におけるビックバン・アプ
ローチと漸進的アプローチの選択
 インフォーマルなルールの役割
論点
アジア通貨危機後におけるタイ
金融システムについて