IT時代の競争と公益 ―不可欠設備をめぐる法と経済― Lecture on May 17th & June 14th 木村 順吾 © 2000, KIMURA JUNGO 自己紹介 昭58 郵政省入省(電気通信局) 昭61 科技庁官房総務課法令係長 平元 電気通信局業務課課長補佐 平3 郵政研究所通信経済研究部 主任研究官 平6 官房総務課課長補佐 平9 千葉大学法経学部助教授 (情報法) 平11 近畿電気通信監理局総務部長 <東洋経済新報社> 概念化の危険 経済学のパラダイム 法学の権利 改革 {改善/改悪} 遷訛 {遷善/遷悪} ⇒ 転訛 IT時代の制度構築 技術の波動 IT経済 Scale/Scope Oligopoly Speed Monopoly Network Externality Hyper-Scale 成長率 Development/Q 成長曲線 distribution manual media 離陸 制度の統一的理解 規制緩和? 公益事業法 標準化 自然独占 相依相関 独占禁止法 独禁政策強 化? 知的財産法 競業規律 プロ・パテント? FairUse/MisAppropriation? 規模/範囲経済性と不当取引制限 Bottleneck policy Anti-Trust 鉄道 乗継駅 (Terminal) 電力 送電網(Grid) 託送 S c o p e 電話 地域通信網 (Network) Scale N.Economidas and S.C.Salop, “Competition and Integration among Compliments, and Network Market Structure” PC Killer Apps, Platform 航空 Hub, CRS Divestiture, 相互接続, ONA IA,API, Virtual ------------ 鉄道(terminal) United States v. Terminal Railroad Assn. Of St. Louis, 224U.S.383[S.Ct.1912] 電力(Grid) Otter Tail Power Co. v. United States, 410U.S.366[S.Ct.1973] City of Malden v. Union Elec. Co., 887F.2d157[8th Cir.1989] City of Anaheim v. Southern California Edison Co., 955F.2d1373[9th Cir.1992] City of Vernon v. Southern California Edison Co., 955F.2d1361[9th Cir.1992] 1992年国家エネルギー政策法 1996年FERC裁定(Order 888/889) 発電部門 垂 直 統 合 発電業者 送電部門 配電部門 託 送 配電業者 最終需要家 電話(Divestiture) MCI Corp. v. AT&T Co., 708F.2d1081[7th Cir.1983] Anti-trust 1876・77年 特許取得 技術力、長距離通信サービス 略奪的価格含む低価格戦争、買収、相互接続拒否 第1回 (長距離網 の市場支配 力が問題) 第2回 (電気通信 業務と機器 開発製造と の結合が問 題) 第3回 (地域網へ の相互接続 が問題) 1913年 キングズベリ誓約 1)電話会社を買収しない 2)独立系電話会社の網とベルシステムの網を相互 接続する 3)ウェスタン・ユニオンの株式を放出する 1956年 同意審決 1)AT&Tは、公衆電気通信事業以外に従事しない 2)ウェスタン・エレクトリックは、ベルシステム以外へ の製造販売ができない 3)特許を公開する 1982年 修正同意審決 1)AT&Tは、22のベル系地域電話会社を分割する (資本関係なし) 2)AT&Tは、長距離通信部門を維持し、ウェスタン・ エレクトリック及びベル研究所を保持する 3)AT&Tは、分離子会社により非規制分野へ進出 できる 電話(After Divestiture) 分割の意図 AT&T/OCC’s間の equal accessの確保 企業ドメインの明確化、 経営の迅速・効率化 意図せざる帰結 AT&T v. BOC’s競争 BOC v. BOC競争 米国における業界再編の動き 地域電話会社間の再編 長距離電話会社とCATV (長距離) ナイネックス アメリテック AT&T ⇒ TCI <買収> USウエスト パシフィック・テレシス 買収 ベル・アトランティック 買収 買収 (CATV) SBC AT&T ⇔ Time Warner (長距離) (CATV) <提携> ベルサウス 買収予定 コミュニケーションズ GTE 電話(Inter-Connection) 司法(DOJ) Dialing Parity 22~27桁ダイヤル→presubscription 1984年秋から市内交換機切替え Number Portability 公衆電話 calling card ONA Telecommunications Act of 1996 行政(FCC) 既存のFCC規則を法条として明文化 今後の詳細な運用ルールをFCC規則に委任 Triology { Local Competition, Access Charge, Universal Service } 司法省による同意審決の制約を解除 情報処理(ESP) 情報処理(ONA) ■分離子会社要件 1)第1回コンピュータ調査裁定[1971]…境界領域のうち「混合通信」(hybrid communication)は規制、「データ処理」(data processing)は非規制。ただし、既存の通信事業者がデータ処理を提供する際は、分離子会社要件(構造分離) 2)第2回コンピュータ調査裁定[1980]…「基礎サービス」(basic service)は規制、境界領域は「高度サービス」(enhanced service)という概念に統合し、全体を非規制。ただし、既存の通信事業者が高度サービスを提供し、又は宅内機器 を製造する際は、分離子会社要件 3)第3回コンピュータ調査裁定[1985]…基礎/高度サービスの分類法は維持しつつ、新たな非構造的歯止めとしてONA(Open Network Architecture)を提唱 ■ 非構造的保障措置「ONA」 1)コロケーション (collocation)義務化要求 2) 「同等に効率的な相互接続」 3)1988年2月: ONA計画案提出 ■裁判所 1)1990年6月判決(People of California v. FCC, 905F.2d1217[9th Cir. 1990.6.6]) 2)1993年9月判決 (4F.3d1505[9th Cir.1993.9.3]) 3)1994年10月判決 (905F.2d1217[9th Cir. 1994.10.18]) PC(CPU) vs 1991~93 : FTC調査 1997.9 : 調査再開 1998.6 : 提訴 (FTC v. Intel Corp., Docket No.9288) 1999.3.8 : FTC/インテル和解合意 1999.3.17: 同意審決 1)知的財産権紛争の際、同社から高度技術情報を受け取っている 顧客との間で当該知的財産権紛争に関連しての理由に基づき、 当該顧客が当該高度技術情報を利用することを妨害、変更、遅延、 撤回、留保又は拒絶すること。 2)汎用CPUの供給決定を、知的財産権紛争の有無に関連づけること。 PC(OS,Apps) vs FUD, Vaporware, Bundle OSの役割 ① ② ③ ④ ⑤ ハードウェアの管理(1970年代) アプリケーションの管理(1980年代) ユーザの操作性(1990年代前半) ネットワークの管理(1990年代後半) UIの翻訳(2000年代~(?)) PC(Platform→VM) 日本の政策 非対称的地域網独占型産業組織の弊害 ① 加入者アクセスのボトルネック ‥公正有効な相互接続、 地域網の効率化 ② 産業構造変革のボトルネック ‥ダイナミズム創出 ③ 規制緩和のボトルネック ‥行政の補完介入 第2次情報通信改革 ① 規制緩和の推進 H8.3 「規制緩和推進計画」 ② 接続政策の推進 H8.12 「接続ルールの基本的取組み」 ③ NTTの再編成 H8.12 「NTTの再編成についての方針」 平成10年度における第二次情報通信改革の実施状況 10年7月 ・ KDD法の廃止 10年11月 ① 料金規制の見直し ② 第二種電気通信事業者の回線設備の設置 ③ 第二種電気通信事業の区分見直し ④ 業務委託の認可の緩和 11年3月 ・ 無線設備の技術基準適合証明等の見直し 事業者間接続料の概念 長距離・国際事業者網 接続料 相互接続点 東西NTT網 ・長距離電話はZCで接続する場合と GCで接続する場合の双方がある。 ・国際電話や携帯電話は基本的に ZCで接続。 中継交換機(ZC) (全国で54ヶ所) 加入者交換機(GC) (全国で約1,600ヶ所) 地域事業者網 接続料 ( CATV等) ○ 代表的には、長距離・国際通信事業者や地域通信事業者が、既存の通信事業者 (東西NTT)の地域通信網を使用する場合に支払う事業者間の料金。 相互接続の実態 Ⅰ.接続ルールの制定(1996年当時) ルール制定前の制度 接続料の比較 接続は事業者間の協議に委ねることが原則 日本 公共の利益を確保するための措置 ・事業者間協議が不調に終わった場合への対応 接続命令・裁定制度 ・一方当事者による不当な条件の設定の防止 接続協定の認可 3.66円/3分 (H7決算ベース) 米国 英国 0.2~0.4円/1分 0.76円/1分 (0.2¢~0.4¢) (0.451p) (注1) 市内交換機の接続料 (注2) 米国では、上記料金に加え月額約120~ 220円(1.1$~2.0$)/回線必要 接続協議の状況 (1)接続協議の長期化 ・長距離系NCCのVPNサービスに関するNTTとの協議は、合意まで5年以上。 (2)接続料の算定根拠の範囲 ・接続料の対象となる費用の範囲に関する長距離系NCCとNTTの協議は、4年間継続中。 (3)ネットワークの改造に関する問題 ・地域系NCCのNTT加入者交換機接続について、ネットワークの改造のため実現に概ね2年。 ・接続のためのNTTネットワークの改造費用の発生。 (4) 第二種電気通信事業者に関する問題 ・第二種電気通信事業者によるISDNパケット通信サービスの利用実現に2年~4年。 ・ファクシミリ網の無鳴動着信機能の利用につき、6年間協議し、8年度末に実現予定。 (5) その他 ・ ・移動体事業者の参入により、3事業者、4事業者のネットワークが接続されることを通じてサービス提供。 PHS電話については、依存型PHS電話と接続型PHS電話相互間の利用や国際電話及びNTTのフリー ダイヤルサービスの利用が未実現。 接続料の基本ルールの概要 ルールの種類 一般的な接続ルール 適用対象事業者 全ての第一種 電気通信事業者 特別な接続ルール ルールの内容 ・接続の義務 ・裁定手続の活用の容易化 等 ・接続条件の料金表・約款化 〈作成基準〉 特定事業者 ※ 一定の市場(都道 府県)における加入者 回線総数の50%を超え る規模の加入者回線を 有する事業者 ①技術的に可能な全ての不可欠設備上のポ イントにおける接続 ②接続会計の結果に基づいた接続料の適正 な算定 ③不可欠設備の構成要素や機能のアンバンドル (細分化)、接続料のアンバンドル ④自己の同様なサービスより不利でない条件 ⑤接続の技術的条件の記載 ⑥番号ポータビリティの提供 等 ・接続に関する会計報告書の作成・公表 ・網機能提供計画の作成・公表 ・不可欠設備との接続に必要な情報の提供 等 接続会計制度の創設 不可欠設備管理収支型接続会計の概念図 利 用 者 ユーザー料金 サービスの提供 営業収支 自社営業部門 長距離通信事業部等 他事業者 接 接続 設備 社内 接続 設備 社内 接続 続 料金 提供 取引 料金 提供 取引 料金 不 可 欠 設 備 管 理 部 門 ( 接 続 収 支 ) 地域通信事業部 (参考)接続会計の設備区分のイメージ NCC交換機 階 梯 別 の 構 造 NCC網 ① 加入者線終端装置~MDF (NCC側設備) ○POI 番号案内データベース ⑮ I G S Z G M C⑦ ⑥ C ⑫ ⑩ ⑪ 信号網(STP及び STP間伝送路 STP:信号中継局 Z C ⑧ NSP,NSSP ⑨ ⑥ NSP:網サービス制御局 NSSP:網サービス統括局 GMC :群タンデム局 POI :相互接続点 IGS :関門交換機 ZC :中継交換機 G C ④ ③ M D F ⑤ ② ① 信号網 ⑬ G C GC:群局 (加入者交換機) MDF:本配線盤 宅内設備 ⑭ ② MDF ③ MDF~GC ④ GC交換設備 ⑤ GC~GC ⑥ GMC~GC ⑦ GMC交換設備 ⑧ GC~ZC ⑨ GC~ZC(斜め回線) ⑩ ZC交換設備 ⑪ ZC~ZC ⑫ ZC~POI(分離型) ⑬ 信号網 ⑭ NSP,NSSP ⑮ 番号案内データベース (参考)アンバンドルの対応図(NTT電話網の場合) 技術上のアンバンドル 会計上の設備区分 加入者側終端装置 加入者側終端装置 加入者側終端装置~MDF 加入者回線 加入者交換機 料金表上の アンバンドルイメージ MDF 加入者回線 (/回線) MDF~GC 加入者交換機 GC交換設備 (/呼、/時間) GC~GC 市内伝送路 GMC~GC GMC交換設備 市内 局間伝送路 中継 GC~ZC 中継伝送路 (/回線、/時間) GC~ZC(斜め回線) ZC交換設備 中継交換機 (/呼、/回線、/時間) ZC~POI(分離型) 中継交換機 (/呼、/時間) ZC~ZC 信号網 信号網 信号網 NSP,NSSP 通話関連データベース 番号案内データベース 番号案内データベース (例) ZC接続における網使用料 加入者交換機の料金 + 中継伝送路の料金 + ZC交換機の料金 事業者間接続料の推移 東・西NTTの事業者間接続料金は着実に低廉化 3分3分制 (電話の場合) 秒課金制 課金方式の変更 *19.78円 /3分 46%減 * 16.45円 /3分 中継交換機接続 14.48円 /3分 12.93円 11.98円 /3分 10.64円 /3分 加入者交換機接続 /3分 6.31円 /3分 1994年度 95年度 96年度 6.19円 /3分 97年度 5.81円 5.57円 /3分 98年度 /3分 99年度 注:3分課金制が採られていた 94・95年度の接続料は、現在の秒課金制料金に換算した場合の料金。
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