日本国内の大学 「ブラックリスト」「グリーンリスト」 経緯と認識論 北海道情報大学 准教授 有道 出人(あるどう でびと) Tokyo University, Monday, July 30, 2007 このパワーポイントをこちらからダウンロード可: www.debito.org/todaiblacklistj073007.ppt 日本のいわゆる 「アカデミック・アパルトヘイト」 小泉八雲氏(ラフカディ オ・ハーン氏)を始め、外 国出身の教員は東京帝 国大学から大学都合解 雇(1903年、後釜に坐っ たのは先天的な日本人 夏目漱石氏) 日本は「海外のアドバイ ーザ」を短期的に契約雇 用するのは歴史が長い 名残として、日本大学制 度は「外国人教師」(任期 1年)として海外の学者を 雇用。1982年から「外国 人教員」制度 (任期3年) は発足するが、契約雇用 は継続。 但し常勤雇用している日 本人学者は、必ずと言っ ていいぐらい最初から契 約のない任期のない雇用 となった(適切の英訳 は ”tenure”) 日本のいわゆる 「アカデミック・アパルトヘイト」 現在に至り:殆どの日 ところが、どれぐらいの国 本人学者は任期のな い雇用、NJ学者は契 約雇用(Ivan Hall, CARTELS OF THE MIND, (「知の鎖国」) 98年)を参考に 内NJ学者が契約雇用あ るいは任期のない雇用で あるのか、との統計は不 明。文部省に訪問した Ivan Hall氏(TADD 95 年)と有道出人(情報公開 室02年)、そして05年3 月参議院労働組合集会 (福島瑞穂などの要求 上)でも情報非公開。 国籍により不平等な 国内大学における雇用条件 契約雇用されたNJ学者の場合、ボナス、研究費、 健康保険と退職金をもらえない人は少なくはない。 契約雇用されたNJ学者の場合、 委員会に会員 になれず、教員会議からも出席不可、ましてや研 究室でもインターネット接続も不可(例:東大駒場 キャンパス)。 契約雇用されたNJ学者の場合、 非常勤に均し い雇用条件の下で常勤雇用となり、日本人学者 よりコマ数と倍違うようなワークロードは少なくは ない。 日本のいわゆる 「アカデミック・アパルトヘイト」 よって、NJ学者の一般的 雇用条件について問題が なライフスタイル:1、2年 発生すれば、ましてや年々 間常勤で働いて、そして最 のベイアのみで「不経済的 な社員」になると、 NJ学者 後の1年間新たに就職活 動。2、3年毎にリピート。 は解雇となる。大学側は 再任期不可の契約も多い 「契約は更新しない」と。 再雇用の年齢制限(35歳 契約雇用者は法律上では 以上雇用不可が多い)によ 労働者だが、司法府は雇 り、契約雇用の年輩のNJ 用条件の乱用を罰しない。 学者は住宅ローンの返済、 「契約は相互理解で署名し 子供の教育、年金に投資 た」と想定し、よって「不更 するために、非常勤雇用で 新は雇った人の理解上だ 「下積み生活」。 った」と見なす前例。 NJ学者の継続契約雇用、 大学側の正当化 「国公立大は公務員とし てNJ学者を正規雇用に できない。国籍条項の問 題」(但し、文科省や82 年と97年で成立した法律 によると、国内大学は自 分で全ての雇用条件を決 める権限がある) 「文科省、自治体、入管 はNJ学者を契約雇用に させないといけない」 (まるきりウソです) 「NJ学者は日本に長く滞 在しないし、日本語もでき ないか学ばないし、日本 人と等しく大学の勤務は できないため正規雇用不 可」(これは不真実で偏見 です) 「 NJ学者は長期滞在した くない。“Visiting scholars”にすぎない (こ れも不真実で偏見です) NJ学者に当てはまる任期制の効果 大学側は最もいいNJ学者を雇 NJ学者は「じゃあ、帰れ」 用していない。「テンプ社員」に と言われたらできない。永 すぎない。こうれは将来性のな 年我が国の年金制度に い雇用戦略である。 投資上、帰国しても母国 NJ学者は研修よりも定期的なイ の年金には投資ができな 就職活動に時間とエネルギーを かった。老後貧困。 捧げないといけない。 NJ学者は非常に不安定な人生 NJ学者は年輩になる前 を送っている。住宅ローンももら に、給与が安いうちに大 えない、途中で返済できない場 学都合解雇にするインセ 合もあり、アカデミック・コミュニ ンティブがある。結果は、 ティに参加できず、自分の日本 経験深い年輩のNJ学者 での生活にはコントロールでき ない場合が大勢。 は“part-timer job ghetto” に入る NJ学者に当てはまる任期制の効果 NJ学者に限らず、日本 結果は、国際的な規模を 鑑みて、国内大学は劣り 人学者にも任期制が つつある。他国(例えば 採用されている。経済 米国、豪州)では海外の 的なインセンティブが。 学者に魅力的な仕事を提 雇用条件の悪化(長い 供して、大勢に就職そし て学生募集も繁盛中。 時間、給与低下、勤務 上とのパフォーマンス スイスでは、国内学者の 25%は海外生まれ(出 と無関係で解雇など) 典:Economist Sept 8, そして不法条件が契約 2005) に入っている(ブラック リストを参照に) 日本の大学のブラックリストの由来 1995年11月: 「第4期大学審議会答申報告集」 は選択任期制法の制定を要求し、国公立大のみ 私立大にも全てのNJ学者に実施を促進する。 報告の中で、日本人の常勤雇用者にも任期制も 言及した。 よって、「利根川ショック」を煽り、任期のない常 勤雇用は「活性化」のため、廃止せよとする。 つまり、全ての学者を「外人化」する。 日本の大学のブラックリストの由来 私の友人の苦しい生活を目撃する。(不法雇用 条件、嫌がらせ、不安定な経済、限度のある生 活、家庭破壊と破綻。 98年より私は「ブラックリスト」を作成する。なぜ なら、就職活動中のNJ学者に「避けた方がいい 大学」を案内して、国籍などによる差別を悩んだ 人々にも「雇用条件乱用」のフォーラムを設けた 同年より私は「グリーンリスト」を作成する。NJ学 者に「いい大学」を案内して、大学にも「このよう な雇用の仕方も可能だ」を指示するため。 「ブラックリスト」に載る条件 出典は原始文書 (primary source)例 えば、求人募集や匿 名にならない証言者 当大学はNJ学者に常勤 雇用で契約を提供し、契 約雇用に出世ができない 制度を実施しなければい けない。 (ところで、「国籍を問わす 皆に契約雇用」は無関係。 「学者を平等に悪い雇用 条件条件」を提供するの は改善ではない。 グリーンリストに載る条件 出典は原始文書 当大学はNJ学者に契 (primary source)例えば、 約雇用と任期のない 求人募集や匿名にならな 雇用の制度を両方実 い証言者 施しているなら、その 当大学はNJ学者に任期 大学はブラックとグリ のない契約のない 常勤 ーンリストに載る。 雇用を提供し、もしくは契 約雇用から任期のない雇 要は、いい雇い主に 用条件に出生できる制度 行って、悪い雇い主を を実施しなければいけな 回避。それで、いい大 い。(証しが必要) 学はいい学者を募集 ところで、なぜ世界中で大学は任 期のない “TENURE” 制度を数 百年間も実施しているだろうか? 「もしカトリック教の学長が採用されたら プロテスタント教の部下を クビにすることができないため」 要は、「Tenure」は言論の自由と 学問の自由を保証している。 そうしないと、思考だけで 大学都合解雇は容易にできる。 よって、学者を契約雇用のみにすれば、日本 国内でのNJ学者宛のjob marketにする。 数世代で不安定な勤務条件を鑑みましょう。 皆様、こうなってほしいですか。 勤務条件のサンプル こんな所にお勤めたくなりますか。 ブラックリストからの例: AKITA INTERNATIONAL UNIVERSITY (Private) Despite wanting PhDs (or the equivalent) for faculty, AIU offers 3-year contracted positions with no mention of any possibility of tenure, plus a heavy workload (10 to 15 hours per week, which means the latter amounts to 10 koma class periods), a four-month probationary period, and no retirement pay. Source: Job advertisement in CHRONICLE OF HIGHER EDUCATION, Sept 2006 ASAHIKAWA UNIVERSITY (Private) Contract nonrenewal of NJ faculty after 12 years of service, for no reason (later stated in court as the need for "fresh gaijin"). Court and labor board decides that her firing was illegal. AU agrees in a court-sponsored settlement to reinstate her, then fires her again at the end of the school year. Source: Asahikawa District and High Courts, and Supreme Court, 1997-2001 CHUGOKU GAKUEN UNIVERSITY (Private) “Academic credentials, publications, experience, and student evaluations have had no bearing on our position. After seven one-year contracts, I have been presented with a terminal contract. Although I have been told my Japanese language skills are no problem, I was told directly by the president that I would never change salary or position no matter what level of Japanese proficiency I attained.” Source: Richard Lemmer, faculty member at CGU, 2007 HOKKAI GAKUEN UNIVERSITY (Private) Nonrenewable 3 year contract for NJ with an MA or PhD, required to teach 10 lessons per week Monday to Saturday 9am - 9pm. Classes may include content-based EFL as well as all levels of reading, writing, listening, and speaking. Materials development and other program-related activities will also be included in the duties. Salary: 4.4 million yen salary per year. Yet uni also offers similar position for Japanese with tenure and no need for PhD. Thus qualified foreigners are disposable and less-qualified Japanese are tenured. Source: Job ad on JREC-IN July 2007 (salary information removed after Blacklisting) NAGANO PREFECTURAL COLLEGE (Public) Despite stating that "the successful ("foreign native speaker of English") applicant has the same rights and duties as Japanese staff and will be required to participate in faculty meetings and committees", their job ad then goes on to say, "term of contract: 3 years renewable", demonstrating that the duties may be the same but the employment rights are not. Source: Job advertisement from the university 2002 KYOTO INSTITUTE OF TECHNOLOGY (National) KIT offered a German-language teacher position to all nationalities--but with tenure for Japanese and contracts for foreigners: “Nationality does not matter, but in the case of foreigners the term of employment is three years renewable.” (「国 籍、性別を問わない、但し外国人の場合は任期は3年(再任可)」. Conveniently, KIT omits this information from the English version of its job announcements. Although KIT requires the candidate to be proficient (堪能) in Japanese, then lies when it says that as a National university it must contract foreigners no matter what. Source: Job advertisements in NASCIS and JALT, 2001 and 2002. TOHOKU UNIVERSITY (National) According to a position offered in 1999, a J candidate would be hired until retirement age of 63, but a NJ specifically must have contract renewals every three years. Even though the NJ candidate must undergo the job interview in Japanese. Thus the only barrier to tenured employment is not language but nationality. A 2003 job advertisement perpetuates the system, with a threeyear contract (no mention of whether it is renewable or terminal, violating MOE guidelines and Labor Standards Law requiring full advance disclosure of job conditions). Source: Job advertisements from the Tohoku University website in 1999 and 2003 TSUKUBA UNIVERSITY (National) Institutes contracts for NJ faculty, but leaves it up to the Gakuchou and the "Discussion councils" (hyougikai) to individually determine the duration of employment. Has history of bad faith in negotiations, starting in April 1985 by cleaning out its longerserving kyoushi by promising them promotion to Gaikokujin Kyouin, then effectively firing them. This situation had to be settled by litigation (cf. Drs Kang, Teele, and Sawada), and afterwards Dr Kang died a broken man at age 61. The school then charged his widow one million yen back rent for his office! Source: Gifu University survey 1997, and Ivan Hall, CARTELS OF THE MIND, pg 107-117 ブラックリストに対する反攻: 求人募集で言葉遣いで誤り導く Changing 外国人教 師・教員 positions to 特別外国語教師 (Kobe Shinwa Women’s U)、語学教 師(Kitakyushu U), 特別嘱託教員 (Pref U of Kumamoto) Asking for “native speakers” (英語を母語と する) instead of “foreigners” (Kochi U), 英語常勤講師 (Kwansei Gakuin U) 常勤外国人教員, and Shokutaku Full-Time English Language Instructors (SFLEI)--all contracts (Ritsumeikan) GREENLISTED Universities Chitose Institute of Saitama University Science and Technology (Private) Kumamoto Gakuen University (Private) Gakushuin University (Private) Keio University (Private) (National) Waseda University (Private) Aoyama Gakuin University (Private) Int’l Christian University (Private) And 26 others... 現在、ブラックリストに載っている大 学は103大学である。その数は 年々に増えつつある。 高齢化と少子化の時代で、日本の大学は 非常に困っています。海外から質のいいNJ 学者と学生を招きたいですか。 ならば、雇用条件を改善しないと いい先生は日本に参りません。 日本はこうしないとならない: 継続的な任期のある常勤契約雇用を完全に廃 止。全ての大学で欧米式な「up or out tenure system」(試験的な6年間ぐらいの任期、それか ら任期のない正規雇用に出世)を採用。 明白な “tenure review system”(つまり、出世の 明らかな条件、審判、不合格の場合で上告(大 学以外で公正さでアピール可)を実施 明白な “ombudsman” (労働基準局をモデルに) を創立して、不法行為や雇用条件を監視する。こ の局に拘束力と罰則力も与える。 日本はこうしないとならない: 契約の「再任期不可」の「カップ」をすぐに廃止。 学者の出生、学問の資格、勤務上の研修などの明白と一 貫性のある評価制度を設置(ombudsmanにも上告・アピ ール可)。NJの資格などに対して判断は独断的すぎ。 「活性化」は乱用しやすい発想です。「経済論」で「学問」を なるべく分析しないほうがいいと思います。 文科省は、NJ学者の雇用条件(契約雇用か任期のない 雇用)の情勢と統計を情報公開すべき。 文科省は、「これからNJ学者を日本人学者と同様な任期 のない雇用条件を実施する。国籍を問わず平等に。それ こそ大学の活性化」を声明する。 現在、大学に就職前このようや 条件を確かめないといけない。 これは国公立大か私立 大? この仕事は任期のない常 勤雇用か契約雇用? 契約であれば、任期は何 年?そして再任期可? 任期のない正規雇用は 可能? 可能であれば、現在任期 のない正規雇用のある NJ学者は何人がいる? 週間で何コマを負う? 教員会議や委員会に加 入・出席できる? 大学は雇用保険と健康保 険を支払う? ボナズと退職金もある? 他の正規雇用者と同様に 待遇される?(例えば研 究費、出張費など) 教訓 NJ学者を悪く待遇すると、 才能のある人は敬遠する。 日本の大学制度はすでにそうなっている。 この停滞しているままでいいですか。 それとも経済大国日本にも 「brain drain」を招きたいですか。 教訓 良い人がほしかったら、良く待遇す。 よって善意で雇用する。 すると、日本の教育制度は繁盛する。 評判は改善となり、 最もいい学生も海外からくる。良循環。 教訓 このブラックリストなどで海外の学者はすでに 日本は将来が難しいjob marketだ と認識しています。 日本には将来がない。そして日本も将来がない と思われつつある。 進路を変更しよう。グローバル化は海外から来る学 者も含む。 日本の大学、「びーあむびしゃす!」 Downloads See my website at www.debito.org Download this Powerpoint Presentation at www.debito.org/todaiblacklistj073007.ppt www.debito.org/todaiblacklist073007.ppt The BLACKLIST of Japanese Universities: www.debito.org/blacklist.html --Thank you for listening to my presentation!
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