スライド 1

The 4th TeamOncology Workshop 2010.Nov.19-21
EBMを用いた治療方針の決定
Japan Team Oncology Program
本日の話の内容
• エビデンスについて
• EBMの実践
ヒポクラテスの誓い
 “First,

do no harm”
Hippocrates: Epidemics, Bk. I,
Sect. XI., ca. 460-377 B.C.
NCCH勝俣先生のスライド
全ての医療行為は犯罪である。

病歴聴取
プライバシーの侵害

身体所見
わいせつ行為

レントゲン検査
放射線被曝

薬剤投与
毒物投与

手術
傷害罪
これらのリスクを超えた利益がなければ
医療行為は”是”とみなされない!
NCCH勝俣先生のスライド
Risk and Benefit
Evidence
Evidence=根拠とは?
Evidenceにも色んな種類がある・・・
自分の経験
権威ある先生の意見
学会発表
論文
教科書
ガイドライン
医者の指示
出来るだけ信頼度の高いエビデンスを用いて
Risk and Benefitを評価すべき
高い
エビデンスの質
ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシス
検出力の高いRCT
検出力の低いRCT
シングルアーム研究
ケースシリーズ
ケースレポート
臨床経験、専門家の意見
高い
エビデンスの質
ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシス
検出力の高いRCT
検出力の低いRCT
シングルアーム研究
ケースシリーズ
ケースレポート
発表されている
臨床経験、専門家の意見
高い
エビデンスの質
ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシス
検出力の高いRCT
検出力の低いRCT
前向き試験
シングルアーム研究
ケースシリーズ
ケースレポート
臨床経験、専門家の意見
後ろ向き試験
前向き試験の大切さ
原因
結果
後ろ向き試験: 既にあるデータを使った研究
前向き試験: 患者を登録してからデータを集める
前向き試験はあらかじめ治療計画書に沿って治療を行う
• 対象
• 評価項目
• 評価時期
• 投与量
• 減量規準
• 中止規準
バイアスが少なくする
(偏り)
代表的なバイアス
選択バイアス 例: 子供100人に聞きました。将来の夢は?
ダントツで薬剤師が1位であった!!
薬剤師の子供100人に聞いていた
情報バイアス 例: 新規治療 vs 標準治療
(測定)
交絡因子
新規治療はより良い治療だと医師も患者も思っている
ために生じる
例: コーヒーを飲む人は肺癌にかかりやすい
コーヒー
×
タバコ
肺癌
高い
エビデンスの質
ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシス
検出力の高いRCT
RCT
検出力の低いRCT
シングルアーム研究
ケースシリーズ
ケースレポート
臨床経験、専門家の意見
Non-RCT
比較の大切さ
物事を判断するには判断規準(比較相手)が必要
例:僕って幸せ、私って超美人、この車は速い
何かと比較しなきゃ分からないですよね?
ランダム化の大切さ
既知、未知のバイアスを減らすことができる
ただし・・・
• 時間、コスト、人員等の医療資源を多く必要とする
• 倫理的な配慮も必要
例:船酔い止め薬の開発
R
a
n
d
o
m
船A(姫路-小豆島): 100人 新薬投与
船B(大阪-ハワイ): 100人 プラセボ投与
船酔いの割合 船A:1%
船B: 80% p<0.01
この試験の問題点は何でしょうか?
高い
エビデンスの質
ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシス
検出力の高いRCT
検出力の低いRCT
患者数の違い
シングルアーム研究
ケースシリーズ
ケースレポート
臨床経験、専門家の意見
患者数の違い
偶然・・・
たまたまの可能性を考慮する必要がある
日本とブラジルがサッカーの試合
例1
→日本が勝利→日本が強いと言って良いか?
例2
サイコロを3回なげて、3回とも“1”
→このサイコロはいかさまか??
対処方法:回数をふやせば偶然性を少なくできる
臨床試験では患者を∞人登録すれば、偶然は
排除できる。しかし、現実に行うのは不可能
統計学的手法を用いて偶然をコントロール
偶然が起こる確率の許容範囲を設定
αエラー(偽陽性)、βエラー(偽陰性)
p値:差が大きいほど、人数が多いほど、小さくなる
(正しくは、帰無仮説が正しいと仮定した上でその事象、
または、より極端な事象が起こる確率)
臨床研究の結果
=
真実
+
バイアス
出来るだけ
排除したい
研究デザイン
+
偶然
統計学的手法
エビデンスレベル
American Society of Clinical Oncology の分類
I RCTのメタアナリシス
検出力の高いRCT
II 検出力の低いRCT
真実
III 非ランダム化試験
IV ケースシリーズ
V ケースレポート
臨床経験
バイアス 偶然
参考までに:今日の治療指針

エビデンスレベルは低い!? 
日本の医学書のベストセラー
その道の権威者による執筆

毎年改訂

書籍、CD-ROMで提供
NCCH勝俣先生のスライドを一部改変
今までの話はEvidenceについて
Evidence ≠ EBM
EBMについて
従来の医療:生理学的原則・知識 (+経験 + 権威者の推奨)
EBM: 客観的なデータ
インターネット
医学情報のデータベース化
呼び名の変遷
1980年代
Clinical epidemiology
Dr. David Sackett 1934年生まれ、McMaster大学
1990年以降 Science medicine
Evidence based medicine
Dr. Gorden Guyatt, JAMA 1992;268:2420-5.
EBMの大原則
1. エビデンスだけでは、臨床上の問題を解決す
るには十分ではない
–
–
個々の患者や状況における、利益、リスク、利便性や費用
などを常に考慮しなければならない
患者など当事者の価値観を考慮に入れなければ ならな
い
2. エビデンスにはヒエラルキーがある
–
–
エビデンスの強さを判定する
できるだけ上位にあるエビデンスを採用する
臨床のためのEBM入門―決定版JAMAユーザーズガイド
EBMはエビデンスだけではない
Best research evidence
Patient value
最善の治療
Clinical expertise
Patient circumstances
Evidence-Based Medicine: How To Practice And Teach EBM
EBMのプロセス実践の5段階
STEP1
疑問点の抽出、明確化
STEP2
情報収集
STEP3
情報の批判的吟味
STEP4
患者への適用
STEP5
STEP1-4の評価
EBMのプロセス
患者情報
Step1 PECO
患者の希望・環境
質の高い根拠
Step2 情報収集
Step3 批判的吟味
経験・技術
Step4
患者への適応
STEP 1 臨床的問題点の明確化
問題点を明確化するために用いる公式
•
•
•
•
C
Population/Patient
対象/患者
Exposure/Intervention
介入または曝露:治療や検査な
ど
• Control/Comparison
• 対照群:他の方法と比較して
O
• Outcome
• “E”によって生じた結果
P
E/I
STEP 1 臨床的問題点の明確化
• たとえば、、、
• 60歳男性、heavy smoker、喀血にて来院。
• 胸部レントゲンにて左上肺野に3cmの腫瘤影を認める
が、縦隔は異常なし。
• 腫瘤のTBLBにて扁平上皮癌と診断。
• 喀血以外は無症状で、身体所見は正常、肺機能を含め、
臓器障害なし。
– 手術施行の是非を決定する前に、どのような検
査を追加して施行するべきか?
• 縦隔リンパ節腫大の有無、遠隔転移の有無を精査する
必要がある
• 縦隔リンパ節腫大について、CTのみで十分か、CTに
加え、縦隔鏡検査まで必要か?
STEP 1 臨床的問題点の明確化
P
• 60歳男性、PS良好で合併症のない肺非小細胞癌患
者
E
• 術前stagingで、CTに加えて、縦隔鏡検査を行う
C
• 術前stagingでは、CTのみ。縦隔鏡検査を行わない
O
• 手術適応でない患者に対する不必要な開胸手術率
は?
STEP 1 臨床的問題点の明確化
前景疑問
(臨床現場での疑問)
•背景疑問の例
•リツキサンとは何か?
•CMLの発症機序は?
•前景疑問の例
背景疑問
•濾胞性リンパ腫において
(学問的な疑問)
CHOP療法にリツキサンを
併用する意義はあるか?
•CMLの芽球期にグリベッ
疑問・問題点の変化(進化)
クは効果的か?
研
ス
学
生
修
医
タ
ッ
フ
臨床のためのEBM入門 (医学書院)
EBMのプロセス実践の5段階
STEP1
疑問点の抽出、明確化
STEP2
情報収集
STEP 2 情報の収集の方法
一次資料の利用
オリジナル論文を読む
二次資料の利用
エビデンスに基づいた総説
PubMedで検索
ガイドライン:NCCN
UpToDate
クリニカルエビデンス
コクランライブラリー
教科書
EBMのプロセス実践の5段階
STEP1
疑問点の抽出、明確化
STEP2
情報収集
STEP3
情報の批判的吟味
STEP3 情報の批判的吟味
• 論文には正しいことが書いてあるとの思いがち
• 特に有名雑誌は正しいと信じてしまう
現実は・・・・
• 論文はpositive dataが載りやすい
• 発表者はなんとかpositive dataとして発表したい
論文から“真実”を読み取ろう
批判的吟味の方法
① Graphic Approach Tool for
Epidemiological studies (GATE) farmeを
利用し、PECOを論文でもたてる
② PECOに沿ってRAMBOを検討
(試験の質を評価)
③ 治療によって得られるものは
起こりうる副作用やコストに
見合うかを検討
論文のPECO (第III相試験の場合)
P: 試験参加者
E: 試験治療
C: 標準治療
O: 結果 (例:5年生存割合)
Time: 評価時期、観察期間
Gate frameを用いると
Participants
P
Exposure
Time
E
C
O
T
Comparison
Outcomes
Participants
所属集団
適格規準
参加集団
Exposure & Comparison
試験治療
標準治療
Outcomes & Time (例:5年生存割合)
試験治療
イベントあり
(死亡)
イベントなし
(生存)
a
標準治療
b
Time
イベント有無の
評価をいつしたか?
(5年)
c
d
患者追跡期間
効果の推定の計算方法
試験治療
標準治療
イベントあり
a
b
イベントなし
c
d
• イベント発生割合: 試験治療群 Y=a/(a+c)、標準治療群 X=c/(b+d)
• 相対危険度, リスク比(relative risk, risk ratio: RR): RR=Y/X
• 相対危険度減少(relative risk reduction: RRR):RRR=1-RR or RRR=[(X-Y)/X]
• 絶対危険度減少/寄与危険度(absolute risk reduction: ARR):ARR=X-Y
• 治療必要人数(number needed to treat: NNT):NNT=1/ARR
RAMBOチェック!!
P
E
C
O
T
Represent? 解析集団は目的とする集団を
代表しているか?
Allocation? 割り付けは適切か?
Adjusted? 両群の背景の違いは調整さ
れているか?
Accounted? 脱落症例も含め、全ての症例
について説明がなされている
か?
Maintenace 割り付けられた通りに治療が
行われているか?
Measure
測定は公正か?
blinded
盲検か?
objective
結果は客観的な指標か?
EBMのプロセス実践の5段階
STEP1
疑問点の抽出、明確化
STEP2
情報収集
STEP3
情報の批判的吟味
STEP4
患者への適用
STEP4 患者への適用
STEP2:数多い情報の中から一番よい情報を得る
STEP3:その情報の内的妥当性を検討する
目の前の患者にあてはめられるかを検討する
外的妥当性の検討
外的妥当性の検討
世界の患者
海外の試験
日本人患者
がんセンター患者
JCOG試験
院内研究
グローバル試験
•集団が異なれば、臨床試験の結果の解釈も異なることがある
STEP4 患者への適用
Chemoradiotherapy after surgery compared
with surgery alone for adenocarcinoma of the
stomach or gastroesophageal junction.
N Engl J Med 2001 Sep 6;345(10):725-30.
この論文のPECO
Patient
米国の根治術可能胃・胃接合部癌患者
Exposure
術後放射線化学療法←試験治療
Comparison 手術単独←標準治療
Outcome
(無再発)生存期間
生存期間
P<0.001
(n=281)
(n=275)
この試験結果をもとに、手術+術後RTが
米国における新たな標準治療となった
日本の手術のみの成績
Stage
Stage
Stage
Stage
I
II
III
IV
5年生存割合(%)
89.3
75.9
47.2
13.2
米国CRTの治療成績
5年生存割合(%)
Stage I~III
42%
日本と米国では、手術の方法が異なり、治療成績も
異なるため、米国の臨床試験結果をそのまま日本の
患者に外挿することは出来ない
Best research evidence
大勢
Patient value
患者の希望にあった治療か?
Patient circumstances
おかれた環境にあった治療か?
Clinical expertise
経験・専門性を持って治療を
提供することが出来るか?
個人
EBMのプロセス
患者情報
Step1 PECO
患者の希望・環境
質の高い根拠
Step2 情報収集
Step3 批判的吟味
経験・技術
Step4
患者への適応
ここが一番
難しい!!
治療方針を決定する際には
• 医者が言ったので
• 上司が薦めるので
自分たちの(エビデンスに基づいた)意見を言おう!!
1. なぜこの治療を提示するのか?
• エビデンスレベルはどの程度のものなのか
• 治療効果は?
• 毒性は?
2. オプションとなる治療方法は無いのか?
• 推奨する治療とオプションとなる治療の違いは何?
• 治療成績がどの程度違うのか?
• 毒性の差はどれだけ違うのか?
よくある質問
エビデンスレベルの高い治療が無い場合は
どうすれば良いのか?
医療従事者のコンセンサス作りが重要
Risk & Benefitの評価を!!
参考文献









臨床のためのEBM入門 (医学書院)
JAMA医学文献の読み方 (中山書店)
EBM実践ワークブック (南江堂)
続・EBM実践ワークブック (南江堂)
How to use クリニカル・エビデンス (医学書院)
米国SWOGに学ぶ がん臨床試験の実践 (医学書院)
日常診療にすぐに使える臨床統計学 (羊土社)
ICR臨床研究入門 http://www.icrweb.jp/icr/
EPIQ日本語版 http://homepage3.nifty.com/aihara/epiq/gate-index.html