会計学基礎 7月20日 会計数値による企業評価入門 1 企業評価のステップ 戦略・会計・財務分析によって得られた理解を基 に、企業の価値を推定する 1.企業の将来業績の予測 2.企業評価モデルによる評価 3.感応度分析 2 残余利益モデル 3 会計利益ベースの企業評価モデル クリーン・サープラス会計の仮定と配当割引モデ ルから、会計数値(当期純利益と株主資本)を用 いた企業評価モデル(割引残余利益モデル)が 導出できる 割引超過利益モデルとも呼ばれる 割引を略して残余利益モデルとも 4 クリーン・サープラス会計とは 株主資本の変動が、当期純利益と配当のみに よって発生する会計 増資はマイナスの配当と考える 現行の会計基準のリーズナブルな描写である BVt BVt 1 NI t DIVt 5 残余利益モデルによる企業評価 もし企業が株主から要求された利益しか稼げな ければ、その価値は簿価に等しい もし企業が要求された利益以上/以下を稼げば、 その企業の価値は簿価以上/以下である 債券のアナロジー 株主が要求する利益のことを株主資本コストと 呼ぶ(詳細は後述) 6 残余利益とは 当期純利益(NI)から株主資本コスト(株主資本 コスト率re*期首の株主資本簿価BV)を差し引 いたもの RIt NI t re BVt 1 残余利益t 純利益t 株主資本コスト率 株主資本簿価t 1 7 残余利益モデル 現時点の株主資本の価値 は 株主資本簿価+将来の残余利益の現在価値の合計 に等しい ERI 株主資本の価値0 BV0 1 1 re BV:株主資本簿価 re:株主資本コスト率 RI:残余利益 8 残余利益モデルの長所 ターミナル・ヴァリューが小さい 会計における選択に影響されにくい キャッシュフローに比べると、利益の方が予測し やすい 9 ターミナル・ヴァリューの推定 現実には無限大の未来を予測することはできな いので、何らかの最終年度以降の残余利益の 価値(ターミナル・ヴァリューとよばれる)を推定 する簡便法が必要となる 具体的には (1)最終年度以降の残余利益を推定する (2)残余利益が永久に続くと仮定して最終年度にお ける現在価値を求める (RI/re) (3)それを現時点における現在価値に割り引く 10 小さいターミナル・ヴァリュー 割引キャッシュフローモデル(DCF)では巨額の ターミナル・ヴァリューが推定されるが、残余利 益モデルのターミナル・ヴァリューは比較的小さ い モデルにおける「株主資本簿価」の存在が原因 株主資本簿価=「正常」利益の現在価値 「最終年度以降の純利益が要求された利益(= 株主資本コスト)に等しい」と仮定するとターミナ ル・ヴァリューは0である 11 会計がモデルに影響するか 残余利益モデルはキャッシュ・フローではなく、 会計利益に基づく それでは会計上の選択(会計処理方法、見積も りなど)が企業評価に影響するのであろうか? 二つの例 2年間のケース、1年目に1000ドルの投資を行う。 資本コスト14%。「正しい」会計は定額法であるとする。 保守主義会計~償却前倒し(1年目に全額償却) 積極主義会計~償却先送り(2年目に全額償却) 12 保守的な会計の影響 全額を1年目で償却する と、 2年目の期首の簿価が $500低くなる そのため、2年目の資本コ ストが $500 *.14減少する また、2年目の純利益が $500増加する 現在価値 -$500/1.14= -439 70/(1.14)(1.14)=54 500/(1.14)(1.14)=385 保守的会計の影響: $0 13 積極的な会計の影響 全額を2年目で償却する と、 2年目の期首の簿価が $500高くなる そのため、2年目の資本コ ストが $500 *.14増加する また、2年目の純利益が $500減少する 現在価値 $500/1.14= 439 -70/(1.14)(1.14)= -54 -500/(1.14)(1.14)= -385 積極的会計の影響: $0 14 利益予想とキャッシュフロー予想 キャッシュフローよりも利益の方が変動が少ない 15 株価・簿価比率 残余利益モデルの両辺を簿価で割ると… gn は簿価の成長率, たとえば (BV2-BV1)/BV1 サステイナブル成長率を用いることが一般的 MV0 E[( ROE1 re )] E[( ROE2 re )(1 g1 )] 1{ }{ } 2 BV0 (1 re ) (1 re ) E[( ROE3 re ) (1 g1 )(1 g 2 )] { } ... 3 (1 re ) 16 株価・簿価比率 残余利益の関数である ROEと株主資本コストの大小が大事 財務分析がROEの分析を中心としたことに注意 成長率の関数である 簿価がどのくらいの勢いで成長していくのか? 残余利益と簿価の関係に注意 簿価大=>資本コスト大=>残余利益小 17 資本コスト 18 株主資本コスト 株主資本コストは株主が要求する,投資に対す るリターンである 株主資本コストは二つの重要な用途を持つ 残余利益の計算 予測された残余利益を現在価値に割り引くための割 引率 19 株主資本コスト 株主資本コスト(残余利益モデルの割引率) CAPM (資本資産価格モデル) と3ファクターモデル が代表的な推定方法 いずれにせよ、正確な推定はできない 資本コストについての感応度分析が絶対に必要 CAPM : re rf [E(rM ) rf ] 20 CAPMによる株主資本コストの 推定例 ベータ=1.2 リスクプレミアム=7.6% リスク・フリー利子率=5.8%、とすると 資本コスト: 5.8 + 1.2*7.6 = 14.9% 規模による調整をおこなうことも CAPM : re rf [E(rM ) rf ] 21 期末試験 テキスト4,5,6,7,12章の中の数章に関連す る(主に)計算問題を出題します 22
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