インターネットから広がる 危機管理と対応策 危機管理の盲点への対応実践ノウハウ I. 古典的事例の教訓 II. インターネット掲示板のメディア特性 III. 「2ちゃんねる」を考える IV. 危機対応のポイント V. インターネットが招く新たな企業危機 濱田逸郎@電通 03.05.23 古典的事例の教訓 I. インテル・ペンティアム事件 II. 東芝クレーマー事件 Ⅰ.インテル・ペンティアム事件(1994) 2 概要 プロセッサの浮動小数点のバグにより、特殊条件での割り 算で誤計算が発生する。 1÷824633702441で誤計算 インテルはこの問題に気付いていたが、影響はごく少数に とどまるとして、情報を公開しなかった。 インテルによると、平均的なユーザが、この間違いに遭遇するのは2 万7千年に1回 3 Eメールから瞬く間に情報拡散 10.30 発見者ナイスリー教授。数人にメール。 11.1 転送メールを受けたソフト会社社長S氏がパソコ ン通信(コンピュサーブ)に書きこみ。 11.2 コンピュサーブで知ったレポーターW氏がノル ウェーの友人M氏に確認。 11.3 ノルウェーのM氏がインターネットに書きこみ。 11.7 レポーターW氏が Electric Engineering Times に記事執筆。 11.15 C氏が誤計算モデルをインターネットに発表。 4 増殖のメカニズム Dr. Nicely Schulman Smith 2days newspaper Wolfe Mathisen Compuserve 8days 4days Internet 5 後手に回るインテルの対応 11.7 Electric Engineering Timesの記事を否定。 11.22 CNNの報道に、「些細なこと」とコメント。 11.24 New York Times他200紙が記事掲載。 「商品出荷を継続」と強気のコメント。 インターネットで内部告発はじまる。 11.27 社長メッセージを他人アドレスでアップロード。 「支障があると認定しうる使用者のみ交換」 12.12 IBMペンティアム塔載PCを出荷停止。 12.14 説明資料を配布するも、抗議電話で回線パンク。 12.16 この週、インテル株暴落 12.20 非を認め、全品回収を宣言。対策費用4.2億ドル 51days 6 CEOの述懐 “There are waves… and then there is a tsunami” -Andrew S Grove, Intel 7 Ⅱ.東芝クレーマー事件(1999) 8 概要 福岡のA氏が東芝製ビデオデッキの修理を依頼。 窓口をたらいまわしされ、最後は「渉外監理室」の担当者 から暴言を浴び、それを録音する。 告発ページで暴言を音声ファイルとして公開。話題を呼ぶ。 東芝は福岡地裁に、ホームページの一部の削除を求める仮 処分を申請。しかし、これが社会的反発を呼び、4日後に 取り下げ。 9 ネット上で急速な盛り上がり 2.18 渉外監理部スタッフより暴言を浴び、録音 2.22 西室社長にビデオデッキと抗議文を送付 4.26 NIFTYのフォーラムで活動停止勧告を受ける 6.3告発ホームページ開設 6.7メールマガジン「RADICA」が紹介 6.9「悪徳商法マニアックス」で特設掲示板 6.25 「突撃インターネットPC (ソフトバンク)」が紹介 7.5「週刊ダイヤモンド」に記事掲載 7.8 0days 4days 6days 東芝公式見解をホームページ掲載 35days 10 マスコミがアクセスを押し上げる 7.10 大手新聞社一斉報道 7.15 東芝 7.19 仮処分申請取り下げ 7.22 町井副社長 8.20 週刊文春A氏を「クレーマー」と報道 11.10 告発ページ閉鎖 12.31 「悪徳商法マニアックス」特設掲示板閉鎖 アクセス165万件 福岡地裁に仮処分申請 アクセス580万件 福岡でA氏と会談 49days アクセス800万件 11 インターネット掲示板 7つのリスク特性 I. 話題はネット内で高速増殖 II. 擬似当事者の発生 III. アクティブ投稿者が論調を支配 IV. 高い過激迎合性 V. 情報の欠乏性と冗長性が議論を活性化 VI. リンクによる情報の自己組織化 VII. ネット文化と組織文化のミスマッチ 7月31日 7月29日 7月27日 7月25日 申請取下げ7/19 7月23日 7月21日 7月19日 7月17日 7月15日 7月13日 仮処分申請7/12 7月11日 7月9日 7月7日 7月5日 7月3日 7月1日 6月29日 大手紙報道7/10 6月27日 6月25日 6月23日 6月21日 6月19日 6月17日 6月15日 6月13日 6月11日 6月9日 6月7日 6月5日 6月3日 単位=万 1.話題はネット内で高速増殖 AKKY氏ホームページアクセス数推移 副社長面会7/22 800 700 600 500 400 300 200 100 0 13 増殖のメカニズム AKKY HP BBS 関連 Homepage Mail Magazine Internet マスメディア 14 噂の伝播メディア 掲示板(BBS) 悪徳商法マニアックス Yahoo掲示板 2ちゃんねる メールマガジン RADICA WebCatch 経営よもやま話 サイバッチ Web110番 6月07日 6月07日 6月18日 6月20日 6月27日 メーリングリスト Eメール 15 2.擬似当事者の発生 内部告発者?「いその波平」 東芝 「暴言ラップ」テクノバージョン 東芝 誤計算モデル作者 インテル なぜ、共和党は減税しながら財政赤字対策ができる? ペンティアムJOKE 北朝鮮は核査察を受け入れる。アンダーセンならば。 エンロンJOKE 時系列表、Q&A、リンク集製作者、転載屋 16 3.アクティブ投稿者が論調を支配 2割のアクティブが投稿数の7~8割を占める。 ROM(閲覧のみ)は、投稿者の40~50倍。 1 : 4 : 200 ACTIVE 一般投稿者 ROM 17 4.高い過激迎合性 匿名性 社会的制約が弱まり、抑制がきかなくなる。 バックグラウンド情報の欠落 表情、会話の抑揚、感情、話者の社会的位置、話の文脈などが欠落 しがち。 フレーミング現象 意見が極端へシフトし、ののしりや、侮辱、挑発、喧嘩などのフ レーミングが発生しがち 18 5.情報の欠乏性と冗長性が議論を活性化 デフィシェンシー:Deficiency(欠乏性) 推理・解釈・揣摩臆測・情報提供の余地が参加性を高める 顧客をとりこみブランドを共創 擬似当事者が活性化をリードする リダンダンシー :Redundancy(冗長性) 無駄話が話題を広げる。 居心地の良さがメンバーを広げる。 井戸端イジング 19 6.リンクによる情報の自己組織化 悪徳商法マニアックスからのリンク AKKY氏 告発サイト 悪徳商法 マニアックス マスコミ 21sites ネット ジャーナリズム 19sites 東芝 他掲示板 27sites 参考サイト 113sites 他告発サイト 26sites 派生サイト 59sites 20 関連情報のリンケージ 東芝関連情報 商法違反と「渉外監理室」の設置 警視庁からの天下り受け入れ 他のアフターサービストラブル 東芝機械のココム違反、工場廃水の環境汚染、原発反対CDの発売 中止、府中工場の労務対策、企業体質批判・・・・・。 AKKY氏関連情報 本名、住所、家業、家族構成 過去の発言 過去のネット取引 21 7.ネット文化と組織文化のミスマッチ ネットワークにおけるコミュニカビリティが企業を選別する。 ネットワーク・リテラシー × ネットワーク・カルチャー マーケットの論理 =金銭換算で意思決定 ヒエラルキーの論理 =上下関係で意思決定 ネットワークの論理 =共感性で意思決定 ネットは 大企業が嫌い!! オープンさ(風土・情報) フェアネス 個人の尊重 スピード 22 「2ちゃんねる」を考える I. 一人勝ちの掲示板サイト II. 訴訟ラッシュ III. 強まる逆風と運営方針の転換 2ちゃんねるの概要 完全匿名制の掲示板。99年5月開設。 幅広いジャンルのカテゴリ別掲示板を435を設置。 一日のアクセス数1000万件。投稿数80万件 日本リサーチセンターの「Japan Access Rating」では、 コミュニティ・掲示板系サイトランキングで1位、ドメイ ン別ランキング4位、自宅Web利用者ランキング3位 佐賀のバスジャック少年が犯行直前に書きこみを行い有名 になった。 24 なぜ要注意サイトか アクセスログをとらないため、完全匿名が保証されていた。 内部告発情報が頻出し、瞬時に広がる。 愉快犯含有率が高い。(悪徳商法マニアックスは「筋論ク レーマー含有率」が高い。 特定個人名での誹謗中傷や電話番号は「削除人」と呼ばれ るボランティアが削除。 それ以外は「削除板」で公開削除要求をしなければならな いので、むしろ逆効果となるおそれあり。 25 訴訟の増加 原告 提訴日 請求内容 判決 日本生命 01.03 削除要求 谷澤動物病院 01.07 削除要求 万円 DHC 02.06 削除要求 円 7億 清水香織 02.06 名誉毀損 害賠償請求 損 メディカル ドラ フト会 02.07 6000万円 投稿 者情報の開示 羽田タートル サービス 02.10 500 判決日 判決内容 敗訴 01.08 仮処分命令 高裁 敗訴 02.12 削除命令 400 万円 他にアニマルメディカルセンター 、増田英樹、岡田奈緒子、IMDからの訴訟も? 26 谷澤動物病院判決 02.06 地裁判決 原告勝訴 西村博之氏に400万円の賠償命令 02.12 高裁判決 西村氏の控訴棄却 最高裁に上告中 インターネットの掲示板「2ちゃんねる」に「ヤブ医者」などと書き込ま れた東京都墨田区の動物病院と経営者の医師が、掲示板の管理人を訴えた訴 訟の控訴審で、東京高裁(久保内卓亜裁判長)は25日、書き込みの削除と400 万円の損害賠償を命じた東京地裁判決を支持し、管理人側の控訴を棄却した。 【毎日インタラクティブ】 判決骨子 判決は、このコーナーが「根拠を持った批判ではなく、特定の病院への中 傷を目的としたもの」と認定し、発言が名誉棄損に当たると認めた。そのう えで管理人の責任について「発言が真実かどうか分からなくても、被害者が 発言者を特定できず、救済手段が極めて不十分な掲示板を運営している以上、 直ちに削除する義務がある」と明言した。 【毎日インタラクティブ】 27 運営方針の転換 03.01.07より、全てのアクセスログを保存。 裁判所や警察からの要請があれば提出。 28 第2第3の「2ちゃんねる」 類似サイトの増加 P2Pの技術革新 「WINNY」「TIARA」「VOJTA」「ZIGUMO」 Internet サーバ型 掲示板 (管理者あり) Internet 回覧版型 掲示板 (管理者なし) 29 危機対応のポイント I. 体制づくり II. アーリーウォーニングシステム III. トラブル対応 体制づくり 短い意思決定ルート チーフコミュニケーションオフィサー ネチズン(ネットシチズン)の発見 三賢人チームの編成 法律エキスパート 広報エキスパート ネットエキスパート(カルチャー、リテラシー) 31 アーリーウォーニングシステム マイニングサービス ニューズウォッチ/eマイニング/デジタルアーツ/ コロンブスEYE/共同PR/ 2ちゃんねる定点観測 32 トラブル対応 対応レベルの決定 無視/定期ウォッチング/完全監視/対応 情報発信源とハブサイトの特定 反論、論点提示、撹乱情報発信 内部告発の制限 インベスティゲーター/サイレントランナー 警察のハイテク犯罪対策プロジェクトとの連携 ROMを視野に置きクイックリー&オネストリーの原則で 33 インターネットが招く新たな企業危機 I. 内部告発の時代 II. 内部告発は奨励すべき III. 問われる企業の論理 企業不祥事の9割が内部告発から 野村證券利益付け替え 防衛庁調達実施本部 三菱自動車リコール隠し 東京女子医大手術ミス 雪印食品牛肉偽装表示 日本ハム 東電原発検査隠蔽事件 協和香料 検察庁調査活動費 UFJ賞味期限切れ食品 名古屋刑務所ホース虐殺 日経新聞社長解任動議 97 99 00 01 02 02 02 02 02 02 02 03 業務管理本部社員 電機メーカー社員 元社員が運輸省へ 匿名の手紙、理事長・遺族へ 西宮倉庫社長 農水省へ GE社員原子力安全保安院へ 保健所へ投書 三井環大阪高検部長 取引先元社員 法務省矯正局へ ベンチャー市場部長 35 内部告発は奨励すべき 企業の動き 日本経団連 内部告発の受け皿設置を提唱 各社相次いで制度を整備 行政の動き 法制化の模索(公益通報者保護制度、内部告発者保護法) 社会的機能としての認知の動き 諸外国の制度 イギリス=公益開示法 告発者保護 アメリカ=不正請求防止法(徴税額の15~25%を報奨金に) TAPファーマシューティカル・プロダクツ 1050億円(報奨金数十億?) 36 問われる企業の倫理 コンプライアンスとエシックス 経営理念の明確化と徹底 37 Thank You 38
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