マネー・ センター・バンクの 金利ディリバティブ取引:

アメリカの大手商業銀行の
ローン・セールとディリバティブ業務
マネー・センター・バンクを中心に
日本証券経済研究所
証券経営研究会
2008年 9月8日(月)
掛下達郎
1
1. 対象と視角



1990年代以降の世界の金融業を牽引してきたアメ
リカ合衆国のマネー・センター・バンクの収益力の
源(マーケット・メーカーとしての役割)を探る
1990年代には日本の金融機関は不良債権処理に
追われており,たとえば拓銀,長銀,日債銀まで破
綻し,破綻を免れた他の大手行も国から大規模な
公的資金注入を受けている。
アメリカのマネー・センター・バンクは1980-90年代
にローン・セール,金利スワップ,クレジット・ディリ
バティブ(以下クレデリ)を導入して業務展開を進
めて収益を改善している。
2

報告者はローン・セール,金利スワップ,クレデリと
いう業務展開を一連のものと捉えており,先行研
究を整理しながら,それぞれの業務展開を歴史的
に考察していく。
図1 ローン・セール, 金利スワップ, クレジット・ディリバティブの概念図
銀行 →
金 利
リスク
↓
金
利
スワップ
↓
第3者
信 用
リスク
貸出債権そのもの
↓
ローン・セール
↓
第3者
→ 企業
↓
クレジット・
ディリバティブ
↓
第3者
3
先行研究




誘因整合的ローン・セール・モデルにより
暗黙の契約を計測してローン・セール市場の始ま
りを説明したGorton and Pennacchi〔1990〕
金利ディリバティブの利用が銀行ローンを増加させ
たことを計測したBrewer III, Minton and Moser
〔1994a, 1994b, 1996, 2000〕
銀行のリスク軽減を扱ったSchuermann〔2004〕,
銀行から保険会社へのリスク移転を指摘した
Allen and Gale 〔2004〕
これらの先行研究においては,それぞれの業務は
個々に扱われてきており,その全体像は必ずしも
明らかではない。
4
本報告で考察する課題

これら3つの業務を全体として捉えた場合に,どの
ような特徴点が浮かび上がってくるのか,それがア
メリカのマネー・センター・バンクの収益力にどのよ
うに関わってくるのか
①危機から新たな業務展開が生じていたこと
②その3つの業務展開とは貸出債権のリスクを第3
者に移転する途であり,これらのリスク移転が3つ
の業務で段階的に開けたこと
5
③その結果,伝統的な収益源であった金利収入から,
投資銀行業務手数料と取引収益(保有期間が1年
未満のポジションから得られた利益)という非金利
収入への収益源の移行が起こったこと

これら3点が相互にどのように関連していたのか,
そしてそれがマネー・センター・バンクの収益力に
どのように寄与していったのかを分析する。
6
本報告の構成





第2節で,マネー・センター・バンクの銀行業務の
全体像と,ローン・セール,金利スワップ,クレデリ
の位置づけを整理する。
第3節ではローン・セール,
第4節では金利スワップ,
第5節ではクレデリの各業務において本報告の
課題を考察する。そして,3つの課題と3つの業務
の相互関係とそれらがアメリカのマネー・センター・
バンクの収益力へどのように結びついていたかが
わかるような歴史的分析をおこなう。
第6節 本研究のまとめ
7
2. 商業銀行の収益と業務展開
表1 商業銀行の収益とローン・セールと
ディリバティブ市場の規模 1995-2004年(単位:10億ドル)
1995
総収益(括弧内は総収益に占
める非金利収入の比率%)
FDIC加入商業銀行
J.P. Morgan Chase
Citibank
Bank of America
ローン・セール(取引高)
金 利 BIS Triennial Survey2)
スワップ OCC3)
1998
2004
237(34.8) 307(40.4) 373(42.4) 434(42.4)
15 (45.2)1) 13(46.9) 21(55.1) 29(58.0)
15(34.2)
17(45.5) 36(40.0) 42(46.4)
9(35.6)
12(37.7) 31(40.6) 32(38.9)
78
118
156
31
13,590
82
24,401
197
54,048
144
395
2,347
48
167
265
34
14
5,9454)
クレデリOCC5)
CDOs
2001
1
(注) と(出所) についてはフルペーパーを参照されたい。
8
(
単
位
:
%
)
表
2
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
総 計
預金手数料(国内)
取引収益
金利関連
外為関連
投資銀行業務手数料
証券化収入(ネット)
ローン・リース売却収入(ネット)
19.6
5.7
2.5
3.2
16.8
4.5
1.2
3.0
15.9
5.1
2.0
2.6
16.1
6.1
2.0
3.1
18.1
7.6
3.5
3.3
17.9
6.3
2.6
3.0
4.3
14.0
4.7
17.8
5.1
0.9
3.8
4.4
14.3
7.2
17.0
6.8
1.1
3.9
6.0
13.1
3.7
16.2
9.1
3.4
3.5
5.6
12.0
2.9
16.3
11.4
2.9
4.2
6.3
10.2
4.1
26.8
0.0
0.0
0.0
28.7
0.0
0.0
0.0
0.5
1.0
3.6
21.7
0.0
0.0
0.0
0.4
0.9
1.9
35.2
0.0
0.0
0.0
0.7
0.0
1.8
31.5
0.0
0.0
0.0
0.6
0.0
2.7
26.2
0.0
0.0
0.0
0.6
0.0
3.1
20.6
0.0
0.1
0.0
1.3
6.2
6.4
18.8
0.2
0.1
0.0
1.1
4.9
6.1
26.1
0.1
0.1
0.0
1.5
8.0
6.8
26.4
0.1
0.1
0.0
1.7
8.4
5.4
26.9
0.2
0.1
0.0
2.0
12.5
4.6
14.2
0.2
0.1
0.1
13.2
0.3
0.1
0.0
1.5
10.2
14.4
15.4
0.5
0.4
0.0
2.1
3.4
16.1
14.4
0.5
0.4
0.0
2.0
3.2
21.4
13.7
0.4
0.2
0.1
1.7
0.9
24.1
17.7
0.5
0.2
0.0
1.8
1.7
32.3
17.4
8.9
4.0
3.8
18.2
7.5
3.1
3.5
4.9
15.1
3.4
17.9
5.9
1.0
4.4
4.8
16.2
6.5
16.7
7.7
1.1
4.4
6.6
14.1
2.1
16.0
10.1
3.8
3.9
6.0
12.9
1.3
15.8
12.3
3.1
4.5
6.7
9
10.5
2.7
1億ドル未満
預金手数料(国内)
取引収益
金利関連
外為関連
投資銀行業務手数料
証券化収入(ネット)
ローン・リース売却収入(ネット)
22.6
0.0
0.0
0.0
16.5
0.6
0.6
0.0
16.7
0.6
0.6
0.0
23.1
0.3
0.3
0.0
1~10億ドル
22.1
0.5
0.5
0.0
20.5
0.5
0.5
0.0
18.2
0.2
0.2
0.0
19.8
1.3
1.3
0.0
20.9
0.8
0.1
0.0
10~100億ドル
預金手数料(国内)
取引収益
金利関連
外為関連
投資銀行業務手数料
証券化収入(ネット)
ローン・リース売却収入(ネット)
17.7
0.8
0.5
0.1
12.1
0.7
0.4
0.1
14.6
1.1
0.8
0.0
13.1
0.8
0.5
0.1
100億ドル超
預金手数料(国内)
取引収益
金利関連
外為関連
投資銀行業務手数料
証券化収入(ネット)
ローン・リース売却収入(ネット)
19.8
7.6
3.2
4.3
17.8
5.8
1.4
4.1
15.9
6.2
2.3
3.3
16.2
7.3
2.2
3.7
と
出
所
)
預金手数料(国内)
取引収益
金利関連
外為関連
投資銀行業務手数料
証券化収入(ネット)
ローン・リース売却収入(ネット)
注
(
2
0
0
6
年
1999
)
―
1
9
9
7
1998
(
国
法
銀
行
の
非
金
利
収
入
の
内
訳
1997
に
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フ
ル
ペ
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を
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さ
れ
た
い
。
―
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
J.P. Morgan Chase
信託収入
預金手数料(国内)
取引収益
金利関連
外為関連
株式・インデックス
商品その他関連
投資銀行業務手数料
サービシング収入(ネット)
証券化収入(ネット)
保険関連
ローン・リース売却収入(ネット)
21.8
4.8
23.4
6.6
16.3
0.3
0.2
18.8
3.9
25.1
8.4
10.3
0.5
5.9
17.1
8.9
26.9
8.9
10.9
1.9
5.2
20.4
8.5
37.7
22.2
5.3
9.6
0.6
19.1
-3.3
0.1
0.1
-1.0
20.6
9.2
27.2
19.3
6.5
1.8
-0.4
16.1
0.7
1.7
0.1
3.8
16.9
8.0
31.4
24.2
2.0
4.4
0.8
15.8
0.5
1.2
0.1
5.0
15.6
10.9
19.5
6.8
7.3
4.6
0.9
15.3
1.6
4.9
0.1
2.2
10.7
9.7
22.2
11.5
4.0
5.4
1.1
14.4
2.7
4.9
0.3
0.9
8.2
8.4
30.0
12.6
4.8
10.1
2.6
15.7
1.9
6.2
0.3
0.1
8.2
2.8
23.0
7.6
12.9
1.4
1.3
21.1
11.4
13.1
3.6
1.5
8.8
2.5
18.2
-3.6
21.5
0.8
-0.5
35.4
13.6
15.9
4.9
0.9
7.6
1.9
12.5
3.8
8.1
1.0
-0.4
10.5
12.4
14.2
4.8
0.1
7.6
1.6
17.0
1.7
12.0
2.7
0.6
32.9
8.8
17.8
4.6
1.1
10.3
2.9
21.4
-7.1
21.3
7.0
0.2
43.8
6.2
0.3
6.0
0.9
5.8
40.3
12.3
5.4
4.0
2.1
0.7
8.6
17.3
0.0
0.8
4.6
4.7
38.8
7.9
2.8
3.6
2.0
-0.4
8.4
16.3
0.0
0.7
7.1
5.5
47.5
13.1
4.1
4.9
3.7
0.4
12.4
7.1
0.0
0.9
-0.3
6.2
40.5
11.1
3.5
4.0
3.0
0.7
12.0
8.1
0.0
1.2
1.9
5.4
38.6
13.0
4.1
3.4
4.3
1.2
13.1
7.4
0.0
1.0
10
0.7
Citibank
5.2
2.1
20.6
4.6
11.5
4.5
0.0
11.3
3.1
30.0
11.7
16.2
2.1
0.0
37.1
7.8
3.0
3.2
0.3
Bank of America
信託収入
預金手数料(国内)
取引収益
金利関連
外為関連
株式・インデックス
商品その他関連
投資銀行業務手数料
サービシング収入(ネット)
証券化収入(ネット)
保険関連
ローン・リース売却収入(ネット)
5.9
28.9
4.9
-3.1
8.3
0.0
-0.3
9.5
33.9
10.4
4.6
5.2
0.5
0.2
10.3
38.7
11.1
3.2
4.8
2.4
0.6
6.4
36.5
12.8
4.8
3.7
2.9
1.4
8.3
18.2
0.0
0.0
0.0
注
と
出
所
)
6.1
3.2
24.8
7.8
14.1
2.9
0.0
(
8.7
3.8
24.3
4.1
17.8
2.3
0.0
)
信託収入
預金手数料(国内)
取引収益
金利関連
外為関連
株式・インデックス
商品その他関連
投資銀行業務手数料注)
サービシング収入(ネット)
証券化収入(ネット)
保険関連
ローン・リース売却収入(ネット)
(
(
単 表
3
位
:
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利
収
入
の
内
訳
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パ
ー
を
参
照
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れ
た
い
。




現在の総資産100億ドル超の大規模国法銀行と
マネー・センター・バンクの非金利収入の特徴の1つ
は,投資銀行手数料と取引収益にあるというのが
本稿の課題③の詳細である。
金利スワップの取引収益は,取引収益の中の金利
関連のものにほぼ対応している。
クレデリの取引収益は,取引収益の中の
商品その他関連に対応している。
総資産100億ドル未満の国法銀行では投資銀行業
務手数料と取引収益が極端に少なくなっている。
一方,総資産100億ドル超の大規模国法銀行と
マネー・センター・バンクの投資銀行手数料と取引収
益は,各行でバラツキがあるものの一定の規模に
達している(表2,表3)。
11
マネー・センター・バンクのローン・セール,
金利スワップ,クレデリの3商品は1990年代
以降どのように推移しているのだろうか?

近年,マネー・センター・バンクのローン・セール
については販売額が公表されておらず,
ローン・セール目的で一時保有しているローン
額(リースを含む)を参考にしている。
12
表4 マネー・センター・バンク3行の総資産と比較したローン・セール
とディリバティブ取引 1998-2006年末 (単位:%)
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
4
(16)
2,774
59
28
31
3
(13)
3,717
92
44
48
3
(7)
2,984
110
55
55
3
(9)
2,962
227
113
114
5
(15)
3,353
395
195
199
2
(3)
922
24
13
11
1
(2)
1,105
29
15
13
1
(1)
1,424
69
33
36
0
(1)
1,861
120
57
64
1
(2)
1,454
162
79
83
2
(4)
102
17
6
11
1
(3)
129
22
9
13
1
(2)
113
65
28
37
1
(2)
68
188
75
113
J.P. Morgan Chase
ローン・セール1)
(対総ローン・リース%)
金利スワップ
クレデリ2)
保証人
受取人
1,674
8
5
4
2,168
8
5
4
2,354
7
3
4
1
(3)
2,623
51
27
23
Citibank
ローン・セール1)
(対総ローン・リース%)
金利スワップ
クレデリ2)
保証人
受取人
287
9
2
7
300
13
4
9
513
18
6
11
1
(2)
661
15
8
7
Bank of America
ローン・セール1)
(対総ローン・リース%)
金利スワップ
クレデリ2)
保証人
受取人
19
1
0
0
66
4
2
2
74
8
2
5
(注) と(出所) についてはフルペーパーを参照されたい。
2
(3)
79
10
3
8
2
(3)
93
127
66
60
表5 ニューヨーク市マネー・センター・バンク6行の
ローン・セール 1985年
単位10億ドル1)
Citicorp
Chase Manhattan
Manufacturers Hanover
J.P. Morgan
Chemical
Bankers Trust
計
$ 8.0
$ 3.03)
$ 1.0
$ 2.0
$ 1.2
$ 2.5
$ 17.7
商工業貸付と
比較した比率(%)2)
67
27
8 Citicorpを
30 除いた平均は
12 22%である。
32
29
(注) と(出所) についてはフルペーパーを参照されたい。
14




現在,マネー・センター・バンクの業務において,
ローン・セールが重要な位置を占めているとはいえ
ない。
次節でみるローン・セールの初期の歴史では
マネー・センター・バンクは大きな役割を果たしてお
り,それがこの数字に表れているのであろう。
マネー・センター・バンクは金利スワップ,クレデリ
を積極的に利用している。
総資産100億ドル超の大国法銀行にディリバティブ
取引が集中している。
15
3. ローン・セール

ローン・セールは1980年代には積極的に活用され
たが,90年代以降マネー・センター・バンクが
80年代のように利用した形跡はない。
(1)ローン・セールの歴史

ローン・セールそれ自身は,商業銀行にとって目新
しい業務ではなく,1世紀以上も続く古い業務であ
る。しかし,1983年以前には伝統的なコルレス・
ネットワーク内での取引,とくにオーバーライン
(貸出の総量規制)のためのローン・セールにほぼ
限定されていた。
パーティシペーション(協調融資)



商業銀行はローンを売却するときに長い間
パーティシペーション(協調融資)を利用して
きた。
古い形のパーティシペーションは,主貸出銀
行(lead bank)が他の銀行のために交渉する
シンジケート団組成であった。
1955年には,加盟銀行によるターム・ローン
額の31.5%がパーティシペーション形式であっ
た(1946年とほぼ同じ)。
17
オーバーライン(貸出の総量規制)



1977年のABAの調査によると,回答した銀行
の51%が,オーバーラインのローンは上流の
コルレス銀行向けポートフォリオの81~100%
に達している。
同じく75%が,オーバーラインは流動性にもと
づいたローン・セールよりも一般的としている。
パーティシペーションとは,おもに中小銀行が
オーバーラインのために大銀行に売却したも
のであった
18
表8 ラテン・アメリカ四大債務国の累積債務に占める
銀行融資(シンジケート・ローン)(単位:10億ドル)
各国銀行融資
(1982年末)
ブラジル
71.1
(74.5%)
メキシコ
72.0
(79.1%)
アルゼンチン
26.1
(67.5%)
ベネズエラ
28.2
(87.6%)
米国銀行融資
(1986年10月)
23.7
(38.6%)
24.2
(42.0%)
7.7
(34.5%)
4.7
(26.5%)
(注) 括弧内は上段が対外総債務に占める各国銀行融資の比率,
下段が主要債権国の銀行融資に占める米国銀行融資の比率
(出所) についてはフルペーパーを参照されたい。

米銀はラテン・アメリカの累積債務国に
たいする最大の貸し手であった。
19



米銀の内訳は,四大債務国にたいする1986年末
残高でみると,Citicorp,Bank of America,
Manufacturers Hanover,Chase Manhattan等の
上位7行で75.5%を占めている。
マネー・センター・バンクは,ラテン・アメリカにたい
する銀行貸出をそのまま放置せず,不十分では
あったが貸出債権の株式化や債権のスワップに
よって第3者に譲渡している。
こうして,ローン・セール市場は金融危機の1983年
頃から急速に成長している。
20
ローン・セールにたいする代表的な疑問



ローン・セールの際には,一般的に債務者である
顧客への通知とその承諾が必要である。優良顧客
は債権者の変更を嫌い,最悪の場合その銀行と
の取引をやめる可能性がある。
「なぜ我々が自行の優良貸付を他者に売ることを
望むのか? 我々は依然として優良顧客を探して
おり,優良顧客は世界でも多数は存在しない」
ローン・セールによって,リレーションシップ・バンキ
ングを放棄する売り手銀行は愚かである。売却銀
行は最良の資産を売却することによって自行を
弱体化させている。
21
(2)ローン・セールの動機


通常,ローン・セールされるものは,
銀行の既存の貸付ポートフォリオではなく,
1980年代後半になると,新しくオリジネートさ
れたものが多くなっている。
ローン・セール市場は,初期の段階では途上
国向けのシンジケート・ローンが中心であった。
これは当初から売却を前提として組成された
ものではなかった。
22
M&A(合併・買収)ローン




その後は国内向けでBBB格以上の投資適格の
商工業貸付が主となる。
1986年には,M&Aローンが,大銀行のローン・
セールの33%超であった。
マネー・センター・バンクのローン・セールでは,
1986年に50%以上が,87年3月に40%がM&A
ローンであった。
この時期のM&Aは大規模化しており,おもに
マネー・センター・バンクのような大銀行が
主幹事となってシンジケート団を組成して融資
をおこなった。
23



1989年にM&Aローンはローン・セール全体の
44.5%というピークに達した。
M&A ローンの主たるものはLBO(leveraged
buyouts)ローンであり,M&A,とくにLBOローンに
は新しくオリジネートされ当初から売却を前提とし
て組成されたものが多数含まれている。
1991年にM&Aローンはローン・セール全体の
22.0%というボトムにまで減少した。これは1980年
代後半のローン・セール市場の隆盛がM&Aローン
によってささえられていたことを示唆している。
24
自己資本比率


1988-93年に,売却と購入の両方をおこなっ
ている銀行は,売買をおこなっていない銀行
より,自己資本にたいするリスク資産比率を
約7%または8%下げることができた。
1988-93年に,売却と購入の両方をおこなっ
ている銀行は,売却だけの銀行より,自己資
本比率を約1.0~1.3%下げることができた。
以上Cebenoyan and Strahan (2004)
25
投資銀行業務手数料


一般に,LBOローンの一般債務の金利はLIBORの
2~2.5%高で,取引手数料は貸付額の約2%で
あった。LBOローンの金利・手数料は,伝統的な
企業貸付より通常かなり高かった。
1988年のRJR Nabiscoの場合には,当時マネー・
センター・バンクであったManufacturers Hanoverを
主幹事とした200余りの銀行が145億ドルの一般債
務を提供して,3億2,500万ドルの代理店手数料と
ファシリティ・フィー,7,300万ドルの年間契約料を
受け取った。さらに,取引が実現されなくても,1億
5,000万ドルの解約手数料が課されていた。
26


ローン・セールは,伝統的な商業貸出から投資銀
行の考え方へと売却銀行の文化を転換させる特
効薬となった。
しかし,ローン・セールが彼らの主要な銀行業務と
して定着することはなかった。
(3)小括


中南米諸国の累積債務危機を契機にローン・セー
ルという新たな業務展開が生じた(課題①)。
ローン・セールはリスクを含む貸出債権そのものを
第3者に移転するものである(課題②)。
27





債務危機後は,売却を前提として組成されたM&A
ローンがローン・セール市場をささえた。
その結果,伝統的な収益源であった金利収入から
投資銀行業務手数料という非金利収入への収益
源の移行が起こった(課題③)。
この収益力を保つ能力がマネー・センター・バンク
の強さである。
しかし,大型LBOがおこなわれなくなると,ローン・
セールも下火になった。
これにたいして,銀行貸付を既存の貸付ポートフォ
リオに残したままで,貸付の金利リスクや信用リス
クに対処する方法が導入されていく。
28
4. 金利スワップ




金利スワップは金利リスクを取引相手に移転する
金融派生商品である。
それ以前に導入された株式や債券の先物・オプ
ション取引では,リスクのみではなく元本を含んだ
取引がおこなわれた。
しかし,金利スワップや第5節のクレデリ取引では
貸出債権のリスクのみが移転される(図1)。
このように株式や債券ではなく貸出債権から派生
している点を,報告者はローン・セールからの一連
の業務展開と捉えている。
29


さらに, 1980年代後半のバブル崩壊以降,
新しく裁定取引をして収益を得ようとするもの
(トレーディング目的)の金利スワップが増加
している。
ここでも本稿の3つの課題を検証するととも
に,その相互関係とそれらがアメリカのマ
ネー・センター・バンクの収益力へどのように
結びついていたかを明らかにしたい。
30
(1)金利スワップの歴史
表9 金利スワップ取引のエンド・ユーザーであるアメリカ企業の特徴
企業数
レバレッジ比率
負債/資本比率
金利払い/キャッシュフロー比率
ヘッジされた負債の種類(%)
銀行貸付
変動金利またはCP
固定金利
情報なし
固定金利払い
にスワップ
変動金利払い
にスワップ
未利用
140社
30社
186社
0.42
0.31
0.34
0.24
0.28
0.14
49%
22%
―
29%
47%
53%
(出所) についてはフルペーパーを参照されたい。

銀行貸付の金利をスワップによって固定金利払いに
することが,典型的な企業の金利スワップ取引といえる
31
表10 Chemical Banking Corp.とChase Manhattan Corp.による
金利スワップ取引の関連バランスシートによる分類 1995-96年
(単位:100万ドル 括弧内は順に構成比%と各項目比1) %)
項 目
Chemical 1995年末
他行預金
証 券
1,824( 6.0% 6.1%)
貸 付
21,797( 72.2% 26.5%)
その他資産
305( 1.0% 3.8%)
預 金
3,343( 11.1% 3.4%)
その他借入資金
長期債務
2,910( 9.6% 39.7%)
計
Chase 1996年末
1,899( 2.5% 22.8%)
4,728( 5.4% 10.6%)
47,405( 53.3% 31.3%)
3,100( 3.5% 20.4%)
25,100( 28.4% 13.9%)
646( 0.7% 7.0%)
5,376( 6.1% 42.3%)
30,179(100.0% 13.4%) 88,254(100.0% 20.9%)
(注) 1 各項目比とは,各項目(たとえば貸付)残高と比較した金利スワップ取引の
比率である。
その他の(注)と(出所) についてはフルペーパーを参照されたい。
32
貸付



1995-96年当時のマネー・センター・バンクであっ
たChemical Banking Corp.とChase Manhattan
Corp.のデータ(表10)をみると,金利スワップ取引
の関連バランスシートの過半を貸付が占めている。
コア業務である銀行貸付から金利スワップが派生
している。
アメリカの銀行の変動金利貸付は世界で最も普及
しており,マネー・センター・バンクがその先導役を
務めていた。自らが先導して普及させた貸付の
変動金利受取りを,なぜわざわざ固定金利受取り
にスワップしたのだろうか?
33





この問題を考えるために,マネー・センター・バンク
の他の金利スワップ取引をみてみよう。
預金
表10の金利スワップ取引の関連バランスシートの
第2項目は預金
商業銀行の金利スワップ取引の代表的な相手先
は,たとえばS&Lである。
S&Lが発行する変動利付債と銀行が発行する固
定金利の預金証書の金利部分をスワップする。
銀行は短期の商工業貸出に適した変動金利の
負債をもち,S&Lは長期の固定金利モーゲイジに
適した固定金利の負債をもつ。ALMである。
34
ALM(資産負債総合管理)


バランスシートの資産側で負債側より変動金利の
金融商品が普及したために,資産側の変動金利
の金融商品を減らし,負債側の変動金利を増やす
ように金利スワップをおこなっている。
この場合,金利スワップ取引はALMを目的としてい
ることになる。
長期債務,証券
35
マネー・センター・バンクの優位性


銀行からみれば,銀行の資産側はおもに
変動金利受取りから固定金利受取りに
金利スワップされ,負債側はおもに固定金利
払いから変動金利払いにスワップされ,
バラエティに富むことになる。
バラエティに富むとは,この資産と負債両側,
変動から固定金利受取りと固定から変動金
利払い両方にまたがる金利スワップ取引の
種類の多さのことである。
36



これは,大投資銀行が圧倒的に固定金利払いか
ら変動金利払いに長期債務の金利スワップをおこ
なっていることと対照的である。このバラエティに
富んだ金利スワップ取引を提供できれば,多種多
様な顧客のニーズに応えることができる。顧客の
事例は,すでにみた企業やS&L等である。
こうした顧客のニーズを満たすバラエティに富んだ
金利スワップ取引に関連していれば,マネー・セン
ター・バンクはマーケット・メーカーとしての地位を
獲得しやすくなる。
これはアメリカのマネー・センター・バンクの収益力
の源の一つと考えられる。
37
(2)金利スワップの動機




金利スワップの動機の1つは,前節でみたように
ALMを目的としてマネー・センター・バンクが自らの
バランスシートを組み替えるもの。
1980年代後半にバブルが崩壊し,アメリカの主要
商業銀行の収益が悪化または横這いとなっている。
M&Aブームも去り,大型LBOローンによる手数料
収入という道も閉ざされた。
マネー・センター・バンク自身の経営判断も転換し,
1990-91年にはいわゆるクレジット・クランチ(貸し
渋り)が発生した。
38
トレーディング目的の金利スワップ取引



この収益を改善することに,金利スワップを中心と
するディリバティブ取引も関係している。
金利ディリバティブ取引は,ALMを目的として
バランスシートを組み替えるものから,おもに将来
の金利リスクを予測し裁定取引をして収益を得よう
とするもの(トレーディング目的)に変化している。
このトレーディング目的の金利スワップ取引で発生
する収益は,おもに取引収益(保有期間が1年未
満のポジションから得られた利益)と投資銀行業務
手数料である。
39
(注) と(出所) についてはフルペーパーを参照されたい。
40
(注) と(出所) についてはフルペーパーを参照されたい。
41
商業銀行の優位性




商業銀行は自己勘定で資産と負債両側に
多様な金融商品を揃えている。
一般に,商業銀行は投資銀行より広範な
顧客をもち信用分析をおこなう。
さらに,商業銀行は資金提供能力を備え,
業務上常に貸借をおこなう。
その結果,投資銀行よりもディリバティブの
ような派生的な金融商品を作り出す。
42




そのため,商業銀行は金利スワップの
ディーラー,さらにはマーケット・メーカーとして
投資銀行より有利である。
一般的に,顧客も大投資銀行よりもマネー・セン
ター・バンクの信用を好み,大投資銀行の信用を
得ようとしない顧客もいるという。
U.S. Congress, House〔1993〕によると,アメリカの
商業銀行10行だけがディリバティブのディーラーと
して行動している。
同じく国法銀行6行のディリバティブ取引の約90%
が値付け業務(market-making)の一部である。
43
(3)小括



1990-91年のクレジット・クランチという危機から
トレーディング目的の金利スワップという新たな
業務展開が生じている(課題①)。
金利スワップでは貸出債権の元本は転売されない
ので,優良顧客を維持しながら金利リスクのみを
移転できる(課題②)。
マネー・センター・バンクはローン・セールでは
投資銀行手数料を手に入れたが,金利スワップで
はそれに加えて取引収益を獲得するようになった
(課題③)。
44
5. クレジット・ディリバティブ




クレデリは信用リスクを取引相手に移転する
金融派生商品である。
マネー・センター・バンクを中心とする大銀行は,
まず主たる貸出債権の信用リスクをヘッジする
ために,クレデリを利用する(図1)。
この信用リスクのヘッジャーをプロテクション
(信用リスクにたいする保護)の買い手という。
ニューヨークでは,信用リスクや金利リスクなど
個別取引のすべてのリスクを移転するTRS(total
return swap)が,銀行によるローンの信用リスク
移転商品として最初に導入されている。
45
(1)クレジット・ディリバティブの現状



1997年以前の対アジア投資ブームと97年
アジア通貨危機,98年ロシア経済危機で
大きな信用リスクに直面したことがこの市
場を注目させることになった。
日本でもこの時期に三洋証券,北海道拓
殖銀行,山一證券等が破綻し,クレデリ市
場が導入された。
これは,本報告の課題①「危機から新たな
業務展開が生じた」ことと整合的である。
46
ス
)
表
⒒
2002年
2004年
2006年
2008年(見積り)
81%
73%
67%
3%
1%
6%
7%
12%
1%
4%
6%
1%
1%
3%
1%
1%
16%
3%
3%
7%
2%
3%
2%
1%
1%
59%
39%
20%
28%
2%
2%
6%
2%
2%
2%
1%
1%
54%
36%
18%
28%
3%
3%
6%
2%
2%
2%
1%
1%
注
)
と
出
所
(
銀 行
トレーディング目的
ALM目的
ヘッジファンド
年金基金
企 業
保険会社
専門保険会社
再保険会社
その他保険会社
投資信託
その他
2000年
(
―
プロテクションの売り手(信用リスクの投資家)
銀 行
トレーディング目的
ALM目的
ヘッジファンド
年金基金
企 業
保険会社
専門保険会社
再保険会社
その他保険会社
投資信託
その他
)
売
り世
手界
の
2ク
0レ
0ジ
0ッ
ト
0・
8デ
年ィ
リ
(
市 バ
場 テ
シ ィ
ェ ブ
ア
% の
買
金 い
額 手
ベ と
ー
プロテクションの買い手(信用リスクのヘッジャー)
2000年
2002年
2004年
2006年
2008年(見積り)
63%
55%
54%
5%
3%
3%
23%
5%
2%
2%
33%
2%
1%
12%
3%
0%
15%
4%
2%
20%
10%
7%
3%
4%
1%
44%
35%
9%
32%
4%
1%
17%
8%
4%
5%
3%
1%
40%
33%
7%
31%
5%
2%
18%
8%
4%
6%
3%
1%
47
に
つ
い
て
は
フ
ル
ペ
ー
パ
ー
を
参
照
さ
れ
た
い
。
(2)クレジット・ディリバティブの動機




第3節のローン・セールはすべてのリスクを
移転するが,クレデリは信用リスクだけを,
金利スワップは金利リスクだけを移転する。
その意味で,クレデリと金利スワップは,ローン・
セールの機能の一部を代替している(図1)。
さらに,クレデリ取引では,ローン債務者である
顧客への通知は必要ない。
したがって,クレデリでも優良顧客が流出する
可能性というローン・セールでは不都合な点も補完
している。
48




銀行は受取人すなわちリスクを
ヘッジすることが多いが,マネー・センター・バンク
では保証人すなわちリスクを引き受ける金額の方
が大きくなることもある。
エネルギーの卸売り会社エンロンが破綻した
2001年には,総資産100億ドル超の大国法銀行で
もリスクを引き受ける金額の方が大きくなっている
(以上,表4,表6)。
ヨーロッパの保険会社や地方銀行のように
プレミアム(またはスプレッド)を得ているのである。
このような信用リスクをヘッジすると同時にリスクを
引き受ける行動をどのように理解すればよいのだ
ろうか?
49
トレーディング目的のクレジット・ディリバティブ



2002年9月末に,
プロテクションの売りポジションの約98%を
30の世界的な銀行とブローカー・ディーラーが
保有しており,この取引相手の上位に
アメリカのマネー・センター・バンクが入っている。
J.P. Morgan Chaseが1位,Citigroupが8位,
Bank of America が12位である。
これは,表11の銀行によるトレーディング目的の
クレデリの大きさと整合的である。
50



第4節の金利スワップと同様に,
彼らはクレデリのディーラーとして行動し,
値付け業務(market-making)や
マーケット・メーカーとして活動している。
ALM目的からトレーディング目的へのクレデリの
転換は,アメリカのマネー・センター・バンクでは
1997年頃までの2~3年でおこなわれた。
すでに金利スワップで経験のあるマネー・セン
ター・バンクは,比較的短期間にトレーディング目
的の
クレデリに進出できた。
51
マネー・センター・バンクのトレーディング



米国の商業銀行はクレデリ取引によって
信用リスクを海外に輸出している。
米銀は信用リスクをはずし,おもにヨーロッパの
銀行(2002年には地方銀行,とくにドイツの銀行が
プロテクションをネットで110億ユーロ販売, 2003
年には独銀はネットで290億ドル販売,たとえば
Landesbank)が,リスクを引き受けた。
ヨーロッパ,とくにドイツの銀行が信用リスクを引き
受ける一方でプレミアム(またはスプレッド)を得て
いる。信用リスクに投資したのである。
52



こうした2000年以降の信用リスクの輸出によって,
アメリカの銀行はネットの利益を得た。
アメリカのマネー・センター・バンクがトレーディング
目的のクレデリに進出した結果,米銀の信用リスク
を輸出するようになり,商工業貸付の不良債権比
率を引き下げた。
これも,マネー・センター・バンクのトレーディング
目的のクレデリによって,アメリカの銀行が世界的
な収益力を保っていることと整合的である。
53
(3)小括



1997年アジア通貨危機,98年ロシア経済危機等か
らクレデリという新たな業務展開が生じた(課題①)。
クレデリでは貸出債権の元本は転売されないので,
優良顧客を維持しながら信用リスクのみを移転で
きる(課題②)。
マネー・センター・バンクはローン・セールでは投資
銀行手数料を手に入れたが,クレデリではそれに
加えて取引収益を獲得するようになった(課題③)。
54
6. むすびにかえて



本報告では,ローン・セールとディリバティブ取引
の現状を把握することで,現在のマネー・センター・
バンクの業務展開を考察した。
課題①「危機から新たな業務展開が生じた」ことに
ついては,米国のマネー・センター・バンクに関する
歴史的事実関係からみると妥当であった。
とくに1990-91年のクレジット・クランチの時期に
トレーディング目的の金利スワップへの業務展開
が生じているのは,その後のクレデリの業務展開
にまで取引収益という点でつながる。
55
課題②



本報告で取り上げた業務展開は,周辺業務ではな
く,貸付というコア・ビジネスから派生している。
1980年代以降,マネー・センター・バンクはローン・
セールをおこない,それで不十分な点(リスクのみ
の移転)や不都合な点(優良顧客が流出する可能
性)を金利スワップとクレデリ取引で補完した。
この意味でローン・セール,金利スワップ,クレデリ
は一連の業務展開であると報告者は考えている。
56



金利スワップ取引は1990年代半ばまでは
おもに貸付から派生していた。
クレデリ取引も,マネー・センター・バンクの
リスク・ヘッジの観点からは貸付から派生
していた。
これらが,課題②「貸出債権のリスク移転
が3つの業務で段階的に開けたこと」こと
の歴史的実証結果である。
57
課題③



3つの金融商品ともに,金利収入から脱却し
て,投資銀行業務手数料を得ようとしている
点も共通にみられた。
ローン・セールを補完した金利スワップと
クレデリ取引では,取引収益(保有期間が1
年未満のポジションから得られた利益)を得
ようとしていた。
以上が,課題③の歴史的実証結果である。
58


とくに取引収益は,金利スワップとクレデリ市場に
おいて,アメリカのマネー・センター・バンクがディー
ラーとして行動し,値付け業務(market-making)や
マーケット・メーカーとして活動していることを意味
している。
こうしたマネー・センター・バンクのコア・ビジネスで
ある貸付から派生した一連の業務展開は,現在の
金利ディリバティブの世界的な広がりとクレデリの
拡大を理解する視点を与え,アメリカのマネー・セ
ンター・バンクの世界的な収益力の源(マーケット・
メーカーとしての役割)を説明する一助になるであ
ろう。
59
(注) と(出所) についてはフルペーパーを参照されたい。
60
サブプライム・ローンとの関連




サブプライム・ローンの普及以降,マネー・セン
ター・バンクの取引収益,投資銀行業務手数料,
ローン・リース売却収入(ネット)と非金利収入との
関係に構造変化が起きた可能性が高い(前出図)。
信用リスクのヨーロッパへの輸出は,サブプライム
以前とよく似ている。
サブプライム・ローンは証券化されているが,ロー
ン・セールはパッケージされることはあっても証券
化されていない。→ 証券化の功罪
サブプライム・ローンとローン・セールに共通してい
るのは流動化されていること。
61