第6章 調査過程 ☞少年保護手続: 調査過程(資料収集過程)+ 審判過程(収集された資料 に基づいて終局判断を行 う審判段階) ☞調査前置主義:審判前調 査として終局判断を行うた めに必要な資料の収集活動 の全体を意味(8条1項) ☞資料収集の調査: ⇒要保護性調査(家裁調査 官による社会調査の形式 -8条2項・9条-、人格調査、 科学調査とも呼ばれる) ⇒非行事実調査(裁判官が 行う、法律的側面からの調 査、法的調査と呼ばれる) 1調査の意義 (1)調査前置主義 ①8条1項:非行事実の存否 に関するもの(行為に対する 法律的側面からの調査⇒法 的調査・裁判官担当)、要保 護性の存否・内容に関する もの(行為者に対する行動 科学的側面からの調査⇒社 会調査・家裁調査官が担当) ②8条2項:全件調査主義で あるが、家裁の処理能力上 調査官の調査を要しないも のや簡略化された調査で 済ませることができる事件 には調査命令を出さないこ ともできる。 (2)法的調査 ①非行事実の存否に対す る判断のための裁判官の 資料収集活動 ②非行事実の存否を法的に 認定するために非行事実に 関する資料を収集する。 ③裁判官は、事件受理の段 階で手元にある法律記録及 び証拠物を調査し、その限 りでは非行事実の存在を 認定するのが合理的である と思慮するときは(蓋然的心 証)、その判断に基づいて観 護措置・調査命令を出す。 ④任意的な資料収集が原 則⇒少年の言い分・付添人 の意見を十分聴取 ⑤補充捜査の問題: ☞少年法41条・42条は、捜 査機関は少年の被疑事件 につき捜査を遂げた結果、 犯罪の嫌疑があると思慮す るときに送致すべきもの ☞捜査機関に犯罪の証拠 固めを十分させることにより、 捜査機能を持たない家裁の 負担を軽くし、直ちに社会調 査に入りうるようにするため ☞安易に捜査機関の補充 捜査を認めることは、適正 手続に反する。 ※最高裁判例:搜査機関 は、少年の被疑事件を家 庭裁判所に送致した後に おいても補充搜査をする ことができ、家庭裁判所 は、事実調査のため、 捜査機関に対し、右捜査 権限の発動を促し、又は 少年法一六条の規定に 基づいて補充捜査を求 めることができると解す べきである。 ☞補充捜査の問題は、2001 年改正のとき、裁判官の職 権で検察官を審判に出席さ せることができる手続が新 設される一つの原因とも なった。 (3)社会調査(要保護性調査) ①家裁が、法的調査によっ て非行事実の存在を認定す るとともに、その少年が非行 を克服して成長発達を遂げ るようにするためには、少年 に対してどのような援助 (処遇)を与えたらよいかにつ いて判断するために必要な 資料の収集活動である。 ②家裁調査官によって行わ れる(8条2項・9条) ③人格調査(調査の内容)+ 科学調査(調査の方法) ☞人格調査の内容: ㋐少年の現在の性格・行動 傾向⇒その過程・環境の問 題⇒少年の今後の反応の 予測 ㋑保護者の保護能力・環境 把握⇒少年の将来的犯罪 的危険性の可否究明 ㋒環境等の改善の可能性 や少年の将来的可能性を見 極める。 ㋓以上の要保護性の診断 に基づき、保護者の保護能 力を助成し、少年の犯罪的 危険性を除去して少年の持 つ可能性を育てつつ、少年 が社会的適応性を回復して 健全に成長していくための 最適の処遇は具体的にど のようなものであるかを明ら かにする。 ☞科学調査 ㋐人格調査の結果は、少年 の自由を拘束する保護処分 などの選択の基礎となるの であるから、実証的な経験 科学による法則性・客観性 が要請 ㋑要保護性に関する調 査は、人間関係諸科学 の知識と技術を活用して 行われる科学的な調査 でなければならない(9条)。 2 調査制度の問題点 (1)調査前置主義の問題点 ☞非行事実の存否が認定さ れないまま、家裁調査官に よる広範な調査が直ちに実 施されることは人権侵害で はないか、という問題 ①家裁調査官による調査は 人格調査として行われ、した がって個人の私生活を含む 生活の全領域に調査が及 ぶことになるが、そのような プライバシーの権利と深い 関わりを持つ調査活動が、 非行事実の存否に関する審 判を経ずして行われること は疑問 ②対象者・関係人などの信 頼・協力関係に立って行わ れる調査の結果が非行事 実の認定に利用される虞が あり、人権保障上極めて問 題 ③少年に対する裁判官によ る直接審問が必要⇒非行 事実についての蓋然的心証 が要求される。 ④非行事実認定が困難な 事件についての特別手続 ⇒検察官の審判関与 ⑤家裁調査官による調査は、 捜査ではないので、その結 果が非行事実の認定に利 用されるべきではない。 (2)調査と適正手続 ①少年調査における適正手 続の必要性 ②付添人の役割が重視され なければならない。要保護 性に関する科学調査の資料 を示し、反対尋問権や補充 捜査の申立てなどの権限を 与えることを考慮すべきであ る⇒必要的付添人・国選付 添人制度の実現が必要 ③調査の信頼性を高めるた めには、素材としての事実と その収集方法とが明らかに され、その科学性がいつで も検証できるようにしておく 必要がある⇒科学調査が適 正な処遇を実現する上で必 要であること、資料や情報 については秘密が保持され ること、それらのものが非行 事実の認定に利用されない こと、の保障 (3)調査命令と調査の独立性 ①社会調査の実施に関する 権限と責任は裁判官にある ②しかし、調査の専門性・独 立性が尊重されなければな らず、裁判官があらかじ め調査の範囲・方法につ いて制限を設けたり、調 査の進行を無視した指示 を出すことについては、 特に慎重さが必要 ③裁判官は、調査における 適正手続保障の最終責任 者 (4)調査官の処遇意見と裁 判官の処分決定 ①家裁調査官の調査結果 報告・処遇意見の付け義務 (少審規13条1項) ⇒裁判官 の監視機能 ②調査官の処遇意見は要 保護性に関する判断と処遇 方法の提示をその内容とし ている。調査の専門性・独 立性を尊重するならば、 基本的には、この処遇意見 に基づいて処分形式が決定 されるべきである⇒少年の 行動予測の限界、処遇手段 の現実的な限界⇒裁判官 の修正がやむを得ない場合 がある。 3 試験観察 (1)性格:家裁が少年を保 護処分に付す蓋然性は認 められるが、直ちに保護処 分に付すことが困難か又は 相当でないと認めたときに、 終局処分の決定を相当期間 猶予し、家裁調査官に命じ て、少年の生活態度などの 状況や経過を観察させ、併 せて助言、補導その他の措 置を講じさせながら、少年の 反応を見た上で終局決定を 行うための中間的な措置 (第25条、家裁調査官の観 察)⇒三権分立により原則 的に家裁は執行に関与でき ない点から(保護処分決定 後はその取消・変更不可)、 保護処分の選択決定ついて 適切かつ慎重な判断が必要 であるのがその理由 (2)要件:①保護処分に付 す蓋然性があること、②直ち に保護処分に付すことがで きないか、あるいは相当で ない事情があること、③家 裁調査官の観察活動(より 詳細な資料収集あるいは少 年に対する補導・援助活動) が必要であり、かつその結 果適切な終局決定ができる 見込みがあること、④相当 の期間内に前記の要件を満 たしうる可能性があること ※20歳未満という年齢的限 界を前提 ※保護処分相当性は試験 観察の必須要件ではない。 試験観察の結果保護処分 以外の決定も可能 ※非行事実の確定は必須 (人身の自由に対する制約 が加えられるから) (3)期間:条文は「相当の期 間」と定めるだけであるから、 通常期間を問わない。しか し、試験観察が、終局決定 のための中間的で暫定的な 措置であること、少年の自 由を制限する措置であるこ と、少年院の一般短期処遇 が6ヶ月以内、特修短期処 遇は4ヶ月以内であることな どを考慮すると、期間を定め るべきである。 3ヶ月から6ヶ月程度が妥当 (4)付随措置(25条2項): ①遵守事項の履行:具体 的・明瞭に指示・自発性誘 導⇒学校にまじめに登校す ること、家出をしないことな ど ②条件付保護者への引渡 し:少年の保護監督につい て必要な条件を具体的に指 示(少年の日常生活を書面 で報告すること、少年の入 退学、就職、転退職の際は 調査官の許可を求めること) ③補導委託:補導のみ委託 (少年をそれまでの住居に 居住させながら学校長、保 護司、児童委員などに補導 を委託すること)と身柄付補 導委託(少年を補導委託先 の施設に居住させて補導を 加える方式)がある。一般的 に補導委託といえば後者の こと (5)身柄付補導委託 ①家裁の調査中に処遇決 定のための資料収集活動と 少年に対する補導活動とが 一体化されていること ②委託先は適当な施設、団 体又は個人、公私を問わな い。民間篤志家に委託する のが普通⇒家庭的雰囲気 4 少年鑑別所による鑑別 (1)鑑別の性質 (2)内容 (3)資質鑑別と社会調査 あ
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