タイトル

太田市水道事業包括業務委託
第三者評価業務
報告書
2011年7月29日
Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc.
目次
1
2
3
4
5
6
7
調査の背景・目的
太田市水道事業包括業務委託について
調査内容
調査方法
調査フロー
調査結果
第Ⅱ期事業発注に向けての提言
<別冊資料>
参考資料1
参考資料2
参考資料3
参考資料4
評価マトリクス
定量データ調査結果
提案書達成度調査結果
水道事業業績評価結果
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2
3
5
6
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15
25
1 調査の背景・目的
 太田市上下水道局では、平成19年4月より第Ⅰ期の水道事業包括業務委託を実施している。
第Ⅰ期事業は平成23年度末までとなっており、今年度中に第Ⅱ期事業の発注先を選定する手
続きを行う予定となっている。
 第Ⅱ期事業の発注手続きを進めるにあたって、第Ⅰ期事業の成果を評価し、市民等への説明
資料、次期事業発注の参考となるような基礎資料をとりまとめることとなり、本調査はこの
支援のために行うものである。
 なお、評価にあたっては、内部関係者による評価ではなく、客観的な視点からの評価を行う。
※
太田市の水道事業を取り巻く情勢、将来の推移等水道ビジョンや中期事業計画に関する事
項それ自体は本調査の対象外とし、極力包括業務委託の実績評価にフォーカスする(必然
的に関連する事項は含む)。
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2 太田市水道事業包括業務委託について (1)委託に取り組んだ背景
<水道事業管理者の方針>
 市長の意向「常にコスト意識を持って仕事に取り組むこと」
 毎年の全庁規模での人事異動が専門能力を阻害しているという問題
 水道局職員でなくてもできる仕事は、極力外部に委託という意識
<それまでの業務委託の実績>
 昭和47年に漏水修繕を民間委託
 昭和54年に浄水場の夜間・土・日・祝祭日管理業務を民間委託
 平成11年に料金収納業務を民間委託
 平成13年に検針業務を含む全ての料金徴収業務を民間委託
<時代の流れ>
 平成16年厚生労働省「水道ビジョン」→広域化の推進・最適な事業形態の選択等について検討
すべき
 平成16年総務省「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針」→民間的経営手
法の導入の促進を要請
 平成19年3月で水道法24条の3による第三者委託が5年間を終了する
 平成20年3月で料金徴収業務委託が5年間を終了する
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2 太田市水道事業包括業務委託について
(2)委託の経緯
<プロポーザル実施まで>
 平成18年8月:「太田市水道事業包括業務委託プロポーザル実施要領」を作成
 平成18年9月:水道局ホームページに実施要領基本的事項を作成
 平成18年10月:プロポーザル説明会(49社105名の参加)
<プロポーザル企業選定>
 「プロポーザル実施要領」の中の参加資格条件をクリアする2つのグループ
 プロポーザル提案委員会を、学識経験者3名、水道使用者代表2名、水道局2名を構成員として
設置
 「応募者プレゼンテーション・ヒアリング評価基準(採点表)」により評価
 (株)明電舎、(株)ジーシーシー自治体サービス、太田市水道管理センター(株)の3社構
成のグループを採用
<委託の実施>
 3社による新会社設立、受託水道業務技術管理者を置き、責任を明確に
 地方自治法第214条の規程に基づく、債務負担行為(5年間)により複数年保証を明記
 平成20年、21年には、それぞれ委託業務の拡大を実施
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3 調査内容
(1)当初に設定した目的の達成度の把握
 包括事業委託実施の際に意図した当初の目的に照らし、事業効果について定量的及び定
性的な情報を把握する。
 「目的」の具体的項目は、プロポーザル実施要領の目的から抽出する。
 抽出した項目について、既存定量データとの対応付けやヒアリング等による達成度の確
認を行う。
(2)当初意図しなかった効果等の把握
 関係者にヒアリングを行い、当初意図していなかった効果、課題等を把握する。定量的
及び定性的な情報を把握する。
(3)第Ⅱ期事業の発注に向けての提言
 (1)、(2)を踏まえ提言をとりまとめる。
 水道局職員による太田市水道事業に関するWGを実施し、提言の参考とする。
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4 調査方法 (1)当初に設定した目的の達成度の把握
 評価マトリクスを作成し、当初の目的ごとに定量的、定性的に達成度を評価。
定量評価
 各目的に対してどのような定量
データを用いて評価を行うかを整
理
 委託の前後で定量データがどのよ
うに推移したかを確認
 委託の前後で大きな変化が確認さ
れた場合は、その理由についてヒ
アリングを実施し、包括委託の影
響を調査
定性評価
 各目的に対してどのような提案が
されていたのかを確認
 各目的に対して水道事業運営とし
て取り組んでおくべき項目を整理
 提案が適切に遂行されたかをヒア
リング等で確認(遂行されなかっ
た場合、何が問題だったか)
 そもそも水道事業として適切に運
営されていたのかを確認
<評価マトリクスのイメージ>
当初目的
大項目 小項目
プロポーザ
ル実施要領
より整理
△:想定以下の達成度
ー:評価できない(データ不足
※詳細は参考資料1
定量評価
PI 市民満足度 水道アンケー
各資料より、委託前後の変
化に着目して分析
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評価方法
◎:想定以上の達成度
○:想定どおりの達成度
等)
提案書達成度
提案書達成度
を確認
定性評価
水道事業運営
その他
整理した項目に
基づき、
適切性をチェック
ヒアリン
グ
を実施
6
4 調査方法 (2)当初意図しなかった効果等の把握 (3)提言
 当初意図しなかった効果等についても、定量的、定性的に整理。
定量評価
 目的として設定されていなかったが、
評価を行う上で必要と考えられる定
量データがどのように推移したかを
確認
 委託の前後で大きな変化が確認され
た場合は、その理由についてヒアリン
グを実施し、包括委託の影響を調査
定性評価
 目的として設定されていなかったが、
評価すべき事項がないか確認
 評価すべき事項があればヒアリング
を実施
※ここでは(1)のように◎、△といった評価は行わず、得られた効果・課題等を整理するのみとする。
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4 調査方法
(3)第Ⅱ期事業の発注に向けての提言
 (1)、(2)を踏まえ、総合評価(第Ⅱ期事業の発注に向けての提言)をとりまとめ。
 第三者評価のスキームを含めた評価結果全般、及び第Ⅱ期事業の発注に向けての提言につい
て、以下の有識者にヒアリングを実施。
<有識者リスト
(五十音順)>
園田健司
群馬松嶺福祉短期大学
滝沢智
東京大学大学院
中北徹
東洋大学
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工学研究科
元学長
教授
理事
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4 調査方法
(3)第Ⅱ期事業の発注に向けての提言
 提言の参考とするため、水道局職員による太田市水道事業に関するWGを実施。
<太田市水道事業に関するWG 開催要領>
1.目的
これまでの包括委託の結果も踏まえ、太田市上下水道局の強み・弱みを把握すると共に、局を取り巻く外的
要因を分析し、次期包括委託を実施するにあたり注意すべき事項を抽出することを目的とする。
2.プログラム
①包括委託第三者評価結果の報告
②SWOT分析
・普段の業務を振り返り、今後の水道局の方向性についてディスカッション
・総務課4名、工務課4名の参加者が、4名(各課2名)ずつ2グループに分かれ、強み・弱み・機会・脅
威について検討
<作業内容>
-太田市水道局の強み、弱み、機会(チャンス)、脅威(都合の悪いこと)を、各自で付箋に書き出
す
-模造紙へ全員分を貼り付け、グループのメンバーで議論、整理する
-各グループによる発表、今後の方策について意見交換を行う
③まとめ
・②の結果については、提言作成の参考とする
※先行自治体である太田市水道局職員の率直な意見を収集することを目的としており、本WGの結果を用いて、
今後の
包括業務委託の進め方を結論づけることはしない。また、議事録は非公開とする。
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4 調査方法
(3)第Ⅱ期事業の発注に向けての提言
<太田市水道事業に関するWG SWOT分析のイメージ>
内部環境分析
外部環境分析
強み
弱み
・・・
・・・
機会
脅威
・・・
・・・
今後の方策検討
強み×機会
弱み×機会
強み×脅威
弱み×脅威
<太田市水道事業に関するWG 作業の様子>
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4 調査方法 ~第三者評価の考え方~ ①本調査の評価イメージ
 太田市水道事業を、ステークホルダーがそれぞれモニタリングしているという前提に基づき、MRIは
直接の評価に加え、それぞれのモニタリング結果を評価する。
 評価方法・評価内容について有識者へのヒアリングを実施し、評価の参考とする。
・月次報告
・ABS自己評価の確認 等
・PIの確認
・職員へのヒアリング 等
太田市
水道局
check
check
MRI
check
・市民満足度調査
・水道局アンケート
ABS
check
check
太田市水道局
↓↑
ABS
check
市民
・セルフモニタリング
・提案書達成度の自己評価 等
check
有識者
check
・評価スキームへのアドバイス
厚労省
・厚労省立入検査
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4 調査方法 ~第三者評価の考え方~ ②他事例との比較
確認事項
石狩市
太田市
計画・提案の実施状況
○
● ※1
PI(業務指標)
○
○
PI以外の定量データ
○
○
水道事業としての運営状況
● ※2
施設管理状況
● ※2
報告書類提出状況
● ※3
市民に対する調査
● ※4
水道分野以外の調査
○
有識者ヒアリング
○
業務改善提案
自治体のモニタリング手法
○
● ※1
● ※3
○:評価者が現場にて評価を行っている
●:評価者が資料や記録を元に評価を行っている
※1 受託事業者の自己評価+水道局ヒアリング
※2 マニュアルに基づくチェック・
厚生労働省立入検査時の資料
※3 水道局が確認していることの確認
※4 市・水道局が実施しているアンケート調査
【参考資料】 石狩市 浄配水場等運転管理業務委託 運転管理業務 総合評価表
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4 調査方法 ~第三者評価の考え方~ ③評価に用いる資料
資料名
概要
活用方法
 水道事業における各種業務指標
 水道事業が適切に運営されていたかを把握
 委託前後で変動の大きな項目については、ヒ
アリングで原因を確認
 市民満足度の推移を把握
市民満足度調査結果
(H18~H22年度)
 太田市が年1回実施している市民満
足度調査の結果
 上水道については、満足度と重要度
を問う設問あり
 市民満足度の推移を把握
水道局アンケート調査結果
(H15~H22年度)
 水道局が年1回実施しているアン
ケート調査の結果
 水道水の味等について、市民満足
度調査よりも細かな設問
 明電舎、ジーシーシー自治体サービ
ス、太田市水道管理センターがプロ
ポーザル審査時に提出した提案書
 水道局が当初設定していた目的と照らし合わ
せて、どのような提案が行われていたかを整
理
 提案が適切に遂行されていたかを把握
厚労省立入検査資料
(H19年度)
 水道法に基づく厚生労働省立入検
査の結果
 指摘事項と対応状況
 包括業務委託に関する事項があれば抽出
 指摘事項に適切に対応しているかを確認
水道事業評価・監査マニュア
ル(案)に基づく業績評価結果
 水道事業評価・監査マニュアル研究
会作成のマニュアルに基づき、水道
事業の業績を評価
 水道事業が適切に運営されていたかを把握
PI (Performance Indicator)
(H17~H21年度)
プロポーザル提案書
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5 調査フロー
第三者評価
当初目的の達成度
PI、市民満足度等
関係者ヒアリング
ABS
上下水道局
有識者
ヒアリング
+
当初意図しなかった効果等
関係者ヒアリング
結果の
フィードバック
ABS
上下水道局
太田市水道事業に関するWG
(評価結果案を踏まえ、職員によるSWOT分析、自由討議等)
次期包括委託実施に向けての提言
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6 調査結果
(1)当初目的の達成度 ~各資料の評価方法~
資料名
評価方法
PI (Performance
(H17~H21年度)
包括委託開始の前後で、指標がどのように推移しているのかを確認。
・ 指標が良くなっており、包括委託にその要因があれば◎と評価
・ 指標に変化がない場合は、健全に運営されているので○と評価
・ 指標が悪化しており、包括委託にその要因があれば△と評価
市民満足度調査結果
(H18~H22年度)
包括委託開始の前後で、アンケート結果がどのように推移しているのかを確認。
・ 結果が良くなっており、包括委託にその要因があれば◎と評価
・ 結果に変化がない場合は、健全に運営されているので○と評価
・ 結果が悪化しており、包括委託にその要因があれば△と評価
水道局アンケート調査結果
(H15~H22年度)
包括委託開始の前後で、アンケート結果がどのように推移しているのかを確認。
・ 結果が良くなっており、包括委託にその要因があれば◎と評価
・ 結果に変化がない場合は、健全に運営されているので○と評価
・ 結果が悪化しており、包括委託にその要因があれば△と評価
プロポーザル提案書
提案書達成度をABSによる自己評価、水道局による内容の確認。
・ 自己評価が◎(提案以上の結果)で、その根拠が確認できれば◎と評価
・ 自己評価が○(提案通りの結果)で、その根拠が確認できれば○と評価
・ 自己評価が△(提案以下の結果)で、その根拠が確認できれば△と評価
厚労省立入検査資料
(H19年度)
厚労省立入検査時の指摘事項(包括委託に関係のある項目)への対応状況を確
・ 既に対応、あるいは対応の目処が立っていれば○と評価
・ 対応できていなければ△と評価
水道事業評価・監査マニュア
(案)に基づく業績評価結果
マニュアルに基づき水道事業の業績(包括委託に関係のある項目)を確認。
・ 適切に実施できていれば○と評価
・ 実施できていなければ△と評価
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6 調査結果 (1)当初目的の達成度 ①PI (業務指標:Performance
Indicator)
 包括委託による業務指標の悪化については確認できず、委託前と同様に水道事業が適切に運営されている
ことが確認できた。一部の項目では、包括委託によるプラスの影響が見られた。
<包括委託によるプラスの影響が見られた項目>
 「1003:原水有効利用率」が、包括委託開始前後で高い割合を維持しているが、これはABSが効率
的な取水方法等の分析を行った結果であり、水道局から高い評価を得ている(包括委託せずに水道
局の経営が続いていれば、人員の問題から詳細な分析を行うことはできず、割合はより下がってい
たと予想される)。
 「1105:カビ臭から見たおいしい水達成率」が、包括委託開始後に上昇している。これはABSが汚
染源の特定による低減対策(施設洗浄等)を実施したためである。
 「2211:薬品備蓄日数」が、年々増加傾向にある。これはABSが薬品基準(塩素酸、臭素酸)の改
定に伴い、備蓄日数を改善したためである。
 「4002:配水量1m3当たり消費エネルギー」が、H20年度に低い数値となっているが、これはABS
が取水効率の低い水源の運転抑制等の取組を実施したためである。
<変化が見られたが包括委託とは無関係の項目>
 「1106:塩素臭から見たおいしい水達成率」、「1107:総トリハロメタン濃度水質基準比」の変化
については、浄水受水(用水供給事業)の影響であり、ここでは評価の対象外とする。
 「3007、3008、3105、3106、3109、3110」といった職員数に関連する項目が包括委託開始後に大
きく変化しているが、これは包括委託によって水道局の職員が減少したためである。
 「3011:給水収益に対する企業債償還金の割合」が年々増加傾向にあるが、これは水道局が集中し
て老朽管更新事業に投資しているためであり、包括委託とは無関係である。
 「3022:流動比率」が年々増加傾向にあるが、これは、建設改良工事を縮小し、未払金が減少した
ためであり、包括委託とは無関係である。
 「4005:建設副産物のリサイクル率」が年々増加傾向にあるが、これは水道局が集中して老朽管更
→詳細は参考資料2
新事業に投資しているためであり、包括委託とは無関係である。
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6 調査結果
ト
(1)当初目的の達成度 ②市民満足度調査 ③水道局アンケー
<市民満足度調査>
 市民の水道事業への関心の高さは高水準を保ちつつ、市民満足度が年々上昇傾向にあることが
確認できた。
 「満足度」については、包括委託開始後に若干上昇し、年々増加傾向にある。
 「重要度」については、包括委託前後で変化は見られないものの、98%前後の高水準を
保っている。
→詳細は参考資料2
<水道局アンケート>
 水道水の味や、水道事業のサービスについての満足は高水準を保っていることが確認できた。
 「水の出具合」については、高い割合(89%)で適正と考えられている。
 「水道水の飲み方」については、包括委託開始後のH19年度に「そのまま飲む」という
回答の若干の減少が見られるが、H20年度以降は上昇傾向にあり、問題はないと思われ
る。
 「水道水の評価」については、包括委託開始後のH19年度に「おいしい」が減少し、
「まずい」が増加しているものの、H20年度以降は「まずい」は減少傾向にあり、問題
はないと思われる。
 「水道局のHP閲覧」については、包括委託開始後のH19年度は若干低いものの、それ
以降は上昇傾向にあり、問題はないと思われる。
→詳細は参考資料2
 「水道料金」については、包括委託前後での変化は見られない。
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6 調査結果
(1)当初目的の達成度 ④提案書達成度
 一部の事項では提案書通りの遂行ができていないものの、ほとんど全ての事項では提案書通り
に適切に事業が遂行されていることが確認できた。また、いくつかの項目では提案書以上の取
組が見られた。
【提案書の内容以上に遂行した事項】
 施設洗浄計画を作成し、効果的な浄水施設の衛生管理を実施した。
 施設更新基準を作成し、アセットマネジメントの基礎資料とした。再投資と財政との整
合性ある中長期計画の策定等にも参画した。
 従事者による浄水場の軽微な修繕(塗装、設備改良等)項目を拡大することにより、経
費節減効果を向上(約1,370万円/年)させた。
 管路網情報のデジタル化を進め、各業務への活用が可能となっただけでなく、コスト削
減も実現(約320万円/年)した。
 個別マニュアルの整備により、事務の効率化及び正確性の向上を図った。
 限界揚水量測定を実施し、環境に配慮した水源利用を実現した。
 各会計システムの連携(上水道料金・会計・下水道料金)を進めることで、業務の効率
化を実現した。
【提案書の内容が遂行できなかった事項】
 突発修繕報告は、とりまとめの時間がかかり、中間報告(報告は年二回)が実施できな
かった。
→詳細は参考資料3
 管路施設巡視・点検等は実施しているが、巡視記録を作成していなかった。
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6 調査結果 (1)当初目的の達成度 ⑤厚労省立入検査 ⑥水道事業業績評価
<厚生労働省立入検査結果>
 立入検査の指摘事項については、すべての項目で対応あるいは対応の目処が立っており、水道事業
としては問題なく運営されていることが確認できた。
 責任区分については、当初は問題が起こった際に両者で協議することを想定したようだが、厚労
省から指摘を受けたため、現在では文書で明確になっている。
 マニュアルの点検及び見直しが実施され、2011年3月の東日本大震災の際にも、大きな問題は
起こらなかった。
 業務指標の活用については、水道ビジョンへの反映を行っている。
 老朽管については、合併旧町のデータが未整備であったが、現在マッピングシステムと合わせ
て整備中である。
<水道事業評価・監査マニュアル(案)に基づく業績評価>
 一部の事項で課題があったものの(第三者による外部監査、各業務別・部署別の原価計算)、ほとん
どすべての項目で適切に運営されており、包括委託による大きな問題はないことが確認できた。
 「安全:水質管理」、「安定:危機管理、施設整備」、「管理:施設管理」、「持続:施設整備、顧客満
足、労務管理」、「環境:環境保全」については、全ての項目で適切に運営されている。
 「持続:財務管理」については、「第三者による外部監査」、「各業務別・部署別の原価計算」は包
括委託に関する項目と考えられるものの、現状では取り組まれておらず、今後の課題である。他
の項目については適切に運営されている。
→詳細は参考資料4
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6 調査結果
(1)当初目的の達成度 ~評価のまとめ~
 判断材料が足りずに評価できない項目があるものの、評価可能な項目では想定どおりの達成度であることが確
認できた。
 想定以上の達成度となった項目、想定以下の達成度となった項目があり、後者については今後の改善が必要で
ある。
 ただし、水道事業の当初目的の達成度という点から見れば、包括業務委託に問題は見られないと評価すること
当初目的
定量評価 定性評価
ができる。
大項目
小項目
(1)安全・安心・安定した
水の供給
ア.水源から蛇口までの一体管理による水質確保と適正水量・水圧の
◎
◎
イ.施設・送配水管路の老朽化対策・耐震化と見直し・再構築
○
◎△
(2) お客様満足度の向上
ア.窓口サービス、情報提供サービスの向上
◎
○
イ.総合水まわりサービスの向上・提供
◎
○
ア.技術的業務と事務的業務の融合による総合的効率化
-
○
イ.個別業務委託の融合(包括化)
-
-
ウ.更なる「官」から「民」への移行(民間にできることは民間へ)
-
-
エ.官民パートナーシップによる効率性・公共性の両立と技術継承・
-
-
ア.規制緩和と自己責任への対応
-
○
イ.適切な料金負担と投資
○
○
ウ.維持管理・施設更新の時代に即した財務体質
○
◎△
○
◎
◎
◎
(3) 水道事業運営の
維持、効率改善
(4) 健全な水道事業経営の
維持・改善
(5) 環境に配慮した事業運営 ア.水道資源の保全と有効利用
イ.環境負荷の抑制
◎:想定以上の達成度 (特別に評価できる事項がある)
△:想定以下の達成度
(包括業務委託に関する問
題点が見られる)
○:想定どおりの達成度 (水道事業が適切に運営されている)
-:評価できない
(客観的な材料がない)
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Copyright※◎と△が併記してある項目は、特別に評価できる事項と問題点の両方が見られた項目
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6 調査結果 (2)当初意図していなかった効果等
 経済産業省関東経済産業局の報告書※1によると、太田市の包括業務委託による行政のコスト
削減効果と地域経済への波及効果は、合わせて年間約2億2,000万円になる。
 受託事業者による積極的な取組(浄水場の軽微な修繕項目の拡大、管路網情報のデジタル化
等)によって、当初意図していなかった部分についても、約2,000万円の経費を節減すること
ができた。これらについては、水道局直営のままであれば、人員的な限界から、そもそも取り
組むことができていなかったことも十分考えられる。
 全国に先駆けて包括業務委託を実施したことで、太田市の知名度は大きく上昇し、多くの自治
体から見学者が訪れるようになった。効果だけでなく、課題も含めて、太田市の実績は、今後
官民連携を促進する自治体にとって貴重な情報となる。
 民間企業への包括業務委託を実施したことで、官が担うべき役割(水道事業の在り方の検討
等)と民に任せてもよい役割(今回委託した業務等)を明確にすることができた。しかし、受
託事業者の人事管理上の不備もあり、民に任せてもよい役割を必ずしもすべて任せることがで
きていないのが現状である。
 受託事業者に退職者が出るなどの理由で、官から民への業務のリレーがうまくいっていない部
分もある。
(注) 上記の効果等は、今回の受託事業者のスキルによるところが大きく、包括業務委託と
いうスキームによるものではないことには留意する必要がある。
※1 経済産業省 関東経済産業局 「水道事業の官民連携による地域経済活性化の現状と今後の課題」
(2010)
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6 調査結果 (3)有識者ヒアリング結果 ~主なご意見~
 評価の方法については、点数化よりも○△で評価した方が適当である。点数の根拠を説明をす
るのは困難であるが、今回の○△はその理由が明確である。【園田氏】
 水道事業については、安定的な供給、安全安心な水質、料金の適正化、災害時の対応、職員の
意識教育が重要と考えており、それらについての調査は十分に行われているので、事業評価と
して適正と考える。また、提言にあるモニタリングの必要性についてはまったく同意であり、
水道局職員・受託事業者に緊張感を与えることが重要と考えている。【園田氏】
 太田市に限った話ではないが、10~20年後の水需要をどのように考えるのかが重要である。
人口が減少していく中で、場当たり的に対応するのではなく、施設のダウンサイジングや、維
持すべき最低限のサービス水準をきちんと考えておくべきである。そういった課題の解決策の
一つとして、官民連携という手法が挙げられる。どのような長期的ビジョンを描いていくのか
が重要であり、それに合わせて民間委託の範囲を考えることになる。【滝沢氏】
 事業者のモニタリングが最も重要であるので、今回の包括委託でうまくいっているのであれば、
そのことをもっとアピールすべきである。どのようにモニタリングを行ったのかは、今後官民
連携に取り組む自治体にとって貴重な情報となる。【滝沢氏】
 日本水道協会からの依頼で第三者委託のマニュアル見直し委員会の座長を担当しているが、そ
こでの作業の主眼は、「包括委託の推進、とくに、選定業者の実績評価を適性に行い、これを
極力公表(透明化)したうえで、評価の高い業者については、継続を奨励する環境づくりに務
めること」、「新規業者への移行に際しては、引継ぎ期間(リレー)の適切な設定を確保する
こと」、「いわゆる性能発注重視への移行」となっている。今回の太田市の評価活動はこうし
た趣旨に沿ったものであると受け止めている。【中北氏】
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6 調査結果 (4) 太田市水道事業に関するWG
 水道局職員によって挙げられた主な「強み・弱み・機会・脅威」は以下のとおり。
 内部要因(強み・弱み)、外部要因(機会・脅威)のいずれにも、包括委託に関する事項が挙
げられているのが特徴的である。
強
み
弱
み
機
会
脅
威
【包括委託】 先進事例、知名度の高さ、小回りがきくこと、システムの高度化、専門知識(技術)の継承、組織のスリ
向上、人件費削減、経費削減、民間ならではの経営努力、施設維持管理の質の高さ
【職場・職員】 若い職員の多さ、少ない人数で回せる能力、局としてのまとまり、風通しのよさ、業務へのやりがい
【水源】 多様な水源、二河川からの取水(水源豊富)
【包括委託】 受託事業者への指導という負担、受託事業者の経営の不安定さ・離職率の高さ、委託の効果が不明(課員
は)、委託の成果が未検証、書類の増加、技術継承の難しさ、委託先社員のモチベーションの低さ・責任感のなさ、分業
響
【職場・職員】 一人当たりの責任の重さ、各課の連携不足、職員の知識不足・技術力不足、年齢構成に偏り、人材育成
【施設等】 未耐震化、老朽化、将来的な水道料金の値上げ
【包括委託】 視察の多さ、民間企業と仕事をするという経験、経験年数の長い委託先職員の増加
【施設等】 基幹管路の更新、市全体の水道システムの見直し、マッピングシステム導入、アセットマネジメント導入、
【近隣自治体】 連携体制、広域化の検討、
【市民】 震災に伴う水道の安全性・重要性に対する市民の意識の変化
【環境】 省エネの要求
【包括委託】 中途半端な委託のツケ、若手職員の減少、5年ごとに委託先が変わる可能性、長期的な信頼関係構築の難
【施設等】 水源枯渇、地震増加、電力不足
【市民】 水質への意識の変化・要望の多様化
【需要】 人口減少、住宅着工件数の鈍化、節水化、料金収入の減少
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6 調査結果 (4) 太田市水道事業に関するWG ~SWOT分析結果~
外部要因
機会
【成長方策】 強み×機会
【差別化/回避方策】 強み×脅威
【改善方策】 弱み×機会
【撤退方策】 弱み×脅威
・ 民間企業と関わる経験の蓄積
・ 経験年数の長い委託先職員の増加
・ 管路等の更新
・ マッピングシステム等の導入
・ 近隣自治体との連携、広域化検討
・ 震災に伴う市民の意識の変化
・ 省エネの要求
脅威
・ 5年ごとに委託先が変わる可能性
・ 信頼関係構築の難しさ
・ 地震増加、電力不足
・ 市民の水質への意識の変化
・ 市民の要望の多様化
・ 水需要の減少
・ 料金収入の減少
・ 知名度の高さ
【成長方策】
【差別化/回避方策】
・ 民間ならではの経営努力
・ 第Ⅱ期事業発注の実施
・ 委託期間拡大の検討
・ システムの高度化
・ 広域化に関する議論のリード
・ 受託事業者の成果の見える化
強 ・ 技術の継承
・ エネルギー最適な水道システムの ・ 耐震化計画の見直し
み ・ コスト削減、スリムな組織
討
・ 安心・安全をアピールする広報
・ 包括業務委託に関するPR活動
・ 職員のまとまり
・ 自己水源と県水のバランス見直
・
長期的収支計画の見直し
内
・ 豊富な水源
部
・ 他部局での民間ノウハウ活用
要
・ 受託事業者の不安定さ
【改善方策】
【撤退方策】
因
・ 技術継承の難しさ・負担増
・ モニタリング体制の構築
・ 包括委託縮小・廃止業務の検討
・ 委託先のモチベーションの低
・ 第三者による委託先の業績評価
・ 需要に応じたダウンサイジング
弱 ・ 各課の連携不足
討
・ 技術継承のマニュアル化
み
・ 職員の知識不足・技術力不足
・ 計画的な人材育成方法の検討
・ 管路等の老朽化・未耐震化
・ 局としての経営方針の明確化
・ 将来的な料金値上げの必要性
・ 包括範囲拡大(設備更新等)の検
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7 第Ⅱ期事業発注に向けての提言
<当初目的の達成度について>
 今回、当初目的が達成されていないと評価された事項は、作成すべき資料が作成されていない
点が原因の一つであった。改善策として、年単位で提出すべき資料のリストとスケジュールを
予め整理しておくことが考えられる。また、受託事業者にとって資料作成がオーバーワークに
なってしまわないように、水道局と受託事業者で委託開始前に意見交換を行い、資料の記載項
目の簡略化や、必ずしも必要でない資料は作成しないことに取り決めておくことも一案である。
 また、想定以上の達成度と評価された事項には、受託事業者が既に持っていた知見が活かされ
たもの、創意工夫の中で生まれたもの、人員的な余裕があったから取り組めたものなどがある。
今後、官民パートナーシップによる業務効率化をより進めるためには、受託事業者が創意工夫
しやすい環境を整える必要がある。その一つとして、包括業務範囲の更なる拡大を検討するこ
とも考えられる。
<第三者評価のあり方について>
 今回の第三者評価では、作業期間の問題もあり、事後的に得られるデータのみを用いて評価を
実施したが、本来であれば、第三者機関によって一定期間ごとにモニタリングが実施されるよ
うなスキームが望ましいと思われ、今後の課題である。
<水道局アンケート調査について>
 今回、評価の材料の一つとして、上下水道局が実施しているアンケート調査結果を利用した。
毎年のアンケート調査自体は適切に実施されているが、年によって設問が異なるため、経年的
な分析に活用できる部分が少なかった。包括業務委託の評価には、市民からの視点が非常に重
要であるので、アンケート調査の目的を再整理し、少なくとも数年単位で使用できる調査票を
設計することが望ましい。また、予算の問題もあるが、可能であれば、調査票の配布方法も再
Copyright検討する必要がある。
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7 第Ⅱ期事業発注に向けての提言
<今後の太田市水道事業について>
①十分な事前協議
 第Ⅰ期包括業務委託においては、当初目的の達成度、コスト削減といった点において大
きな成果をあげており、水道事業の運営についても問題点は見られない。ただし、あい
まいな責任分担が立入検査で指摘されたことや、必要な資料が作成されていなかったと
いう課題を考えると、第Ⅱ期においては、契約時についての事前協議を第Ⅰ期以上に
しっかり行う必要がある。必要に応じて、第三者を交えた協議も検討する必要がある。
②第三者によるモニタリング
 SWOT分析の過程で、現場レベルでは、業務のリレーが大きな負担となったり、委託
先社員と信頼関係を構築できずに苦労する、といった問題が発生していることがわかっ
た。これは、受託事業者の人事管理の問題であり、今回の包括業務委託の契約上の問題
(人事管理のモニタリングができていない)と考えることもできる。この問題を改善す
るためにも、第三者機関によるモニタリング体制を検討する必要がある。
③官と民の役割分担
 第Ⅰ期事業において、官から民への業務のリレーが行われた。今後は、リレーが済んだ
業務については民に任せ、官は官にしかできない業務(例えば、持続可能な水道事業の
在り方の検討等)に集中すべきである。そのためには、官と民の役割分担、責任分担を
より明確にする必要がある。それによって、受託事業者の責任感も向上すると考えられ
る。
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7 第Ⅱ期事業発注に向けての提言
<今後の太田市水道事業について>
④委託先事業者の選択
 今回把握された「当初意図していなかった効果(管路網情報のデジタル化による経費節
減等)」は、包括委託というスキームによるものではなく、受託事業者の個別企業のス
キルによるところが大きかった。したがって、第Ⅱ期事業においても同様の成果を期待
するのであれば、第Ⅰ期事業の技術を引き継ぐことができるかどうかを採点のポイント
として、少なくとも同等のスキルを持った事業者を選択する必要がある。
⑤抜本的な問題の解決
 現状の包括業務委託では、施設更新等の水道事業が抱える抜本的な問題は解決されない
ままになっている。第Ⅱ期、第Ⅲ期事業においては、老朽化への対策を進めるため、施
設更新も包括委託の範囲に含めることが望ましいと思われる。第Ⅰ期事業においてその
効果が確認できることからも、引き続き民間の力を活用しながら水道事業を運営してい
くことが重要と言える。
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