BESS–Polar 宇宙起源反粒子探索実験 • BESS実験の成果 2002年1月18日 • BESS–Polar実験の概要 「物質の起源」IIAS研究会 • 他の飛翔体反粒子探索実験との比較 KEK 吉田 哲也 • まとめ 宇宙起源反粒子 1次宇宙線中の反粒子 高エネルギー宇宙線と星間物質との相互作用 (衝突起源・2次起源) 低エネルギー反陽子は運動学的に生成されにくい 宇宙起源・1次起源 Dark Matterを構成する超対称性粒子の対消滅 原始ブラックホールの蒸発 低エネルギーまで平坦な生成スペクトル 宇宙線反物質 衝突生成はない! Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 2 BESS実験 KEK Y.Makida, H.Omiya, J.Suzuki, K.Tanaka, A.Yamamoto, T.Yoshida and K.Yoshimura University of Tokyo K.Abe, K.Anraku, Y.Asaoka, M.Fujikawa, H.Fuke, S.Haino, M.Imori, K.Izumi, S.Matsuda, N.Matsui, H.Matsunaga, H.Matsumoto, T.Mitsui, M.Motoki, J.Nishimura, S.Orito, T.Saeki, T.Sanuki, T.Sonoda, I.Ueda, Y.Yamamoto Kobe University N.Ikeda, T.Maeno, T.Matsukawa, M.Nozaki, Y.Shikaze, K.Tanizaki and K.Yamato ISAS N.Yajima and T.Yamagami NASA/GSFC J.F.Ormes, J.W.Mitchell, A.A.Moiseev, M.Sasaki and R.E.Streitmatter University of Maryland E.S.Seo Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 3 BESS実験の目的 低エネルギー反陽子1次宇宙線の精密測定と 宇宙起源反陽子の探索 宇宙線反物質(反ヘリウム核)の探索 1次宇宙線陽子・ヘリウム成分スペクトルの精密測定 2次宇宙線µ±粒子絶対流束の残留大気圧依存性の測定 中重核(C,N,O,…)の観測とStrange Quark Matterの探索 地上µ±観測 (つくば、乗鞍、Lynn Lake、Fort Sumner) … Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 4 実験の概要(1) BESS–1993~2000 カナダ北部(低磁気限界硬度) 15~25時間程度の観測 測定器アップグレード BESS–1995~1997 太陽活動極小期 BESS–1999、2000 太陽活動極大期 太陽磁場反転 Climax (>3GeV), Haleakala (>13GeV) Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 5 実験の概要(2) BESS–2001 (BESS–TeV) 米国ニューメキシコ州 Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 6 「質量の同定」による反陽子識別により Buffingtonの測定値を否定 Antoproton flux (m-2sr-1sec-1GeV-1) 反陽子スペクトルの精密観測 10-1 衝突起源反陽子に特徴的なピークを観測 宇宙線反陽子の大半は衝突起源 宇宙線伝播モデルは基本的にOK 低エネルギー領域で平坦? モデルの不定性、不十分な統計 10-2 Secondary production & Propagation Bergstroem Mitsui 宇宙起源反陽子存在の可能性! 10-3 -1 10 BESS(98) CAPRICE(98) BESS(97) BESS(95) CAPRICE(94) IMAX BESS(93) 1 10 Kinetic Energy (GeV) Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 7 Solar Modulationの理解 宇宙起源反陽子成分の存否の探索 衝突起源スペクトルからの、流束の過剰と形状の変化 スペクトル形状に変化を与えるSolar Modulationの理解が不可欠 10-3 Annual Variation of p/p Ratio BESS(97) BESS(99) BESS(00) p/p Ratio 10-4 10-5 Bieber et al., 1999 10o, (+) ~ 1997 solar min. at positive phase 70o, (+) ~ 1999 solar max. at positive phase 1993~1999 2000 70o, (-) ~ 2000 10-6 -1 10 solar max. at negative phase 1 Kinetic Energy Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 10 (GeV) 8 反物質探索 γ線観測からの制限 Null Resultから反物質ドメインの 存否を議論できない He/He limit (95% C.L.) Smoot et al. (1975) 10-2 Antihelium/helium flux ratio 1次宇宙線中の反物質 宇宙における物質・反物質 非対称性の謎 反物質ドメイン存在の可能性 反物質宇宙線が伝播? 10-1 1事象でも観測されれば 反物質ドメイン存在の強い証拠 Evenson (1972) Aizu et al. (1961) Evenson (1972) 10-3 Smoot et al. (1975) Badhwar et al. (1978) Golden et al. (1997) 10-4 Buffington et al. (1981) 10-5 Ormes et al. (1997) BESS-95 T. Saeki et al. (1998) BESS-93~95 J. Alcaraz et al. (1999) AMS01 10-6 M. Sasaki (2000) BESS-93~98 10-7 -1 10 BESS-1993~2000 Preliminary 1 10 102 Rigidity (GV) Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 9 BESS–Polar実験への展開 これまでのBESS実験での成果 宇宙線反陽子の大半は衝突起源 Solar Modulationの詳細の理解への手がかり 大気と宇宙線との相互作用を再現 太陽活動極小期での低エネルギースペクトルが平坦? 低エネルギー反陽子の徹底的な精密探査 宇宙起源反陽子の探索 初期宇宙における素粒子現象 衝突起源反陽子の精密測定 銀河内の宇宙線伝播、太陽風の影響と電荷依存性 Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 10 高統計反陽子宇宙線観測 太陽活動のある条件下での長時間観測 より低エネルギーの反陽子観測を可能とする よりコンパクトで大面積・大立体角超伝導スペクトロメータの開発し 次の太陽活動極小期に 南極周回気球を用いた10~20日間の観測 BESS–Polar #1 BESS–Polar #2 Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 11 その他の物理 反へリウム探索: -7 He/He比の上限値 10 宇宙線スペクトルの精密測定 p, He, Li, Be, B, C, N, O +同位体 宇宙線の化学組成、銀河内伝播 大気ミューオン 宇宙線の大気発展、大気νの基礎データ 電子、陽電子 宇宙線の加速機構、銀河内伝播 エキゾティックな粒子探索 未知の粒子探索 (SQM etc.) Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 12 南極周回気球 米国マクマード基地(NSF)から 12月末~1月中旬に打ち上げ 1周 ~ 10日間 10~20日間の観測可能 ペイロード重量 <1,400kg 飛行機・ヘリコプタによる Quick Access(データ回収) シーズン内に測定器全体の 回収を目指す Jan. 18, 2002 Tiger Payload as of Jan. 18, 2002 昭和基地 マクマード基地 28日間(記録更新中) 「物質の起源」IIAS研究会 13 技術的挑戦 EK~100MeVまで観測可能 測定器の低物質量化 新しい薄肉超伝導ソレノイドの開発 粒子検出器の再配置とソレノイド内トリガカウンタ 南極周回気球の制限 徹底的な軽量化 圧力容器撤廃に伴う一部測定器の真空中での安定動作 長時間観測への対応 低電力エレクトロニクスと電力源 太陽電池システムの開発 オンボード計算機によるイベントセレクション Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 14 BESS–Polar測定器 立体角はBESSと同等 (~0.3m2str) 軽量化を図るために最外殻圧力容器を廃止 PMT, Front-End Elec., HV PS等を真空中に配置 クライオスタットをドリフトチェンバ圧力容器に兼用 ~100MeVまでの低エネルギー粒子に対するトリガ感度を 保つためにソレノイドボア内部にMiddle TOFを設置 BESS-2000 TOF Counters Solenoid Jet chamber Middle TOF Inner DC Jet chamber Inner DC Inner DC Silica Aerogel Cherenkov TOF Counters Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 0 0.5 1m 15 BESS–Polar Payload 測定器下部に設置する供給電力600Wの 太陽電池システムを開発 Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 16 超伝導ソレノイド 全体図 パルスチューブ冷凍機 LHe Tank Coil 熱伝導冷却 400 liters 透明化を求められる宇宙線通過エリア マグネット部 Outer Vacuum Vessel 80K Shield 20K Shield Coil Inner Vacuum Vessel Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 17 高強度超伝導線材の開発 高強度アルミ安定化超伝導線 「微少添加合金+冷間加工」により、ブレークスルーを実現 SC 全体 200 Al-Ni,2% Yield Strength [MPa] 150 BESS-Polar (Al-Ni) 100 BESS Ordinal Copper LHC/ATLAS (Al-Ni) 50 1.2×1.8 mm2 SSC/SDC (Al-Zn/ Si) ASTROMAG (Al-Si) BESS–Polar 0.8×1.1 mm2 (Pure-Al) 0 1975 1980 Jan. 18, 2002 1985 1990 Year 1995 2000 2005 「物質の起源」IIAS研究会 18 コイル粒子透過性の改良 超伝導ソレノイド物質量 (Coil + Cryostat) 2 2 0.2 Xo (4 g/cm ) 0.1 Xo (2 g/cm ) Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 19 コイル質量あたりのエネルギー密度 Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 20 モデルコイル (1/2径) 巻き線方法の開発 サポートシリンダレスコイルの現実性の検証 サーマルサイクル等の熱応力に対する強度 線材のコイル化による臨界電流の変化(健全性の検証) Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 21 モデルコイル励磁試験 臨界電流値まで励磁実現 線材の100%性能確認 冷却・昇温後のクラック発生等なし サーマルサイクルに耐えるコイル Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 22 実機サイズ超伝導コイルの試作 直径 : 実機サイズ 超伝導コイル長 : 20cm 実機と同等のコイル製作法 Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 23 実機サイズモデルコイルの励磁 1月17日~18日 実機とほぼ同じ応力(軸圧縮力、フープ力) 実機製作開始への最終ステップ Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 24 太陽電池システム 10~20日間の長時間フライト 電力源として1次電池は重量から非現実的 太陽電池システムを開発 供給電力: 600W (重量< 300kg) Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 25 太陽電池構造体 システムの信頼性の向上 全方位型 (Pointingをしない) 8面体構造を採用 測定器 4sided 太陽電池パネル 有効面積 3.4m2/面 26.9m2/8面 Sun Light 20% higher 8sided Sun Light 0o Jan. 18, 2002 Rotation Angle 360o 高さ 約2.6m、差し渡し 約6.5m、 重さ約200kg 「物質の起源」IIAS研究会 26 熱設計 南極周回気球ペイロードの熱設計 南極の夏は日没なし 氷の表面での反射大 測定器・太陽電池の過熱 発電効率の低下 Panel Temperature < 1000C 測定器・太陽電池表面の 太陽光吸収率、放射率の測定 Preliminary 太陽電池温度の静的解析 Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 27 BESS Power 2.8m 太陽電池パネル NASA Power 2.5m 実機サイズのパネル構造を 本年5月に三陸大気球観測所より打上げ(申請中) Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 28 データ収集システム 低消費電力化 (~1/3)の要求 Discriminatorの電力消費大 多種・多段トリガを採用できない 高速データ収集システムを開発し、全ての事象を収集 各Front-EndにDSPを搭載し、並列にデータ収集 必要に応じて記録するかをオンボード計算機で判断 SH4 CPU/Linux OSシステムによる Online Event Selection 大容量ストレージ (~TB HDD Complex or Tape) Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 29 その他の準備状況 飛跡検出器 BESS–TeV用JET/IDCドリフトチェンバを利用 3月完成、夏のBESS–TeV実験で使用 長時間実験のためのガス置換システムの開発 TOF/Aerogel Čerenkov 真空中に設置するPMTの製作 高効率真空設置型HV PSの開発 シリカエアロジェルの製作 Middle TOF 基本設計をほぼ終了し、 2月末にKEKで試作機のビームテスト Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 30 測定器性能 BESS–2000 BESS–Polar Acceptance (m2 str) 0.3 0.3 Magnetic field (T) 1.0 0.8 Superconducting coil Diameter (m) 1.0 0.9 Cryogen Life (days) 5.5 20 JET/IDC diameter (m) 0.83 0.76 Weight (kg) 2,400 1,400 Primary Batteries Solar Cells 18 4.5 0.18~4.2 0.1~4.2 200 (1,400:BESS–TeV) 150 Power Source Min. Material for trigger (g/cm2) Detectable Antiproton Energy (GeV) MDR (GV) Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 31 スケジュール 2000/4 2000/7 2001/2 2001/7 NASAとの協力協議開始, COSPAR–2000で計画を発表, NASA研究グループとの協力分担合意 科研費特別推進研究に採択 (~2007/3) 2002/5 2002/6 2002/7 ダ) 2002/11 2003/3 国内(宇宙研・三陸)でのテクニカルフライト MOU改訂 (今年の実験実施から不可欠) (BESS-TeV; 反陽子、高エネルギー陽子・ヘリウム@カナ 2003/5 2003/8 2004/1 2005 2006/1 アメリカでのテクニカルフライト 南極への観測機器発送 BESS–Polar 南極・第1回フライト スペクトロメータ点検・アップグレード BESS–Polar 南極・第2回フライト(~太陽活動極小期) Jan. 18, 2002 スペクトロメータコンポーネント完成・KEKにてインテグレーション開始 BESS–Polarスペクトロメータ完成 「物質の起源」IIAS研究会 32 他の実験との比較 Project PAMELA BESS–Polar AMS02 Flight Vehicle Satellite LDB ISS Flight Duration 3 years 10~20 days 3~5 years Altitude 300~600 km 37 km (5g/cm2) 320~390 km Orbit 70.4° >70°S Lat. 51.7° Acceptance 0.0021 m2str 0.27 m2str 0.3 m2str MDR(GV) 740 150 ~1000 PID TOF/TRD/CAL TOF/ACC TOF/TRD/RICH/CAL # of Helium 4×107 (1~2)×107 2×109 Launch Fall 2002 Dec. 2003 March 2004 Collaboration Inst./People 15 /~80 6 /~20 41 /~400 Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 33 BESS–Polar実験の競争力 AMS Sensitivity (St) 10 低エネルギー反陽子観測では 南極周回気球が圧倒的に有利 相補的な3実験 BESS 1 BESS Antarctica 10-1 10-2 PAMELA 10-1 1 10 Kinetic Energy (GeV) Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 34 まとめ – BESS実験の成果 低エネルギー宇宙線反陽子スペクトルを精密に測定 宇宙線反陽子のほとんどは衝突起源 宇宙線伝播モデルは基本的にOK Solar Modulationの電荷依存性を観測 宇宙起源反陽子が存在する可能性? He/He < 10-6 Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 35 まとめ – BESS–Polar実験の展望 究極の低エネルギー反陽子観測を目指す EK~100MeVまで観測可能な 低物質量超伝導スペクトロメータを開発 南極周回気球を利用し10~20日間の観測時間 2003年12月~2004年1月に第1回実験を目標 2005~2006年の太陽活動極小期に第2回を計画 反物質探索 He/He ~ 10-7 Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 36 PAMELA 極軌道衛星用のコンパクトな測定器 永久磁石+シリコン飛跡検出器 タングステン+シリコン カロリメータ (16X0 ) TRD 低磁気限界高度地域を通過 Emin~80MeV アクセプタンス ~ 20.5 cm2str 総重量 380kg Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 37 AMS02 大面積・立体角 超伝導マグネット+シリコン検出器 MDR~1000GeV 優れた粒子識別能力 TRD RICH ECAL 15X0 総重量6トン Jan. 18, 2002 「物質の起源」IIAS研究会 38
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