都市再生の手段と鉄道混雑料金 上智大学経済学部 山崎福寿 仮説:大都市圏への人口移動と実質 GDP成長率(出所)増田[2002] 所得と人口の因果関係 両方向の因果性 実証研究の必要性 オイルショックによる成長率の低下をどう考える か? その後原油価格は低下したのに、成長率は上昇 しなかった。 Barro and Sala-i-Martin[1992]の傍証: 収束は人口移動によるものではない。 所得水準の高い地域に向けての人口移動は予想外に低い むしろ、再分配政策の結果(交付税等)の効果かも知れな い 参考 吉川[1992] 2部門モデル 人口移動が経済成長 をもたらす。 60年代から70年代にかけての開発規制 1968 1969 1970 1971 1972 1973 1974 1975 1976 都市計画区域 農業振興地域の整備に関する法律 容積率規制 工場等制限法の強化 長期営農継続農地制度 日影規制 都市集積と労働・宅地の供給 地価 D’ S’ E1 p1 D E2 E0 p2 D’ S’ D L0 L1 宅地 東京都の人口移動 転入 1,000,000 転出 800,000 転入超過数 隣接3県 へ 転入超過数 その他へ 600,000 400,000 200,000 0 -200,000 -400,000 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 東京都区部の容積率 450.0 400.0 都心三区 350.0 300.0 250.0 区部指定平均容積率 200.0 都区部計 150.0 100.0 東京都合計 50.0 0.0 1981 1985 1990 1995 2000年 東京都区部の高度利用状況 区市町村名 千 代 田 区 中 央 区 港 区 新 宿 区 文 京 区 台 東 区 墨 田 区 江 東 区 品 川 区 目 黒 区 大 田 区 世 田 谷 区 渋 谷 区 中 野 区 杉 並 区 豊 島 区 北 区 荒 川 区 板 橋 区 練 馬 区 足 立 区 葛 飾 区 江 戸 川 区 区 部 計 宅地面積 A 3,521 3,903 9,149 9,719 5,900 4,527 6,846 14,680 12,386 8,997 25,073 34,120 8,065 9,924 21,489 7,908 9,495 5,435 17,885 27,655 27,103 16,730 23,276 313,786 概算容積率と指定平均容積率 2002年 (単位:千㎡、%) 建物延床 概算容積率 指定平均 E-C/D 面積B C-B/A×100 容積率D ×100 19,855 563.9 537.7 104.9 18,742 480.2 569.4 84.3 27,658 302.3 406.8 74.3 22,432 230.8 386.4 59.7 11,052 187.3 337.7 55.5 12,387 273.6 484.8 56.4 11,616 169.7 324.6 52.3 22,171 151.0 289.2 52.2 19,136 154.5 276.1 56.0 11,778 130.9 206.7 63.3 30,698 122.4 216.5 56.6 31,417 92.1 168.2 54.7 17,528 217.3 327.4 66.4 11,756 118.5 214.9 55.1 20,154 93.8 155.0 60.5 14,110 178.4 351.8 50.7 12,450 131.1 250.6 52.3 7,744 142.5 325.9 43.7 19,980 111.7 234.9 47.6 23,170 83.8 160.8 52.1 22,812 84.2 234.0 36.0 15,510 92.7 211.9 43.7 22,761 97.8 226.8 43.1 426,916 136.1 254.4 53.5 <東京都> 都市と地方の公共投資配分 東京都とニューヨークの人口密度 東京は過密か マンハッタンとの比較 就業人口 人口 実態(80年): 千代田区(10.4k㎡) 77万人 マンハッタン(5.3k㎡) 76万人 千代田区(10.4k㎡) 6万人 マンハッタン(5.3k㎡) 12万人(3.6k㎡ 地区) 一都三県では 雇用人口 1352万人 同面積のニューヨーク周辺 〃 1630万 人 鉄道利用者数 首都圏(6,400k㎡) のべ71億人 利用率93% 3州圏(14,000k㎡) 14億人 利用率59% 長 時 間 化 す る 通 勤 時 間 (都心3区従業者数と通勤時間) 従業者数 (千人) 平均通勤時間 (分) 1980年 1959 66 40.2 1985年 2202 67 38.5 1990年 2381 69 34.6 1995年 2242 70 33.1 2000年 2185 69 34.9 1時間未満の割合 (%) 首都圏制限区域と区域外での製造業 従業者数比率の推移 % 30.0 25.0 25.8 26.4 25.6 23.4 23.0 22.4 21.4 20.8 19.3 20.0 18.2 16.8 16.1 15.7 関西圏 東京圏 20.2 19.7 15.0 14.7 14.2 90 95 2000年 15.0 10.0 5.0 0.0 % 25.0 1960年 65 70 75 80 85 19.7 東京圏制限 区域 20.0 15.0 17.5 近畿圏制限 区域 14.7 12.1 13.6 10.0 7.2 5.0 制限区域 を除く東京 11.1 11.3 10.9 11.5 8.9 8.7 8.1 10.1 8.0 7.8 8.2 8.1 6.1 制限区域 を除く関西 12.0 9.7 8.1 12.9 12.7 8.5 8.2 8.1 7.6 12.6 7.6 8.2 12.6 7.1 7.0 6.5 6.0 90 95 2000年 0.0 1960年 65 70 75 80 85 容積率の効果についての実証研究 生産関数を用いた実証 八田・唐戸[2001] 丸の内地区の容積率を 50%引き上げると、東京全体の生産性が 12.4%上昇するという。 寺崎[2002] 丸の内・大手町地区で容積 率を1000%から2000%に増大すると、2.5 兆円~4.4兆円の効果がある。 集積の経済性を分析する際のマイクロ・ データの重要性(いずれも平均容積率 200%) 600% 500% 400% 300% 200% 100% 0% 低集積度 中集積度 高集積度 Ciccone and Hall [1996]の実証 カウンティの集積度を用いて州の生産関数を推 定 ニューヨーク市の集積度をニューヨーク州の平均 レヴェルまで減少すると、一人当たり労働生産性 は19%低下する。 吉田・植田[1999]クロスセクション・データ 東京 圏に集積の経済あり 各務・福重[2001]時系列データ 外生的技術進 歩と識別 自動車の平均走行速度の推移 一極集中是正策(容積率規制)の根拠と その問題 混雑外部性のコントロール 都市のインフラ不足 過疎対策 混雑料金制(peak-load pricing)の導入 容積率規制の緩和 集積の利益の発揮 混雑料金収入の再投資 標準的な都市経済モデルを用いた 鉄道混雑の推計 家賃・地代 通勤費+家賃=一定 ) 私的通勤費用(金銭的+混雑費用 社会的限界費用 (外部費用は含まれない) 外部混雑費用 郊外 都心 距離 駅 混雑 率 時間 中央線(新宿~高尾) 料金 混雑 費 用 対 料金 総額(百万円)123,753 駅 混雑率 東武東上線(池袋~坂戸) 時間 料金 混雑 費用 対 料金 総額(百万円) 55,445 荻窪 210 10 160 457 2.85 上板橋 133 13 160 254 1.59 国分寺 142 26 380 840 2.21 上福岡 123 36 400 723 1.81 八王子 101 44 460 1,035 2.25 坂戸 107 50 570 969 1.70 常磐新線・常磐線(上野~牛久) 総額(百万円) 105,636 西武新宿線(西武新宿~本川越) 総額(百万円) 44,306 北千住 208 13 160 274 1.71 鷺ノ宮 141 14 200 335 1.67 松戸 212 23 290 569 1.96 田無 107 28 260 606 2.33 柏 170 33 450 944 2.10 狭山市 54 52 420 820 1.95 京浜東北・高崎線(赤羽~吹上) 総額(百万円) 67,428 西武池袋線(池袋~高麗) 浦和 187 13 210 349 1.66 大泉学園 大宮 166 20 290 563 1.94 桶川 121 29 480 736 1.53 総額(百万円) 16,296 京葉線(東京~蘇我) 総額(百万円) 48,561 136 18 230 486 2.11 小手指 75 37 360 691 1.92 飯能 51 47 450 873 1.94 京王本線・相模原線*1 総額(百万円) 92,823 葛西臨海公園 187 13 210 209 1.00 千歳烏山 150 16 170 502 2.95 新浦安 184 18 290 326 1.13 府中 127 31 270 974 3.61 稲毛海岸 132 39 620 684 1.10 京王八王子 57 49 350 1,183 3.38 駅 混雑 時間 率 総武線(東京~稲毛) 料金 混雑 対 費 料金 用 総額(百万円) 74,058 駅 混雑 率 時間 料金 混雑 費用 対 料金 小田急小田原線(新宿~愛甲石田)総額(百万円)132,413 亀戸 179 10 160 240 1.50 成城学園前 168 22 210 648 3.09 西船橋 163 28 290 591 2.04 新百合ヶ丘 146 38 300 1,067 3.56 稲毛 123 46 620 889 1.43 本厚木 130 67 480 1,456 3.03 埼京・川越線(赤羽~川越) 総額(百万円) 8,576 東急東横線(渋谷~菊名) 総額(百万円) 26,637 武蔵浦和 154 21 290 347 1.20 自由が丘 173 12 150 307 2.04 大宮 100 34 380 513 1.35 日吉 154 23 210 604 2.88 川越 124 50 650 729 1.12 菊名 127 29 240 721 3.00 東武伊勢崎線(浅草~姫宮) 総額(百万円) 48,474 小菅 157 17 190 266 1.40 竹ノ塚 164 25 240 452 1.88 春日部 77 54 500 860 1.72 鉄道混雑の総額 都区部への通勤・通学者だけで1年間で1 兆6,289億円 小田急小田原線では年間1,324億円の混 雑料収入。特定都市鉄道整備事業計画と して認定されている、東北沢~和泉多摩川 間複々線化工事の事業費2,563億円の半 分 都市再生(高度利用実現)の手段 税制の改正 規制の緩和ないし強化 譲渡所得税以外の土地・住宅取引 税の廃止 建築物(住宅・オフィス)に対す る固定資産税の廃止 小規模宅地優遇税制の廃止(固定 資産税・譲渡所得税) 生産緑地制度の廃止(相続税) 持ち家促進税制(住宅ローン利子 税額控除、公庫融資)の廃止・住 宅帰属家賃に対する課税 延納利子税あるいは売却時中立課 税の導入 課税標準の適正化(相続税・固定 資産税) 相続税の累進度の緩和 容積率規制・日影規制の緩和(容積 率・日照権売買市場の創設) 混雑料金制(ピークロード・プライシ ング)の導入 区分所有法・借家法の改正(定期借家 権の拡充) マンション建替決議の実効性向上(法 定建替) 収用権限の強化(インフラ整備・土地 共同化) 短期賃貸借制度の廃止(抵当権・優先 権の保護強化) 中古住宅市場の整備(住宅性能表示・ ハザード・マップの公表) 不動産証券化のための市場整備 道路交通法違反・駐車違反対策の強化 工場等制限法の改正 市街化区域・調整区域制度の廃止 宅地転用規制の廃止(農振地域)
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