シミュレーション論/工学 目 標 コンピュータを使う立場にたって,モデリング技術,コ ンピュータシミュレーションならびにビジュアリゼー ションを講義する。 コンピュータシミュレーションでは, 確率的モデリング 統計的モデリング 連続系シミュレ−ション 離散系シミュレ−ション の原理と応用(利用技術)を講義する。 教科書 大成幹彦:シミュレーション工学,オーム社(絶版) 成績評価方法 試験を中心に行う。小テスト,レポート提出, 出欠なども考慮する。 030908 sylabus 031221 1 1. シミュレーションとは/定義 ある物の外見や,その運動や変化を,他のものを 使って似させることである。ある現象を模擬すること →数値実験,模擬実験 さまざまな文脈で用いられる 広義のシミュレーション 計算機による計算,人工知能,コンピュータ グラフィッ クス,コンピュータゲーム 対象となる現象 自然現象: 気象,地震など 人工現象: 電力,プラント,輸送など 社会現象: 経済,人口予測など '030919 1. 2 1. シミュレーションの定義 模擬する方法 計算機の使用が前提。 対象や目的によって大きく異なる システムを対象 → システムシミュレーション 需要: 大規模で複雑なシステムが多くなった 供給: 計算機の能力の飛躍的発展 シミュレーションは,単なる手段。目的ではない。 シミュレーションの効用は,与えられた問題全体か ら判定すべきだ。 '030919 3 1.1 シミュレーションの概要 '030918 Book 4 1.1 シミュレーションの主要項目 1次モデル: 理論上の基礎式 ⇔2次モデル: 近似的なモデル 静的モデル: 時間変化を考慮しない ⇔動的モデル: 時間変化を考慮する 順方向: 時間の経過に従う ⇔逆方向: 目標を実現する変数を求める 実時間⇔人工的時間(圧縮あるいは拡張) シミュレーション言語⇔汎用言語 汎用計算機⇔専用シミュレータ ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ '030919 5 1.2 シミュレーションの(利用)目的(1) (1) 現実のメカニズムの理解 仮説,検証の道具 新知識の習得: 物理学のsim モデル sim ‐ + 既知事実 数値実験。 感度解析 感度解析=入力 x やパラメータ a の変化 に対する出力 y の変化 Δy/Δx(Δy/Δa)や ∂y/∂x(∂y/∂a)を知ること。弾性係数(率) 031001 6 1.2 シミュレーションの(利用)目的(2) (2) 将来予測 環境アセスメント,負の効果 (3) 教育・訓練 人を含めたシミュレーション Flight simulator ビジネスゲーム '030908 new 7 1.2 シミュレーションの目的(3) (1) 現象やシステムの定量的な理解(図1.2) ・入力の値やパラメータを変更しながら解析 ・モデルの正しさの検証(同定) (2) システム開発の各過程での良否の判断 分析→計画→設計→運用 (3) システム外への影響の評価 例:環境アセスメント (4) 人間を含めたシステムの分析 ・人間の行動の分析 ・教育訓練→例:フライトシミュレータ 8 1.2 シミュレーションの目的(4) (1) 出力の応答 --- 量的,時間的,地域的 p モデル1 モデル I O I O I O モデル モデル2 (a)入力に対する出力の応答 (b)両系の干渉状況の解析 (c)パラメータの感度解析 (社会・経済) (電気系 – 機械系: 圧延機の振動) (大気汚染) (2) 同定(モデルの決定) I P O M _ + (d)対象の同定 I P1 M PN 1 _ + M O N (e)同定の多段結合 _ + I P1 M P2 M 1 P3 2 M O 3 (f)多段プロセスの同定 (河川流出,防災システム) 図1.2 シミュレーションの目的 030910 oldppt 9 _ + システム開発とシミュレーション システム開発の フェーズ シミュレーションの目的 開発の前 計画・評価・研究 開発の途中 精密設計 開発の後 設計へのフィードバック・ 訓練 060921 10 1.3 シミュレーションと解析的方法(1) 現実の世界 縮尺モデル 単純化(モデル化) 解 析 的 方 法 定 式 化 (解析的モデル) (1) 直 接 アナログ (2) (3) 数 値 計 算 シ ミ ュ レ | シ ョ ン 求 解 (1) Flight simulator (2) モンテカルロ シミュレーション (3) 通常の シミュレーション 結 果 図 1.3 030910 oldppt シミュレーションと 解析的方法 11 1.3 シミュレーションと解析的方法(2) (1) 直接アナログ法 実物モデルで実験 縮尺モデル→風洞実験 動物実験 (2) 解析的モデルを用いたシミュレーション 数式を解析的に解かずにシミュレーション →確率的モデルをモンテカルロ法で解く 確率的現象に有効 (3) 数式モデルを用いた通常のシミュレーション モデルに数値を当てはめる 041002 12 模型--- Direct Analog 031007 150dpi B&W (白黒) 13 フライトシミュレータ 030918 電通学誌9/'75 14 フライトシミュレータの内部 030918 電通学誌9/'75 15 訓練時間 030918 電通学誌9/'75 16 自由度(Freedom) 030918 電通学誌9/'75 17 コクピットの支持方式 030918 電通学誌9/'75 18 フライトシミュレータの構成 030918 電通学誌9/'75 19 フライトシミュレータの構成図 030918 電通学誌9/'75 20 フライトビジュアルシステム 030918 電通学誌9/'75 21 フィルム式ビジュアルシステム 030918 電通学誌9/'75 22 CCTV方式とCGI方式 030918 電通学誌9/'75 23 最近のビジュアルシステム (白黒) 030918 教科書口絵 150dpi 24 1.4 シミュレーションの手順 検討すべき目的 問題点の明確化 データの収集 資料の整理 思考モデルの作成 シミュレータの作成 シミュレータによる実験 実験結果の評価 および分析 '060921 25 1.4 シミュレーションの手順(1)(2) (1) 問題の明確化 目的を明らかにし,それに応じて次の事項を決定 ・どの部分 ・どのような挙動 ・どの程度の精度 漠然とした問題には向かない (2) データの収集・整理 情報を収集し,対象を調査分析 モデルの変数やパラメータの設定などに利用 '030918 26 シミュレーションの手順(3) (3) モデルの作成 思考モデル,抽象モデルの作成 内部状態や入出力関係を数式,論理式, アルゴリズムなどで示す 次の事項が重要 ・モデル化の概念の統一(抽象化過程に 一貫性が必要) ・モデルの範囲や構成要素の確定 ・変数やパラメータの選定 ・構成要素間の相互作用の明確化 '030918 27 シミュレーションの手順(4) (4) シミュレータ(プログラム)の作成 基本部分 ・静的な状態の表現 ・動的な特性の記述 ・初期条件の設定 ・タイミングの制御 その他の部分 ・確率過程の表現 ・統計的処理 ・結果の表示(グラフィックスなど) ・ユーザとの対話処理 ・デバッグの機能 '030918 28 シミュレーションの手順(5) (5) シミュレータによる実験 目的に応じた機種やシステムを選ぶ ・演算速度 ・メモリ容量 ・表示機能 確率的モデルの場合は試行回数も考慮 '030918 29 シミュレーションの手順(6) (6) 結果の評価・分析 あらかじめ決めた評価基準により評価目 的とする最適値を見いだすまで,必要に 応じてシミュレーションを繰り返す。 検討の結果により適切な段階に戻る ・システム分析のやり直し→(2)へ ・モデルの修正→(3)へ ・プログラミングの修正→(4)へ ・変数やパラメータの値の変更→(5)へ 030918 30 シミュレーション用のコンピュータ (1) アナログコンピュータ(アナコン) (2) ディジタルコンピュータ (3) ハイブリッドコンピュータ 030918 31 アナログコンピュータ(1) 031008 150dpi 32 アナログコンピュータ(2) 031008 150dpi 33 アナログコンピュータ(3) シミュレーション用のコンピュータ 常微分方程式で表されるモデルを求解(積分) する連続系,動的なシミュレータ 特長 計算速度が速い(当時のディジタルコンピュータ と比べて) 感度解析(パラメータに対する解の変化) プログラムが直感的,実物との対応が明白 '030919 34 アナコンの構成 030921 35 アナコンの要素 演算(増幅)器 – オペアンプ 030921 36 アナコンの要素 加算器,積分器 030921 37 アナコンの要素 ポテンショメータ ei k eo k 巻き線型のボリーム 1/100 の精度の目盛付き )) 060921 38 乗算器 -- 1/4・2乗方式 030921 39 アナログコンピュータ(4) 欠点 非線形性が強い場合,精度が低くなる。 オペアンプのドリフトのため精度が低くなる 演算方法 加算器,乗算器,積分器などの演算器を数式に 対応させて回路的に接続(プログラム)する。 演算結果をオシロスコープなどに表示 例(次ページ 図1.10~図1.11) 機械系の振動を電気系の振動でモデル化する。 方程式に対応した要素を結線 030919 40 アナコンによるシミュレーション例 030919 41 物体の振動解析 x = 移動距離 dx/dt = 速度 d2x/dt2 = 加速度 超高層ビル のモデル化 031129 150dpi 42 アナログ シミュレーション 030919 43 アナログユニット ALS-20M 031008 150dpi 44 アナログユニットの制御への適用 030919 45 シミュレーション用のコンピュータ (1) アナログコンピュータ(アナコン) → (2) ディジタルコンピュータ (3) ハイブリッドコンピュータ 030919 46 ディジタルコンピュータ(1) 数値計算式で表されるモデル→数値解を求める 離散系,連続系のシミュレーション シミュレーション用の言語が開発されている 歴史 ENIAC: 真空管を採用,配線盤でプログラム EDVAC: プログラム内蔵方式の提案 (ノイマン形コンピュータ) EDSAC: プログラム内蔵方式で初めて計算 030919 47 ディジタルコンピュータ(2) 演算速度,集積度の向上 真空管→トランジスタ→IC→LSI 構成技術の向上 スーパーコンピュータ パイプライン処理(並列化) ベクトル演算処理 パラレルコンピュータ ワークステーション グラフィックス,アニメーションなどビジュアル化が促進 パソコン ゲームなど,シミュレーションの普及 030919 48 ハイブリッドコンピュータ アナログコンピュータとディジタルコンピュータ の組み合わせ 両者の特長(アナログ形の速度,ディジタル形 の精度)を生かす アナログ的な実システムを併用する場合にも 有効 030919 49 1.6 シミュレーションの歴史(1) 計算尺,平面積計,積分計などのアナログ形 の計算機械が最初 17世紀 パスカル,ライプニッツの計算機 19世紀末 微分解析機,調和解析機 1931年 微分解析機で微分方程式を解く 1945年ごろ 電子管式のアナログコンピュータ 030919 50 1.6 シミュレーションの歴史(2) 1950年代後半 ディジタルコンピュータ 大型コンピュータ 連続系シミュレーション言語: CSMP,DDS 1960年代 離散系シミュレーション言語: GPSS,SIMSCRIPT 1970年代 スーパーコンピュータによる計算実験 物理現象などのシミュレーション 1980年代 パソコン,ワークステーションの普及 ユーザインタフェースの向上 030919 51 1.7 システムシミュレーション 030919 52 第1章 Key words ・シミュレーションとは ・シミュレーションの概要,目的 -- 同定,感度解析 ・シミュレーション vs 解析的な方法-- 直接アナログ ・Flight Simulator -- 自由度,CGI ・シミュレーションの手順 ・アナコン -- 微分方程式,求解器 (プリ)パッチ板,演算(増幅)器 -- オペアンプ, 積分器,加算器,ポテンショメータ 非線形性,ドリフト ・ディジタルコンピュータ,ハイブリッドコンピュータ 031221 53
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