全国英語教育学会04発表スライド

全国英語教育学会第30回長野研究大会発表スライド
2004/08/07
高校生の説明型自由英作文のライティング・プロセス:
発話プロトコル分析による探索的調査
山西博之
(広島大学大学院博士課程後期)
1
動機と目的
 本研究の動機
→ 日本人高校生の英語ライティング・プロセスの研
究はほとんど行われていない
→ 大学入試では自由英作文課題が多く問われるが,
体系的な指導は行われていない(Hirose, 2003)
→ どのように自由英作文を書いているかというプロ
セスを見ることで,指導に活かすことができる
 本研究の目的
→ 実際に高校生を対象にして,様々な方法でライ
ティング・プロセスを検討をしていくことで,探索的な
知見を得る
2
予備調査
 作文実験の予備調査
→ 作文実験での課題種類と調査協力者の決定
 課題種類の設定,選定
→ 書きやすさの検定‥全4回(資料1)の自由英作
文課題(説明型,論述型)に対する,生徒の書きやす
さの評価(χ二乗検定)&書かれた語数(Wilcoxon
の符号順位和検定)
‥ノンパラメトリック検定
→ 説明型の課題(絵の内容を説明するもの)
3
予備調査
 調査協力者の選定
→ 評価基準として,「客観的総合評価(うまさ)」 と
「主観的総合評価(好み)」(石田・森,1985; 梶井,
2001)を採用‥簡便さを重視
→ 80名の生徒が書いた計4編の英作文をネイティ
ブ・スピーカー2名が3段階の総合的評価(α=.79)
→ 調査協力者の作文実験参加への意志確認
 調査協力者の決定(3群の作文能力)
→ Advanced writers = 5名
計16名
Intermediate writers = 7名
Basic writers = 4名
4
作文実験
 目的
→ 高校生がどのように説明型の自由英作文を書
いているかに関する知見を得ること
 調査協力者
→ 予備調査で選定された16名の生徒
 作文課題(資料4)
→ 絵の状況を説明するという課題
→ 下書きと清書を作成(推敲方略使用の促進)
→ 辞書(和英辞典と英和辞典)の使用を許可
→ ボールペン使用(書いた痕跡を残すため)
5
作文実験
 データ収集方法
→ 個別に部屋に呼んで実験
→ 作文の様子をビデオ撮影(図1&図2)
→ 作文終了後に包括的
発話プロトコル分析
な方略の聞き出し
(stimulated recall
→ ビデオを見ながらの
protocol method)
局所的な方略の聞き出し
→ 自己評価シートへの記入
(ESL Composition Profile(Jacobs et al.,
1981)の日本語訳版)(資料2,3)
6
TV Monitor
Monitor
Observer
Dictionaries
Video
Camera
Draft
Final
Copy
Participant
図1.作文中の位置関係
7
TV Monitor
Playback
Voice Recorder
Video
Camera
Draft
Final
Copy
Participant
Observer
図2.ビデオ再生中の位置関係
8
結果と考察1 (プロダクト)

ANOVAの結果
全体の差は有意
F (2, 13) = 3.81,
p = .050
正確さ(作文スコア)
(ネイティブ・スピーカーの評価&自己評価)
‥ESL Composition Profile(資料2,3)
表1.ネイティブ・スピーカーの評価(ESL Composition Profile)
Content
Organization
Vocabulary
Language
Mechanics
Overall
(30)
(20)
(20)
Use (25)
(5)
(100)
Advanced
26.4
17.0
17.4
20.4
4.2
85.4
Intermediate
23.6
14.6
15.1
18.7
4.0
76.0
Basic
22.3
13.5
15.0
17.8
3.5
72.0
Note: Advanced (n = 5), Intermediate (n = 7), Basic (n = 4),数値は平均値
表2.生徒の自己評価(ESL Composition Profile, translated)
Content
Organization
Vocabulary
Language
Mechanics
Overall
(30)
(20)
(20)
Use (25)
(5)
(100)
Advanced
23.2
17.2
15.2
19.2
4.2
79.0
Intermediate
21.1
15.0
15.3
19.9
4.0
74.9
Basic
22.0
13.5
14.0
14.3
4.5
70.8
Note: Advanced (n = 5), Intermediate (n = 7), Basic (n = 4),数値は平均値
r = .52,
p = .04
9
結果と考察1 (プロダクト)

流暢さ
・清書の総語数
・1分あたりの語数
ANOVAの結果
全体の差は有意
F (2, 13) = 5.26,
p = .021
ANOVAの結果,
有意差無し
F (2, 13) = 1.36,
p = .290
表3.流暢さ(総語数と1分あたりの語数)
総語数
1分あたりの語数
Advanced
89.2
10.1
Intermediate
61.9
11.8
Basic
61.0
13.7
Note: Advanced (n = 5), Intermediate (n = 7), Basic (n = 4),数値は平均値
10
結果と考察1 (プロダクト)
 かかった時間
・書き始めるまでの時間
・下書きにかかった時間
・清書にかかった時間
ANOVAの結果,
有意差無し
ANOVAの結果
全体の差は有意
F (2, 13)=10.03
p = .002
表4.かかった時間
書き始め
下書き
清書
Advanced
0.15
12.19
9.89
Intermediate
0.19
11.18
6.38
Basic
0.16
11.25
4.95
Note: Advanced (n = 5), Intermediate (n = 7), Basic (n = 4),数値は平均値
11
結果と考察2 (プロセス)
 包括的な方略(global strategies)(抜粋1~3)
→ global planning を聞き出す質問
1)最初に何を書こうか決めていたか,2)途中はどう書いたのか,
3)最後にはどのように書いたのか (安西・内田, 1981)
→ thematic planningを聞き出すための質問
「この絵のテーマは何だと思う?」
 Advanced > Intermediate > Basic の順で
global planningの使用頻度が高かった
 Thematic planningを行っている調査協力者は
ほとんどいなかった
12
結果と考察2 (プロセス)
 局所的な方略(local strategies)(抜粋4~8)
→ ビデオ映像を見ながらポーズ箇所の内観を尋ねる
(stimulated recall protocol method)
→ leading question (例:「ここは~と考えていた
んだよね?」)は行わない
 抜粋での解釈の基準
rereading, rhetorical refining, local planning,
& translating L1 to L2 (Sasaki, 2002)
 局所的な方略の使用には多様性がある
 一般性や客観性を得ることを目指すためにプロトコル
データの読み込みに加えて,別の方法からの検討
13
結果と考察3(ライティング・スタイル)
 ライティング・スタイル
→ 3タイプのライティング・スタイル(Sasaki, 2002)
Type A: Write according to detailed global planning of both
the content of the text and the most effective way to express it
based on the assessment of the given task.
Type B: Write according to detailed global planning of the
assessment of the given task.
Type C: Write according to rough global planning (thematic
planning) and consecutive local planning. (Sasaki, 2002: 61)
表5.ライティング・スタイルの割合
Type A
Type B
Type C
Advanced
60.0% (3)
20.0% (1)
20.0% (1)
Intermediate
14.3% (1)
28.6% (2)
57.1% (4)
Basic
25.0% (1)
0% (0)
75.0% (3)
Note: Advanced (n = 5), Intermediate (n = 7), Basic (n = 4), カッコの中は調査協力者の数
14
得られた示唆





1)予備調査で用いた総合的評価尺度(「うまさ」と「好
み」)と作文実験で用いた分析的評価尺度(ESL
Composition Profile)の併存的妥当性は高いようで
ある(山西, 印刷中,においても同様の傾向)
2)清書に関して見ると,作文能力の高い調査協力者ほ
ど,質・量ともに優れた作文を,時間をかけながら書い
ていたようである
3)包括的な方略の使用の頻度は,調査協力者の作文
能力が高くなるに応じて高くなったようである
4)局所的な方略の使用のされ方は,多様であり,調査
協力者ひとりひとりで異なっていたようである
5)作文能力が高い調査協力者ほど,より高度なライ
ティング・スタイルを用いていたようである
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今後の研究の方向性
 発話プロトコルデータから,
説明型の自由英作文を書
く際の使用方略リストを作
成(資料6)‥仮説生成
 使用方略リストを精選,吟
味し,質問紙を作成し他の
高校生にも当てはまるか
を調査する‥仮説検証
仮説継承型アプローチ
(田中・山西, 2004;
山西・田中, 2003)
による研究
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参考文献
安西祐一郎・内田伸子. (1981). 「子供はいかに作文を書くか?」.
『教育心理学研究』, 29, 323-332.
Hirose, K. (2003). Comparing L1 and L2 organizational
patterns in the argumentative writing of Japanese
EFL students. Journal of Second Language Writing,
12, 181-209.
石田潤・森敏昭. (1985). 「小学生の文章表現の発達的変化」.
『広島大学教育学部紀要』, 33, 125-131.
Jacobs, H. L., Zinkgraf, S. A., Wormuth, D. R., Hartfiel,
V. F., & Hughey, J. B. (1981). Testing ESL
composition: A practical approach. Rowley, MA:
Newbury House.
梶井芳明. (2001). 「児童の作文はどのように評価されるのか?
-評価項目の妥当性・信頼性の検討と教員の評価観の解明
-」. 『教育心理学研究』, 49, 480-490.
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参考文献
Sasaki, M. (2002). Building an empirically-based model
of EFL learners’ writing processes. In S. Ransdell, &
M. Barbier (Eds.), Studies in writing: Vol. 11. New
directions for research in L2 writing (pp.49-80).
Dordrecht: Kluwer Academic Publishers.
田中博晃・山西博之. (2004). 「言語データの質的な取り扱いに
おける客観性と一般化可能性の問題-仮説継承型アプローチ
による克服の可能性-」. Language Education &
Technology, 41, 77-88.
山西博之. (印刷中). 「高校生の自由英作文はどのように評価さ
れているのか-分析的評価尺度と総合的評価尺度の比較を
通しての検討-」. JALT Journal, 26.
山西博之・田中博晃. (2003). 「英語教育学研究における質的研
究と量的研究の融合-仮説検証から仮説継承へ-」.
Language Education & Technology, 40, 161-173.
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