夢分析の現在 東京国際大学 妙木浩之 フロイトの出発点 生理学、神経学者としての出発 ヘルバルト、フェヒナーの心理学 的生理学の伝統 フリースの影響と性科学の影響 『心理学草稿(フリースへの手紙』の読み方 演繹的でも帰納的でもない方法論 脳科学の発想 優れた脳科学者で失語症(失認の概念) と小児麻痺の研究者だったフロイト イギリス経験主義的発想 ミルの翻訳をしたフロイトの連想主義的な 発想 脳のネットワークモデルの近くにいた。 フロイト自身の病 生涯何度か体験されるめまい、失神など のヒステリー症状:母親に溺愛された子ど もの不安 ⇒『夢判断』(1900):父親の死 鉄道の体験がトラウマになって、共症的な 体験になっている。父親のとの関係を中心 に分析した。 フリース ベルリンの耳鼻科医:バイオリズムの創始者 1. 鼻粘膜と性器が対応している。 人間は両性具有である。 すべての人間には二つの周期が重なって存 在している。 2. 3. フロイトの発見までの経緯① フロイト個人の問題 ニコチン中毒 偏頭痛 ヒステリー的神経症症状 Plus:子どもたちの世話、経済的 な庇護 夢分析の発想 1895年7月25日 「イルマの夢」をみて、記念碑的な着想を 得た。 連想主義と脳神経モデル、そして連想の 拡張から分析の手法を思いついた。 ⇒夢の意味の解明方法(この100年間ほと んど変わることなく続いている手法) 夢分析の手法(要素分析) 夢を記録する≒夢テキスト(顕在夢) そのテキストの部分(語、文)の、部分部分 に対して連想を拡げる ≒連想テキスト 連想テキスト、その要素のなかで反復して いる主題を見つける≒反復主題の発見 前日、あるいは最近の記憶と照合させる。 照合させた主題の自分自身の人生におけ る意味を見出す。 フロイトの発見までの経緯② 1896年 父親の死. 深刻な対象喪失. →自己分析. 夢分析の例 「年老いた紳士と駅にいる。老人に 尿瓶を出す。その老人の世話をする。」. そして尿意で目を覚ます。 連想:幼児期の両親の寝室での話。 ライプチヒに向かう汽車のなかの母親の話. フロイトの発見までの経緯③ 母親の裸体の出来事から数年後 フロイトは怖い夢を見た。「 そこでは母親が鳥 の頭をした人に寝かされる。」 そして夢の解読の結果:父親への死の願望と母親 への性的な願望を発見する →エディプス・コンプレックスの発見 個人的な発見からコンプレックス 連想による発見 抵抗 抑圧 抵抗の発見 ブルクヘルツリにおけるビンスワンガーや ユングの言語連想検査 ドンデルス以後の反応時間論 ⇒フロイトとユングの出会い 催眠における変性意識への抵抗 連想における停止=抵抗の現れとして分 析の対象にしはじめる。 性図式の中での禁止 夢の分析 科学的なモデルの提示 顕在内容 不安夢 二次加工 夢の仕事 日常残渣 夢は無意識への 王道:願望充足 である 潜在内容 夢の研究の歴史的文脈から 歴史的展望:夢は 1.願望充足、眠りの守護者であり、防衛によっ て行われる変形の産物である(フロイト) → イド、性的、攻撃的衝動、超自我の禁止、自我の統制機能 2.心的産物、橋渡し的でメタファーに近い(シャ ープ) 3.素直なもの、無意識的な想像活動であり、 自分への交流(ライクロフト) 4.スクリーンである、分析者が眠りから覚醒 を生む媒介となる(レヴィン) 5.容器、潜在空間であり、夢見るキャパシテ ィがある(ビオン-メルツアー、ウィニコットカーン) 6.それを語ることの重要性(ウィニコット、シ ェーファー) :歴史的には、REM睡眠の発見と、睡眠研 究の発展のインパクトがある (守護仮説→活性化仮説への移行) 夢の研究の文脈から Day Residue, Recall residues, and Dreams(1971) JAPA 夢は抑圧や力動的な意味、発生論的な側面より もむしろ主たる外傷(外的事象)と次の二つの間 の結びつきの周辺に現われる (1)日常残余、顕在夢、潜在夢内容とが 等 しく織りなすネットワーク (2)分析的な関係 最近のネットワークの進化のなかで 還元主義的な発想の閉塞からテクノロジ ーが抜け出していること ⇒自由な心は閉ざされていない。 不自由な背景は、心の防衛にある。 検閲、抵抗、そして防衛の発見につなが る理論的な発展 何が自己発見的なものかの分析 その後の夢の研究から Hobsonら REM睡眠の発見とその後の夢解釈 活性化する脳⇒脳内整理、脱学習 今日脳の活性化の残存物が夢であり、夢その ものに意味があるとは考えられていない。 ⇒語りとしての夢≒連想テキストを自由に展開 して、心のなかの結合を再統合する物語 方法としての夢の分析 繰り返し現れる類層構造 XはYが好きである。でもYはXを裏切る。 だからXはYを捨てる。 言語構造の類比としての夢(無意識)構造 さまざまな防衛によって 能動が受動に XがYに変わる。 防衛と変形(スッペスとワレン) l 行為者変形 (1.1)行為者としての自己(S)→行為者としての他者(O) (1.2)行為者としての他者(O)→行為者としての自己(S) 2 行為変形 (2.1)行為(A)→反対行為(OpA) (2.2)行為(A)→行為の否定(DenialA) (2.3)行為(A)→行為の知性化(NeutralA) (2.4)行為(A)→行為の強化(IntensifA) 3 対象変形 (3.1)対象x→対象としての自己(odS) (3.2)対象y、但しx≠y、y≠自己 変形と防衛 S+A+X 移動 反動形成 否認 投影 同一化 変形1 変形1 変形1 変形2 変形2 S+A+y S+OppA+x S+DenialA+x O+A+y S0S+A+x ミニマリスト・プログラム (Chomsky、1995) 語彙目録 {Numeration} 音声解釈を与え る運用システム SpellOut PF表示 LF表示 意味解釈を与え る運用システム 1.The children ate the turkey. PAST PAST ate the the children eat eat the the turkey 夢分析⇒連想と分析 1. 2. 3. 4. 5. 詳しく話を聞く そこでの連想をできる限り広げる 反復する主題:XがYを好きである、 でもYはXを裏切る。だからXはYを 殺す(など) それを最近の記憶と照合する 潜在内容を発見する。 発見された反復 性の欲動のパターン化 対象との関係をパターン 性と対象の反復 対象選択 →そうした反復はなぜ起こるかを考える ようになる:メタ心理学草稿
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