デフレ 2309418 増田 涼 物価という概念はなぜ必要か? • 物価は経済の体温計と呼ばれており、物価が上 がっているか下がっているかは景気動向を把握す るのに役立つ1つの判断指標になる。企業物価指 数は生産者からの出荷や一次卸業者の価格など、 企業間で取引されるすべての商品について取引が 集中する段階の価格を調査しているので、その数 値は商品の全般的な需給動向を敏感に示します。 • 通貨の購買力として、たとえば1万円でどれだ け変えるかを測定する。労働組合が、春闘で 賃金のベア要求水準の設定にあたって消費 者物価の動きを参考にしたり、年金等の支給 額について物価スライド調整を行うのは、所 得の実質的な価値が物価の変動によって影 響を受けることのないように配慮しているた めである。 デフレが経済に与える悪影響 • デフレを伴う景気後退が通常の景気後退と異なるの は、まず、金利面で名目金利がゼロ以下のマイナス に下がらないために、期待インフレ率が高まると名 目金利から物価を差し引いた実質金利が上昇する 点にある。 • 金利が高くなると新規の借入が抑制されるので、設 備投資、住宅等の購入が減少し景気を悪化させま す。 • また個人が住宅ローンを借りている場合には、ボー ナス等給料が減少するので返済負担が重くのしか かります。返済負担が大きくなると、やがて、約束ど おり返済ができなくなる先が現れ、延滞、債務不履 行の増加となり、さらに債務者が倒産すると不良債 権の増加という形で金融機関の収益を悪化させま す。 • こうした動きが広がると金融機関が貸出に慎重に なり、貸し渋り現象が引き起こされ、金融介入機能 が大きく低下する可能性が高まります。 ではなぜ、デフレが起きるか? • デフレやインフレといった物価の変動はどのように できているか。その理由を単純化してとらえるのは 容易ではないが、比較的大きな変動要因として、 • • • • • 需要要因 供給要因 円相場や海外要因 その他の要因 金融要因、が挙げられる。 デフレスパイラル • 物価と景気の関係について、需要が不足し景気が 悪化すれば、ふつう物価が下落しデフレになります。 これに対して、物価の下落自体が原因となって景 気を一段と悪化させるような悪循環をデフレスパイ ラルといいます。こうした悪循環は避けなければな りません。 • デフレスパイラルにはいくつかのプロセスがありま す。 • 1、企業収益の減少が起点になるもの。 • 物価が下落すると企業の売上が減少しますが、賃 金等のコストはすぐに下げられないために、企業収 益が悪化。 • 企業は収益回復策として、在庫・設備投資の抑制や 雇用調整、ボーナスカット等の賃金引き下げといっ たリストラを進める。 • こうした措置をとると、それ自体が需要を減退させ、 さらなる物価下落を引き起こす。 • するとその物価下落がまた企業の売上を一段と減ら すといったように、物価の下落と景気の悪化が加速 的に進行する悪循環となる。 • 2、借金を通じるもの。 • デフレになると貨幣の価値が高まる。 • 1万円札の価値について見ると、購入する商品や サービスの価格が低下すると、それ以前に比べて 多くの商品やサービスを購入できるようになり、理論 的にはその分だけ一万円の価値は上がる。 • このため、資産を持つ人はその実質的な価値が上 がるので、利益を得ますが、一方で負債を抱えてい る人は借金の実質的な負担が増大します。 • 債務者が倒産する、あるいは自己破産に陥るリスク が高まると、金融機関からの資金調達に支障を来 たし、また、実際に企業が倒産すると企業価値の喪 失が生じるので、経済活動は縮小し、それがさらに 物価の下落を誘発する。このような返済負担の増大 に伴うデフレをデットデフレと呼んでいます。 • 個人もデットデフレに無縁ではない。個人全体として は、貯蓄超過であり、金融資産を多く持つ人は実質 的な価値が増えていますが、住宅ローン、消費者 ローンなどを借り入れている人にとっては、賃金が 増えないので返済負担が重くなっています。特に住 宅ローンは30年程度の長期契約で借入するケース が大半ですから、過去に高金利で借入した人の返 済負担は相当重くなっています。 インフレとデフレの比較 • 1、デフレでは債務者の負担が増します。物価下 落による債務者の負担増と債権者の収入増の 大きさは、名目上の金額で見れば本来同じはず ですが、その波及効果まで考えるとマイナスの 効果が大きくなります。 • 返済負担が増大していくと債務者が倒産する可 能性が高まります。このため金融機関からの資 金調達に支障をきたし、企業のリスクテイク能力 が低下しますし、雇用者も将来賃金が下がると 予想すると消費を控えるので、経済活動が縮小 していくプロセスがあるからです。 • 2、賃金の下方硬直性の問題があります。賃金は業 績がよければ上がり、悪ければ下がるのが本来の 姿です。 • しかし、業績のよい時はインフレ期が多く賃金が上 がりやすい半面で、業績の悪い時期はデフレ期が 多いわけですが、賃金が下がりにくくなっています。 • 3、名目利子率がゼロ%以下にならないために金融 面で問題が生じます。すなわち、物価が上昇する場 合にはふつう同時に期待インフレ率も上昇するので、 その分、名目金利が上昇します。 • この結果、名目金利から物価を差し引いた実質金 利はさほど上昇しない。 • 名目金利はデフレ時には低下しますが、ひとたびゼ ロに近い状況に下げ切ってしまうと、それ以上デフ レが進行してもゼロ%以下にはならない • 中央銀行はインフレ局面では金融引き締めを強力 に行ってインフレを抑制することができますが、デフ レ局面で名目金利がゼロ%に達したり、バランス シート調整が働く場合には、金融緩和の効果が弱ま ると指摘されています。ので、その分実質金利が上 昇する。 デフレ防止の重要性 • デフレは主に総需要の不足によって生じるため、一 番大切なことは、常に財政・金融政策の適切な運営 を心がけておくこと。 • ①平時にインフレをゼロ%まで低下させないように する。 • ②銀行の自己資本の充実や資本市場の機能向上 など、規制・監督面から金融システムを強化しておく ③デフレの危険が近づいた時は、予防的見地から 積極果敢に金融政策を発動する。4 デフレ下での企業・家計の対応 • 企業の対応:企業は、デフレで売上高が伸び悩んで いる上に、バブルの崩壊とその後のデフレで多額の 株式・土地の含み損や過剰債務を抱えている先で あり、収益体質がかなり脆弱化している。 • ①原材料、人件費、金利負債等の総コストの削減、 ②情報・知恵を生かした高付加価値品等の創出を 進めている。 • コストダウンについては、モノ、人、金の面で圧縮が 着実に進んでいる。 • モノの面、デフレ経済では商品は時間の経過ととも に価格が低下するので、在庫が適性水準を大きく超 えると大きな損失を発生させる。 • 人の面、1990年代に入って人件費比率が高まっ ており、こうした高コスト体質を改善するため、企業 は賃金、雇用の両面で厳しい調整を進めています。 • 金の面、デフレ下では借金をすると返済負担が実質 的に重くなり、企業利潤を圧迫します。 • このように消費が低迷する原因として、 • 1、所得の減少や失業者の増加など雇用環境の悪 化。 • 2、雇用環境や社会保障制度への先行き不安が指 摘できます。消費が少なくなった理由として、「将来 の仕事や収入に不安があるから」、「将来の年金等 社会保険給付の引き下げ、税や社会保障負担引き 上げによる不安」 • 3、住宅については、地価の値下がりや低金利によ り取得能力水準は上昇していますが、不動産価格 の下落傾向が続いていることや、その結果として、 買い替えが困難化していることが指摘されている。
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