農業生産の空間均衡

農業立地論
• チューネンの孤立国(The isolated States)
• (Johann Heinrich von Thünen 17831850)
– 地代指数が大きいほど耕境が近い
– 地代(単位面積当たり土地純収益)
• 純収益?復習から
• Theodor Brinkmann(20世紀前半)
– 『農業経営経済学』
– 統合力、分化力、
1
復習 家族農業経営の仕組み
2
理念的経営概念
• 農業粗収益ー経営費=農業純収益
• 農業粗収益ー土地利用経営費=土地利用純収益
• 純収益とは・・・粗収益(売上)から経営費を差し引
いた概念
• 経営費とは?
物財費+外給用役費(経営体の外部から調達し
た用役(雇用労賃、借入地地代、借入資本利子
へ)への支払い
cf.生産費とは
さらに、経営費に内給用役費(見積もり)を加え
3
4
理念的経営概念
◎経営体:それを構成する経営要素をどうとらえるか
によって、成果のとらえ方はそれぞれ異なり、目的
によっていく通りも可能 (菊地128頁)
• 「土地利用経営」:土地の結合体としての経営
・・・経営に元入れしている経営要素は農企業能力(リ
スク負担と意思決定機能)と土地のみ、残余報酬の
み受け取る。
• 「小農経営(家族的労作経営)」:労働力の結合体と
しての経営・・・労働力利用経営
5
「元入れ」
経営体(菊地128頁)
• 経営要素(ストック) → 生産要素(フロー、用役)
が湧出(ゆうしゅつ、わきでてくる)
• 農企業能力→企業能力用役=企業利潤
• 自家労働力→自家労働(用役)=自家労賃
• 自己資本、土地、自己資本用役=自己資本利益
(含む自作地地代)
・土地以外の固定資産・・・建物、大植物、 大家畜、
大機具
・流動資産・・・未販売現物、購入現物、中間生産
物、小植物、小動物、小機具
・流通資産・・・現金、準現金(貯金、貸付、保険、
出資金
6
• ①小農経営純収益粗収益ー小農経営費=小農経
営純収益=農業所得
• ②経営純収益=資本主義経済経営純収益=自己
資本利子+企業利潤
•
経営の枠をはずし擬似的に雇用したものとみな
す家族労働を雇用したものとみなす。
• ∴経営費=小農経営費+自家労賃(見積額)
• ③(自作地、小作地)土地利用経営「企業者能力、
土地(自作地、小作地)」純収益」
• = 粗収益ー 外給される土地利用経営費
• =小農経営費ー小作料+自家労賃(費用扱い) +
土地以外の自己資本利子(見積額)
7
• ④(農)企業能力経営純収益
• =粗収益ー生産費用
• =粗収益ー(小農経営費+自家労賃+自己資本
利子)
• ⑤経営主利用経営純収益=経営主労賃+企業利
潤
•
経営費=小農経営費+経営主以外の家族労賃
+自己資本利子
以上、経営体に元入れする生産資源、経営要素(自己
資本、自家労働力、農企業能力)の組み合わせに
よって経営体の種類が分けられる。
8
9
10
農業立地論
• チューネンの孤立国 、(Johann Heinrich
von Thünen 1783-1850)
• Der isolierte Staat, the isolated State 近藤
康男訳
• 地代指数が大きいほど耕境が近い
• 地代(単位面積当たり土地純収益)
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前提と経営目標
• すべての生産物について完全市場を前提とし
• n種の農産物・・・完全競争市場
• 土地用役以外の生産要素市場も完全であり、あら
かじめその市場価格が与えられている。
• 農業経営は(本当は小農経営だが)擬制的に土地
利用経営として営まれるとみなす。
• 生産技術に関して「規模に対する収益一定の法則」
が支配しているとみなす。そうすると。経営目標は
「単位面積当たり土地純収益」を最大にすることで
ある。
12
• 「土地利用経営」の目標は
• 単位面積当たり土地純収益の最大化
• R1=(X1・P1n - k1・t) -C1
収量 市場価格
k:運賃率(1kg当たり運賃)
t:市場距離
• 単位面積当たり粗収益 ー
単位面積当たり土地利用経営費(土地以
外の経営費)
13
• 土地以外の経営費
-流動物財費、固定財減価償却費、
賃料料金、労賃(雇用、家族)
-土地以外の資本に対する資本利子、
租税公課
14
チューネンの孤立国、
R1  ( x1p1  c1 )  x1k・1 t
単位面積当たり
土地純収益
地代指数
地代指数(x・k)=収量(x)×節約指数(k)
dR1
  x1k1
dt
・地代が距離の増大にしたがって、どんどん落ち込んでいく
その落ち込みが少ないほど、耕境が遠くなる(遠くまで生産される)
15
・地代指数が高いほど、耕境は近い
x1 p1  c1
地
代
(
単
位
面
積
当
た
り
土
地
純
収
益
)
 x1k1
R1  ( x1p1  c1 )  x1k1t
dR1
  x1k1
dt
耕境(こうきょう)
0
市場距離 t
16
• 農業経済学への招待
• 日本経済評論社
• 1999年
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熊谷宏
農業経営・計算の小辞典、富民協会、1981年
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農法の展開、土地利用 80-83
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経営組織化の原理 83-85
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• 金沢 8章
• 頼 計算学研究
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経営行動
Theodor Brinkmann
(1)経営方式(経営部門組織)
• ①分化力(経営立地要因による) が作用する
– 静態的要因 a, b, c,
– 動態的要因
• ②統合化力(多角化による???追求)が作用する
– a, b, c, d, e, f
• ③専門化力(専門化による利益を追求)
– A, b, c, d, e, f
(2) 経営要素構造・・・経営指標・・・交通地位との関係
a,b,c,
(3)交通地位と経営集約度
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(1)経営方式(生産)部門の選択
①分化力(経営立地要因による)
立地条件に適合して土地純収益の最も高い部門を
基幹部門(作目)として選ぶ、、力が作用する
生産費(経営費)の節約を図り、収益性の拡大を
(a)交通地位に関しては地代指数の高い作目ほど
市場近接地に立地する場合に高い土地純収益力を
あげる。
(b)自然的性状(土地、気象)に関しては、その性状
に最も適合して収量が高いか、品質が良くなるか、土
地利用経営費が低くなるような部門が立地する。
(c)社会的条件に適合する伝統的特産物を立地さ 35
せる。
②統合化の利益 経営が多角化、複合化の利益の
追求 経営の多面性への強制力、統合化力が作用す
る、
(a)土地利用共同
ア 地力利用共同
イ 面積利用共同
三つの
紐帯
ウ 期間利用共同
(ちゅう
(b)土地利用手段共同
たい)
(c)生産物利用共同
(d)家計仕向け利用共同
(e)資金繰り流動性保持利用共同
(f)危険分散利用共同
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③専門化の利益
(a)特定部門に専門化すれば、意欲が増大
(b)専門的知識経験が生産技術面、流通面でも深くな
る
(c)共同組織をつくり特定部門に専門化した農家が、
地域的に集積すれば
ア 大型、高能率の機械施設の導入
イ 生産、流通面に渡って分業に基づく協業的な労働力
組織の形成
②と③の結合により
個別専門化して、特定部門に関する「組織された大
産地形成」、同時に産地間に複合化の利益と実現しう
る比率でもって、異なる営農集団が組合される= 地
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域複合
(2)経営部門の結合
38
(3)交通地位と経営集約度
39
40
41
42
以下、印刷せず
43
5 農業経営における統合力と専門化力
• 各経営をみると,その経営土地の各圃場は,
経営の本拠地から各館場までの交通地位ま
たは自然的性状において異なる土地片から
成っている。圃場交通地位またはその自然的
性状について分化力が作用する結果として,
各地片(圃場)が最高の土地純収益力をあげ
うる作目を独立的に立地させうるとすれば,
経営全体としては,作目組織の多角化が進
むことになる。これは「外的統合力」と称して
よいであろう。
44
• ブリンクマンが問題としたかったのは,むしろ「
内的統合力」である。
• 第1は,「土地利用手段共同」である。労働力
および固定的労働補助手段が,形態的にも
機能的にも特定の経営の用途に適合するよう
に特殊化し,しかも場所的にも,特定の経営
に固定的に沈下されると,その物的耐用期間
にわたって古びてゆくほど,新規調達価と中
古処分価との間の格差が大きくなる。
45
• そうすると,主幹部門において費消される場
合には,その生産用役の限界収益力が,そ
の生産用役の調達価評価額を上回るか,ま
たは少なくとも等しくなる限界まで投入される
。しかし主幹部門において利用されない期間
において補助部門に利用される場合には,そ
の生産用役の限界収益力評価額を,最低限
,その処分価格水準まで下げることができる
。このように,労働力と固定的補助手段から
たえず湧出して貯蔵できないような生産用役
をできるだけ完全に利用しつくすためには,
季節的に繁閑のくいちがう作目を組合せる努
46
力が,続合力として作用するのである。
• 第2に,「土地利用共同」
• これは彼の論じた「地力利用共同」の他に「面
積・期間利用共同」がある。「地力利用共同」
は,土地の地力,肥力をもっとも周到に利用
するために,植物栄養分の要求方向の異な
る作目を統合する作用カである。たとえば,
表土利用作目と深土(底土)利用作目とを結
合する。地力消耗作目と地力補給作目とを結
合する。いや地をひきおこす作目には,いや
地を解消する作目を結合する。同様に雑草,
病虫害についても,お互いに相殺し合う作目
を結合する作用カである。
47
• 第3に「生産物利用共同」であるが,√ これは
,中間生産物,換言すればその庭先調達(購
入)価格と庭先処分(販売)価格との間の格
差の大きい中間生産物の部門間の仕向関係
を媒介とする結合関係である。
48
• 分化カを説明する段階では,各生産物につい
て各生産要素に関する技術係数が一定であ
り,しかも固定的生産要素は土地1種類という
仮定をおいたから,線型計画理論において明
らかなように,各農場が上記の主体均衡条件
をみたすならば,1種類の生産部門(生産物)
しか採用しないことになる。そこでブリンクマ
ンほ,経営土地をその圃場距離,地目、 同一
土地の異なる土層や異なる植物栄養分によ
って分けて複数とし,さらに労働力は長期契 49
• このように固定的生産要素の種類が多くなる
ほど,それぞれの限界収益力をプラスにし,
しかもできるだけ高めうるような生産部門を補
合的に結合する統合力が作用することになる
のである。
• ブリンクマンは別の著書において,その他の
統合力として,
• 第4に「危険分散共同」,
• 第5に「家計仕向共同」,
• 第6に「資金繰り・流動性保持共同」をとりあ
げている。
50
• 彼のあげた第1から第3までの統合力要因は、
第1に固定的に沈下された経営の土地および
土地利用手段から時間非可逆的に湧出する
生産用役を,その処分価よりも高い限界収益
力をあげうる利用機会があれば,そこで利用し
つくそうという原則によるものである。さらに,
中間生産物の形で,部門間に経営内部仕向
関係が技術的に存在し,しかも,それによって
自給きれる中間生産物の自給・生産費用価が
,それと完全代替的な購入生産要素価格に比
べて割安であれば,生産部門結合による中間
生産物の自給に頼ろうという考え方である。
51
• いずれの場合でも,結合される生産部門それ
自体が,交通地位の変動による分化カの作
用をうけながら,同時に「補合的・補完的結合
の利
• 益」を獲得しようとする経営活動である〔15〕。
52
• さて、以上述べてきた統合力に対応するのは
,むしろ生産部門規模の拡大と専門化の利
益を追求する「専門化カ」である。経営規模が
一定であるとすれば,特定生産部門の規模を
拡大して,部門組織の専門化を進めるほど,
• 第1にその生産部門に関する意欲が増大す
る。第2に,その部門の生産過程および流通
過程に関する知識および熟練が高度化し,さ
らに市場の信用も増す。第3により大型高能
率の機械・施設を利用し,しかもその操業度
を高めることができる。
53
• 第4に分業に基づく協業的な労働組織を採用
して生産費の節約と生産物の品質向上によ
る価格上昇とを期待することができる。
• 第5に大量購入,大量販売に伴ない,流通過
程において上記2つの方法を採用して,流通
経費を節約することができる。
• 第6に市場占有率の拡大によって,市場取引
力を強化し,価格差別化 生産物差別化など
の販売戦略を採用して,実質的に生産物価
格をつり上げて,販売額を増大させることが
できる。なお,
54
• なお、個別経営の土地規模が大きくなり,し
かも多くの雇用労働に依存するような経営に
なると,チャヤノフ〔19〕が指摘したように,「内
部不経済」,つまり経営内移動・運搬費の増
大と,労務管理の能率低下が問題になるが,
• ここでは,それほど巨大な農業経営を成立さ
せる内部経済は存在しないという前提をおこ
う。
55
• ブリンクマンの農業立地論〔1〕において前提
におかれている農業経営は,土地利用経営
であり,土地利用経営純収益を最大にするこ
とを経営目標としている(土地利用経営純収
益=粗収益一土地利用経営費=粗収益-(
労働費+物財費+資本利子))。
• 最適経営規模がどのような経済法別にした
がって決定されるか,それが経営の立地条件
および経営形態によってどのように変動する
か,という「規模問題」を無視した。
56
57
(2)経営要素指標
58
59
• しかも経営主の農企業能力が一定であること
を前提として,それと結合される土地規模が
変動するばあいに,単位面積当たり平均土
地純収益力が一定不変である,したがって限
界土地純収益力も一定であり,かつ平均土
地純収益力に等しいと仮定した。このように
生産技術面で規模拡大に対して収穫鵬定法
則か支配しており,同時に産出・投入規模の
変化にかかわらず生産物および土地利用手
段の庭先価格が一定不変であるという仮定
を採用したために,経営目標を,単位面積当
たり平均土地純収益カを持続的に最大にす
60
ることにおいたのである。
• ブリンクマンは,農業経営の経営経営形態を
、(1)経営集約度(労働費+物財費+経営資
本利子)÷経営土地面積と,(2)経営方式(
経営部門の組合わせかた)という2面からつ
かまえた。
• (1)は生産要素相互間の最適結合比率およ
び生産要素・生産物相互間の最適変換比率
の決定問題であり,(2)は生産部門(生産物)
相互間の最適結合比率の決定問題である。
• 経営形態を表わす第3の指標として,経営規
模をとり上げることをしなかった。
61
• 彼は農業立地論の研究課題として,農業経
営形態と農業経営の立地条件との間に成立
している因果的対応関係を明らかにすること
を取上げた。つまり,農業経営形態の差異を
,その立地条件の差異によって説明しようと
したのである。
62
• 経営立地条件は,
– 静態的立地要因,つまり経営形態の同時空間的
差異を説明する要因としての,
• (1)経営土地の交通地位,(2)経営土地の自然的性
状,(3)農企業者の個人的事情)と,
– 動態的立地要因,
• つまり経営形態の時系列的な変動を説明する。)国民
経済の発展段階から成っている。
63
• (1)交通地位は,
• 経営形態の交通地位による空間的分化をも
たらし,その結果として,経営土地純収益力
の差異をもたらす。完全競争市場条件下で
は,競争の行き尽した結果として,土地の限
界純収益カと平均純収益力とが等しくなる水
準に「位置地代」が落ちつくのである。
• したがって,経営形態の空間的分化には,位
置地代の空間的差異が対応する。同様にし
て,経営土地の自然的性状にもとづく経営形
態の空間的分化には,いわゆる「豊度地代」
の空間的差異が対応することになる。
64
• 彼は,農企業者の個人的事情を交通地位や
自然的性状と同様に立地要因の一つとして取
扱っているが,これは,農企業者が彼の経営
を移転させたり,あるいは彼自身,農企業者で
あることを止めたりすることがないという前提
をおいているのである。
• しかもこの個人的事情は「長期」にわたって経
営問で均等になりえないという前提をおいてい
る。より高い土地純収益力をあげうるという意
味において,より優れた個人的事情をもった
農企業者がいると仮定しよう。
65
• 他の経営は,同様に高い土地純収益力をあ
げるために,その経営活動を模倣しようとす
るが,長期にわたって,どの経営でも模倣で
きないような個人的事情があるとすれば,
• 経営活動の差異とそれに対応する土地純
収益カの格差は,長期静態的に存続し,それ
が農企業者の個人的事情そのものに対する
一種の「準地代」として帰属することになる。
66
• この準地代は,長期を経て,企業者の個人的
事情が均等化するにつれて,生産物価格の
下落か,生産要素価格(土地利用手段価格)
の上昇によって吸収されて消失すべき性質
のものであるが,その期間が半永久的なもの
であるから,われわれの問題とする経済期間
においては,この個人的事情の格差が消失
しないものとみなしたのである。
67
• なお農企業者の個人的事情の内で,
生産方向に関する好みの差異とか、知識・熟
練の差異とか、資本力の差異などは、静態的な
「準地代」形成要因であるが,「新結合」あるい
は「革新的経営活動」を企画し,採択し,実行す
る企業意欲と企巣能力との差異は,動態的な「
企業利潤」の格差を生む要因となる。
68
• この企業能力による新結合は,経営の立地
条件をより生かす方向をとる場合もあれば,
立地条件からみて必らずしも適切でない方向
をとる場合もある。
• 後者の場合には,その新結合が,「単なる業
主」としての農業者に模倣されるにつれて,そ
の新結合をもっとも生かし得る立地条件下に
ある経営群との競争において放けることにな
る。したがって新結合の模倣がゆきつくした後
においては,その新結合をもっとも効果的に
生かし得る立地条件下にある経営群におい
てのみ,その新結合が採用され続けるのであ
69
る。
3.交通地位による経営集約度の
立地配置
• ブリンクマン・モデルでは,規模に関し
て収穫一定の法則が成立していると
仮定して,生産要素間の結合比率の
みを問題にした。その際,各生産要素
に関する生産物単位当り技術係数が
連続的に変動可能であり,したがって
生産要素間の代替が連続的に可能で
あるような生産関数を仮定している。
70
• 交通地位が変動すると,生産物および生産
要素の農場庭先価格を変動させることを通じ
て,経営集約度に影響を及ぼすことになる。
第1に,交通地位がよくなるほど,生産物価格
が上昇するので,最有利集約度の必要条件
をみたす点,
• 換言すれば,各土地利用手段の限界収益力
がその土地利用手段の庭先価格に等しくな
るような土地利用手段の最有利投入量が増
加する。これは,各土地利用手段の物的限界
生産力が不変であっても,生産物価格の上
昇によって,限界収益力が上昇するためであ
71
る。
• 第2に,交通地位がよくなるほど、粗放的,農
村起源の資本財粗放的,かつ都市起源の資
本財集約的な生産技術が採用される。これ
は,交通地位がよくなるほど労賃が上昇し,
農村起源の資本財価格も上昇し,他方,都市
起源の資本財価格が低下することに応じて,
農企業者が,土地利用手段相互間の最適結
合比率を変えてゆくことによるものである。
• つまり,土地利用手段間の限界代替率が,そ
れらの価格比の逆数に等しくなるという必要
条件をみたす最適結合比率が,上記のように
変動するのである。
72
• 第3に,交通地位がよくなるほど,土地利用手
段費の内で,加工過程よりも本来的耕種過
程に要する費用の方に重点を移す傾向がみ
られる。
• 第4に,より集約的な経営方式に移行する。
つまり粗放的な作目に比べて集約的な作目
の占める割合が大きくなる。
73
• 第5に,土地休養期間が短縮されて,しかも
一年間にあげられる収穫回数が増加する。
第3から第5までの経営集約化は,単位面積
当り収量をふやす方向であり,土地利用手段
の物的限界生産力の逓減を緩和するような
技術の選択を意味している。
74
• ブリンクマンは,経営方式の立地配置を説明
する段階では,各作目について技術係数一
定型の線型生産関数を前提において,説明
を単純化している。その点,経営集約度の立
地配置を説明する場合の技術係数可変型の
生産関数とは異なる前提をおいていることに
なる。
• 次に,交通地位による経営方式の立地配置
について検討しよう。
75
4 交通地位による経営方式の立地配置
• ブリンクマンはまず,経営方式を作目(生産部
門)間の結合として定義する。作目問の結合
• は,交通地位などの立地要因による分化力と
,多角化による利益を追求する統合力との均
衡するところで決まると仮定している。しかし
ブリンクマンの定義する統合力に対応するの
は,むしろ部門規模拡大の利益に基づく専門
化力である。
76
• 統合力(多角化カ)と専門化力との均衡する点
で,経営方式が決定される。交通地位が変化
するにつれて,この経営方式を構成する各部
門の相対的有利性が変化し,同時に上記の
統合力および専門化力を構成するそれぞれ
の要因の相対的有利性も変化してくる。その
結果として,交通地位の変化に応じて経営方
式が変化するのである。
• そこでまずブリンクマンに従って,作目の立地
配置に及ぼす分化カを要約してみよう。
77
• 第1に,孤立国の中央に1つの大都市が存在
する。その大都市を中心とする国民経済会体
が1つの市場圏を形成し,そこではすペての
生産物および生産要素の市場価格について
、「1物1価の法則」が支配している。つまりあ
らゆる生産物と生産要素について「完全競争
市場」が成立している。
78
• 第2に,ある生産物Yjの市場価格をPMj、農場
庭先価格をYLj,生産物単位当り単位距離当
• り運賃率をkyj点、農場から市場までの市場
距離を t とすると次式が成立する。
79
80
• ブリンクマンは,労働を資本財と同様に全く流
動的なものとみなして,長期静態的には,全
• 地域にわたって実質賃金率が均等になるよう
に労働力が移動するものと仮定している。し
かもこの実質賃金はすべて家計費に使われ
る程度の水準であり,全地域にわたって労働
者の消費慣習が等しい,都心で働いている労
働者の家計費内訳をみると,農村起源の消
費財支出が都市起源の消費財支出よりも大
きいと仮定している。
81
• (4)において,農場庭先貨幣賃金が,市場距
離に比例して低下するためには,この農村起
源消費財支出の家計費に占める割合aが0.5
よりも大きいという仮定だけでは不十分であ
る。
•
b= とすると,
このbが十分に小さくて,
• という必要条件をみたさなければならない。
82
• さて,第4に,ブリンクマンは,各生産物の生
産技術を「生産プロセス」によって表わすこと
ができると仮定している。つまり単位面積当り
収量yi乃,都市起源資本財の投入量x1j,農
場起源資本財の投入量x2j, 労働投入量ajは
,生産規模の如何にかかわらず一定である。
しかも他の生産部門との結合比率が変わっ
ても,その生産部門の投入と産出とに関する
技術係数が一定であると仮定している。
83
• 第5に,労賃および資本財の農場庭先価格が
変動し,それに応じて前払い資本額が変化す
るから,資本利子費用が変化する。ブリンク
マンは利子率の地域格差を無視するとともに
,土地純収益カの計算に当っては,この利子
費用を無視している。
84
85