情報数学 第1-1章

知識工学1 第1-1章
人工知能と知識工学
香川大学工学部 富永浩之
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概
要
■ 人工知能
人工知能(AI) ダートマス会議 機械翻訳 アンドロイド
チューリングテスト 中国語の部屋 人工無脳
■ 知識工学
知識工学(KE) 知識情報処理 エキスパートシステム
記号処理 Prolog言語 Lisp言語
■ 探索問題
パズル解法
ゲーム戦略
数式処理
定理証明
■ 人間の記憶と知識
長期/短期記憶
浅い/深い知識
宣言的/手続的記憶
メタ知識 知識表現
知識推論
計画立案
第01節 [1] 人工知能と知識工学
● 知識情報処理 [Knowledge Information Processing]
単なる数値計算やデータ処理ではなく、人間の思考に近い高度な情報処理を
知識情報処理という。最初から公式や手順が与えられているのではなく、問題
ごとの条件に従い、試行錯誤しながら解法を見つけ出すような問題である。
パズル解法、ゲーム戦略、数式計算、定理証明、医療診断、意志決定
● 人工知能 [Artificial Intelligence]
知識情報処理を研究する分野を、当初は人工知能と呼んだ(略称AI)。
「人間の思考とは何か」をも問う観念的で哲学的な側面を持っていた。初期に
は大きな期待が寄せられ、莫大な研究資金が付いたが、誇大広告の面もあっ
た。そのため、「現代の錬金術」と批判されたりもした。
● 知識工学 [Knowledge Engineering]
現在では、知識情報処理の実用的で工学的な側面を強調し、
知識工学(略称KE)という。
第01節 [1] 人工知能の研究の端緒
● ダートマス会議 [Dartmouth Conference]
マッカーシー、ミンスキ、ロチェスター、シャノンらが集まって、1956年にアメリカ
のダートマス大学で「知能機械に関する研究討論会」という国際会議が開催さ
れた。この会議で、マッカーシーがAIすなわち人工知能という専門用語を提案
した。これが人工知能という研究分野の始まりであるとみなされている。
● 人工知能の研究の端緒
20世紀中頃から計算機の大きな可能性が注目され、人間の知能に迫ることが
できるかもと考えられだした。また、人間の脳神経系に関する医学的な研究が
始まり、記憶や思考の仕組みを生理的に説明する理論が生まれだした。このよ
うな時代背景が人工知能の研究の端緒といえる。
1956年のダートマス会議の以後、50年代から60年代にかけては、アメリカを中
心に、人工知能の研究が盛んに行われた。これには、1957年、ソ連に人工衛
星の打上げで先を越されたスプートニクショックが影響している。アメリカでは、
スプートニクショックを受け、当時の大統領ケネディが国家的威信の回復を図ろ
うと、軍事を含めた科学技術への莫大な資金投入が行われた(アポロ計画も)。
第01節 [1] 人工知能の研究の隆盛
● 人工知能の研究の隆盛
人工知能の最初の成果は、
定積分などの数式処理や、簡単な数学定理の自動証明などである。
これらは、膨大な量の知識データベースを有し、
適用可能な推論規則をひたすら探索していくものであった。
このようなシステムを記述するため、1958年には、マッカーシーにより、
リスト処理として記号処理を行うLisp言語が開発された。
Lisp言語は、最古の高水準プログラム言語の1つである。
また、1966年にワイセンバウムが開発したELIZAのように、
人間と会話し、知能を持っているかのように振る舞うシステムも作成された。