公共サービス論(2014.11.24) 第七回 地方教育行政の組織及び 運営に関する法律と教育委員会 制度 1 <教育委員会制度> 教育委員会とは、教育委員長が主宰する 会議で、教育行政における重要事項や基本 方針を決定し、それに基づいて教育長が具体 の事務を執行する仕組み。 2 教育委員会の概要 ○委員・・・地方公共団体の長が議会の同意を得て任命。 原則5人、任期4年(再任可)、非常勤 ○委員長・・・委員互選で選任。教育委員会を代表し、 教育委員会の会議を主宰。任期1年(再任可)。 ○教育委員会の権限に属する事務を処理するため、 教育委員会に教育長と事務局を設置。 ・教育長・・・委員長以外の委員の中から教育委員会が 任命(常勤) 教育委員会の指揮監督の下、事務を統括。 ・事務局・・・教育長の統括のもと、教育委員会の権限に 属する事務を処理。 3 出典:文部科学省HP 出典:文部科学省HP 5 Ⅰ 教育委員会の設置根拠等 1.地方自治法 第138条の4 普通地方公共団体にその執行機関とし て普通地方公共団体の長の外、法律の定めるとこ ろにより、委員会又は委員を置く。 ※執行機関 • 地方公共団体としての決定を自ら行い、外部 に表示することができる機関。 • 議会が決定するもの以外の意思決定は、執 行機関が行う。 6 第180条の5 執行機関として法律の定めるところに より普通地方公共団体に置かなければならない 委員会及び委員は、左の通りである。 一 教育委員会 (以下略) ※行政委員会 執行機関である委員会及び委員を、「行政委員会」 と称する。(例)選挙管理委員会 <特色> 合議制の機関、民主的な委員選出 準立法機能 <意義> 政治的中立性、専門技術性 多様な住民意思の反映 7 ※教育委員会制度の意義 ①政治的中立性の確保 個人の精神的な価値の形成を目指して行われる 教育においては、その内容は、中立公正であるこ とは極めて重要。 このため、教育行政の執行に当たっても、個人 的な価値判断や特定の党派的影響力から中立性 を確保することが必要。 8 ※教育委員会制度の意義 ②継続性、安定性の確保 教育は、子どもの健全な成長発達のため、学習 期間を通じて一貫した方針の下、安定的に行われ ることが必要。 また、教育は、結果が出るまで時間がかかり、そ の結果も把握しにくい特性から、学校運営の方針 変更などの改革・改善は漸進的なものであること が必要。 9 ※教育委員会制度の意義 ③地域住民の意向の反映 教育は、地域住民にとって身近で関心の高い行 政分野であり、専門家のみが担うのではなく、広く 地域住民の意向を踏まえて行われることが必要。 出典:文部科学省HP 10 ※教育委員会制度の特性 ①首長からの独立性 行政委員会の一つとして、独立した機関を置 き、教育行政を担当させることにより、首長への 権限の集中を防止し、中立的・専門的な行政運 営を担保。 ②合議制 多様な属性を持った複数の委員による合議に より、様々な意見や立場を集約した中立的な意 思決定を行う。 11 ※教育委員会制度の特性 ③住民による意思決定(レイマンコントロール) 住民が専門的な行政官で構成される事務局を指 揮監督する、いわゆるレイマンコントロールの仕組 みにより、専門家の判断のみによらない、広く地域 住民の意向を反映した教育行政を実現 出典:文部科学省HP 12 1.地方自治法(つづき) 第180条の8 教育委員会は、別に法律の定めるとこ ろにより、学校その他の教育機関を管理し、学校 の組織編制、教育課程、教科書その他の教材の取 扱及び教育職員の身分取扱に関する事務を行い、 並びに社会教育その他教育、学術及び文化に関 する事務を管理し及びこれを執行する。 2.地方教育行政の組織及び運営に関する法律 教育委員会の設置など、地方公共団体にお ける教育行政の組織及び運営の基本について 規定 13 Ⅱ 教育委員会制度の概要 地方教育行政の組織及び運営に関する法律 (昭和31年6月30日法律第162号) 14 1.教育委員会の設置・組織 【設置】(第2条) 都道府県、市(特別区を含む)町村、教育に関す る事務の全部又は一部を処理する地方公共団体 の組合に設置 【組織】(第3条) 原則として5名で組織。 (実際には3人~6人の委員で構成) 15 2.委員(第4条~12条) 【委員の任命】 首長が、議会の同意を得て任命(4条) 当該地方公共団体の長の被選挙権があること 人格が高潔で、教育、学術及び文化に関し識見を有する者 任期は4年、再任可能(5条) 非常勤(11条4項) ※任命に当たっての配慮(4条3項、4項) 年齢・性別・職業等に偏りが生じないようする 保護者である者が1名以上必要 委員の1/2以上が同一政党に所属すること不可 16 【罷免】(第7条) ① 首長は、以下の場合、議会の同意を得て、委員を罷 免することが可能(7条1項) 心身の故障、 職務上の義務違反、 委員たるに適しない非行 ② 首長は、以下の場合、(議会の同意を得て、)委員を 罷免する。(第7条2項、3項)。 委員定数の1/2以上が同一政党に所属することと なった場合 新たに当該政党に所属することになった者が1名の場合 は、その委員を直ちに罷免する 新たに当該政党に所属することとなった者が複数の場合 は、必要な人数を、議会の同意を得て罷免する ①②の場合を除き、委員の意に反して罷免されることはない17 【兼職禁止】(第6条) 地方議会の議員 地方公共団体の長 地方公共団体の委員、又は委員会の委員 地方公共団体の常勤職員、短時間勤務職員 【教育委員長】(第17条) 委員長は、委員の中から教育委員会の会議で選 挙し選任 任期は1年。再選可能。 教育委員会の会議を主宰し、教育委員会を代表 18 3.教育委員会の会議(第13条~第15条) 【会議】(第13条) 会議は、教育委員長が招集 会議の開催・議決の定足数は過半数 出席議員の過半数で議決、同数の時は委員長が 決する 会議は原則公開 【規則の制定】(第14条) 法律や条例に反しない限り、権限事務に関して、 教育委員会規則を制定することが可 19 4 教育長と教育委員会事務局 【教育長】(第16条) 教育委員会に、教育長を置く。 委員長以外の教育委員の中から、教育委員会が任命 任期は、教育委員の任期期間中 【教育長の職務】(第17条、第20条) 教育委員会の方針や決定の下に、具体の事務を執行 すること 教育委員会のすべての会議に出席し、議事について 助言すること 教育委員会事務局の事務を統括すること 所属の職員を指揮監督すること 20 【教育委員会事務局】(第18条) 教育委員会の権限に属する事務を処理させるため に設置 内部組織は、教育委員会規則で定める ※教育委員会事務局に置かれる職員(第19条) 都道府県:指導主事、事務職員、技術職員、 所要の職員 市町村:指導主事、その他の職員 ※職員定数(第21条) – 職員の定数は、条例で定める。臨時又は非常勤 の職員については、この限りでない 21 5.教育委員会及び地方公共団体の長の職務権限 【教育委員会の職務権限】(第23条) 地域の学校教育、社会教育、文化、スポーツ等に関 する事務を担当 教育委員会の所管に属する第30条に規定する学 校その他の教育機関の設置、管理及び廃止に関す ること 図書館、博物館、公民館、ほか 青少年教育、女性教育及び公民館の事業その他社 会教育に関すること。 22 【事務の委任等】(第26条) 教育委員会は、教育委員会規則で定めるところに より、権限に属する事務の一部を教育長に委任・臨 時代理させることができる 教育長は、委任された事務、その他その権限に属 する事務の一部を、事務局の職員、学校その他の 教育機関の職員に委任又は臨時代理させることが できる。 例) 教育委員会 教育長 委任 図書館長 委任 23 以下の事務については、教育長に委任できない • 教育事務の管理・執行の基本的方針に関すること • 教育委員会規則その他教育委員会が定める規定 の制定・改廃に関すること • 学校その他の教育機関の設置・廃止に関すること • 学校その他の教育機関の職員の人事に関すること • 教育に関する事務の管理及び点検・評価(27条) • 地方公共団体の長に教育予算等について意見を 述べること(29条) 24 【長の職務権限】(第24条 ほか) 公立大学に関すること 私立学校に関すること 都道府県知事は、当該都道府県委員会に対し助言又は 援助を求めることができる。(第27条の2) 教育財産を取得・処分すること 首長は教育委員会の申し出を待って教育財産の取得を 行う(28条2項) 首長は教育財産を取得したときは、速やかに教育委員会 に引き継ぐ(28条3項) 教育財産の管理は、長の総括の下で、教育委員会が行う (23条2項、28条1項) 教育委員会の所掌に係る事項に関する契約を結ぶこ と その他教育委員会の所掌事務に関する予算を執行 25 【職務権限の特例】(第24条の2) 教育委員会の権限事務であるが、条例で定めるこ とにより、首長が管理・執行することが可能な事務。 スポーツに関すること(学校における体育に関する ことを除く) 文化に関すること(文化財の保護に関することを除 く) ※地方議会は、当該条例の制定・改廃の議決をする 前に、教育委員会の意見を聞かなければならない 26 この特例を適用する場合 地方公共団体の長が管理し、及び執行すること とされた事務のみに係る教育機関は、地方公共 団体の長が所管(法第32条) 都道府県知事が管理・執行する事務について は、都道府県知事が市町村に対し、 指導、助言又は援助(法第48条)や 調査(法第53条)を行い、 資料又は報告の提出を求める(法第54条第2項) ことができる。 27 6.教育機関の設置 【教育機関の設置】(第30条) 地方公共団体は、法律(学校教育法、図書館法など)で 定めるところにより、学校、図書館、博物館、公民館などを 設置することができる。 地方自治法244条の2 ・・・公の施設の設置(・管理)について条例で定める →法律を根拠とする設置であっても、具体的な場所や運営 に関する事項について、条例で定めることが必要 図書館法第10条 ・・・公立図書館の設置に関する事項は、当該図書館を設置 する地方公共団体の条例で定めなければならない 28 【教育機関に置く職員】(第31条) 学校 : 学長、校長、園長、教員、事務職員、技術職員、 その他所要の職員 その他の教育機関 : 法律又は条例で定めるところに より、事務職員、技術職員その他の所要の職員 定数 : 条例で定める 【教育機関の職員の任命】(第34条) 教育長の推薦により、教育委員会が任命 ※事務局職員(第19条7項) 29 7.教育機関の所管 (第32条) 地方公共団体が設置する教育機関のうち、大学は長 が、その他は教育委員会が所管 (関連) • 教育委員会は、所管する教育機関の設置、管理、 廃止について、職務権限を有する(第23条1号) • 大学に関する事務を管理・執行するのは長の職 務権限(第24条関係) 30 【例外1】職務権限の特例 スポーツ・文化に関することについて、条例で定 めることによって長が管理・執行する場合、これ らの事務に係る教育機関の所管は長(第32条) 【例外2】事務委任 地方自治法180条の7によって、教育委員会の権限 に属する事務の一部を、長の補助機関である職員 等に委任する場合、その部分の所管は長に移る。 ※長の補助機関である職員等に補助執行させる 場合、所管は教育委員会に残る 31 【例外3】構造改革特区 構造改革特別区域法に基づき認定を受けた地 方公共団体では、株式会社・NPOが設置する学 校は、その認定を受けた地方公共団体の長が所 管(構造改革特別区域法第12条・13条) ※特区内では、学校教育法の特例として、私立学 校と同じ位置づけとなっている 32 構造改革特別区域法に基づき認定を受けた地方 公共団体では、社会教育施設の物的管理(管理、 整備)に関する権限のみを、首長が管理・執行で きる。 ※平成21年に法改正。学校については平成19年 から導入。(構造改革特別区域法第29条) ※平成21年11月構造改革特別区域計画認定 岩手県遠野市 33 8.文部科学大臣と教育委員会相互間 の関係等 34 【大臣又は都道府県教育委員会の指導等】(48条1項) 教育に関する事務の適正な処理を図るため、 必要な指導、助言又は援助を行うことができる 指導・助言・援助 文部科学大臣 都道府県 都道府県 教育委員会 市町村 35 【大臣による指導等に関する指示】(48条3項) 都道府県教育委員会に対し、市町村に対する 指導・助言・援助に関し、必要な指示ができる 文部科学大臣 下記の指導等に関し必要な指示 都道府県 教育委員会 指導・助言・援助 市町村 36 【指導等の要求】(48条4項) 教育事務の適正処理を図るため、必要な指導・ 助言・援助を求めることができる 文部科学 大臣 都道府県 教育委員 会 指導・助言・援助の要求 知事 都道府県 教育委員会 市町村長 市町村 教育委員会 37 【指導等の例示】(第48条第2項) 教育機関の設置・管理・整備に関し、指導・助言 を与えること 社会教育の振興に関し、指導・助言を与えること 社会教育主事その他の職員を派遣すること 教育に係る調査・統計・広報、教育行政に関す る相談に関し、指導・助言を与えること 教育委員会の組織・運営に関し、指導・助言を 与えること など 38 【大臣による是正の要求】(第49条) 都道府県・市町村教育委員会に対して、違反の是正・ 改善のための具体的な内容を明示して必要な措置を 講ずべきことを求めることができる。 (要件) ①事務の処理が法令の規定に違反 又は事務の管理・執行を行っており、 ②教育を受ける権利を侵害されていることが明らか 39 【大臣による指示】(第50条) 都道府県・市町村教育委員会に対して、当該違反を 是正し、又は当該怠る事務の管理及び執行を改める べきことを指示することができる。 (作為又は不作為の義務を課すことが可能) (要件) ①事務の処理が法令の規定に違反 又は事務の管理・執行を行っており、 ②生徒等の生命、身体の保護のため、緊急の必要 がある場合で、 ③他の措置によっては是正を図ることが困難な場合 40 【大臣と教育委員会相互間の関係】 (第51条) 文部科学大臣 • 都道府県教育委員会又は市町村教育委員会の 相互間の連絡調整を図る 都道府県教育委員会 • 市町村教育委員会の相互間の連絡調整を図る 教育委員会(都道府県・市町村) • 相互の連絡を密にする • 文部科学大臣又は他の教育委員会と協力 など 41 【大臣又は教育委員会による調査】 (第53条第1項) 調査 文部科学大臣 都道府県 教育委員会 地方公共団体の 長の管理・執行す る教育事務 教育委員会の管 理・執行する教育 事務 42 【大臣による調査に関する指示】(第53条第2項) 都道府県教育委員会に対し、市町村長又は市 町村教育委員会の管理・執行する教育事務に ついて、特に指定する事項の調査を行うよう指 示することができる 文部科学大臣 指示 都道府県 教育委員会 調査 市町村長又は 市町村教育委 員会の 管理・執行す る教育事務 43 【大臣又は都道府県教育委員会の資料・ 報告提出要求】(第54条第2項) 都道府県又は市町村の区域内の教育事務に関し、必 要な調査・統計その他の資料又は報告の提出を求め ることができる 提出要求 知事 文部科学 都道府県 大臣 教育委員会 都道府県 教育委員 会 市町村長 市町村 教育委員会 44 Ⅲ 教育委員会制度に関する指摘 45 ◆過去の指摘 参考資料参照 ◆教育再生実行会議「教育委員会制度等の在り方について (第二次提言)」(平成25年4月15日) 1.地方教育行政の権限と責任を明確にし、全国どこでも責任 ある体制を築く 2.責任ある教育が行われるよう、国、都道府県、市町村の役割 を明確にし、権限の見直しを行う 46 中央教育審議会「今後の地方教育行政の在り方について (諮問)」(平成25年4月25日) 1.教育委員会制度の在り方について 2.教育行政における国、都道府県、市町村の役割分担と各々の 関係の在り方について 3.学校と教育行政,保護者・地域住民との関係の在り方について ⇒中央教育審議会答申(平成25年12月13日) 新しい教育委員会制度の方向性 ・事務執行の責任者は教育長。首長が定める大綱的な方針に 基づいて,事務を執行 ・教育委員会は地域のあるべき姿や基本方針について審議し, 教育長による事務執行を住民目線でチェック 47 出典:文部科学省HP(http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2014/07/02/1349283_04.pdf)[引用日2014-11-8] ○社会教育行政の所管問題 -教育委員会?首長部局?- ・首長部局の多様な行政分野との連携の必要性、 総合行政への要望(全国市長会) ・政治的中立性の課題 中教審答申「今後の地方教育行政の在り方について」 (平成25年12月) ・・・「教育の政治的中立性や、継続性・安全性の確保 が求められる、学校教育や社会教育は、教育行政 部局が担当するものとして存置すべき」 地方教育行政の組織及び運営に関する法律 (教育機関の設置) 地方公共団体は、法律で定めるところにより、学校、 図書館、博物館、公民館その他の教育機関を設置 (第30条) (教育機関の所管) 学校その他の教育機関のうち、大学は地方公共 団体の長が、その他のものは教育委員会が所管 (第32条) 文化・スポーツは首長へ移管可(学校の体育、文 化財保護は除く)(第24条の2) 50 出典:文部科学省HP(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo2/007/houkoku/1340561.htm)[引用日2014-11-8] ○現場における課題 ・「自前主義」から「ネットワーク行政」へ 総合教育会議をいかに活用して連携して 地域課題に取り組むか ・法改正による首長部局の権限強化への懸念、 一方で図書館行政を首長部局が扱うケース も(補助執行、同種施設等)
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