シンポジウムプレゼン

「保育園を増やせ」はなぜ間違いか?
~政治がなすべき『保育産業革命』~
NPO法人フローレンス代表 駒崎弘樹
問題意識
ベビーシッターの母親から
こどものせいで仕事をやめざるを得ない親がいる
自分のこどもの頃は
団地のおばちゃんが母代わり
病児保育とは
定義
風邪や発熱など軽度の突発的な状況(そんな時は保育
園が預かってくれない)で子どもを預かり、ケアすること
フローレンス理事の小坂クリニッ
ク内の病児保育ルーム風景
病児保育の実態①ニーズの高さ
出所:インターネット総合調査(マクロミル)2002年
仕事と育児の両立で最も悩むことは?
子どもの病気で遅刻や欠勤をすることがあり
周囲に迷惑をかけてしまう
自分の時間が持てない
63%
子どもと過ごす時間が少ない
59%
子どもが病気の時でも他人に預けなければならない
37%
残業ができない
35%
残業で子どもを迎えにいくのが遅れる
21%
重要な仕事を任せてもらえない
その他
特にない
19%
4%
3%
病児保育
72%
病児保育の実態①ニーズの高さ
出所:野村総研2006年
必要性を感じている育児支援制度は何ですか?
こどもの看護休暇(有給)
配偶者出産休暇(有給)
出産奨励金の増額
育休取得前に所属長と面談、個別事情に配慮
フレックスタイム制
育児サービス利用料の援助措置
84%
こどもの看護休暇
83%
86%
79%
78%
77%
70%
一年を超える育児休業の取得
68%
男性の育児休業の取得
67%
在宅勤務制度
64%
休業中は電子メディアで情報交換、復帰を支援
事業内託児施設
64%
59%
病児保育の実態①ニーズの高さ
出所:厚生労働省2000年
保育園に子どもを預けていて不満に思うこと
病気のときも預かって欲しい
休日や祝日に預かって欲しい
夜遅くまで預かって欲しい
保護者も参加できる行事を
増やして欲しい
病児保育
33%
数が少ない
全国に約845だけ(03年当時は
500程度)
保育所全体の約2%と圧倒的に
少ない
なぜ増えない
それはなぜか?
経済的に自立できない
結果として
新規参入できない・広がらない
なぜ経済的に自立できないか?
補助金をもらうと価格決定の自由が奪われ、
さらに補助金自体も小額(補助金のジレンマ)
こどもレスキューネットモデル図
フローレンス
大変!!
こどもが熱を出したわ!
大変!!
こどもが熱を出した
わ!
②対応可能な最寄のこども
レスキュー隊員に連絡
①連絡
子どもが熱をだして
困っている父母
③顧客のもとに
駆けつける
④小児科に搬送
し、受診
こどもレスキュー隊
提携タクシー会社
医療的指示
提携小児科医
⑤子育て経験者の自宅
でのお預かりにバトン
タッチ
かかりつけ小児科医
利用会員様
ご自宅
こどもレスキュー
隊員宅
病児保育室
こどもレスキュー隊
共済型モデル
問題意識
1時間いくら、では相当高額でなければ成り立たない
安定的な収入のためには
発病率に応じた月会費を掛け捨て
レスキュー(病児保育)時には無料
なぜ経済的に自立できないか?
使わなければ月会費が下がり、使えば上がる自動車保険方
式
水平展開
05年度 2区でサービスイン
06年度 12区に展開
07年度 対企業向けに展開
2008年10月
エリア拡大!(4区)
利用可能エリア17区に!
2008年12月
東京都23区にエリア拡大!
ソーシャルイノベーションを水平展開!
全国初!
ひとり親家庭を病児保育で支える
個人寄付会員募集をスタート!
2003年から病児保育に取り組んできたフローレンスは、2008年より新たに継続的
なひとり親支援を可能にするための個人寄付会員の募集を開始いたします。
現在、フローレンスは、民間企業様からの寄付を活用し、病児保育を必要としなが
らも、経済的な理由でサービスを受けられずにいるひとり親家庭向けに、超低価格
で病児保育サービスを提供しています。
これまで、企業様からの寄付を財源とすることで、継続的な支援が出来ないという
問題がありましたが、今後は、個人からの安定的な寄付を財源とすることで、継続
的なひとり親支援を目指します。
企業様からの寄付が
途絶えると支援も断念
お申込みはWebで簡単!
まずはホームページへ
http://www.florence.or.jp/
子どもが
病気になることが
ひたすら怖いです…
(江東区38歳)
ひとり親が
配慮されることは
ありません。逆に
ひとり親ゆえに
休みにくいものです。
(江東区29歳)
たくさんの個人からの寄付が
継続的な支援を可能にします
重要な
仕事のときに限って
子どもや親の緊張を
感じ取って体調を
崩しちゃうんです…
(渋谷区36歳)
投薬などで
熱を下げて
子どもを
登園させるのは
心が痛いです…
(江東区38歳)
NPO法人フローレンスのVISIONとアクション
《 フローレンスのVISION 》
子育てと仕事そして自己実現のすべてに誰もが挑戦できるしなやかで躍動的な社会
≪現状の問題≫
①
悩む!
ワーキングペアレンツ
≪フローレンスのアクション≫
地域の力で解決しよう!
病児保育事業
●フローレンスのメイン事業です。
●特徴は、非施設型/保険型。
②
(こどもの病気でも)休めない会社
長時間労働の働き方
働き方を変えちゃおう!
働き方革命事業
③
仕事と育児の両立が難しい
社会
社会のノリを変えちゃおう!
伝える変える事業
仕事と育児の両立で悩むことは「病児保育」と答える
人が72.2%と圧倒的な1位であるにも関わらず、病児
保育を扱う保育所は、全国に500箇所(保育所全体の
わずか2%)と非常に少ないのが現状です。フローレン
スは、この病児保育問題を独自のモデルで解決し、
ワーキングペアレンツの新しいライフラインとして確立
していきます。
2005年4月の事業開始(江東区・中央区)後、現在
東京都23区内全域へサービス展開しています。
次世代法(2003年7月施行次世代育成支援対策推進
法)に代表されるように、働き方そのものの見直しが迫
られています。フローレンスでは、病児保育問題の背
景にある就労環境の改善のため、法人向けのコンサ
ルティング業務を行います。
次世代法対策の行動計画立案をはじめとして、「経営
戦略としてのワークライフバランス創造」をサポートい
たします。
「病児保育」という言葉を「待機児童」と同じくらいメ
ジャーな言葉に!を合言葉に、コンセプト発信をしてい
きます。言葉がメジャーになれば、社会問題としての
認識・理解が深まり、大きな変化へのムーブメントが起
きてきます。
フローレンスは、認知拡大に留まらず、病児保育を両
立支援のためのポジティブなメッセージとして発信し、
仕事と育児が当たり前の社会へ、誰もが「次の一歩」
に挑戦できる社会へ、一歩づつ歩みを進めていきます。
待機児童問題をい
かに解決すべきか
認可保育園をたく
さん作ろう
家庭的保育市場を
創ろう
認可保育園の問題点
1. 公費コストが高い
2. 土地のない都心部で作りづらい
・だが待機児童の約8割は主要都市に集中
・「作れるところに作る」のでミスマッチが発
生
例)横浜市は09年
定員割れ(1503人)>待機児童(1209人)
・商業ビルはあっても「用途変更」可能な物件
は少ない
3. 撤退コストが高い(=人口動態変化に機動的に
適応できない)
イギリスでは
チャイルドマインダー
Child Minder
•チャイルドマイン
ダー7万5000人(こ
ども22.5万人相当)
が全英で活動
•認可保育所(30人定
員)7000個相当
出生率2.0に回復したフランスでは
認定保育ママ
Assistante Maternelle
保育所で預かるこど
もの数が13万人。保育
ママが預かるこどもの
数が50万人と圧倒的に
利用されている
認定保育ママ数34万
人(日本は07年度で
993人)
保育需要の70%が認
定保育ママによって担
われている
日本でも保育ママはあるけれど・・・
自治体
自分が休んだらサー
ビスが止まって親が
困る!!
委託・謝礼
保育ママ
1人で保育
こども
就業条件が厳しく保育ママが増えない!
新型保育ママ「おうち保育園」の制度内容
事業者委託
保育者は2~4
名
場所は自由
送迎可能
• 既存の保育ママのように保育者との直接契約ではなく、事
業者契約によって、保育者が休んだ場合においても代替要
員を手配できる
• 保育ママが休めるようになり、就業のハードルが下がる
• 1人1室を使って3人までお預かり
• 1:3の手厚い保育で、かつ助け合える複数人数制
• 事業者がマンションの一室を借り、そこを保育スペースに
することが可能
• 送迎バスなどの利用も可能
• 近隣だけでなく、広域の待機児童が解消できる
おうち保育園モデル図
こどもが保育園に
入れなかったわ
おうち保育園
(保育者の自宅も
しくは借り上げたマンション)
通園
副主任
保育者
主任保育者
待機児童家庭
こども(4人~10人)
搬送通園
イベント参加等連携
送迎バス
保育所
遠方の待機児童家庭
おうち保育園
にはちょっと遠いわ
近隣保育園
待機児童解消に貢献!
江東区豊洲エリアを選定
地域
待機児童数
(09年4月1
日時点)
豊洲
91人
亀戸
55人
大島
33人
砂町
32人
南砂
32人
冨岡
25人
UR都市機構の東雲キャナルコート
【施設名称】 おうち保育園
【開園時間】 平日(月~土) 8時~18時
【休園日】 日曜日・国民の祝日・年末年始(12/29~1/3)
【保育定員】 9名(対象年齢 1歳~2歳)
※入所審査は入所時の年齢を基準におこないます
おうち保育園を創設する社会的メリット
待機児童解消
• 待機児童がいる地域に機動的に設置できるた
め、待機児童解消に大きく貢献
• 人口動態に合わせて待機児童吸収
質の高い保育実現
• 1:3の手厚い保育が可能に
• 対象は主に0~2歳児なので設備よりも人が重
要な保育ファクターに
認可保育所設置より
も格段に安いコスト
• まず初期コストがほとんどかからない
• 運営コストも、家賃・水光熱費が削減されるため、
認可保育所よりも大きくコスト削減になる
• 人口動態変化後の撤退コストも低い
中小事業者も参入し
雇用創出
• 初期投資がかからないため、中小事業者でも参入
が可能に
• おうち保育園で実績を積み、認可保育所の担い手
としても育成される
空き家を保育園化さ
せることができ
• 総務省統計によると全国の住宅5759万戸の
13%は空き家
• http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/topics/topi444.htm
供給を増やした後は?
保育産業を創ろう
そもそも保育園って
 元々保育園は「第二次大戦で父親を失った戦争未亡人
が働くために子どもを預かる施設」=完全に福祉
 しかし共働き世帯が当たり前のものになり、96年に専
業主婦世帯を逆転。今後は専業主婦世帯がマイナーな
ものに。
出典: http://www.asahi.com/diversity/data/
 福祉から「社会サービス」に
 しかし供給体制は未だに「配給制」(役所がどこに出
店するかを1年に1回決め、事業者を公募。利用者は役
所に申請を出し、役所から保育園を割り当てられる)
 なおかつ認可保育園への参入をほぼ「社会福祉法人」
だけに限っている(株式会社参入は2%程度)
 これでは需給マッチングが最適化されない
(ゆえに横浜市のように定員割れ>待機児童)
 待機児童問題の本質は、この「保育社会主義」にある
じゃあどうしたら良い?
1. 資源の最適配分装置(=市場)を使おう
2. 市場化すると、需要のあるところに保育所が集まり、
需要のないところから保育所は撤退していくので、待
機児童は解消される
3. でも市場化すると「お金がない人は保育園に預けられ
ない(涙)」ようになる。(全て私費のお医者さん)
4. ゆえに、社会主義と市場の合いの子「準市場」を導入
しよう
5. 「準市場」=公的資金を注入した市場。利用者は直接
契約を行うが、全額負担ではなく、税や保険料を原資
にした補助があり、所得に応じた負担となる
1. 例えば介護保険市場・医療保険市場
2. 準市場化のための代表ツールが「バウチャー(使途
特定金)」 例)フードスタンプ
日本で準市場を実現するには?
~待機児童問題解決の5つのステップ~
1. こども手当の一部をバウチャーに
 バウチャーは認可保育園制度から排除されてきた認
可外保育施設に使えるように(イコールフッティン
グに近づく)
2. 認可外保育施設の参入が増加。認可保育所に出してい
る補助金を徐々にバウチャー化
3. 同時に保育所の配給制を「直接契約」に
4. 同時に認可制を廃止。届け出制にして、事後チェック
体制を充実
 小規模から大規模など、多様な形態を許容
5. 新規出店の際の設備投資貸付や、廃業時の園児救済ス
キーム等、法整備を行う
議員の皆様へのお願い事
1. おうち保育園の有効性は私達が具体的に実証し
ます
2. ぜひ皆様の区の待機児童集中エリアにピンポイ
ントで展開しますので、お声掛け下さい
3. 同時に保育社会主義を打破するための、「こど
も手当の一部バウチャー化」に御協力下さい
4. 国会議員の方は国会で質問を、地方議員の方は
役所に「うちはバウチャーやらないの?」と聞
いてみて下さい
5. 一般の方はブログやTwitterで「こども手当はバ
ラマキだ」という意見に対して「バウチャーに
すりゃ良いのさ」と説いていって下さい(笑
出典
●「フランスでは保育所で預かる子どもより、保育ママが見ている子どもの方が4倍近く多い」
平成17年度 少子化社会白書より
http://www8.cao.go.jp/shoushi/whitepaper/w-2005/17WebHonpen/index.html
●「待機児童日本一の市である横浜市では、待機児童よりも定員割れが多い」
2009年9月25日 神奈川新聞記事より
●「こども手当の一部をバウチャーに。わらしべ金について」
http://www5.cao.go.jp/entaku/shiryou/22n5kai/pdf/100409_02.pdf
●今後の方向性としての「指定制」
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/10/dl/s1030-11a.pdf
●株式会社の参入はたった2%
2010年2月16日 週刊ダイヤモンド
http://diamond.jp/articles/-/4854
●日本の保育ママはたったの993人
日本経済新聞 2009年1月30日付 夕刊
http://taa203.blog86.fc2.com/blog-entry-183.html
●東京23区待機児童ランキング
http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2009/07/DATA/60j7f100.pdf
補足資料
プレゼンはここまで。
以下は補足資料のみ
です。
第1章 待機児童って何
2.待機児童の増加
特に待機児童は0~2歳の低年齢児になればなるほど多く、特に1・2歳児が多い。母親の育児
休業の終了及び職場復帰のタイミングが早まっていることと、保育所における低年齢児の定員
の少なさが大きな理由である。
待機児童は低年齢児になればなるほど多い
21年利用児童数(%) 21年待機児童数(%)
低年齢児(0~2歳)
709,399人(34.8%)
20,796人(81.9%)
うち0歳児
92,606人(4.5%)
3,304人(13.0%)
うち1・2歳児
616,793人(30.2%)
17,492人(68.9%)
3歳以上児
1,331,575人(65.2%)
4,588人(18.1%)
全年齢児計
2,040,974人(100.0%)
25,384人 (100.0%)
出所:厚生労働省
第1章 待機児童って何
2.待機児童の増加
また、待機児童は都心に集中している。主要7都道府県、指定都市、中核市だけで全体の80.
6%を占めている。
7都府県・指定都市・中核市
その他の道県
全国計
利用児童数(%)
待機児童数(%)
1,052,617人(51.6%) 20,454人(80.6%)
988,357人(48.4%)
4,930人(19.4%)
2,040,974人(100.0%) 25,384人(100.0%)
●待機児童比率の高い都道府県
宮城県、東京都、神奈川県、沖縄県
●待機児童比率の高い都市
仙台市、横浜市、川崎市、旭川市、秋田市、川越市、
相模原市、東大阪市、西宮市、鹿児島市
●待機児童数の増加が著しい都道府県
茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県
●待機児童比率の高い都市
札幌市、横浜市、川崎市、名古屋市、福岡市、相模原
市、鹿児島市
出所:厚生労働省
待機児童数 待機児童 待機児童数 待機児童数 政令指定都市
待機児童数 待機児童 待機児童 待機児童
保育所数 定員 利用児童数
数
数
2009
比率
2008
増減
2009
比率
中核市
人
%
人
人
か所
人
人
人
% 2008 人 増減 人
535
40,083
34,187
58
0.2%
38
20 48
193
17,385
18,188
402
2.2%
271
131
1 北海道
札幌市
384
26,391
25,363
13
0.1%
25
-12 49
117
10,764
11,597
620
5.3%
740
-120
2 青森県
仙台市
291
20,662
20,022
62
0.3%
46
16 50 さいたま市
120
10,503
10,922
177
1.6%
219
-42
3 岩手県
215
16,074
15,521
511
3.3%
530
-19 51
99
10,313
10,911
318
2.9%
335
-17
4 宮城県
千葉市
197
17,586
16,789
106
0.6%
59
47 52
420
36,871
36,652
1,290
3.5%
707
583
5 秋田県
横浜市
234
20,142
19,534
220
1.1%
211
9 53
144
13,605
14,425
713
4.9%
583
130
6 山形県
川崎市
214
17,506
16,762
192
1.1%
178
14 54
203
17,950
18,048
0
0.0%
0
0
7 福島県
新潟市
475
42,648
41,943
396
0.9%
284
112 55
105
11,505
11,064
28
0.3%
22
6
8 茨城県
静岡市
278
23,175
22,716
43
0.2%
36
7 56
84
8,155
8,631
134
1.6%
95
39
9 栃木県
浜松市
364
34,850
35,993
28
0.1%
31
-3 57 名古屋市
284
32,858
31,869
595
1.9%
428
167
10 群馬県
740
64,021
63,869
1,159
1.8%
889
270 58
254
24,400
25,911
180
0.7%
99
81
11 埼玉県
京都市
534
52,016
48,509
759
1.6%
531
228 59
359
41,296
40,836
608
1.5%
696
-88
12 千葉県
大阪市
1,705 169,184
167,938
7,939
4.7%
5,479
2460 60
97
11,763
12,802
345
2.7%
311
34
13 東京都
堺市
290
28,375
28,798
755
2.6%
476
279 61
191
18,908
19,228
483
2.5%
487
-4
14 神奈川県
神戸市
494
42,737
37,425
4
0.0%
11
-7 62
113
12,857
13,100
0
0.0%
0
15 新潟県
岡山市
223
20,595
18,749
0
0.0%
0
0 63
161
20,705
19,974
90
0.5%
37
53
16 富山県
広島市
259
27,294
23,309
0
0.0%
0
0 64 北九州市
157
15,814
15,270
0
0.0%
0
0
17 石川県
272
25,050
23,796
0
0.0%
0
0 65
172
23,755
25,049
473
1.9%
303
170
18 福井県
福岡市
238
21,208
19,241
0
0.0%
0
0 政令指定都市計
3,273 339,407
344,477
6,456
1.9%
5,333
1123
19 山梨県
514
51,963
43,581
0
0.0%
0
0 66
54
4,034
4,472
222
5.0%
223
-1
20 長野県
旭川市
385
40,557
34,342
3
0.0%
3
0 67
49
3,820
3,344
0
0.0%
0
0
21 岐阜県
函館市
319
31,305
30,197
202
0.7%
193
9 68
87
5,680
6,068
15
0.2%
9
6
22 静岡県
青森市
732
91,467
76,072
162
0.2%
100
62 69
52
4,835
5,009
33
0.7%
29
4
23 愛知県
盛岡市
429
39,786
36,049
73
0.2%
43
30 70
45
3,910
3,952
155
3.9%
122
33
24 三重県
秋田市
203
20,894
19,624
316
1.6%
262
54 71
38
3,060
3,350
0
0.0%
0
0
25 滋賀県
郡山市
233
25,406
22,891
98
0.4%
46
52 72 いわき市
62
5,830
5,399
0
0.0%
0
0
26 京都府
620
65,996
66,701
447
0.7%
362
85
71
6,225
6,746
33
0.5%
40
-7
27 大阪府
73 宇都宮市
464
38,950
37,522
168
0.4%
117
51 74
58
5,595
5,630
0
0.0%
#VALUE!
28 兵庫県
前橋市
147
17,486
15,568
50
0.3%
80
-30 75
33
2,655
2,735
173
6.3%
108
65
29 奈良県
川越市
165
16,439
12,919
22
0.2%
7
15 76
59
6,819
7,133
94
1.3%
51
43
30 和歌山県
船橋市
193
16,960
15,725
0
0.0%
0
0 77
33
3,726
3,693
122
3.3%
43
79
31 鳥取県
柏市
275
19,575
19,294
97
0.5%
73
24 78 横須賀市
40
3,690
3,794
48
1.3%
61
-13
32 島根県
196
16,205
15,144
55
0.4%
41
14 79 相模原市
67
7,558
7,762
439
5.7%
305
134
33 岡山県
320
25,874
22,003
23
0.1%
10
13 80
86
10,035
9,458
0
0.0%
0
0
34 広島県
富山市
253
20,360
18,849
13
0.1%
7
6 81
111
11,250
11,237
0
0.0%
0
0
35 山口県
金沢市
214
15,765
13,580
30
0.2%
30
0 82
86
8,375
7,899
0
0.0%
0
0
36 徳島県
長野市
134
12,390
10,967
0
0.0%
0
0 83
48
5,285
4,585
0
0.0%
0
0
37 香川県
岐阜市
263
20,297
17,009
0
0.0%
0
0 84
55
8,320
8,391
0
0.0%
0
0
38 愛媛県
豊橋市
181
12,860
10,146
0
0.0%
0
0 85
59
8,810
5,601
21
0.4%
16
5
39 高知県
豊田市
482
46,552
45,061
169
0.4%
72
97 86
53
7,565
6,405
0
0.0%
0
0
40 福岡県
岡崎市
216
19,855
19,341
0
0.0%
0
0 87
44
4,728
5,096
95
1.9%
#VALUE!
41 佐賀県
大津市
334
23,125
22,086
24
0.1%
15
9 88
38
4,130
4,520
78
1.7%
76
2
42 長崎県
高槻市
450
31,840
31,738
86
0.3%
98
-12 89 東大阪市
58
6,206
6,831
246
3.6%
156
90
43 熊本県
216
14,245
13,833
0
0.0%
0
0 90
85
9,797
9,506
26
0.3%
32
-6
44 大分県
姫路市
289
19,306
18,635
0
0.0%
0
0 91
49
4,290
4,822
223
4.6%
134
89
45 宮崎県
西宮市
361
22,754
23,157
84
0.4%
72
12 92
81
6,084
6,054
5
0.1%
126
-121
46 鹿児島県
尼崎市
369
29,888
32,087
1,888
5.9%
1,808
80 93
44
5,825
4,844
65
1.3%
0
65
47 沖縄県
奈良市
都道府県計
16,899 1,517,697
1,424,585
16,255
1.1%
12,263
3992 94 和歌山市
59
7,135
6,105
0
0.0%
0
0
87
9,935
10,338
41
0.4%
24
17
95 倉敷市
119
11,431
11,056
0
0.0%
0
0
96 福山市
56
5,275
4,875
10
0.2%
16
-6
97 下関市
73
8,124
8,094
0
0.0%
0
0
98 高松市
60
5,675
5,675
45
0.8%
47
-2
99 松山市
86
9,305
8,993
43
0.5%
55
-12
100 高知市
66
7,180
6,760
2
0.0%
4
-2
101 久留米市
*都道府県の数値には、政令指定都市・中核市は含まず。
99
7,905
7,858
70
0.9%
74
-4
102 長崎市
135
12,760
13,402
7
0.1%
6
1
103 熊本市
64
6,096
6,559
3
0.0%
1
2
104 大分市
110
8,045
8,976
0
0.0%
0
0
105 宮崎市
94
7,974
8,885
359
4.0%
196
163
106 鹿児島市
中核市計
2,753 274,977
271,912
2,673
1.0%
1,954
719
合 計
22,925 2,132,081
2,040,974
25,384
1.2%
19,550
5,834
都道府県
保育所数
か所
定員
人
利用児童数
人
第1章 待機児童って何
2.待機児童の増加
そして、待機児童は公の数字だけではない。「潜在的待機児童」というものが存在している。厚生
労働省が行ったアンケート調査によれば、無認可保育所の利用者を含め、この数は何と全国で
約85万人も存在する。
●2009年4月8日付 朝日新聞記事より
~「保育所使いたい」 潜在待機児童85万人 厚労省調査~
0~6歳の子どもがいて、現在は認可保育所を利用していないが、受け入れ先があれば預けたいと考えている家庭が推
計で約85万世帯に上ることが、厚生労働省の調査などで分かった。こうした潜在的ニーズを満たすには約85万人分
の認可保育所を新たに整備する必要がある。不況で働きに出たいと考えている親が増えており、今後、保育所不足は深
刻化しそうだ。
昨年8月に全国103自治体の就学前児童がいる世帯にアンケートし、約12万2600世帯が回答した。
0~2歳の子どもがいる家庭で、現在は認可保育所を利用していないが、「1年以内に働き始め、子どもを認可保育
所に預けたい」などと考えている世帯は約2割あった。
現在の児童数から潜在的ニーズを推計すると、0~2歳の認可保育所の利用希望人数は約59万人になる。
同様に、3~6歳の子どもがいる家庭の希望人数は、約26万人となる計算だ。
認可保育所に入れない待機児童は都市部を中心に約4万人(08年10月)。低年齢ほど見つけにくく、待機児童の
約8割は0~2歳だ。
不況で、親が働きに出始めており待機児童も増えている。東京都世田谷区では今年4月に認可保育所に入れなかった
児童は1554人と前年より420人増えた。区保育課は「育児休業後に職場に復帰する母親や、家計を支えるために
働きに出る母親が増えていることが影響しているのではないか」と話す。
認可保育所に入れない場合、無認可保育所など認可外施設などを利用していると見られる。認可保育所の保育料は自
治体や親の所得によって異なるが、国が示す基準額は月額0~8万円(3歳未満)。東京都の場合、市町村独自の補助
制度もあり月額平均約1万7千円。一方、認可外施設は公費補助が少ないか、まったくないため保育料は割高だ。
政府は昨年2月、「新待機児童ゼロ作戦」を策定。既存の労働力調査などをもとに推計した潜在ニーズを満たすため、
保育所などの受け入れ児童数を17年までに100万人増やす目標を掲げている。(高橋福子)
第1章 待機児童って何
3.待機児童が社会にもたらす影響
待機児童が増加すると、潜在的失業者が増加する。これは、世帯年収が上がらず、消費の低迷
にも結びつく。また、雇用問題にも大きな影響を及ぼし、労働力が低下する。結果的に経済活動
に大きな問題が出る。さらに、仕事と子育ての両立に対する不安が生まれ、少子化を進行させる
原因にもなる。
待機児童の増加
家庭経済の悪化
労働人口の減少
潜在的失業者増加
消費の低迷
経済の弱体化
少子化進行
第1章 待機児童って何
【第1章】 サマリー
 “認可保育所に希望しても入れない子ども”を待機児童と言うが、定義が変更させ、
この中でも他の保育サービスを利用している場合は待機児童とみなされないことに
なった。
 少子化の影響で子どもの数は減少傾向にあるが、待機児童数は不況の影響及び女性の
就労意識の高まりによって、増加傾向にある。
 特に低年齢児(0~2歳)の待機児童が全体の8割以上であり、就園時期の早期化、職
場復帰の早期化が顕著となっている。
 また、待機児童は都心に集中している。主要7都道府県、指定都市、中核市だけで全
体の80.6%を占めている。
 しかし、公になっている待機児童と実際に保育所利用を望む世帯の数には大きな開き
があり、潜在的待機児童数は85万人にも上ると言われていることから、待機児童の
短期的な解消の可能性は極めて低い。
 そして、これらの待機児童の増加が社会にもたらす影響は非常に大きく、家庭経済の
悪化、労働人口の減少、さらには少子化の進行をも促す。その結果、マクロ的に見れ
ば、消費の低迷や経済の弱体化にも影響をもたらすこととなる。
これらのことを踏まえて、待機児童問題の解消を実現させていかなければならないが、
それにあたっての障害や障壁も存在する。2章ではその辺りを中心に話を進めていく。
第2章 保育所が足りないって本
当?
1.保育所の数
過去5年間を見ると、平成17年~19年にかけては約120~150箇所増えていた。それによっ
て、待機児童推移と照らし合わせても徐々に待機児童は減少していた。しかし、それ以降は鈍化
している。平成20年~21年にかけては16箇所しか増えていないのである。定員も約1,200名
程度しか増えておらず、待機児童解消には程遠い状況なのである。
平成20年
平成21年
うち公立
うち私立
保育所数
22,909
22,925
11,008
11,917
定員
2,120,889人
2,132,081人
1,025,938人
1,106,143人
利用児童数 定員充足率
2,022,173人
95.30%
2,040,974人
95.70%
901,141人
87.80%
1,139,833人
103.00%
出所:厚生労働省
第2章 保育所が足りないって本
当?
1.保育所の数
また、実際に定員充足率は現在95%と、待機児童が増加しているにもかかわらず、100%に満
たない状況である。特に公立では87.8%と数値は低い。
平成20年
平成21年
うち公立
うち私立
保育所数
22,909
22,925
11,008
11,917
定員
2,120,889人
2,132,081人
1,025,938人
1,106,143人
利用児童数 定員充足率
2,022,173人
95.30%
2,040,974人
95.70%
901,141人
87.80%
1,139,833人
103.00%
出所:厚生労働省
第2章 保育所が足りないって本
当?
2.横浜市の事例
しかし、都心でも奇怪な現象が起きている。日本一の待機児童都市である横浜市でも一部で定
員割れが起き始めている。
●2009年9月25日 神奈川新聞記事より ~定員割れ、保育所の待機児童数上回る/横浜市~
今春の保育所待機児童数が全国の政令市で最大となった横浜市で、同時期の市内の保育所の定員割れが待機児童数を上回
る数に達していたことが、24日までに分かった。駅から遠いなどの立地条件の悪さが原因。ただ、待機児童ゼロを可能にする「受
け皿」自体はこの時点で整っていたとの見方も可能で、今後、定員割れ対策が大きな課題として浮上しそうだ。
市の4月1日現在の保育所待機児童数は前年比583人増で過去最大の1290人。前年度1年間で18カ所の保育所を新設す
るなどして1289人の定員増を図ったが、入所希望者が急増し、追いつかなかった。
一方、同時期の保育所の定員割れは、市立保育所52カ所、民間保育所133カ所合わせて計1503人で、待機児童数を超えて
いた。市こども青少年局は「駅から遠い保育所が、出勤前に子どもを預ける保護者に敬遠される傾向にある」と分析。市側が用
意した受け皿と保護者が望む利便性との間にミスマッチがあったことが、その原因とみている。
保育所の定員割れは、今春だけの出来事ではない。市がデータを把握しているだけでも2007年に1943人、08年には2656
人(いずれも4月1日時点)ずつ発生。この問題は開会中の横浜市会常任委員会でも取り上げられ、自民党や公明党などから
「単純計算すれば今春の待機児童数はゼロになっていた。保護者への説明を丁寧にするなどもっと工夫ができないのか」「定員
割れの問題を把握していながらなぜもっと早く手を打たなかったのか」などと、市の対応を疑問視する意見も相次いでいる。
これに対して市こども青少年局は、(1)通園バスを購入する保育所への補助新設(2)複数の保育所と駅をつなぐ通園バスの送迎
ステーションの設置―などの対策を示し、定員割れをなくす努力を進めるとの方針を示している。
ただ、通園バスの活用も、バスの運転手の人件費などは保育所側の持ち出しとなるため、実際に保育所を運営する関係者から
はその効果を疑問視する声も上がる。さらに、定員割れ対策には、何歳児の定員が何人満たないのかといった保育所ごとの詳
細な分析が不可欠な上、人材不足が常態化している保育士の確保といった難題もあり、利用者側から「選ばれる保育所」の整備
の難しさが、あらためて浮き彫りとなった形だ。
第2章 保育所が足りないって本
当?
3.地方の定員割れ
多くの都道府県、市町村では利用児童数は増加傾向にあるが、全てがそのような状態ではない。
全てのエリアで待機児童の増加、利用者の増加が起こっているわけではない。
■利用児童数減少都道府県ランキング
都道府県
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
利用児童数の増減
長野県
-843
愛知県
-587
青森県
-532
岐阜県
-432
三重県
-317
北海道
-275
高知県
-229
愛媛県
-225
富山県
-187
山梨県
-162
滋賀県
-138
大分県
-84
香川県
-75
徳島県
-10
秋田県
-9
都道府県計
8,185
*注1 利用児童数は、雇用均等・児童家庭局 保育課 調
*注2 都道府県の数値には、政令指定都市・中核市は含まず
*注3 市区町村の総数は1,800(平成21年4月1日現在)。
■利用児童数減少都市ランキング
政令指定都市・中核都市
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
長野市
豊橋市
姫路市
高知市
函館市
青森市
岡崎市
前橋市
静岡市
長崎市
岐阜市
和歌山市
東大阪市
北九州市
合計
利用人口減少数
-176
-153
-136
-55
-53
-48
-38
-25
-23
-12
-11
-11
-10
-7
18,801
出所:厚生労働省
第2章 保育所が足りないって本
当?
【第2章】 サマリー
 過去5年間を見ると、平成17年~19年にかけては約120~150箇所増えてい
た。それによって、待機児童推移と照らし合わせても徐々に待機児童は減少していた。
しかし、それ以降は鈍化している。平成20年~21年にかけては16箇所しか増え
ていないのである。定員も約1,200名程度しか増えておらず、待機児童解消には
程遠い状況なのである。
 また、実際に定員充足率は現在95%と、待機児童が増加しているにもかかわらず、
100%に満たない状況である。特に公立では87.8%と数値は低い。
 しかし、都心でも奇怪な現象が起きている。日本一の待機児童都市である横浜市でも
一部で定員割れが起き始めている。
 多くの都道府県、市町村では利用児童数は増加傾向にあるが、全てがそのような状態
ではない。全てのエリアで待機児童の増加、利用者の増加が起こっているわけではな
い。
全ての地区で保育所が足りていない状況ではないことを考えると、保育所を中心とした
保育サービスはエリアによって偏在していることが分かる。要するに、ニーズのある
ところに適量投下出来ていないのだ。特に東京を中心とした都心エリアではその状態
が顕著である。
その中で、現在認可保育所を中心とした行政策が講じられている。しかし、ここにこそ、
大きな問題が存在しているのである。次の章では、認可保育所のモデルの限界につい
第3章 問題山積みの認可保育所
1.認可保育所は増えない
全国的に見れば待機児童の多いエリアは限定されるものの、該当エリアでは深刻な問題である。
そして、これらを解消しない限り、問題解決には至らず、社会に大きな影響を及ぼすのである。し
かし、前述したとおり、認可保育所は思うように増えていない。ここにはどんな問題があるのか?
平成20年
平成21年
うち公立
うち私立
保育所数
22,909
22,925
11,008
11,917
定員
2,120,889人
2,132,081人
1,025,938人
1,106,143人
利用児童数 定員充足率
2,022,173人
95.30%
2,040,974人
95.70%
901,141人
87.80%
1,139,833人
103.00%
出所:厚生労働省
第3章 問題山積みの認可保育所
2.待機児童問題が深刻な場所ほど土地がない
現在、都心を中心にして、認可保育所の新設が思ったように進んでいない現状がある。東京都
でも年間でこの2~3年で平均15箇所程度しか開設されていない。最大の理由は“保育所が必
要な場所に適応した土地が無いこと”である。
■東京都の認可保育所及び認証保育所数推移
東京都新規開設所数:16箇所。新規利用定員数:約2500人
単純計算でこの保育所に待機児童が全て入ったとしても、まだ約5500人は入れない。(平成2
1年度東京都待機児童数:7939人)
さらに、毎年新設があったとしても前述した潜在待機児童によって待機児童は増える一方である。
第3章 問題山積みの認可保育所
3.参入事業者が限定されている
また、近年株式会社に代表される営利団体も積極的に認可保育所を保有するようになっている。
しかし、実際問題は保育3団体や行政の意向により、ほとんど進んでいない。全体の6%程度で
ある。確かに営利団体が参入し、より一層の市場化が進むに当たっては課題も存在するが、CS
視点の向上や福祉としてのサービス視点が市場に入り込むことによって、より一層のクオリティ
アップも期待できるはずである。
■2007年度における私立保育所の経営主体別保育所数
社会福祉法人
社団・財団・日赤
医療法人
その他の法人
その他
総 数
私立認可保育所
保育所数 構成比
10,437
90.0%
253
2.2%
6
0.1%
681
5.9%
221
1.9%
11,598
100.0%
※「その他の法人」には学校法人、宗教法人、NPO、営利法人を含む。
※ 「その他」には個人を含む。
出所:厚生労働省
社会福祉法人が全体の90%を占めており、株式会社も含めたそれ以外の法人が参入しずらい
環境にある。
●参考 介護業界における社会福祉法人比率
老人福祉施設:69%
養護老人ホーム(一般):100%
軽費老人ホーム(ケアハウス):98%
有料老人ホーム:5%
第3章 問題山積みの認可保育所
4.保育業界の構造
保育業界は保育3団体が参入規制に反対し、利権に近い状況をこれまで生み出し続けている。
このような国と団体、自治体と団体の密接な関係が保育業界の構造にメスを入れられない環境
を作っている。
●日経ビジネスオンライン
2009年12月1日(火) 鈴木亘氏 記事 ~なぜ待機児童問題は解決できないのか~ より
しかしながら、競争に晒され、これまでの既得権益が奪われると感じた保育業界(日本保育協会、全国私立保育園連盟、全国保育
園協議会連盟のいわゆる保育3団体)が、こうした参入規制の緩和策に、現在、猛反対をしている。彼等の利権保持のロジックは、
「保育の質を下げるべきではない」というものであり、今後、待機児童対策のために緊急に作られるべき新しい保育所にさえも、
認可保育所並みの高い基準を求めている。
保育の質とは、本来は、ハコモノの施設基準や人員基準といったハードウェアと、保育内容のソフトウェアの2つの面があるはず
であるが、彼等の定義はハードウェアのみである。また本来は、質を落とさず、運営費用を効率化する努力もできるはずであるが、
彼等の定義する「質」とは補助金を伴った高コストの質である。ハードウェアに対する高コストの質が彼等の利権となっているの
であるから、彼等の「現在の保育の質を下げるべきではない」という主張は、「(待機児童が生じようと、無認可保育所に不本意
に入っている人がいようと、働きたくても働けない母親がいようとも)、我々の利権を守れ!」ということと同義である。
特に最近は、「認可保育所並みの『保育の質』が保たれないと、待機児童の母親達ですら安心して保育所に入れない」「保育の質
が無認可保育所で保たれていないことが、待機児童が起きている一因である」という主張をあちこちで始めているが、この「論理
のすり替え」は許容しがたい。待機児童の親たちのほとんどは、認可保育所に入れないので「やむなく」無認可保育所を選んだり、
働くこと自体を諦めたりしているのであり、保育所の質云々をみて、自発的に現状を選んでいるのではない。
認可保育所の「ハードの質」を保つために、莫大な費用と補助金がかかり、限られた予算の中で、いわばそれにはじき出される形
で、待機児童問題があるのである。認可保育所の利権保持は、苦しい財政状況の中では、待機児問題の解決を延々と先送りさせる
ことになる。実は、以前の自公政権下においても、多様な経営主体の保育参入を促したり、幼稚園からの保育参入を促進したり、
保育所の供給増を図る法改正が行なわれてきた。しかしながら、やはり、保育業界団体が猛反発し、それに繋がる族議員、厚生労
働省によって、それらの措置は完全に骨抜きとなってきた歴史がある。
例えば、2000年には、営利法人やNPOの保育所設置が形式上認められたものの、運営費の使途制限や、実質的な配当の禁止、特殊
な会計基準の適用、様々な補助金が利用できないなどの参入障壁が高すぎ、こうした法人が設置する保育所数は、現在も全体のわ
ずか1.8%に過ぎない。また、2006年に幼保一元化施設として鳴り物入りで始まった「認定こども園」も、設置数は未だ全国で358
件に過ぎない。これは、文部科学省と厚生労働省の二重行政による事務コストの高さに加え、幼稚園の遊休資源や人材を保育で活
用できず、保育関連の補助金も使えないことから、幼稚園側に参入のメリットが存在しないことが原因である。
第3章 問題山積みの認可保育所
5.公立は超高コスト体質で財源が確保できない
現在、認可保育所の中でも特に公立保育所は公務員俸給表を採用しているため、私立保育所と
比較すると給与や待遇に大きな差が見られる。これらによって、国と自治体の財政負担は待機
児童解消に1兆円以上もかかる計算となる。
●日経ビジネスオンライン
2009年12月1日(火) 鈴木亘氏 記事 ~なぜ待機児童問題は解決できないのか~ より
最大の理由は財政問題である。東京23区の公立保育所では0歳児一人当たりにかかる保育運営費は50万円であり、保育料を2
万円とした場合、1人に対して48万円が税金で賄われる。また、人件費についても地方公務員の俸給表のため、国の補助金であ
る「保育単価」の人件費を上回り、地方自治体の一般会計繰り入れで運営費を賄わなければならない。東京23区では正規保育士
の平均年収(賞与・手当含む)では800万円であり、園長にいたっては少し前まで1,200万円程度に達していた。公立保育
所は、一つずつが社会保険庁のように出先の独立王国であり、お手盛り
で職階を上げているために、東京都庁の通常の職員よりもはるかに急速な賃金の上がり方となるのである。職階とは、主任、係長、
課長、部長、局長などの職位のことである。通常の公務員は厳密な人事考課の元に職位が上がっていくため、簡単には出世できず、
そのほとんどの職員は低い職位で退職を迎える。しかしながら、23区の公立保育所では、勝手に保育士の職位をどんどん引き上げ
ていき、最後の園長は局長並みにしてしまうのである。高い俸給表とお手盛り職階の組合せとして、異常な賃金水準となる。こう
した公立保育所の人件費水準の高さは、地方自治体の税財源で支えているため、国の事業を対象とする行政刷新会議の事業仕分け
では、手がつけられない。
ちなみに、誤解されないように付け加えると、最近増加している非正規(非常勤)保育士の賃金水準は非常に低く、大きな格差問
題となっている。また、私立認可保育所の正規(常勤)保育士は、都市部では様々な独自の補助金があるものの、国の保育単価が
低い水準に設定されているために、保育士の賃金自体は必ずしも高いとは言えない。
こうした背景もあり、ざっと見積もって、新たに80万人の定員増を図るには、国と地方の財政負担を合わせて年間約1兆1000億円
の公費(税金)投入が必要である。このほかに、公立保育所の用地取得や建設費、私立保育所の建設費・施設整備補助金を考える
と、当初の数年は年間2兆円規模の公費投入額となるだろう。「子ども手当」をはじめとするマニフェスト実現の為に、「事業仕
分け」などで財源捻出に四苦八苦している民主党政権に、その余裕はとても無いだろう。
このため、現実的な選択肢は、保育所の面積基準や人員基準、実質的に自治体と社会福祉法人のみに限られている参入制限を緩和
し、NPOや株式会社による保育所供給を促すことである。介護保険、あるいは東京都の認証保育所の例でも分かるとおり、NPOや株
式会社は、供給拡大へのフットワークが良く、低費用で効率的に運営ができるため、認可保育所に比べて運営費は2~3割程度低く、
公費投入額は認可保育所の半分以下で済む。つまり、公費のかけ方として、レバレッジの高い、効率的な供給拡大策なのである。
長妻厚労大臣も、都市部に限った規制緩和策を実施すると先日発表した。
第3章 問題山積みの認可保育所
6.公立神話
また、近年、公立保育所の民営化が積極的に行われている。しかし、その際に常々問題になる
のが、「保護者の訴訟問題」である。未だ公立保育所に対する安心感が保護者の中に存在し、
民営化に対する反対の動きは無くならない。必ずしも公立よりも私立の方が質が高いとは言い難
いが、ここまで保護者が過剰に反応する必要性は子ども達への影響を考えた入念な準備が成さ
れれば本来ありえないはずである。
●横浜市保育所 4箇所
●練馬区立光が丘第八保育園
●中野区立保育所
●高石市立東羽衣保育所
●大阪府大東市
●仙台市立保育所 2箇所
●神戸市立保育所
など
第3章 問題山積みの認可保育所
7.それ以外の問題
 行政対応のスピード
一般的に行政は予測的な事前対応ではなく、結果を受けての事後対応であることが多いことから、地域の待
機児童問題が発生してからの対応となる。このことにより、開所エリアの選定、事業者の公募、選定、その後の
新規開設工事などを経ると、半年から1年程度のタイムロスが生じる。その時期には市況が変化していることも
多く、最大の問題はその時期にも待機児童で悩まされている家族が存在するという事実である。
入所方法・入所基準
現在、入所方法や入所基準は自治体に依存しており、その基準が待機児童問題によって機能しない場面も発
生し始めている。保育所は元々「保育にかける家庭への福祉機関」として役割を担ってきたにもかかわらず、
現状は母子家庭でも保育所に入所できない、求職中の世帯は入所できないなどの様々な問題が起こり始めて
いる。さらに、不正な就労証明なども蔓延っており、それらを管理しきれていない行政の管理体制の甘さも問題
となっている。
認可保育所に代わる行政サービスが機能していない
■保育ママ 年度別の児童数・家庭福祉員の推移
出所:厚生労働省
■認定こども園 年度別の認定件数の推移
出所:厚生労働省
(公私の内訳)
(類型別の内訳)
認定件数
公立 私立 幼保連携型 幼稚園型 保育所型 地方裁量型
平成19年4月1日現在
94
23 71
45
32
13
4
平成20年4月1日現在
229
55 174
104
76
35
14
■認定こども園 平成21年4月1日段階における認定件数
(公私の内訳)
(類型別の内訳)
認定件数
公立 私立 幼保連携型 幼稚園型 保育所型 地方裁量型
358
87 271
158
125
55
20
文部科学省と厚生労働省は認定こども園を2011年
度までに2,000件以上とするという設置目標を掲げ
ているが現状は増加しているものの、程遠い状況で
ある。