認識しやすいスケジュール表の作成 -重粒子線治療スケジューリングを例として- *榊原静1 半田恵一2 中村昌彦3 1. (株)東芝 研究開発センター 2. (株)東芝 研究開発センター(現 (株)東芝 S&S社) 3. (株)東芝 電力システム社 2013年 5月22日 © 2013 Toshiba Corporation 1. 認識しやすいスケジュール 2. 治療スケジュール表の作成 3. 2週間分のスケジュール 4. MILP定式化 5. 実験結果 6. まとめ 認識しやすいスケジュール表の作成-重粒子線治療スケジューリングを例とし て- © 2013 Toshiba Corporation 2 1.認識しやすいスケジュール なぜ,認識しやすさ が必要か →せっかく良い計画が立てられても,実施しなければ絵に描いた餅 人が使うことを意識する 必要あり ↓ スケジューリング 実際の利益 実施 想定 認識しやすいスケジュール表の作成-重粒子線治療スケジューリングを例とし て- © 2013 Toshiba Corporation 3 1.認識しやすいスケジュール 規則性 時間割 時刻表 月曜 野菜100円 (トマト・きゅうり) 12時 5,17,29,41,53 社 数 英 英 国 13時 5,17,29,41,53 水曜 冷凍食品3割引 (一部の商品を除く) 体 音 数 社 理 14時 5,17,29,41,53 国 英 家 体 美 ・・・ 月 火 水 木 金 英 理 国 数 社 理 国 体 国 数 ・・・ 日曜 会員様ポイント2倍 (割引品を除く) 人が使うことを意識した場合,規則性のあるスケジュールが良い 「認識しやすい」スケジュール表を作るために モデル化を工夫. 認識しやすいスケジュール表の作成 © 2013 Toshiba Corporation 4 2. 治療スケジュール表の作成 重粒子線治療 重粒子線 炭素イオン 治療室 がん 主加速器 施設が大規模 体の欠損,痛み,精神的負担などが少ない 病巣部を集中的に治療できる 建設費 約125億円(小型普及機) 治療費 約300万円/人 先進医療として認定されている 重粒子線治療機関 独立行政法人放射線医学総合研究所 (HIMAC・新治療棟) 群馬大学重粒子線医学研究センター 神奈川県立がんセンター(建設中) 認識しやすいスケジュール表の作成 © 2013 Toshiba Corporation 5 2. 治療スケジュール表の作成 治療の流れ 病状の種別(プロトコール)によって回数が違う 適外 応来 判診 断察 治 療 方 針 決 定 固 定 具 作 成 固定具作成室 C T シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 詳 細 治 療 計 画 ボーラス発注 症 例 検 討 会 CT撮影室 新患測定 リハーサル 照 射 複数回 照 射 経 過 観 察 治療室A 治療室B 治療室C 種別により,治療計画(照射回数,照射期間,間に空ける日数)が 決まっているため,上記の予定をすべて確保できないと,各患者 の治療が開始できない. →半期分のスケジュール(治療枠)を予め作成しておき,予約時に 枠を埋めていく[4] 認識しやすいスケジュール表の作成 © 2013 Toshiba Corporation 6 2. 治療スケジュール表の作成 病院の半年分の稼動日カレンダーと, 患者来訪予定(種別毎)に合わせて, 日毎の患者数(負荷)の平準化をしたい[4] 規則性 (認識しやすさ) 2週間あたり 2週間 偏りのない (機会の均等化) 負荷平準化 (効率性) 規則的で,偏りのない,負荷平準化を実現するスケジューリング 認識しやすいスケジュール表の作成 © 2013 Toshiba Corporation 7 2. 治療スケジュール表の作成 偏りのないスケジュール 開始日が過ぎたので 使用不可 どんなに目的関数が良くても,使えない例 認識しやすいスケジュール表の作成 来年まで待ってください © 2013 Toshiba Corporation 8 2. 治療スケジュール表の作成 半年分の患者の,全ての治療日を変数とするモデル化 2週間分の患者の治療開始日を変数としてモデル化し, 半年分のスケジュール表を生成[1][2][3] 2週間 ・・・ 月1 火1 木1 金1 月2 火2 木2 金2 ↑これを作成すればよい 認識しやすいスケジュール表の作成 © 2013 Toshiba Corporation 9 3. 2週間分のスケジュール 月1 各枝の割当て人数を 決めれば良い 火1 木1 16 金1 月2 火2 曜日種類 w∈W 木2 金2 認識しやすいスケジュール表の作成 肺1 肝10 繰り返し期間中の 患者数 1 10 前16 5 種別 j∈ J 16 月1:1週目月曜 肺1:肺1回照射 2 :枝の容量 :変数yikjlの枝 © 2013 Toshiba Corporation 10 3. 2週間分のスケジュール 規則的(繰り返しの中での) 2週間 1週目と2週目の各日の種別は, なるべくそろえたい 2週間に奇数個はいる種別があるため ,まったく同じにはならない. 治療開始日 (固定具作成) 月1 火1 木1 金1 月2 火2 木2 金2 認識しやすいスケジュール表の作成 © 2013 Toshiba Corporation 11 3. 2週間分のスケジュール 規則的(繰り返しの中での) 月 火 木 金 月1 火1 木1 金1 月2 火2 木2 金2 肺1 1 肝10 10 前16 省略 5 肺1 1人 → 1本 肝10 10人 → 4本 前16 5人 → 3本 ここで使用する枝数に制限をつける 1週目と2週目でなるべく同じ曜日を取るように制約され, 週単位の規則性が保たれる. 認識しやすいスケジュール表の作成 © 2013 Toshiba Corporation 12 2. 治療スケジュール表の作成 偏りのない(繰り返しの中での) 2週間 2週間 同じ種別が特定の日に固 まらない 認識しやすいスケジュール表の作成 © 2013 Toshiba Corporation 13 2. 治療スケジュール表の作成 偏りのない(繰り返しの中での) 月1 火1 各枝の流量制限を与える 肺1 1人 → 1以下 肝10 10人 → 2以下 前16 5人 → 1以下 木1 16 金1 月2 火2 曜日種類 w∈W 木2 金2 認識しやすいスケジュール表の作成 肺1 肝10 1 10 前16 5 16 種別 j∈ J 同じ種別が特定の日に 固まらない © 2013 Toshiba Corporation 14 2. 治療スケジュール表の作成 負荷平準化 種別によって照射日 数が異なる 休 休日などでずれる (治療工程によっても 異なることがある) 立案期間中(半年)の,各日の患者数の最大値を最小化 (治療工程別に見る) 認識しやすいスケジュール表の作成 © 2013 Toshiba Corporation 15 2. 治療スケジュール表の作成 負荷平準化 治療開始日が決まると,各日の負荷が算出できる 月1 治療開始 (固定具作成)は 1週目月曜 肺10 照射回数10回 月火水木金土日月火水木金土日月火水木金土日月火水木金土日月火水木金土日月火水木金土… 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 … t 灰色が 照射可能日 患者A 固C 照照照照 照照照照 照 照 患者B 固C 照 照照 照照照照 照照照 患者C 固C 照照照照 … ・・・ 照射のコスト 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 1 0 0 0 1 1 1 1 0 0 0 0 2 0 2 1 0 0 1 1 1 1 0 0 0 0 2 2 2 1 0 … 立案期間中(半年)の,各日の患者数(または治療時間)の 最大値が算出できる. 認識しやすいスケジュール表の作成 © 2013 Toshiba Corporation 16 4. MILP定式化 2週間分の患者の治療開始日を変数としてモデル化 月1 1人割り当てたときのコストは あらかじめ算出しておく 火1 月 16 火 木 木1 肺1 金1 肝10 1 10 16 月2 前16 5 金 火2 木2 金2 認識しやすいスケジュール表の作成 © 2013 Toshiba Corporation 17 4. MILP定式化 パターンの例 治療の制約条件 月火水木金 間に空ける日にちの例 5日空ける 6日空ける 7日空ける 固定具作成日 月1 固 定 具 作 成 照 休 照 照 照 射 み 射 射 射 照 照 照 休 照 射 射 射 み 射 照 照 照 照 休 射 射 射 射 み C T シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 休 照 照 照 照 み 射 射 射 射 照 照 照 照 射 射 射 射 休 照 照 照 照 み 射 射 射 射 照 照 射 射 固定具作成日とパラメータの選び方の組で, 1人分のスケジュールが決定できる. 認識しやすいスケジュール表の作成 © 2013 Toshiba Corporation 18 4. MILP定式化 月1:1週目月曜 肺1:肺1回照射 2 :枝の容量 :変数yikjlの枝 治療の制約条件 月1 火1 月 15 火 金1 肝10 木 月2 前16 金 曜日種類 w∈W 肺1 木1 繰り返し期間中 の患者数 1 10 5 15 種別 火2 j∈ J 木2 休治療日パターン種類 k∈K 金2 繰り返し期間中の日 i∈I 認識しやすいスケジュール表の作成 yikjl ∈Z 間に空ける日にち種類 l∈L © 2013 Toshiba Corporation 19 4. MILP定式化 記号の定義 {0,…,T}:立案期間中の日.S:治療工程の集合. I:繰り返し期間中の日の集合.K:照射パターンの集合.J:種別の集合. L:間に開ける日数の集合.W:一週間中の曜日の集合. dj:繰り返し期間中の日の種別jの患者数. DAY(w),(w∈W):曜日がwである繰り返し期間中の日の集合を返す関数. USE(j),(j∈J):種別jが取ってよい曜日の種類数の上限値を返す関数. FLOW(j) ,(j∈J):種別jを繰り返し期間中の日1日あたりに割り当ててよい上限量 を返す関数. yikjl w) k γ:yikjlのとりうる値の上界値.υ: iDAY( のとりうる値の上界値. K lL ei:繰返し期間中の日iにおける基準治療工程の上限作業時間. :i,k,j,lに患者を一人割り当てたときの,日tにおける治療工程sのコスト ctsikjl yikjl:i,k,j,lに患者を割り当てた人数を示す,整数変数. xikjl:i,k,j,lに患者が1人でも割り当てられた場合に1を取る,0-1変数. uwj:曜日wに種別jを割り当てたときに1を取る,0-1変数. 認識しやすいスケジュール表の作成 © 2013 Toshiba Corporation 20 4. MILP定式化 min z, yikjl z , sub.to ctsikjl iI kK jJ lL y iI kK lL 1 xikjl x u wj u wW 1 j J , d j, yikjl , ikjl kK lL ikjl 1, 決められた人数分を割り当てる i I , k K , j J , l L , 同じ日の同じ種別の患者に i I , j J , y iDAY( w) kK lL wj t {1,..., T }, s S , 最悪の人数を最小化 USE( j ), ikjl , 対するスケジュールの入れ 方パターン制約 w W , j J , j J , 規則性を作るための 枝数制限の制約 i I , k K , j J , l L , 偏りをなくすための 枝の流量制限 yikjl 整数, i I , k K , j J , l L , xikjl 0,1, i I , k K , j J , l L , u wj 0,1, w W , j J . 0 yikjl FLOW( j ), 認識しやすいスケジュール表の作成 © 2013 Toshiba Corporation 21 5. 実験結果 コストを患者数とした問題は, 容易に解ける 種別の種類 カレンダー 乱数1 2008下 0.25 2009上 0.20 2009下 0.19 2008下 0.67 種別の種類 カレンダー 実績1 2008下 0.67 2009上 0.66 2009上 0.44 2009下 0.56 2009下 0.73 2008下 0.45 2008下 0.25 2009上 0.45 2009上 0.20 2009下 0.41 2009下 0.25 実験環境:Intel®Xeon®,CPU2.33GHz,メモリ 乱数4 16.0GB,Microsoft ® Windows® Server 2003 R2 Standard x64 Edition 2008下 0.30 2009上 1.14 2009下 0.38 汎用ソルバ:IBM ILOG CPLEX 11.2.1 2008下 0.36 2009上 0.36 2009下 0.38 実績2 time(sec) time(sec) Intel,およびXeonは,アメリカ合衆国およびその他の国における Intel Corporationの商標です。Microsoftおよび Windows は,米国 Microsoft Corporation の,米国,日本およびその他の国における登録商標または商標で す.CPLEXおよびIBMは,IBM Corporationの米国およびその他の国における 登録商標です.その他本論文に掲載の商品,機能等の名称は,それぞれ各社 が商標として使用している場合があります. 認識しやすいスケジュール表の作成 乱数2 乱数3 乱数5 © 2013 Toshiba Corporation 22 5. 実験結果 コストを治療時間(種別によって 異なる)にすると難しくなる カレンダー 乱数1 gap(%) time(sec) gap(%) 2008下 300.02 0.19 2009上 300.03 0.36 2009下 300.13 0.41 2008下 300.02 3.12 種別の種類 カレンダー 実績1 2008下 3.70 0.00 2009上 300.09 0.32 2009上 300.02 1.72 2009下 38.23 0.01 2009下 300.03 3.12 2008下 300.02 0.10 2008下 1.97 0.00 2009上 40.11 0.01 2009上 300.02 0.08 2009下 0.73 0.00 2009下 0.30 0.00 2008下 300.09 1.37 2009上 300.14 0.48 2009下 2.03 0.00 2008下 300.05 3.30 2009上 300.08 3.30 2009下 300.02 2.88 実績2 time(sec) 種別の種類 乱数2 乱数3 乱数4 300秒程度で実用的な解が算出可能 乱数5 相対ギャップは 4%以下 認識しやすいスケジュール表の作成 © 2013 Toshiba Corporation 23 6. まとめ 病院の半年分の稼動日カレンダーと, 患者来訪予定(種別毎)に合わせて, 日毎の患者数(負荷)の平準化をしたい.月1 火1 規則性 (認識しやすさ) 偏りのない (機会の均等化) 負荷平準化 (効率性) 月 木1 火 金1 木 月2 金 火2 木2 金2 2週間分の患者の治療開始日を変数としてモデル化し, 半年分のスケジュール表を生成 認識しやすいスケジュール表の作成 © 2013 Toshiba Corporation 24 6. まとめ 「認識しやすい」スケジュール表を作るためにモデル化を工夫. 本研究を進めるにあたり多大なご協力をいただきました,放射線医学 総合研究所の関係者各位に感謝の意を表します. 参考文献 [1] 榊原 静, 半田 恵一, 三浦 幸雄: 重粒子線がん治療を支える患者スケジューリング技術, 東芝レビュー 65(11), 25-29, 2010年11月. [2] 榊原 静, 半田 恵一, 中村 昌彦 : 重粒子線患者スケジューリングのモデル化,日本オペレーションズ・ リサーチ学会2011年春季研究発表会アブストラクト集, 148-149, 2011年3月. [3] 榊原 静, 半田 恵一, 中村 昌彦 :認識しやすいスケジュール表の作成-重粒子線治療スケジューリン グを例として-, スケジューリングシンポジウム2011講演論文集, 131-136, 2011年9月. [4] 武井由佳, private communication, 放射線医学総合研究所物理工学部, 2009年. 認識しやすいスケジュール表の作成-重粒子線治療スケジューリングを例とし て- © 2013 Toshiba Corporation 25 © 2013 Toshiba Corporation 26
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