先進技術の社会影響評価(テクノロジーアセスメント)

先進技術の社会影響評価(テクノロジーアセスメント)
手法の開発と社会への定着
中間報告
2008年12月14日-15日
第2回領域全体会議
東京大学公共政策大学院 客員教授
(財)電力中央研究所 研究参事(兼務)
鈴木達治郎
[email protected]
城山英明、竹村誠洋、上田昌文、吉澤
剛、中川義典、宗像慎太郎
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
1
目的
• 21世紀型の先進技術に適した新しいTAの手法を開発
する.
– 研究開発段階からのTA手法
– 技術の革新的発展に起因する社会影響の不確実性に対応できるT
A(不連続な影響と幅広い社会影響)
– 社会の価値観の多様化に対応できるTA手法
• それを社会に定着させるための制度論的提言を行う.
– 縦割りの既存の規制や行政システムへの接続を考える.
– 企業、業界等、民間レベルでも利用可能なTAを構築する.
– 国際的連携のもとにTAを進める.
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
2
構想
(1)我が国に於ける技術
に関する断片的評価の実
態に関する歴史的分析
我が国に包括的TAが
根付くために制度に課
される条件の提供
(2)新しいTA
枠組みの構築
実践のための
枠組提供
(3)ナノテクノロ
ジーを対象とした
TAの実践
(2)の枠組を実装す
る際の留意点の抽出
(4)包括的TAの制度構築や
運用に関わる具体的提言
(1)~(3)は対応する各グループが、(4)は全グループが研究を遂行する。
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3
代表・エネルギー法制度
城山英明
研究組織
体制
医療法制度
畑中綾子
食品法制度
松尾真紀子
行政法制度設計
山本隆司
海外TA調査
吉澤剛
環境法制度・環境影響評価制度との比較
増沢陽子
助
言
海外アドバイザ
リー・ボード
Michael Rogers,
Arie Rip,
Christopher Hill,
Philip Vergragt
代表・科学技術政策
鈴木達治郎
助
言
合意形成
松浦正浩
技術の多元
的影響分析
湊隆幸
市民
上田昌文
代表
鈴木達治郎
技術経済
鎗目雅
事務局
中川善典
法制度
城山英明
(1)法・制度
グループ
リスク評価
黒田光太郎
倫理
神里彩子
適宜参画
相互に
情報提供
技術経営
青島矢一
技術倫理
黒田光太郎・
神里彩子
問題構造化
中川善典・
城山英明
(2)TA手法開
発グループ
(0)多領域プロジェクト
グループ
適宜参画
ナノテク技術担当
竹村誠洋
(3)ナノテクのTA
実践グループ
コミュニケーション
土屋智子
INSNをはじめとする
ナノテクTAに関する
海外組織
情報提供
代表
竹村誠洋
医療診断技術
宮原裕二・馬場嘉信・内田義之
市民・消費者
上田昌文(代表)、吉澤剛、大石美奈子
エネルギー貯蔵・転換技術
食品加工・生産技術
パネル運営
鈴木達治郎・宮坂講治
立川雅司・高橋祐一郎
Innovation and Institutionalization
of Technology
Assessment in 中川善典・松浦正浩
Japan
リスク
市原学4
TAの特徴
• 評価の対象は技術自体だけではなくその社会的影響
• したがって評価は基本的に政治的・社会的プロセス
• 技術専門家だけでは不十分:学際的アプローチが必要
• 不確実性及び価値の多様性を考慮に入れることが不可
欠
• 政策提言ではなく、意思決定を支援するための選択肢
の提示とその比較が成果
→
「技術評価」という訳はやめること
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
5
TAの定義
• テクノロジーアセスメント(TA)とは、従来の研究
開発・イノベーションシステムや法制度に準拠する
ことが困難な先進技術に対し、その技術発展の早い
段階で将来の様々な社会的影響を予期することで、
技術や社会のあり方についての問題提起や意思決定
を支援する制度や活動を指す。
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
6
TAの手法、制度としての課題
• 手法としての課題
– どの技術が評価の対象となるべきか
– 社会影響はどの範囲まで対象とすべきか
– 定量化や予測が難しい影響をどう評価するのか
– どの範囲の利害関係者・市民に参加してもらうの
か
• 制度としての課題
– 誰(どういう機関)が実施するのか
– 独立性、中立性、信頼性をどう担保するのか
– 資金は誰が提供すべきか
– 最終的に政策決定にどう反映させるのか
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
7
2年目の活動報告
グループ(1)*
TAの制度化について
ー米国、欧州のTA機関の調査分析
ー日本のTA的活動の分析
ー日本でのTA非制度化についての要因分析
*城山英明、畑中綾子、松尾真紀子、増沢陽子、山本隆司、吉澤剛
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8
米議会技術評価局(OTA)とそれ以降(1)
• 1972年に議会内に創設。1995年に廃止
• 行政府に対する議会の技術評価、政策支援として、重要な役割を果
たす
– 報告書のみならず、OTAと議会スタッフ間のコミュニケーションによる情報共
有・支援活動が重要
• 特別な「TA手法」に依存していなかった。問題に応じたアプローチ
を取り、あらゆる利害関係者からの視点が公平に盛り込む手続きが
あった。
– スタッフが中心となり調査研究を行うが、外部の助言委員会を活用。委員の選
定・構成は慎重になされ、合宿などで委員同士の活発な議論が促進された
• 政党中立性を制度で担保:民主党主導であったが、理事会(TAB)
は党・院のバランスが公平になるように構成
– しかし、SDI構想に関する報告書に代表されるような党派間対立も顕在化
• 共和党議会になって、財政削減の対象として1995年に廃止
– 189名の常勤スタッフ(1995年度)、約2,200万ドル(1980-95年平均)
– 復活の動きは常にある(予算復活すればよい)が、実現していない
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
9
米国OTAとそれ以降(2)
• TA的活動は定着化しており、多種の機関で継続されている
– 全米科学アカデミー(NAS)、議会調査局(CRS)、会計検査院
(GAO)など多数の政府機関
– 大学、シンクタンク、NGOも多数存在
• しかし、活動が断片化・多様化し、包括的TAが減少。独立性、中
立性も担保できない状況
– 党派性の強いTA、主張型(advocacy)TA、....
• 個別事例で制度化を担保:研究開発法でELSI研究を義務付け
– ヒトゲノム計画時には議会決定によりDOEやNIHのプロジェク
ト予算の3-5%をELSIに充当していた
– ナノテクのELSI予算は約4億円(2008)
• TA専門機関がないため、人材育成が難しい
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
10
欧州における議会TA
• 1970年代:米からの影響(OTAの設立,OECD)により、一部で議論が
開始。
– しかし、米国とは社会法制度(特に行政と議会の関係)のあり方が異なる
– OTAの目的や手法が不透明といった批判等により、欧州でのTA活動は低調
• 1980年代:科学技術による社会や環境への懸念が強まり、欧州版TAの議
論が本格化。
– 特に経済停滞・低雇用を脱する方策としての技術への期待から、欧州・各国レ
ベルで議会TA機関の設立が相次ぎ、EPTAネットワークも形成
– 時限的なプロジェクトとして開始→各国の状況に適応したTAが発展。
• 1990年代以降:OTAに比べて小規模(予算・スタッフ)だが、ネット
ワークを活用して効果的で多様な活動を実施
– 意思決定の直接的な支援よりも、問題認識やアジェンダセッティングに比重
– 市民など幅広い関係者とのコミュニケーションやネットワークを重視
•
欧州TA機関は各国の社会・政治・文化など制度的要因を反映して多様
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
11
主な欧州議会TA機関
UK POST
OPECST(仏)
ラテナウ(オラン
STOA(EC)
設立年
1989年,01年か
常設機関に
1983年
1986年にNOTAとし
設立.92年に改名
1987年
設置場
所
初期の段階は,
会外.その後,
年に議会内に設
される
議会内部
(議員代表部)
王立科学アカデミー
(KNAW)内
域内政策総局(DG
Internal Policy)の
DGA(経済・科学政
組織
議会のボード(下
10名,上院4名の
計14名)がPOST
監督
Officeの構成16人の
ンバー(両院から8人
ずつ.政党の比率に
じた配置).Bureau:
年議長,副議長,4人
のsecretaries,他欧
TA機関との窓口の代
表1名を選出
現在のボード:7名
(KNAW),
Council of
Policy,文部科学省
任命.①コミュニ
ション部局, ②TA部
③科学システム部局,
④事務局
政治的意思決定は,
「STOAパネル」15
議員から構成.パネ
の運営は「STOA
bureau」.実務運営
行うのは,STOA
ム
職員
9名(研究員6
現在約45名
5-8名
目的
議会の委員会に
学技術に関する
言を行う
①政治家への情報提
供②社会の意見形成
への働きかけ,主要
二つの任務①TAと,
科学システムアセス
ント
①議会の委員会に独
立で質の高い科学的
に中立な研究と情報,
選択肢の提供.②議
論の場の企画
議会の意思決定を透
明化するための科学
技術に関する選択肢
の情報提供を目的と
て,情報収集,研究・
評価活動を実施
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
12
日本におけるTA的活動の流れ
1970
1980
議員への
個別折衝
システム
マネジメント
訪米調査
1990
プロジェクト評
価
1977-78
調査団
科技庁事例研究
予備調査
1969
1971-78
1982-84
1988
1994 1995-1999
科学技術
「研究評価のための指針」 基本法 大綱的指針
1986
1995 1997
1988
工技院事例研究
1970
1971-84
1975
科技庁→
1976
科学技術と 科学技術評価
政策の会
会議(仮称)
『テクノロジーと人間福祉』
八人委員会
技術予測
調査
国際技術戦略
研究会
CELSS研究会
未来工研
産技審答申
2000
1991
日本産業技術振興協会
技術フォーサイト
1974-90
1981
70年代の 産業技術開発長期 80年代の通産
政策ビジョン
通商政策 戦略策定研究会
NISTEP→
1986
1991
90年代の通産
政策ビジョン
1996
(1974-77)
1971
1980
1990
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
2000
21世紀経済産業
政策の課題と展望
2000
13
日本のTA的活動の特徴と推移
手法
• 工学的アプローチにとらわれた手法の偏重(「技術評価」という訳の弊
害)
• 「代替案評価」「多様なステークホルダーの関与」が欠如
• 制度・機関
一方、技術フォーサイト手法はパイオニア的存在となった
• 縦割り型行政は予測・評価活動を好み、手法的発展も手伝って予測・評価
の制度化が進む
• 議会では国家的技術開発プロジェクトや国際技術戦略としてTAに関心を抱
くが、抵抗が強く議会TA機関の設立は叶わず
• 産業界も高い関心を示したが、TA専門機関の設置にはいたらなかった
• 独立性・中立性を担保する制度はないー技術開発機関が実施することが多かっ
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
14
なぜ日本でTAは定着しなかったのか
1970年代の試み
•
「官僚統制」を嫌った企業は自主的にTAを始めたが、環境問題など各企業で対応でき
るものではなかった
•
トータルシステムという概念により省庁ではプロジェクト単位での活動になり、技術
的発展の不確実性や代替案、幅広い社会的影響の考慮がないまま予測・評価との区別
ができなくなった
1980年代の試み
•
一部の国会議員が大規模技術開発プロジェクトの効率性の問題からTAに関心を持った
が、同時期になされた研究評価が制度化されたことで納得した
1990年代以降の試み
•
議会TA機関の設立について、国会議員が立法能力がなく関心も薄かったことに加え、
国会図書館も消極的、大学人もあまり協力的でなかった
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
15
従来のTA的活動とその展望:医療分野
国会
各省庁審議会
診療報酬決定プロセス
総合科学技術会議
TA的
臓器移植法
生命倫理調査部会
診療報酬の決定
活動の
がん対策基本法
ヒト胚研究の倫理指針等
混合診療の例外に関す
決定
例
特徴・
-国民の議論喚起
-省庁横断的な議論の不足
-2年に1度見直し
課題
-議員立法の脆弱さ
-最先端の技術が多く,臨床
-現場との接点強い
会情勢に左右、法制局
に近いものへの評価が不
-費用対効果の経済的議
頼みの立法技術)
足
論に終始
-議論の継続性なし
-アジェンダの腰が重い
-倫理的、社会的妥当性
の評価不十分
TA制
として
可能性
-国立国会図書館や法
-アジェンダ評価の機会
-倫理的・社会的影響に
制局へのTA機関設置
-開発から臨床応用までの
関する部門とのリンク
全般を見た医療システム
価の必要
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
16
従来のTA的活動とその展望:食品分野
コンセンサス会議
リスク評価機関
技術評価機関
リスク管理機関
TA的な
動の例
特徴・
課題
TA制度
しての可
農林水産先端技術産業振興
食品安全委員会
センター
食品表示問題懇談会
北海道庁
遺伝子組換え食品部会
-単発的であり、成果の蓄
-Other Legitimate Factors(OLF)
-対象技術およびその応用
積・伝達やファシリテー
評価項目にない
範囲が限定的で、自然科学
や事務局となる人材の育成
-リスクとベネフィットが比較さ
の研究の域を出ない
が難しい
ことがあまりない
-政策オプションの提示は
-行政主導であり、フレー
-発展途上にあるリスクコミュニ
く、政治的・法律的問題に
グに問題がある
ケーション
で踏み込んでいない
-実践の外部化・一元化と
-リスク以外への焦点
-評価基準・範囲の拡大
ライアントの安定的な確保
農林水産技術会議
-戦略的活用
能性
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
17
従来のTA的活動とその展望:エネルギー分野
原子力委員会
総合資源エネルギー調査
フォーサイト
会
TA的
長期計画策定会議
需給部会
長期エネルギー需給見通
活動の
市民参加懇談会
原子力部会
し、新・国家エネルギー
新エネルギー部会
略、エネルギー技術戦略
例
特徴・
課題
…
-多様な参加者による議
-議題・手続きの硬直性
-議定書遵守のための
論喚起の促進
-合理的な審議手法の欠
クキャスティング
-代替的シナリオ評価の
如
-シナリオの乱立
試行的実践
-社会面を含めた総合的
-「原子力」という政策
評価がない
の限界
TA制
として
可能性
-エネルギー委員会への
-内閣府・他省庁審議会
-トップによるイニシア
拡大的改組
の戦略的連携
ブの徹底
-総合科学技術会議との
-運営委員会の設置
-社会的考慮のために民
連携・権限分担
間機関との提携
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18
日本におけるTA機関のあり方(案)
議会機関型
議論喚起型
企業連携型
断片的TA
統合型
クライアン
議会委員会
政府(+議会)
従業者・消
者
政府
スポンサー
議会
文科省
(+経産省)
多業種・多
の企業
公的機関・大
学・企業
運営主体
(理事会)
議員
+外部有識者
有識者・業界関
係者
各機関代表者
設置場所
国会図書館
(or議院調査
独立行政法人
(or学術会議)
企業経営者
+外部有識
者
経済団体
実施主体
スタッフ
+外部研究者
スタッフ
各機関
特長
議員への啓蒙、
政策課題発見
参加型、
社会的インパク
スタッフ
+外部研究
者
意思決定へ
の近さ、集
的CSR
課題
成果の質、
立ち上げ方
権限の分散、
政策的インパク
負のインパ
トへの配慮
権威、信頼性、
制度的安定性
政府
(or公的機
低コスト・低
スクで実現可
能
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
19
日本においてTA制度が定着するために配慮すべきこと─主体の問
題
• クライアントは誰か?
• スポンサーは誰か?
• 運営主体は誰か?
• 実施主体は誰か?
• 人材はどう確保するか?
→日本の政治・社会情勢にあった活動と制度化
が必要
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
20
2年目の活動報告
グループ(2)(3)
TA手法、実践グループ
竹村)
(鈴木、
ー医療グループ(“ナノメディスン”)(松浦、中川、畑中、宮原)
ー食品グループ(“フードナノテク”)(上田、立川、高橋、大石、松
尾、江間)
ーエネルギーグループ(“ナノグリーン”)(宮坂、中川、吉澤、湊)
ーMWCNTレポート(宗像、市川、吉澤、中川、鈴木)(別添)
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21
ナノメディスン
(1)
調査の設定
• テーマ
– ナノテクノロジーの医療分野への応用
• 網羅的な検討ではなく、特定の技術に焦点を当てた社
会影響の評価
• 今回は「ラボ・オン・チップ(LoC)」と「ドラッグ・デ
リバリー・システム(DDS)」に着目
• クライアント
(今後詰めていく必要有)
• 次世代医療機器評価指標検討会(厚生労働省)と医療
機器開発ガイドライン評価検討委員会(経済産業省)
との合同検討会、あるいはその事務局である産総研・
人間福祉医工学研究部門
• 厚生労働省・医政局・研究開発振興課 など
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
22
ラボ・オン・チップ (LoC)
•
Lab-on-a-chip
•
数センチ四方程度のチップ上に、
極細の流路、バルブ、弁、セン
サーなどを集約
•
医療診断の分野では、各種疾病
マーカー(疾病原因遺伝子の異変、
たんぱく質、糖)を検出できるセ
ンサーを組み込むことによって、
血液による医療診断を高速・安
価・短時間に行うことが期待され
ている。
•
MITが開発したマイクロポンプ。LoC上に血液
を流すために使われる。
(出典:MIT News Office [2006/10/16])
DNAシークエンサーによる遺伝
子診断の分野への応用も期待され
ている。
Innovation
and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
23
LoCの導入に関連して現在
想定されるステークホルダーと論点
ステークホルダー
論点
■省庁
○厚生労働省・医政局・総務課(保健 ○新しい形の医療の進展
医療に関する基本的な政策の企画
在宅医療、通院形態の変化
等)
○厚生労働省・医政局・経済課(医療 ○患者への選択的薬剤投与
器具等の生産、流通、輸出入)
○経済産業省・製造産業局・生物化学 ○従来型の医療診断の迅速性・
産業課
信頼性向上
○経済産業省(医療情報の通信のプロ
○プライバシーの侵害
トコルを議論している部署)
■企業
○医療診断におけるブレイクスルー
○製薬会社
新たな疾病マーカーの発見
○東レ(DNAチップ)
○日立(臨床検査用装置)
感度の飛躍的向上
○松下電器産業(血圧計や治療器)
○途上国支援への応用
○東芝(DNAチップ)
○富士通(臨床検査部門における検査
依頼から結果報告までの各種業務サ
ポート)
○日本ガイシ(DNAマイクロアレイ)
○アークレイ(検査器具製造メー
Innovation
and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
24
ドラッグ・デリバリー・システム (DDS)
•
「必要な薬物を必要な時間に必要な部位で作用さ
せるためのシステム(工夫や技術)」(日本DD
S学会)。ナノテクノロジーを使用したDDSの
開発が進められている。
•
従来より薬物による副作用を抑制し、薬物そのも
の治療効果を高めることから、抗がん剤への開
発・応用が期待されている。
•
ナノDDS技術によって、健康な細胞を攻撃せず
患部だけに集中して抗がん剤を届けることから副
作用が低く、また、薬の拡散がないことや放出の
タイミングを調整することにより、従来よりも投
与間隔をあけることができる。制がん剤投与のた
めに入院を余儀なくされていたが、DDSにより通
院治療が可能となり、患者のQOL向上に貢献す
ると期待されている。
(出典:東京大学片岡研究室ウェブサイト)
http://www.bmw.t.u-tokyo.ac.jp/research/research4.html
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment
in Japan
25
DDSの導入に関連して現在
想定されるステークホルダー(と関心)
○研究者
医学部
工学部
薬学部
-医療の質向上
-医薬品の市場化や臨床応用
-安全性・毒性評価
-医薬品審査の迅速化・質の向上
○患者・患者側弁護士
-薬害再発の防止
-利益相反関係の解消
○メディア
-企業の不正や研究者エゴの指摘
-医療の将来構想に関する国民への
情報提供
○企業
大規模製薬企業
-市場での規模拡大
-診療報酬制度への保険収載
-オーファンドラッグなどの不採算
部門の抱え込み
ベンチャー企業
-国際展開
-審査のノウハウ・迅速性
○国
厚生労働省
-医療の質向上
-安全性評価・副作用の防止
財務省
-医療費抑制
経済産業省
-医薬品産業の育成・保護
-国際競争力強化
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
26
ナノメディスン:進め方と体制
(TAに向けた準備〔本年度〕)
進め方
対象技術の選択
ヒアリング調査
ステークホルダーと
論点の整理
TAに
向けた提言
計13件実施済
LoC
3件
と
り
ま
と
め
4件
DDS
既存資料の整理
6件
現在の進捗
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
27
フードナノテク・グループ
フードナノテクノロジー(FNT)の暫定的な定義
• 食品の生産・製造、加工、保存、輸送、流通、消費、廃棄など
の過程にかかわるナノテクノロジー全般を指す。
• 食品として摂取するもの(例:βグルカン、白金ナノコロイド
などのナノサイズの機能性成分など)と食品として摂取しない
もの(乳化・分散技術、ナノセンサー、包装など)に大別でき
る。
• 食品の安全性と有効性、そして環境影響の問題が関わる。それ
らを検証する評価方法や計測技術、トレーサビリティや表示の
問題も関係する。
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
28
フードナノテク(FNT)を対象にしたTAの意義と留意点
• 消費者の関心が非常に高い領域であり、企業側もそのことに鋭
敏にならざるを得ず、両者を媒介してのTAは、研究開発のみ
ならず市場化においても影響力が大きいと思われる。
• 「FNTの表示の問題」をテーマにすえることにするが、これは
食品生産から廃棄までの全過程に関わり、食品として摂取する
/しないの両者に関わり、そして消費者の関心が最も集中する
安全性の問題が前面に出たテーマである。
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
29
これまでに実施した調査
•
ヒアリング
– 杉山滋氏(食品総合研究所、7月15日):FNT全般の動向、農水省プロジェ
クト
– 食品安全委員会(8月19日):委員会としての取り組みは未着手
–
須賀哲也氏(味の素、8月19日):βグルカンのナノ粒子化技術、健康食品
問題
–
宮本有正氏(大学院新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻 教授、10
月24日):白金ナノコロイドの特性と医薬品的応用の展望
–
永田智己氏(JST研究開発戦略センター):FNTの世界的な動向と日本に
おける位置づけ
•
ナノトライ(10月3日-4日)
–
実施者として(立川、高橋)、“ミニコンセンサス会議”の専門家パネルの
一人として(上田)
→市民パネルの提言「未来の食への注文」に結実
•
海外における動向調査
–
–
–
–
–
1) TA機関:ラテナウ、TASwiss
2) 国際レベル:OECD,FAO/WHO
3) 国会レベル:FAD(米国)、SCENIHR(EU)
4) 業界:IUFoST, The Institute of Food Science & Technology Trust Fund
5) 消費者団体、NGOなど:地球の友、ETCグループ
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
30
TAの対象とクライアントの仮想的決定と実施の原案
• ナノトライの成果を継承し発展的展開を期す
–
→「提言」の中にみられる「2 消費者が安心して選択・
購入できるためのナノ食品の表示の工夫・認証機関による
認定」を受けて、その具体的実現のための方策として位置
づける
• 仮想的クライアントは、生活協同組合連合会と農林水産省とす
る。
– ただしTA機関は認証機関でもないし、検査機関でもないの
で、現時点での科学的に判定し得る範囲での検査や認証に
関わる事項については、食品総合研究所の杉山氏らに助力
を請う。
• 実施までに求められる作業
–
1) 食品表示にかかわる現状の制度、問題点の分析
–
2) FNTの技術の動向と消費者への影響度の予測
– and
3)Institutionalization
消費者の表示に関わるニーズとそれに対する企業側
Innovation
of Technology Assessment in Japan
31
ナノグリーン
対象技術とクライアントの選定
• 省エネルギー住宅・ビルに応用されるナノテクノロジー
– 飛躍的な省エネルギー、環境負荷の低減をもたらす可能性
のあるナノテクノロジー
– ナノ材料(建材)、太陽電池、電力貯蔵、などが具体的応
用として考えられる
• 想定クライアント:省エネルギー住宅促進議員連盟(超党派)
– 超党派で、最新技術とその普及に関心
– 特にナノテクノロジーを用いた場合の省エネルギーの進展
に関心が高いと想定
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
32
ナノグリーン
これまでの活動(1)
• このグループは、大きく異なる二つの技術領域(省エネ技術・
建築技術)にまたがってTA活動を行うという、大きな特徴を
持つ。
• そこで、これまでは「省エネ技術」「建築技術」それぞれにつ
いて、専門家へのヒアリングを実施してきた。
– 省エネ技術
• 岡村廸夫(キャパシタ)
• 堀洋一(東京大学教授、電気自動車)
– 建築技術
• 坊垣和明(武蔵工業大学教授、伝統家屋、快適性評
価)
• 岩村和夫(武蔵工業大学教授、住宅の評価システム)
• 石田建一(積水ハウス、省エネ住宅)
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ナノグリーン
これまでの活動(2)
• このように、技術そのものに関する調査を進めると同時に、住
宅を取り巻く昨今の社会的状況についても、調査を進めてきた。
• これらは、TA活動を行ってゆく際の前提条件となる。
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法制・税制面
– 省エネ法
– 住宅表示制度、省エネ改修税制、優良住宅表彰制度
政界における動向
– 環境・省エネ政策を推進する議員連盟、ナノテク推進議員連盟
– 自民党・200年住宅ビジョン
公共的(行政関連、行政-民間共同)事業関連
– エネ調・省エネルギー基準部会、省エネ・防犯住宅推進委員会、
ロ・ハウス構想、北海道開発局、NEDO事業
– IBEC、CASBEE、自立循環型住宅、環境共生住宅、センチュリー
ハウジング住宅
非行政関連団体・活動関連
– 外断熱懇話会、外断熱推進会議
– 日本建築学会・住宅用エネルギー消費と温暖化対策検討委員会
– nano tech大賞
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
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ナノグリーン
今後の活動方針
• 当チームは、「省エネ技術」と「建築技術」との融合技術を対象
としている。
• したがって、双方の専門家たちが有する社会影響を調査・整理す
るだけでは、本当の社会影響を把握することができない。
• TA活動の初期の段階から、双方の専門家たちを同一の場に集め
ることによって、
– 認識の相互理解や変容を促進させ、
– どちらの専門家にとっても新規性や独創性のある知見を得る
こと
が、当チームにとって最も重要な課題となる。
Innovation and Institutionalization of Technology Assessment in Japan
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多層CNT(MWCNT)のリスクに関するレポート(別
添)
• 「MWCNTは第二のアスベストか?」
– MWCNTのリスクに関する新たな科学的研究成果が登場
– 第二のアスベストになるのではないか、という懸念
– マスコミでも「第二のアスベストか?」という報道
– 環境団体が一部でナノ粒子の毒性を強調、産業界も懸念
TA機関として、客観的な知見の整理と政策的オプションの検討が
必要
• 想定クライアント:厚生労働省と経済産業省の合同
– 既に東京と、厚生労働省、環境省が検討を開始、一部産業界に
通達
– 規制官庁と技術・産業官庁の合同でバランスの取れた報告を狙
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第1回国際ワークショップ
• 2009年3月12(木)-13日(金)
“Innovation and Institutionalization of Technology
Assessment in Japan”
– 海外から専門家4名を招待し、プロジェクトの中
間報告と進め方についてレビューをお願いする。
– 国内から関連専門家、実務家、NGO専門家など
も招待。
– 非公開でTA制度化、および今後の日本における
TA活動のあり方などについて議論をおこなう予
定。
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